今年の漢字「金」に石破首相は「残念」 自身が選んだのは …

石破茂首相は 12 日、今年の世相を表す漢字に「金」が選ばれ、理由の一つに自民党派閥の裏金問題が挙げられたことについて、「そういう言葉が今年の政治を象徴する言葉になってしまったというのは残念だ」と述べた。 首相官邸で記者団の質問に答えた。 「今年の漢字」は日本漢字能力検定協会が全国から募集して選ぶ仕組みで、「金」の理由として、パリ五輪・パラリンピックでの日本人選手の金メダルラッシュのほか、裏金問題を挙げる人が多かったという。 首相は「金によって左右されない、そういう政治をつくっていかねばならない」と述べた。

自身の 1 年を表す漢字としては「謙」を選んだ。 「本当に謙虚に、ひたすら己をむなしくして、いろんな方の意見を素直に承る。 特に今年後半、この言葉をかみしめながら過ごしている」と語った。 林芳正官房長官は同日の記者会見で、今年の漢字を問われ「動」を選んだ。 能登半島地震やロシアと北朝鮮の軍事協力、自民党総裁選、米大統領選などを挙げ「まさに激動の 1 年だった」と述べた。 (南有紀、asahi = 12-12-24)


子ども食堂、1 万カ所突破 世代を超えつながり合う「居場所」に進化

無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」が全国で 1 万カ所を超えた。 コロナ禍や物価高の逆境でも増え続けたのは、食事をする場所だけにとどまらず、世代を超えた地域の「居場所」として浸透してきた背景がある。 子ども食堂のネットワークづくりなどをする NPO 法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」が 11 日、発表した。 子ども食堂を「子どもが一人でも安心して行ける無料または低額の食堂」と定義して調査し、今年度は全国 1 万 0,866 カ所と、公立中学約 9,300 校を上回り、過去最多となった。

子ども食堂は 2012 年に東京都大田区で八百屋を営んでいた女性がボランティアで食事を提供した活動が始まりとされ、全国へ広がっている。 個人や企業、NPO 法人など運営主体は多様で、毎日開催しているところや月 1 回のところもある。 運営には国や自治体の補助金、民間の助成金、寄付、食品の寄贈などを活用しているところが多い。

つながり希薄になる社会 子ども食堂が希望に

10 年代は、貧困対策の側面だけが注目されがちだったが、次第に高齢者の健康づくりや地域のにぎわいづくり、虐待予防などの役割も果たすようになってきた。 外国籍や、様々な理由で生きづらさを感じる子どもの居場所になっている例もある。 むすびえの調査では、子ども食堂の 7 割が「年齢や属性などによる参加制限を設けていない」と答えた。

むすびえは、子どもが歩いて行ける範囲として、約 1 万 8 千ある小学校区に一つ以上の子ども食堂があることをめざしている。 校区内に子ども食堂がある公立小学校の割合を示す「充足率」は全国平均で 34.66%。 自治体の予算や運営主体の広がりの差で都道府県によって 10 - 60% 台と開きがある。 むすびえ理事長の湯浅誠さんは、子ども食堂が多世代の拠点として機能しているとした上で「人とのつながりが感じにくい世の中で、リアルなつながりを求めて実行、実践している人、それを応援する人がたくさんいることは希望だ」と話した。 (三宅梨紗子、asahi = 12-11-24)


今年の秋、観測史上最も暑く 平年比プラス 1.97 度 今後は大雪も

気象庁は 2 日、今年の秋(9 -11 月)の平均気温は平年と比べて 1.97 度高く、これまで最高だった昨年(プラス 1.39 度)を超え、統計のある 1898 年以来、最も暑かったと発表した。

95% の教室に冷房、売れる男性用日傘 異常な暑さ、生活に変化も

気象庁によると、偏西風が平年より北寄りを流れたことで、全国的に暖かい空気に覆われ、平年の気温を大きく上回る日が続いた。 一方、冬(12 月〜来年 2 月)は一転して、西高東低の冬型の気圧配置が強まり、「冬らしい冬」となる見込み。 一時的に北から強い寒気が入り込み、日本海側を中心に大雪となる可能性もあるという。 (力丸祥子、asahi = 12-2-24)


今年の新語・流行語大賞、年間大賞は「ふてほど」

「2024 ユーキャン新語・流行語大賞(「現代用語の基礎知識」選)」が 2 日、発表された。 年間大賞には、今年 11 - 3 月に TBS 系で放送された阿部サダヲさん主演の連続ドラマ「不適切にもほどがある!」の略称「ふてほど」が選ばれた。 エンターテインメント分野ではほかに、「ふてほど」の主題歌も担当したヒップホップユニット「Creepy Nuts」の楽曲タイトル「Bling-Bang-Bang-Born」、ネットフリックスで配信されたドラマ「地面師たち」の名ぜりふ「もうええでしょう」が選ばれた。 そのほかトップテンに入ったのは、「裏金問題」、「界隈」、「初老ジャパン」「新紙幣」、「50-50」、「ホワイト案件」、「名言が残せなかった」(50 音順)。

暗い世相を象徴する言葉が目立った一方、パリ五輪で活躍した総合馬術日本代表チームや陸上競技・やり投げの北口榛花(はるか)選手、野球の大谷翔平選手などスポーツで明るい話題をもたらした選手にちなんだ言葉が並んだ。 表彰式に登場した「ふてほど」の阿部さんは「『ふてほど』とはあまり言ったことがないけれど、ドラマ全体が評価されたことは大変光栄です」と喜んだ。 演出の金子文紀さんは「新聞、雑誌、ネット記事などで『不適切にもほどがある』という言葉が使われ、うれしい半面、今年は不適切なことが多かったということかと、複雑な心境でもある」と話した。

選考委員で俳優の室井滋さんは選考全体について「寂しい、さえない言葉が多かった。 正直にものをいうのがはばかられる世相ではないかと思った。」と振り返った。 (真田香菜子、asahi = 12-2-24)

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裏金問題、5 -50、はて? … 新語・流行語大賞に 30 語ノミネート

今年の世相を映した言葉に贈られる「2024 ユーキャン新語・流行語大賞(「現代用語の基礎知識」選)」にノミネートされた 30 語が 5 日、発表された。 「裏金問題」、「新紙幣」などお金にまつわる言葉のほか、オリンピック・パラリンピック選手や大谷翔平選手の活躍に関連する言葉が目立っている。 年間大賞とトップ 10 は 12 月 2 日に発表される。 (asahi = 11-5-24)

ノミネートされた 30 語

▽ アサイーボウル、▽ アザラシ幼稚園、▽ インバウン丼、▽ 裏金問題、▽ 界隈、▽ カスハラ、▽ コンビニ富士山、▽ 侍タイムスリッパー、▽ 初老ジャパン、▽ 新紙幣、▽ 新 NISA、▽ ソフト老害、▽ トクリュウ、▽ 南海トラフ地震臨時情報、▽ 猫ミーム、▽ はいよろこんで、▽ 8 番出口、▽ はて?、▽ BeReal、▽ 被団協、▽ 50-50、▽ フテほど、▽ Bling-Bang-Bang-Born、▽ ブレイキン、▽ ホワイト案件、▽ マイナ保険証一本化、▽ 名言が残せなかった、▽ もうええでしょう、▽ やばい、かっこよすぎる俺、▽ 令和の米騒動


東京 23 区の物価、3 カ月ぶり伸び拡大 コメは 62.8% 上昇

総務省が 29 日に発表した 11 月の東京都区部(23 区)の消費者物価指数(速報値)は、値動きの大きい生鮮食品をのぞいた総合指数(2020 年 = 100)が 108.3 となり、前年同月より 2.2% 上がった。 伸び率は前月の 1.8% を上回り、3 カ月ぶりに拡大した。 コメの高騰は続き、過去最大の伸び率を更新した。 物価全体の上昇は 39 カ月連続。 伸び率が日本銀行で目標にする「2%」台に乗ったのは 2 カ月ぶりになる。 コメの伸び率は 62.8% で、過去最大だった前月の 62.3% を上回った。 ほかにも高騰が続く食べ物が目立ち、チョコレートは 28.5%、コーヒー豆は 23.3% の値上がりを記録。 輸入牛肉も 13.3% 上がった。

政府の補助金が減額された電気・ガス代も、値上がりが加速。 伸び率は電気が 9.7%、都市ガスが 6.9% で、それぞれ前月の 4.0%、1.8% から拡大した。 一方、生鮮食品もふくめた総合指数は 2.6% 上昇した。 一部の野菜が高騰し、ブロッコリーは 8 割超、キャベツは 6 割超、ダイコンは 4 割超の大幅な値上がりとなった。 猛暑の影響で育ちが悪く、出荷量が減ったとみられる。 都区部の指数は全国分に先駆けて公表され、物価の傾向を早めにつかむのに利用される。 東京都による高校の実質無償化の影響もあって、物価全体の伸び率は全国よりも低めになっている。 (内藤尚志、asahi = 11-29-24)


12 月の電気・ガス料金、大手 13 社で値下がり 政府補助は 1 月再開

大手電力 10 社と大手都市ガス 4 社は 28 日、12 月使用分(来年 1 月請求分)の電気・ガス料金を発表した。 燃料価格が下がったことで、関西電力を除く 13 社が前月に比べて値下がりする。 前月に続き、政府の補助はない。 補助は 1 月使用分で再開する。 電気料金(国の認可が必要な規制料金)は、平均的な家庭でみると 9 社で 5 - 104 円下がる。 ガスは全 4 社で 35 - 46 円下がる。 LNG (液化天然ガス)や石炭の価格が下がった影響が大きい。

1 - 3 月使用分で補助が再開

一方、政府は物価高対策として、1 - 3 月使用分の電気・ガス料金について補助を再開する。 家庭向けの電気料金は、1 - 2 月は 1 キロワット時あたり /2.5 円、3 月は1.3 円を補助。 ガスは 1 - 2 月が 1 立方メートルあたり 10 円、3 月は 5 円を補助する。 電気とガスを合わせて、平均的な家庭で 1 - 2 月は各 1 千円程度、3 月は 500 円程度の値下がり効果がある。 政府は電気・ガス料金の負担軽減やガソリン代の補助で、これまでに 11 兆円超を費やしており、財政への負担が指摘されている。 (三浦惇平、asahi = 11-28-24)


「27 都道府県で単身世帯が 40% 超」に … 東京は 54.1% 2050 年推計

全ての世帯に占める 1 人暮らしの割合が、2050 年には 27 都道府県で 40% を超える見込みであることが分かりました。 国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計によりますと、全ての世帯に占める 1 人暮らしの割合は全国で 2020 年は 38.0% でしたが、2050 年には 44.3% へと上昇するとみられています。 都道府県別では東京が 54.1% で最も高くなっています。 研究所は「若者らが集中する大都市圏では未婚が進んで、現役世代の単身世帯が増えるのに対し、高齢化や人口流出が著しい地方では単身の高齢者の割合が高くなる傾向にある」と分析しています。 (Tokyo MX+ = 11-14-24)

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65 歳以上が過去最多 3,625 万人 「団塊世代」全員が 75 歳以上に

総務省は 16 日の「敬老の日」に合わせ、65 歳以上の高齢者の人口推計を公表した。 9 月 15 日時点の高齢者は前年より 2 万人多い 3,625 万人、総人口に占める割合(高齢化率)は 0.2 ポイント増の 29.3% で、いずれも比較可能な 1950 年以降で過去最高となった。 高齢化率は世界の 200 カ国・地域で最も高い。 65 歳以上の女性は 2,053 万人(女性人口の 32.3%)、男性は 1,572 万人(男性人口の 26.1%)だった。

年代別では、75 歳以上が 71 万人増の 2,076 万人となり、総人口に占める割合は 0.7 ポイント増の 16.8% だった。 80 歳以上は 31 万人増の 1,290 万人、総人口に占める割合は 10.4%。 初めて「10 人に 1 人」を超えた前年から 0.3 ポイント増えた。 1947 - 49 年に生まれた「団塊の世代」は今年中に全員が 75 歳以上の後期高齢者となる。 来年以降、医療・介護サービスの提供が追いつかない「2025 年問題」の本格化が懸念される。

日本の高齢化率 29.3% は、世界 200 カ国・地域で最高。 主要 7 カ国 (G7) でみると、日本に次いでイタリア (24.6%)、ドイツ (23.2%)、フランス (22.1%) となっている。 韓国 (19.3%) や中国 (14.7%)、インド (7.1%) を大きく上回る。 働く高齢者も増えている。 労働力調査によると、23 年の 65 歳以上の就業者数は前年より 2 万人多い 914 万人。 増加は 20 年連続で、過去最高を更新した。 就業者に占める 65 歳以上の割合は 0.1 ポイント減の 13.5%。

65 歳以上の就業率は 25.2% で前年と同じ。 年代別にみると、65 - 69 歳は 52.0%、70 - 74 歳は 34.0%、75 歳以上は 11.4% で、いずれも増加が続いている。 産業別では、「卸売業・小売業」が 132 万人で最も多く、「医療・福祉」が 107 万人と続く。 「医療・福祉」の就業者は 10 年前の約 2.4 倍になるなど、人手不足が目立つ分野で働く高齢者が増えている。 (千葉卓朗、asahi = 9-15-24)


東京都心で木枯らし 1 号 昨年より 6 日早く 今年は「冬らしい冬」に

気象庁は 7 日、午前 10 時 54 分に東京都心で最大瞬間風速 13.7 メートルの北西の風を観測し、冬の訪れを告げる「木枯らし 1 号」が吹いた、と発表した。 昨年より 6 日早い。 強い寒気が流れ込み、午前 6 時に都心で 12.7 度を観測するなど、都内 17 観測地点のうち、12 地点で今季最低を記録。 全国 915 の観測地点でも 279 地点で今季最低だった。 午前 11 時時点で、青森県酸ケ湯では 25 センチ、札幌市でも 4 センチの積雪が観測されている。

木枯らし 1 号の発表基準は、東京の場合、最大風速 8 メートル以上の北風などの条件があり、発表されない年もある。 気象庁によると、寒気の影響を受けにくく、11 月は全国的に平年より高くなる見通し。 ただ、今年は「冬らしい冬」になる見通しで、北日本から西日本の太平洋側で降雪量が多くなるところもあるという。 (力丸祥子、asahi = 11-7-24)


同性婚を認めない規定は「違憲」 東京高裁「不利益は重大」認める

民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないのは憲法違反だとして、同性カップルら 7 人が国を訴えた訴訟の控訴審判決が 30 日、東京高裁であった。 谷口園恵裁判長は、規定について「性的指向により法的な差別的取り扱いをするものだ」とし、「法の下の平等」を保障した憲法 14 条と、婚姻や家族に関わる法整備のあり方を定めた 24 条 2 項に反して「違憲」と判断した。 国の賠償責任は認めなかった。 訴訟は全国 5 地裁で計 6 件起こされ、高裁判決は 2 件目。 3 月の札幌高裁も違憲と判断していた。

「合理的根拠を見いだしがたい」

東京高裁はまず、婚姻は両性の合意のみに基づき成立するなどと定める憲法 24 条について、憲法制定時に同性婚の議論がなかっただけで、異性間の夫婦と同様の法的保護を与えないという趣旨ではないと指摘。 同性カップルが「配偶者」という法的な関係をつくれない不利益は重大だ、と認めた。 自治体による同性カップルの「パートナーシップ制度」の広まりや、世論調査で同性婚を認めることに賛成する人が増えている点などから、「(同性婚の)社会的受容度は相当程度高まっている」とも説明。 本人の意思で選べない性的指向によって、法的な利益を受けられるかを区別し続けることに合理的な根拠はない、と判断した。

そのうえで、憲法 24 条 2 項が、婚姻や家族に関する法律を「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」とする点を検討。 同性婚を認める立法にあたり、個人の尊重や法の下の平等の原則に根付いた制度にする必要がある、と述べた。 具体的には相続などの権利を挙げ、「異性間の婚姻と異なる規律とすることは合理的根拠を見いだしがたい。 法の下の平等を定めた憲法に違反する問題が生じうる。」と指摘した。

最高裁の統一的な判断が出ていない点などから、国会が正当な理由なく法整備を怠ったとは認めず、国への賠償請求は退けた。 林芳正官房長官は 30 日の会見で「確定前の判決で、他の裁判所に同種訴訟が係属をしていることから、その判断も注視する」と語った。 一連の訴訟では 12 月 13 日に福岡高裁で判決が予定されており、ほかに 3 件の審理が各地の高裁で続いている。 (米田優人、asahi = 10-30-24)


日本人の祖先誕生はやはり弥生時代? ゲノム分析、渡来人ルーツ解明

現代日本人に至る祖先集団は、弥生時代に朝鮮半島から来た渡来人が縄文人と混血して誕生した - -。 東京大などの研究グループが 15 日、弥生人のゲノム解析の結果を 専門誌 に発表した。 日本人の起源については、現代日本人の祖先集団が誕生するのは「古墳時代まで待たなければならなかった」との新説が 3 年前に登場したが、それを否定する形となる。 現代日本人の核ゲノムの成分は、縄文人に由来する「縄文系」に加え、大陸に由来する「東アジア系」と「北東アジア系」の三つに大別される。 日本人の完成に関わった渡来人のルーツについてはよく分かっていなかった。

従来の「二重構造モデル」を支持

東大の大橋順教授(集団ゲノム学)らは、山口県・土井ケ浜遺跡で見つかった約 2,300 年前の弥生人人骨(大人の女性)の全ゲノム配列を解析し、すでに解読済みの縄文人、古墳人などと比較した。 すると、弥生人は現代日本人と同様、「縄文系 + 東アジア系 + 北東アジア系」の三つのゲノム成分を持っていた。 遺伝的な特徴は古墳人に最も近く、次いで現代日本人、古代韓国人、現代韓国人の順に近縁だった。

この結果は、すでに弥生時代に、東アジア系と北東アジア系のゲノム成分をあわせ持つ渡来人が縄文人と混血し、現代日本人の祖先となったという従来説の「二重構造モデル」を支持する。

「古墳時代に完成」の新説否定

一方、日本人の起源については「現代日本人の完成は、弥生時代ではなく古墳時代まで待たねばならなかった」とする 新説 が最近登場した。 解析から、弥生時代の渡来人は北東アジア系、古墳時代の渡来人は東アジア系であるとする「三重構造モデル」が提唱され、話題になった。 ただ今回の結果は、新説を否定する。 どちらも弥生人の人骨のゲノムを分析したのに、なぜ結果が異なるのか。 大橋さんは「新説で分析した人骨は、弥生人の代表として扱うのに問題があった」と指摘する。

というのも、弥生人と言っても人骨の特徴から「縄文系弥生人」と「渡来系弥生人」に分けられる。 渡来人との混血の具合は、時期や地域によってばらつきがあるためだ。 先行研究が調べた人骨は縄文系弥生人で、さらにゲノムの情報量も少なかったという。 「渡来人のルーツを探るには、混血が進んだ渡来系弥生人のゲノム解析が必要だった」と大橋さんは語る。 今回分析したのは、渡来系弥生人の人骨で、精度も十分。 残念ながら、新説は幻だったようだ。

日本人の遺伝子「8 割が渡来人」の謎

ただ日本人のルーツの謎は終わっていない。 大橋さんが首をかしげるのは、核ゲノムの比率だ。 現代日本人の核ゲノムの成分は、東アジア系と北東アジア系だけで 8 割超を占め、土着の縄文系は 1 割強しかない。 今回調べた弥生人もほぼ似た比率だった。 「なぜこの比率になるのか、実は何もわかっていない。 渡来人が大挙して来たとしても、これほど大きな差がうまれるだろうか。 とても不思議です。」

大橋さんによると、日本にやって来た渡来人が縄文人をたくさん殺したという可能性は否定できるらしい。 男性のもつ Y 染色体で、現代日本人男性の 4 割近くに縄文人特有の型が残っていることが判明しており、縄文人が大量に殺されたとは考えにくいという。 「渡来人が来た時に、縄文人集団が少なかったのだろうか。 日本人のルーツの謎を今後、明らかにしていきたい。」と大橋さんは話している。 (石倉徹也、asahi = 10-27-24)


大手小売り、値下げの動き 相次ぐ 節約志向に対応、イオンやセブン …

長引く物価高で節約志向を強める消費者をひきつけようと、大手小売店などの間で値下げや低価格商品を拡充させる動きが広がっている。 原材料価格も高騰するなか、企業側は包装や物流の見直しなども含めてコスト削減に知恵を絞る。 イオンは 22 日、プライベートブランド (PB) 「トップバリュ」の食品など約 100 品目を順次、数量限定で増量するほか、11 月中旬からは一部商品を主に 10% ほど値下げすると発表した。 「価格について非常に厳しくなってきていて、お客様は安い物を(求めて)確実にお店をはしごしている。 入社以来経験がないくらいの状況だ。」

イオントップバリュ社の土谷美津子社長は会見で値下げの理由をそう語った。 増量商品の例として、ミックスチーズの内容量を 1 割増やしたり、あんぱんやクリームパンを 1 袋 5 個から 6 個に増やしたりするとした。 価格は据え置くため、実質値下げとなる。 また低価格の PB 「トップバリュベストプライス」について、350 の新商品と 150 のリニューアル商品を順次売り出す。 一部は従来品より値下げするという。

新商品のコーンポタージュは、1 杯ごとの個包装でなく、チャック付きの大袋にすることで 10 円安くする。 トイレットペーパーは 1 巻きあたりの長さを増やし、芯の体積を相対的に減らすことで、1 台のトラックに載せられる総量を増やして輸送費を削減。 サラダ油は製造拠点を増やして物流効率を高めたという。 いずれも利益を削って値下げするわけではないという。 土谷社長は「粗利率は悪化させずに、数を買っていただけるようにと考えてきた」と語った。

一方、コンビニ最大手セブン-イレブン・ジャパンは、手頃な価格の「うれしい値!」シリーズの商品を拡充している。 7 月に発売した「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」は具をマグロから一部カツオに変えるなどして、税込み 138 円と従来品より約 1 割安くした。 9 月には「五目炒飯(チャーハン)」など弁当 3 種類を約 50 円値下げして 348 円で売り出した。

実質賃金、26 カ月マイナス 識者「節約志向根強い」

小売り大手が低価格商品を増やすのは、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状態が長引き、消費者の財布のひもが固くなっているためだ。 実際の賃金の伸びから物価上昇率を引いた「実質賃金」は 2022 年 4 月から 26 カ月連続でマイナスとなり、今年 6、7 月は賞与の影響でプラスとなったが、8 月は再びマイナスに沈んだ。 一時的にでも値下げして、新たな客を取り込もうという動きも広がる。 スーパーの西友は先月 19 日から 2 週間、購入頻度が高い PB の食品 46 品目を 5 - 17% ほど値下げした。 ホームセンターのカインズも、日用品など 107 点を今月 23 日から 12 月 2 日まで値下げする。

小売り以外でも、牛丼大手 3 社が今月上旬から約 1 週間限定で牛丼などを 50 - 100 円値引きした(すき家は 23 日朝まで延長)。 3 社とも今春以降に原材料価格や人件費の高騰を受けて値上げをしており、吉野家ホールディングスの広報は「価格改定(値上げ)の影響で離れた客層を取り戻す」狙いだと説明。 「(客が)来店するきっかけになり、販売目標をはるかに上回った」とする。

ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは「消費者は価格上昇分だけ購入数量を減らしており、節約志向は根強い。 物価上昇が落ち着くか、それを上回る賃金上昇がないと消費者マインドは盛り上がらない。」と指摘する。 (井東礁、宮崎健、asahi = 10-22-24)


投票率は向上、買い物客も増加? 商業施設で広がる期日前投票所

買い物ついでに投票か、投票ついでに買い物か - -。 選挙の期日前投票所が各地のショッピングセンター (SC) などに設けられるケースが増えている。 幅広い年代が集まるため投票率の向上に一役買っている一方、SC 側にも客数増というメリットがあるようだ。 27 日に投開票される衆院選の期日前投票は 16 日に始まった。 イオンは全国 145 の SC などに期日前投票所を順次設置している。 前回 2021 年の衆院選より 40 カ所多い。

埼玉県越谷市の SC 「イオンレイクタウン kaze」を 18 日昼に訪れると、家族連れらが次々と投票所に足を運んでいた。 80 代の女性は、買い物する用事があったので、ついでに投票に来たという。 「早いほうがいいし、(投票所)入場券がなくても投票できるから便利」と笑顔で話した。 期日前投票も、入場券がなくてもマイナンバーカードなどで本人確認ができれば投票できる。

一方、投票が主な目的でイオンに来た人もいた。 70 代の男性は「投票するために来た。家族と食事をして帰ります。」 知人と訪れていた 30 代の女性も「投票のついでに食事や買い物をします」と話した。 SC などの期日前投票所は、基本的に各自治体の選挙管理委員会が投票率を向上させるねらいで、企業側に設置を打診するという。

イオンの広報によると、SC などに期日前投票所を設置すると来館者数は増えるため、「客数の観点で言えばウィンウィンの関係」だ。 ただ、イオンレイクタウン kaze の場合、普段は企業などに貸し出す催事スペースを、無償で提供して投票所にするため、収益は必ずしも増えるとは限らないという。 セブン & アイ・ホールディングスも今回の衆院選では、運営する SC 「アリオ」や、総合スーパー「イトーヨーカ堂」など 20 施設に期日前投票所を設ける。

期日前投票制度は 03 年に導入された。 総務省によると、衆院選で SC などに設置された投票所は 17 年は約 180 カ所だったが、21 年は約 310 カ所に増加。 22 年の参院選では約 370 カ所にのぼった。 同省の担当者は「投開票日は投票に行けない人もいる。 利便性の高い場所に期日前投票所を設置することで、投票環境は向上する。」と話す。 (井東礁、岩沢志気、asahi = 10-19-24)


救急隊への暴行相次ぎ、異例の訴え 出場は過去最多 東京消防庁

救急隊に対して、暴力を振るったり、器具を壊したりする行為が後を絶たない。 東京消防庁が 9 月、妨害行為で壊された救急車の写真を SNS に投稿すると、4 万回ほど拡散され、注目を集めた。 全国の消防で暴行を受けるといった被害はあり、本来必要な救命救急に支障が出かねず、対応に苦慮している。

「妨害行為が発生しています。」

9 月中旬、そんな文言とともに、救急車のフロントガラスがくもの巣状に割れている写真を東京消防庁が公式 X (旧ツイッター)に投稿した。 瞬く間にリポスト(再投稿)などで約 4 万件拡散され、10 万近い「いいね」がついた。 徐行で走行中に壊されたといい、投稿の中では「妨害行為には警察への通報など毅然とした対応をとらざるをえない」などと説明。 この投稿には、隊員のけがを心配したり、厳格な対応を求めたりする返信がついた。

馬乗りで顔面殴打の被害、救急隊は 7 時間出場できず

実際に隊員がけがをする暴力行為も起きている。 9 月上旬の夜、東京都狛江市。 駆けつけた救急隊員が傷病者を救急車に乗せ、医療機関へ運ぼうとした時だった。 傷病者の家族の 40 代男性が、隊員の胸ぐらをつかみ、馬乗りになって顔面を殴りつけた。 捜査関係者などによると、男性は酒に酔っており、臨場した警察官に公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。 殴られた隊員は、急きょ駆けつけることになった別の救急車によって病院に搬送された。 頭などにけがを負ったが、軽傷だったという。

この影響で、最初に駆けつけた救急隊は約 7 時間出場できなくなった。 搬送や現場の確認をするため、追加分を含め計 4 台の救急車と消防車が駆けつける事態になったという。 同様の被害は全国各地である。

兵庫や名古屋でも暴行被害

兵庫県加古川市では 8 月 4 日、路上で仰向けに倒れている男性の救助に駆けつけた救急隊員が、男性に鼻やほおを殴られた。 20 代の男性隊員 2 人が軽傷を負ったという。 名古屋市でも、昨年 7 月、ホテルのロビーで酒に酔って倒れていた男性の救助に駆けつけたところ、30 代の男性隊員が殴られたり蹴られたりする暴行の被害を受けた。 右太ももの打撲などのけがを負ったという。

こうした救急隊への妨害行為は、東京消防庁管内で今年 1 - 9 月末に 16 件あった。 2019 - 23 年の過去 5 5年間では計 96 件に上る。 隊員への暴力だけではなく、救急車のフロントガラスを壊したり、隊員が使う携帯電話を壊したりする行為も含まれるという。

背景に出場件数の増加 昨年は過去最多

東京消防庁が、妨害行為について危機感をもって呼びかける背景には、救急車の出場件数の増加がある。 昨年は、出場件数が 91 万 8,311 件と過去最多を更新した。 今年は 9 月末時点で 69 万 9,087 件(速報値)で、昨年同期 (68 万 5,544 件)を約 2% 上回るペースだ。 同庁の担当者は「限りある救急隊を迅速に現場に向かわせるため、改めて救急活動への理解と協力をお願いしたい」と訴えている。 (藤田大道、asahi = 10-16-24)


日本被団協にノーベル平和賞 「平和への希望に関与、たたえたい」

ノルウェーのノーベル委員会は 11 日、2024 年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表した。 授賞理由について、「核兵器が二度と使われてはならないと、証言をしてきた」とした。 日本のノーベル平和賞受賞は、1974 年の佐藤栄作元首相以来 50 年ぶり。 ノーベル委員会は、「被爆者は、筆舌に尽くしがたいものを描写し、考えられないようなことに思いをいたし、核兵器によって引き起こされた理解が及ばない痛み、苦しみを理解する一助となった」とし、「今日、核兵器の使用に対する『タブー』が圧力を受けていることは憂慮すべきである」と懸念も示した。

そのうえで、「ノーベルのビジョンの核心は、献身的な個人が変化をもたらすことができるという信念。 肉体的苦痛やつらい記憶にもかかわらず、平和への希望、関与をはぐくむために役立てることを選んだすべての被爆者をたたえたい」といたわった。 また、「いつの日か、被爆者は歴史の証人ではなくなるだろう。 ただ、日本の若い世代は被爆者の経験とメッセージを受け継いでいる。 彼らは世界中の人々を鼓舞、教育している。 人類の平和な未来の前提条件である、『核兵器のタブー』を維持する一助になっている」とたたえた。

受賞を知った広島県被団協の箕牧智之理事長は、広島市役所で会見し、「本当に夢の夢です」と喜んだ。 受賞でどんなメッセージが広がって欲しいかを問われると、「核廃絶、恒久平和の実現です。 今、世界は複雑な情勢だ。 私たちもさらに磨きをかけてやっていかなければならない。 戦後、原爆孤児で育った子どもたちがたくさんいる。 ガザで子どもが被害を受けている」と訴えた。 日本被団協の和田征子事務局次長 (80 は「言葉にならない。 夢のよう。 私たち被団協が創設以来訴え続けてきた、核兵器の非人道性が世界に伝わってほしい」と語った。

平和賞はアルフレッド・ノーベルの遺言に基づき、「国家間の友愛、常備軍の廃止や縮小、和平会議の開催や促進のために、最も大きな、あるいは最も優れた活動を行った者」に贈られる。 これら三つの分野で昨年までに、111 人と30団体が受賞してきた。 ノーベル委員会はノルウェー人 5 人で構成され、「ノルウェーと北欧諸国の外交政策全体を特徴付ける理想主義と現実主義の混合物を反映する」(2001 年、ルンデスタッド前委員会事務局長)といわれる。 近年は特に、現実の出来事に関して前向きなメッセージを与えられるような受賞者を選んできた。

女性の抑圧が大きな課題となっていた昨年は、獄中にいるイランの人権活動家、ナルゲス・モハンマディさん (52) が受賞した。 今年の平和賞は、1 月末までにノミネートされた計 286 候補(197 人、89 団体)から選ばれた。 候補や推薦者は原則として 50 年間は公表されない。 賞金は 1,100 万スウェーデンクローナ(約 1 億 5,700 万円)。 授賞式はノーベルの命日にあたる 12 月 10 日にオスロで開かれる。(ロンドン・藤原学思、asahi = 10-11-24)

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)とは

1956 年 8 月に結成された。 長年にわたって国や自治体に援護施策の拡充を求める一方、国連軍縮特別総会や核不拡散条約 (NPT) 再検討会議といった国際会議に代表者を派遣。 被爆体験の証言や原爆展の開催、署名活動などを通じ、世界に向けて核兵器廃絶や核実験禁止を訴え続けてきた。


食品、薬、郵便料金 … 値上げの秋 児童手当は拡充 暮らしへの影響は

10 月からモノやサービスの価格や制度が変わる。 食品や郵便料金、薬などが値上げや負担増となる一方、児童手当は大幅に拡充される。 働き方では、パートの人らについて厚生年金の加入対象が広がる。 暮らしへの様々な影響がありそうだ。

10 月から暮らし こう変わる

食用油や清涼飲料、菓子をはじめ、値上げの波が続く。 菓子では明治が「きのこの山」など 100 品目の出荷価格を約 6 - 31%、亀田製菓は「ハッピーターン」など 17 品目を店頭想定価格で 9 - 22% 程度値上げする。 やおきんは「うまい棒」の希望小売価格を税抜き 12 円から 15 円に引き上げる。

帝国データバンクが主な食品メーカー 195 社を調べたところ、10 月は約 3 千品目の値上げが予定されている。 2 千品目を超えるのは今年 4 月以来で、半年ぶりの値上げラッシュとなる。 猛暑や干ばつなど異常気象による原材料高に加え、賃上げによる人件費増を理由に挙げる企業が増えているという。 今年 1 - 11 月の値上げ品目(予定含む)は約 1 万 2 千品目と、2022 年通年の約 2 万 6 千品目、23 年通年の約 3 万 2 千品目に比べると少ない。 ただ平均値上げ率は 17% と、過去 2 年の 14 - 15% より高い。

「実質値上げ」にシフトも

同社によると、値上げの長期化によって消費者に「値上げ疲れ」がみられる一方、包装費や物流費も含めたコスト増は続いている。 そのため企業の間では、価格は据え置いて内容量を減らす「実質値上げ」に移行する動きが目立ってきたという。 郵便料金も値上げする。 はがきは 63 円から 85 円、封書(定形郵便)は 84 - 94 円から110 円になる。 レターパックや速達、定形外郵便物などの料金も上がる。

後発医薬品(ジェネリック)がある特許切れ先発医薬品は、自己負担額が上がる。 ただ、患者希望で処方する場合が対象で、医師が先発薬での治療が必要だと判断した時はこれまで通りの負担となる。 「タミフル」や「ヒルドイド」などが引き上げ対象だ。 具体的には後発薬の発売から 5 年以上が経っているか、後発薬の使用割合が 5 割以上になっている先発薬 1,096 品目。 先発薬と後発薬の価格差の 4 分の 1 を保険対象から外し、患者の選択によって自己負担を求める「選定療養」の扱いとする。 一方、新型コロナウイルスのワクチンについて、高齢者向けの定期接種が始まる。 接種期間は来年 3 月末まで。

児童手当は 10 月分(12 月支給)から拡充が始まる。 政権の「異次元の少子化対策」の一環。 主な生計者の年収が 960 万円以上の場合は減額、1,200 万円以上は対象外などとしていた所得制限は撤廃する。 支給期間は中学生から高校生年代まで広げ、延長した間は子ども 1 人あたり 1 万円を支給する。 第 3 子以降は、年齢に関わらず 3 万円に増額する。 支給回数は、年 3 回から、2 カ月分ずつ年 6 回に増やす。 10 月、11 月の拡充分は 12 月に支給される。 所得制限の対象だった人など、新たに申請が必要な人もおり注意が必要だ。

パートの人ら、厚生年金の加入対象を拡大

会社員らが入る厚生年金は、「従業員 101 人以上の企業で週 20 時間以上働き、月収 8 万 8 千円以上の人」が加入対象。 うち企業規模の条件が「従業員 101 人以上」から「従業員 51 人以上」に引き下げられる。 パートの人ら短時間労働者の加入を拡大する。 厚生労働省の推計では、対象は約 20 万人。 最低賃金(時給)の全国加重平均は 1,055 円に。 引き上げ額は、過去最高の 51 円 (5.1%) となる。 物価高や人手不足に伴う人材獲得競争が背景にある。 (新田哲史、川野由起、asahi = 9-29-24)


本を読まない人が 6 割超 スマホに時間とられる? 国語世論調査

読書量が減っている理由

1 カ月に本を 1 冊も読まない人は 6 割を超える - -。 文化庁が 17 日に発表した 2023 年度の「国語に関する世論調査」で、そんな結果が明らかになった。 近年指摘されている読書離れが改めて浮き彫りになった。 調査は今年 1 - 3 月に実施した。 日本語を母語とする全国の 16 歳以上を対象に質問用紙を郵送、6 千人のうち 3,559 人が答えた。

調査結果によると、1 カ月に電子書籍を含め何冊の本を読むかという問いに対して、62.6% の人が「読まない」と答えた 。同様の調査は 08 年度から 5 年ごとに行っているが、過去の調査では 5 割を超えたことはなく、前回 18 年度は 47.3%。 コロナ禍前の前回までは面接による調査だったため単純に比較はできないが、文化庁の担当者は「注目すべき数字」と話している。 本を読む人には、どのように本を選んでいるかを尋ねた。 書店に行って手に取りながら選ぶ人は 57.9% で前回の 66.7% から減った一方で、インターネットの情報をもとに選ぶ人は 33.4% で前回の 27.9% から増えた。

読書量についての質問では、69.1% が「減っている」と答え、前回の 67.3% から微増した。 読書量が減った人に理由を問うと、スマホやゲーム機など「情報機器で時間が取られる」と答えた人が 43.6% (前回 36.5%)で最多。 過去の調査では「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」を選ぶ人が多数だったが、今回は 38.9% (同 49.4%) にとどまった。(田島知樹)

「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著者で文芸評論家の 三宅香帆 さんの話 : 直近 5 年間、AI のアルゴリズムでおすすめされる「ショート動画」や画像を投稿する SNS が爆発的に流行したことで、私たちはスマホで文脈のない短文や動画・画像の情報を得ることに慣れてしまった。 その結果、日本人全体が「長文離れ」を起こしているのではないかと感じる。

現代社会では文脈ありきの長い文章や論理的な説明を読み解く能力よりも、場当たり的なコミュニケーション能力やタイムマネジメント能力が重視されている。 それゆえに多くの人が「他人の言葉をじっくり読み、聴く能力」を失っているのではないか。 国や企業は長期的な視野をもって現代人の長文の読解力を伸ばす努力をすべきだろう。 そのためにも、他者や遠い場所への想像力が必要な読書が重要だと思う。 (asahi = 9-17-24)

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「さくっと」、「もふもふ」定着か 「ごりごり」は … 国語世論調査

文化庁が 17 日に発表した「国語に関する世論調査」からは、新しい擬音語・擬態語(オノマトペ)がどのくらい社会に浸透しているかも浮かびあがった。 「時間や手間をかけずに終わらせる」という意味で「さくっと終わらせる」を使う人は 56.2%、「ふんわりと柔らかそう」な動物に「もふもふしている」という表現を使う人は 52.6% だった。 どちらの言葉についても、他人が使っても気にならないと答えた人が 8 割を超えた。 文化庁国語課の担当者は「これらの言葉は今後、社会に定着していく方向にあると思う」と話す。 一方で「筋金入りの車好き」という意味で「ごりごりの車好き」と言う人は 20.0% にとどまり、他人の使用が気にならないと答えた人は 59.4% だった。

調査では、本来とは異なる言い方や意味で使われている言葉についても調べている。 すぐに、という意味の「間髪を入れず」は「間、髪を入れず」と本来は区切って言うが、9 割以上の人が区切らずに使っていた。 また、明るいものや立派な人がたくさん並んでいる様子を表す「綺羅星のごとく」は、「綺羅、星のごとく」と区切って言うのが本来の使い方だが、区切らずに続けて言う人が 88.6% にのぼった。

「悲喜こもごも」の意味については、本来の意味である「悲しみと喜びを次々に味わうこと」を答えた人が 6.5% にとどまる一方で、「悲しむ人と喜ぶ人が様々にいること」とした人が 91.0% にのぼった。 また、「悪運が強い」の意味については、「悪い状況になっても、うまく助かる様子」と答えた人が 67.2% だったが、本来の意味である「悪い行いをしたのに、報いを受けずにいる様子」とした人は 24.3% だった。 国語課の担当者は「本来の意味を尊重することは大切」としつつ、「言葉というのは時代とともに変化する。 円滑なコミュニケーションが図られるようにしていくことが大事。」と話す。 (田島知樹、asahi = 9-17-24)