23 年度の温室効果ガス排出、過去最低を更新 原発・再エネ増が影響

環境省は 25 日、2023 年度の国内の温室効果ガスの総排出量は 10 億 7,100 万トンで、2 年連続で減少したと発表した。 記録のある 1990 年度以降での過去最低も更新。 電源構成に占める再生可能エネルギーや原発の割合が計 3 割超に高まったことや、製造業の国内生産活動が減った影響と考えられるという。 総排出量は 22 年度より 4.0% (4,490 万トン)減少した。 23 年度の電源構成の割合は、再生可能エネルギーが前年度比 1.0 ポイント増の 22.9%、原発は前年度から 2.9 ポイント増えて 8.5% となり、電源の脱炭素化が進んだという。

冷蔵庫などの冷媒に使われ、温室効果の高い代替フロンの 23 年の排出量は 3,700 万トンで、前年比 3.9% 減少。 法律に基づく生産量や消費量の規制、温室効果の小さい冷媒への転換が進んだ効果とみられるという。 森林などによる吸収量は、22 年度とほぼ同じで 5,370 万トン。排出量から吸収量を差し引くと、10 億 1,700 万トンで、22 年度比で 4.2% (4,490 万トン)減った。 政府は、50 年に排出量を実質ゼロとする目標を掲げているが、「順調に減少している」としている。

環境省の担当者は「今後は排出削減が難しくなると見込まれるため、ますます吸収源が重要になる」と説明。 吸収源となる沖合での海藻の生産・育成や、二酸化炭素を吸収するコンクリートの普及に向けた検討を進めるという。 (福地慶太郎、asahi = 4-25-25)


浮体式洋上風力、北九州市沖に 商用化は 2 例目 中国電力など 6 社で

風力発電プラントなどを手がける「グローカル(広島県呉市)」や中国電力など 6 社は 22 日、北九州市沖で浮体式洋上風力発電所の商用運転を始めたと発表した。 浮体式洋上風力発電の商用化は、長崎県五島市に次いで国内 2 例目。 発電した電気はすべて九州電力送配電に売る。 6 社が出資し設立した「ひびきフローティングウィンドパワー(呉市)」が所有、運用する。 最大の高さが 122 メートルの風車を 51 メートル四方の浮体に載せ、北九州港の沖合 15 キロメートルの洋上に浮かべている。 最大出力は 3 千キロワット。

洋上風力は、海底に基礎を固定する「着床式」と、基礎を海面に浮かせる浮体式に大別される。 浮体式は水深の深い海域にも設置ができ、遠浅の海が少ない日本に適しているとされる。 設置可能な海域は、着床式の約 5 倍の広さという。 今回の浮体は、「ロ」の字の形をした「バージ型」と呼ばれるもの。 単純な構造で費用が少なく大量生産に適しているとされる。 グローカルの奥原誠次郎社長は同日の会見で「日本では沖合の深いところで環境影響へ配慮しながら、大きなエネルギーをできるだけ安くとりださなければいけない。 今回大きな一歩を踏み出す。」と話した。 (野口陽、松本真弥、asahi = 4-22-25)


トランプ氏が石炭増産目指す大統領令、環境団体は猛反発

[ワシントン] トランプ米大統領は 8 日、国内の石炭増産を促す大統領令に署名した。 大統領復帰以来、米国の化石燃料生産拡大やエネルギー・環境関連規制の緩和ないし撤廃を推進する取り組みの一環だ。 米国の電源構成で石炭火力発電が占める比率は 2000 年の 50% から 20% 弱に低下している。 掘削技術の発達でよりクリーンな天然ガスの生産が増加したほか、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及が理由だ。 一方米国内では、人工知能 (AI) 向けデータセンターの建設ラッシュなどで電力需要も急拡大している。

こうした中でトランプ氏はホワイトハウスに招いた炭鉱労働者を前に「われわれは見捨てられた産業を再生させる」と語り、10 年前に 7 万人だった炭鉱労働者が約 4 万人まで落ち込んだことに触れて「これらの労働者を仕事に復帰させる」と強調した。 大統領令には、閉鎖される公算が大きい石炭火力発電を維持する措置が盛り込まれた。 またライト・エネルギー長官に対して鉄鋼生産用の石炭を「重要鉱物」に指定するかどうか判断するよう指示。 指定されれば、大統領の緊急権限で石炭を増産できる条件が整う。

バーガム内務長官には、現在凍結している連邦所有地での新たな炭鉱開発向けリースを解禁するよう指示している。 ただ環境保護団体からは、空気を汚して競争力もない石炭火力発電を守るトランプ政権の計画は、過去のエネルギーにこだわり、消費者に余計な電力料金を負担させようとしているなどと強い批判の声が出ている。 (Jarrett Renshaw、Timothy Gardner、Trevor Hunnicutt、Reuters = 4-9-25)


タンチョウ繁殖の苫東厚真風力発電計画地 環境相が抜本的見直し要請

北海道苫小牧市と厚真町で、大阪ガスのグループ企業が計画する「苫東厚真風力発電事業」について環境相は、抜本的な見直しを求める意見を出した。 現場の湿地は国の特別天然記念物タンチョウの繁殖が確認されており、日本野鳥の会が「貴重な繁殖地を守るべきだ」として計画中止を求めている。 意見は 25 日。 風車の設置取りやめや配置の変更、追加の環境保全措置を求めた。 大ガス側はさらなる対応に迫られる。

準備書によれば、海岸に近い約 336 ヘクタールの区域内に出力 4,300 キロワット程度の風車を 10 基建設する計画。 2028 年度からの営業運転開始を目指している。 大ガス側はタンチョウの繁殖に配慮して風車 5 基を海側に設置する計画変更を行った。 しかし、環境相はタンチョウのほか、国の希少種に指定されているオジロワシやチュウヒの「移動経路の阻害や衝突事故、生息地放棄といった重大な影響が懸念される」と指摘した。

大ガス側は、朝日新聞の取材に「各自治体や住民の皆様からのご意見、真摯に受け止めております。 皆様のご意見を踏まえまして、本事業方針等について検討を重ねて参ります」とコメントしている。 タンチョウは北海道を代表するツル。 近年、保護活動によって数が回復し、道内の 24 年度の越冬分布調査では過去最多の 1,927 羽が確認されている。 生息地は道東が中心だが、今回の計画地付近は道内での分布の西端の一つとされる。 (日浦統、asahi = 3-28-25)


環境キャンペーン「アースアワー」が世界各地で開催 観光名所など 1 時間消灯

世界自然保護基金 (WWF) が主催する環境キャンペーン「アースアワー」が 22 日、世界各地で催された。 アースアワーは気候変動への意識を高めることを目的に、世界中で同じ日の同時刻から 1 時間、一斉に照明を消すイベント。 2007 年にオーストラリアで始まった。 毎年開催され、現在、180 以上の国・地域が参加している。 今年も世界各地のランドマークや観光名所、庁舎が 1 時間、暗闇に包まれた。 (AFP = 3-24-25)


森林切り開いた草原、生物多様性の回復に 75 年必要 菅平高原で調査

古くから人が火入れや草刈りをして管理・維持してきた半自然の古草原と、戦後に森林を切り開いて新たにつくられた再生草原。 一見したところ違いがよくわからないが、植物や昆虫といった生物の多様性やかかわりを、再生草原が古草原レベルまで回復するには少なくとも 75 年程度の管理が必要だと、神戸大の丑丸(うしまる)敦史教授(生態学)や筑波大、富山大などの研究チームが 13 日、国際専門誌に発表した。 長野県上田市の菅平高原で調査した。

半自然の古草原は、近代化や管理する人々の減少・高齢化による放棄で世界的にも減っており、日本でも 100 年前の 10 分の 1 以下に縮小。 貴重な動植物が絶滅の危機に瀕している。 そこで、管理を放棄したり植林したりしてできた森林を伐採し、人による管理を再び導入して再生草原をつくり生物多様性を回復しようという試みが世界でも広がっている。

研究チームは、2021 年と 22 年の 5 - 9 月の各月ごとに、菅平高原にある 14 のスキー場(古草原と再生草原が七つずつ)で 5 メートル x 200 メートルの枠を設け、虫が受粉を媒介する植物種とその花数、花を訪れたミツバチやチョウ、ハナアブの仲間などの昆虫種数と個体数を調べた。

植物と虫の関係は、特定の種同士の関係が多くなるスペシャリスト度という指標を計算した。 生物多様性が豊かだとこの指標が高いとされる。 15 種の植物については各地点で種ごとに最大 20 個体の花からめしべを採取し、付着した花粉の量を調べた。 うち 5 種では果実を最大 15 個体採取し、自然受粉による種子数を調べ、人工授粉との差をみた。

その結果、再生草原では草原となってからの期間が短いと全植物種、在来植物種が少なく、虫もハナアブなどハエ類が多いが、期間が長くなるにつれて全植物種、在来植物種が増え、ミツバチやチョウの仲間の割合が増加していった。 草原として 75 年程度維持されると、古草原の平均と同水準となった。 ただしミツバチやチョウ類の個体数は 75 年経ても古草原に及ばなかったという。 開花数は再生草原では初期は外来種が多く、長くなるにつれて在来種が増えるが特定の種に限られたという。

一方、植物と虫の関係では、再生草原は期間が長くなるにつれてスペシャリスト度が上がるが、75 年たっても古草原の平均水準には届かなかった。 花の受粉量や種子生産も期間が長くなるにつれて改善はするものの、古草原より少なかった。 研究チームの神戸大大学院博士課程の平山楽(がく)さんは「半自然草原はこの 100 年間で日本で最も失われた生態系。 まずは生物多様性や生態系の観点から価値の高い古草原を特定し、保全を最優先することが非常に重要。 草原を再生させるときには、種数だけでなくどんな在来種を導入すれば生物多様性の回復が早まるか、管理方法やアプローチを検討していきたい」という。

丑丸さんは「草原はすぐに再生できると思われている方が多いと思うが、そんなことはなく、本当に生物多様性の豊かな草原は限られた場所にしか残っていないことを知ってほしい。 一方、時間はかかるが、スキー場などで人が管理を続けていけば貴重な生物が多くくらす草原が回復する可能性があり、ネイチャーポジティブにつながる。」と話している。 論文は こちら。 (桜井林太郎、asahi = 3-13-25)


持ち越しのプラごみ条約交渉、8 月スイスで再開 今度こそ合意なるか

プラスチックごみ汚染に対処する国際条約策定に向けた政府間交渉会合が、8 月にスイスのジュネーブの国連欧州本部で再開されることが決まった。 昨年の韓国での会合では結論を持ち越し、閉幕していた。 各国の意見に隔たりがある中、改めての合意をめざす。 2022 年 3 月の国連環境総会で、計 5  回の交渉会合を開き、24 年中に条約内容をまとめることが決まった。

その最終会合が昨年 11 - 12 月に約 1 週間にわたって、韓国の釜山で開かれたが、交渉は難航。 ▽ プラ生産の規制、▽ 特定のプラ製品や化学物質の規制、▽ 資金支援のあり方 - - の 3 項目で合意が困難と議長が判断。 再開会合で策定作業を続けることになっていた。 会期は 8 月 5 ‐ 14 日の予定。 各国には意見の隔たりがあるものの、プラごみ対策の必要性では一致している。 一方、気候変動対策など国際協調に背を向ける米トランプ政権の影響など、議論の先行きには不確定要素も残る。 (玉木祥子、asahi = 3-4-25)


北陸電の旧式石炭火力、運転停止を 28 年度まで再延長 脱炭素に逆行

北陸電力は 27 日、3 月末までで運転を止める予定だった富山新港火力発電所(富山県射水市)の石炭 1 号機について、2028 年度まで運転を続けると発表した。 運転 50 年超の旧式で温室効果ガスの排出量が多く、当初は液化天然ガス (LNG) 火力に建て替えるかわりに 18 年度で停止する計画だった。 LNG火力はすでに稼働しているが、電力需要の増加に対応するためといい、「脱炭素」の流れに逆らって、運転延長を続けている。

石炭 1 号機は出力 25万キロワットで1971年に完成した。発電効率が38%以下と低い旧式の「亜臨界」方式で、最新の石炭火力設備よりも温室効果ガスの排出量が多い。 北陸電は同じ敷地内にLNG 火力の発電施設を建て、18 年から運転を始めた。 その際、国に提出した環境影響評価(アセスメント)で、石炭 1 号機の廃止を明言。温室効果ガスの排出量が減ることなどを理由に、通常 9 カ月はかかる審査を約 5 カ月に短縮した。

環境アセス、脱石炭で課題残す

だが、北陸電は 17 年、電力需要の増加などを理由に、石炭 1 号機の運転延長を発表。 当時の中川雅治環境相が「極めて遺憾で非常に残念」と批判していた。 環境省は、環境アセスの前提となった計画を変更しても違法にはならないとするが、同省幹部は「アセス法は事業者の自主性に任せるもので、事業者が約束したことを守らなくなれば、法律が形骸化する」と指摘した。 北陸電は今回の運転延長について、志賀原発の審査が見通せないことや能登半島地震で一部の火力発電所が停止したことを挙げ、「電力需要増や足元の供給力を考慮すると廃止は困難だと判断した」と説明した。

化石燃料の中でも温室効果ガスの排出量が多い石炭火力は、国際的な批判が強い。 日本政府は 35 年までに排出削減対策のない石炭火力は廃止すると主要 7 カ国 (G7) 間で約束し、北陸電の石炭 1 号機も対象だ。 NGO の集計では今年 2 月 1 日時点で、全国で運転中の石炭火力約 160 基のうち、石炭 1 号機と同じ亜臨界方式は 6 割も残っている。 廃止に向けた道筋は不透明なままだ。 (市野塊、asahi = 2-27-25)


JAL 「サメ肌旅客機」就航 国際線初、凹凸の塗膜 CO2 減らす

航空機に凹凸のある塗膜を施すことで空気抵抗を減らし、二酸化炭素 (CO2) の排出量を削減する実証実験が始まった。 ヒントにしたのは「サメ肌」だ。 日本航空はボーイング 787-9 の胴体部分の約 30% に「リブレット形状」と呼ばれる凹凸のある塗膜を施し、1 月 18 日に就航させた。 国際線での運航は世界初という。 サメは肌に微細な溝があり、水の抵抗を減らして速く泳げる。 これをヒントに考案された微細な溝構造がリブレットで、競泳用水着や船などに使われてきた。 航空機への応用も期待されていたが、加工が難しいことなどが課題だった。

そこで塗料開発などを手がけるオーウエル(大阪市)が開発したのが塗膜を施す手法だ。 凹凸のある型を使って塗膜にリブレット形状をつくる。 実験に参加している宇宙航空研究開発機構 (JAXA) などの試算では、機体の空気抵抗の低減率は約 0.24%。 成田 - フランクフルト(ドイツ)間を 1 年間運航した場合、燃料消費量が約 119 トン、CO 排出量は約 381 トン減らせると期待される。 約 2 万 7 千本のスギの年間吸収量に相当するという。

リブレットの技術は、凹凸のあるシールやフィルムを貼る方法で全日空などが導入している。 JAXA と オーウエル は、塗料の方が軽く、耐久性も高いと考えられると説明している。 実証実験では、燃料消費量や CO 排出量をどのぐらい減らせるかを確かめる。 JAXA が効果解析などを担当する。 結果をもとに、塗る面積や塗装する機体を増やしていきたいという。 オーウエルの担当者は取材に「航空機のカーボンニュートラル実現に貢献したい」と話した。 (佐々木凌、asahi = 1-26-25)


秋田・山形新幹線、太陽光電力で運行へ … JR 東日本が初導入

JR 東日本と東北電力は今年 4 月から、山形新幹線と秋田新幹線の運転用電力の約 2 割を太陽光発電でまかなう。 再生可能エネルギー由来の電力を新幹線の運行に導入するのは JR 東日本では初めてで、二酸化炭素排出量の削減にもつながる取り組みとなる。

両社の発表によると、秋田県や青森県などにある JR 東日本専用の太陽光発電所から、東北電力の送配電ネットワークを使って電力を運ぶ。 山形新幹線の福島 - 新庄駅間と秋田新幹線の盛岡 - 秋田駅間の運行に使われ、電力供給量は年間約 3,500 万キロ・ワット時(一般家庭約 1 万 1,200 世帯分に相当)と見込まれている。 JR 東の新幹線全体の供給電力の約 2% に相当する。

これにより、両区間の運行に伴って排出される二酸化炭素排出量は、年間で約 2 割(約 1 万 6,500 トン)削減できるという。 JR 東は二酸化炭素の排出と吸収・回収を 2050 年度に同量にすることで、排出の「実質ゼロ」を目指している。 担当者は「その実現への一歩となる」と話している。 (yomiuri = 1-21-25)


ロシア重油流出、「影響は数十年にも」 絶滅危惧種イルカの死体倍増

ロシアのタンカーが座礁して黒海に重油が流出した事故に関連し、絶滅危惧種のイルカ 58 頭の死体が見つかったと、ロシアの保護団体が 11 日、発表した。 事故の影響が濃厚で、5 日時点の 32 頭から 2 倍近くに増えた。 ロシアの専門家は「影響は数十年残る可能性がある」と警告している。 イルカの保護センター「デリファ」の発表によると、58 頭の死体は昨年 12 月 15 日の事故後に見つかり、死後 3 週間以内とみられる。 事故以前に死亡したとみられるイルカも 58 頭見つかった。

センターは「この時期にしては死体数が異常に多い。 重油に関係している可能性が高い。」とみている。 また、泳いでいたイルカの 1 頭は、背びれや胸びれ、頭部の一部が重油で黒くなっていた。 黒海には、ロシアなどが絶滅危惧種に指定するネズミイルカやバンドウイルカなどが生息。 特に小型のネズミイルカの被害が目立つという。 ロシアは国家レベルの緊急事態を宣言。 ボランティアも動員して汚染の除去にあたっているが、ロシアの専門家は地元メディアに「長期的な影響は数十年になる可能性がある」と話した。 (asahi = 1-12-25)


食品ロス削減、事業系の新目標は 60% 減に 8 年前倒しで半減を達成

政府の食品ロス削減推進会議は 24 日、第 2 次基本方針案を承認し、事業系食品ロス削減量を 2030 年度までに 00 年度比で 60% 削減するとした。 食品ロスについては、20 年に閣議決定された第 1 次方針で、事業系、家庭系共に 00 年度比で 30 年度までに半減させる目標を立てていた。 事業系の食品ロスは 22 年度に 236 万トンとなり、目標を 8 年前倒しで達成していた。

新たな目標の 60% 削減を実現するには、さらに 17 万トン減らし、219 万トンにする必要がある。 農林水産省外食・食文化課食品ロス・リサイクル対策室は「野心的な目標だが、外食での食べきりや商品購入の際の手前取りなど、国民全体の取り組みが鍵になる」としている。 家庭系食品ロスの目標は、新方針案でも 00 年度比 50% 減のまま維持された。 22 年度は 236 万トンで 00 年度比約 55%。 目標の 50% 減、216 万トンまではあと 20 万トン減らさなくてはならない。 25 日からパブリックコメントを募り、年度末までに閣議で第 2 次方針が決定される予定。 (大村美香、asahi = 12-24-24)


新幹線の防音壁を「太陽電池化」 JR 東海と積水化学が "従来のシリコン系と異なる材料" で試作

来年から実証実験

JR 東海と積水化学工業は 2024 年 12 月 18 日、太陽電池搭載の防音壁を共同開発する契約を締結し、あわせて試作品を開発したと発表しました。 両社は、東海道新幹線沿線に設置している日当たりの良い防音壁に「ペロブスカイト太陽電池」を搭載できるかの検討を始めています。 発電した電気は、駅などでの活用を想定しています。

防音壁に太陽電池を取り付ける場合、荷重を支える壁の基礎などが大規模な構造にならないよう、軽量にする必要があります。 そこで、従来のシリコン系と比べて、薄く軽量で柔軟なフィルム型ペロブスカイト太陽電池に着目。 さらにメンテナンスしやすいよう、太陽電池のみを容易に取り換えられるような防音壁を試作したといいます。

今後実用化に向けて、JR 東海の小牧研究施設に試作品を設置し、屋外環境の様々な条件下で発電性能を調べます。 また、列車通過時を想定した振動や風圧などの影響、施工性の確認なども進めます。  2025年1月から、小牧研究施設で実証実験を始める予定です。 (乗りものニュース = 12-22-24)


日鉄、高炉での CO2 削減 世界最高の 43%、石炭でなく水素を使用

日本製鉄は 20 日、高炉で鉄を作る際に、石炭のかわりに水素を使うことで二酸化炭素 (CO2) の排出量を大幅に減らす技術を確立したと発表した。 世界最高水準となる 43% の削減を、千葉県君津市にある試験炉で達成した。 現在主流となっている高炉での製鉄は、石炭を使って鉄鉱石から酸素を取り除く工程で CO2 が大量に出る。 日鉄は、石炭のかわりに加熱した水素を使うことで CO2 の排出を抑える試験に、一昨年 5 月から取り組んできた。

高炉内の熱のバランスを改善することで削減率が高まったという。 今後、削減率のさらなる向上に向けた技術開発を進め、大型高炉での実用化をめざす。 鉄鋼業界の CO2 排出量は日本全体の 1 割以上を占めている。 国内最大手の日鉄は、鉄スクラップを電気でとかす電炉の本格導入や、CO2 の回収・貯留なども進め、2050 年のカーボンニュートラルをめざす。 (山本精作、asahi = 12-20-24)


リニア大深度工事が原因 JR 東海認める 町田市の住宅に水や気泡

東京都町田市内のリニア中央新幹線トンネル工事現場近くで住宅の庭に水や気泡が湧き出た問題で、JR 東海は 19 日、シールドマシンによる掘削工事が原因と発表した。  トンネルから地面までに水や空気を遮る層がないなど複数の原因が重なったためと説明。 地表面の変位はなかったという。 地下 40 メートル以下の「大深度地下」の工事は、地上に影響が出ないという前提のもと、法律で地権者の同意や用地買収は不要とされる。 これについて、JR 東海は「地表の土地利用にかかわるような影響は出ていない」と説明している。

現場は大深度を通る第一首都圏トンネルのうち、川崎市から相模原市に至る「小野路工区」。 地下 45 メートルの掘進現場から約 40 メートル離れた民家で 10 月に確認され、掘削は中断された。 JR 東海によると、本格掘進の前に、地上部の水準測量や騒音を調べる「調査掘進」を実施してきた。 トンネルの掘削面を安定させるための気泡材の成分が地中のすき間や地層の境目を上昇。 地表近くの地下水と一緒にわき出たとみられる。 地中の状態に変化はなく、陥没の危険はなかったという。

大深度地下の工事をめぐっては東京外郭環状道路工事で 2020 年、東京都調布市の道路で陥没事故が発生している。 (細沢礼輝、asahi = 12-19-24)


廃プラスチックを歩道の舗装材に LIXIL、廃木材を混ぜて量産化

住宅設備大手の LIXIL は津市の工場で、再資源化が難しい廃プラスチックを再利用した素材「レビア」の量産を 12 月から始めた。 歩道や広場などに使われる舗装材として販売し、将来的に商品の幅を広げる予定だ。 主力のキッチン商品やビルサッシに並ぶ、年 1 千億円の売り上げを目指す。 近鉄久居駅から車で 10 分ほどの久居工場。 様々な樹脂が混在した「複合プラスチック」と呼ばれる廃プラが運び込まれる。 四角く大きな塊は 1 個 250 キロほどで、食品の包装などがぎっしり詰まっている。 主に東海地域の家庭ごみで、廃棄物の処理業者から買い取ったものだ。

まず、廃プラに混じる金属類などを取り除き、塊を砕いて洗う。 その上で、廃木材を混ぜ合わせ、加熱して粘土状にする。 これをアルミや樹脂などのサッシをつくるのと同じく、ところてんのように「押し出し成形」するとレビアになる。 レビアという名前は、「リサイクル」の「re」とスペイン語で命を表す「vida」をかけ合わせてつけたという。

3 年に及ぶ試行錯誤

作業に使う建屋では、7 年前までアルミサッシをつくっていた。 国内の住宅の着工が減って生産量が右肩下がりとなったことを受けていったん閉鎖していたが、新たな用途に転用した。 難しかったのは、廃プラと廃木材を混ぜ合わせる量と温度のバランスだ。 樹脂によって溶ける温度(融点)は異なり、温度が低すぎると溶けず、高すぎれば焦げてしまう。 千葉県野田市の研究所で何度も調合を変えて実験を繰り返した。

3 年に及ぶ試行錯誤を経て、焼却や埋め立てに回されていた複合プラスチックの再利用という新たな道を開いた。 当初は委託先の工場で生産し、2023 年 1 月に舗装材として販売を開始。 久居工場に場所を移して今月から量産化に踏み切った。 久居工場の一部にはレビアの舗装材が敷かれている。 歩いてみると、滑りやすそうなプラスチックの感覚はない。 試験結果では、れんがやコンクリートより滑りにくく、安全性も高いという。 来年の大阪・関西万博では、放送作家の小山薫堂氏が手がけるパビリオン(展示館)の舗装材に使われる予定で、知名度アップを狙う。

重さは半分程度、でも価格は

一方で、課題もある。 レビアの重さはコンクリート素材の半分程度だが、価格は一般的な舗装材の 2 倍以上するため、量産化によって価格を下げていく考えだ。 また、現状はグレーとブラウンの 2 色あるが、顧客の建設会社や住宅メーカーからは「色が濃く、空間で浮いてしまう」といった声が寄せられている。 来春に向けて、新色の販売を検討している。

宍戸弘昭レビア事業部長 (59) は「企業の対応などを見ていると、『環境に配慮した商品でなければ買わない』といった社会の意識の変化を感じる。 廃プラは日々、相当量が排出されており、レビアが貢献できる余地はまだまだあると思う」と話す。 次に商品化をめざすのはウッドデッキで、安全性などの品質試験を行っているところだ。 (伊藤裕香子、asahi = 12-14-24)


石炭灰の廃棄物に大量のレアアース、米科学者が発見 クリーンエネルギーの宝庫?

石炭を燃焼させた後に残る大量の石炭灰は池や埋め立て地に廃棄されており、水路に流出したり、土壌を汚染させたりする恐れがある。 その一方で、こうした有害廃棄物は、クリーンエネルギーの推進に必要な希土類元素(レアアース)の宝庫となる可能性も秘めている。 テキサス大学が主導した最近の研究によると、科学者らは米国各地の発電所から発生した石炭灰を分析し、最大 1,100 万トンのレアアースを含有していることを発見した。 これは米国国内の埋蔵量の 8 倍近い量で、金額にして約 84 億ドル(約 1 兆 2,600 億円)に上る。

今回の発見は、新たな採掘の必要なしに米国内でレアアースを調達する大きなポテンシャルを秘めている - -。 論文を執筆したテキサス大学ジャクソン地球科学大学院の研究教授、ブリジェット・スキャンロン氏はそう語る。 「まさに『ゴミを宝に』というスローガンの実例だ。」 「我々が試みているのは基本的に、サイクルを完結させて廃棄物を利用し、廃棄物の中にある資源を回収することだ。」 こうしたいわゆるレアアースは、スカンジウムやネオジム、イットリウムといった地球のコアに存在する金属元素の集合体を指す。 レアアースは電気自動車 (EV) や太陽光パネル、風力タービンを含むクリーンテクノロジーにおいて重要な役割を果たす。

その名前とは裏腹に、レアアースは自然界では珍しくない。 ただ、周囲の鉱石から抽出・分離するのは難しく、需要に供給が追いついていない状況だ。 世界が地球温暖化を招く化石燃料からの脱却を進める中、今後はさらに多くのレアアースが必要になる見通し。 国際エネルギー機関 (IEA) によると、レアアースの需要は 2040 年までに最大で現在の 7 倍に跳ね上がるとみられている。

ただ、米国の供給量は依然として少なく、国内にある大規模なレアアース鉱山はカリフォルニア州のマウンテンパスのみだ。 米国は現在レアアースの 95% 以上を輸入しているが、その大部分は中国から来ており、サプライチェーン(供給網)や安全保障上の問題を突きつけている。 スキャンロン氏は CNN の取材に、「我々は状況を改善する必要がある」と説明。 このため、従来とは異なるレアアースの供給源に目を向ける動きが出ており、「こうした供給源の一つが石炭や石炭副産物だ」と指摘した。

地下の鉱床から直接採掘する場合に比べ、石炭灰はレアアースの濃度が比較的低い。 長所は入手のしやすさで、米国では毎年約 7,000 万トンの石炭灰が発生している。 (CNN = 12-7-24)


パナが再エネ 100% で英工場を稼働 水素事業の拠点に、実証実験で

パナソニックは 3 日、英南西部カーディフの工場を水素や太陽光を使った再生可能エネルギー 100% で動かす実証実験の試運転を始めた。 英国は、エネルギー源としての水素の活用に力を入れており、環境先進地の欧州で水素関連事業を広める拠点としたい考えだ。 この工場は電子レンジの組み立てを担い、年間消費電力は約 1 ギガワット時。 実証実験は来年 3 月末までに始める。

屋上のソーラーパネルで太陽光発電をし、天候で変わる発電量に合わせて、自社製の純水素型燃料電池でも発電する。 水素は、地元の風力発電の電気を使ってつくることで、製造時にも使用時にも二酸化炭素を出さない「グリーン水素」を購入。 工場脇にある燃料電池で酸素と反応させ、電気と温水に変える。 使わない分は蓄電池にため、温水は空調などに活用する。 同様の取り組みは、パナソニックの滋賀県草津市の工場でも進めており、海外では初となる。

英国では、2022 年 2 月のロシアによるウクライナ侵攻以降、電力価格が高騰した。 パナソニックによると、21 年 8 月の 1 キロワット時あたり 11.2 円から、1 年間で約 6 倍の 67.7 円となった。 脱化石燃料の流れもあり、水素への期待が高まっているという。 パナソニックは、水素関連事業の規模が 30 年代に世界で 1 千億円程度になると見込む。 実証実験を通じ、欧州の天候に合わせた燃料電池の動かし方の知見を集めるほか、欧州の企業との連携を深める考えだ。 品田正弘社長は報道陣に「多くの企業に来てもらい、互いに知恵を出し合いながら未来をつくっていけたらいい」と話した。 (カーディフ・杉山歩、asahi = 12-4-24)


山形沖で造礁サンゴ発見、北限は 80 キロ北へ 低水温でも生息可能か

日本海に面した山形県鶴岡市加茂の海岸約 20 メートル沖の海底で、サンゴの一種「キクメイシモドキ」が見つかった。 固い殻を持ち、サンゴ礁地形をつくる造礁サンゴの一種。 これまで、国内で造礁サンゴが生息できる北限は新潟県の佐渡島と考えられており、約 80 キロ北上したことになる。 初めてサンゴの存在に気づいたのは、地元のダイビングショップ「アーバンスポーツ」のスタッフ 。 2023 年 4 月に見つけ、写真を SNS で発信した。 今年 10 月には、SNS を通じて知った東京大学大学院理学系研究科の山野博哉教授 (54) が、現地で海底を調査し、全部で 9 カ所に分布しているのを確認した。

山野教授によると、キクメイシモドキの特徴は水温が低く、濁った環境でも生息できることだという。 これまで、月の平均水温が低くても 10 度までなら生存できると思われていたが、同海域では冬場、月の平均水温は約 8 度まで下がる。サンゴの大きさから、すでに数年ほど成長したものとみられるという。 想定より低い水温でも成長できたことについて山野教授は「温暖化や海流の変化などの可能性もあるが、キクメイシモドキはそもそも、さらに低い水温でも生息できる種だった可能性がある」と指摘。 「造礁サンゴの分布図がこれまでよりも北側に変わるのではないか」と話す。

12 月には、こうした研究内容を論文で発表する予定だ。 同ダイブショップ代表の相星克文さん (63) は「静かにゆっくりと北上し、冷たい海で定着したと思うと、いとおしくなります」と目を細めた。 (恵原弘太郎、asahi = 11-25-24)


COP29 閉幕、資金案に合意 先進国側が 35 年までに年 3 千億ドル

アゼルバイジャンのバクーで開かれた国連気候変動会議 (COP29) は 24 日、途上国支援の新たな資金目標として、先進国側が 2035 年までに年 3 千億ドル(約 45 兆円)を出すことで合意し、閉幕した。 官民あわせて 1.3 兆ドル(約 200 兆円)への投資拡大を呼びかけることも決めた。 会期は 22 日までの予定だったが、先進国と途上国の意見が割れる中で交渉は難航。 24 日の明け方まで延長した。

途上国の脱炭素化や異常気象による被害対応を支援する「気候資金」は、COP29 で最大の焦点だった。 先進国は 09 年、途上国に対し年 1 千億ドル(約 15 兆円)の資金を出すことを約束。 25 年までに新しい目標を決めることになっていた。 成果文書では、▽ 先進国側からの年 1 千億ドルの資金を 35年までに 3 倍の年 3 千億ドルに増やす、▽ 官民含めて 35 年までに少なくとも年 1.3 兆ドルの投資を呼びかける、▽ 途上国も任意で資金を出すことを奨励する - - などが入った。

一方、脱化石燃料をめぐっては、昨年の COP28 での成果文書の確認にとどまった。 最近の COP では、徐々に脱化石燃料をめぐる表現が強まっていたが、目立った前進は乏しかった。 今回は、紛争や分断が続く世界情勢の中で結束できるかが試された COP だった。 パリ協定脱退を示唆する米国のトランプ次期大統領の就任を見据えた動きや、化石燃料産出国でもあるアゼルバイジャンの議長国としての資質を疑う声もあった。

会期延長後の 23 日にも、資金の総額や支援内容などで折り合えず、議長国が設けた非公開の会合を島国や後発開発途上国などが退出する事態になった。 24 日未明、各国への個別交渉のために中断しながらも全体会合が進み、2 週間にわたる議論になんとか着地点を見いだした。

COP29 では来年 2 月までに各国が提出する 35 年までの新たな削減目標も、英国などが率先して発表した。 日本の目標設定の議論にも影響しそうだ。 来年は現在の気候変動対策の枠組みとなっている国際ルール「パリ協定」が 15 年に採択されてから 10 年を迎える。 COP30 は、25 年 11 月にブラジル北部のベレンで開催される。(バクー・市野塊、福地慶太郎、合田禄、asahi = 11-24-24)

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COP29 が開幕、危機脱出の道探る 2 週間 資金や化石燃料焦点に

国連気候変動会議 (COP29) が 11 日、アゼルバイジャンの首都バクーで始まった。 約 200 の国・地域の代表が一堂に会し、温室効果ガスを出す化石燃料の扱いや、途上国支援の資金目標などを議論する。 2015 年に国際ルール「パリ協定」が採択されてから 10 年を迎えるのを前に、気候変動は深刻さを増すばかりだ。 世界は一丸となって危機を乗り越える道を見つけられるのか。 22 日まで、2 週間の交渉が幕を開けた。

現代社会で、世界中の人々の暮らしや経済を支えているのはエネルギーだ。 しかし、これまでの化石燃料中心のエネルギーでは温室効果ガスが排出され、世界気象機関 (WMO) によると、大気中の温室効果ガスの世界平均濃度が 23 年も観測史上最高を更新した。 「地球沸騰」とも呼ばれた昨夏に続き、今夏も世界の平均気温は過去最高。 日本でも 7 月の平均気温が観測史上最も高かった。 世界は「気候が崩壊する真っただ中(グテーレス国連事務総長)」にある。

迫る危機の中で、世界は温室効果ガスを出さないエネルギー構造へと大きく転換し始めている。 昨年、中東ドバイであった COP28 では、産業革命前からの気温上昇を 1.5 度に抑えるというパリ協定の目標達成のため、「この 10 年(2030 年まで)で化石燃料からの脱却を加速させる」ことに合意。 世界の再生可能エネルギーの発電容量を 3 倍にすることや原発の活用も決めた。  国際エネルギー機関 (IEA) は今年 10 月の報告書で、30 年までに再エネが 2.7 倍になるとの予測を公表。 20 年代後半には需要のピークを超えた石油や天然ガスが余る可能性も指摘した。

COP29 では、昨年は合意できなかった化石燃料の「段階的廃止」という表現の取り扱いや、途上国の脱炭素化や異常気象の被害に対応するための「気候資金」の新たな目標額も論点だ。 こうした論点で立場の違いを乗り越え、対策の加速と結束の強化につながる成果が得られるかが、COP29 の成否を決める。 ただ、米大統領選で勝利したトランプ氏や、欧州議会での極右勢力の伸長など、気候変動対策に否定的な動きも勢いを増し、ウクライナをはじめ、各地で紛争がやまない。 会議の行方は予断を許さない。

議長国アゼルバイジャンのババエフ環境・天然資源相は開会式で「アゼルバイジャンは、橋をかけることができるが、渡るのは皆さんだ。 世界のために連帯して前進しよう。」と呼びかけた。 気候変動枠組み条約のスティル事務局長は「成果なしにバクーを去るわけにはいかない。 今こそ、世界的な協力が機能停止に陥っていないことを示す時だ。 ともに立ち上がろう。」と語った。(バクー・市野塊、福地慶太郎、asahi = 11-11-24)


世界のサンゴ、44% が絶滅危機 気候変動が脅威、COP29 で報告

国際自然保護連合 (IUCN) は 13 日、サンゴ礁をつくる「造礁サンゴ」の 4 割以上が絶滅の危機に瀕しているとする報告書を出した。 海水温の上昇が大きな脅威になっているという。 アゼルバイジャンの首都バクーで開催されている国連気候変動会議 (COP29) で公表した。 世界の造礁サンゴ 892 種について、現在の状況や気候変動などによる将来の影響を考慮し、評価した。 その結果、44% は絶滅危惧種に分類された。

この割合は、2008 年の前回評価の 33% から 10 ポイント以上悪化した。 最大の脅威は気候変動による海水温の上昇という。 IUCN のグレーテル・アギラー事務局長は「急速に変化する気候が地球上の生き物に深刻な影響を与えている」と強調する。

日本のサンゴにも危機

日本に分布する造礁サンゴも、評価した約 460 種のうち、白化に弱いとされるミドリイシ属やハナヤサイサンゴ属などを含む 178 種が絶滅危惧種とされた。 このうち 122 種は、今回新たに絶滅危惧種に分類されたという。 造礁サンゴに詳しい宮崎大の深見裕伸教授は「日本の絶滅危惧種が大幅に増えたのは、高水温による白化の影響が大きい。 高温の影響は海の中にも広がっていて、危機的な状況は今後も継続する可能性が高い」とコメントしている。

サンゴ礁は、世界の海の 0.2% 程度の面積に過ぎないが、海洋魚種の 4 分の 1 以上が生息するとされ、生物多様性の重要な場所。 高潮などに対する防波堤の役割や、観光資源としての価値も大きい。 (矢田文、asahi = 11-13-24)


バイオ燃料対応の乗用車普及に支援策 経産省が行動計画策定へ

経済産業省は 11 日、2030 年代から新しく販売される全ての乗用車に対し、植物由来のバイオ燃料を混合したガソリンに対応できるよう求める方針を決めた。 来夏までに、普及に向けた支援策などを盛り込んだ行動計画をまとめる。 バイオ燃料はトウモロコシやサトウキビからつくるエタノールが由来で、経産省は 20% 分をガソリンに混ぜた燃料の普及をめざす。 自動車メーカーに対応車の販売を求めるほか、石油元売りにも混合技術の発展に取り組んでもらう。 30 年代のなるべく早い時期に対応車を普及させる目標だ。

国内の二酸化炭素 (CO2) 排出量の 5 分の 1 を占める運輸部門の中でも、乗用車による排出量は 22 年度時点で約 8,600 万トンと 45% を占めた。 将来的には水素などからつくる代替燃料の導入も目指しているが、商用化には時間がかかる。 脱炭素化のためにもバイオ燃料の活用が求められているが、主な産地はブラジルや米国で、日本の自給率は 0%。 識者からは「国産化の可能性も追求するべきでは」などの声が出ている。 (多鹿ちなみ、asahi = 11-12-24)