バッテリー機内持ち込み禁止で「充電宝風暴」の中国 1 億個を新調?

7 月上旬。 記者が北京首都空港で搭乗手続きを済ませ、セキュリティーゲートに向かうその手前に、以前は見かけなかった即席の検査場ができあがっていた。 機内持ち込みが禁止され、その箱に捨てられていたのは、水入りペットボトルでもライターでもなく、スマホの充電に使うモバイルバッテリーだ。 のぞき込むと、多くの電池が積み重なるように捨てられていた。 「充電宝」の名で親しまれているモバイルバッテリーは、中国では遠出の必需品だ。 そんな旅の常識を揺るがしたのが、航空当局、中国民航局が 6 月 26 日に出した通知だった。

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。 そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

「3C マークがついていない充電宝は国内線への持ち込みを禁ずる。」 実施は、わずか 2 日後の 28 日からとされていた。 3C マークとは、中国独自の規格「中国強制製品認証」を満たす商品につける印を指す。 ところが、充電宝にこのマークが本格的につくようになったのは、昨年 8 月からの 1 年足らずだ。 多くの消費者が持っている製品には、それ以前からの安全規格を満たしていてもマークはなく、今後は飛行機持ち込みができないことになる。

相次いでいた発火事故、買い替えは 1 億個に?

伏線はあった。 北京では複数の大学が、電池大手・羅馬仕科技(ロモス)の一部のモバイルバッテリーを、「爆発の恐れ」を理由に使用禁止にしていた。 ロモスや、同業大手で日本でも知られている安克創新科技(アンカー)が、それぞれ数十万件規模の商品のリコールをしていた。 「充電宝が『爆弾宝』になってしまった」との表現も流布した。 共産党機関紙・人民日報は 7 月 2 日、急な通知の理由を説明するかのように、「今年に入って中国の民間航空機では 15 件もの充電宝の発火が起きている」との当局の談話を掲載した。

通知をきっかけに、「充電宝風暴(騒動)」と呼ばれる事態が幕を開けた。 空港の廃棄用の箱には、持ち込みを拒否された電池があふれた。 突然の始まりだったため、往路の時は許された持ち込みが復路では許されなかったといった例も頻発している。 没収されるくらいなら宅配便を使って空港から自宅へ送ろうとすると、今度は宅配業者に「個人からの充電宝は配送できなくなった」と断られる。 中国全土では今回、およそ 1 億個が買い替えの対象になるとの試算もある。 その単価は、以前よりも値上がりしている模様だ。

あふれる恨みの声、隙間縫う商法も

チャットアプリやスマホでの支払い、動画の視聴など、中国の日常生活のスマホへの依存は、他国よりも深い。 それを電源として支えてきたのが、充電宝だ。 本格的なスマホ時代の到来とともに、モバイルバッテリーは 2013 年ごろから、それまでの「移動電源」という呼び方から、充電宝の名が一気に広まった。 「宝」の字を用いたことは、中国の人たちのこの道具への愛着を物語る。 モバイルバッテリーは中国市場で全世界の 3 割以上を占めるとの報道もある。

ネット上には今回の通知への、恨みの声があふれている。 「猶予期間すら与えない」、「問題を起こした製品だけ禁じれば良いだろうに」、「国際規格は満たしているのにダメなのか」、「幼稚園しか出ていない人間でも考えつかない政策だ。」 国内線では持ち込みが禁止なのに、国際線は許可されているといったちぐはぐさも目立つ。 ネット通販市場では一時、3C マークのシールだけを売る不適正な商法も登場した。

怒りのキーワード「一刀切」、なぜここまで強硬か

通知の性質を象徴し、ネット上の批判で最もよく使われるのが「一刀切(画一的)」という言葉だ。 他国の航空当局もモバイルバッテリーへの規制は強めているが、中国ほどの厳しさはない。 市民の実情を無視した強硬な措置を、当局が押し通しているとの受け止めは強い。 中国当局には、電池の火災により敏感になる理由が、他国以上にあるのかも知れない。 有力な電池メーカーがそろい、世界を圧倒する生産力を誇る。 だが、激しい競争で行きすぎたコストダウン合戦が起き、安全性を下げている懸念が指摘されている。

モバイルバッテリーと同じリチウムイオン電池で、大きな脅威となっているのが、電動バイク向けだ。 質が悪く、長年使用されたものが市中に多く出回っているとされる。 家庭用電源で充電した際に発火し、大勢の人を巻き込むマンション火災に至るといった痛ましい事例が各地で起きている。 24 年に南京で起きたマンション火災では、15 人が犠牲になった。

安全の名の下での硬直的な政策はこれが初めてではない。 人々の間では、行動の自由を奪いながら新型コロナの封じ込めを図った「ゼロコロナ政策」の記憶も鮮明だ。 「また消費者がツケを払わされるのか。」 こんなつぶやきが、市民の無力感を代表している。 (北京・斎藤徳彦、北京・鈴木友里子、asahi = 7-19-25)

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中国でモバイルバッテリーの機内火災が多発、今年すでに 15 件 - 中国メディア

中国で今年、モバイルバッテリーの航空機内での火災がすでに 15 件発生しているとの話題が、中国の SNS 上で注目を集めた。 中国では 26 日にモバイルバッテリーの機内持ち込みの規制を追加する通達が発表され、適用初日の 28 日は新たな規制を知らずに空港でモバイルバッテリーを廃棄した乗客も多かった。 新たな規制は「3C 認証(中国強制製品認証)」の表示がないもの、「3C 認証」の表示が不明瞭なものや、リコール対象になったロットの機内持ち込みを禁止するものだ。

中国中央テレビ (CCTV) は 29 日の番組でこの話題を取り上げた際、中国民航科学技術研究院危険品センターの楊強(ヤン・チアン)主任の説明を紹介。 楊氏によると乗客が持ち込んだモバイルバッテリーの機内火災は今年すでに 15 件起きており、これは昨年同期のほぼ 2 倍の件数という。

楊氏は、機内の消火設備が限られている点や密閉空間で発生する煙や有毒ガスの影響にも言及しており、これにネットユーザーからは「安全第一」、「安全は何よりも大事」という声や「モバイルバッテリーを買う時にこういう表示に注意したことなかった」、「出火は何が原因だったの?」、「なぜ今年はこんなに多い?」などの声が上がった。 (野谷、Record China = 6-30-25)


中国で園児 233 人の鉛濃度異常 「映え」狙い? 給食の混入物に衝撃

中国北西部・甘粛省の幼稚園で、園児 200 人以上の血中鉛濃度が異常値になっていることが明らかになった。 子どもの食の安全をめぐる問題には特に敏感な社会だけに、全国的な注目が集まった。 原因が、園の給食に故意に混入された物質にあるとみられることで、騒ぎがさらに大きくなっている。 甘粛省東部にある天水市の地元当局が今月 1 日、人々の問い合わせに答える形で、「幼稚園で添加物の違法な取り扱い事案があり、園児の血中鉛濃度に異常が起きている」と説明したことが明らかになった。 中国メディア「界面新聞」などが報じた。

人体に有害な鉛は、血中濃度が高まると頭痛や感覚がなくなるといった症状を引き起こすほか、胃腸や生殖機能などに障害を引き起こす恐れがあるとされる。 地元では、発表以前から子どもたちが下痢や食欲不振、体調の不良を訴えることが相次いでいたという。 その後の報道で、被害が起きているのは天水市にある私立の「褐石培心幼稚園」と伝えられた。 「70 人が病院で異常値を示す」、「19 人が鉛中毒で入院」と深刻な状況が明らかになっていった。 血中濃度が基準値の 4 倍を超える子もいた。 鉛の影響で歯の一部が黒くなっているとみられる子どもの写真も報じられている。

当局の調査結果、驚きの原因とは

市当局の合同調査チームがそれまでの調査結果をまとめて発表したのは 8 日になってからだった。 園児 251 人のうち、血中鉛濃度が異常を示したのは 233 人にのぼり、正常値だったのはわずか 18 人しかいなかったとした。 幼稚園では給食を出している。 その食品を検査したところ、223 サンプルのうち 2 品で異常が出た。 おやつなどに食べられる蒸しケーキと、トウモロコシの生地を巻いたソーセージで、いずれも基準値の 2 千倍を超える鉛が検出されたという。

当局の発表では、8 人が刑事拘留された。 衝撃をもって受け止められたのが、そのうちの 2 人である園長と出資者とが「調理場で(食用ではない)顔料を混ぜることに同意した」とされたことだ。 顔料はネット上で購入した工業用だったとみられ、鉛が含まれていた。 不注意による事故ではなく、経営側が認めた上で故意に給食に混入されたことになる。

混入は「故意」、なんのために?

その動機について当局は「園児数を増やし、収益を上げるため」と説明したと、中国国営中央テレビは報じている。 いったいなぜ、工業用の顔料を食品に混ぜることが園児を増やすことにつながるのか。 幼稚園では募集時に「アイデアたっぷりの幼児食欲カリキュラム」をうたい文句にしてきた。 実際に、保護者らには SNS のグループチャットを通じて、子供たちが食べている給食の写真が日々送られていたという。 そして、その多くはカラフルな料理だった。

当局の調査で異常が見つかったとされるメニューである蒸しケーキやトウモロコシ巻きソーセージも、鮮やかな黄色が目立つ写真が投稿されている。 少子化を背景に幼稚園の経営は今後、先細りも予想されている。 一方、共働きが主流の中国では 1 日に 3 食を提供する幼稚園も珍しくない。 この給食でアピールし、差をつけたい。 それが、「写真映え」を求めて異様な事件を引き起こした、というのが中国のネットメディアなどの見立てだ。

食品の安全、呼び起こされる暗い記憶

事件の代償は大きそうだ。 当初、解明への動きが鈍かったように見える地元当局にも批判の声が上がる。 教職員らや、同じ経営者が運営する他の幼稚園の子どもらの健康も懸念されている。 それほど価格が変わらない食品用の着色剤を使わなかったのはなぜか、などの疑問も残る。 「本当の原因は周辺の水質なのでは」といった不安も消えない。 中国では 2008 年、化学物質のメラミンが混入した粉ミルクが販売されて多くの赤ちゃんの健康被害を引き起こすなど、食品の安全問題がたびたび起きてきた。 その負の歴史に、SNS 時代を背景にした問題がまた一つ加わってしまった形だ。 (北京・斎藤徳彦、asahi = 7-10-25)


中国東部で例年より早く猛烈な熱波、経済の「冷え込み」招く恐れも - ドイツメディア

ドイツメディアのドイチェ・ベレは 4 日付で、中国の東部沿海地方は例年より早く猛烈な熱波に見舞われていると報じる記事を発表した。 重要な経済先進地域である東部沿海地方が熱波に見舞われていることで、経済が悪影響を受ける恐れもあるという。

2000 年来の概念を覆し猛暑が「前倒し」

中国の東部沿海地方は 4 日、猛烈な熱波に見舞われた。 5 日以降も 1 週間にわたり 37 度から 39 度の高温に直面する見通しだ。 気象当局は安徽省、浙江省など中国東部、さらに中国中部に位置する湖北省や河南省の一部地域では気温が 40 度を超える可能性があると警告した。

中国では古くから、猛暑に特に警戒する時期として「三伏の日」という考え方があった。 通常は 7 月中旬から 8 月末までで、人々は古来、行動に際しても猛暑の影響を低減するように工夫した。 中国人は 2000 年以上前から「三伏の日の猛暑対策」を心がけてきたという。 しかし最近では、7 月上旬には猛暑に見舞われることが珍しくなくなった。 30 歳になる上海市住民の一人は「最近では暑くなる時期がどんどん早まっています」、「私は子どものころの爽やかな天気のほうが好きでした。 記憶にある夏はとても涼しかった。 今は本当に暑すぎます。」と語った。

極端な高温は、中国の政策決定者にとって重大な課題だ。 農地が焼けて農民の収入が減るだけでなく、高温は製造業の稼働に悪影響を与え、主要港湾都市の物流を混乱させ、すでに重荷となっている医療体制にもさらに負担をかける。 今年の熱波は、中国の電力網にとっても試練をもたらしている。 中国中央電視台(中国中央テレビ、CCTV)によれば、7 月 4 日には中国全国の最大電力負荷が前年の同時期よりも約 1 億 5,000 万キロワット多い 14 億 7,000 万キロワットに達した。 中国東部では、電力負荷が 4 億 2,200 万キロワットに達し、うち約 37% が空調による電力消費だった。

英シンクタンクのエコノミスト・インテリジェンス・ユニットでエネルギー問題と気候変動を専門とするチム・リー上級アナリストは、中国南西部の四川省の降水量が例年を下回っていることにも注目した。 四川省は地形と気候に恵まれたことで水力発電が盛んだ。 しかし降水量の不足が水力発電の能力に影響して、東部への送電能力も低下すると考えられるという。

猛暑で 5 万人超が死亡との推定も

中国は 2022 年、1961 年以来で最も深刻な熱波を経験した。 多くの地域で 6 月中旬から 8 月下旬にかけて 79 日間にわたる高温が続いた。 政府は死者数を公表しておらず、高温による死亡統計制度も設けていないが、国内メディアが地方政府の発表を引用して死亡事例を伝えることはある。 医学誌「ランセット」が 23 年に発表したリポートによれば、22 年の中国における熱波関連の死亡者数は推定で、前年の 2 倍の 5 万 900 人だった。

中国では、東部地区が高温にさらされている一方で、他の地域では豪雨が発生している問題もある。 四川省成都市では 3 日、豪雨のために市内の道路の一部が水没するなどの被害が出た。 道路脇には水没した多くの乗用車がとり残された。 ゴムボートで道路を移動する市民もいた。 気象関連の専門家は、中国東部の異常な高温も四川省などでの豪雨も、気候変動に起因すると分析している。 (如月隼人、Record China = 7-6-25)


「侵略を美化する服装」を処罰対象に 中国の法改正、来年 1 月施行

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に当たる)常務委員会は 27 日、治安を乱す行為の処罰規定などを定める治安管理処罰法の改正案を可決した。 「公開の場で侵略を美化する服装をする」行為が処罰の対象として新たに盛り込まれた。 2026 年 1 月から施行される。 複数の中国メディアが報じた。 侵略を美化する服装をしたり、他人に強制したりすると、最長 15 日間の拘留と 5 千元(約 10 万円)までの罰金が科されるという。 侵略を美化する言論や画像、動画などを広めることも処罰の対象になる。

当初案から修正、コスプレならセーフ?

同法では、比較的軽い違法行為については裁判を経ずに公安の権限で処罰を決めることができる。 報道によると、今回の法改正では当初、「中華民族の感情を損なうような服装」も処罰対象としていた。 ただ、抽象的過ぎることなどが批判され、最終的な条文には盛り込まれなかったという。 中国では近年、ネット上の愛国的な論調が高まる中、観光地などで和服を身につけているだけで批判の対象となったり、拘束されたりしたことが話題になっていた。

法改正により、旧日本軍の軍服を着ることなどが処罰対象になる可能性がある。 一方で、中国で人気を集める日本アニメのコスプレなどは、戦争を想起させない限りは対象にならないとみられる。 (北京・斎藤徳彦、asahi = 6-28-25)


132 人死亡の旅客機墜落 「操縦室の何者かが意図的に急降下させた可能性」 … 中国は調査状況を非開示

香港紙・明報は 27 日、2022 年 3 月に中国南部の広西チワン族自治区梧州で中国東方航空機が墜落し、132 人が死亡した事故の調査状況について、中国民用航空局が非開示を決めたと報じた。 調査状況の公開を求める申請者への 5 月 19 日の回答書で、開示を拒む理由について、「公開は国家の安全や社会の安定を危険にさらす可能性がある」と説明したという。

事故では、雲南省昆明発広東省広州行きのボーイング 737-800 型機が墜落した。 米メディアは、飛行記録を収めた「ブラックボックス」の解析を行った米国家運輸安全委員会の見方として「操縦室内の何者かが意図的に急降下させた可能性がある」と伝えていた。 同局は 23 年 3 月、事故原因について「非常に複雑」と説明するにとどまっていた。 (広州支局・遠藤信葉、yomiuri = 6-27-25)


中国、レアアース産地で幹部の摘発相次ぐ 香港紙で「汚職」報道も

レアアース(希土類)などの鉱物資源を多く産出する中国南部の広西チワン族自治区で、地元政府幹部の摘発が相次いでいる。 香港メディアは鉱物資源をめぐる汚職の可能性を指摘。 米国などがレアアースの輸出管理に反発を強めるなか、中国政府は戦略的鉱物の統制強化に腐心している。 共産党中央規律検査委員会と国家監察委員会は今月 16 日、同自治区政治協商会議の彭暁春副主席が、重大な規律・法律違反の疑いで調査を受けていると発表した。 5 月 16 日には、自治区ナンバー 2 だった藍天立元主席も摘発された。 いずれも自治区内でキャリアを積んできた地方政治家だ。

同自治区はレアアースや非鉄金属などの鉱物資源が豊富で、関連産業が盛ん。 当局は違反行為の内容を明らかにしていないが、香港紙・星島日報によると、鉱物資源をめぐる汚職の疑いがかけられているとみられるという。 長年にわたる無秩序な採掘で環境は深刻に汚染され、国のレアアース戦略にも影響を及ぼし、中央政府の怒りを買った。」としている。 (asahi = 6-18-25)


中国人女性「武力統一」支持発言で相次ぎ台湾退去に
台湾で生まれた中国出身 2 世、中台対立で感じる恐怖・不安

中国による武力統一を支持する発言をしたとして、台湾に住む中国人女性が相次いで、退去を命じられました。 中国と台湾の対立は、数十万人に上る中国からの移住者や、その家族も暮らす台湾社会に複雑な影を落としています。 「こんにちは。 台湾省台北で暮らすヤヤです。(劉振亜さん)」 「ヤヤ」こと、劉振亜さん。 結婚を機に台湾に来た中国出身の女性で、中国の SNS で人気のインフルエンサーです。 しかし、ヤヤさんが投稿した動画の内容が台湾で大問題に …。

「台湾を武力統一するのに、これ以上、理由はいらない。」 「朝起きたら中国国旗が、はためいてるといいのに。」 - 劉振亜さん

中国による台湾侵攻を歓迎するかのような発言。 ヤヤさんは中国の武力侵攻を支持したとして、台湾の居留許可を取り消される事態に。 さらに、同じ理由で他に 2 人の中国人女性が退去を命じられました。 結婚を機に台湾で暮らす中国出身者は、36 万人以上いるとされます。 中国は「台湾は必ず統一される」という考えを広める宣伝工作に力を入れていて、中国出身者の一部が、これに呼応しているのではと、疑いの目が向けられるようになったのです。

母が中国出身の移民 2 世、劉俊良さん。 母親は中国・重慶出身、自身は台湾で生まれ育ちました。 実は、ヤヤさんの会見に足を運んだことがあるといいます。 ヤヤさんについては「発言の責任を取るべき」と考える一方で、ヤヤさんに抗議する一部の人々に恐怖を感じたといいます。

「全員ではないですが、10 人に 3 - 4 人は発言が、とても差別的、暴力的でした。 不満は中国からの移住者全体に向けられているようでした。 この感情の矛先が、ある日、私に向かうかもと思うと不安です. (劉俊良さん)」

劉さんは台湾で、中国からの移住者への、ある種の拒否感を昔から感じていたと話します。 母親が中国大陸出身であることも長い間、周りに明かしていませんでした。 「母と話した友人が(発音で)中国からの移住者だと気づき、私に聞いてきても、『違う』と答えていました。(劉俊良さん)」 大学の研究課題をきっかけに、自身の出自に向き合うことを決めた劉さん。 いまは自身を「移住者の背景を持つ台湾人」と認識しています。

劉さんとともに社会の共生をすすめる活動を行う劉千萍さん。 中国からの移住者の子どもは、台湾で生まれ育った「台湾の若者」でもあると強調します。 「移民青年倡議陣線」理事長・劉千萍さん「(中国からの移住者の子は)『自分の意志がない』とか、中国の影響に抵抗できない集団とみなされがちです。 これは危険だと思います。 台湾の人々の移住者への無理解を助長するからです。」

一方、中国側は「ヤヤ事件」などについて、「人道を顧みない措置だ」と台湾側の対応を批判。 専門家は「中国が宣伝工作に加担するよう、中国人個人へ呼びかけていることに問題がある」と指摘します。 「中国国家の台湾に対する強烈な圧力を見ると、(中国に)反感を覚える人が多いというのは避けられないこと。 『台湾の社会が中国人配偶者を差別している』と、中国側が一方的に宣伝するのは、私はこれも違うと思う。(台湾の政治・社会に詳しい台湾・清華大学、小笠原欣幸教授)」 中国と台湾の対立が深まる中、移住者や、その子どもたちが抱える生きづらさは深まっています。 (日テレ = 6-14-25)


香港当局、著名民主活動家を起訴 国安法違反、「外国に制裁求めた」

外国勢力と結託して国家安全に危害を加えたなどとして、香港当局は、著名な民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏を香港国家安全維持法(国安法)違反の罪で起訴した。 香港メディアが 6 日報じた。 香港紙「明報」によると、黄氏の起訴内容は、2020 年 7 月 - 11 月、外国の組織や人物に香港や中国への制裁を求め、法執行や政策の実施を妨害したというもの。 具体的にどのような言動が罪に問われたかは判明していない。

黄氏は民主的な選挙の実現を求めて香港の若者らが中心部を占拠した 14 年のデモ「雨傘運動」の学生リーダーの一人で、19 年には米議会の公聴会で証言したこともある。 昨年 11 月、別の国安法違反の罪で拘禁 4 年 8 カ月の実刑判決を受けて服役している。 反体制的な言動を取り締まる香港国安法は今月 30 日、施行から 5 年を迎える。 (高田正幸、asahi = 6-6-25)


夫奪われ「一生分の涙を流した」 天安門事件 36 年、妻は伝え続ける

いつか、あのとき夫のために献血してくれた人を探して、お礼を伝えたい。 北京に住む尤維潔(ユーウェイチエ)さん (71) は 36 年間、そんな思いを抱えてきた。 しかし、あの出来事を公に話すことは許されず、恩人を捜すことはかなわないままだ。 1989 年 6 月 4 日の真夜中。 午前 1 時前だったと記憶している。 当時 42 歳だった夫の楊明湖(ヤンミンフー)さんは「銃声が聞こえた」と起き出した。

2 カ月近く前から、北京中心部の天安門広場では、学生たちが中国政府への抗議活動を続けていた。 文化大革命の混乱の影響を受けても学問を志し、30 歳代で大学に通った楊さんは、そんな学生たちの身を案じて一人、自転車で現場に向かっていった。

学生たちの主張に共感していた

銃声は、のちに「天安門事件」として世界に知られることになる武力弾圧の始まりだった。 学生たちは当時、汚職の防止や言論・集会の自由などを訴えていた。 尤さんたちは学生たちの主張に共感していたし、「ほかの多くの市民もご飯や水を学生たちに届けていた」と振り返る。 夫を送り出した後で、尤さんは後悔した。 一晩中待っても帰ってこない。 朝になって搬送先の病院に呼び出された。 病院の入り口では女性が泣き崩れ、救急治療室はけが人でいっぱいだった。 夫は腹部に銃弾を受けていた。 同室に入院していた年上の男性は「戦争も経験したが、こんなひどい状況はみたことがない」と言った。

医者は「砕けた骨盤は手の出しようがない」と言った。 それでも輸血のために献血してくれる人を探し、夫と同じ AB 型の男性 4 人が応じてくれた。 「落ち着いたらお礼に行こう。」 そう夫を励ました。 5 日夜、夫は何か食べたいと訴えたが、医者は「まだだ」と言った。 尤さんは夫に「もう少しだけがんばって」と伝えた。 それが最後の会話になった。 夫は 6 日朝に息を引き取った。 事件からの 1 年で、尤さんは「一生分の涙を流し尽くした。」

「批判こそ、中国よりよく」

天安門事件で犠牲となった人の数について、中国政府は 319 人としている。 しかし、軍による市民への発砲や大量の死傷者が目撃されており、実際の犠牲者ははるかに多かったと指摘される。 政府は民主化運動を「反革命動乱」と位置づけており、この立場は今も変わっていない。 これに対し、尤さんら事件の遺族でつくるグループ「天安門の母」は、事件の真相解明と検証を求めてきた。 今年も 4 日を前に声明を出し、「遺族だけでなく、国民全体の心にも重くのしかかる歴史的大事件だ」として政府に対話を呼びかけた。

尤さんは「法治国家というならば、国の指導者たちも含めて人々は法の下で平等のはずだ」と述べ、司法手続きによる解決や遺族への謝罪を求める。 こうした批判の声こそ、中国をよりよい国にすると信じている。 しかし、中国政府の社会への締め付けは厳しさを増しており、事件の評価を見直す機運はまるでない。 かつては毎年大規模な追悼集会が開かれていた香港でも言論への締め付けが厳しくなり、香港メディアの記者が尤さんの元に取材に来なくなったという。

「天安門の母」は高齢化が進み、毎年、メンバーである遺族が亡くなっている。 尤さんが見舞いに行ったある遺族は、「事件のことは、ずっと心にある。 永遠に忘れない。」と語ったという。 仲間が先に旅立っても、精神をずっと受け継ぎ、歴史からこの事件を風化させない。 尤さんはそう決めている。 (北京・畑宗太郎、asahi = 6-4-25)

天安門事件

1989 年 4 月、中国共産党の改革派指導者だった胡耀邦(フーヤオパン)・元総書記が死去。 追悼する多数の学生や市民が北京の天安門広場に集まり、民主化を求める大規模な運動に発展した。 ケ小平(トンシアオピン)ら党指導部は運動を「動乱」と断じ、6 月 3 日夜から 4 日未明にかけて軍を投入して運動を制圧。 当局は死者を 319 人と発表したが、実際の犠牲者ははるかに多かったとされる。


中国 26 都市の地下鉄が巨額赤字に - 香港メディア

2025 年 6 月 2 日、香港メディア・香港 01 は、中国本土の 26 都市で地下鉄が巨額の赤字を抱えていると報じた。 記事は、重慶市で先月 29 日に公聴会が開かれ、05 年の開通から 20 年間 2 元(約 40 円)だった地下鉄の初乗り運賃を 3 元(約 60 円)に引き上げる提案が示されたと紹介。 この 20 年で営業距離が 13 キロ ら約 500 キロに拡大したのに伴い運営コストも増大しており、23 年は総収入 30 億元(約 600 億円)に対して運営コストが 111 億元(約 2,200 億円)に上り、政府補助金の約 43 億元(約 860 億円)を差し引いても巨額の赤字が残る状態に陥っていると伝えた。

そして、経営が厳しい地下鉄は重慶市にとどまらないとして、中国の交通メディア「RT 軌道交通」がまとめたデータによると、昨年は地下鉄を所有する 29 都市のうち、26 都市が政府の補助金を差し引くと赤字になったと指摘。 不動産開発で交通の経営を補完するモデルを打ち出している広東省深セン市の地下鉄は昨年赤字額が 330 億元(約 6,600 億円)を超えたとした。

その上で、地下鉄の建設費用が 1 キロ当たり 5 - 10 億元(約 100 - 200 億円)かかると言われ、人件費の上昇に伴って日常的な運営コストも高まっていることが各地の地下鉄経営を圧迫していると伝えたほか、1 日の旅客輸送密度を 1 キロ当たり 7,000 人以上とする国務院の要求を満たしている都市はわずか 17 都市にとどまっていることを指摘した。

記事は、1 元や 2 元の値上げでは経営状況を好転できない各地の地下鉄では経費削減に向けた取り組みを始めており、広東省仏山市の地下鉄では先月より最終列車を 30 分早めたほか、運行間隔を広げたと紹介。 さらに、駅構内の照明を暗くしたり、エスカレーターや冷房の運転を停止したりしていることで、利用者の間からは「もうすぐ経営破綻するのではないか」との声さえ聞かれると伝えた。 (川尻、Record China = 6-3-25)


中国山東省の化学工場の爆発、世界の殺虫剤供給に影響か - 中国メディア

2025 年 5 月 28 日、中国メディアの澎湃新聞は、山東省の化学工場で発生した爆発事故により世界の殺虫剤供給に影響が生じる可能性があることを報じた。 報道によると、中国山東省高密市にある山東友道化学の工場で 27 日正午前に大規模な爆発があり、同日夜の時点で 5 人が死亡、6 人が行方不明となり、19 人が負傷した。

澎湃新聞は山東省友道化学について、高効率で毒性の低い農薬やその中間体の研究開発と生産を手掛けており、主要製品にはクロラントラニリプロールの原薬やフロアブル剤(微粒子を水に分散させた液体製剤)が含まれていると紹介。 クロラントラニリプロールは毒性の低い殺虫剤で、水稲や大豆、綿花、果物、野菜などの農作物に広く利用されており、2008 年の発売以降世界で最も多く売れる殺虫剤製品になっていると伝えた。

そして、同社が昨年 1 月にクロラントラニリプロールの合計生産能力が 1 万 1,000 トンに達し、世界最大のクロラントラニリプロール原薬生産企業になったことを発表し、生産工場では全自動化によりコスト削減と同時に環境に優しく安全な生産を実現しているという当時の報道を紹介した。 その上で、中国の証券会社・光大証券が今回の爆発事故について、クロラントラニリプロールの短期的な供給に影響を及ぼし、価格が上昇する可能性があるとの見解を示したことを伝えている。 (川尻、Record China = 5-30-25)


米 ルビオ国務長官、一部の中国人留学生のビザ取り消しと発表

アメリカのトランプ政権が留学生の受け入れの厳格化を進めるなか、ルビオ国務長官は、アメリカの大学などに留学する中国人の学生で、中国共産党と関係がある人などのビザの取り消しを始めると発表しました。 アメリカのルビオ国務長官は 28 日、声明で、アメリカの大学などに留学する中国人の学生で、中国共産党と関係があったり、重要分野を専攻したりする人のビザの取り消しを始めると発表しました。 声明の中で、ルビオ長官は「積極的にビザを取り消す方針だ」としています。

また、「中国と香港からのすべてのビザの申請についても審査を強化するため、基準を見直す」としています。 政治専門サイト「ポリティコ」は「単なる脅しであったとしても、中国人の学生たちの間でアメリカの大学に対する人気を決定的に終わらせることになるだろう」と指摘しています。 トランプ政権は、留学を希望する人たちの学生ビザについて審査のための面接の新規受け付けを一時停止するよう指示したほか、ハーバード大学に対しては、キャンパス内で暴力や反ユダヤ主義を助長したなどの理由で留学生を受け入れるための認定を取り消すなど、留学生の受け入れの厳格化を進めています。

中国からアメリカへの留学生 27 万 7,000 人余

アメリカの教育研究機関 IIE の最新の統計によりますと、2023 年度の中国からアメリカへの留学生の数は 27 万 7,000 人余りとなっています。 これは前の年から 4% 減ったものの、アメリカに留学している学生全体のおよそ 25% を占めていて、33 万人余りのインドに次ぎ 2 番目に多くなっています。 IIE によりますと、アメリカへの留学生の数は 2023 年度は 110 万人余りと、これまでに最も多くなったということです。 また、日本人の留学生はおよそ 1 万 3,000 人と 13番目に多くなっています。 (NHK = 5-29-25)