中国は経済だけの超大国 購買力平価換算 GDP

中国の台頭ぶりを懸念する者にとって、今週発表された経済データはほとんど慰めにもならない。 世界銀行の国際比較プログラムは最新の購買力平価換算の国内総生産 (GDP) で、中国が年内に米国を抜いて世界最大の経済大国になる見通しを示した。 多くのエコノミストは中国が米国を抜くのは 2019 年になるとみていたが、モノやサービスのコストで換算することで、両国の差は大幅に縮まった。 こうした変化は、1870 年代から続く米国が世界経済を支配する時代がほとんど終わったことを示している。

中国の人々は本当に豊かなのか

中国の奇跡的な経済成長には驚くばかりだ。 00 年以降、年間成長率は平均で 10% を維持し、GDP の水準は 4 倍に跳ね上がった。 こうした急成長により、中国が低成長の米国を追い抜くのは確実になった。 中国は低価格品の世界的な供給国で、昨年の貿易額は米国を抜き首位に立った。 人民元は世界で 7 番目に使われている通貨で、米国の経常収支は年 5,000 億ドル弱の赤字なのに対し、中国は 2,000 億ドルの黒字となっている。

米国民は意気消沈する前に、現状を大局的に捉えるべきだ。 GDP は一国の価値の尺度として一定の効果しかない。 中国がなお発展途上国であることは間違いなく、1 人当たり GDP では米国の方が 5 倍豊かだ。 名目 GDP では公衆衛生、教育、環境でほとんど差がないものの、国連の人間開発指数では中国は 186 カ国中 101 位にとどまるのに対し、米国は 3 位につけている。

経済的成功はほかの指標に照らして判断しなくてはならない。 生産性や投資額、グローバル企業が国内にどれだけ本社を置いているかに加え、大学や科学研究機関の規模や能力も重要だ。 この点では、中国は米国などの先進国に見劣りしている。 米国は世界の実質的な準備通貨を管理している。 中国は対外債務の大半をドルで保有しているため、ドルを印刷できるということが米国の究極の保険になっている。

さらに、国のランキングでは経済以外の点も踏まえて判断しなくてはならない。 最近の状況が示すように、軍事力はなお国力の源といえる。 中国は大規模な軍備増強を進めているが、米国の年間の防衛予算は中国の 3 倍に上る。 中国は世界最大の軍を保有するが、米国の装備の蓄積と技術力は別次元だ。

中国が米国と真に肩を並べたといえるまでに、乗り越えなくてはならないことは多い。 経済的な発展だけでなく、世界での自国の立場も理解しなくてはならない。 これには制度の発展や同盟の深化が必要だが、領土や国境で強硬姿勢を強めていては、こうした状況は生み出せない。

世界への貢献が小さい超大国

中国は天然資源と技術力をほかの国に頼っているが、世界的な枠組みでの役割は比較的小さい。 米国と欧州連合 (EU) は依然として国際通貨基金 (IMF)、世界銀行、世界貿易機関 (WTO) を支配している。 こうした不均衡に対処する改革が遅れているのは確かだが、中国は国力が増した分だけ国際基準も受け入れなくてはならない。 中国は自由が制限される一党独裁の国である点も問題だ。 これがほかの国が関与に二の足を踏む理由となっている。

中国という竜が翼を広げつつあることは否めない。 最近では経済成長のペースが変わったと報じられているが、それでもなお不完全な超大国にすぎない。 この大国の台頭をかじ取りすることが、現世代と次世代の責務となる。 だが今のところ、多くの尺度に基づけば、米国に追いつくにはほど遠い。 (Editorial of The Financial Times = 5-2-14)


中国の経済規模は本当に米国を追い越すのか?

中国の経済規模が今年、少なくとも 1 つの基準で米国を追い抜く見通しだ。 4 月 30 日にあちこちでこう報じられた。 この見出しに驚く人は多いだろう。 これまで中国の経済規模が米国を上回るのは 2020 年代か、それ以降だと言われていた。 世界銀行と連携して統計事業を行っている国際比較プログラム (ICP) は先月 30 日、購買力平価換算の国内総生産 (GDP) に関する新しいデータを発表した。 そのデータは、中国の経済規模がこれまで考えられていたよりも大きいことを示している。

しかし、これは決して意外なことではない。 各国の経済力を示す通常の GDP ランキングは、GDP を市場の為替レートで米ドルに換算したデータをまとめたものだ。 世銀のデータによると、12 年の米国の GDP は 16 兆ドル(約 1,640 兆円)強と中国の GDP の 2 倍。 この基準では中国が 10 年かそこらで米国を追い抜くことはありそうにない。

一部エコノミストは、この比較方法は為替レートの変動を加味していないため、誤解を招く恐れがあると指摘する。 米財務省が考えるように人民元が過小評価されているとすれば、米ドル換算の GDP は実際の経済規模を控え目にみせている可能性がある。 だとすれば、一国の通貨が対ドルで 10% 下落するからと言って、相対的な経済規模が 10% 縮小するわけではない。

そこで ICP が比較基準として採用したのが購買力平価だ。 購買力平価は国ごとに異なる財とサービスのコストを調整するもので、同じ商品群をどの国で買っても同じ値段になるよう調整するための為替レート。 非貿易財を中心に、コストは先進国のほうがはるかに高いため、購買力平価換算の GDP を比較した場合、新興国の経済規模は拡大する傾向がある。 基本的に新興諸国では同じ金額で購入できるものが多いためだ。

購買力平価は新興国の隠れた優位性を明確化するのに役に立つ。 例えば、中国政府が人民軍兵士に支払う賃金の方が米政府が米軍兵士に支払う賃金よりもはるかに安い。 また、貧しい国を訪れた裕福な国の観光客は本能的に購買力平価について考えるものだ。 夕食の支払いをしたときに「何と、ここでは同じ金額でこんなに食べられるのか」と思ったことはあるだろう。

IMF のアジア太平洋部門のデピュティ・ディレクター、Markus Rodlauer 氏は電子メールで「購買力平価換算 GDP を使用するメリットは各国の暮らし向きをより正確に反映できることだ。 また、購買力平価は比較的安定しているため、(国際比較などに使用される)ドル換算のGDP よりはさほど変動しない。」と指摘した。

しかし、購買力平価にも大きな限界がある。 中国はミサイルや船舶、iPhone (アイフォーン)、ドイツ製自動車などを生産者物価指数 (PPI) に用いる通貨では購入できず、広く使用されている為替レートで支払わなければならない。 各国の経済力を比較するときに、為替レート換算値の方が重要視されているのはそのためだ。

入手可能な最新の数字である ICP の 11 年の購買力平価換算データによると、米国の購買力平価換算 GDP は依然世界 1 位だ。 しかし、中国の購買力平価換算 GDP は 11 年の米国の購買力平価換算 GDP の 87% と、前回調査が行われた 05 年の同 43% から大幅に上昇している。

購買力平価換算 GDP で中国は今年米国を追い抜くという予測は、中国経済が過去 3 年のように比較的急速に成長することを前提としている。 これらはいずれも驚くべきことではない。 中国の GDP が 10 年に日本を抜いて世界第 2 位になったときの方がはるかに大騒ぎされた。 しかし、購買力平価換算では、10 年前に既にその節目を迎えている。 ICP のデータでは、今日世界第 3 位の経済力を誇るのはインドだが、名目 GDP ではインドは 10 位に過ぎない。

中国経済の地位が世界水準で上昇しているのは間違いない。 それは何年も前から続いている。 中国をはじめとする新興国が IMF などの国際金融機関でより大きな意思決定権を得るために、購買力平価データを利用して欧米に迫るのは必至だ。

しかし、どのデータもそうだが、購買力平価換算データを慎重に扱うべき理由がある。 1 つは、それが多くの国の複数の商品を対象にした複雑な調査に基づく統計で構成されたものだということだ。 IMF はこの点について統計上の誤差が生じる可能性を指摘している。 また、ICP も 1 日に発表した報告書で、このデータを経済規模の異なる国の比較に使用した場合、プラスマイナス 15% の許容誤差が生じる可能性があるとしている。

一部エコノミストは、市場為替レートを使用した名目 GDP の方が、各国の人々や企業の国際市場での購買力をより正確に測定できるとみている。 そこで問題になってくるのが各国の相対人口だ。 多くの意味で、人口 13 億の中国がその約 4 分の 1 の人口の米国に追いつきつつあることは意外ではない。

元 IMF 職員で現在はムーディーズ・インベスターズ・サービスの香港在勤エコノミストのスティーブン・シュワルツ氏は「人口が多い国ほど生産高が高いと思いがちだ」とし、「1 人当たりの生産高で言えば、中国は依然非常に貧しい」と指摘した。 確かにそうだ。 1 人当たりの購買力平価換算 GDP では中国は 99 位で、インドは 127 位。 一方、米国は 12 位だ。 これは中国やインドよりも生産性がはるかに高く、裕福であることを示している。 (The Wall Sreet Journal = 5-1-14)


中国の購買力基準の GDP が米を追い抜く見通し 米英が分析

米国が今年、世界最大経済大国の地位を、中国に明け渡すことになるだろう、という見方が出ている。 1872 年、米国が英国を追い越し、世界トップに躍り出てから 142 年ぶりのことだ。 中国による米国追越は、経済専門家の大半が見込んでいた 2019 年より、5 年繰り上げられた。

国家間経済力比較研究で、最も権威のある世界銀行・国際比較プログラム (ICP) は 30 日、「購買力と実際支出から見た世界経済」と題した要約報告書で、11 年基準の中国国内総生産 (GDP) が、米国の 86.9% にまで迫っていると発表した。 初めて調査が行われた 05 年の 43.1% に比べ、6 年間で 2 倍に膨らんだ急激な上昇振りだ。 ICP は、各国の生活水準を比較するため、為替や物価水準を考慮し、実際稼いだ所得でどれほど消費ができるかを表す購買力評価 (PPP) 基準の GDP を活用した。

英紙フィナンシャルタイムスは、専門家の話として、今年、中国がこの基準で米国を追い越すだろうと分析した。 その根拠は、国際通貨基金 (IMF) がまとめた両国の GDP 成長率の推移だ。 11 年 - 14 年の予測で、米国は 4 年間 7.6% の成長に止まるのに、中国は、24.0% の成長率を見せるだろうと予想し、今年、米国を上回ることが確実と見られると見込んだ。

韓国は、この基準で世界経済大国 14 位についた。 インドは日本を抜いて 3 位につき、インドネシアは 10 位、メキシコは 12 位についた。 (韓国・中央日報 = 5-1-14)