バングラデシュ空港の大規模火災で輸出用衣料品に甚大な被害

バングラデシュの首都ダッカにある国際空港の貨物施設で起きた大規模な火災により、衣料品の大手輸出業者が所有する商品や素材が甚大な被害を受けた。 衣料品輸出業界の幹部が 19 日、明らかにした。 火災による損失と貿易への影響は数百億ドルにも上るとみられる。 火災は同空港の貨物施設で 18 日午後に発生。 同施設では 19 日も煙がくすぶり続け、消防と空港当局が被害の実態を調べている。 火災により、輸入した素材や輸出用衣料品、商品サンプルが消失。 いずれもバングラデシュの衣料品業界にとっては極めて重要な物だ。

バングラデシュ衣料品製造・輸出業協会 (BGMEA) のシニアバイスプレジデント、イナムル・ハク・カーン氏は「この火災はわが国の輸出、特に衣料品業界に深刻な被害をもたらした」と述べた。 同氏は「輸出用に準備された衣料品、生産のための素材、そして何より重要な商品サンプルを含む、価値の高い商品や急いで送る必要のある空輸品が損傷した」と話した。 商品サンプルが失われたことで今後の事業が危うくなる恐れがあると警告。 「これらのサンプルは、新たな買い手の確保と受注拡大に不可欠だ。 サンプルが失われたことで、当協会の加盟社は将来の事業機会を失うかもしれない。」と付け加えた。

BGMEA は被害の規模を確認するため、影響を受けた輸出業者からの情報収集を開始した。 同空港の貨物施設はバングラデシュで最も取扱量の多い物流拠点の 1 つで、1 日当たり 600 トン超の貨物を取り扱い、10 - 12 月の繁忙期には取扱量は倍増する。 カーン氏は「毎日、200 - 250 件程度の工場が自社の商品を空輸している。 その規模を考慮すると、被害額はかなり大きい。」と語った。

火災の原因は判明しておらず、調査が進められている。 バングラデシュは中国に次ぐ世界第 2 位の衣料品輸出国。 同国の衣料品業界はウォルマート、H & M、ギャップといった世界的小売り大手に衣料品を供給し、約 400 万人の労働者を雇用して年間約 400 億ドルの売り上げを稼ぎ出している。 これは同国の国内総生産 (GDP) の 1 割余りを占める。 (Reuters = 10-20-25)


ネット販売の衣料品をバーチャルで「お試し」 … AI で自分の写真と合成、グーグルが日本などで開始

【ニューヨーク = 小林泰裕】 米 IT 大手グーグルは 8 日、AI (人工知能)を使って衣料品の画像と自身の写真を合成する「バーチャル試着」のサービスを日本などで始めたと発表した。

オンライン上で販売されている衣料品が対象で、スマートフォンで利用できる。 「バーチャルでお試し」の名称で、日本のほか、カナダとオーストラリアで 8 日から順次スタートした。 米国では 5 月にサービスを開始していた。

グーグルの検索で表示されるセーターやワンピース、ズボン、靴など、ネット販売されている商品の画像を選び、自身の全身写真をアップロードして使う。 数秒程度で実際に着ているような画像を生成できる。 AI が利用者の立体的な身体の構造を分析し、服の大きさを自動で調整して合成する。 (yomiuri = 10-9-25)


ゼレンスキー大統領の "勝負服" に日本製生地 大阪メーカーが販売

ウクライナのゼレンスキー大統領が公式の場で着る服には、日本製の生地が多く使われています。 販売した大阪のメーカーに、生地に込めた思いを聞きました。 ゼレンスキー大統領が外交の場などで着る服は、20 年来の盟友のデザイナー、ビクトル・アニシモフ氏が手がけています。 アニシモフ氏の作品には、ウクライナ製と共に日本製の生地が多く用いられています。 8 月のトランプ大統領との首脳会談で、会談を成功に導いた要素のひとつとも言われる "勝負服" にも日本製の生地が使われていました。

「非常に光栄に思っておりまして、国際的な場で我々の生地を選んでいただき、本当に日本のものづくりの力が評価された証しかなと思っております。(柴屋・奥野雅明社長、以下同)」

この生地を扱うのは、大阪に本社がある「柴屋」です。 アニシモフ氏とは 2023 年から取引があり、今では月に 1 回ほど買い付けがあるということです。

「(ゼレンスキー大統領の服に使われたのは)静岡産のものと京都産のものになります。 本当に職人さんがですね、丁寧に丁寧に風合いが出るように小さい釜で色をつけて作らせていただいているので少量しか作れない。」

大量生産が主流の海外産と違い、少量を手間をかけて作り上げることで自然な風合いが生まれるといいます。 日本以外では作ることが難しい生地だと奥野社長は語ります。

「ウクライナの方も、いま非常に大変な思いをされていらっしゃると思うのですが、ファッションを通じて笑顔が戻るようなそういう世界になっていただけたらと思っています。」 (ANN = 9-14-25)


ユニチカの繊維事業を得たセーレン 自信を裏打ちする 20 年前の買収

自動車の内装材や衣類などを手がける「総合繊維業」のセーレンは、経営再建中の繊維大手のユニチカから 78 億円で一部の事業を買い取ることにしました。 立ちゆかなくなって手放す事業を手に入れてうまくいくのでしょうか。 セーレンを 38 年にわたり率いてきた川田達男会長 (85) は「1 年目から黒字にできるとの手応えを感じています」と言います。 その自信を裏付けるのは、20 年前の事業買収です。

2005 年、苦境に陥っていた名門企業カネボウの繊維事業を引き継ぎました。 「あのタイミングで引き受けたことで、糸から織物まで一貫したものづくりができるようになった。」 その後、売り上げを伸ばし、今の事業展開につながりました。 セーレンは 136 年前、福井市で絹織物の不要な成分を洗い落として光沢を出す精練業から始まった会社です。 戦後、多角化を進め、カネボウから引き取った事業は、ものづくりの幅を大きく広げました。

ユニチカの岡崎事業所はポリエステルの糸や不織布などを生産しています。 採算が悪化した原因は。

「赤字を毎年垂れ流し、ほとんど投資をしてこなかった。 もうけが出ないのに作り続けている製品や、お客さんの都合でやめられない製品があり、私から見れば、まったく経営していなかったという感じです。」

「お客さんに、この値段では無理ですと、言うべきことを言う、やるべきことをやれば、即刻改善できるんじゃないでしょうか。 やるべきではない仕事もあり、売り上げは 300 億円から 200 億円ぐらいに減るとみています。」

どう立て直しますか。

「今やっている仕事をみると、やめる仕事と、改善すればなんとかなる仕事があり、1 年目から黒字にできるという手応えを感じています。 私たちは自動車関連の仕事がかなり多いので、自動車産業が集中している中京地区に拠点を持つことにも意味があります。」

「岡崎事業所の広さは 32 万平方メートルで工場の建物もあり、そこで新規事業への投資をするのも、大きな目的です。 今、新たに工場を建てようとすると、7 年ぐらいかかるんです。 今ある建物と、500 人の従業員を新規事業でもいかしたい。」

2005 年に引き受けたカネボウの繊維事業はどう立て直したのでしょうか。

「カネボウは粉飾決算でおかしくなったので、ユニチカとは事情が違うんですけれども、どちらも収益を上げられなかった。 カネボウのみなさんに言ったのは、自分たちの城は自分で守ろうと、今までの仕事に問題があったのだから、仕事を変えよう、変わろうと。」

「初めは相当抵抗もありましたが、もともとはいい会社で、いいお客さんもいる。 カネボウの超極細繊維を使った『そうじの神様』のようなヒット商品も出て、社員が自分たちもやればできるという感じになり、採算がトントンになるまで 3 年ぐらいかかりました。」

カネボウの事業はいくらで引き受けましたか。

「再建を支援した産業再生機構から、『負ののれん』で赤字相当分をカバーしてもらいました。 そのほかに事業を立て直すため、90 億円を投資しました。」

カネボウも事業展開に役立ったのでしょうか。

「私たちはもともと染色加工業で、糸から織物にし、縫製して最終製品にするまでのものづくりはできていなかったんです。 あのタイミングでカネボウの事業を引き受けて、糸から最終製品まで一貫したものづくりができるようになった。 そのおかげで差別化ができ、今があるんです。」

「かつて、繊維産業イコール衣料だったんです。 私たちはどこよりも繊維産業を非衣料、産業資材に転換してきた、これが差別化なんです。」

社長を 24 年、社長兼任も含めて会長を 14 年務めていますが、技術や事業を育てるには長く続ける必要があるということでしょうか。

「5 年とか、6 年とかでは、自分のときだけよくしようという『サラリーマン社長』になっちゃいますよね。 私も(創業家の出身ではなく)サラリーマンですけど、オーナー的発想がないとだめでしょう。」

「株式の持ち合いは日本独特の文化ですよ。 私たちは 1 株も売っていません。 株価が上がっていますし、配当もいいですし、本当に会社のことを考えたら売らない方がいいですよ。」

他社の事業を取り込みながら成長してきましたが、今後も買収しますか。

「規模は追い求めません。 着実にやるべきことを一歩一歩やって、自然と大きくなるのは仕方ないですけど、規模を大きくするために買収するという経営はしません。」 (聞き手・諏訪和仁、清井聡、asahi = 9-11-25)

セーレン とは : 1889 (明治 22)年に福井市で輸出する絹織物の不要な成分を洗い落とす精練業を始め、染色加工に手を広げた。 戦後は織物関連機器や衣類、建築資材などへの多角化と海外展開を進め、今は自動車のシートやエアバッグなどの内装材が主力。 2024 年度の売上高は 1,596 億円のうち、内装材が 7 割を占める。 売上高の 6 割が海外。 従業員数は 6,228 人。

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ユニチカ、繊維事業をセーレンに売却 岡崎事業所の存続にめど

経営再建中の繊維大手ユニチカ(大阪市)は 20 日、同業のセーレン(福井市)と繊維事業などの売却に向けた基本合意を結んだと発表した。 セーレンは旧カネボウの繊維事業を買収し、再生させた実績がある。 これで、ユニチカの岡崎事業所(愛知県岡崎市)の存続にめどがついた。 売却の対象は岡崎事業所が手がける衣料繊維、不織布、産業繊維、ポリエステル原料の 4 事業。 8 月初旬までに最終契約を結び、年内に譲渡を完了させる予定。 売却金額は未定。 岡崎事業所の約 400 人と関連する営業部門をあわせて 500 人超の雇用が維持される見通しだという。

同日、大阪市内で会見したセーレンの川田達男会長は「工場の新設には時間がかかり、事業拡大をスピーディーに進めるためにも岡崎事業所は有効。 優秀な人材が獲得できることにも魅力がある。」と語った。 ユニチカの藤井実社長は「重視していた事業の存続と雇用の継続の面で良い提案をいただいた。 セーレンは事業再生でも、過去にめざましい効果をあげられている」とした。

ユニチカはかつて日本 3 大紡績会社の一角に数えられた名門だが、昨年 11 月に 200 億円の出資を受けて官民ファンド「地域経済活性化支援機構」の支援で私的整理の手続きに入る方針を公表。 赤字続きだった祖業の繊維を含めた課題事業は売却できなければ清算するとし、売却の相手先を探していた。 2025 年 3 月期の売上高は 1,264 億円、工場や子会社の価値の引き下げで 379 億円分の損失が出たことで純損益は 242 億円の赤字だった。 岡崎事業所以外で手がける繊維事業は引き続き売却などを模索するという。

セーレンは源流となる会社がユニチカと同じ 1889 (明治 22)年の設立。 エアバッグなどの車両資材を主力とし、25 年 3 月期の売上高は 1,596 億円、純利益は 138 億円で、従業員数は 6,898 人。 粉飾決算などで破綻したカネボウの繊維事業を 2005 年に買収して「KB セーレン」を発足させ、国内子会社の稼ぎ頭にした実績がある。 (諏訪和仁、清井聡、asahi = 6-20-25)


三井物産系が衣料ブランド設立へ ザンビア農家の生産過程も新価値に

ザンビアなどアフリカの綿花農家を支援する仕組みを入れた衣料品ブランドを、三井物産の関連会社が立ち上げようとしている。 トレーサビリティー(履歴の追跡可能性)の技術を活用して消費者にアピールし、農家の収入増にもつなげる狙いという。 20 日に横浜市で開幕した第 9 回アフリカ開発会議 (TICAD9) のイベント会場。 三井物産のブースには、アフリカの小規模農家が生産した綿花を原料に作られた T シャツが掲げられていた。 関連会社「FL360」の事業を紹介したものだ。

「ここから読み取れます。」 来場者は T シャツに付けられたタグについて説明を受けていた。 タグには QR コードがあり、スマホをかざせば、コットンの原材料となる綿花がどこで生産され、どんな農家が携わっていて、各農家がどんな悩みを抱えているのかまで見ることができる。 FL360 が取り組むプロジェクト「farmers 360°link」が関わった商品で、売り上げの一部は農家の支援に使われる。 「農業資材購入の補助」、「学校へのソーラー電灯の設置」などメニューも購入者が選べる。 その後の変化の様子を写真などで確認できるようにもした。

農家対象の事業を考えたが …

FL360 の社長を務めるのは三井物産出身の小林希(のぞむ)さん。 同社が出資するアフリカの現地の農業関係企業とともに、新規事業の立ち上げを担当し、ビジネスと社会課題の解決をどう両立するか模索した。 農村の電化、森林消失対策、液化石油ガスを広める事業 …。 アフリカの農家を対象とした様々な事業を検討したが、世帯年収が 1 千 - 2 千ドル(約 15 万 - 30 万円)の農家が相手では、総合商社が収益を上げるようなビジネスは難しかった。

そこで、発想を変えた。 「アフリカの農家に寄り添いつつ、グローバルマーケットから収益をあげる(小林さん)」というものだ。 生産過程まで含めて商品購入の動機とする人が増えてきたこともあり、消費体験の中にトレーサビリティーを組み込むことに付加価値を見いだした。

「これです」というものを ブランド立ち上げへ

2021 年に実証事業をスタート。 すでに人気セレクトショップのロンハーマンやビームスなどがこの綿花を使い、QR コードがついた商品を扱った。 T シャツといえばファストファッション店なら 1 着 1 千円台の商品も珍しくないが、ブランドによっては 1 万円超で販売した。 ただ、「第三者のブランドに依拠していては『これです』というものをつくれない(小林さん)」との思いも強くなり、自社ブランドの立ち上げを決意した。 今年度内にどんな商品を売るのか固める計画という。

将来的には、綿花で培ったトレーサビリティーの仕組みをカカオやコーヒー豆などの農産品にも横展開できないか考えている。 システム自体は構築できているため、低コストで導入することができるのが利点だ。 そのためにも綿花の事業を早期に軌道に乗せる必要がある。 小林さんは「時間は無限ではない。 早く収益化していかないといけない。」と話す。 (岩沢志気、asah= 8-20-25)


世界を駆ける日本製靴下、輸出額が過去最高
 … 脚のむくみ軽減など機能性やデザイン向上で単価アップ

日本から海外に向けた靴下の輸出額が増えている。 品質の高さが現地で評価されていることに加え、高機能を売りにした商品が増えて 1 足当たりの単価が高まっているためだ。 大阪税関によると、奈良や兵庫など靴下の主要生産地を抱える近畿圏の 2024 年の輸出額は、約 18 億 1,000 万円と過去最高となった。 近畿圏の輸出額は、14 年には約 6 億 4,500 万円で、10 年で 3 倍近い伸びとなった。 近畿圏の輸出額アップが全体を押し上げ、全国の 24 年の輸出額は約 27 億 4,800 万円と、こちらも過去最高を記録した。

近畿圏からの輸出先(金額ベース)は、マレーシアや中国のほか韓国、米国向けが多い。 近年では、靴下の輸出を巡り、単価アップの傾向が続く。 近畿圏の 1 足当たりの輸出単価は、14 年には 303 円だったが、24 年には 725 円と 2 倍以上となった。 各メーカーが、商品の高機能化に力を入れていることが背景にある。

圧縮力が足首で最も強くなり、脚の上部になるにつれて弱まる「段階的圧縮靴下」は、脚のむくみや疲れを軽減する効果があるとされる。 医療用でも使われることから単価が高く、輸出額の増加につながっているとみられる。 デザインにこだわった商品のほか、特殊な編み方をした商品なども増えている。 大阪靴下工業組合の中藤大介理事長は「日本の靴下は、寸法が丁寧で、フィット感が違う。 細かい部分を妥協せず、付加価値を高めてきたことが認められたのではないか。」と話している。 (yomiuri = 8-13-25)