炎上 CM、想像力なさすぎ? メディアのジェンダー表現

私たちメディアの問題です。 自分のよりどころとしてきた価値判断、記事の切り口、文章表現が、社会とずれてきたのではないかと悩み始めた記者たちが提案しました。 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声を紹介し、朝日新聞がつまずきながら取り組んでいることについて、取り組みに携わった校閲記者が報告します。

【アンケート】 ジェンダーとメディア

ステレオタイプ再生産

メディアのジェンダー表現のここがおかしい、という指摘です。

● 「番組で、しばしば流行のグルメやアイテムを紹介するものがある。 そこでよく『女性はこういうの好きですよね』、『女子にはたまらない』といった、嗜好を性別で限定する発言を平気で出演者たちがしているのがとても気になる。 味覚や趣味に性差がないとまでは言わないが、メディアで過剰にこのような表現をするのは、それに当てはまらない『女性』や、あてはまる『男性』を『異端』と見なすように感じてならない。 特に、多感な思春期の子供たちにとって、メディアのこのような表現が、偏ったジェンダー意識、排除の意識を作るきっかけにもなりかねないと危惧している。(東京都・20 代女性)」

● 「4 月から広告会社で働いています。 自社でも、安易に露出の激しいもえキャラや、若く美しい女性の容姿を強調した広告があります。 会議の中でも悪気なく『男脳、女脳的には〜が正しい』、『女の子向けだからピンク』というような発言を聞く機会が多いです。 新人ですし、きっといちいち意見していると『ヒステリックな男嫌いのフェミニスト』と思われてしまうので、内心引っかかっても言えないでいます。(東京都・20 代女性)」

● 「『男子あるある』や『女子あるある』のつもりで描いているシーンは、そのことを再生産して社会に刷り込むことにつながっていると思う。 例えば『忙しくて時間がない、働くママを応援!』なども、家事は女性の分担という暗黙の共通理解を発信し、再生産している。(神奈川県・30 代女性)」

● 「私は自治体の PR で女性の性的特徴を強調した表現が多く使われているのがとても不愉快です。 関わらないことのできる個人や民間企業ならまだしも、私たちの生活と密着していて権力もある行政組織からそのような視線を感じるのは、気持ちが悪いし生きづらいです。 公の立場なら、自分たちの表現が社会的に強いメッセージを持つことを自覚して、嫌な思いをする人が少ないよう配慮してほしいです。 SNS の普及で公と私、団体と個人の表現が同等に並ぶようになり、自治体 PR に限らず、公の立場であることをわきまえられていない表現は増えている気がします。(大阪府・20 代女性)」

● 「電車の中づり広告で、下着まがいの姿で若い女性の写真が大きく出ているのは先進国の中で日本だけである。 その異様な光景に、私たち日本人は慣れすぎていて、非常に怖い。 また、テレビでも若い女性タレントが『へぇ〜知りませんでした!』というようなコメントをするために、司会やコメンテーターに抜擢されているのも違和感を感じる。 若い女性 = 未熟 = 無能 → 男性が教えてあげる立場、というイメージを無意識のうちに刷り込んでいるように思う。(東京都・30 代女性)」

● 「女性の容姿に関するランク付けや、容姿端麗でない人に対する暴言を容認しているメディアが目に付く。 『ブス』などの表現がバラエティーや笑いのネタになること自体が女性蔑視であるにもかかわらず、それを良しとしている風潮が理解できない。 トランプ大統領が女性の容姿について発言しセクハラだと騒動になっているニュースを取り上げているにもかかわらず、バラエティーでのセクハラは別物という認識なのか? 甚だ不思議で理解できない。(神奈川県・30 代女性)」

● 「女性ならではの観点、見方といった表現に違和感があります。 ある考え方に至ったのには人それぞれの経緯があり、それが個性だと思います。 それを女性だから、という理由で回収してしまうのは安易ではないか。(埼玉県・20 代女性)」

〈ジェンダー〉 身体の特徴など生来の性別の違いではなく、社会的、文化的につくられた性差のこと。 「男は仕事、女は家事育児」といった「男はこうあるべきだ」、「女はこうあるべきだ」とする性別による役割分担も含まれます。

想像力、なさすぎでは

特に女性の描き方を巡り、CM などの「炎上」が目立つようになってきたことについて。

● 「ものによっては『それは言いがかりでは』と思うこともあります。 何でもかんでも文句を言いたい人がいると思うので、そのせいで、正しい批判すらも『言いがかり、ヒステリー』みたいに思われている感じがして、そこが一番の懸念事項です。 作り手も、『ただの言いがかり』と認識しているから炎上商法のように続々とそういう表現が出てくるのかな … と。 それぞれの問題を個別に精査する目を、報道も、受け手も持った方が良いのではないでしょうか。(東京都・20 代女性)」

● 「ステレオタイプを見直すきっかけになればよいが、実際には、批判を受ける側が居直って終わることが多いように思う。 ある表現がなぜ他人には脅威や不快なものに感じられるのか、という反省にはつながらないためだろう。 だとすると、メディアがどう取り上げるか次第で受け止め方も変わってくるのではないか。(東京都・40 代男性)」

● 「炎上が続くのは、一般視聴者、とりわけ日常生活で性別にまつわる処遇に違和感をもっている女性たちがこれまで以上にメディアでの表現に敏感になったこと、その異議申し立てを可視化する手段が SNS によって身近になったことが影響していると思うが、そのような現状にあってなお、目を疑う無神経さを露呈した CM が作られ続けるのがなぜなのか、不思議でならない。 単純に時代遅れの『おじさん』たちの論理が今も横行しているからなのか、現場に少数はいるはずの女性たちが過剰適応しているからか。 いずれにしても、作り手の側に、様々な立場や経験を持つ人たちへの想像力がなさすぎる。(岡山県・50 代女性)」

● 「『私作る人、僕食べる人』の何が悪い。 日本人はかくあるべき、と言う意見を表明することは悪だというのなら、日本は思想統制のある国だったということなのか。 賛否両論、いずれも尊重され、自由な発言や論議がなされるべきで、差別だ、偏見だ、良くないことだ、と決めつけて異なる意見を圧殺するようであれば、とても民主主義国家とは言えない。」

「昨今の日本は、声高に叫ぶ一部の活動家により徐々に『思想統制』されつつあるのではないかと思う。 一部の声高な活動家から何を言われようと、それに一喜一憂せず、自らの主張を堂々と貫けばよい。 朝日新聞の読者では少数派かもしれないが、世間の物言わぬ多数派は支持していることを忘れるな。(京都府・30 代男性)」

● 「ゲイの男性です。 まずこのアンケートの選択項目自体、若干女性に偏っているのではないかと思いました。 メディアに触れてよく感じることは、女尊男卑が加速しているということ。 寝ている旦那さんの耳元に、奥さんがひどいことを言う殺虫剤の CM Mや、男は臭いと普通に言い放つ消臭スプレーの CM。 これらはなかなか表立った問題にならないように感じますが、もし、女性がこう表現される立場であれば、炎上は免れませんよね。 女尊男卑な昨今の風潮に不安を覚えます。(東京都・30 代男性)」

● 「女性の立場からすると議論が起こること自体が前進だと思います。(埼玉県・30 代女性)」

■ 「押しつけ」避ける表現模索

ジェンダーにとらわれない、男女平等を促す表現はどのように作り出せるのか。 多様な性について理解を深めるには。朝日新聞も、このことに悩んできました。

▼ 国会議員を表すイラストが男性を連想させるネクタイ姿ばかり

▼ 画家に対して「女性ならではの細やかな観察眼」。 女性だからではなく「その人ならでは」の作風なのでは

これらは、朝日新聞の社内向け「ジェンダーガイドブック」で考える対象となった事例です。 過去の紙面のほか、議論の末に修正された記事・見出しを例示しながら、偏見や新たな差別を生むかもしれない表現について考える手引です。 様々な部署から担当者が集まり今年、15 年ぶりに改訂しました。 私も担当した 1 人です。

きっかけは昨年、朝日新聞の記事が「人権侵害であるセクハラを『悪ふざけ』と捉え容認している」と批判を受けたことです。 読者代表であるパブリックエディターからも、女性の人権をどう捉えているのか、記事の問題点について声をあげる人が編集現場にいなかったのかと厳しく問われました。 人権を守る立場からも記事を点検する私たち校閲記者はもちろん、社員全員がいま一度、自分の意識を見直すことを迫られています。

ガイドブックで取り上げた事例の一つに、税制改正の課題として「ベビーシッター代の控除を認めるか」について書かれた記事があります。 記者の原稿には控除の狙いについて「働く女性を後押しするため」とありました。 女性を応援するという趣旨ですが、社内から疑問の声が上がりました。 これでは「ベビーシッターを必要としているのは女性」だという前提に立っていることになり、読者に一方的な価値観を押しつけることにもつながる。 子育てを担う男性が大勢いることを考慮しないのも不自然だ - - というものです。 検討の結果、「働きながらの子育てを後押しするため」と、男女を問わない書き方になりました。

改訂後のガイドブックには「これぐらいは問題ないんじゃないか」という人もいた表現もあります。 ただ、自分が「これぐらい」と思っていても他の人には大きな痛みをもたらす表現かもしれない。 その表現が、自分の性について悩みを抱える人を生きづらくさせることにつながるかもしれない。 こういったことを常に念頭に置くのが大事だと考えています。 模索しながらですが。

価値観は人によって異なります。 固定観念に基づく記事や想像力を欠いた表現などによって、「この役割はこの性別のもの」などと押しつけるようになることは避けなければいけない。 細心の注意を払いながら、これからも紙面の点検を続けていきます。(校閲センター 梶田育代、asahi = 7-30-17)



振り込め詐欺犯、うそを指示 銀行で「家改築」、「被災」

昨年 1 年間に東京都内であったオレオレ詐欺を警視庁が分析したところ、犯人が被害者に対し、金融機関で声をかけられた時にうそをつくよう指示するケースが相次いでいることがわかった。 急増している現金手渡し型では「お金だと分からないようにして」と求める場合も。 警視庁の担当者は「詐欺を見破るポイントになるので参考にして」と話している。

同庁特殊詐欺対策本部によると、都内の振り込め詐欺被害の昨年の認知件数は 1,563 件。 前年より 208 件減ったが、被害額は約 36 億 2,200 万円で、約 4 億 1,700 万円増えた。 件数、被害額ともに 9 割以上が息子などを装うオレオレ詐欺だった。

対策本部が昨年 10 - 12 月分(414 件)を抽出して詳しく調べたところ、120 件で犯人から何らかの指示があった。 このうち 44 件で、金融機関などで声をかけられた場合の対応を示されていた。 「家の新改築費」と答えるよう求められていた例が 25 件で最も多く、「親族に借金を返す」、「東日本大震災で被災した」と答えるよう指示されたケースもあった。 (asahi = 2-14-12)


振り込め・投資詐欺グループを一斉捜索 16 道府県警

首都圏を拠点とする詐欺グループが組織的に振り込め詐欺や投資詐欺を続けていたとして、神奈川、岐阜、京都、長崎、山口、佐賀、熊本など 16 道府県警の合同捜査本部は 31 日、詐欺容疑などで 40 人以上とみられるグループの主犯格の自宅や活動拠点などの一斉捜索を始めた。 捜査関係者への取材でわかった。

捜査本部は同日午前から、捜査員約 200 人で神奈川県などにある幹部数人の自宅や、活動拠点とされる東京都千代田区や台東区の雑居ビルなど数十カ所を捜索。 現場にいたメンバーら数人を逮捕した。 捜査関係者によると、グループは長崎県内の 60 代男性から融資に対する保証金名目で約 100 万円をだまし取った疑いなどがある。 (asahi = 1-31-12)


「髪の毛で内部被曝調べる」検査業者横行 実際は不可能

「髪の毛で内部被曝の状態がチェックできる」という検査が、福島県内の幼稚園や保育園で広がっている。 内部被曝量は毛髪では測定できないが、検査業者は「被曝だけでなく、がんや心の悩みもわかる」と説明。 昨年夏以降、500 人以上が受けたという。 民間の保育園でつくる日本保育協会福島県支部は詐欺の疑いもあるとして、注意を促す通知を出した。

この検査は、東京都内のペット用品業者が設立した「日本 QRS 健康管理協会」を窓口に、超音波検診を行う「生理科学研究所」などが、1 人当たり 8,400 円で請け負っている。 業者によると、3 - 4 センチの毛髪 20 - 30 本を量子共鳴分析器 (QRS) という装置に乗せて微弱な電流を流せば、ヨウ素やセシウム 137、ストロンチウムなど 8 項目の内部被曝の状態が、マイナス 20 からプラス 20 の数値で出るという。 一定レベル以上であれば、医療機関への受診を勧めるという。 (asahi = 1-27-12)


原野商法被害者から「測量費」詐取容疑、男 4 人を逮捕

原野商法で価値の低い土地を買わされた人が、土地を売るための測量費の名目で現金をだまし取られた事件で、愛知県警は、大阪を拠点とするグループの男 4 人を詐欺の疑いで逮捕し、22 日発表した。 県警は、グループが 2009 年 3 月以降、45 都府県の約 500 人から約 4 億円を詐取したとみている。

県警によると、逮捕したのはリーダーの大阪市西区南堀江 3 丁目、会社役員横田猛容疑者 (36) ら。 県警が昨年摘発した別のグループのリーダーの男 (28) は、横田容疑者からだましの手口の指南を受けて独立。 原野の購入者名簿を譲り受ける代わりに横田容疑者側に詐取金の 1 割を上納していた。

横田容疑者は昨年 5 - 6 月、愛知県幸田町の男性 (71) や松山市の女性 (87) に電話で「中国企業があなたの北海道の土地を欲しがっている。 測量代が必要だが、土地が売れれば測量代は大きな額ではない。」と偽り、架空の測量費計 134 万円を詐取した疑いがある。 容疑を認めているという。 (asahi = 1-22-12)


振り込め詐欺、録音機で防げ 警視庁が無料配布へ

なかなか減らない振り込め詐欺対策として、警視庁は新年度から、電話がかかってくると自動で録音する機器を、被害に遭いやすい高齢者を中心に無料で配る。 「振り込め詐欺犯は声を録音されるのを嫌がる」という点に着目した。 全国初の試みという。 警視庁犯罪抑止対策本部によると、録音機は、電話がかかってくると「通話は録音されます」というメッセージが流れ、受話器をあげるとすべての会話が録音される。

振り込め詐欺の犯人は、声を録音されるのを嫌って留守番電話に応答することが少ない。 同本部は、この点に着目。 ▽ メッセージを聴いて犯人があきらめれば、被害を未然に防げる、▽ 仮に声が録音されていれば、電話の相手が本当に親族だったのかどうかなどを通話後に落ち着いて確認できる - - という点で「被害防止の決め手になる(担当者)」としている。 (asahi = 1-21-12)


オレオレ詐欺、再び増加 直接訪問の手口が 3 割

息子や警察官などを装ってうその電話をかけ、キャッシュカードや現金をだまし取るオレオレ詐欺の被害が再び増加傾向にある。 金融機関から現金を振り込ませる手口ではなく、直接被害者宅に受け取りに行く手口が目立つようになり、1 人当たりの被害額も増えているという。 だまし取られた金の一部は暴力団の資金源にもなっているとみられる。

警察庁によると、2011 年に確認されたオレオレ詐欺は 4,628 件、被害額は 106 億円で、いずれも 2 年連続の増加。 この 2 年間で、被害件数は 1.5 倍、被害額は 2 倍に増えた。

目立つのは、うその電話をした後、共犯者らが被害者宅を訪ねて現金を直接受け取る手口で、被害の 3 割近くを占める。 近年は金融機関で現金自動出入機 (ATM) の利用限度額引き下げや、怪しい口座の凍結、社員教育などの対策が進み、現金振り込みや払い戻しなど、金融機関を利用した手口では多額の現金をだましとることが難しくなったことが背景にあると見られる。 (asahi = 1-19-12)


「モンゴルで金採掘」かたり集金 詐欺容疑で 6 人逮捕

モンゴルで金を採掘する会社に投資すると偽って金をだまし取ったとして、警視庁は 11 日、東京都港区にあった投資会社「グローバルアイズ」の元社長、河原正佳容疑者 (52) = 札幌市中央区 = ら同社関係者 6 人を詐欺容疑で逮捕し、発表した。 同庁は、同社のグループが少なくとも全国の約 540 人から約 15 億円を集めたとみている。

生活経済課によると、河原容疑者らは 2009 年 4 月 - 7 月、「モンゴルで金を採掘する会社に重機をリースする事業を始める。 この事業に投資すれば元本保証で年利 12 - 19% の高配当を得られる」とうそを言い、神奈川県南足柄市の女性ら 3 人から計約 1,800 万円を詐取した疑いがある。 調べではリース事業はしていなかったという。 河原容疑者は「金は流用したが、だましてはいない」と否認しているという。

同課は昨年 2 月、金融商品取引法違反(無登録)容疑でグ社や関係先を家宅捜索。 グ社の実質的経営者(当時 53)から任意で事情を聴いたが、同年 10 月に北海道小樽市で自殺した。

グ社の元幹部社員は朝日新聞の取材に「(実質的経営者の)ワンマン企業で『金融庁の登録商品だから胸をはって売れ』と言われ、『元本保証』を売りに電話で勧誘した」と説明。 集めた金は、この経営者が支援していた演歌歌手のチケットを大量に購入して客に配るなどした、と話している。 (asahi = 1-11-12)

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民生支援装った団体使い出資集めか カンボジア投資

カンボジア政府公認の事業に投資するとうたい、元本保証のうえ高配当を約束して少なくとも 17 億円を集めたオネスティジャパンインセプション(東京都千代田区)の配当払いが滞っている問題で、同国を民生支援する名目の団体を使って、オ社が出資者を集めていた疑いのあることが関係者の話でわかった。

この団体はオ社と同じ住所にある「国際投資総研」。 勧誘用資料によると、同国の教育事業への民生支援などを目的とする一方、「月額 900 円の会費を払えば最新の投資情報を提供し、主催セミナーに半額で参加できる」としている。

団体について、オ社の関係者は「出資者集めの舞台装置だった」と打ち明ける。 1,600 万円を出資した北海道旭川市の女性 (65) は「団体が現地に学校を建てたという写真を見た。 人道支援だと思い、周囲の知人にも出資をすすめてしまった。」と憤る。 (asahi = 12-31-11)

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大使館でパーティー 信用させる? カンボジア事業出資

カンボジア政府公認の事業に投資するとうたい、元本保証のうえ高配当を約束して少なくとも 17 億円を集めたオネスティジャパンインセプション(東京都千代田区)の配当払いが滞っている問題で、オ社がカンボジア大使館(港区)でパーティーを開き、出資者を信用させていたことが関係者の話でわかった。

パーティーに参加したという北海道旭川市の 60 代の女性は「社長と『現地政府の高官』という人が親しそうにしており、すっかり信用してしまった」と話した。 オ社のホームページにも今年 1 月 11 日に同大使館で新年祝賀パーティーを開いたとの記載がある。 那覇市の 60 代の自営業男性は 5 月以降、計 480 万円出資したが、8 月からは配当が払われていないという。 「周りには現地に招待され、多額の出資をした人が何十人もいる」と話す。 (asahi = 12-27-11)

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カンボジア投資うたい 17 億円集める 出資法違反の恐れ

カンボジア政府公認の事業に投資するとうたい、高配当を約束して少なくとも全国の会員約 3 千人から 17 億円を集めていた東京都千代田区の会社が 5 月以降、配当の支払いを滞らせていることが朝日新聞の取材でわかった。 警視庁も、出資法違反の疑いがあるとみて情報収集を進めている。

同社の社長は取材に、元本を保証して配当を約束した点で出資法に違反する可能性があることを認めた。 配当ができなくなった理由については「事業が頓挫したため」と説明。 「出資者には分割で返済したい」としたが、関係者によると、返金のめどは立っていないという。

この会社は、オネスティジャパンインセプション。 出資者の話や登記によると、2009 年 11 月に設立され、昨年 9 月ごろから全国各地でセミナーを開催。 「カンボジア政府公認でホテル経営やバス運行事業を行う。 出資額は元本保証する。」、「年利は 100% で、出資を増やしたり知人を紹介したりすれば配当はさらに増える。」などと言って出資を募っていたという。

設立当初から同社の内情を知るという男性 (37) は取材に対し、「全国約 4 千人から 30 億円を集めたが、多くの金が使途不明になっている」と証言。 「出資者の多くは口コミで集まったお年寄りで、老後の資金をつぎ込んだ人も多い。 当初から自転車操業で、事業実態はないようなものだ。」と話した。

一方、社長は「集めた金は 3 千人弱から 17 億円ぐらいだ」と説明。 「初期には集めた金の大半をカンボジアでコーヒー農園の買収事業などに投資していた。 だが仲介者からだまされるなどして頓挫した。」とし、ホテル経営やバス運行も含め事業の多くは進んでいないと答えた。 ただ「だますつもりはなかった。」と話している。 (asahi = 12-27-11)

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投資トラブルで一斉告訴へ 購入者 40 人

社債や未公開株での投資の誘いに応じたら現金をだまし取られたなどとして、全国の購入者約 40 人が 14 日、貿易業などを名乗る複数の業者とその関係者約 140 人を詐欺や出資法違反などの容疑で各都道府県警に一斉に告訴する。 支援する弁護士グループによると被害額は 8 億円を超える。

社債などの購入をめぐるトラブルに歯止めがかからないことを受け、弁護士でつくる「先物取引被害全国研究会(代表幹事・山崎省吾弁護士 = 兵庫県弁護士会)」がトラブル事例を集めた。 所在不明の業者が多く、捜査による解明が必要として、警視庁や大阪、愛知両府県警など 20 を超える都道府県警への一斉告訴に踏み切る。 近く、取り締まりの厳正化を警察庁に申し入れる方針だ。

告訴するのは北海道から九州までの 60 - 80 代の男女約 40 人。 2008 年 5 月 - 今年 10 月ごろ、社債を買ってもすぐに配当が止まるなどし、元本も戻らないなど計約 40 件の被害があったと主張している。 支払った金額は 1 人あたり数百万 - 数千万円が多いが、1 億円を超えるケースもあるという。

国民生活センターによると、未公開株と社債を巡る相談件数は 07 年度に 2,600 件を超え、昨年度は 1 万 4 千件に達した。 今年度は今月 13 日までに 1 万 397 件で、前年同期(8,020 件)の約 1.3 倍。 被害者の 8 割が 60 歳以上だ。 (二階堂祐介、asahi = 12-14-11)

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「権利商法」横行 クーリングオフ対象外、被害拡大

老人ホーム利用権、新酒購入権 - -。 商品そのものではなく、「権利」の売買をうたった悪質商法の消費者被害が相次いでいる。 この 1 年間で急速に広まり、消費者庁などが確認しただけで、被害額は約 30 億円に達することがわかった。 消費者庁と国民生活センターが分析したのは、▽ 温泉つき老人ホームの利用権、▽ 水資源の権利、▽ 鉱物の採掘権の売買をうたう権利商法。 全国の消費生活センターに特に相談が目立った三つの権利商法だ。

初めての相談は昨年 7 月。 2010 年は 119 件だった相談が、今年は 9 月までで 1,995 件と激増した。 9 月までの被害総額は 29 億 8,955 万円にのぼっている。 背景には、特定商取引法に抜け穴があることが指摘されている。 クーリングオフ(契約解除)による解約が、「権利」の売買では一部を除きできないためだ。 (asahi = 11-12-11)