原発の地元で商業施設誕生 住民から「同じような施設必要か」の声も

東京電力福島第一発電所が立地する福島県大熊町で、被災前の中心地だった JR 大野駅西側の一帯に商業施設などが完成し、15 日にオープン記念式典があった。 町の新たな中心として人の呼び込みに期待がかけられている。 一帯は「大野駅西交流エリア」と名付けられ、貸事務所やホールがある産業交流施設「CREVA おおくま」と飲食店やコンビニなどが入る商業施設「クマ SUN テラス」ができた。

記念式典では、吉田淳町長が「町の玄関口であるこの場所に、にぎわいを取り戻したいとの思いで計画を進めてきた」とあいさつ。 内堀雅雄知事や伊藤忠彦復興相ら政府幹部も祝辞を述べた。 CREVA の 1 階には、環境省の「中間貯蔵事業情報センター」が町内からリニューアルして移転。 駅前という立地を生かして、県内の除染で出た土や取り除いた枝葉などの除染土の最終処分や、同町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設について広報活動を始めた。

福島の除染土を抱えるもう一人の町長 「首都圏の人の責任とまでは」

同原発の廃炉に関わっている日本原子力研究開発機構の福島廃炉安全工学研究所も、同じ建物に情報発信施設を開いた。 ゲームを楽しみながら、廃炉と関連する分析技術を学べる趣向だ。 一方、低層の建物が集まったクマ SUN テラスには五つの飲食店と文具店、コンビニが入った。 記事の後半では、新しい施設ができたことについて住民に受け止めを聞きました。 「復興の後押しになる」と歓迎の声が上がる一方、避難指示解除の経緯から大熊町には「二つの町」ができることになり、複雑な思いで受け止める住民もいます。

福島市の女性 (52) は、いわき市に住む娘と孫と訪れて、文具店などを見て回った。 「これまでは辺りに立ち寄る場所はなかった。 きれいで明るい場所ができ、町を訪れ復興の現状を知るきっかけになると思う。」と話した。 1 万 1,505 人の人口を抱えていたが、全町避難を強いられた同町。 避難指示は、現在の役場がある大川原地区などで 2019 年に、今回の大野駅西などで 22 年に解除され、二段階の復興路線を採っている。 2 月末現在の町内の居住人口は住民登録がない人を含めて 1,370 人。

二段階の復興路線の結果、「二つの町」に

被災前に町の中心だった大野駅前ににぎわいを取り戻す施設が完成し、地元からは「復興の後押しになる」と歓迎の声があがった。 一方、避難指示解除の経緯から大熊町は二段階の復興路線を採用。 その結果、町内に「二つの町」を生む結果となり、複雑な思いで受け止める人もいる。 商業施設「クマ SUN テラス」のテナントには、秋田県出身の池田美帆さん (29) が店長を務めるカフェ「パニエ」も入った。

池田さんは、大野駅周辺の避難指示が解除された後の 22 年 11 月に町に移住。 学生インターンの受け入れや旧大野小学校を改修した交流施設「大熊インキュベーションセンター」の管理を担う地域づくり会社に就職した。 住民から「カフェやランチができるお店がほしい」という声を聞いた。 横浜市でパティシエをしていたこともあり、飲食で復興を後押ししたいと考えた。 「交流の場にして、駅前ににぎわいを戻せたら」と意気込む。

肉屋、魚屋、生鮮食品の店、自転車屋、電器店……。かつて大野駅前には商店街があり、あらゆるものがそろった。 大熊町で生まれ育ち、町内に暮らす南場優生海(ゆうみ)さん(29)は「(新施設に)たくさん足を運び、にぎわいを戻したい」と期待を寄せる。 一方、新施設から約 3 キロ南西に離れた大川原地区の災害公営住宅で生活する村井光さん (75) は「同じような施設が町内に二つ必要なのか」と話す。 首都圏から移住してきた 20 代の男性は「東京と同じような建物を作ることが復興なのだろうか」と疑問を呈す。

新エリアの総事業費約 112 億円

大熊町は原発事故での全町避難後、放射線量の高さで三つに再編された。大川原と中屋敷の両地区は 19 年に先行して避難指示が解除された。 大野駅周辺などは帰還困難区域となり、当面の帰還は難しいと見込まれていたため、町は大川原で復興のまちづくりを進めた。 町役場や義務教育学校、飲食店も入る商業施設などが相次いででき、公営住宅も整備された。

その後、放射線量が下がったこともあり、帰還困難区域の中から大野駅周辺など 860 ヘクタールを特定復興再生拠点に指定して除染を実施。 22 年 6 月に避難指示が解除された。 駅前のにぎわいを取り戻そうと、今回の 2 施設の整備には福島再生加速化交付金などから総事業費約 112 億円をかけた。 村井さんは「大川原が見捨てられてしまうように感じる」と話す。

「CREVA おおくま」のテナントで、震災前に町内にあった店は文具店 1 店舗のみ。 商工会の蜂須賀礼子会長は、かつて商店街にあった洋食店に出店を依頼したが、高齢などを理由に断られたという。 「地元の店が何軒か入れば、避難先の人も懐かしさで来てくれたと思う」と残念がる。 避難先で人気店となっているところもあるといい、「避難指示解除がもう少し早ければ震災前のように戻れた。解除が遅すぎた」と話す。

大野駅周辺では公共施設や住宅が解体されている。 急ピッチで生まれ変わろうとする町に、複雑な心境を抱える人も。 いわき市に避難する大学生の新田萌さん (20) は「町に活気があふれればいいと思うのと同時に、解体された建物は何らかの形で活用できなかったのかとも思う」と話す。 (波多野陽、滝口信之、asahi = 3-15-25)


なぜ九州は子どもが多いのか … 出生率が「西高東低」を示すのは気持ちの問題かもしれない

SNS 上で話題になっている「さす九」というワード。 「さすが九州」の略語で、男尊女卑の文化や価値観が根強く残っているとされる九州を皮肉交じりに批判するものだ。 ネットユーザーは「さす九」に乗っかる形で、自身が体験したエピソードや聞いた話を披露し、九州、おもに九州男児を批判するコメントを数多く投稿している。

中には、男尊女卑の意識と九州の幸福度や出生率の高さにも関連付けて意見するものも少なくない。 しかし、出生率に関してはその関連性は妥当なものではないとされている。 実は、九州に比べ東北のほうが、いわゆる「家父長制」に基づいた家族観を持っているというのだ。 出生率に影響するのは一体何なのか。 「週刊現代」 2024 年 12 月 21 日号より一部抜粋・再構成して解説する。

思い込みが出生率を上げる

西日本、特に九州で出生率は高い。 女性がたくさんの子供を産む理由は複雑だ。 第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生氏は「物価の安さが子育てのしやすい環境をつくり、出生率の高さに貢献しているのではないか」と指摘する。 「出生率には、所得よりも物価の高低のほうが影響が大きいと考えられます。 西日本に比べ、東日本は物価が高く、特に家賃や食費、教育費などの子育てに関係するコストが高い。 子供一人を育てるのであれば、物価は高くても所得も高い東京でも問題はないかもしれません。 しかし、2 人、3 人と増えていけば、物価が安い西日本のほうが圧倒的に子供を育てやすいと言えます。」

こうした経済的な環境が、子育てに積極的な風土を生んでいる可能性は高い。 加えて中村学園大学特任講師の益田仁氏は西日本、特に九州の「子育てに対する楽観的な意識」を指摘する。

「九州の人たちは、自分たちが住む場所を『子育てしやすい環境だ』と考えていることが調査でわかっています。 しかし、九州が他地域と比べて大幅に子育ての公的サポートが充実しているとか、親族の協力が得られやすいといったわけではありません。 住民が『わが街は子育てがしやすい』と思っていることが出生率に良い影響を及ぼしていると考えられるのです。」

出生率「西高東低」の背後には何があるのか。 この難題を解くことができれば、日本は少子高齢化のスパイラルから抜け出せるのかもしれない。 (現代ビジネス = 3-13-25)


ふるさと納税返礼品の米、「お得感」応募殺到 898 件発送できず

富山県は 5 日、ふるさと納税の米の返礼品で、想定以上の応募があり、約 900 件の発送ができなくなったと発表した。 米不足による価格高騰の影響と年末の「駆け込み」で殺到したとみている。 県税務課によると、寄付額 6 万円で県産米「富富富(ふふふ)」 5 キロ入りが半年間に 6 回届く返礼品で、昨年 12 月下旬から 1 月末までの 898 件の分。 2 月から発送予定だったが、同 3 日に米を提供する県内の業者から「準備ができず発送ができない」と同課に連絡があったという。

この返礼品は、2021 年度から扱っており、昨年度は 113 件だった。 だが、今年度は今年 1 月末までに約 15 倍の 1,635 件の応募があり、昨年末から集中した 898 件が対応できなかった。 全国で米の不足と高騰が続く中、寄付額を変更しなかった「お得感」や、寄付控除の 1 年を区切りとする 12 月の駆け込みがあったとみられる。 898 件のうち、636 件が 12 月だった。 同課の本吉真大課長は「寄付をいただけることは非常にありがたいことだけに、希望通りの返礼品を送れず申し訳ない」と話した。 (朝倉義統、asahi = 3-5-25)


札幌市清田区の道路陥没、舗装下で空洞の広がり確認 復旧めど立たず

札幌市清田区真栄 3 条2丁目の道道で陥没が見つかった問題で 27 日、穴の内部には舗装の上から見える範囲よりも大きな空洞があることがわかった。 現場の道路を管理する札幌市は、北海道開発局や寒地土木研究所、北海道の協力も得ながら原因究明を進めている。 午後 5 時時点で、復旧の見通しは立っていない。

清田区土木部によると、穴が発見された 26 日の時点では、大きさは縦 80 センチ、横 60 センチ、深さ 2 メートル程度だった。 その後、掘削するなどして調べると、舗装から見えない部分にも水平方向に空洞の広がりがあるとわかり、対象範囲を数メートル以上広げて調べている。 規模などは午後 5 時時点で確定していない。 また、現場の下には 2023 年から 24 年にかけて水道管が設置されたが、水道管の異常は確認されていない。

同じ道道では昨年 4 月、現場から南に約 80 メートル離れた場所でも道路陥没(縦 9.7 メートル、横 2.4 メートル、深さ 2 メートル)が見つかっているが、原因の特定には至らなかったという。 秋元克広市長は会見で「関係機関と緊密に連携しながら対応に当たっている。 早期の復旧に向けてスピード感を持って取り組む」などと述べた。 札幌市では、道路の空洞の有無を定期的に地上からレーダーで調査しており、現場は直近で 2019 年に実施していた。 当時は問題は確認されていなかったという。 (原知恵子、asahi = 2-27-25)


「いやになる」 魚沼で 6 時間に 21 センチの降雪 関越道では立ち往生

強い寒気が流れ込んだ影響で新潟県内は 18 日、山沿いを中心に大雪となった。 今月初旬からの積雪が残る魚沼市では 6 時間に 21 センチの降雪を観測。 関越道では前夜に立ち往生が発生した。 雪は 19 日にかけてピークとなるが、冬型の気圧配置はしばらくの間続く見込みで、新潟地方気象台や国土交通省は交通障害などへの警戒を呼びかけている。

魚沼市は 18 日、午後から本降りとなった。 除雪車が行き交い、住民らは雪かきに追われた。 自宅前の雪かきをしていた一人暮らしの横山幸子さん (84) は「今年の冬は晴れた日がない。 異常だよ。」とうんざりした表情。 毎日雪かきに追われ、「年寄りにはきついけど、やらないわけにはいかない。 本当にいやになる。」とぼやいた。 気象台によると、魚沼市小出は 18 日午後 6 時までの 6 時間に 21 センチと全国で最も多い降雪を観測。 積雪は同市守門で 301 センチとなった。 同市北部事務所の斉藤一宏次長は「ここ数年の中でも多い印象。 大雪が長く続き、除雪が済まないうちに、降り積もり続けるのが心配だ。」と話す。

関越道は 17 日午後 6 時すぎ、土樽パーキング(新潟県湯沢町)付近の上り線で、雪による事故をきっかけに立ち往生が発生した。 最大 205 台の車両が一時、約 3 キロにわたって列を作った。 ネクスコ東日本は一部区間を通行止めにして除雪作業を進めるとともに、簡易トイレやペットボトルの水、栄養補助食品などの救援物資 65 袋をドライバーに配布。 車の滞留は約 4 時間後の午後 10 時ごろに解消し、通行止めも 18 日午前 0 時に解除された。 JR 東日本は 18 日、除雪作業などのため上越線や飯山線、只見線の一部区間で運転を取りやめた。 運休は 19 日も続くという。 (山崎靖、エリアリポーター・久保田正、asahi = 2-18-25)


「安全管理いつも厳重なのに …」 3 人死亡の福島 温泉街に走った衝撃

源泉かけ流しの硫黄泉が人気の福島県内屈指の名湯で何が - -。 吾妻連峰のふもとにある福島市の高湯温泉で 18 日、源泉管理のため山中に入ったホテルの支配人や従業員ら 3 人が亡くなっているのが見つかった。 温泉街には大きな衝撃が走った。 3 人が亡くなった花月ハイランドホテルと同じ源泉を使う老舗旅館「吾妻屋」社長の遠藤淳一さん (69) は 18 日、「信じられない」とショックを受けた様子だった。 高湯温泉観光協会の HP によると、高湯温泉では複数の温泉旅館などが 9 カ所の源泉施設を使っている。

3 人とは現場でよく会っていた。 全員が温泉について詳しく、携帯電話とトランシーバーを所持し 3 人 1 組で行動するなど厳重な安全管理態勢だったという。 県警は、3 人が硫化水素ガスを吸った可能性があるとみて死因を調べている。 遠藤さんは 40 年以上、源泉から宿泊施設などに温泉を引く供給パイプが湯の花で詰まらないよう定期的に清掃している。 硫化水素ガスの濃度が高くなると中毒を起こす恐れがある。 風がない日や濃霧の日はガスが滞留しやすいため気をつける。

特に注意するのが大雪の時だ。 パイプ周辺は熱で雪が解け、雪中に空洞ができてガスがたまることがある。 助言を求めた専門家から「空洞にはまって高濃度のガスを吸うとガスマスクでは太刀打ちできない」と聞いた。 遠藤さんは作業前日にスコップでパイプの上の雪を落として空洞ができないようにしておくという。 3 人が亡くなったことに、「パイプから温泉が漏れてできた空洞に落ちたなど、何らかのトラブルがあったとしか考えられない。」 「温泉街の仲間が亡くなったのは残念でならない。 二度と同じことが起こらないようにしなければいけない。」と続けた。

近くの旅館で働く 50 代男性も大雪が降った際はパイプ周りの空洞をシャベルで崩して「ガス抜き」しながら源泉に向かうという。 「近くでこんなことが起きるなんて …」と言葉を失っていた。 (酒本友紀子、asahi = 2-18-25)


「アニョハセヨ」中部空港に韓国便が続々就航 清州と結ぶ新規路線も

中部空港(愛知県常滑市)に、韓国中部の清州(チョンジュ)空港と結ぶ新たな路線が就航した。 開港から間もなく 20 年を迎える中部空港の国際線は、韓国便が突出して増え続けており、今回の格安航空会社、エアロ K 航空で 5 社目になる。 運航初日となった 1月 31 日、空港職員らが横断幕を持って、韓国からの乗客を出迎えた。 9 歳と 10 歳の子どもを連れて利用した会社員イ・ガヨンさん (40) は「清州空港に自宅が近かったので。 名古屋城や名駅前を回り、みそカツを食べます。」 キム・ミンジさん (26) とキム・ソンボップさん (26) のカップルは、冬の飛?高山が素晴らしいと聞いて訪れたといい、「本数も増えるようなのでこの旅が良かったらまた来ます。」

中部空港の国際線は、現在週 341 便と、コロナ禍直前(2020 年 1 月)のピーク時の 7 割程度と中国便を中心に回復が遅れている。 しかしソウル、釜山で就航している韓国便は今回、初めて清州が加わり、週 64 便となり、同年 1 月の週 59 便を上回っている。 同社のカン・ビョンホ社長は「ここは日本の真ん中。 観光名所だけでなく、自動車関連といったビジネスでの需要も期待できる」と話し、週 4 便から 3 月末には週 7 便に増やす方針だ。 (臼井昭仁、asahi = 2-17-25)


平和記念資料館、今年度入館者 200 万人台に 1955 年開館から初

広島平和文化センターは 16 日、広島平和記念資料館(広島市中区)の 2024 年度の総入館者数が 15 日時点で 200 万人台に達したと発表した。 1955 年 8 月の開館以降で初めてとなる。 センターによると、15 日の閉館時点で 200 万 3,718 人となったという。 9 日には入館者数が 198 万 3,983 人となり、23 年度に続いて過去最多を更新していた。 センターは、不安定な世界情勢を受けた平和への関心の高まりや、円安による外国人旅行者数の増加が影響したとみている。

3 月中旬には、開館からの累計入館者数が 8 千万人に到達する見込みだという。 市は入館者増を受けた館内の混雑対策を進めており、25 年度には同館の東館地下に修学旅行生らを対象にした新たな展示を整備する方針だ。 (魚住あかり、asahi = 2-16-25)


やっと見えた冬の使者 最も遅い「流氷初日」 北海道・網走で観測

北海道網走市にある網走地方気象台は 15 日、陸地から目視で流氷が確認できた最初の日となる「流氷初日」を発表した。 今冬は流氷の南下が遅れ、1946 年の統計開始以来、最も遅い発表となった。 平年より 24 日遅く、統計開始以来最も遅かった 1993 年よりも 5 日も遅い。

この日午前 10 時 20 分、網走市の沖合の水平線上に流氷を確認。 岸から 20 キロ付近にあるとみられる。 観光名所の一つの能取(のとろ)岬からも白い流氷の帯が青い海に線状に見え、能取岬灯台とコラボレーションしていた。 14 日に気象庁が発表した海氷情報によると、流氷は北海道のオホーツク海側の所々で接岸。今後 1 週間、引き続きオホーツク海沿岸に接岸するという。 (神村正史、asahi = 2-15-25)


埼玉県内で下水道管など 3 か所破損や腐食、道路下の空洞は 4 都県に計 6 か所 … 道路陥没受け緊急点検

埼玉県八潮市の県道陥没事故を受け、国土交通省が大規模な下水処理場と大型下水道管のある自治体に要請した緊急点検で、同県内の下水道管など計 3 か所に破損や腐食が見つかったと、中野国交相が 14 日の閣議後記者会見で明らかにした。 緊急点検は 7 都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、奈良)を対象に行われ、各自治体が下水道管計約 420 キロ、マンホール計約 1,700 か所を目視やカメラで調べた。

埼玉県内で異常が確認されたのは、和光市の処理施設につながる管 1 か所(破損)とマンホールの内壁 2 か所(腐食)で、県が補修を進めている。 他の 6 都府県では異常はなかった。 道路下の空洞の調査も行われ、埼玉、東京、神奈川、奈良の 4 都県の計 6 か所で確認された。 いずれも下水道管と関係しないとみられる浅い位置にあり、各都県が補修するなど対応したという。 (yomiuri = 2-14-25)


通行止め解除 10 分後に雪崩でまた温泉宿孤立 福島県で雪被害相次ぐ

今季一番の寒気が到来し、会津地方では大雪による犠牲者が 2 人確認された。 福島市の温泉地では雪崩で宿泊客や報道関係者が孤立した。 降雪のピークは過ぎたが、自治体などは 1 人で除雪や雪下ろしをしないよう呼びかけている。 会津美里町旭舘端では 8 日午後 9 時 50 分ごろ、無職、石井セツ子さん (77) が自宅の軒下で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。 会津若松署によると、下半身が雪に埋もれ、近くにスコップがあった。 同署は、落雪事故の可能性があるとみている。

7 日には磐梯町更科で無職、鈴木良則さん (67) が自宅に駐車した車の中で、一酸化炭素中毒により死亡した。 10 日に発表した猪苗代署によると、車には約 80 センチの雪が積もり、マフラーが埋まったという。

除雪が追いつかず、会津若松ではごみ収集に遅れ

気象庁によると、県内の大雪は 9 日に峠を越えた。 だが、会津地方は今週後半、最高気温が平年を上回る所がある見込みで、落雪や倒木、雪崩に警戒が必要だという。 会津若松市の室井照平市長は 10 日、臨時会見を開き、窮状を明かした。 市では 10 日午後 4 時時点で、歩行や除雪中の転倒事故など 27 人が軽傷を負った。 道路の冠水や農業施設の損壊、倒木なども約 50 件あった。 東山・芦ノ牧温泉では、宿泊などのキャンセルが約 800 件あったという。

約 7 億円確保していた今年度の雪害対策予算は、1 月以降の降雪で底をつきかけているという。 幹線道路や通学路、交差点などを優先して除雪しているが追いつかず、ごみ収集や配送の遅れ、交通渋滞など市民生活に影響が出ている。 雪捨て場は、常設の 3 カ所に加え、新たに旧陸上競技場や県立病院跡など 3 カ所を、11 日以降に順次開設する。 市民には、側溝や水路、道路に雪を捨てないなどの協力を求めた。 室井市長は「混乱はしばらく続く。 一刻も早い市民生活の復旧をめざすので、ご協力をお願いしたい。」と話した。

10 日までの今月の最深積雪は、只見町 288 センチ、檜枝岐村 256 センチ、金山町 235 センチ、南会津町(南郷) 222 センチ、西会津町 172 センチ、会津若松市 121 センチ。 会津若松市と金山町は観測史上最多だった。 大雪に伴い災害救助法を適用されたのは、10 日に適用が決まった郡山市を含め 19 市町村に増えている。 県は 10 日に同市や磐梯町など会津地方でイチゴなどのパイプハウス 49 棟に被害が出たと発表した。 会津地方にはダンプカーや除雪車を応援派遣した。

孤立解消の除雪断念、専門家を現地に派遣へ

福島市土湯温泉町の県道「本宮土湯温泉線」では 10 日午前 4 時ごろに雪崩が発生し、旅館 2 軒の宿泊客と従業員の 100 人以上が孤立した。県は 5.6 キロを通行止めにした。 その後、車 1 台が通れる分を除雪し、午前 11 時過ぎに宿泊者らは自家用車やバスで帰路についた。 県は午前 11 時半に県道の通行止めを解除した。 だが、その 10 分後、再び同じ場所で雪崩が起き、連泊客や旅館の従業員、帰路を断たれた報道機関の記者ら 50 人以上が孤立した。 この雪崩で車 1 台が巻き込まれたが、人への被害はなかった。

県は 10 日の除雪を断念。 今後、雪崩の専門家を現地に派遣し、雪崩の発生の可能性がないと確認された場合、除雪を開始するという。 再度の雪崩について県の担当者は朝日新聞の取材に、車が走行する上での安全性は確認して通行止めを解除したと説明したが、「(いつ起きるか)雪崩の予測はできない」、「雪崩の安全性を確保できているかの確認はできない」と話した。 現場は、福島市南西部にある土湯温泉郷の一角。 同市から会津方面に山を越える途中に温泉宿が点在する観光地。

孤立した旅館の一つで、標高 1,200 メートルにある野地温泉ホテルによると、連泊客や従業員らが孤立した。 男性スタッフは「今日泊まる予定だったお客さん分の食料があって助かった。」 雪崩を知った予約客からはキャンセルが相次ぎ、10 日に宿泊予定だった数十人には従業員が電話で、受け入れられないと伝えた。 スタッフの一人は「明日以降の営業がどうなるかはわからないが、早く通行できるようにして欲しい。」と話した。 (斎藤徹、岡本進、滝口信之、波多野陽、asahi = 2-10-25)


4 年連続で人口の「転出超過」全国トップ 「札仙広福」の一角・広島

総務省が 1 月末に公表した 2024 年の人口移動報告で、47 都道府県のうち「転出超過」が最も多かったのは広島県だった。 その数は 1 万人を超え、4 年連続で全国最多となった。 「札仙広福」と呼ばれ、地方の中枢都市の一角を担ってきた広島に危機感が広がっている。 発表によると、昨年の広島県内への転入者は 4 万 3,389 人。 これに対し、県外への転出者は 5 万 4,100 人で、1 万 0,711 人の転出超過となった。

ひろぎんホールディングスの経済産業調査部が、この転出超過の数字を分析したところ、日本人女性が 4 割近くを占め、最多だった若い世代の流出も目立ち、20 〜 34 歳の日本人が 4 割以上だった。 20 - 34 歳の女性の転出先を見ると、東京と神奈川が半数、大阪と兵庫が 4 割近くになっていて、働く場所やにぎわいなどを求め、都会に出て行く傾向がみられるという。 分析に携わった同部の河野晋さんは「首都圏、関西圏への流出だけでなく、仙台市や福岡市に比べて、広島市への流入も少ない」と不安を募らせる。

一方、広島県は「総務省の統計は国外との移動を含めておらず、社会動態全体を表していない」としてデータを独自集計し、総務省に公表方法の見直しを求めてきた。 総務省は今年初めて、国内外の移動を含めた新たな指標を公表した。 (山中由睦、asahi = 2-8-25)


さっぽろ雪まつり開幕、10m 超え雪像に歓声 「気温との戦い」舞台裏

北海道の冬の風物詩「さっぽろ雪まつり」が 4 日、少雪や暖冬の影響を乗り越え、開幕した。 メイン会場の札幌市の大通公園には、歴史的建造物や人気アニメ『転生したらスライムだった件』、ゲーム「モンスターハンター」などを表現した高さ 10 メートル超えの大雪像 5 基が並び、観光客らから歓声があがっている。 大通・つどーむ・すすきの会場があり、期間は 11 日まで。

 今季の札幌は記録的な少雪で、開幕 1 週間前ごろまでは市中心部の幹線道路に雪がなかった。 市民らが「前代未聞」、「異例の状況」と口をそろえるほどだった。 実行委員会によると、例年よりも市外の新篠津村や当別町で採雪するケースが増えるなど苦労したものの着実に進み、3 会場で予定通りの計約 140 基の雪像がお披露目を迎えた。 運搬した雪は 10 トントラック約 2,500 台分にのぼった。

「雪像が痩せる …」 暖冬との戦い

また、記録的な暖冬も制作者たちを苦しめた。 平年の札幌の 1 月の平均気温は零下 3.2 度、同最高気温も零下 0.4 度だが、今年は平均が零下 1.2 度と2度も高かった。 大雪像の本格的な制作期間(1 月 7 日 - 2 月 2 日)の 27 日間のうち、最高気温が 0 度以上となった日は 8 割近い 21 日間。 時には、雨にも見舞われた。 記事後半では、「モンスターハンター」を題材にした大雪像の制作舞台裏のほか、「持続可能な雪まつり」の検討に向けた動きを紹介します。

「今年は気温との戦いです」

7 丁目会場で「北海道庁旧本庁舎 〜赤れんが庁舎〜(高さ 12 メートル、横幅 24 メートル)」の制作隊長を務めた陸上自衛隊北部方面システム通信群・杉水流剛さんは制作期間中、こう語った。 取材した 1 月 25 日時点で、最高気温は 1 週間連続プラス気温で、うち 2 日間は 5 度を超えた。 雪像はとけ、積み上げた高さからすでに自重で 80 センチほど縮んでいた。 「高温が続く予報を元に『縮み』も見越して最初から高めに積んでいました。 制作工程は変わりませんが、技術的には例年以上に難しいです。 細工が繊細な部品は、とけてやり直しもしました。(杉水流さん)」

10 丁目会場の人気ゲーム「モンスターハンター」シリーズをテーマにした大雪像(高さ 13 メートル、横幅 20 メートル)では、こんな苦労も。  「像がうっすら黒く変色したり、とけた雪が先端にたまって、部分的につららができたりしました。(制作隊の吉川智成隊長)」 美しい雪像に仕上げるため、不純物の少ない中山峠の雪に水を混ぜて加工した「化粧雪」を表面に貼る。 人間の化粧でいう、「ファンデーション」、「おしろい」のような役割を果たす。 暖冬は、化粧雪の一部もとかした。

「雪像が痩せるので、貼り直しが大変でした。 でも、『できるだけ良いものを見ていただきたい』という気持ちで、可能な限り力を尽くしました。(吉川隊長)」 苦労の一方、思わぬ作用もあった。 雪がとけたことでキャラクターに丸みがでて、より自然な仕上がりに。 顔の作りこみや、ウロコは特にこだわったといい、迫力に注目してほしいという。

持続可能なイベントへ

不安定な降雪や気温変動が関係者をやきもきさせた今季。 札幌市は、将来に向け持続可能な雪まつりを実現するための調査、検討を始めている。 雪まつりは近年、今回のような気候の問題のほか、物価高騰による経費の増加や広告収入の減少など、多くの課題を抱えている。 抜本的なあり方を検討するため、▽ 気候変動や環境への負荷を考慮したコンテンツ展開、」▽ 先端技術などを活用した魅力の向上,、▽ 安定的な財源の確保 - - などについて運営や観光の関係者らと意見交換などを重ねている。 検討期間は今年度を含む 2 年間で、26 年度の導入をめざす。

市の担当者は「雪まつりは冬季の観光客が減少する札幌においてきわめて重要なイベント。 北海道経済にもたらす効果も莫大であり、歴史と伝統を未来につなげて発展させていく必要がある。」と話している。 (原知恵子、asahi = 2-4-25)