スズメなど 7 種の鳥が「絶滅危惧種」並みに減少 気温上昇など影響か

街中でも見かけるごく身近な鳥のスズメ。 4 月から 8 月の繁殖期に多いと 3 回繁殖し、巣立った幼鳥は、しばらくは親鳥から餌をもらって育つ。 東京・銀座や築地周辺などの都心部でも、あちらこちらで巣立ってまもない幼鳥に餌を与えるスズメの親鳥の姿が見られた。 そのスズメが急速に減少している。 環境省と日本自然保護協会が行っている生物多様性に関する基礎的なデータを集めるモニタリングサイト 1,000 の調査で、2024 年 10 月に発表された 5 年に 1 度のまとめで明らかになった。

モニタリングサイト 1,000 の調査では、全国各地の様々な環境の中で長期にわたって生き物の生態を見ていく。 里地調査では、全国約 200 カ所ある調査地点で、繁殖期と越冬期にそれぞれ 6 回、約 1 キロの距離を歩き、およそ 50 メートル以内で姿を見たり鳴き声を聞いたりした鳥を記録する。 里地調査と森林・草原調査の 09 年度から 20 年度のデータの解析で、スズメやセグロセキレイ、ムクドリなど 7 種の農地や草地など開けた環境に生息する鳥は、15 年以降 1 年あたり -7.4% と急激に減っていた。 減少率だけでみると、絶滅危惧種の判定基準に相当する減り方だった。

また、19 年に発表された前回のまとめでは、05 年度から 17 年度のデータを解析、その中でスズメの 1 年あたりの個体数変化率が +0.5% だった。 今回のまとめにある 08 年度から 22 年度のデータの解析では -3.6% だった。 この 14 年の間に 40% 減っている計算になる。 調査で確認できた鳥類の種数も減っている。 種数の減少要因を管理放棄、気候変動、外来種の侵入などの影響で比較してみたところ、気温の上昇の影響が最も大きかったという。

モニタリングサイト 1,000 の里地調査のデータを利用して人口減少との関係を調べた研究によると、人口減少によって生物多様性が失われることがわかった。 里地里山の管理が行われなくなると、農地や草地が森林化し、そこに生息する鳥など生き物が減っていくという。 どちらの研究にも関わっている日本自然保護協会の藤田卓さん (52) は、スズメなどの開けた環境に生息する鳥の減少について「管理されない田や草地が広がり、鳥たちが利用しにくくなっているところに、近年の気温上昇も影響したのかもしれない」と話す。

東京都心では増え、郊外で減少 その理由は?

一方、スズメの数が減っている中でも、東京都内に限ると、都心部で増えていることが、別の調査結果の解析からわかった。 野鳥の調査を手掛ける NPO 法人バードリサーチの植田睦之さん (55) は、同法人と日本野鳥の会が行った 10 年代の東京都鳥類繁殖分布調査のデータと都の 1990 年代の調査を比較し研究。 両調査で共通する 224 地点でスズメの変化を見た。 調査地点の記録個体数を経度で分けて比較すると、東側の都心部で増加傾向にあり、西側の郊外で減少傾向という特徴が見えてきた。

その要因を調べるため、緑地率や営巣環境などを比較した。 スズメの営巣場所は都心部で 8 割超、郊外でも 7 割超が電柱の変圧器の下の隙間、引き込み線の接続箱の中となっている。郊外では、電柱以外にも瓦の隙間など営巣できるところがあるものの、営巣環境に大きな差があるとは考えにくいという。 一方、スズメと同じデータで捕食者の状況を比較すると、カラスはどちらもそれほど変わりなくいるが、オオタカやツミなどの猛禽類が郊外で増加傾向にあり、都心部で減少傾向にあった。 植田さんは「今の段階では、捕食者である猛禽類の影響である可能性が考えられる」と推察している。

スズメを観察していると、畑で餌を捕る姿を見ることが減ったという。 植田さんは「畑に虫が少なくなっているのではないか。 エサの環境、繁殖回数や繁殖成功率、他の地域からの流入などわからないことも多くあり、これから調べていく必要がある。」 (小林正明、asahi = 7-27-25)


電子部品業界初の共同輸送 村田製作所とローム、EV トラックで

村田製作所とロームは 17 日、両社の荷物を同じ EV (電機自動車)トラックで運ぶ共同輸送を始めたと発表した。 二酸化炭素 (CO2) の排出量や輸送コストを減らすための取り組みで、電子部品業界での共同輸送は初めてだという。 共同輸送の委託先は日本通運で、京都市や京都府長岡京市にある村田の物流拠点やロームの工場などと関西空港の間を、EV の 2 トン車 1 台が週 5 日、1 日 1 往復する。 運ぶのは製品のサンプルや梱包用の資材などで、走行時の CO2 の排出を両社で年間約 30 トン減らせるという。

課題だったのは、急速充電ステーションの少なさだった。 2 トン車のフル充電にかかる時間は急速充電器だと 1 時間半で済むが、通常の充電器だと約 11 時間かかる。 今回のルートは 1 日の走行距離が約 210 キロで、渋滞などの可能性を考えると 2 回の急速充電が必要だった。 ルート沿いの急速充電ステーションを 1 カ所ずつ回り、トラックの受け入れが可能かを聞いてようやく 2 カ所の理解を得たという。

貨物自動車の CO2 排出量は日本全体の 7.4% を占め、低減に向けた取り組みが急務とされている。 今回の取り組みは 2 月に村田側からロームに打診して始まった。 村田製作所の寺村晃一執行役員は 17 日にあった出発式で、「(ロームとは)同じ京都にある会社で、運ぶ製品も似通っていて共同輸送の効率が高い。 今後、数カ月様子を見てルートや便数などの拡大を検討したい。」と語った。 (清井聡、asahi = 7-17-25)


世界各地のデータセンターに気候変動の脅威 東京もハイリスク拠点に

デジタル社会を支えるデータセンター (DC) が気候変動によって危機にさらされていると、気候変動リスク評価をする国際コンサル企業 XDI が 9 日、発表した。 日本の都市も高リスクの拠点として名前が挙がった。 報告書では計画中のものも含め、世界中の約 8,900 の DC について分析した。 温室効果ガスの大量排出が続いたと仮定し、2050 年時点で洪水や森林火災、台風など、気候変動に関連する八つの災害リスクの大きさを予測した。

日本では、141 の DC が分析対象になった。 今でも 10 カ所に 1 カ所は「高リスク」で、50 年にはその割合が 14.18% に上がるという。 中でも、57 の DC を抱える東京が「高リスク」 26.32% で世界 7 位、33 の DC を持つ大阪が同 6.06% で 45 位に位置づけられた。

「炭素排出減が費用対効果高い」

「高リスク」の DC は、建物の寿命内で DC が全壊または部分的に物理的な損害を受ける可能性が高いとされる。 日本以外でも、上位 10 位までに中国、インド、タイなどアジアの都市が多く入った。 沿岸浸水、河川の洪水、台風の風による被害が大きいとみられるという。 世界全体では、50 年時点で「高リスク」とされた DC が 7.13% だった。 重大な損害を受ける可能性がある「中リスク」には 19.6% が該当した。

報告書は、「炭素排出を減らし、さらなる地球温暖化を防ぐことが、DC の運用を維持するための最も費用対効果の高い方法だ」と指摘した。 一方で、DC は多くの電力を消費するため、気候変動対策を進める上での懸念事項にもなっている。 (杉浦奈実、asahi -7-9-25)


パリのセーヌ川、水質改善で 100 年ぶり遊泳解禁 五輪のレガシー

パリの中心部を流れるセーヌ川で 5 日、約 100 年ぶりに一般市民の遊泳が解禁された。 ノートルダム大聖堂やエッフェル塔などに近い 3 カ所の川岸に設置された遊泳場の無料開放が始まり、市民らが泳ぎを楽しんだ。 セーヌ川は家庭からの排水などによる水質悪化が原因で、1923 年に遊泳が禁止された。 仏政府とパリ市は昨夏のパリ五輪で水泳競技の会場としてセーヌ川を使うために水質浄化計画を実施。 市民の遊泳の実現は、夏の熱波対策を兼ねた五輪の「レガシー(遺産)」と位置づけられていた。

遊泳場は川岸に沿って数十メートルの範囲を区切る形で設けられており、8 月末まで無料開放される。 3 カ所の内 2 カ所は更衣室もある。 現場には安全を監視する係員が常駐する。 仏公共放送によると、初日の遊泳解禁時の水温は 25 度だった。 昨夏のパリ五輪ではトライアスロンの水泳などが実施されたが、体調不良を訴える選手が出るなど、水質をめぐって安全性が問題になった。大雨などで水質が悪化する可能性もあることから、パリ市は毎日、水質を検査するとしている。 (パリ・宋光、asahi = 7-5-25)


二酸化炭素も「地産地消」 CO2 を吸収して固まるコンクリート

小川のせせらぎが足元をすり抜け、野鳥のさえずりが木々の間に響く。 昨秋、長野県軽井沢町の森にコンクリート製の人道橋が造られた。 通常、コンクリートを造る過程で大量の二酸化炭素 (CO2) が排出されるが、橋に使われたコンクリートは CO2 を吸収・固定する。 CO2 を「減らす」から、「活用する」技術として注目を集めている。

コンクリートの主成分はセメントだ。 1,400 度もの高温で熱して造られるが、1 トンあたり約 800 キロもの CO2 を排出する。 「セメントを造っているのか、CO2 を造っているのか分からない」と揶揄されるゆえんだ。 ビルや橋、ダムなどの建設で大量のコンクリートが必要となれば、排出される CO2 の量は膨大だ。 この問題に取り組んだのが、建設大手の鹿島。 2008 年、セメントの量を減らし特殊な素材を混ぜることで、CO2 と反応して固まるコンクリート「CO2-SUICOM」を開発した。

1 立方メートルあたり約 18 キロの CO2 を吸収するといい、同社の試算では、国内で1年間に使われるコンクリートの全てを置き換えたと仮定すると、2,784 万トンの CO2 が削減されるという。 日本の森林が 1 年間に吸収できる量の約 3 分の 1 に当たる。 現在、道路の縁石や高速道路の橋脚の一部に使われており、NEDO (国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) のグリーンイノベーション基金にも採択された。 この技術を発展させたコンクリート構造物などが大阪・関西万博会場の一部でも使用されている。

この技術のヒントは、1990 年代に中国で発掘された 5 千年前の遺跡から得られたという。 古代の住居跡で見つかった土間は、現代のコンクリートに似た材料でできていた。 煮炊きなどをしているうちに、CO2 を吸収し、表面がまるで大理石のように強固になっていたという。 この化学反応を応用して開発された。 ただ、普及には課題も残す。 新技術のコンクリートを固めるために必要な CO2 の濃度は 50% から 80% で、大気中濃度の 0.04% では薄すぎる。 そのため、CO2 を購入しているが、工業用は高価なためコストがかさむ。

開発と普及に長年携わってきた同社の坂井吾郎さん (56) は、「コンクリートは、『地産地消』が大事。 工場で造ったコンクリートを施工現場に運ぶために CO2 を出しては意味が無い。 現地で CO2 を集められるようになれば。」と話している。 私たちの出した CO2 が巡り巡って、足元に広がる。 そんな未来がやってくるかもしれない。 (小玉重隆、asahi = 6-21-25)


地球温暖化で大西洋海流システムに崩壊の恐れ、欧州では氷点下 48 度に達する都市も

大西洋の重要な海流ネットワークである「大西洋子午面循環 (AMOC)」が崩壊した場合、世界各地が極寒に陥り、一部の都市では冬の気温が氷点下 48 度まで低下するなど「深刻な気候的・社会的影響」をもたらす恐れがある。 11 日にジオフィジカル・リサーチ・レターズ誌に掲載された研究で明らかになった。 AMOC の行方には懸念が高まっている。 AMOC は巨大なベルトコンベアのように機能し、南半球や熱帯地方から北半球へ暖かい水を引き寄せ、そこで冷やされて沈み込み、再び南へと流れ込む海流システムだ。

複数の研究によると、AMOC は衰えつつある。 地球温暖化によって AMOC の循環を支える熱と塩分のバランスが崩れ、今世紀中に崩壊する可能性さえあると予測する研究もある。 そうなれば、地球規模の気象・気候に大きな変化が生じ、欧州の気温が急激に低下しかねない。 欧州の温暖な気候は AMOC に依存しているためだ。 一方で、こうした影響によって寒冷化と温暖化のいずれが勝るのかは明らかではない。 オランダ・ユトレヒト大学の海洋・大気研究者で、論文の共著者であるルネ・ファン・ウェステン氏は CNN に対し、今回の研究は、最新の複雑な気候モデルを用いてこの疑問に答えた初めての研究だと語った。

研究者らは、AMOC が 80% 弱体化し、産業革命以前と比べて地球の気温が約 2 度上昇するというシナリオを想定。 AMOC 崩壊後、気候が安定していく数十年で何が起こるかに焦点を当てた。 現在の地球の気温は 1.2 度上昇している。 研究では、地球が温暖化している状況下でも、欧州では冬の平均気温が大幅に低下し、極寒の度合いが増すなど、「大幅な寒冷化」が見られることが分かった。 これは、AMOC が崩壊しても気温が上昇し続けることが明らかになった米国とは大きく異なる状況だ。

海氷は南下し、スカンジナビア、英国の一部、オランダまで広がると研究は示唆している。 氷の白い表面が太陽エネルギーを宇宙に反射し、冷却効果を増幅するため、極寒の度合いが著しく高まると予想される。 研究者らが作成した AMOC 崩壊の影響を示すインタラクティブマップによれば、英ロンドンでは冬の気温が氷点下 19 度まで下がる可能性がある。 ノルウェーのオスロでは最低気温が氷点下 48 度に達し、年間の 46% は最高気温が 0 度を下回る可能性がある。 また、欧州の一部では嵐の度合いも高まるという。 欧州の南北で気温差が拡大することでジェット気流が強まり、北西部上空で嵐の強度が増すからだ。

ファン・ウェステン氏は、北半球の多くの地域ではこのような極寒の気候に耐えられるように社会が構築されていないと警鐘を鳴らす。 作物は枯れ、食料安全保障が脅かされ、インフラが崩壊する恐れがある。 AMOC の崩壊は主に欧州の冬季に影響を及ぼすが、気候危機が進むにつれ、夏季には深刻化する熱波に見舞われるとみられる。

一方、南半球では温暖化が進むと予測されている。 科学者たちは、AMOC の崩壊がさらに温暖化した世界に与える影響についても調査した。 ファン・ウェステン氏は、地球の気温が産業革命以前の水準より約 4 度上昇すれば、その熱が欧州での AMOC の崩壊による冷却効果を上回り、「温暖化のシグナルが勝つ」と述べた。 しかし、AMOC の崩壊がもたらす影響は気温だけではないという。 海面上昇もその一つで、特に米国に影響を及ぼす。 最近の研究によると、AMOC の衰えによって北東部沿岸ではすでに洪水が大幅に増加している。 (CNN = 6-12-25)


二酸化炭素と水から都市ガス 大阪ガスの新たな実証施設が完成

二酸化炭素 (CO2) と水から都市ガスをつくる技術開発を続けている大阪ガスなどが 3 日、新たに一般家庭約 200 戸をまかなえる規模の実証装置をつくり、完成式典を開いた。 2027 年度末まで、さらなる規模拡大に向けたデータ収集を進める。 メタンを主成分とする都市ガスは、燃やすと CO2 が出る。 そこで大阪ガスは、CO2 をもとにメタンをつくる「メタネーション」技術の開発を続けている。 これなら燃やしても、全体でみれば追加的な排出がないからだ。

先行しているのは、水を再生可能エネルギー由来の電気で分解して水素を取り出し、それを CO2 と反応させてメタンにする技術だ。 ただ、この方式では、投入する電気エネルギーの 55 - 60% に見合う量のメタンしかつくれないとされる。 一方、今回の装置は水と二酸化炭素からメタンまでを通してつくるしくみだ。 一部に、東芝のグループ会社が手がけた水蒸気を電気分解して水素をつくる装置を使う。 今後、水蒸気と CO2 をともに電気分解して水素と一酸化炭素を取り出し、メタンにする別の方法の実証も進める。

将来的には、メタンをつくる際に出る熱を水蒸気づくりに使ってさらに効率を上げ、投入する電気エネルギーの 80% 以上に見合う量のメタンをつくることをめざすという。 いまのところ、商用化は 30 年代後半以降を見込んでいる。 この日、完成式典に出席した大ガスの藤原正隆社長は「再生可能エネルギーをもとにした燃料の課題のひとつが、再エネのコスト。 効率が上がればコストは下がる。 さらなるスケールアップとコストダウンに向けて取り組んでいく。」などと話した。 (西村宏治、asahi = 6-5-25)


世界の気温、5 年平均で「1.5 度超」確率 70% 危険な暑さ続くか

世界気象機関 (WMO) は 28 日、2025 年から 5 年間の世界の平均気温が、気候変動対策の国際ルール「パリ協定」で目指す産業革命前からの気温上昇幅 1.5 度を上回る確率は 70% だとの分析結果を発表した。 24 年も 1.5 度を超えたが、危険な暑さが常態化するおそれを示している。 WMO によると、5 年平均の気温が 1.5 度を超える確率は、23 - 27 年は 32%、24 - 28 年は 47% だった。 しかし、温暖化は悪化の一途をたどり、25 - 29 年は約 1.5 倍になった。

また、25 - 29 年のうちの少なくとも 1 年は、観測史上最も暑かった昨年の世界平均気温を上回る確率は 80% だった。 「今後 5 年間は気温が記録的な水準か、それに近い水準で続くと予想される」という。 WMO のコー・バレット副事務局長は、「これは私たちの経済、日常生活、生態系、そして地球にますます悪影響を与えることを意味する」とコメントしている。

気温上昇幅が 1.5 度を超えると生命にかかわる猛暑や豪雨の頻度が高まるとの研究結果があり、各国はパリ協定のもとで対策に努めている。 目標の評価には、複数年の長期的な気温上昇幅を使うため、単年で 1.5 度を超えても「達成できなかった」とは解釈しない。 ただ、1.5 度超えの状況が続けば同じ目標を掲げ続けるのかといった点が議論を呼ぶ可能性もある。 (サンフランシスコ・市野塊、asahi = 5-28-25)


車バイオ燃料、2028 年度から一部地域で先行導入 … 対象エリアを今秋めどに決定

経済産業省は、トウモロコシやサトウキビなどから作るバイオ燃料をガソリンに最大 10% 混ぜた混合燃料を、2028 年度から一部地域で先行導入する方針を決めた。 国内の二酸化炭素 (CO2) 排出量の約 2 割を占める運輸部門の脱炭素化に弾みをつける狙いがある。 経産省が近く有識者会議で公表するバイオ燃料の導入に向けた行動計画に盛り込む。 政府は昨年 11 月、バイオ燃料を最大 10% 混ぜた燃料の供給を 30 年度に始める目標を策定済みだ。 国内で販売されている新車の約 4 割が混合燃料に対応している。

新たに 28 年度の先行導入を決めたのは、安全性や品質維持、輸送体制などの課題を洗い出し、その後の計画へスムーズにつなげる意図がある。 先行導入の対象地域は、製油所や油槽所があるエリアを想定しており、今秋をめどに決める。 給油所の改修費用などは経産省が支援する方針だ。 経産省は、石油元売りや自動車メーカーからも了承を得た。 バイオ燃料の利用を拡大するには、混合比率をさらに高める必要がある。 政府は自動車メーカーに対し、30 年代初めに全ての新車を 20% 混合燃料に対応させるよう求め、40 年度から、20% 混合燃料の供給を始める考えだ。

バイオ燃料は、トウモロコシやサトウキビなどの生物資源を原料とする。 燃焼時に CO2 を排出するが、原料の生育過程で CO2 を吸収するため、実質的に脱炭素化に貢献するとみなされる。 バイオ燃料の活用は世界的に広がっており、ブラジルや英国などは一定割合の混合を義務化している。 日本はバイオ燃料をブラジルや米国などから調達する方針だが、幅広く普及させるには、安定調達とコスト低減が課題となる。 (yomiuri = 5-19-25)


国内 3 番目の規模の蓄電所建設へ、大阪の火力発電所跡地に 関西電力

関西電力は 7 日、大阪府岬町にある火力発電所の跡地に、日本最大級の蓄電所を建てると発表した。 2028 年 2 月からの商業運転を始め、ためた電気は主に電力取引市場で売る計画だ。 関電グループで電気設備工事を手がけるきんでんなどと 3 社で合同会社の「多奈川蓄電所」をつくった。 出力 9 万 9 千キロワット、蓄電容量 39 万 6 千キロワット時で、一般家庭約 4 万 6 千世帯の 1 日の電力使用量に当たる。 系統用と呼ばれる大手電力の送配電網に直接つながる国内の蓄電所の出力としては、オリックスが滋賀県米原市で建設中の施設などに次ぎ、国内 3 番目に大きいという。

三菱 UFJ 銀行が、この蓄電所の事業収益と資産のみを返済原資とする手法で融資しており、この取り組みは国内の蓄電所で初めてという。 太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入が国内で進み、需給の変化に合わせて充放電が行える事業用の蓄電所の新設が足元で増えている。 (福岡龍一郎、asahi = 5-7-25)