コンビナートの脱炭素、ビジネスと両立は可能か 立地企業が挑む難題

二酸化炭素 (CO2) をはじめとした温室効果ガスを多く排出する石油化学コンビナート。 生産活動で培われた企業間の連携を、脱炭素にいかす取り組みが各地で進んでいる。 立地企業が手探りで挑むのは、政府が宣言した2050年のカーボンニュートラルとビジネスの両立という難題だ。

九州唯一、大分の石油化学コンビナート

大分県の都道府県トップが続く。 人口 1 人当たりの CO2 排出量のことだ。 環境省の推計値から県が算出した 21 年度の 23.3 トンは全国平均 7.5 トンの 3 倍を超える。 理由はシンプル。 製造業が盛んで、大規模な製鉄や石油化学の事業所が集積しているからだ。 その拠点、大分市の臨海部に広がる大分コンビナートは九州唯一の石油化学コンビナート。 中核企業のレゾナック(旧昭和電工)がエチレンプラントを持ち、石油由来のナフサからエチレンやプロピレンを作って他社にも供給する。 一帯では日本製鉄の製鉄所や ENEOS (エネオス)の製油所も操業している。

発電などの燃料も原料も化石資源に頼る従来製法では CO2 排出は避けられない。 一方で生産面で他社と連携する中、個々の企業が単独でできることには限りがある。 そこで大分県が呼びかけ、立地企業 11 社が参加する「グリーン・コンビナートおおいた」推進会議が昨年 8 月に発足。 今年 1 月に推進構想を策定し、水素などの次世代エネルギー導入や CO2 の回収・利活用を進め、県外のコンビナートとも連携する方針を掲げた。

企業間の連携では、レゾナックと日本製鉄が大分大学などと共同で低濃度 CO2 を分離回収する技術の開発を進める。 カーボンリサイクルの実現可能性調査も始まった。 ただ現実には、水素基地などを整備できる余剰地が少ない点や、費用負担など課題が多い。

様々な技術「あと数年は見極める期間」

2 の地下貯留を検討するが、山田暢義・大分コンビナート代表 (50) は率直に語る。 「まだどの技術に目鼻がつくかわからず、相当なブレークスルーがなければ成立しない。 あと数年は社内外のパートナーと切磋琢磨(せっさたくま)し、経済合理性も含めて見極める期間になる。」 同様の検討は全国で進むが、50 年への具体策を示した地域は少ない。 その中で、一歩先を行くのが山口県周南市の周南コンビナートだ。 山口県は瀬戸内海沿岸の 3 地区にコンビナートがあり、人口 1 人当たりの CO2 排出量で岡山県と同水準で、大分県に次ぐ全国 2、3 位にある。

検討進む周南、アンモニア軸に燃料転換めざす

周南コンビナート脱炭素推進協議会は 22 年 1 月に発足し、23 年 5 月に構想を発表。 アンモニアを中心にバイオマスも含む燃料転換で 65%、原料・製法転換で残り 35% の CO2 を削減すると具体策を示している。 参加企業は出光興産、東ソー、トクヤマ、日鉄ステンレス、日本ゼオンの 5 社。 出光興産の既設タンクを改修してアンモニアを貯蔵し、パイプラインの一部も既存設備を活用。 30 年までに年間 100 万トン超のアンモニア供給体制を築き、将来は瀬戸内地域一帯に供給する計画だ。

個社の動きも活発で、東ソーは回収した CO2 を原料化するプラントをこの秋に稼働させる。 トクヤマも石炭の性状に近づけたバイオマス燃料「ブラックペレット」の製造技術の確立などに取り組む。 一方で、東ソーとトクヤマがソーダ製品でシェアを争うなど、参加企業には競争関係もある。 そこで 5 社はそろって公正取引委員会に相談。 共同の取り組みが「独占禁止法上問題となるものではない」との見解が今年 2 月に示され、さらに議論が深まっている。

各社の利害もある中、科学的見解を示すのは学術機関の化学工学会だ。 事務局を担う周南市と 5 社と並ぶ協議会の構成団体となり、全国に先駆けたモデルケースと位置づけて助言を続ける。 化学工学会から参加し、協議会の副会長も務める東京大学の辻佳子教授は「コンビナートのカーボンニュートラル化は個社の取り組みだけでは実現せず、地域連携が欠かせない。 産業間連携に加え、自治体や学術研究機関、市民も含めた産学官民の連携で考えることが大事だ」と話す。

レゾナック、東ソー、トクヤマ 3 社の担当幹部が語る課題

コンビナートのカーボンニュートラル実現に向けた課題は何か。 大分、周南に立地する 3 社の担当幹部に聞いた。 レゾナックの持ち株会社レゾナック・ホールディングスは、大分コンビナートの石油化学事業を新会社「クラサスケミカル」として来年 1 月に分社化することを決めた。 大分コンビナート代表の山田暢義さん (50) は大きな節目に向け、「変える部分と変えない部分がある。 極めて安全・安定的に 50 年以上やってきた。 そこはしっかり守りつつ、持続可能な事業として残っていくため、機敏にチャレンジしていく。」と話す。

分社を機に、改めてカーボンニュートラルの戦略も点検する。 「新会社への移行は、より機動力をもって取り組むチャンスになる。 他社とつながり、お互いに影響し合っていることも踏まえ、見極めていく。」 周南コンビナートの立地企業も、それぞれに課題を見すえている。 東ソーの南陽事業所副事業所長で CO2 削減・有効利用南陽タスクフォースチームのリーダーを務める松村善則さん (57) は、経済合理性と安全性を重視する。

「アンモニアはまだかなり高価な燃料で、いかに経済性と両立する実現可能な具体策を提案できるかが、大きな鍵になる。」 同時に、「アンモニアは危険な毒性ガスであり、パイプラインなどの設備の保安も課題となる。 発電所の燃料に使う場合の制度設計に明確になっていない部分があり、整備の判断が難しい」と語る。 バイオマス発電も各地で粉じん爆発などの事故が起きており、安全管理が特に重要だという。

一方、トクヤマのカーボンニュートラル企画グループでリーダーを務める清水勝之さん (51) は中長期の視点で課題を挙げた。 「各社が危機感を持ち、うまく連携して検討が進んできた。 一方で、各社には各社の事業戦略があり、コンビナートとしてめざす方向と合致しなくなる可能性もある。 そのギャップが出たときに、どうすり合わせるかは課題となる。」 また、企業間の情報共有について、「独占禁止法の問題がクリアできたことは画期的で、そこから個別の協議が進んだ。 ただ、経営戦略の中心的なデータが出せるかはまた別の世界の話。 共同の事業を具体的に検討する段階では、その点も課題となる」と指摘した。 (江口悟、asahi = 9-1-24)


「川下」視点でひらく環境にやさしい社会 持続可能な成長めざす

「利は川下にあり」を経営方針とする伊藤忠商事が、企業ブランド価値向上のために「SDGs への貢献・取組強化」をうたっています。 どうしてなのか。 石井敬太社長 COO (最高執行責任者)に聞きました。

SDGs を経営目標に採り入れたのはなぜですか。

伊藤忠には創業の精神である「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」が受け継がれています。 10 年前に掲げたコーポレートメッセージ「ひとりの商人、無数の使命」でステークホルダー(利害関係者)主義というか、我々の商売が周囲と一緒に成り立つことを改めて強調しました。 持続可能な成長をめざす SDGs に重なるのです。

海洋ごみや食品ロス減らす取り組み

具体的にどんな貢献を。

総合商社にはいろいろな事業がありますが、伊藤忠はとくに繊維、食料といった消費者に近い「川下」分野が得意です。 持続可能な社会への貢献も川下の視点を大切にしています。 例えば、使用済みの漁網などから再生ナイロンを作れるイタリア企業に出資し、海洋ごみ問題に取り組んでいます。 ただし再生ナイロンは値段が高いので、高価なナイロン製品を扱う有名ファッションブランドとの取引を仲介し、事業として成り立たせました。

商社のネットワークを生かしていますね。

学生服が不要になった人たちとこれから必要になる人たちのニーズをマッチングさせて、売買を実現するしくみを事業として始める予定です。 IT を活用した需要予測が得意な企業と組んで、小売り、飲食業界の取引先に発注量の参考になるデータを提供し、食品ロスを減らす取り組みもしています。 もちろん「川上」でもカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)実現をめざします。 CO2 (二酸化炭素)排出量が少ない低炭素還元鉄の供給網をつくるプロジェクトは一例です。 JFE スチールなどと進めています。

体験イベントで事業を「見える化」

投資判断するときの意識も変わりましたか。

もうかりそうな案件であっても、各部門から出てくる段階で、持続可能な社会につながるかといった視点からのチェックリストに基づき、専門部署が必ず審査します。 社外取締役の意見も聞きます。 商社に長くいると「やりたい」と前のめりになりがちな案件でも、社外取締役らの意見を聞くと「なるほど」と思うことがある。 実際、却下された案件もありました。

持続可能な成長の取り組みを知ってもらう発信にも力を入れています。

商社のやることが一般の人たちに見えにくい課題をどう克服するか。 東京本社の隣にある施設「ITOCHU SDGs STUDIO」は、子どもにも気軽に楽しんでもらえる拠点です。 7 月から「地球のあした観測所」という常設企画を始めました。 地球上の課題や、伊藤忠の SDGs 事業を知ることができ、米アップル社の VR (仮想現実)ゴーグルを使って現場にいるような体験もできます。 同時に、9 月 23 日までの期間限定で「きみと AIの ? な未来旅行展」も開催中です。 私たちの取り組みを少しでも知ってもらえたらうれしいですね。 (聞き手・宮崎健、asahi = 8-30-24)


ビットコイン採掘が再エネ促進につながる? 東電子会社が実証実験

東京電力が暗号資産「ビットコイン」のマイニング(採掘)に乗り出している。 再生可能エネルギーを無駄にせず、どう促進するか。 一見無関係に見えるが、事業にはそんな課題の解決を目指す狙いがある。 ビットコインは従来の通貨システムとは異なり、中央の機関を置かず、参加者同士がその取引に不正がないかをチェックし、承認する。 承認すると、報酬としてビットコインが支払われる仕組みだ。 そうした行為は金の採掘になぞらえ、「マイニング」と呼ばれている。

二つを結びつけたら …

東電の完全子会社「アジャイルエナジー X(東京)」は、再生可能エネルギーを利用してマイニングに取り組もうとしている。 東電の原子力部門でキャリアを築いてきた立岩健二社長は「国内でも珍しい取り組み。 この枠組みがうまくいけば、再エネの導入はさらに進む。」と話す。 立岩社長が事業の着想を得たのは 2018 年。 当時、九州電力で大規模な「出力制御」が問題になっていた。

電気は、常に需要と供給のバランスを維持しないと周波数が乱れ、大規模停電につながる恐れがある。 そのため、九電は、太陽光での発電がピークを迎える昼間などに、電気が過剰にならないように、一時的に発電しないように求める「出力制御」を再エネ事業者に依頼していた。 つまり、せっかく発電できる電気を捨てざるを得なかったことになる。

ビットコインの採掘には、マイニング機と呼ばれる計算速度の速いコンピューターが必要のほか、大量の電力を消費する。 当時はビットコインが暴落した時期。 ビットコインの採掘に使う電力は欧州の国一国分の年間消費量を超えるとも言われ、電気の「無駄遣い」という批判が世界的にわき起こっていた。

「この二つを結びつけたらどうか?」

立岩社長は社内で新規事業を提案し、実証実験を重ねた。 「他電力にもノウハウを伝えたい」と 2022 年、東京電力パワーグリッドの完全子会社として創業した。

米国で先行例も

現在、群馬県や栃木県で、マイニングのための機械を太陽光発電所の近くなどに設置。 需要を超えて発電し、無駄になりそうな状況を想定して、マイニング機を稼働させ、ビットコインを採掘する実験を進めている段階だ。 九電で始まった出力制限は、現在、東電を除く 9 電力会社に広がっている。 23 年に全国で出力制御された電力量は 45 万世帯が 1 年間に利用する量にあたる計約 19.2 億キロワット時に達したことが朝日新聞の集計で分かっている。

政府は 50 年までに、温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラルを目指しており、発電総量に占める再エネの割合を 5 - 6 割とするシナリオだ。 しかし、太陽光発電は夜間は発電せず、風力発電の場合は天候次第で、発電量が大きく変化する。今後、再エネが増えれば、無駄になる電気は増加する一方だ。

アジャイルエナジー X 社が公開情報を基に試算したところ、再エネを 5 割導入したという想定で、24 万ギガワット時の電力が無駄になるという結果だった。  余った電気が膨大なため、蓄電池でためるには非現実的だ。 そのうちの 1 割をマイニングに利用すると想定した場合、年間 3,600 億円のビットコインを採掘できるという計算だったという。 立岩社長はマイニングで得た利益を企業の収益に還元することができれば、経営が安定して再エネ導入はさらに進むと見込む。 米テキサス州では、需要地に送れず、使い切れない再エネ由来の電気をマイニングに利用する企業が増えており、米国のマイニング量は世界一を誇るまでに成長している。

黒字化も

現状で、国内で出力制御にかけられる電気は非常に少なく、採算は合わない。 だが、再エネ導入が進み、電力の余る量が増えるにつれ、黒字化が見込まれるという。 立岩社長は「再エネ事業者は電気が無駄になることを前提に事業を進めなければならない。 過剰投資にさらされる事業者がビットコインで新たな収益源を得られれば、再エネの導入も進むだろう。」と話す。 (古賀大己、asahi = 8-18-24)


世界初の海上高温排ガス廃熱発電ユニットを納入 - 中国

中国海洋石油 (CNOOC) は 13 日、天津で世界初の 5 メガワット級海上高温排ガス廃熱発電ユニットを納入したことを明らかにしました。 これは海上油ガス田発電所での排ガス廃熱利用における重大な突破であり、「2030 年までに二酸化炭素 (CO2) 排出量をピークアウトさせ、60 年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を実現する」という目標の下、海上油ガス田のグリーンで低炭素な開発を推進する上で重要な意義があります。

この廃熱発電ユニットは、発電所の運転中に発生する高温の排ガスを熱源として利用し、廃熱を直接、クリーンな電力に変換します。 関係者によりますと、従来の排ガスの燃焼・排出と比較すると、このユニットを設置することで、発電所は廃熱利用の可能性を 60 - 70% まで高めることができます。

国内外ではこれまでのところ、海上での高温廃熱の応用は成功例がありません。 このユニットの納入は、海上油ガス田開発における重要な技術的空白を埋めるものです。 推計によりますと、20 年間の稼動で天然ガス消費量を約 3 億立方メートル節約し、CO2 排出量を約 80万トン削減することができます。 これは 750 万本の植林に相当するもので、海上油ガス田における炭素排出削減とカーボンニュートラルの目標達成を力強く支えます。 (CRI/Record China = 8-14-24)


ビットコイン採掘が再エネ促進につながる? 東電子会社が実証実験

東京電力が暗号資産「ビットコイン」のマイニング(採掘)に乗り出している。 再生可能エネルギーを無駄にせず、どう促進するか。 一見無関係に見えるが、事業にはそんな課題の解決を目指す狙いがある。 ビットコインは従来の通貨システムとは異なり、中央の機関を置かず、参加者同士がその取引に不正がないかをチェックし、承認する。 承認すると、報酬としてビットコインが支払われる仕組みだ。 そうした行為は金の採掘になぞらえ、「マイニング」と呼ばれている。

二つを結びつけたら …

東電の完全子会社「アジャイルエナジー X(東京)」は、再生可能エネルギーを利用してマイニングに取り組もうとしている。 東電の原子力部門でキャリアを築いてきた立岩健二社長は「国内でも珍しい取り組み。 この枠組みがうまくいけば、再エネの導入はさらに進む。」と話す。 立岩社長が事業の着想を得たのは 2018 年。 当時、九州電力で大規模な「出力制御」が問題になっていた。

電気は、常に需要と供給のバランスを維持しないと周波数が乱れ、大規模停電につながる恐れがある。 そのため、九電は、太陽光での発電がピークを迎える昼間などに、電気が過剰にならないように、一時的に発電しないように求める「出力制御」を再エネ事業者に依頼していた。 つまり、せっかく発電できる電気を捨てざるを得なかったことになる。

ビットコインの採掘には、マイニング機と呼ばれる計算速度の速いコンピューターが必要のほか、大量の電力を消費する。 当時はビットコインが暴落した時期。 ビットコインの採掘に使う電力は欧州の国一国分の年間消費量を超えるとも言われ、電気の「無駄遣い」という批判が世界的にわき起こっていた。

「この二つを結びつけたらどうか?」

立岩社長は社内で新規事業を提案し、実証実験を重ねた。 「他電力にもノウハウを伝えたい」と 2022 年、東京電力パワーグリッドの完全子会社として創業した。

米国で先行例も

現在、群馬県や栃木県で、マイニングのための機械を太陽光発電所の近くなどに設置。 需要を超えて発電し、無駄になりそうな状況を想定して、マイニング機を稼働させ、ビットコインを採掘する実験を進めている段階だ。 九電で始まった出力制限は、現在、東電を除く 9 電力会社に広がっている。 23 年に全国で出力制御された電力量は 45 万世帯が 1 年間に利用する量にあたる計約 19.2 億キロワット時に達したことが朝日新聞の集計で分かっている。

政府は 50 年までに、温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラルを目指しており、発電総量に占める再エネの割合を 5 - 6 割とするシナリオだ。 しかし、太陽光発電は夜間は発電せず、風力発電の場合は天候次第で、発電量が大きく変化する。今後、再エネが増えれば、無駄になる電気は増加する一方だ。

アジャイルエナジー X 社が公開情報を基に試算したところ、再エネを 5 割導入したという想定で、24 万ギガワット時の電力が無駄になるという結果だった。  余った電気が膨大なため、蓄電池でためるには非現実的だ。 そのうちの 1 割をマイニングに利用すると想定した場合、年間 3,600 億円のビットコインを採掘できるという計算だったという。 立岩社長はマイニングで得た利益を企業の収益に還元することができれば、経営が安定して再エネ導入はさらに進むと見込む。 米テキサス州では、需要地に送れず、使い切れない再エネ由来の電気をマイニングに利用する企業が増えており、米国のマイニング量は世界一を誇るまでに成長している。

黒字化も

現状で、国内で出力制御にかけられる電気は非常に少なく、採算は合わない。 だが、再エネ導入が進み、電力の余る量が増えるにつれ、黒字化が見込まれるという。 立岩社長は「再エネ事業者は電気が無駄になることを前提に事業を進めなければならない。 過剰投資にさらされる事業者がビットコインで新たな収益源を得られれば、再エネの導入も進むだろう。」と話す。 (古賀大己、asahi = 8-18-24)


世界初の海上高温排ガス廃熱発電ユニットを納入 - 中国

中国海洋石油 (CNOOC) は 13 日、天津で世界初の 5 メガワット級海上高温排ガス廃熱発電ユニットを納入したことを明らかにしました。 これは海上油ガス田発電所での排ガス廃熱利用における重大な突破であり、「2030 年までに二酸化炭素 (CO2) 排出量をピークアウトさせ、60 年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を実現する」という目標の下、海上油ガス田のグリーンで低炭素な開発を推進する上で重要な意義があります。

この廃熱発電ユニットは、発電所の運転中に発生する高温の排ガスを熱源として利用し、廃熱を直接、クリーンな電力に変換します。 関係者によりますと、従来の排ガスの燃焼・排出と比較すると、このユニットを設置することで、発電所は廃熱利用の可能性を 60 - 70% まで高めることができます。

国内外ではこれまでのところ、海上での高温廃熱の応用は成功例がありません。 このユニットの納入は、海上油ガス田開発における重要な技術的空白を埋めるものです。 推計によりますと、20 年間の稼動で天然ガス消費量を約 3 億立方メートル節約し、CO2 排出量を約 80万トン削減することができます。 これは 750 万本の植林に相当するもので、海上油ガス田における炭素排出削減とカーボンニュートラルの目標達成を力強く支えます。 (CRI/Record China = 8-14-24)


特許競争力が首位、中国の風力発電が世界トップに踊り出たワケは?

「日本経済新聞」のこのほどの報道によると、中国は 2023 年に風力発電機の特許競争力で初めて首位になった。 それだけでなく、今年 7 月には、中国の風力発電プロジェクト開発で二つの新たな進展があった。 一つは「最大」の進展で、世界で単体の設備容量が最大の浮体式洋上風力発電プラットフォーム「明陽天成号」が広東省広州市で完成し、世界で初めて 2 枚ブレード、デュアル発電機による設計が採用された。 もう一つは「最高」の進展で、建設中の世界で標高が最も高い風力発電プロジェクト 1 台目の風車がチベット自治区昌都市八宿県で取り付け作業を終え、最適化された設計によって 5,200 メートル近い標高や低気圧などの環境でも安定した運営が行えるように保証している。

洋上から陸上まで、平原から高原まで、中国の風力発電企業は技術、品質、価格競争力を兼ね備えた製品を提供し、より多くの地域でグリーン電力資源を効率よく使えるようにしている。 ここ数年、中国では風力発電のイノベーション発展の歩みが加速し続け、技術水準は世界トップレベルとなり、産業チェーンは国産化をほぼ達成し、設備製造、開発建設から運営メンテナンスに至る整った産業チェーンシステムが構築された。

中国再生可能エネルギー学会風力エネルギー専門委員会の秦海岩事務局長は、「中国は発電機の開発でフォロワーからトップに踊り出て、今や最先端技術の『無人のエリア』に突入した。 風力発電の設備容量の増加と技術のアップグレードのペースは予想を上回っている」と述べた。 ハードウェアを見ると、高いタワー、大容量、長いブレードの風力発電機が次々に登場し、風力発電開発のポテンシャルを広げた。 ハブの高さは 2002 年は約 70 メートルだったが、12 年に約 135 メートル、23 年に約 185 メートルになった。

発電機の設備容量は最も早く開発されたものは 600 キロワットだったが、今や 18 メガワット・ハーフダイレクトドライブ洋上風力発電機が独自開発され、毎年の平均発電量は 7,200 万キロワット時に達し、約 4 万世帯の年間電力消費量を賄える。 ソフトウェアを見ると、先進的な人工知能 (AI) によるモノのインターネット (IoT)、コグニティブコンピューティング技術などが風力発電機の環境認知、意思決定、安全対策などの能力を大幅に向上させた。 「明陽天成号」を例にすると、スマートセンサーが 3,000 個以上取り付けられ、一連のスマート判断を通じて、複雑で変化の多い環境に柔軟に対応することができ、発電性能が最大限引き上げられた。

今では、世界の風力発電のブレード、ギアボックス、発電機などの部品は 6 - 7 割が中国で製造されており、完全独自開発の中国の風力発電技術が世界のトップを走っている。 技術競争力が高まり、「大型風力発電機」が力強く回り始めた。 最もわかりやすいのは、設備容量の規模が拡大して発電コストが下がったことだ。 13 年から 23 年までの間に、中国の風力発電設備容量は約 7,600 万キロワット余りから 4 億 4,000 万キロワット以上に増加した一方、発電コストは約 60% 低下した。 中国の風力発電機は大型化、ハイテク、低コストの優位性に支えられて、風力発電が世界規模でコストを負担できるグリーンエネルギーになるよう後押しし、世界的な気候変動への対応に非常に大きく貢献している。 (中国・人民網/Record China = 8-11-24)

◇ ◇ ◇

中国の太陽光・風力発電設備規模が世界をリード、二酸化炭素排出量は昨年ピークか - 独メディア

2024 年 7 月 11 日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、太陽光・風力発電容量を急速に伸ばしている中国の二酸化炭素排出量がすでにピークを過ぎた可能性があると報じた。 記事は、米シンクタンク、グローバル・エネルギー・モニターが 11 日に発表した報告書によると、中国で建設中の大規模太陽光発電と風力発電プロジェクトの設備容量が 339 ギガワットに達して他国の合計値の 2 倍を上回り、2 位の米国の 40 ギガワットを大きく引き離したと紹介。 計画されたプロジェクトが予定通り完了すれば、中国は「2030 年までに風力と太陽光発電の総設備容量 12 億キロワット以上にする」という目標を 6 年前倒しで達成すると報告書が予測したことを伝えた。

また、中国は 30 年までにカーボンピークアウト、60 年までにカーボンニュートラルを達成する目標を立てており、膨大な再生可能エネルギー設備容量によって 30 年より早い段階でカーボンピークアウトを達成する可能性もあると紹介した。 その上で、アジア・ソサイエティ政策研究のシニアフェローでエネルギー・クリーン大気研究センター (CREA) の主任アナリストであるラウリ・マイリビルタ氏が、中国の 5 月の石炭火力発電比率が前年同月比 7 ポイント減の 53% と過去最低を記録した一方、非化石燃料発電比率が過去最高の 44% となったことに言及し、「この傾向が続けば、中国の炭素排出量は昨年すでにピークを迎えたことになる」との見解を示したことを伝えた。

記事はさらに、報告書が「新エネルギーを目覚ましい速度で導入する一方で、中国が直面している大きな課題の一つは、石炭発電用に設計された送電網が膨大な規模の再生可能エネルギー発電をどのように吸収し、追加電力を必要とする地域に送電できるかということだ」と指摘したことを併せて紹介した。 (川尻、Record China = 7-14-24)


環境配慮の五輪へ〜選手村の室内にエアコンなし TGV で移動要請

7 月 26 日に開幕したパリオリンピックは環境に配慮した大会をめざしていて、大会組織委員会は期間中、競技会場にペットボトルの持ち込みを禁止するなど、さまざまな取り組みを行っています。

ペットボトルの持ち込み禁止 会場へは自転車で

パリオリンピックの組織委員会によりますと、これまでの夏のオリンピックでの温室効果ガスの排出量は準備から終了までの期間で、平均およそ 350 万トンとなっていて、今大会では半分以下の 150 万トン未満に抑えることを目標にしています。 大会期間中には競技会場やその周辺でさまざまな取り組みが行われていて、観客などに対しては会場へのペットボトルの持ち込みを禁止し、水筒の持参を求めたほか、市内の自転車専用道路を既存のものを含めておよそ 415 キロにわたって整備し、会場まで自転車を使って移動できるようにしました。

また、選手にも協力が求められ、電力消費を抑えるため選手村の室内にエアコンが設置されていません。 代替の手段として、床下に張り巡らされてパイプに冷たい水を流すことで部屋を冷却する設備を作りました。

持参ボトルを勧めるポスターも

競技会場で購入できる飲み物もプラスチックではなく再利用可能な素材で作られた容器で提供されています。 体操などが行われている、ベルシーアリーナでは、観客が通る通路に「tap water is top water.(水道こそが最高の水です)」などとユーモアを交えたメッセージとともに持参したボトルで水を飲むことを勧めるイラストが描かれたポスターが貼られていました。

イギリスからきた男性は「水筒を持参しているし、あちこちの会場に行くのに公共交通機関を使っている。 環境に配慮した大会にすることは時代の流れで必要なことだ。」と話していました。 また男性の妻は「環境にいい大会にしようというのはいいアイデアだ。 最初は少し、不思議な取り組みが行われていると思ったけれど、慣れてくれば大きな不便は感じない。」と話していました。

地方への移動 より二酸化炭素の排出量が少ない高速鉄道を

さらに、地方への移動などについて可能な場合は飛行機ではなく、より二酸化炭素の排出量が少ない高速鉄道 TGV での移動を求めました。 イギリス、オランダ、ベルギー、ドイツ、スイスの 5 つの国は、飛行機を使わず鉄道でフランスに入ったということです。

「なでしこジャパン」も TGV で移動

サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」の選手たちも、組織委員会の求めに従い、事前の合宿を行ったパリ市内から初戦が行われるフランス西部のナントまでおよそ 400 キロを TGV を使って移動しました。 利用者の多いモンパルナス駅を出発し、一般の乗客と同じ列車を使っての移動にはなりましたが、駅では大会の関係者が出迎えて警備員などとともに選手たちを先導したため、大きな混乱はありませんでした。

日本の宮澤ひなた選手は「たくさんの大会関係者がサポートしてくれているのでスムーズに移動ができたし、環境に配慮するという中でも不自由なく行動できていると思う」と話していました。 一方で初戦を終えて次の試合が行われるパリへ戻る際には沿線設備が破壊され、TGV が運転を取りやめた影響で、急きょバスを利用し、予定よりも長時間の移動を強いられる事態にもなりました。

組織委「『パリ協定』締結の都市だから 意味ある」

組織委員会のジョージーナ・グルゾン環境対策長は、環境に配慮した大会を目指す理由について次のように説明しています。 「私たちは今大会全体を "研究室" と考えている。 既存の施設を活用したり温室効果ガスを減らすさまざまな取り組みを行うことによって、今までとは違った大会運営のモデルが実現可能だということを示したかった。 国際的な枠組みである『パリ協定』が結ばれたこの都市で行われる大会だからこそ、やる意味があると考えた。」

一方で、選手村の室内にエアコンが設置されなかったことなどについて負担の大きさを訴える声が上がったことについては、こう話しました。 「いくつかの国の委員会は、自分たちが慣れ親しんでいるものからすると十分ではないという意見を表明したが、こちらはすぐに対応しエアコンのレンタルを提案した。 選手たちが感じる負担とこの地域の環境が今後受ける影響のバランスをとりながら対応を求めている。」

その上で、次のように話していました。 「我々は、オリンピックの運営方法に新しい基準を設けようとしている。 選手たちや大会の参加者には自分たちの役割を果たしこの新しいやり方を今後の大会に引き継いでほしいと願っている。」 (NHK = 8-3-24)


次世代太陽電池、26 年度実用化 パナが前倒し、大阪に試作ライン

パナソニックホールディングス (HD) は 25 日、次世代技術として注目が集まる「ペロブスカイト太陽電池」を 2026 年度中に実用化すると発表した。 ガラス建材と一体化させた「発電するガラス」として普及させる。 これまでは 28 年までに実用化するとしていたが前倒しした。 24 年秋ごろに縦 1.8 メートル、横 1.0 メートルの大きさの「発電するガラス」を製造する試作ラインを大阪府守口市の研究施設内に立ち上げる。 オンライン併用での説明会でグループ最高技術責任者 (CTO) の小川立夫執行役員は「26 年度中にテストの形で世の中に出し、顧客からの評価を得られるようにしたい」と話した。 (kyodo = 7-25-24)


環境省、市街地でクマへの発砲の条件緩和へ 猟友会頼りに課題も残る

近年全国で相次ぐクマの被害を受け、環境省は市街地での猟銃使用の条件を緩和する方針を固めた。 8 日にある専門家の検討会で了承を得た後、次の国会で、所管する鳥獣保護管理法の改正を目指す。 被害防止への期待の一方で、事故を防ぎながら確実に捕獲を進めるには高い技術が求められる。 人材育成や制度などの議論も待ったなしだ。

環境省によると、2023 年度に報告されたクマによる人身被害は過去最多の 219 人で、このうち死者は 6 人。 今年度も 4 月から 7 月 2 日で人身被害 34 人、死者 2 人が出ている。 えさの不足や、人が住まなくなった地域で果樹が放置されるなど、クマが出没しやすい環境が広がっていると指摘されている。 今年 4 月には有識者会議を経て、駆除などに対して国から資金が出る指定管理鳥獣にクマが追加された。 会議の中でも市街地での猟銃使用の条件について、見直しの必要性が指摘されていた。 クマの出没数が多い、北海道と東北地方の知事からも 2 月、見直しに向けた要望が出されていた。

現在の鳥獣保護管理法は、38 条で市街地での銃猟を禁じている。 猟友会などがクマを撃つためには、立ち会った警察官から指示を受けるか、刑法の「緊急避難」にあたる、やむを得ない行為として対応するしかない。 しかし、警察官が許可を出すのに時間がかかったり、発砲後に捕獲者が違法性を問われたりする事案も起きていた。

一定条件のもと緩和 措置に伴うリスクも

そこで専門家の検討会は 5 月、新たな方針として、▽ 人への被害のおそれが現に生じている、▽ 建物にクマが立てこもっている、▽ 箱わなでクマを捕獲した後のとどめ - - などの場合については、猟銃を使用できるよう提案。 法改正を求めた。 ただ、跳弾が誰かに当たったり、建物を壊したりするおそれがある。 クマを手負いにすれば興奮状態になり、逆に危険性が高まることもある。

高い技術必要、「構造を抜本的に変えるべき」

検討会の座長で、酪農学園大学の伊吾田宏正准教授(狩猟管理学)は「市街地での猟銃使用では、技術だけではなく高度な注意力や責任感が求められる。 下手をすれば住民にけが人も出かねない。 質を維持するためにも、猟友会員などに任せきりな構造も抜本的に変えていくべきだ。」と指摘する。 環境省によると、第 1 種銃猟の狩猟免許を持つ人は 1975 年に 49 万人だったが、近年は 9 万人程度まで減り、猟友会の維持も厳しい。 市街地での猟銃の扱いには、山林とは異なる特別なトレーニングが欠かせず、捕獲者への負担は大きい。

北海道奈井江町では今年、条件面で折り合わなかったため、猟友会が町のヒグマ駆除への協力要請を辞退した。 拘束時間の長さや危険性の高さに対し、日当などが割に合っていないとの主張だ。 鈴木正嗣・岐阜大学教授(野生動物管理学)は「報酬を上げれば解決する問題ではない。 常態化するクマ被害に対し、制度疲労が出てきている」と指摘する。 常勤の公務員が職務で駆除に当たることなども想定し、「今こそクマ捕獲のあり方を考える移行期だ」と話す。 (市野塊、asahi = 7-7-24)


ヒマラヤの氷河「劇的に縮小」 15 年ぶり調査で要因判明 名古屋大

ネパール・ヒマラヤの山岳地帯にある「AX010」と呼ばれる氷河を名古屋大が 15 年ぶりに現地調査したところ、以前よりも縮小が加速していることが明らかになった。 1970 年代からの調査結果と過去の気象データを使って解析した結果、縮小の主要因が気温上昇であることも判明した。 付近の気温は近年上昇が目立っており、この 15 年で氷河の表面の高さが 50 メートル下がったところもあった。 地球温暖化による気温上昇の影響を直接受けやすい氷河の例といえるという。

「劇的に縮小していた。 この写真を見てお帰りいただいても構わないくらい、インパクトがある。」

5 月に千葉市で開かれた学会、日本地球惑星科学連合大会。 藤田耕史・名大教授は、研究発表の本題に入る前に 2 枚の氷河の写真を示し、こう紹介した。 1 枚は2008 年、前回の調査で訪ねたときの写真だ。 もう 1 枚は昨年 11 月の調査で撮影した最新の写真。 谷間に見えていた氷河が大きく後退し、岩肌があらわになっていた。  この氷河「AX010」はネパール東部の標高 5 千メートル前後に位置し、ヒマラヤでよく知られた氷河の一つだ。 名大の研究グループが 78 年から繰り返し調査を続けてきた。

08 年の時点でも大きく縮小しており、当初からの変遷をとらえた写真は温暖化問題の啓発にも使われてきた。 それが今回訪れると、さらに縮小が加速していたという。 最初に調査した 45 年前の写真を見ると、カメラの手前まで、氷河が厚く谷を埋めていたことがわかる。 このとき 0.6 平方キロだった面積は、30 年後の 08 年には 0.34 平方キロに。 今回は 0.18 平方キロと、15 年でほぼ半減していた。 この撮影ポイントからの氷河は今や、上のほうにわずかに見えるだけだ。 「ここまで減っているとは。」 藤田さんは久しぶりの再訪でこう感じたという。 以前は氷河の上を歩いて調査した場所も、巨岩に阻まれ通行が困難になっていた。

現地調査が強み 氷河の消長を再現

現地に入り、足で稼いだデータの蓄積が名大グループの強みだ。 以前は、工事現場で見るような測量機器で面積や高さを測っていた。 前回は GPS を背負って氷河の上を歩き回ることで形状を記録。 今回はドローンも使って、面的な標高データを得た。 この 15 年の差を比較すると、面積とともに氷河の表面の高さも、多くの場所で 20 - 30 メートル前後低下していた。 場所によっては 50 メートル近く下がっていた。 この間の低下速度の平均は、水の厚さに換算して年 1.3 メートル。 1 メートル以下で推移してきた以前と比べ、加速していた。

現地調査で得た詳細なデータは、縮小のメカニズムを詳しく研究するのに向く。 氷河の縮小は人工衛星を使った観測データでも研究されているが、精度に限界がある。 藤田さんは、氷河の消長を再現する数値モデルを使って AX010 が縮小した要因を探り、この学会で結果を発表した。 数値モデルは、降水量や気温、日射などから熱のやり取りを計算し、増減を見積もる。 例えば、雪になるか雨になるかは、気温によって変わる。 雪が表面を白く覆うと、太陽の光をはね返して氷河は解けにくくなる。 気温が上がって雪が雨になれば、この効果は小さくなる。

氷河が末端から解けても、標高の高い上部に雪がたくさん積もるなら、バランスがとれる。 氷河の形状が変われば、解けやすい場所や、雪を蓄えやすい場所の面積も変わる。 モデルは、こうした現象を再現する。

気温上昇を反映「消失避けられず」

過去の気象を復元したデータを使い、現地調査の結果と突き合わせて計算すると、気温の上昇に応じて氷河の縮小が加速したことがはっきりした。 平均気温は 99 年ごろから上昇傾向が大きくなり、雨も 00 年ごろからわずかに増えていた。 一方、氷河の形状が変わったことの影響はほぼみられなかった。 氷河が元の大きさを維持できる気温を見積もったところ、平均気温が今よりも 1 度程度低くないと難しい結果になった。 これは 70 年代までの気温の水準にあたる。

藤田さんは「AX010 は、気温の変動を直接反映して縮小している氷河であることを明らかにできた。 安定していたと考えられる最後の時期が 70 年代初頭で、その後の温暖化を踏まえると、消失は避けられない状況だ。」と話す。 AX010 は比較的小規模な氷河。 今回の研究結果はこの氷河に限ったもので、周辺には縮小している氷河もあれば、あまり減っていない氷河もある。 「氷河による違いを調べるのが次のテーマ」だという。 (編集委員・佐々木英輔、asahi = 7-6-24)


水俣病 8 団体と環境相の再懇談 7 月 8、10、11 日に開催 熊本

伊藤環境相との懇談で水俣病被害者団体側の発言を制止した「マイクオフ問題」をめぐり、環境省は 28 日、各団体との再懇談を 7 月 8 日、10 日、11 日に開催すると発表しました。 この問題は 5 月 1 日に水俣市で開かれた環境相と水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が発言時間の『3 分』を超えた団体側のマイクをオフにして発言を制止したものです。 環境省によりますと懇談に出席した8 団体のうち 6 団体でつくる水俣病被害者・支援者連絡会との再懇談を 7 月 8 日に開催。 水俣病患者連合など残りの 2 団体とは 7 月 10 日と 11 日に改めて懇談します。

木村知事も各団体との再懇談に同席するということです。 環境省は再懇談の形式について「調整中だが発言時間に制限を設けない」と説明。 また、被害者・支援者連絡会が要望している患者宅への訪問や百間排水口などの視察についても調整しているとしました。 「(水俣病問題の)解決に向けた 1 つのステップ。 関係団体からいただいた要望にはできるだけ応えたい。(伊藤環境相)」 (TKU テレビ熊本 = 6-29-24)