経産省が製造業品質問題で対策、JIS 法改正など検討

[東京] 世耕弘成経済産業相は 22 日、閣議後の記者会見で、神戸製鋼所の製品データ改ざんなど大手製造業による一連の品質問題を受けて、日本工業規格 (JIS) を定める工業標準化法の改正の検討など、経産省として対策に乗り出す方針を明らかにした。 JIS の対象に経営管理などを追加するほか、罰金の引き上げなどを検討する。 来年 1 月召集の次期通常国会に JIS 法の改正案を提出する方向で内容を詰める。

神戸製鋼のほか、三菱マテリアル、東レによる品質データの改ざん事例が主に子会社で発生していることに対応するため、経産省は、子会社を含むグループ統治の実効性向上に関する先進事例の収集といった対策を想定している。 世耕経産相は、品質問題について「日本の産業界全体の競争力にも影響しかねない」と指摘。 業界団体による新たなガイドライン策定の動きを受けて、「経産省としては産業界の取り組みを多面的に後押しする(世耕氏)」と、対策の必要性を強調した。

法改正のほか、ビッグデータや人工知能 (AI) など IT 技術の活用を通じた、「嘘のつけない仕組み(同)」の普及を産業界に促す狙いで政策パッケージを導入する。 具体的には、業界内のサプライチェーン間のデータ共有などについて、実現可能調査に補助金(18 億円)の拠出や、一定の要件を満たす関連のシステム、センサーやロボットなどの投資を行う企業に対して税制優遇する。 (浜田健太郎、Reuters = 12-22-17)


カナダの個人が神戸製鋼を提訴、データ改ざんで「損失被った」

[東京] 神戸製鋼所は 8 日、製品データの改ざんで損失を被ったとして、カナダの個人 4 人から訴訟を提起されたと発表した。 原告は集団訴訟とすることを求めており、今後、規模が拡大する可能性がある。 訴えられたのは、神戸製鋼のほか、神鋼メタルプロダクツ、神鋼アルミ線材、コベルコマテリアル鋼管、日本高周波鋼業、神鋼鋼線工業の 100% 子会社の神鋼鋼線ステンレス。

原告は神鋼グループが製造した自動車向け製品やそれらを使用して製造された自動車の購入者で、対象製品が仕様に適合していなかったために、適合製品に比べて、不当に高い対価を支払わされて損失を被ったと主張している。 損害賠償の請求額は明らかにされていない。 訴訟は 11 月 25 日と 28 日に裁判所のウェブサイトに掲示されたが、神戸製鋼は 12 月 7 日現在で訴状を受け取っていないという。 神戸製鋼は「正式に訴状の送達を受けた場合、適切に応訴していく」とコメントしている。

子会社 JIS 認証取り消し

神戸製鋼は同日、真岡製造所(栃木県真岡市)の品質管理体制に問題があったとして、製品の品質や安全性を定めた日本工業規格 (JIS) の認証を一時停止されたと発表した。 神鋼メタルプロダクツ(福岡県北九州市)は「内容が重大」として認証を取り消された。 これにより、同社グループで JIS 認証が一時停止されたり、取り消されたりしたのは、コベルコマテリアル銅管秦野工場(神奈川県秦野市)、長府製造所アルミ押出工場(山口県下関市)を合わせ 4 拠点となる。

同社は現在進めている安全性の検証作業の進捗状況も公表。 前回(1 日)から新たに 9 件の安全性を確認した。この結果、525 社のうち、496 社で安全性が確認されたことになる。 (志田義寧、Reuters = 12-8-17)


神戸製鋼、新たに 4 件不正 鋳物・減速機・試作合金など

神戸製鋼所は 26 日、製品データ改ざん問題で、新たに 4 件の不正があったと発表した。 同社機械事業部門のコーティングサービス、グループ会社「神鋼造機」の鋳物と減速機、「コベルコ科研」の試作合金で問題があった。 すでにアルミ、銅、鉄鋼製品で不正を確認していたが、さらに広い範囲に広がった。 このほか、1 件で不正の疑いがあり、調べている。

これまで不正があった製品の出荷先である国内外の 525 社のうち、437 社 (83%) で一定の安全性を確認した。 ▽ 「顧客が安全性の確認を完了」 229 社 (44%)、▽ 「顧客が当面の問題はないと判断」 91 社 (17%)、▽ 「神鋼が高い確度で安全性が推認できると判断」 117 社 (22%) だった。 製品を直ちに回収する必要があるケースは確認されていない。

26 日付で、元福岡高検検事長の松井巌氏を委員長とする外部調査委員会を設置。 元札幌高裁長官の山崎恒氏、元検事の和田衛氏が委員に就く。 同委が今後調査を進めて、年内にも結果を示す。 また、子会社の「コベルコマテリアル銅管」の秦野工場(神奈川県)で生産している銅管が、日本工業規格 (JIS) の認証を取り消されたことも発表した。 エアコン向けなどに出荷している製品で、今後 JIS マークは表示できないが、出荷するかどうかは顧客と協議する。 (asahi = 10-26-17)


神鋼、工場で不正隠蔽 = 新たな捏造発覚 - JIS で法令違反も

神戸製鋼所は 20 日、一部工場でデータ改ざん問題の社内調査を行った際に、現場の管理職らが不正を報告せず、隠していたと発表した。 同社は社外の有識者による外部調査委員会を設置する。 鉄鋼製品のデータで新たな捏造が見つかり、安全性に関する日本工業規格 (JIS) をめぐる法令違反の可能性も浮上。 品質を軽視する企業体質が改めて浮き彫りになった。

梅原尚人副社長は東京都内で記者会見し、隠蔽について「過去の不正を全部出そうと努力している最中に起こり、申し訳ない」と陳謝。 「新たな不正が今後全くないとは言い切れない」と述べ、改ざん問題が一段と拡大する可能性を認めた。 不正隠しがあったのは、アルミ製品を生産する長府製造所(山口県下関市)。 顧客が指定した基準を外れていた不適合品を、工場が行った自主点検の際に報告しないまま出荷していた。 神鋼が一連の改ざん問題を把握した後で本社が実施した緊急監査時にも同様の隠蔽が行われたという。 関与したのは複数で、社内相談窓口への情報提供により判明した。

このほか、「厚板加工品」と呼ばれる鉄鋼製品で、厚さの測定を一部実施しなかったり、測定データの捏造が行われたりしていた。 2015 年 11 月 - 17 年 9 月の間に、取引先 1 社に対して 3,793 トンを出荷したが、神鋼は「安全性の問題はない」としている。 また JIS 認証を受けた銅管の検査データを書き換える不正行為も見つかり、認証機関の日本品質保証機構(東京)がグループ企業の工場を立ち入り調査した。 JIS 規格を定めた工業標準化法違反が確認されれば、製品の認証取り消しなどの措置に踏み切る可能性がある。 神鋼はこれまで法令違反を否定してきたが、梅原副社長は「品質保証体制が不十分という点で法令違反だ」との認識を示した。 (jiji = 10-20-17)


神戸製鋼、さらに 9 製品で不正 検査未実施・データ偽造

神戸製鋼所は 13 日、製品の検査データを改ざんするなどの不正行為について、新たに銅やアルミニウム、鉄鋼など 9 製品で問題があったことがわかったと発表した。 うち 5 製品は国内やタイ、マレーシア、中国でつくられた銅管やアルミ合金線材などで、顧客数は 216 社、出荷数量は 2,633 トン。 顧客との約束通りに製品の検査を行わず、@ 検査や試験の一部未実施、A 検査データの書き換え、B 本来とは異なる試験を代わりに行う、などしたという。

神戸製鋼は現時点では安全性に問題はないとしているが、今後安全性に関する検証を進めるとしている。 残る 4 製品は、中国や国内でつくられた鋼線や特殊鋼などの鉄鋼製品で、顧客数は 22 社、出荷数量は 8,374 トン。 これらはすでに安全性を確認し、顧客との間で問題は解決したとしている。 (asahi = 10-13-17)


日産・マツダ・スバル、神鋼の強度偽装部品を使用

神戸製鋼所がアルミニウム製品の強度などを偽装して出荷していた問題で、主要顧客である自動車メーカーが 9 日、問題のアルミ製品を自社で使っていたと相次いで明らかにした。 安全性への影響を確認中という。 日産自動車とマツダは自動車に、スバルは自動車と航空機で使っていた。 日産はボンネットとドアで使われていることを確認。 ほか 2 社も具体的な車種やどの部分に使われていたか確認を急いでおり、「製品を使っているお客様の安全を最優先に対応していく(スバル広報部)」などと説明している。

9 日夜の時点で、強度不足による不具合は確認されていない。 ただ、今後の調査で安全基準を満たしていない点が見つかれば、リコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出ることになる。 神戸製鋼は 8 日、アルミ製品などで強度偽装があったと発表したが、納入先は公表していない。 8 日にはトヨタ自動車が自社の自動車に採用していたと明らかにしている。 (木村聡史、asahi = 10-9-17)


強度偽装、組織ぐるみで常態化 神戸製鋼「納期の重圧」

神戸製鋼所でまた、品質管理の不祥事が発覚した。 自動車に使われるアルミニウム製品の強度などを偽って出荷。 1 年前、グループ会社でばね用ステンレス鋼線の強度偽装の不祥事が起きたばかり。 不正は本体を含む「組織ぐるみで常態化」していたことになる。 信頼性は損なわれ、経営責任が厳しく問われる。 8 日に記者会見した梅原尚人副社長は、「実際に手を下したり、黙認したりしていたのは管理職を含めて過去 1 年間で数十人」と語り、「組織ぐるみか」と問われ、「はい」と答えた。

不正の背景は、「納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーの中で続けてきた」と分析。 一方で、「品質に関する意識が弱いとは考えていない。 (納入先との)契約を守る意識が低かった。」と釈明した。 不正は、今秋の社内監査を控え、工場での自主点検で見つかった。 梅原氏は「かなり古い時期から(不正が)あった」とも話した。 10 年前から改ざんが続いているケースも確認され、常態化の可能性を認めた。 今回、検査回数を少なくする手抜きも発覚した。

昨年の不祥事発覚で、「一気に是正すると影響が大きく、踏み切れなかったようだ」と説明した。 再発を防ぐ取り組みが不十分だったと認めた形だ。 経営責任について梅原氏は「経営陣も、もちろん責任を考えていく」とした。 同社は国内 3 位の鉄鋼メーカー。 不正の対象製品は自動車、航空機、電子機器など幅広い分野に及ぶ。 トヨタ自動車や三菱重工業グループ、JR 東海など出荷先は約 200 社。 品質軽視の組織ぐるみの不正は、日本のものづくりの土台を揺るがしかねない。 トヨタは 8 日、「安全を最優先に考え、影響を早急に確認する」とコメントを出した。 (小室浩幸、野口陽、asahi = 10-8-17)