米中摩擦、どうなる iPhone 中国工員「転職探る」

米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」が、米中摩擦の激化で苦境に陥っている。 高価格化などで販売が失速する中、アップルは米トランプ政権が進める対中制裁関税「第 4 弾」からの除外を要望。 日本企業が深く関わるサプライチェーン(部品供給網)も揺れている。

「国際競争力に重くのしかかる。」 米政府のサイトで 20 日公開されたアップルの意見書には切実な訴えが並んだ。 第 4 弾では、中国からの 3 千億ドル(約 33 兆円)分の輸入品に対し、最大 25% の追加関税を課す。 大半が中国で組み立てられている iPhone は直撃を受ける見込みで、アップルは意見書で「米経済への貢献が損なわれる」などとして対象からの除外を切望した。

iPhone は中国などで売り上げが低迷しており、昨年 10 - 12 月期の売上高は前年比 15% 減、今年 1 - 3 月期も同 17% 減と大きく落ち込んだ。 米市場では第 4 弾への影響度合いに関心が集まっており、クレディ・スイスは、北米での平均価格の 13% 相当のコスト増と試算。 JP モルガンは販売価格を 14% 引き上げる必要が出る、と分析した。 だが、最上位機種はいま 1 千ドル(約 10 万 7 千円)を超え、値上げは消費者離れを招きかねない。 JP モルガンはコスト増を「自社で吸収する可能性が高い」とみるものの、そうすると1株当たりの利益が 14% 減る可能性があるという。

そんな中、米紙ウォールストリート・ジャーナルは 20 日、アップルが東南アジアに生産拠点を移転する検討を始めたと報じた。 中国リスクの回避にはつながるが、実現するには数年がかりになるとみられる。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦)

「アップル依存」脱却探る日本メーカー

世界に広がるサプライチェーンも揺れている。 とりわけ「アップル依存」の状態にある日本の電子機器メーカーは危機感を強める。 経営再建を急ぐ液晶大手ジャパンディスプレイ (JDI) は、直近の売上高の 6 割をアップルが占める。 アップルからの前受け金で約 1,700 億円を投じた白山工場(石川県)は、iPhone の生産減などで 7 - 9 月の稼働停止を強いられた。 月崎義幸社長は 18 日の株主総会で、「スマホ依存の事業構造から脱却しないといけない」と話した。

液晶パネルのシャープや、カメラに使う半導体画像センサーを供給しているとされるソニーも、業績目標や予想を達成できなかった。 シャープの戴正呉会長兼社長は「特定顧客の比率が高すぎる」と課題を認めた。

中国や日本、韓国などでつくられた部品は、大半は中国工場で組み立てられる。 その 7 割を担うとされる台湾大手の鴻海精密工業は、直近の連結営業利益が前年同期から 3 割落ち込んだ。 郭台銘(テリー・ゴウ)会長は 21 日の会見で、アップル製品の拠点が「台湾に来る可能性がある」と供給網の再編成にも言及。 ただ、中国は供給網の要で、鴻海だけで 100 万人規模の生産態勢を組んでおり、中国を離れれば製造リスクに直結しかねない。 (小出大貴、福山亜希、福田直之 = 新北)

日本市場にも逆風の予感

シェア 5 割を握る圧倒的な強さを誇った日本市場でも、逆風が吹きそうだ。 日本では税込み 12 万 - 18 万円ほどする最新機種「XS」など高価格帯が売れてきた。 通信契約を条件に端末代金を大幅に割り引く「セット販売」で、最大で半額になってきたからだ。 ところが、この秋からの料金制度の見直しで「セット販売」は禁止になるうえ、値引きも最大 2 万円までしか認められなくなる。 高価なスマホを中心に買い控えが起きると予想されており、専門家からは「一番打撃を受けやすいのはシェアが大きい IPhone 」との指摘が出ている。 (井上亮)

「iPhone つくっていると言いにくい」

中国・江蘇省昆山市の「経済開発区」には、iPhne の工場が集まる。 その一つ「世碩電子」は 24 時間態勢で稼働してきた。 働き始めて 1 年になる男性 (26) は、夜 8 時から朝 8 時までの「夜班」の勤務を担当している。 月給は約 4 千元だが、この 2 カ月ほど残業時間が抑制され、「5、600 元減った」と言う。 会社からは注文が減ったためと説明があった。 米中貿易摩擦については「新聞もニュースも見ないので分からない」というが、残業代が今後も減るようなら転職も考えるという。 「iPhone 工場なら安定していると思って就職したが、最近は至る所で反米の話を聞く。 周囲に仕事で iPhoe をつくっているとは言いにくい。」と話す。

構内には工員募集を呼びかける垂れ幕がかかり、紹介者には報奨金 200 元が支給されるとも書かれている。 安徽省から仕事を求めて昆山に来た男性 (24) は「辞める人が多いから、新規採用が必要になる。 周りにも、残業代が減り、もっと良い条件の工場に移ろうかと話す仲間は多い。」と話す。 米国の新たな対中追加関税に不安を感じており、「業績が悪くなり、突然リストラされて賃金が未払いになるなんてばかげている。 状況を見ながら、転職の時期を探る」と語った。 (昆山 = 宮嶋加菜子、asahi = 6-22-19)


米の視線はすでに 6G 5G で劣勢、対中巻き返しへ

高速通信を可能にする第 5 世代 (5G) 移動通信システムの商用サービスが米国や韓国で始まった。 本格的な通信網整備はこれからだが、通信機器市場では中国の華為技術(ファーウェイ)が優勢で、米企業の影は薄い。 トランプ米政権は安全保障リスクを理由に、中国製を自国や友好国から締め出す構えだ。 一方、トランプ米大統領は早くも第 6 世代 (6G) に言及。 6G を見据えた研究も促し、5G から一足飛びで次世代戦略に踏み出す動きもみせている。

「5G の競争に米国は勝たなければならない。」 トランプ米大統領は 4 月 12 日、ホワイトハウスで開いた 5G のイベントで、そう力を込めた。 同席した米連邦通信委員会 (FCC) のパイ委員長は、全米で 5G 網を整備するための 204 億ドル(約 2 兆 3 千億円)規模の基金を設けると発表。 米政府として、中国とのハイテク覇権争いで焦点となっている 5G をめぐり、国家ぐるみで主導権の掌握を目指す中国に対抗する姿勢を示した。

米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズは 4 月 3 日、5G 対応のスマートフォン向けのサービスを一部都市で開始していた。 移動通信の分野では、おおむね 10 年ごとに技術革新が起きるとされる。 現在、主流の第 4 世代 (4G) で先行した米国では、アップルやグーグルといった IT 大手が巨大な富を得た。 だが、5G では華為や中国の同業、中興通訊 (ZTE) が存在感を示し、米国優位の風景は一変する。

米戦略国際問題研究所 (CSIS) のジェームス・ルイス氏によると、5G の基地局などの RAN と呼ばれる設備で、華為の世界シェアは 31% と首位。 これに 29% のエリクソン(スウェーデン)や 23% のノキア(フィンランド)が続く。 コアネットワークと呼ばれる制御系の基幹設備でも華為は上位に位置し、米企業は端末側などの一部機器でアップルやシスコがシェア上位に顔を出す程度だ。

5G の知的財産 (IP) でも中国勢が優位に立つ。 独データ分析会社 IP リティックスの調査では、技術標準(規格)に関する標準必須特許で、華為はトップの 1,554 件を保有。 1,427 件のノキアが 2 位に付け、3 - 4 位がサムスン電子など韓国勢。5 位にも中国の ZTE が入った。 同社の統計によると、華為は規格を策定する国際会議に同業者の中で最大規模の人員を送り込んできた。 華為は自社の特許を使わざるを得ない他社から利用料収入が期待できるため、国際会議の場で特許取得を働きかけてきたとみられる。

トランプ米政権は国務省や国防総省を中心に、中国製を使った 5G ネットワークから情報漏れの危険があるとして、同盟国や友好国に中国製を採用しないよう求めている。 5G 網整備で華為の製品などを導入すれば、同盟国であっても機密情報を共有しない厳しい姿勢もみせている。 ただ、英国やドイツが中国製の排除に同調しておらず、米政府による中国包囲網の構築は思うように進んでいない。 米国が情報漏れの「証拠を示していない(英通信会社首脳)」との批判や、「中国製を排除しなくてもリスク管理は可能(英情報関係機関)」との認識が背景にある。

こうした国際情勢を踏まえ、米政府が近く、5G 網の脆弱性を詳細に分析した報告書を公表するとの観測も、米ワシントンの情報通信関係筋で浮上している。 そんな中、トランプ大統領の口から、早くも第 6 世代 (6G) の開発を促すような言葉が出ている。 「今の話題は 5G だが、その前は『4G に乗り遅れるな』といっていた。 いずれ『ナンバー 6』が話題になる。 米国は何にしたってリーダーになりたい。」

トランプ氏は 4 月 12 日のイベントで、そうも語った。 同氏は 2 月下旬にもツイッターで、「米国で 5G を、いや 6G も、なるべく早く実現したい。 米企業は取り組みを強化せねばならない。」と述べた。 こうしたトランプ氏の発言に前後して、FCC は 3 月中旬、将来的に 6G に利用される可能性がある「テラヘルツ波」と呼ばれる周波数帯を、研究向けに開放することを決定し、利用規則を発表した。

これで研究者らは、電波を正式に使うことができるようになる。 5G の開発に取り組んだニューヨーク大学のテッド・ラパポート教授は「6G の幕開けとなるかもしれない重要で歴史的な一歩だ」と称賛した。 5G 網の整備は今後本格化し、米国での投資額は 2,750 億ドル(約 30 兆円超)になるとの試算もある。 米政府は、巨大な国内市場でまず中国製を締め出す方向だが、米政府周辺では、昨年初めから、5G ネットワークの「国有化論」が浮かんでは消え、通信関係者の関心を集めている。

こうした議論は、中国勢に押され気味の米国の危機感が表れているようにも映る。 米国が、旗色が悪い 5G 時代を早々に終わらせ、6G で主導権を奪回するシナリオを描くとしても不思議ではない。 米国の専門家からも、6G 時代を見据えた国家戦略を求める声が出ている。 ハイテクと軍事技術の動向に詳しいバージニア工科大学のチャールズ・クランシー教授は、米首都ワシントンでのシンポジウムで、「米国は 6G で競争の舞台に戻らなければならない。 連邦政府の資金支援を背景に大規模な(6G の)開発計画を国が主導していくことが求められている」と指摘している。 (ワシントン 塩原永久、sankei = 5-3-19)


iPhone 落ち込み続く 1 - 3 月期、前年比 17% 減

米アップルが 4 月 30 日発表した今年 1 - 3 月期の決算で、看板商品の iPhone の売上高が前年同期比 17% 減の 310 億 5,100 万ドル(約 3 兆 4,600 億円)に落ち込んだ。 昨年 10 - 12 月期に同 15% 減だったのに続き、2 期連続で大きく減少した。 ただ、アップルは 3 月終わりから、中国などでの売り上げが改善していると強調している。 1 - 3 月期決算は、iPhone の販売落ち込みが響き、売上高は同 5% 減の 580 億 1,500 万ドル、純利益は同 16% 減の 115 億 6,100 万ドルで、2 四半期連続で減収減益となった。

地域別に見ると、売り上げの落ち込みが大きかったのは中華圏で、前年比 22% 減の 102 億 1,800 万ドルだった。 ただ、同社のティム・クック最高経営責任者 (CEO) は 30 日の電話会見で、米中の貿易摩擦が和らいでいることに加え、同社が中国で行っている販促策や、中国政府が景気刺激のために 4 月から付加価値税を 16% から 13% に引き下げた影響で、中国での売り上げが上向いていると強調した。 中国国内の需要好転を背景に、同社は 4 - 6 月期の売上高の見通しを 525 億 - 545 億ドルと説明。 事前の市場予測を上回ったことから、アップル株は 30 日の時間外取引で一時、5% 値を上げた。 (サンノゼ = 尾形聡彦、asahi = 5-1-19)


スマートフォン出荷が激減、事業撤退もあり得る「3 社」の苦境

減益、減益、減益である。 スマートフォンメーカーが苦境に立たされている。 業界の旗手であるアップルやサムスンですら、もはや無関係ではない。 2018 年第 4 四半期の売り上げが急落したことを、両社とも明らかにしている。 韓国の巨大メーカーであるサムスン電子は、2018 年第 4 四半期の営業利益を 10 兆 8,000 億ウォン(約 1 兆 520 億円)としている。 これは前年同期の売り上げを 28.7 パーセント下回る数字だ。 同期の売上高は 59 兆ウォン(約 5 兆 7,500 億円)で、これも前年の数字から 10.6 パーセント減少している。

アップルの最高経営責任者 (CEO) であるティム・クックは、投資家に宛てた文書のなかで、同社の 2019 年度第 1 四半期の業績予想を 90 億ドル(約 984 億円)も下方修正することを明らかにした。 アップルは、中国とトランプ大統領の間で繰り広げられている貿易戦争を、その一因として挙げている。 多くのメーカーのスマートフォンに採用されている半導体やディスプレイを生産しているサムスンは、業界全体の低迷を指摘している。

しかし、本当の問題はアップルとサムスンが苦戦していることではない。 韓国の巨大企業である LG エレクトロニクスは、ラスヴェガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、巻き取り式の有機 EL テレビを発表してメディアをにぎわせた(実際、かなり驚きの製品といえる)。 ところが、LG もまたスマートフォン部門の利益が激減したことを発表している。 その減少幅は前年同期比で 80 パーセントにもなるという。 また、ソニーや HTC のスマートフォン部門も大赤字を記録している。

低迷ぶりは数字からも明らか

こうしたスマートフォン産業の低迷ぶりを数字で見てみよう。 2015 年末、LG は 1,530 万台のスマートフォンを世界中に出荷したが、2017 年末の出荷数は 1,390 万台になった。 さらに、市場調査会社オーヴァムのアナリストであるダニエル・グリーソンによると、2018 年末の数字は 1,060 万台にまで落ちることが予想されるという。

同時期におけるソニーの出荷台数は、2015 年末には 1,530 万台であったのが 2017 年末には 400 万台になり、昨年 9 月 - 12 月には 190 万台にまで激減している。 最後に HTC も見てみると、2015 年末の 197 万台から 2017 年末には 98 万台、そして 2018 年の第 4 四半期には 25 万台にまでガタ落ちしている。 なかなか厳しい状況だ。

こうしたスマートフォンメーカーは、もう来るところまで来てしまったのだろうか? 「数年前から言っていることですが、ソニー、LG、HTC はスマートフォン市場から撤退するべきです」と、グリーソンは言う。 「HTC は昨年のグーグルによるスマートフォン部門の部分買収に伴って市場から撤退すると思っていましたが、なぜかスマートフォンの開発を続けています。 LG とソニーはそれぞれ、ディスプレイやカメラの技術を世に示すための手段として、スマートフォン事業をうまく利用するようになりました。」

「5G」に賭けるソニー

もちろん 3 社すべてではないにせよ、こうした苦戦している企業が人気のスマートフォンを開発・販売して、明日にも状況を一変させる可能性がないとは言えない。 しかしグリーソンいわく、これらの企業にはそれを成功させるだけのマーケティング予算がないという。 たとえ驚異的な新機能を備えたスマートフォンを開発し、不意に世間を驚かせることがあったとしても、継続的にそういった新製品をつくり続けられる見込みはさらに薄い。

ソニーは、まもなく実用化される次世代通信規格「5G」に対応することで復活を果たしたい構えだ。 同社は『WIRED』 UK 版の取材に対して次のように回答している。 「スマートフォン事業に力を入れ、市場を牽引するような技術の開発に心血を注いでいます。 中長期的に見れば、新しい製品やサーヴィスを提供することによって、スマートフォン事業で継続的な利益を上げられるようになる見込みがあると考えています。」

ソニーはスマートフォンだけでなく、そのほかのデヴァイスについても 5G に対応させるつもりだという。 だが当然ながら、スマートフォン事業でこれ以上の利益を上げられないと悟ったら、その時点でスマートフォンの開発をやめなければならない。

HTC は VR に注力?

グーグルは 2018 年に HTC のスマートフォン開発チームの一部を買収した。 その一方で HTC では、盗聴や外部からの監視に対するセキュリティ性が高いクリプトフォンと呼ばれるスマートフォンの開発という、これまでとは異なる取り組みを始めている。 モバイルアナリストのカロリーナ・ミラネシによれば、この事業がすでに軌道に乗りだしている。 「HTC は仮想現実 (VR) 事業が大きな利益を出し始めれば、そちらに専念することでしょう」と、ミラネシは指摘する。

ところが、ソニーの場合はスマートフォン事業が一部の市場では成果を上げているため、こうした決断が他社以上に難しいものになっているとミラネシは言う。 「つまり、ハードウェアとソフトウェアの両方を視野に入れたうえで、会社全体としてどの方向にかじを取っていくのかということが問題なのです。」 『WIRED』 UK 版は LG と HTC にも、将来のビジネスモデルとスマートフォン事業の展望について質問したが、この記事の公開時点では回答を得られていない。

高性能化というジレンマ

結局のところ、何が起きているのだろうか? 世界的に見ても、スマートフォンの進化が限界に来ているわけではない。 にもかかわらず、市場の支配者であるアップルやサムスンの業績は、この数年で確実に頭打ちになっている。 アップルは「iPhone」の価格をつり上げ、「信者」に頼ることでなんとかごまかしてきた。 しかし、iPhone の販売台数は 3 年前(2015 年)の 2 億 3,100 万台がピークだったというのが現実だ。 ピーク後、販売台数は初めて下落に転じ、約 2 億 1,500 万台となった。 現在もまた販売台数は減少傾向にある。

ひとつ重要な問題がある。 それは、現在のスマートフォン技術のレヴェルがかなり高いということだ。 イノヴェイションは日々生まれている。 しかし、2 年前に購入した製品がいまも完璧に動作するなら、大枚をはたいてまで機能的にそこまで変わらない製品を買おうという気持ちにはなりにくい。 たとえそれが最新機種だとしてもである。

スマートフォンが日進月歩の進化を遂げていた 5 年前と比べれば、消費者の購買意欲はずいぶんと低くなっている。 グリーソンはこう指摘する。 「アップルは品質を上げることに全力で取り組んできましたが、この姿勢はもろ刃の剣でした。 品質が向上すれば、ユーザーは同じ機種を長く使えるようになってしまうためです。」

急成長する中国メーカーの存在

サムスンもスマートフォンの販売台数は 2015 年から減少の一途をたどっている。 同社はアップル同様に、製品価格の引き上げやミドルクラス製品の販売戦略を強化することで、現状に対応している。 しかし、サムスンはアップルとは異なる状況に直面している。 この戦略をとることで、ファーウェイ(華為技術)や ZTE (中興通訊)、ワンプラス(OnePlus、万普拉斯)、シャオミ(小米科技)などの中国ブランドに対する競争力を落としてしまっているのだ。

中国の話に移ろう。 ここには米中間の貿易戦争も絡んでくる。 アップルは、最近の業績の低迷は中国に一因があるとしている。 中国を主な市場としていないサムスンにとってはそれほど大きな問題ではないにせよ、確かにアップルにとって両国の摩擦は重大な問題である。 中国はアップルにとって最大の市場のひとつで、マーケットシェアの 15 - 20 パーセントを占めている。 2018 年第 3 四半期、アップルの中国におけるシェアはファーウェイ、OPPO (広東欧珀移動通信)、VIVO (維沃移動通信)、シャオミに次ぐ第 5 位だった。

しかし、これらの中国メーカーはアップルとは対照的に、いままさにマーケットシェアを伸ばしているところだ。 「実はこれらのメーカーは、中国市場において小さなメーカーのシェアを奪いながら存在感を高めているのです」と、IDC のアナリストであるキランジート・カウルは言う。

ファーウェイが中価格帯で存在感

確かに、いまや中国系スマートフォンメーカーは注目に値する存在だ。 中国の消費者から見ても、例の貿易戦争でこれらのメーカーの勢力は増している。 昨年は米政府が ZTE に対して取引禁止措置をとり、最近はファーウェイの最高財務責任者 (CFO) が米国の令状によりカナダで逮捕された。 グリーソンによれば、こうした状況を受けて中国の消費者の多くは、iPhone などの米国製品に対する不買運動を呼びかけるなど、排外主義的な反応を示しているという。

ファーウェイの製品には、中国政府が情報を得るためのバックドア(セキュリティ上の抜け道)が仕込まれているという疑惑がかけられている。 欧州市場の多くで、この疑惑を口実にファーウェイに圧力がかけられているが、同社はそれでもなお強い競争力を示してきた。

ファーウェイは Mate シリーズや P シリーズといったスマートフォンの最新機種を展開するにあたり、特徴的な機能を搭載したり積極的なマーケティングを行ったりすることで、市場のヴォリュームゾーンにおける勢力の拡大を狙っている。 「iPhone の価格が上がることで 600 - 800 ドル(約 6 万 5,000 - 8 万 8,000 円)の価格帯に空きができ、そこにファーウェイがうまく潜りこんだのです」と、IDC のカウルは言う。

結果として、ほとんどの高級スマートフォンメーカーが苦境に立たされている。 ここ数年、LG やソニー、HTC の製品はすべて赤字か、赤字ではなくともまったく利益を伸ばせずに終わっている。 何らかの技術的革新か、業界の革命でも起こらない限り、この状況を覆すのはかなり厳しいだろう。 また IDC のカウルによれば、5G も助けにはなりそうもない。 5G 導入の最初ハードルを越えるには、通信技術をもつクアルコムとの提携が不可欠だからだ。 米国がワイヤレス通信インフラへの投資で大きな後れをとっていることを考慮しても、中国メーカーの躍進は止まりそうもない。 (Katia Moskvitch、Wired = 1-26-19)



T モバイル US の買収断念 仏通信会社イリアッド

フランスの通信会社イリアッドは 13 日、米携帯電話 4 位 T モバイル US の買収計画を断念すると発表した。 T モバイル側がイリアッドが示した買収提案を拒否したことが理由という。 T モバイルをめぐっては、ソフトバンク傘下で米携帯電話 3 位のスプリントも買収を試みたが、規制当局が難色を示したことを受け、8 月上旬に事実上断念していた。 イリアッドは 7 月下旬に T モバイルに買収提案し、一時はスプリントとの間で買収合戦になる可能性もあった。 今回の断念により、米携帯業界の再編の動きはひとまず収まった。 (ニューヨーク = 畑中徹、asahi = 10-14-14)


ソフトバンク傘下の米社 T モバイル買収断念

【ニューヨーク】 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)は 5 日、関係者の話として、ソフトバンク子会社の米携帯電話 3 位スプリントが、同 4 位 T モバイル US の買収を断念すると報じた。 業界寡占化が進むことを恐れる米連邦通信委員会 (FCC) や司法省が難色を示しており、買収の承認が難しいと判断したという。

WSJ によると、5 日の役員会で買収断念を決定した。 ダン・ヘッセ最高経営責任者 (CEO) が交代するという。 スプリントは通信ネットワークの改修を進めており、短期的な戦略として単独での事業継続に傾いているとしている。 ただ、関係者によると将来的に合併を模索する可能性は残されているという。 スプリントの広報担当者は共同通信の取材に対し、WSJ の報道について「コメントはない」と答えた。

T モバイルをめぐってはフランスの新興通信会社イリアドが 7 月 31 日、ソフトバンクに対抗し、総額 150 億ドル(約 1 兆 5,400 億円)で買収を提案したと発表。 WSJ によると T モバイルは提案を拒否したが、ソフトバンク側の断念を受けてイリアドが条件を引き上げて買収を目指すのかが焦点となる。 (kyodo = 8-6-14)


グーグル最高事業責任者がソフトバンクに 孫社長を補佐

ソフトバンクは 18 日、米グーグルのニケシュ・アローラ最高事業責任者を 10 月に幹部として迎えると発表した。 ソフトバンク本体の「バイスチェアマン」の肩書で、孫正義社長を補佐する。 ソフトバンクが米国につくる子会社の最高経営責任者 (CEO) にも就く。 アローラ氏は通信アナリストなどを経て 2004 年にグーグルに入った。 ソフトバンクでは海外事業の拡大などの戦略づくりに携わるという。

ソフトバンクは昨年米携帯電話 3 位のスプリントを買収し、同 4 位のTモバイル US の買収もめざす。 アローラ氏は、グーグル入社前に T モバイルの欧州事業の幹部を務めた経験もあり、買収を視野に入れた人事との見方もある。 (竹山栄太郎、asahi = 7-19-14)


ソフトバンク、T モバイル買収で大筋合意 米メディア

ソフトバンクが子会社の米携帯電話3位スプリントを通じて、同 4 位の T モバイル US を 320 億ドル(約 3 兆 3 千億円)で買収することで大筋合意に達した、と複数の米メディアが 4 日伝えた。 米当局の認可を得て買収が実現すれば、スプリントは契約件数ベースで上位 2 社に迫り、米携帯市場は 3 強の争いになる。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、ソフトバンクは T モバイルの親会社で欧州通信大手ドイツテレコムと交渉中で、早ければ 7 月にも最終合意に達するという。 ソフトバンクは昨年 7 月、総額 216 億ドルでスプリント買収を終えたばかりで、米通信業界で大型再編が続くことになる。

米携帯市場は首位のベライゾン・ワイヤレスと 2 位 AT & T が 2 強。 スプリントの契約件数は上位 2 社の約半分で、高速通信網の整備でも後れをとり、顧客流出が続いている。 ソフトバンクは、T モバイルを買収すれば高速通信網を一気に拡大でき、上位 2 社に匹敵する顧客基盤も手に入るとして交渉を進めてきた。 (デトロイト = 畑中徹、asahi = 6-5-14)


「真の競争が必要」米 T モバイル買収に意欲、ソフトバンク社長

【ワシントン = 柿内公輔】 訪米中のソフトバンクの孫正義社長は 11 日、ワシントン市内での講演後に記者団に対し、米携帯電話 4 位 T モバイルの買収について、「米国に真の競争を持ち込むため、規模の拡大が必要だ」と意欲を示した。 ソフトバンクは米同業 3 位のスプリントを昨年買収したが、一層の規模拡大で上位 2 社を追撃する構えだ。

孫社長は米携帯電話業界がベライゾン・ワイヤレスと AT & T の 2 強の寡占状態になっているとし、顧客サービスの向上のためにも、第三極の対抗勢力が必要と強調。 講演でも、「われわれの技術なら高速通信サービスを低価格で提供できる」と自信をみせた。

スプリントと T モバイルの統合をめぐっては、連邦通信委員会 (FCC) など当局が市場競争が阻害される可能性もあるとして慎重な見方も示しているが、孫社長は「政府との戦いは厳しいが、一歩一歩正面から議論を進めていく」と述べ、当局と協議の場を持ちたいとの意向を示した。 孫社長は講演に先立ち、一部米メディアの取材に対し、「(T モバイルの)買収をできればまとめたいが、まだ合意に至っていない。 段階を踏む必要がある。」と述べ、交渉を進めていることを明らかにした。 (sankei = 3-12-14)


孫氏、米国での M & A に意欲的  「3 位に甘んじるつもりはない」

【東京】 ソフトバンクのカリスマ社長、孫正義氏は、傘下の米携帯電話会社スプリントが米国市場に変革をもたらすという意欲的な目標を達成するには、同国でさらに M & A (合併・買収)を行う必要があるとの考えを示した。 孫氏はスプリントが米国の携帯電話市場をリードする AT & T とベライゾン・コミュニケーションズに大きく水をあけられ、3 位という地位にあることには満足していないとしながらも、単独でそれら大手 2 社に挑むのは「夢のまた夢」だとの認識を示した。

孫氏は 12 日、ソフトバンクの 2013 年 10 - 12 月期(第 3 四半期)決算発表後に記者団に対し、「われわれが規模の経済が出せるようになれば、もっと激しい価格競争ともっと激しいネットワーク設備競争を行って 3 位に甘んじることではなく、2 位、1 位を狙うことが可能になる」と述べ、「わたしは 3 位でいいとか、2 位でいいというふうに決して思えるタイプではない」と話した。

事情に詳しい関係者によると、スプリントによる米国第 4 位の T モバイル US の買収について、米規制当局は最近の孫氏との会合で難色を示したが、孫氏は依然あきらめていないという。 孫氏は 12 日、たとえ規制当局が反対しても T モバイル US の買収を進めるかどうかについて、具体的に言及するのを避けた。

孫氏があくまで T モバイル US の買収計画を進めるかどうかは、スプリントにとってどれだけ T モバイル US の規模が必要だと孫氏が考えているか、また T モバイル US の株式 67% を保有するドイツテレコムを、買収が実現しなかった場合に高額な違約金を支払うという条件をつけずに、買収に同意するよう説得できるかどうかにかかっている。

ソフトバンクは日本の携帯電話部門の利益を活用し、スプリントの業績改善や新たな買収の資金確保を図ろうとしている。 ソフトバンクは 30 年前にソフトウエア開発会社として創業して以来、1,300 社を超えるインターネット企業や携帯電話会社を買収してきた。 また、中国の電子商取引最大手アリババ・グループ・ホールディングの株式 36.7% も保有している。 銀行関係者によると、アリババは上場の準備を進めており、実現すればインターネット企業による最大規模の新規株式公開 (IPO) の 1 つになる公算が大きい。

ソフトバンクは 06 年に英携帯電話大手ボーダフォン・グループから苦境に陥っていた日本の携帯部門を買収。 アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」を発売し、価格プランを大幅に引き下げ、NTT ドコモと日本の端末メーカーが独占していた市場に変革を与えた。

同社はスプリントで同様の変革をもくろんでいる。 スプリントの 10 - 12 月期決算は赤字が縮小したものの、契約件数が引き続き減少した。 同社は現在、AT & T やベライゾン、大胆な料金プランを展開している T モバイルに対抗するため、米国で高速無線ネットワークを構築中だ。 ソフトバンクの株価は昨年、2 倍以上に上昇したが、年初以降はスプリントによる T モバイルの買収の行方をめぐる懸念から 15% 下落。 同期間の日経平均の下落率は 10% を上回る下げに見舞われている。

ソフトバンクの 10 - 12 月期決算は、スプリントの買収に伴うコスト増加で純利益が前年同期比 13% 減の 972 億 5,000 万円となった。 しかし、国内市場の好調ぶりやスプリントの損失が予想よりも小さかったことから、全般的な業績は予想を上回ったとアナリストは指摘した。

ソフトバンクは通期予想を示していないが、2014 年 3 月期に営業利益 1 兆円を達成するという孫氏が以前掲げた目標は、このまま行けば実現するとアナリストはみている。 スプリントの 2013 年 10 - 12 月期決算(第 4 四半期)は 10 億 4,000 万ドル(約 1,065 億円)の赤字となり、前年同期の 13 億 2,000 万円の赤字からは改善した。 定期契約件数は 6 万 9,000 件の純減。 純減幅は前期の 53 万 5,000 件や前年同期の 24 万 3,000 件に比べて小幅にとどまった。

ソフトバンクの 10 - 12 月期決算は、営業利益が 3.3% 増の 2,091 億 6,000 万円。 売上高が iPhone 5s の好調な売れ行きが追い風となり、2 倍以上増加の 1 兆 9,600 億円となった。 同社は、2014 年 3 月期第 1 四半期から昨年 4 月に採用した国際会計基準 (IFRS) に基づき開示を行うことにしたことをあらためて強調した。

モバイルゲームの売上高も第 3 四半期の業績向上に貢献した。 同社が昨年 15 億ドルでフィンランドのスーパーセルを買収したことが寄与したとみられる。 スーパーセルは戦略ゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」の開発会社で、同社は現在、少なくともアップルの iPhone とタブレット端末「iPad (アイパッド)」向けのモバイルゲームに関して世界トップの収益を上げている。 (The Wall Street Journal = 2-12-14)


ソフトバンク、米携帯 4 位買収へ 米通信市場で足場固め

【高重治香、永島学】 ソフトバンクが、米携帯電話 4 位の T モバイル US を買収する方針を固めたことが 25 日わかった。 子会社で米携帯 3 位のスプリントを通じて買収する。 実現すれば、買収後は契約件数ベースで上位 2 社に迫る。 米通信市場での足場を固め、欧州やアジアなど世界戦略を加速させたい考えだ。

買収総額は 2 兆円を超える見通し。 2014 年春以降の T モバイル株の取得を目指す。 ソフトバンクは、T モバイルの親会社で欧州通信大手ドイツテレコムと交渉を続けており、資金調達や買収の手法について社内で議論を詰めている。 ソフトバンクは 7 月、総額 216 億ドル(約 1 兆 8,000 億円)を投じてスプリントの買収を完了したばかり。 仮に T モバイルの買収ができれば、合計の携帯電話の契約件数(今年 6 月末時点)は単純計算で約 9,700 万件となる。 (asahi = 12-25-13)