空き住宅、技能実習生の住まいに 安芸高田市で地元 NPO 法人 7 人入居へ 広島県安芸高田市甲田町小原地域の有志でつくる NPO 法人「ぷらっとほーむ小原」が、地元の JR 芸備線吉田口駅近くの空き店舗兼住宅をリフォームし、外国人技能実習生の住まいを整えた。 プライバシーに配慮する形で改装。 近くの特別養護老人ホーム甲田で新たに働くベトナムからの 4 人が今月下旬に入居し、本年度中には計 7 人が暮らす予定だ。 施設側が実習生の住まいを探す中で、地元の空き家調査や吉田口駅舎の指定管理を担う NPO が地域づくりにもつながるとして土地と建物を購入し、ニーズに応えた。 建物は築 50 年余の 2 階建てで、約 10 年前から空いていた。 1 階の 2 部屋を廊下で仕切って 3 部屋に増やし、一部はフローリングに。 二つのトイレはいずれも洋式に替え、2 階を含む計 7 部屋にはそれぞれ鍵付きの扉と窓を取り付けた。 広々とした共同キッチンもあり、店舗部分だったスペースは実習生同士や住民との交流に生かす。 施設側と賃貸契約を結んだ。 同市で暮らす外国人は年々増え千人超。 大半を実習生が占める。 NPO の明木一悦代表理事 (66) は長く実習生を支援してきた経験から「プライバシーが保てる住環境は何より重要。」 駅前一帯はかつてにぎわいの拠点だったが、人口減少で閉店が続き「新たな活用のモデルにもなる」と説く。 特養甲田は介護や調理部門で実習生に頼る。 西丸将史施設長 (52) は「実習生は貴重な力だが、住まいを探すのに一苦労している。 職場にも近くて、安心感があります。」と感謝している。 NPO は、地元の空き家 2 軒についても同様に実習生の住まいにする計画を進めている。 (胡子洋、中国新聞 = 9-6-24) ベトナム人元実習生「盗んだ金は家族に」 借金 100 万円抱え来日 国内で働く約 40 万人の技能実習生のうち、およそ半数を占めるベトナム人。 実習生は建築や農業などの労働現場を支えるが、盗みなどで摘発されるケースが増えている。 希望をもって来日したはずの若者たちは、なぜ犯罪に手を染めてしまうのか。 空き家を狙って盗みを繰り返したとして、福岡県警は 7 月末、ベトナム国籍の男 (32) = 福岡市東区、窃盗罪などで公判中 = を窃盗などの疑いで送検し、捜査を終結したと発表した。 県警によると、男は 2023 年 7 月 - 12 月、福岡県内の空き家に侵入し、盗んだノートパソコンからネットバンキングにアクセスして、現金約 718 万円を引きだした疑いなどがある。 容疑を認めているという。 捜査 3 課によると、男は15年5月、技能実習生として来日。長崎県内で溶接の仕事をしていたが、勤務態度を問題視されて帰国させられる恐れがあったため、職場から姿を消した。 その後、オーバーステイ(超過滞在)の状態のまま、農業や自動車の解体業に携わったとみられる。 「ベトナム国籍の知人から誘われたのをきっかけに、23 年 3 月ごろから福岡県内を中心に窃盗をはじめた」と供述しているという。 捜査関係者によると、男は来日の際、送り出し機関などに払うため 100 万円以上の借金をしていたが、返済できていなかった。アパートに 1 人で暮らし、夜間に盗みに出かけていたと県警はみる。 「盗んだ金はベトナムの家族に送った」と話しているという。 8 割が借金を背負い来日、職場の移動に制限も 刑法犯罪に関わった疑いで警察に摘発されるベトナム人は近年、増加傾向にある。 警察庁によると、昨年は全国で 1,608 人(前年比 27 人増)で、外国人全体の約 28% を占め、国籍別で 20 年から 4 年連続最多となった。 昨年末時点で、日本で暮らすベトナム人は約 56 万 5 千人(前年同期比約 7 万 6 千人増)で、うち約 35% が技能実習生だった。 一方で、多くのベトナム国籍の技能実習生が苦しむのが、送り出し機関などに支払う費用だ。 22 年に公表された出入国在留管理庁の調査によると、支払う費用の平均は約 65 万円。 借金は平均約 67 万円で、約 8 割の実習生が借金をしていた。 それ以上の額の借金を背負って来日するケースも少なくない。 厚生労働省によると、技能実習制度では原則として 3 年間は職場の変更(転籍)が認められていない。 職場になじめなくても別の職場に移れず、来日による借金の負担もある。 そうした背景が、ベトナム人を犯罪に追い詰めていると指摘する声もある。 改正法成立も、懸念の声 「実態は旧制度の延長」 こうしたなか、「技能実習」制度を廃止し、新たな「育成就労」制度を創設する改正入管難民法などが 6 月に参院本会議で可決、成立した。 施行は公布から 3 年以内。 就労 1 - 2 年で転籍を可能とした。 本人からの希望があれば、送り出し国側と企業の間で受け入れを調整する民間の「監理支援機関(旧監理団体)」が転籍を支援する。 ただ、在日外国人の支援を続ける市民団体「コムスタカ - 外国人と共に生きる会(熊本市)」の中島真一郎さんは、「実態は(旧)制度の延長でしかない」と指摘。 その上で、「(転籍の制限など)日本人の若者に通用しないことは、外国人だからといって通用するわけではない。 定住や家族帯同などをより認めていく政策に、正面から取り組まないといけない」と話した。 (鳥尾祐太、asahi = 8-28-24) 外国人技能実習生など対象に料理教室 巻きずし作り挑戦 鳥栖 外国人技能実習生などを対象とした料理教室が佐賀県鳥栖市で開かれ、初めての巻きずし作りに挑戦しました。 この料理教室は、楽しみながら日本の文化やことばを学んでもらおうと鳥栖市が開き、タイとネパールからの外国人技能実習生など合わせて 5 人が参加しました。 参加者たちは、講師役の食生活改善推進協議会の人たちなどから手ほどきを受けながら、巻きずし作りに挑戦し、のりの上に均一にご飯をのせると卵焼きやカニカマを置き、「巻きす」を使って巻いていきました。 全員が初めての体験だということで、ゆっくりとした手つきで丁寧に形を整えていました。 このあと参加者たちは早速、試食会を開き、きれいに巻き上がった巻きずしや、一緒に作ったフィリピンのオムレツをみんなで楽しそうに味わっていました。 タイ人の女性は「初めて食べました。 おいしいです。 作るのは難しかったけれど楽しかったです。」と話していました。 また、ネパール人の男性は「すしの中にいろいろな具材が入っていておいしいです」と話していました。 鳥栖市市民協働課の大石文枝係長は「皆さん和気あいあいと料理しながらコミュニケーションが取れていたのでよかったです」と話していました。 (NHK = 8-24-24) 静岡銀行、フィリピン技能実習生向けに金融サービス しずおかフィナンシャルグループ (FG) 傘下の静岡銀行は、フィリピン人の技能実習生向けの金融サービスを試行的に始めた。 来日前の融資や、来日後の給与受取口座の開設などを後押しする。 来日後に金融サービスを支障なく利用できる環境を整え、外国人が働きやすい地域づくりにつなげる。 フィリピン金融大手の BDO ネットワークバンクや、資金移動業者の BDO レミットジャパンと連携して実施する。 同行の取引先で受け入れ予定の技能実習生で、来日前に借り入れの希望があれば BDO ネットワークバンクが融資する。 上限は 15 万フィリピンペソ (約 40 万円) で期間は 1 年。 来日後は同行のインターネット支店で給与受取口座を開いてもらうほか、フィリピンへの送金も BDO と組んで安価にできるようにする。 利用状況を検証し、正式なサービス導入の可能性を探る。 (nikkei = 8-16-24) 岐阜の川で溺れベトナム国籍技能実習生死亡 岐阜県警によると、13 日午後、岐阜市の長良川で「同僚が溺れて、上がってこない」と女性から 110 番があった。 ベトナム国籍の技能実習生の男性 (23) が川底から救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。 (kyodo = 8-13-24) 自宅で技能実習生男性の背中を包丁で突き刺し殺害しようとした疑い 男性の背中を包丁で突き刺し殺害しようとしたとして、高知市に住むベトナム国籍の技能実習生の男が逮捕されました。 殺人未遂の疑いで逮捕されたのは高知市百石町に住むベトナム人技能実習生のド・タイン・タム容疑者 (20) です。 7 月 28 日午後 0 時 30 分ごろ、自宅で同じベトナム国籍で技能実習生の男性の背中を包丁で突き刺し、殺害しようとした疑いが持たれています。 背中を刺された男性は病院に搬送されましたが、命に別条はありません。 警察は認否について明らかにしておらず、犯行の動機を調べるとともに、2 人の間に何らかのトラブルがなかったかなど詳しく捜査しています。 (高知さんさんテレビ = 7-29-24) 女性殴り財布など奪った疑いインドネシア国籍の技能実習生逮捕 15 日夜、福岡市早良区の住宅街の路上で面識のない女性に顔を殴るなどの暴行を加えてけがを負わせ、現金の入った財布などを奪ったとして、インドネシア国籍の技能実習生が強盗傷害の疑いで逮捕されました。 逮捕されたのは、住所、職業不詳でインドネシア国籍の技能実習生、ロフマット・ヒダヤト容疑者 (28) です。 警察によりますと、15 日午後 9 時すぎ、福岡市早良区田隈の路上で面識のない 25 歳の女性に後ろから襲いかかり、顔を拳で複数回殴ったり転倒させて腹を足で踏みつけたりしてけがをさせ、現金が入った財布などを奪ったとして、強盗傷害の疑いが持たれています。 女性は口を切るなどしたほか、鼻を骨折した疑いがあるということです。 通報を受けた警察が付近を捜索していたところ、およそ 1 時間後に犯人と特徴の似た容疑者を見つけて職務質問し、女性の所持品を持っていたことなどから逮捕したということです。 警察の調べに対し「金がほしかった」などと供述し容疑を認めているということで、警察がいきさつを詳しく調べています。 現場は、福岡市地下鉄七隈線の賀茂駅から南におよそ 500 メートルの住宅街です。 (NHK = 7-16-24) 熊本・八代、外国人技能実習生と高校生 米粉のスイーツ作りに挑戦 八代市の農業高校で、農家などで働く予定の外国人技能実習生が、高校生と一緒に米粉を使ったスイーツ作りに挑戦しました。 この催しは、八代農業高校が米粉の活用に関する研究を披露するとともに、外国人技能実習生との交流を深めようと開き、食農創造科の 2 年生 16 人と、ベトナムやインドネシアからの技能実習生 8 人が参加しました。 挑戦したのは、米粉を使ったクッキーやロールケーキなど 6 種類のスイーツです。 実習生たちは、今月中旬から地元の農家や建設会社で働く予定だということで、まだ日本語には慣れていなため、高校生たちは片言の英語や身ぶり手ぶりを交えて説明しながら、調理を進めていきました。 実習生たちは時間がたつにつれて緊張がほぐれて、高校生との交流を楽しみながら、1 時間ほどかけてスイーツを完成させ、おいしそうに味わっていました。 インドネシアから来た 20 代の男性実習生は「とてもおいしいです。 材料を混ぜてこねる作業が楽しかったです。」と話していました。 実習生と一緒に参加した高校 2 年生の女子生徒は「小さいころに親に教えてもらったことばづかいで、ゆっくり話しかけながら作っていきました。」と話していました。 (NHK = 7-10-24) 中国の若者が日本の老人ホームに押し寄せる、経験積んで帰国後生かそうとする人も - 中国メディア 中国メディアの鳳凰週刊はこのほど、「中国の若者が日本の老人ホームに押し寄せる」とする記事を配信した。 総務省が 6 月 20 日公表した人口推計によると、2024 年 1 月 1 日時点の日本の総人口は 1 億 2,414 万 3,000 人で、65 歳以上人口は 3,620 万 9,000 人だった。 記事は、「日本は世界で最も高齢化が深刻な国の一つ」と言及して、介護業界の人手不足が大きな問題になっていると指摘。 こうした状況を背景に 17 年 9 月には「介護ビザ」が誕生したと伝えた。 また、日本の高齢者向け施設で働く中国の若者は大学卒業以上の学歴を持つ人が少なくなく、ほとんどがデイサービス施設や高級老人ホームに散らばっていると説明。 デイサービス施設については「日本では一般的で、利用者を朝迎えに行って夜に家まで送る」、「介護士は一人ひとりの体と精神的な状況、食事や排泄の記録を取る必要がある」などと述べて、血圧測定や体操などの他、トランプや麻雀、すしや餃子作り、天気が良い日はそろって散歩に出掛けるなどの活動があると伝えた。 そして、介護士の仕事の強度がより大きいのが特別養護老人ホーム(特養)だとして、介護サービスの必要度を判断する要介護認定に言及。 原則として、特養が対象とするのは要介護 3 以上の高齢者で、記事は「特養では、入居者のおむつ着用に本人の希望を尊重する必要がある。 中には着用する必要があるという事実を受け入れられず、一晩に十数回ベルを鳴らす人もいる」、「判断力を失った高齢者に対応する際、介護士は責任感以外に、『相手が次にすることは何なのか』を推測できる感知力が求められる。 過去にはアルコール消毒液を丸々 1 本、飲んだ人がいた。 あるアルツハイマー病を患っている入居者は身の回りの物を何でもかじった」、「日本では人道主義の観点から、高齢者がどんなに手に負えなくても体を縛ってはならない。 身体拘束は禁止されている。 ただ、夜勤 1 人に対して 22 人という施設では、職員は一息入れる機会もない」と伝えた。 記事はまた、「経済条件の良い高齢者は高級老人ホームに入ることができる」と述べ、「ここで介護士や看護師に求められるのは『明るく元気』で、誰もが穏やかな口調だ。 『環境は高級ホテル、サービスはディズニーランドのようでなければならない』が分かりやすい例え」、「当然ながら入居金は 4,000 万円からなど高額で、入居後はさらに毎月 30 万 - 40 万円のサービス費を支払わなければならない」と説明。 施設での生活については、「看護師と介護士が 24 時間常駐。 医師による身体検査が毎週あり、料理はイタリア料理、フランス料理、和食が選べる。 定期的にミニコンサート、映画上映会、お茶会などさまざまなイベントが開催され、リハビリ室やジム、温泉、ダンススタジオ、手工芸の作業室なども備えている。」と伝えた。 「介護士の仕事には苦しいことも楽しいこともあり、時間がたつにつれて多くの中国の若者はこの仕事を好きになり始めている」といい、記事は「職場の人間関係がシンプル」と考える人や「同じ年齢の他の人より収入が多い」と考える人、また「経験を積んで 2 年後に中国に戻り、介護の仕事をしよう」と考える人がいることを紹介した。 (野谷、Record China = 7-3-24) 今治タオル製造の元技能実習生、「無断で在留資格変えられた」と訴え 愛媛県今治市の縫製企業で働いていたミャンマー国籍の元技能実習生 6 人が、実習内容と違う仕事をさせられ、在留資格を無断で変えられたとして、支援する労働組合などが松山市で 2 日、記者会見を開いた。 中小製造業などの労組でつくる産業別組織 JAM などによると、元実習生は 2022 年 9 月に来日した 20 代の女性 6 人。 実習内容は「子供服製造」だったが、実際は市の特産品で高品質で知られる「今治タオル」の製造に従事させられた。 23 年 11 月、勤務先の監理団体や企業から「あと 2 年働くには手続きが必要」、「このままだと辞めてもらうしかない」などと言われ、在留資格が「特定活動」に変更された。 JAM によると、企業側は変更について説明したと主張しているが、資格の内容や理由について本人たちは理解が十分でなかったという。 その後、無断で変更されたとして 6 人は退職。 最後の 1 カ月分の賃金や残業代が支払われていないことから JAM に相談し、今回の件が発覚した。 ミャンマーでは 2021 年 2 月に国軍のクーデターがあり、帰国に不安を抱えるミャンマー人のため、「特定活動」資格の在留が認められている。 JAM によると、技能実習で入国後、実習内容の実態に合わせるため特定活動に無断で変える例が昨年から全国で増えている。 今年に入って 10 件ほどの相談があり、「懸念している」という。 JAM の安河内賢弘会長ら支援関係者は 2 日、今治市内の今治タオル工業組合を訪問。 この企業は組合には入っていないが、今治タオル業界では外国人労働者に対する人権侵害が繰り返されてきたとして、「法令順守の対応がなされてきたのにもかかわらず今回の問題が起きたことは遺憾。 産地全体で人権尊重の取り組みを徹底してほしい。」などと求めた。 JAM によると、今治タオル工業組合は誠意をもって対応したいと答えたという。 企業側からも、未払いの賃金を支払い、認識の違いがあれば是正したいとの連絡があったという。 この日の会見で、JAM の安河内会長は「再発防止策を含む改善の状況をみながら、労働当局に通告するかどうかなどを検討していく」と述べた。 (神谷毅、戸田拓、asahi = 7-2-24) 技能実習生の送り出し側 6 割が個人仲介、高額仲介料要求の「ブローカー」も … 厚労省が初の実態調査 日本に派遣される外国人技能実習生について、海外の「送り出し機関」の約 6 割が、個人の仲介で集めていることが、厚生労働省の初の実態調査でわかった。 中には、実習生や機関側に高額の仲介料を要求する「ブローカー」も含まれているとみられ、厚労省は、実習生が支払う手数料が高騰する一因とみている。 近く、報告書を公表する。 調査は昨年 8 月 - 12 月にベトナム、インドネシア、フィリピン、中国、カンボジアの 5 か国で実施した。 186 の送り出し機関がアンケートに回答し、36 機関に対し、実習生から受け取る手数料やブローカーの実態について、現地でヒアリングを行った。 アンケート(複数回答)で実習生を集める方法を尋ねたところ、「自社で募集」が 89% で最多だった。 次いで多かったのが「個人の仲介」の 58% で、「大学や専門学校の紹介 (51%)」、「日本語学校などの紹介 (49%)」を上回った。 「仲介者」には実習生の親族や知人のほか、村長など地域の有力者が多い。 ヒアリングからは、機関側がブローカーから高額の仲介料を要求され、実習生が支払う手数料に跳ね返っている実態が確認された。 ベトナムの送り出し機関の担当者は「たくさんのブローカーが訪れ、1 人あたり 14 万円程度の謝礼を求めてくる」、「ブローカーは複数の機関が提示する仲介料を比較し、紹介先を決める。 結果的に実習生が負担する手数料が高くなってしまう」などと証言した。 機関側が送り出しの手数料や日本語の教育費などとして実習生から受け取る金額は、ベトナムでは「30 万円以上」が 50% に上り、カンボジアでは、「50 万円以上」が 42% を占めた。 政府は、現行の技能実習制度に代わり、新たに外国人材の育成と確保を目的とする「育成就労」制度を創設。 新制度は 2027 年までに始まるが、海外の送り出し機関に人材確保を頼る状況は変わらない。 厚労省は、育成就労の外国人が負担する手数料を送り出し機関が公開する仕組みの創設に向け、現地政府への働きかけを強めていく方針だ。 (yomiuri = 6-24-24) 中国から指示か 脱走実習生らの偽造マイナカード「工場」を摘発 さまざまな個人情報がひもづき、新たな身分証と位置付けられているマイナンバーカードを偽造していた、アパート一室の「工場」が摘発された。 働いていたのは、技能実習生として来日し、脱走した中国籍の男ら。 警視庁の捜査で、この男らは昨年、大阪市で摘発された「工場」と同じ人物から指示を受けていたとみられることが判明。 警視庁は偽造組織の解明を進めている。 プリンターで「製造」 4 月 24 日、千葉県船橋市のアパート。 偽造工場があるとの情報を基に、捜索に向かう捜査員の前に、部屋からカバンを持った男が出てきた。 捜査員が声をかけ、カバンの中を確認すると、偽造された大量の在留カードが出てきた。 警視庁は入管難民法違反容疑で住所、職業不詳の中国籍、陸成龍容疑者 (41) を現行犯逮捕。 捜索に入った工場にいた住所不定、無職の中国籍、彭楽楽容疑者 (28) を逮捕し、5 月 15 日にも有印公文書偽造と入管難民法違反容疑で再逮捕している。 警視庁池袋署によると、工場はワンルームで簡易ベッドがあるだけの構造。 カード偽造に使うパソコンとプリンターに加え、プラスチックカード、IC チップなどを押収した。 捜査関係者は「IC チップの中身は何もない。 マイナンバーカードは見た目だけは似せているが、同じようには使えないはず。」と話す。 作成済みの「製品」もあった。 中には、同じ人物の顔写真が貼られた 30 枚以上の在留カードや、高校の卒業証明書、示談書などもあり、捜査関係者は「何のために使うのか」と首をかしげる。 中国から指示? 池袋署によると、両容疑者はいずれも技能実習生として来日し、実習先から失踪。 彭容疑者は中国の交流サイト (SNS) 「微信(ウィーチャット)」の掲示板に掲載された募集を見て偽造を始め、1 日約 700 元(約 1 万 5 千円)の日当を受け取っていた。 偽造カード 1 枚の販売価格は 1 万 - 2 万円程度で、割引のあるセット販売も。 1 日に製造できるのは 30 - 60 枚とみられ、昨年 11 月ごろ - 今年 4 月下旬までで、総額で 9 千万円ほどを売り上げていたとみられるという。 また、彭容疑者はウィーチャットを通じて、中国にいるとみられる人物から指示を受けていたことも判明。 警視庁が昨年、大阪市で摘発した同様の偽造工場でも、逮捕された女が同じ人物から指示を受けていた疑いがある。 船橋工場が稼働し始めたのは、この大阪工場が摘発された後だとみられるという。 部屋の名義人は彭容疑者、陸容疑者とは別の人物だといい、同署で解明を進めている。 (梅沢直史、sannkei = 6-2-24) 転売目的か 太陽光発電所の銅線ケーブル 1,740 万円相当盗んだ疑い 太陽光発電所から約 2,600 メートル分の銅線ケーブルを盗んだとして、福島県警郡山北署本宮分庁舎は 29 日、群馬県大泉町坂田 5 丁目、カンボジア国籍の無職ブン・ヴィスナー容疑者 (35) を窃盗の疑いで逮捕し、発表した。 容疑を否認しているという。 署は転売目的の組織的な犯行とみて実態解明を進めている。 署によると、ヴィスナー容疑者は昨年 3 月 15 日午後 8 時半 〜 16 日午前 5 時 25 分ごろ、本宮市青田の太陽光発電所に侵入し、パネルとつながる銅線ケーブル(約 1,740 万円相当)を切断して盗んだ疑いがある。 現場で目撃された不審車両や付近の防犯カメラで特定したという。 1 月にも茨城県日立市内の太陽光発電所から銅線ケーブル約 1,600 メートルを盗んだとして、茨城県警に逮捕されていた。 (斎藤徹、asahi = 5-29-24) ◇ ◇ ◇ 速度超過の車を止めたら銅線 1,600m … 太陽光発電所から盗んだ容疑でカンボジア人 2 人逮捕 太陽光発電所から銅線ケーブルを盗んだとして、埼玉県警は 8 日、いずれもカンボジア国籍で群馬県大泉町、無職の男 (29、入管難民法違反などで起訴)と、同町、無職の男 (23) の両被告を窃盗容疑で再逮捕したと発表した。 発表によると、2 人は仲間と共謀し、3 月 21 - 22 日、三重県多気町の太陽光発電所で銅線ケーブル約 1,600m (約 750 万円相当)を盗んだ疑い。 認否は明らかにしていない。 交通違反の取り締まり中だった警察官が同 22 日、埼玉県北本市内で速度超過をしていた車に停止を求め、乗っていた 2 人を道交法違反などの容疑で現行犯逮捕。 車内に大量の銅線が積まれていたことから、今回の事件が発覚した。 (yomiuri = 5-8-24) ◇ ◇ ◇ 太陽光ケーブル盗、最多は茨城 … 元技能実習生ら困窮した不法滞在者が犯行「1 回で 10 万円もらった」 全国各地で相次ぐ太陽光発電施設を狙った銅製ケーブルの窃盗被害で、茨城の被害件数が昨年最多だったことが読売新聞の調査で明らかになった。 県内で 1,675 件発生し、前年比約 2.6 倍に急増。 県警が昨年摘発した容疑者のうち、大半は東南アジア系の外国人で、公判などから金に困った不法滞在者らが犯行を繰り返す実態が浮かび上がった。■ 被害総額 2 2億 7,000 万円 「1 回で 10 万円くらいもらった。」 昨夏に水戸地裁で開かれた公判で、窃盗罪などに問われたカンボジア国籍の 30 歳代の男はうなだれながら答えた。 男は技能実習生として 2018 年」に来日。 職場でのいじめを理由に実習先を逃げ出し、不法滞在となって金に困窮していたところ、知人の男から太陽光発電施設でのケーブル盗に誘われた。 知人の男は窃盗集団のリーダー格で、県警は昨年までにこのグループの 5 人を摘発した。 県警や公判などによると、知人の男は群馬県にあるカンボジア人の窃盗集団に加わり、盗みを重ねた後、他の仲間を誘って新たなグループを結成。 茨城や栃木など 5 県で少なくとも約 80 件の窃盗を繰り返したとされる。 盗まれたケーブルは計約 81km に及び、被害総額は計 2 億 7,000 万円に上る。 ケーブルを売って代金を分配し、覚醒剤の購入費などに充てていたという。 知人の男は公判で「日本で在留資格も就労資格もないので、犯罪で金を稼ぐしかなかった」と述べた。 ■ 405 人の技能実習生が失踪 県警は摘発を強化しているが、3 月末時点で被害は 595 件と昨年を上回るペースで続発。 今年もベトナムやカンボジア国籍の男を窃盗容疑で逮捕するなどしているが、複数の窃盗グループが存在していることから、いたちごっこになっているのが現状だ。 県警によると、太陽光発電施設などでの金属窃盗事件(昨年 10 月末時点)で、摘発した 57 件の全てが不法滞在の外国人によるものだった。 不法滞在者らは SNS を利用して独自のネットワークを作り、金属盗の情報などを交換しているとみられている。 出入国在留管理庁によると、2022 年に失踪した県内の技能実習生は 405 人に上り、全国で 6 番目に多い。 こうした状況を受け、県警は昨年から入管と合同で不法滞在者を頻繁に摘発しており、県警幹部は「盗難事件の容疑者逮捕と不法滞在者への摘発を両輪として、被害を少しでも減らしたい。」と話す。 ■ 盗難防止へアルミに変更 太陽光発電施設での銅製ケーブルの窃盗被害が急増していることを受け、銅より安価なアルミのケーブルを使用する施設が増えている。 アルミのケーブルを製造する古河電気工業(東京)によると、アルミは銅に比べて通電しにくいが、アルミの量を増やしたケーブルなら銅と同程度の通電が可能という。 銅は需要の高まりから供給が難しくなっており、アルミのケーブルに切り替える事業者が増加している。 施設内に「アルミのケーブルを使用している」と外国語の看板を設置する事業者も出始めており、同社の担当者は「アルミのケーブルに置き換えることで窃盗被害に遭うリスクは大幅に減る。 被害を抑止する有効な手段の一つとして検討してほしい。」と話している。 (yomiuri = 5-6-24) 狙われた「ぽつんと」建つ山あいの一軒家 4 県で緊縛強盗相次ぐ 4 月下旬以降、栃木、長野、群馬、福島の各県で緊縛強盗の被害が相次いでいる。 現場はいずれも山あいで、住宅が密集していない場所の一軒家。 主に一人暮らしの住人が就寝中に侵入され、縛られ現金を奪われた。 類似点が多いことから、各県警は関連を調べている。 福島県警によると、14 日午前 1 時過ぎ、栃木県との県境にあたる福島県南会津町で、60 代女性から、女性宅に「男が入ってきてお金を取られた」と 110 番通報があった。 複数の男が押し入り、現金1万数千円を奪って逃走した。 女性は一人暮らしで、就寝中だった。 手首などをテープのようなもので縛られ、顔に布のようなものをかぶせられた。 男らは少なくとも 2 人おり、片言の日本語で「金、金」と要求してきたという。 女性は男たちが逃げた後に自力で拘束を解き、近くの親戚宅に助けを求め、自身で 110 番。 手首に擦り傷を負い、県警が強盗致傷事件として捜査している。 4 月 30 日 - 5 月 8 日に起きた栃木、長野、群馬 3 県での緊縛強盗事件では、犯人は 2 人組の男とみられている。 このうち、群馬県の被害者の男性 (70) は、就寝中に男のひとりに馬乗りされ「騒ぐな、殺すぞ」と脅され、約 8 万円を盗まれた。 「年寄りの1カ月分の給料を取られたが、命は助かった」と話す。 (酒本友紀子、小寺陽一郎、宮島昌英、高橋淳、asahi = 5-14-24) 外国人労働者受け入れ「賛成」 62%、高齢層で大幅増 朝日世論調査 朝日新聞社が実施した全国世論調査(郵送)のテーマ「人手不足社会」に関連して、人手不足の業種を対象に外国人労働者の受け入れを拡大する政府方針への賛否を尋ねたところ、「賛成」 62% が「反対」 28% を大きく上回り、賛否が拮抗した 5 年余り前の調査から大きく変化した。 特に高齢層の賛成が大幅に増えた。 外国人労働者の永住拡大に対しても賛否が逆転するなど、人手不足が懸念されるなかで、世論が外国人労働者の受け入れへとカジを切り始めた。 外国人労働者受け入れ拡大方針への賛否は 2018 年 11 - 12 月の郵送調査でも尋ね、賛成 44%、反対46% と割れていた。 外国人労働者の受け入れ拡大方針は… 18 年調査は特に高齢層で否定的な見方が強かったが、18 年調査と今回の賛成割合を年代別にみると、60 代では 35% → 63%、70 歳以上では 38% →62% へと大幅に増加した。 18 - 29 歳 60% → 66%などと、すべての世代で賛成が増加し、賛否の世代差はほぼなくなった。 外国人労働者の受け入れ拡大に … 「賛成」の割合 別の質問で尋ねた「人手不足問題への関心」で、「あまり」、「全く」を合わせた「関心がない」と答えた人では、外国人労働者の拡大方針に反対が 4 割と多めだった。 また「外国人労働者と家族の永住を今より広く認めていくこと」への賛否でも、賛成 57% が反対 33% を大きく上回った。 こちらも 18 年調査で尋ねており、当時は賛成40%に対し反対47%が上回っていたが、賛否が逆転した。 一方で「受け入れ拡大」と比べると、「永住」への賛成がやや少なくなる点は、18 年調査と同じだった。受け入れ拡大への「賛成」は、永住質問に賛成の人だと 93%、反対の人では 19% と顕著に分かれ、外国人労働者が日本に住み着くことへの見方の違いが、労働者としての受け入れ度合いを左右しているようだ。 「受け入れ拡大」、「永住」ともに、男性は高齢層の賛成意見が多く、女性は若い世代の賛成が多い。永住質問への賛成は、18 - 29 歳だと男性が 48%、女性が 70% と女性の許容傾向が強いのに対し、70 歳以上だと男性は 65%、女性は 52% と逆に男性が上回る。 地域差もあり、賛成意見が特に多いのが北海道の 7 割。 関東、甲信越・北陸、東海、九州が 6 割で、東北、中国・四国が5割と低めだ。 調査は全国の有権者から 3 千人を無作為に選び、2 月末 - 4 月上旬に郵送法で実施した。 有効回答は 1,962。 回収率は 65% だった。 (渡辺康人、asahi = 4-28-24) 介護福祉士、初挑戦で合格 白川病院・特定技能実習生のカンボジア人女性オンさん (岐阜)白川町坂ノ東の医療法人白水会「白川病院」職員で特定技能実習生のカンボジア人女性オン・テーリンさん (23) が第 36 回介護福祉士国家試験に合格した。 「とてもうれしい。 院長先生や皆さんのおかげです。 電話すると家族が『よくやった』ととても喜んでくれた。」と丁寧な日本語で話した。 カンボジアの高校卒業後、介護と日本語を 2 年間学び、20 歳目前の 2020 年 3 月に外国人技能実習生として来日した。 (三田村泰和、中日新聞 = 4-18-24) 「復興に欠かせない」技能実習生との関係維持、能登の企業が注力 能登半島地震で被災した企業が、避難中の外国人技能実習生との関係維持に力を入れている。 人口流出で人手不足がさらに深刻になる可能性があり、事業再開には実習生の力がより必要になるとみているためだ。 一方、実習生頼みから脱却しようという企業もある。 2 月下旬に一部の工場を再開した、カニカマの製造販売で知られる「スギヨ(石川県七尾市)」。 グループ会社を含め、能登半島で働くベトナム、カンボジア人の実習生ら 98 人も被災した。 多くの実習生が帰国するなか、残る実習生もいた。 ベトナム出身のグエン・ティ・トゥイさん (23) は来日して 3 カ月後、寮で地震に見舞われた。 「こんな大きな地震を経験したのは初めて。 本当に怖かった。」 グエン・ティ・ニーさん (20) は昨年末の来日以来、会社と寮、スーパーを往復するだけの日が多く、避難所の場所がわからなかった。 2 人は社員の案内でそれぞれ近くの学校で 1 週間ほど、避難生活を送った。 実習生の多くは故郷の家族に仕送りしている。少し落ち着くと、「工場が稼働していない間、給与はもらえるのか」との声が上がった。 スギヨが採用した実習生の 1 期生で、人事労務部の社員、鍛冶リェンさん (44) が実習生らの相談に乗り、こうした不安を会社側に伝えた。 労働基準法の定めでは、天災などによる休業の場合、会社は休業手当の支払い義務を負わない。 それでも 1 月上旬、会社は 2 月に払う給料(1 月に働いた分)について「出勤しなくても全額を保証する」と約束した。 さらに、2 月上旬には、3 月に支払う分も同様にすると決めた。 杉野哲也社長は「災害が起きても従業員の生活を守ることを第一に考えたい。」 会社の姿勢に呼応し、一時帰国者を含む大半の実習生は今後もスギヨで働く予定という。 2023 年の石川県の有効求人倍率は 1.6 倍前後あり、全国平均より高い。 他より人手を集めにくいところに、今回の地震が起きた。 県内の 6 市町では発災 2 カ月で、住民の 1.2% にあたる約 1,500 人が転出。 そこで期待を集めているのが、昨年 6 月時点で県内に 4,637 人いた実習生だ。 ある企業の人事担当者は「若くて将来のある実習生の力を借りて、素早い復興につなげたい」と話す。 ただ、帰国したり、県外に避難したりした人も少なくない。 企業は、事業再開の際に確実に戻ってくるよう、こまめな連絡などに力を入れた。 七尾市内の小売会社は、実習生には水の出る金沢市のホテルに移ってもらうなど生活面に配慮し、困ったことがあればすぐ相談に乗る態勢を整えた。 助成金も活用して給与を支払った。 3 月上旬に加工施設を再開させると、実習生らは続々と戻ってきた。 人事担当者は「みんな若くてハングリーで一生懸命。 復興に欠かせない存在です。」 和倉温泉で旅館を経営する「のと楽」は建物の損傷が大きく、一般客の営業再開のめどは立っていない。 カンボジア人などの技能実習生 6 人の一部に帰国者もいた。 ただ、ずっと連絡を取り続け、工事関係者の宿泊受け入れを始めたいま、実習生は職場に戻り、短時間勤務に携わる。 総務人事課の杉田泰寛さん (49) は「実習生は仲間で貴重な戦力。 今後も一緒に頑張りたい。」と話す。 一方で、地震をきっかけに、いずれ実習生の「能登離れ」が起きる可能性を指摘する声もある。 能登半島で働くあるベトナム出身の実習生は「地震は怖かった。 将来は、学んだ日本語を使える能登以外の地域で、もっと高い給与をもらいたい。」と話す。 地震の恐怖から逃れ、よりよい待遇を確保したいと考える。 食品加工を営む企業の人事担当者は「技能実習生は原則 3 年は転職できないが、3 年経てば能登半島から出て関東や関西など給与の高い企業に転職するだろう」と見る。 「いつまでも実習生に頼るのではなく、給与を増やしたり、勤務シフトを柔軟にしたりして、地域の日本人を採用する方向へ切り替えていきたい」と打ち明ける。 (松田史朗、asahi = 4-3-24) ◇ ◇ ◇ 避難開始、鳴った電話「戻って」 能登で働く外国人を支える女性 能登半島地震で被災した、カニかま製造販売で知られる水産加工会社スギヨ(石川県七尾市)。 工場で働く外国人技能実習生たちも、初めて経験する大きな地震、避難所生活、そして将来への不安に直面した。 ただ、会社を離れる人はほぼいない。 そこには、ベトナム出身の、ある社員の存在があった。 実習生のグエン・ティ・トゥイさん (23) は 1 月 1 日夕方、スギヨの寮にいて大きな揺れに見舞われた。 来日してまだ 3 カ月だった。 茶わんなどの食器は棚から落ち、タンスも倒れた。 「ベトナムでこんな地震は経験したことがない。 本当に怖かった。」 まず近くのコンビニの駐車場に避難した。 そこで一緒になった近所の日本人と、最寄りの公民館へ移動を始めた。 ちょうどその時、電話が鳴った。 「バラバラになるのはよくない。 コンビニに戻って。」 管理部にいる社員、鍛冶リェンさん (44) からの電話だった。 ベトナム・ホーチミン市出身。 スギヨが採用した技能実習生の 1 期生で、スギヨの社員と結婚後、2007 年に自身も社員になった。 工場で働きつつ、通訳もこなしたが、技能実習生らの増加を受け、17 年、その面倒を一手にみる担当になった。 震災発生当時、能登半島で働くスギヨの技能実習生らはベトナム人とカンボジア人で計 98 人になっていた。 鍛冶さんの指示は、ベトナム出身の技能実習生は、まとまって避難するようにというものだった。 鍛冶さんから同じ指示を受けた近くの技能実習生など、約 30 人がコンビニの駐車場に集まると、やがてスギヨの社員が到着した。 これも鍛冶さんの手配だった。 社員の誘導で、みんなで指定避難所である七尾東雲高校へ向かった。 避難所ではベトナム人は校舎 2 階の教室に集められ、床に布団を敷いて寝た。 他の避難者は日本人ばかりで、支援される日用品の扱い方や食事の習慣などがわからない。 戸惑うトゥイさんらに、鍛冶さんが細かくアドバイスした。 そのころ、22 年暮れにスギヨの技能実習生になったグエン・ティ・ニーさん (20) は、避難所の小丸山小学校にいた。 スギヨが「寮」として借りている 2 階建てアパートの 1 階にいて被災した。 去年 5 月にも地震を経験したが、当時はあまり実感がなかった。 「周りの人は『あれは地震だ』と言っていた。」 今回は電子レンジが床に落ちるなど段違いの揺れだった。 同じ寮に暮らす 7 人と外に出た時、鍛冶さんから電話が入った。 「小丸山小学校に今から行って。」 鍛冶さんがアパートの大家にその地域の避難所の場所を聞き出して、連絡してきたのだった。 ニーさんが片付けのためにアパートに戻った時も、壊れ物の捨て方など、鍛冶さんから助言をもらい続けた。 鍛冶さん自身も中能登町の自宅で被災し、一時、避難所に身を寄せていた。 その中でも、技能実習生に対する公私にわたる支援を続けた。 こうしてひとまず身の安全を確保すると、実習生には別の悩みが持ち上がった。 「給与」のことだ。 地震で被災したスギヨの工場はすぐに稼働できそうもない。 ニーさんは「工場が動かないとお金がもらえないのでは。 早く働きたい。」と悩んだ。 自分の将来設計のこともあるが、家族らに毎月一定額を仕送りしているためだ。 鍛冶さんはトゥイさんら技能実習生が抱える不安をすぐに会社側に伝えた。 スギヨでは給料を、その月の末日に締めて翌月上旬に支払う。 したがって、1 月上旬に支払われる給与は、12 月に働いた分だ。 そのため、1 月上旬には全額が支払われる。 問題は 1 月の労働分となる 2 月上旬の給与だった。 会社は 1 月上旬、「出勤しなくても社員、パート、技能実習生らの給与を全額保証する」と従業員全員に確約した。 その方針は鍛冶さんからベトナム人の技能実習生ら全員にすぐに伝えられた。 一時帰国した技能実習生も多かったが、トゥイさん、ニーさんらは会社が工場の再稼働を決めればすぐに出勤できるよう、家族と相談した上で会社側に「日本に残る」と伝えていた。 スギヨは 2 月上旬、3 月上旬に出る給与についても「出勤なしでも全額支払い」を決めた。 七尾商工会議所の会頭も務めるスギヨの杉野哲也社長は地震による能登半島からの人口流出を懸念する。 自社についても「災害が起きても従業員の生活を守る会社であることを知ってもらいたい」と話す。 スギヨの技能実習生らで会社を退職したのは、3 月 7 日時点で 98 人中、4 人にとどまっている。 スギヨ経営企画室の水越優美さんは「鍛冶リェンさんがいることが、技能実習生らの一番の安心につながっている」と話す。 鍛冶さんは「技能実習生らは、スーパーと友人の家以外、知らない人が多い。 今回はインターネットが使えたのでよかったが、使えなくなる可能性もあった。 それを考えると、避難所は事前にわかっているほうが安心して生活できる。 これを教訓にしてこれからも支援を続けたい」と話す。 (松田史朗、asahi = 3-18-24) |