高額療養費、2025 年夏に引き上げ 2.7 - 15% で最終調整 政府

医療費の患者負担に月ごとの限度を設けた「高額療養費制度」の見直しをめぐり、政府は所得区分ごとに上限額を 2.7 - 15% 引き上げる方向で最終調整に入った。 70 歳未満の場合、五つの所得区分のうち真ん中の区分(年収約 370 万 - 約 770 万円)は、基準額(現行 8 万 0,100 円)の引き上げ幅を 10%、約 8 千円とする考えだ。 制度を見直した約 10 年前からの平均給与の伸びを参考にした。 2025 年夏にも実施する方針。 26 年夏には現行の所得区分を 3 分割する想定で、収入によってはさらに引き上げとなる見通し。

高額療養費制度は、大きな手術などで医療費の支払いが膨らんだ際、所得などに応じた上限額に抑える仕組み。 25 年夏をめどに、限度額の計算に使う基礎的な金額を引き上げる。 引き上げ幅は最も所得が高い区分(年収約 1,160 万円以上)で 15%、2 番目の区分(同約 770 万 - 約 1,160 万円)で 12.5% とする方向だ。 所得の低い二つの区分は、引き上げ幅を緩和する。 平均以下の区分(同約 370 万円以下)は 5%、住民税非課税世帯は 24 年度の年金の上がり幅にあわせて 2.7% とする方向で検討している。

26 年夏にさらに引き上げ

厚生労働省は、中間所得層を 7% とした上で 2.7 - 20% の引き上げを検討していたが、与党との調整を経て、所得区分ごとの差を緩やかにした。 26 年夏には、住民税非課税世帯以外の所得区分を三つに分ける。 この際、収入に応じて上限額をさらに引き上げる。 区分の中で収入が高い人ほど、上限額が引き上げられる公算が大きい。 70 歳以上の外来(通院)にも限度を設ける「外来特例」も見直す。

外来特例では、上限額を 70 歳以上の一般的な収入の層で 1 万 8 千円、住民税非課税世帯は 8 千 に設定されている。 いずれも 2 千円程度引き上げる方針だ。 ただ、収入に応じて、上げ幅を緩和したり、さらに引き上げたりする方法も検討されている。 この制度は、公的医療保険の「セーフティーネット」機能とされる。 今回の見直しは、子ども関連政策の財源確保に向け、医療費を抑制する狙いがある。 見直しで保険料負担の軽減効果も生じる。 (吉備彩日、asahi = 12-17-24)


3 号被保険者廃止「5 年後の実現を」 経済同友会新浪氏、連合と協力

会社員らに扶養される配偶者が保険料を納めなくても基礎年金を受給できる「第 3 号被保険者」制度について、経済同友会の新浪剛史代表幹事は 12 日、「早急に廃止を実現していくことが必要だ。 年金制度改革は 5 年に 1 度。 5 年後の実現をぜひめざしたい。」と述べた。 労働組合の中央組織・連合の幹部と東京都内で開いた懇談会の後、記者団に語った。

同友会は今月、連合は 10 月に、「3 号」の廃止を求める方針を打ち出していた。 この日の懇談会で、連合の芳野友子会長は「社会保険制度をより公平で持続可能なものにするための極めて重要な取り組みだ。 経済同友会と同じ方向性だと認識した。」と述べ、廃止に向けた協力を呼びかけた。 新浪氏は「多様な働き方や就労意欲を妨げない年金制度の構築は待ったなしだ。 連合との意見の一致を確認した。」と応じ、今後連携していくことで一致した。

新浪氏はその後、記者団に、廃止の時期や方法を連合と協議していく考えを示し、「財源など複雑な問題を秘めていて道のりが険しいことはよく理解しているが、ぜひ実現したい」と強調した。 廃止まで 10 - 20 年もかける余裕はないとして、「早くやらなきゃだめだ」と述べた。 3 号をめぐっては、日本商工会議所も11 月に廃止を求め、「早急に国民の合意を得る努力をすべき」だとしている。 (木村裕明、asahi = 12-12-24)


雇調金不正受給で有報を虚偽記載の疑い 課徴金納付命令出すよう勧告

証券取引等監視委員会は 10 日、クリーニング店を展開する「きょくとう」(福岡市)が雇用調整助成金の不正受給に伴って有価証券報告書に虚偽記載をしていたとして、金融商品取引法違反の疑いで、同社に 1,500 万円の課徴金納付を命じるように金融庁に勧告した。

同社では、新型コロナウイルス対策で 2020 年 4 月分から 22 年 9 月分まで、国から支給された雇調金約 3 億 8,000 万円を不正に受給していたことが発覚。 不正受給していた雇調金を営業外収益に過大計上し、利益を水増しすることにより、有報や四半期報告書で赤字を少なくみせたり、実際は赤字なのに黒字として記載したりしていた。 同社は東証スタンダード上場で、従業員は約 150 人。雇調金の不正受給に関連して上場企業が有報の虚偽記載に問われるのは初めてという。 (堀篭俊材、asahi = 12-10-24)


経団連、労働時間法制の見直し提言 裁量労働制も「例外から原則へ」

経団連は 9 日、非定型的な業務を行うホワイトカラーを対象に、労働時間ではなく成果で評価や処遇を決める新たな労働法制の創設を提言した。 そうした制度として現在も「裁量労働制」などがあるが、あくまで労働時間規制の例外とされ、活用が進んでいないと指摘。 新たな労働法制は「例外」ではなく、労働時間を基準とする働き方とともに複線的な「原則」とすることで、普及を進めるべきだとした。 同日公表した、2040 年にめざす経済・社会像に向けた政策提言に盛り込んだ。

裁量労働制は、仕事のやり方や時間配分などを働き手の裁量に委ね、実際に働いた時間でなく、あらかじめ労使で決めた時間だけ働いたとみなして賃金を払う制度。 2019年には、年収が高い専門職の人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」という仕組みも導入された。

裁量労働制の適用対象者は約 36 万人、高プロは 1,300 人強にとどまる。 提言は、ホワイトカラーに占める労働時間規制の例外措置対象者の割合が米国より低いといったデータを示しつつ、労働基準法で対象業務が厳格に限定され、導入に必要な手続きが煩雑で使いづらいために制度がほとんど活用されていないと指摘。 こうした働き方を労働時間規制の例外とせず、裁量労働制や高プロを包摂する新制度をつくり、「原則を複線化」することを政府に求めた。

経団連は今年 1 月に公表した「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」で、労働時間と成果が比例する労働者を前提にして原則と例外を分ける画一的な規制が、多様な働き方の実現を妨げていると批判。 労働条件の細部は労使交渉に委ねるべきだとしていた。 今回の提言では、解雇を巡る紛争解決にも言及。 解決に要する期間を考慮すると解決金の水準が低いとして、円滑な労働移動に向けて、不当解雇に直面した労働者が十分な補償を受けられる環境整備が必要だと主張した。 (木村裕明、asahi = 12-9-24)


10 月の実質賃金、3 カ月ぶりにマイナス脱する プラス回復はせず

厚生労働省は 6 日、10 月分の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。 物価の影響を考慮した働き手 1 人あたりの「実質賃金」は、前年同月と同水準だった。 3 カ月ぶりにマイナスからは脱したが、プラス回復とはならなかった。

10 月は、労働者が実際に受け取った「名目賃金」にあたる現金給与総額が 2.6% 増の 29 万 3,401 円だった。 実質賃金の計算に使う 10 月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は 2.6% 上がり、この物価上昇分を差し引いた実質賃金は前年同月と同じ水準だった。 電気・ガス料金の補助金で物価の上昇幅は抑えられたが、実質賃金はプラスにはならなかった。

現金給与総額のうち、基本給などの所定内給与は 2.7% 増の 26 万 5,537 円と、31 年 11 カ月ぶりの高い伸びだった。 現金給与総額を就業形態別にみると、フルタイムの一般労働者は 2.6% 増の 37 万 4,654 円、パートタイム労働者は 3,3% 増の 10 万 9,806 円だった。 (高橋諒子、asahi = 12-6-24)


「隗より始めよ」 小池百合子知事、都職員の週休 3 日や部分休暇導入へ

東京都議会の第 4 回定例会が 3 日、開会した。 小池百合子知事は所信表明で、都庁で来年度から、フレックスタイム制を活用した「週休 3 日」など新たな子育て・仕事の両立支援策を始める方針を表明した。 より柔軟な働き方を採り入れることで、都職員の人材を確保するねらいがある。 都総務局によると、都職員は現在、始業や終業の時間を自分で決めるフレックスタイム制を活用して勤務時間を調整することで、休日を 4 週間に 1 日追加できる。 これを 1 週間に 1 日加えられるように見直して、「週休 3 日」を実現できるようにするという。

また、小学 3 年生までの子がいる職員を対象に、勤務時間を 1 日最大 2 時間短縮できる新たな「部分休暇」も導入する。 関連する条例改正案を来年の都議会第 1 回定例会に提出する予定。 小池知事は 3 期目の公約の柱に女性活躍の推進を掲げ、新たな条例制定をめざして検討を進めている。 本会議後、記者団の取材に「まず隗より始めよということで、都庁から色んなことを始めていきたい。 女性活躍のモデルを確立して様々な地域で広げていっていただければと思う。」と述べた。

小池知事はまた、建築物の不燃化などを盛り込んだ「防災都市づくり推進計画」の新たな基本方針案を年明けに示すことや、河川の高潮対策について具体的な整備時期や手法を今月中にも素案として取りまとめることを明らかにした。 都は、パスポート発給の申請手数料を改定することに伴う条例の一部改正案など計 36 議案を提出した。 第 4 回定例会の会期は 18 日までで、代表質問が 10 日、一般質問は 11 日にある。 (太田原奈都乃、asahi = 12-3-24)


金属労協、ベア「月 1 万 2 千円以上」要求へ 過去最高、物価高に対応

自動車や電機などの労働組合の産業別組織(産別)でつくる金属労協は 27 日、2025 年の春闘で、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)の統一要求額を「月 1 万 2 千円以上」とする方針を固めた。 「月 1 万円以上」とした今春闘を上回り、現在の要求方式になってから過去最高となる。 金属労協幹部への取材で分かった。 高水準の物価上昇が続き、働き手の購買力を示す実質賃金のプラスが定着していないことなどから、要求額を引き上げる。 12 月 3 日の協議委員会で正式に決める。

金属労協は、自動車総連、電機連合、鉄鋼業などの基幹労連、中小製造業の JAM、全電線という五つの産別を束ね、産業のすそ野が広い。 トヨタ自動車や日立製作所、日本製鉄といった大手から中小企業まで多くの労組が加盟し、組合員数は約 200 万人に上る。 金属労協の要求方針は、これを参考に各産別が方針を決めた上で各単組が要求を出すため、影響力が大きい。 ベア要求は 22 年まで 7 年連続で「3 千円以上」で、23 年に「6 千円以上」、24 年にさらに「1 万円以上」に引き上げていた。

25 年春闘の賃上げ目標をめぐって労働組合の中央組織・連合は、今年の目標を据え置いて「5% 以上」とする方針を、今月 28 日の中央委員会で正式決定する。 定期昇給分の 2% 確保を前提に、ベア目標を 3% 以上とする。 中小企業については、大手との格差是正分(1% 以上)を上乗せする。 (片田貴也、asahi = 11-27-24)


働く高齢者の厚生年金減までの基準 62 万円か 71 万円に引き上げ案

働く高齢者で一定の収入がある人の厚生年金を減額する「在職老齢年金」をめぐり、厚生労働省は 25 日、年金が減り始める基準額の引き上げ案を審議会に提示した。 現行の 50 万円から、62 万円か 71 万円に上げる方針。 あわせて、高所得者の保険料引き上げ案も示した。 在職老齢年金は、65 歳以上で働いている場合に、賃金と厚生年金(基礎年金を除く)の合計が 50 万円を超えると、厚生年金(同)が減額され、一定額を超えると全額がカットされる仕組み。 2022 年度末時点で、働きながら年金をもらう人の 16% にあたる約 50 万人(総額は 4,500 億円)が支給停止の対象になった。

厚労省が示した見直し案は、(1) 撤廃、(2) 基準額の 50 万円を 62 万円に引き上げ、(3) 71万円に引き上げ - - の 3 案。 62 万円への引き上げで、支給停止者は約 30 万人(停止額 2,900 億円)に減り、71 万円で約 23 万人(同 1,600 億円)まで減少する。 ただ、制度見直しにより、働く高齢者の年金給付は増えるが、将来年金を受け取る世代の給付水準は下がる。 給付水準が大きく低下する撤廃案の実現は難しいとみられている。

高所得者の年金保険料増額も

現行制度は、少子高齢化で現役世代の負担が重くなる中、60 代後半で報酬のある人には年金制度を支える側になってもらおうと導入された。 だが、高齢者の働く意欲をそぐとの指摘もあった。 人手不足に悩む経済界からも廃止を求める声が出ていた。 一方、厚労省は高所得者の厚生年金保険料も増やす。 厚生年金の保険料は、煩雑な事務手続きを軽減する目的で、月々の収入を等級(標準報酬月額)で分け、労使折半の 18.3% を掛けて算出している。 32 等級あり、下限は 8 万 8 千円、上限は 65 万円に設定されている。

審議会ではこの上限を 75 万円、79 万円、83 万円、98 万円に引き上げる 4 案が示された。 現行の上限 65万円の等級に該当する人は 278 万人(今年 6 月現在)。 厚労省の試算では、75 万円で 168 万人、83 万円は 123 万人、98 万円は 83 万人へと減っていく。 保険料収入は 4,300 億 - 9,700 億円増える見込みだ。 厚労省はまた、基礎年金の底上げ策も打ち出した。 厚生年金の積立金を活用して基礎年金の水準を一定に保つ案で、ほぼ全ての世帯で年金額が上昇する。

一方、課題は巨額の財源確保だ。 支給される基礎年金の半分は国の税金で賄う仕組みのため、40 年度に 5 千億円、70 年度には 2 兆 6 千億円が必要になる。 いずれも年末までに議論をまとめ、来年の通常国会への関連法案提出をめざす考えだ。 (高絢実、asahi = 11-25-24)

バスドライバー不足に「消防士活用も」 路線維持した大阪・交野市

大阪府交野市にバス路線を持つ唯一の事業者・京阪バス(京都市)が、市内の路線の大半で運行を取りやめると決めたことを受け、対策を検討してきた市は 22 日、市が新たにバスを運行すると発表した。 2.9 億円を投じて路線や便数を維持し料金を下げる。 ただ廃線の原因となった「運転士不足」は続く。 山本景市長はこの日、将来的に消防士やゴミ収集車の運転手を活用することも検討しているとした。

交野市では一部地域で市が巡回バスを走らせているが、そのほかのバス路線は京阪バスが担っている。 市によると、市南部の星田や南星台の団地では唯一の公共交通機関で、朝のラッシュ時間帯は 1 時間あたり 3 便を計約 60 人が利用している。 京阪バスは 8 月、運転士不足を理由に多くの路線を廃止することを市に通告した。 来年 3 月に交野南部線のほか、津田サイエンスヒルズ、津田香里、寝屋川団地線の一部など市内で完結する路線から事実上撤退する。

新たな事業者を探したが

市は代わりの運行事業者を探してきたが、運転士不足は他の事業者も同様で、見つけられないまま。 運転士の少ない「交通空白地」のために設けられた国の特例制度を活用することにした。 商業バスの運転士は本来「大型二種運転免許」が必要だが、この制度では一般ドライバーの「一種運転免許」だけで運転ができる。 市は民間 2 社と事業委託の契約を結ぶ予定で、送迎バスなどを運転する一種免許の運転士がハンドルを握る。 山本市長は「バスが運行しない空白期間を作らないためにはやむを得なかった」と理解を求めた。

京阪バスの乗車料金は現在 230 円(12 月から 250 円)だが、市の路線バスは 200 円とする。 両替業務の負担を少なくするためだという。 車体はリースすることなどを検討している。 来年 3 月から約 1 年間の運行費用として、2.9 億円を今年度補正予算に計上した。 特例を使っても確保できた運転士に余裕があるわけではない。 市は今後、一種免許を保有する市職員などに運転を依頼する可能性も示唆する。 京阪バスでは 2016 年度末時点で 990 人いた運転士が 24 年度末には 829 人に。 新規採用も苦戦し、運転士の平均年齢はこの 8 年間で 47.7 歳から 52.3 歳に上昇したという。

バス運転士は全国的に高齢化と減少が深刻化している。 警察庁の統計によると、2010 年に約 107 万人いた大型二種免許保有者は 20 年には約 85 万人へ。 40 歳未満に限れば約 10 万人から約 4 万 3 千人まで減少している。 大阪府内でも運転士不足が原因で、富田林市などで路線バスを走らせていた金剛自動車が全路線の運行を終了した。 (村井隼人、asahi = 11-24-24)


「責任の一端は国にある」生活保護率急減の自治体、桐生市以外にも

「最後の安全網」半減の衝撃 生活保護窓口で何があったのか

「桐生市の件を聞いてびっくりしました。 あまりにも不適切です。」 生活保護利用者が 10 年間で半減した群馬県桐生市について問われ、武見敬三・厚生労働相(当時)はこう述べた。 今年 4 月の参院厚生労働委員会で、保護費の分割による満額不支給や、いわゆる「水際作戦」が疑われる実態が次々と判明していることを問われたときのことだ。 武見厚労相は、これまでも申請権侵害をしないよう国は自治体に周知してきたと強調した。 しかし、生活保護行政への信頼を土台から崩しかねない一連の問題は、桐生市だけで起きた特異な現象なのか。

生活保護バッシング

桐生市で生活保護利用者が急激に減り始めた時期は、2012 年だった。 当時は、08 年のリーマン・ショック以降、利用者数が 200 万人を超えるなど全国的に利用者が急増。 そして 12 年にはお笑い芸人の母親の生活保護利用が報じられたことをきっかけに、「生活保護バッシング」が起きた。 不正受給がクローズアップされ、当時は野党だった自民党を中心に、支給水準や扶養のあり方の追及がなされた。 当時の民主党政権も生活保護基準の引き下げに理解を示した。

同年 12 月の衆院選で、「生活保護給付水準の原則 1 割カット」を公約に掲げた自民党が政権に復帰。 生活費にあたる生活扶助の戦後最大の引き下げが決まった(3 年かけて全体で 6.5% 削減)。 こうした制度や利用者に対する全国的な逆風が、桐生市の窓口対応の背景にあったのではないか。 支援団体や有識者による「桐生市生活保護違法事件全国調査団」に参加する稲葉剛さん(つくろい東京ファンド代表理事)は 4 月、参院厚労委での意見陳述のなかで、必要な人を制度から遠ざける「排除と監理のシステム」だと桐生市を厳しく批判し、「責任の一端は厚生労働省にもある」と述べた。

稲葉さんが一例としてあげたのが、福祉窓口への退職警察官の配置だ。 明らかになった市の公文書によれば、最大で 4 人が福祉課内に配置されていた。

退職警察官の配置を要請した厚労省

そのきっかけは厚労省の方針だった。 同省は 12 年 3 月、不正受給対策の一環として福祉事務所への退職警察官の配置を積極的に検討するよう要請している。 元警察官の配置については当時から、利用者を犯罪者予備軍視する対応で市民を生活保護から遠ざけてしまう、という批判があった。 法律家らでつくる生活保護問題対策全国会議などが厚労省に要請の撤回を求める要望書を出していた。

稲葉さんは、国が推進した元警察官の積極配置が、桐生市で支援を必要とする人を生活保護から遠ざけるツールとして利用されたことを重く受け止めるべきだ、と指摘。 少なくともその役割は暴力団対応などに限定するべきだと訴えた。 また桐生市では、申請者に対する扶養や仕送りの強要が疑われる事例が数多く判明している。 生活保護においては、扶養は保護に「優先」するが、「要件」ではない。 一方で厚労省(旧厚生省)は 1961 年、「扶養義務者に扶養及びその他の支援を求めるよう、要保護者を指導すること」との通知を出し、現在も変更はない。

扶養に関する違法・不適切な運用が生じる一因は、これらの厚労省通知にあるとして、生活保護問題対策全国会議や「全国調査団」など 4 団体は今年 8 月、同省に通知の削除や見直しを求める要望書を提出した。 要望では、諸外国では扶養義務者の範囲は「夫婦」と「未成熟の子に対する父母」に限定しているのが一般的だとして、子や孫、兄弟姉妹なども含まれる日本の扶養義務者の範囲の広さを指摘。 そのうえで、「特別な事情」がある場合は 3 親等内の親族(おじ・おば・おい・めい)まで扶養義務者とみなす厚労省の運用の見直しを求めた。

「最後の安全網」である生活保護をめぐっては、これまでも「水際作戦」と呼ばれる窓口の不当な申請抑制が問題視されてきた。 過去には生死に直結する問題も起きた。

生活保護率増減マップ

自治体の生活保護行政を住民がチェックする手がかりはあるのか。 人口に対する生活保護利用者の割合を示す「生活保護率」について、自治体ごとに過去 10 年間(2012 - 21 年度)の変化が視覚的にわかる「全国マップ」が 9 月、インターネット で公開された。 全国 970 市区(47 都道府県の全市、東京 23 区、指定市の全区)を対象に、研究者らでつくる「生活保護情報グループ」が国に情報公開した資料をもとに作成したデータだ。 この期間の対象市区全体の保護率の変化はマイナス 3% 程度。 これに対し桐生市はマイナス 41.1% になっていた。

関係者が驚いたのは、桐生市以外にも保護率が 40% 以上減少した自治体が 11 市区あったことだった。 最も減少率が大きかったのは、愛知県知立市でマイナス 58.9% だった。 知立市福祉課は取材に対し、「働きたいが働けない受給者に、ハローワークと連携した出張型の就労相談を実施している。 厚労省からも評価されている。 リーマン・ショック後の景気回復期に就労相談に取り組んだことが、保護率の減少につながっているのではと思う」と説明した。 申請権侵害などの不適切な運用については「ありません」と否定した。

同グループの桜井啓太・立命館大准教授は、困窮者が減り保護率が減少しているのなら問題ではないとしつつ、「周辺自治体と比べて特定の自治体だけが急減している場合、桐生市と同じように不適切な運用が行われている可能性もある。 チェックするツールとしてマップを使ってほしい」と指摘している。 (編集委員・清川卓史、asahi = 11-20-24)


オフィス家具大手イトーキ、残業代など未払いの疑い 公取委が警告へ

委託先の運送会社に残業代などを支払わなかったとして、公正取引委員会はオフィス家具大手「イトーキ(東京都中央区)」に対し、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いがあるとして近く警告を出す方針を固めた。 関係者への取材でわかった。 イトーキはオフィス用家具などを製造、販売し、運送会社に商品の搬送や組み立て、設置を委託している。 関係者によると、イトーキは委託先の運送会社数十社の運転手に対し、年度末など繁忙期に生じた時間外労働や、商品のトラックへの積み込みや段ボールの返却といった契約外の業務をさせた際の代金を支払っていなかった疑いがあるという。

今回の警告は、「物流特殊指定」という独禁法の告示に基づく。 公取委はこの告示で、優越的な地位にある荷主が物流事業者に不利益を与える報酬の減額や買いたたきなど、九つの禁止行為を取り締まっている。 公取委が出す警告は、独禁法違反の疑いがある行為の取りやめや再発防止を求める行政指導で、従わなかった場合に罰則が科される「排除措置命令」に次ぐ措置。 労働時間の規制強化で運転手不足が懸念される「2024 年問題」を踏まえ、公取委は運送業界の不公正な取引の取り締まりを強化しているとみられる。

イトーキはホームページで、「(公取委の)調査を受けていることは事実」、「調査に全面的かつ真摯に対応しております」などとするコメントを出した。 (高島曜介、asahi = 11-19-24)


800 社が求人に名乗り 船井電機破産、元従業員への支援が本格化

破産手続き中の老舗 AV 機器メーカー、船井電機(大阪府大東市)の元従業員への支援が本格化している。 11 日には同市を管轄する「ハローワーク門真(同府門真市)」が再就職などに向けた合同説明会を開き、多くの人が訪れた。 緊急募集した求人には、全国約 800 社からの応募が集まっているという。 ハローワーク門真は 11 日、雇用保険の受給手続きや再就職支援の中身を説明する 40 - 50 分の合同説明会を 4 回に分けておこなった。 訪れた計 74 人には、約 800 社からきた計 2 千件超の求人情報をまとめた分厚い冊子が手渡された。

玉野裕子所長によると、約 530 人の従業員全員が突然解雇されるという異例の事態に「なんとか力になりたい」と、北海道から九州まで、業種も様々な企業から求人が寄せられているという。 また、説明会場の前まで来た企業もあった。 ソニー生命保険の関係者は「急にこんなことになって、大変な状況の方も多いと思う。 多くの求人に埋もれないよう、資料を持ってきた。」と話していた。

説明会を訪れた元開発職の男性 (25) は「再就職についてはひとまず問題がなさそうで、前向きに捉えている」と話した。 一方、高齢の元従業員は「求人の多くが 59 歳以下など年齢制限があり、再就職先を見つけるのが難しいのではと感じている」と語った。 (asahi = 11-12-24)


一人暮らし高齢者世帯が増加、2050 年は 32 道府県で 20% 超に

一人暮らしをする 65 歳以上の高齢世帯の割合は増え続け、2050 年に 32 道府県で 20% を超える見通しとなった。 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が 12 日、都道府県別の世帯数の将来推計を公表した。 大都市圏で大きく増えることから、医療や介護サービスなどの体制整備が課題だ。 社人研は今年 4 月に公表した全国の世帯数推計を都道府県別に分析。 推計は 5 年に 1 度実施しており、20 年の国勢調査を使い、50 年まで推計した。

世帯総数は、45 - 50 年には全ての都道府県で減少に転じ、50 年には 20 年時点から 5.6% 減の 5,260 万 7 千世帯となる。 このうち、最も多いのは単独世帯(一人暮らし)で 44.3%。 続いて夫婦と子 21.5%、夫婦のみ 18.9% と続く。

最も高いのは高知、続く徳島 …

世帯主が 65 歳以上の単独世帯は、50 年に 1,083 万 9 千世帯(20 年比 46.9% 増)。 全ての世帯に占める割合は、20 年時点は全国で 13.2% で、20% 超の都道府県はゼロだが、50 年時点では 32 道府県まで上昇する。 最も高いのが高知県 (27.0%) で、徳島県 (25.3%)、愛媛県 (24.9%) と続き、四国地方で特に高くなる。

大都市圏でも増加が続く見通しだ。 神奈川県 (20.3%) や大阪府 (22.7%)、兵庫県 (23.5%) などが 20% を超える。 世帯数が 148 万 3 千と最も多い東京都は 18.7% だ。 総世帯数が多い都市圏では、高齢の一人暮らし世帯数の増加が顕著になる。 特に首都圏は、20 年比で 70% に迫る勢いで増え、全国平均の 46.9% を大きく上回る。 高齢者の一人暮らし世帯への移行は加速度的に進んでいる。

前回 19 年の推計では、40 年の高齢者の一人暮らしは 896 万 3 千世帯だったが、今回推計では、40 年は 1,041 万 3 千世帯と 100 万世帯以上も増えるとみる。 5 年前よりも未婚率が高まるなどしたことが影響しているという。 高齢になるほど、医療や介護のサービスが必要になる。 さらに一人暮らしでは家族からの助けを受けにくいため、買い物などの日常生活の支援も求められる。 ただ、少子高齢化などで医療介護分野の人材不足が深刻となるなか、十分な体制を整えられるかが見通せない。 厚生労働省の推計では、40 年度に必要な介護職員数が、22 年度時点の人員と比べて約 57 万人不足する。

社人研の担当者は「少子化や未婚化の影響で、子や配偶者、きょうだいなどの家族コミュニティーが小さい高齢世帯が増えていく。 介護や医療だけでなく、意思決定の支援や、貧困対策、防犯といった問題について、地域での取り組みが必要になるだろう」と指摘する。 (吉備彩日、asahi = 11-12-24)


鈴木法相、夫婦別姓「国会での議論踏まえ対応」 過去には導入に賛意

衆院選で落選した牧原秀樹氏の後任となった鈴木馨祐法相が 12 日、就任後初の記者会見に臨んだ。 報道機関のアンケートなどで、これまで賛意を示してきた選択的夫婦別姓の導入について見解を問われたが、「国会で議論いただくのが大事」と述べるにとどめた。 選択的夫婦別姓の導入をめぐっては歴代法相が法案提出に意欲を示しながら、自民党内などの反対で実現しなかった。

ただ、今年に入り経団連が導入を求める提言を公表。 衆院選後には、衆院法務委員会の委員長を野党第 1 党の立憲民主党が握り、多くの野党と公明党も制度の導入を掲げているため、議員提出の改正案を審議する可能性が高まっている。 鈴木氏自身も、個別政策へのスタンスを問う朝日新聞などのアンケートで、賛成の立場を明らかにしてきた。

しかし、この日の会見で是非を問われると、「様々な動きも出てきている。国会での議論などを踏まえて対応を検討していく」と従来の政府見解を踏襲した。 個人としての見解も問われたが、法相の立場での会見であることを理由に「差し控える」と応じた。 (久保田一道、asahi = 11-12-24)


14 日以上の連続勤務を禁止へ 労基法改正で上限導入 厚労省が検討

労働者の連続勤務日数について厚生労働省は、労働基準法を改正して 14 日以上の連続勤務を禁止する検討に入った。 労働者の健康を確保するため、最長で 48 日間の連続勤務が可能になるといった現行制度を見直す。 上限規制の導入は、厚労省の有識者研究会が年度内にまとめる予定の報告書に盛り込まれる見通しだ。 その上で厚労省は労働政策審議会で労使による議論をし、2026 年にも法改正を目指す。

現行の労基法は、使用者は労働者に少なくとも週 1 回の休日を与えることを原則としつつ、4 週間を通じて4 日以上の休日を与えれば足りるとしている。 この「4 週 4 休制」では、4 週間の最初の 4 日と、次の 4 週間の最後の 4 日を休日にした場合、間に挟まれる 48 日間を連続勤務させることが可能だ。 さらに、労使協定(36 協定)を結べば休日労働も命じられ、制度上は上限なく連続勤務をさせられる。

新たな規制、労災の判断要素に依拠

有識者研究会では、労働者の健康や安全を守るため、連続勤務を厳格化する方向で議論。 精神障害の労災認定では「2 週間以上の連続勤務」が心理的負荷の判断要素となっており、厚労省は 4 週 4 休制を見直し、14 日以上の連続勤務を禁止する方針だ。 労使協定で休日労働させる場合も、連続勤務の上限を 13 日間とする。 18 年に成立した働き方改革関連法では、労使協定による残業時間については、年 720 時間以内、月 100 時間未満という上限規制が導入された。 一方、連続勤務日数の上限は設けられていなかった。 (宮川純一、asahi = 11-10-24)


「ちょっと背伸びして」地方から都会へ 若い女性が追う仕事の選択肢

地方の若い女性を吸い込む「ブラックホール」- -。 人口戦略会議は今年 4 月、若い女性の流入が続く東京のような巨大都市をそう表現した。 逆に、出産の中心年代にあたる 20 - 39 歳の女性が大きく減った 4 割の自治体は「いずれ消滅する可能性がある」とした。 ただ、朝日新聞が 20 - 24 歳の女性に限って住民基本台帳のデータを独自に分析したところ、地方の減り方はますます鮮明になっている。

長年、若い女性比率がトップだった鹿児島に起きた異変

住民票の移動で 2023 年に 20 - 24 歳の女性が増えたのは、首都圏の 1 都 3 県と大阪、愛知だけだった。 これらの地域へは、残る 41 府県から差し引き計 4 万 9 千人が移動した。 このうち 3 分の 2 にあたる 3 万 2 千人を東京が占めている。 東京は集団就職や高度成長期のころ、流入する男性の数が非常に多く、若い女性の割合は全国で最低レベルだった。 それが、ここ 30 年は若い女性の流入がみるみる増え、特にここ 10 年は一極集中が加速している。 20 - 24 歳の人口に占める女性の割合は 21 年、東京がついに全国トップになった。

それまで、この世代で女性の割合が飛び抜けて多かったのは鹿児島だった。 住基データによると、1995 年には 52.7% で、全国平均より 3.7 ポイント多かった。 首都圏から物理的に遠いことに加え、女性が進学や就職で県外に出るのをはばかる雰囲気が強かったことが原因とされる。 15 年には当時の伊藤祐一郎知事が女性の教育をめぐり「サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言したこともあった。 それが、近年は鹿児島からも多くの若い女性が県外に出るようになっている。 20 年からの 4 年間で、20 - 24 歳の男性の転出超過は 2,000 人だったが、女性は 4,200 人に及んだ。

束縛されがちだった鹿児島の女性の間でもキャリア志向が高まり、多様な選択肢がある都会を目指すようになったことが背景にあるとみられる。 実際、22 年の就業構造基本調査では、鹿児島で働く女性の割合が最も高いのは「医療、福祉」分野の 29.0% だった。 多くの女性が看護や介護の職に就いており、こうした傾向は九州や中国四国に多い。 逆に、東京は「医療、福祉」が 17.8% と全国で最も低かった。 最先端のサービス業が多い「情報通信」分野は、鹿児島の 0.8% に対し、東京は 9.3%  と全国トップだった。

25 - 29 歳女性の正社員の割合も、東京は 79.4% と全国で最も高い一方、鹿児島は 62.0% で沖縄の 51.4% に次ぐワースト 2 位だった。 こうした意識の変化だけでなく、バブル崩壊や 08 年のリーマン・ショックもあった。 地方経済が疲弊し、県内の採用が激減したことで、県外での就職が加速した。 かつて他の都道府県より頭一つ抜けていた 20 - 24 歳の女性割合は、24 年には 49.6% と全国 5 位まで下がった。

技術力、スピード感、情報量 ・・・ 都市部との差に落胆

鹿児島県の私立大 4 年の村山倫さん (22) も、都市部に絞って就職活動をしてきた。 きっかけは 22 年春、ある学生団体の SNS 投稿が目に留まったことだった。 「ちょっと背伸びして、社会課題解決に向けて活動してみませんか?」 地域が抱える社会課題を解決するアイデアコンテストを企画する学生団体だった。 すぐに応募した。 全国から大学生が集まり、議論して、提案していく。 鹿児島では体験したことのない交流の機会に、胸が高鳴った。 しかし、村山さんは初めてのオンライン会議で、いきなり血の気が引いた。

参加していた都会の大学生たちは、会議が始まると、パソコンのファイル共有ソフトを使いながら、手分けをして議事録を取ったり、資料を共有したりしていた。 普段は、授業の記録はノートか、スマートフォンのメモ機能を使うくらい。 リポートは紙に手書きして研究室のポストに投函することもあった。 都会の学生の技術力とスピード、情報量の差に焦った。

「やばい …。 もっと力をつけないと。」

就職活動では、映像制作や情報技術 (IT)、マーケティングなどの分野を希望することにした。 こうした就職先を鹿児島県内で見つけるのは難しい。 就職活動やインターンシップはおのずと東京都や大阪府、兵庫県、愛知県が中心になった。 同居する祖父母は「そんな仕事は安心なのか」と心配した。 公務員か銀行員になれたら「将来は安泰だね」と考えている。 それでも諦めなかった。 来春から、名古屋市の IT 企業で働く予定だ。 「若いうちに新しいことを吸収したい。 今の時代、安泰な職業はないし、転職は当たり前。 自分自身に力をつけられるようになりたい。」 (小宮山亮磨、中山美里、asahi = 11-10-24)


1,592 人が司法試験に合格、法科大学院制度 曲折の 20 年

法務省は 6 日、今年の司法試験で 3,779 人(前年比 149 人減)が受験し 1,592 人(同 189 人減)が合格した、と発表した。 昨年に続き、政府が合格者数の目標とする 1,500 人を上回った。 合格率は 42.13% (同 3.21 ポイント減)だった。 司法試験を受験できるのは、法科大学院の修了者と予備試験の合格者に限定されてきたが、昨年から法科大学院の在学中でも「修了見込み」とされた人が受験できる。 今年の合格者の内訳は、法科大学院の修了者が 471 人(同 346 人減)、大学院在学中の受験者が 680 人(同 43 人増)、予備試験合格者が 441 人(同 114 人増)だった。

法科大学院別の合格者数(修了者と在学中の合計)では、慶応大が最多の 146 人、早稲田大が 139 人、東京大が 121 人、京都大が 107 人と続いた。 合格者のうち男性は 1,111 人、女性が 481 人。 合格者の平均年齢は 26.9 歳で、最年少が 17 歳、最高齢が 70 歳だった。

各法科大学院の合格者数と合格率 (合格者数上位 10 校、人数は修了者と在学者の合計)

慶応 146 人 (59.35%) / 早稲田 139 人 (42.12%) / 東京 121 人 (47.45%) / 京都 107 人 (49.31%) / 中央 83 人 (45.86%) / 大阪 72 人 (40.68%) / 一橋 60 人 (48.78%) / 神戸 51 人 (37.50%) / 同志社 41 人 (36.94%) / 九州 37 人 (34.58%)

「多様な人材」養成を理念にスタート

法科大学院は今年、2004 年の新設から 20 年の節目を迎えた。 社会人経験者や法学以外を学んできた人ら多様な人材を受け入れながら法律家を増やす目的で始まったが、制度は曲折をたどってきた。 さらなる改革の必要性も指摘される。 法科大学院の開設は、裁判員制度と並ぶ司法制度改革の柱だった。 「知識偏重」との批判があった司法試験のあり方を見直し、法曹としての「思考力」や「倫理観」を身につけることをめざした。 同時に、法的なサービスを受けやすくするため、1,200 人程度だった司法試験合格者数を 10 年ごろに 3 千人にする目標を掲げた。

政府は、法科大学院の修了を条件とする新たな司法試験を導入。 修了者の合格率は 7 - 8 割に達すると見込んだ。 しかし、合格率は低迷し、約 20% に落ち込んだ時期もあった。

合格率低迷、志願者つなぎとめへ制度見直し

法科大学院の志願者数も当初の約 7万 3千人から、23 年には約 1 万 2 千人まで激減した。 一時 74 校あった法科大学院は地方を中心に撤退が相次ぎ、入試を実施するのは 34 校に半減。 合格者数について政府は 13 年、3 千人とする数値目標を撤廃し、15 年には「1,500 人程度」に下方修正した。 大学で 4 年、法科大学院で少なくとも 2 年を学ばなければ司法試験を受けられない制度を基本としつつ、経済的な事情で法科大学院に進めない人にも法曹への道を残すため、政府は 11 年に誰もが受けられる「予備試験」の制度を開始。 合格すれば司法試験を受けられるようにした。

20 年には、法科大学院修了までの学費と時間の負担軽減を目的に、大学の法学部を 3 年で卒業できる「法曹コース」の仕組みも新設。 23 年からは、法科大学院で学んでいる間でも「修了見込み」と認められれば受験できるように改めた。 今回の試験では、合格者全体の 42.71% (680 人)を法科大学院に在学中の受験者が占め、合格率も全体の平均を上回る 55.19% だった。

識者「制度、ようやく落ち着いたが …」

法科大学院協会の理事長として、法曹コースや在学中の受験制度の導入を進めた中央大法科大学院の大貫裕之教授は「法曹コースと在学中受験が順調に滑り出し、ようやく制度も落ち着いてきた」と評価する。 一方、法曹の多様性の確保をうたった当初の理念の実現には、なおも課題があると指摘。 「法学を学んだことがない志願者の増加や合格率の向上が欠かせず、さらに改革を進める必要がある」と話す。 (久保田一道、増谷文生、asahi = 11-6-24)


富士通、早期希望退職を募集 費用 200 億円計上も人数は非公表

富士通は 31 日、国内の間接部門の幹部社員を対象に、早期希望退職を募ったと明らかにした。 募集人数は公表していない。 すでに募集を締め切り、応募者の多くが 10 月末で退職したという。退職金の積み増しなどの関連費用として 200 億円を同日発表した 2024 年 9 月中間決算に計上した。 社員の転職を支援する独自制度「セルフ・プロデュース支援制度」を一定の期間、拡充して実施した。 デジタル化を支援する IT 事業への転換を進めるなかで、人材の配置を見直した。 事業の再編や関係会社の統合などで、間接部門に余剰が生まれていたという。

磯部武司副社長 CFO (最高財務責任者)は「事業構造の変革のスピードがかなり早くなってきたので、いま一度、人材構成の変革のスピードも上げなければいけないという課題認識があった」と説明した。 (田中奏子、asahi = 10-31-24)