島サミットで関係強化図る日本 太平洋で影響力増す中国に危機感 インド太平洋地域において東南アジアとともに米中対立の最前線となっている南太平洋地域。 島嶼国首脳が一堂に会した「太平洋・島サミット」は、中国の影響力が増す島嶼国を何とか日米陣営に引き入れようとする日本側の思惑があった。 中国に危機感強める日米 「(日本と島嶼国は)力による一方的な現状変更の試みへの反対といった価値・原則を共有している。」 岸田文雄首相は会合後の共同記者発表でこう強調し、南太平洋地域で影響力を強める中国を牽制した。 今回の首脳宣言に初めて盛り込まれた「現状変更の試みへの反対」も日本側の意向が強く働いたものだ。 日本の支援 1997 年から島サミットを開催してきた日本は、途上国援助 (ODA) を使って歴史的にも関係の深い同地域の発展に貢献してきたという自負がある。 しかし、近年の中国の島嶼国への影響力の急拡大を前に、日本は同盟国・米国とともに危機感を強める。 背景には地政学的理由がある。 南太平洋地域は元々、第 2 次世界大戦中に日米両国が激しく争い、米国が補給路として確保したことで勝利につながった戦略的要衝だ。 中国側から見れば西太平洋への出口にもあたる。 バイデン政権は 2022 年 9 月、米国と島嶼国首脳との会談を初めて開催。 太平洋パートナーシップ戦略は「中国による圧力や経済的威圧がこの地域や米国の平和と繁栄、安全を損なう危険性がある」と明記し、米国の同地域への積極的関与を宣言した。 米国の支援 ある政府関係者は南シナ海での中国の実効支配の強まりを引き合いに、「南太平洋地域も手遅れになってはいけない」と語る。 日本は米豪両国とともに中国の海洋進出を押し返そうと、島嶼国との関係強化を図っている。 23 年には政府安全保障能力強化支援 (OSA) の初の事例として、フィジー海軍への警戒監視用の警備艇などの供与を決定。 中国寄りのソロモン諸島に対しても、現地警察への不発弾処理の能力構築支援など安保面でも協力を深める。 今回の島サミットで発表した共同行動計画には、海上自衛隊艦船の寄港などによる防衛交流強化を盛り込んだ。 とはいえ、日本にとっての最大の悩みは中国との経済力の差が開く一方であることだ。 2023 年の名目国内総生産 (GDP) は世界 4 位に転落。 「支援規模で中国に対抗するのは厳しい(外務省幹部)」という厳しい現実がある。 このため、日本側はこれまでの長年の関係から島嶼国側の意向を尊重して寄り添う支援を重視。 「米国のように政治的に関与しようとすると島嶼国は嫌がる(政府関係者)」という分析もある。 今回の首脳宣言でも、島嶼国側の関心の高い気候変動問題を「唯一最大の脅威」と位置付け、防災能力強化などで「島嶼国自身の取り組みを後押し」すると明記した。 日本側は島嶼国の受け止めに手ごたえを感じており、政府関係者によると、ある島嶼国は日本側に「ある国は作って終わり。 日本はそうではなく継続的に支えてくれる」と中国の開発援助への批判を暗に伝えてきたという。 ある政府関係者は「日本は島嶼国との伝統的関係をもとに関係強化を図っていく」と語る。(松山紫乃) 中国は経済援助やインフラ投資 太平洋・島サミットを 4 日後に控えた今月 12 日、ソロモン諸島のマネレ首相は中国・北京の人民大会堂で習近平(シーチンピン)国家主席と向き合っていた。 「台湾独立に断固反対する。」 マネレ氏は、習氏から同国への支援を約束されると、中国が世界に発信したい台湾問題に踏み込んだ。 5 年前まで台湾と外交関係を維持してきた立場とは、様変わりだ。 同じ日に習氏と会談したバヌアツのサルワイ首相も、台湾問題に加え「新疆、香港、チベット、人権、南シナ海の問題で、中国の立場を断固支持する」と表明した。 中国側は、いかなる政治的条件もつけずに経済や技術援助をすると応じた。 習氏には日本に向かう前のタイミングで両首脳を北京に呼び、中国との絆を明確にさせる狙いがあったとみられる。 中国は 2006 年に太平洋島嶼国との協力フォーラムを初めて開き、経済援助やインフラ投資で関係強化を図ってきた。 中国が米国の影響力を排除するための「第 2 列島線」に近い太平洋の島々は、戦略的な重要性が高い。 シーレーン(海上交通路)として日米中がともに重視する。 有事に自由に航行できないことはリスクでもある。 中国の支援 米国が日韓やフィリピンと同盟関係を強め、米英豪による安全保障の枠組み「AUKUS (オーカス)」もつくるなど、対中国包囲網を強固にするなか、対抗するように中国はソロモン諸島と 22 年に安全保障協定を、23 年に警察協力協定を締結。 24 年 1 月にはパプアニューギニアに警察や安全保障面の支援を提案したことが明らかになった。 安保や治安面での協力を深め、影響力を拡大している。 ソロモンでは 1 万人が収容できる競技場が作られ、「CHINA AID (中国援助)」が強調された。 昨年の国連総会では、ソロモン諸島のソガバレ前首相が東京電力福島第一原発処理水の海洋放出をめぐり日本を非難する一方で、中国を評価するなど、政治的な姿勢も変わっている。 さらに太平洋島嶼国は、中国と台湾との間で、外交関係をめぐる対立の場にもなっている。 19 年にはソロモン諸島とキリバスが相次いで台湾と断交、中国と国交を結んだ。 24 年にはナウルも続いた。 中国が独立派とみなす台湾の民進党政権への圧力を強めるためだ。 一方で、パラオ、マーシャル諸島、ツバルの 3 カ国は、現在も台湾と外交関係を維持している。 「親中政権」が太平洋に広がり、この地域で中国の支配が強まるのを防ぐため、米国、日本、豪州、ニュージーランドなどが協力して島国への支援を強め、綱引きをしているのがいまの構図だ。 ただ、太平洋が米中対立の最前線になることに、当の島国には複雑な思いがある。 南太平洋の島国は特に、地理的にも近いオーストラリアやニュージーランドとの関係が深かった。 安全保障を委ねている国もある。 しかし、従属のような関係でもあり、島国からすると不満を漏らし、逆らうのが難しい状態でもあった。 日本も関与を強めてきたが、豪州やニュージーランドの規模には及ばない。 そこに、巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げて大型インフラ投資を持ちかけたのが中国だった。 島国の多くは港や道路などのインフラ投資をしたくても、資金がない。 大規模かつ手続きも早い「中国式」は、新たな選択肢として島国には魅力だった。 太平洋島嶼国に詳しい近畿大学の畝川憲之教授(国際政治)は「中国の投資拡大で、島の経済機会が拡大したのは間違いない」と話す。 さらに近年、中国に対抗する西側諸国も援助を増やしており、島国への援助額が増え、質も向上している側面もある。 米中対立に巻き込まれながら、島嶼国は大国間競争をうまく利用して双方から最大の支援を得ているようにもみえる。 一方で、中国のインフラ投資をめぐっては、港湾開発でスリランカが借金を返せない事態に陥り、中国が 99 年間の港湾運営権を取得した例もあり、欧米から「債務のわな」との批判がある。 畝川氏は「国際通貨基金 = IMF、のデータによると、太平洋島嶼国でも一部の国では、債務不履行に陥る可能性が高い融資額の 4 分の 3 が中国からとされる」と指摘する。 中国との間で立場が弱くなる可能性があると話す。 (北京・井上亮、編集委員・奥寺淳、asahi = 7-18-24) 韓国で初の「脱北者の日」、尹氏「同胞から目そらさない」支援強化へ 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は 14 日、今年制定された初の「脱北者の日」の記念式典で演説した。 北朝鮮から逃れてきた人など約 200 人を前に、「脱北者の皆さんを受け入れることが北韓(北朝鮮)の人権(問題)を解決する一歩になる」と指摘。 脱北者の定着に向けて支援を強化する方針を示した。 記念式典はソウルの青瓦台迎賓館で開催。 尹氏は脱北者に対する支援金を増やすほか、政府・自治体での雇用を拡大する方針を示した。 また、脱北者を採用した企業には税制面で優遇するとした。 また、尹氏は「政府は苦しんでいる北韓の同胞から決して目をそらさない」として、外国にいる脱北者が北朝鮮に送還されないよう「あらゆる外交的努力を尽くす」と述べた。 政府傘下の財団の調査結果によると、2023 年の脱北者の平均月給は 245 万 7 千ウォン(約 28 万 3 千円)と、全国平均を 2 割程度下回っている。 北朝鮮との生活環境の違いなどから韓国社会に溶け込めないといった課題もあると指摘される。 北朝鮮に対して強硬姿勢をとる尹氏は今年 1 月の閣議で、脱北者の日の制定を指示。 7 月 14 日は韓国で脱北者の保護と定着支援に関する法律が 1997 年に施行された日にあたる。 (ソウル・太田成美、asahi = 7-14-24) フランス国民議会選挙、左派政党連合が最大勢力に 「マクロン大統領の敗北は明らかだ」 【パリ = 梁田真樹子】 フランスで 7 日、国民議会(下院、定数 577)選挙の決選投票が実施され、即日開票された。 第 1 回投票で得票率首位となった極右の流れをくむ右派政党「国民連合 (RN)」に対し、左派の政党連合とマクロン大統領率いる中道の与党連合が候補者の一本化による共闘で巻き返し、左派政党連合が最大勢力、与党連合が 2 位となった。 RN は 3 位に沈んだ。 仏内務省が公表した開票結果に基づく仏紙「ル・モンド」の集計によると、改選前に 149 議席だった左派政党連合は 182 議席を獲得した。 与党連合は解散前の 250 議席から大幅減の 168 議席だった。 過半数をうかがう勢いとみられた RN は、解散前の 88 議席から伸ばしたものの、共闘勢力を含めて 143 議席にとどまり、事前予想に反して選挙戦の終盤で失速した。 仏内務省によると、投票率は 66.6% で、2022 年の前回選を約 20 ポイント上回った。 RN の躍進に警鐘を鳴らす与党連合と左派政党連合が異例の共闘を示す中、有権者の関心が高まった。 与党連合が最大勢力の座を譲り渡すことで、マクロン氏の政権運営は難しさを増す。 主要 3 勢力がいずれも過半数に届かない「ハング・パーラメント(中ぶらりん議会)」となる中、社会党など穏健な左派政党と法案ごとの協力を模索するとの観測が浮上している。 与党連合の選挙戦を指揮したガブリエル・アタル首相は 7 日、辞意を表明した。 首相は議会多数派から選ばれてきた。 左派政党連合を主導する急進左派政党「不服従のフランス (LFI)」のジャンリュック・メランション氏は 7 日、「大統領の敗北は明らかだ」と述べ、左派政党連合からの首相任命をマクロン氏に求めた。 マクロン氏は LFI との政権協力を否定しており、多数派工作が激化しそうだ。 一方、RN のジョルダン・バルデラ党首は「(左派政党連合と与党連合が候補者を一本化した)『不名誉な同盟』があったにもかかわらず、RN は史上最大の躍進を遂げた」と強調した。 仏国民議会選は小選挙区制で、6 月末の第 1 回投票で有効投票の過半数を取る候補者がいなかった 501 選挙区で決選投票が行われた。 (yomiuri = 7-8-24) イラン大統領選 改革派のペゼシュキアン氏、決選投票で勝利 5 日実施のイラン大統領選の決選投票で、イラン内務省は 6 日、米欧との対話に前向きな改革派のペゼシュキアン元保健相 (69) が初当選したと発表した。 保守強硬派のジャリリ元最高安全保障委員会事務局長 (58) との接戦を制した。 大統領の任期は 4 年。 当初はライシ前政権の保守強硬路線の継続が有力視されていた。 最高指導者ハメネイ師が国政の最終決定権を握るという制約はあるが、3 年ぶりの路線転換となる。 内務省によると、ペゼシュキアン氏は約 1,638 万票 (53.66%) を獲得、ジャリリ氏は約 1,353 万票 (44.34%) だった。 投票率は 49.8%。 大統領選はライシ前大統領が 5 月にヘリコプターで墜落死したことを受けて実施された。 6 月 28 日の第 1 回投票は当選に必要な過半数を得た候補がおらず、決選投票となった。 (カイロ・金子淳、mainichi = 7-6-24) 英スナク首相、保守党の党首を辞任へ 労働党が単独過半数を獲得 英国で 4 日に実施された下院(定数 650)の総選挙で、最大野党・労働党が単独過半数を獲得し、14 年ぶりに政権を担うことになった。 キア・スターマー党首 (61) が 5 日、首相に就任する。 労働党は、644 議席が確定した 5 日午前 8 時(日本時間 5 日午後 4 時)時点で、410 議席(解散前 206)を獲得。 保守党の 119 議席(同 345)に大差をつけた。 2 大政党以外の獲得議席数は、▽ 自由民主党 71 (同 15)、▽ スコットランド国民党 9 (同 43)、▽ 改革党 4(同 1)などとなっている。 法曹界出身のスターマー氏は、2020 年 4 月に党首に就任した。 急進左派路線だったコービン前党首が 17、19 年の総選挙で敗れていたことから、穏健・中道路線へと転換。 選挙戦は目立つ公約は掲げずに慎重に進め、一定の支持を取り戻した。 5 日の勝利演説でも、「私たちは労働党を変えた」と何度も強調。 「混乱に終止符を打つ。 きょうから、新しい章が始まる。 変革の仕事、国家再生の任務を始め、国を立て直す。」と意気込んだ。 労働党は 400 を超える議席を獲得したため、党内に数十人いる急進左派の議員が仮に造反しても、法案を通すことが可能になる。 一方、保守党は、これまで過去最低だった 1997 年の 165 議席を下回る歴史的大敗となった。 総選挙の早期実施を決断したスナク首相は結果について「英国民が厳しい審判を下した」と指摘。 「勤勉な多くの候補が敗れた責任を取る」と述べ、保守党党首を退く意向を示した。 英国では、2016 年 6 月に欧州連合 (EU) からの離脱の是非を問う国民投票が実施され、その後、政権の混乱が続いた。 この 8 年だけで 4 人が首相に就き、支持率も長らく低迷していた。 (ロンドン・藤原学思、asahi = 7-5-24) 欧州で熱波、40 度こえの暑い 6 月 水不足で観光客受け入れられず 気候温暖化などの影響から、欧州は今年 6 月の段階で、南欧を中心に 40 度を超える高温を記録し、深刻な水不足に陥っている。 本格的な夏休みシーズンを前に、世界的な観光地が多い地域で、訪問客を受け入れられない事態にもなっている。 ギリシャのアテネ国立天文台は 1 日、ギリシャ国内の 6 月の気温が、2010 年以降最も高くなったと発表した。 特に暑かったのが中部と、南部のペロポネソス半島で、例年 6 月の平均気温に比べて 4.8 度高かったという。 13 日にはクレタ島で、44.5 度を記録した。 パルテノン神殿がある首都アテネ中心部のアクロポリスでは、日中の暑い時間帯の一般公開が中止された。 学校も一時休校になった。 ロイター通信によると、ギリシャ国内では 6 月、英国のテレビ司会者も含め、少なくとも 6 人の観光客が熱中症などで亡くなったという。 さらにアテネでは 6 月、複数の観測地点で一度も降雨が記録されなかった。 ギリシャのミツォタキス首相は「深刻な水不足が起き、異例の強風が吹いている」とし、この夏は「特に危険」と注意を呼びかけている。 水道水まかなえず、入島を制限 水不足は南欧の広い地域に広がっている。 イタリアのシチリア島南部の町アグリジェントでは、給水が週 2、3 回に制限されている。 英紙タイムズによると、十分な水を確保できない一部の宿では、来客を断る事態になっているという。 高級リゾート地としても名高いイタリア・カプリ島でも 6 月、水不足で島を訪れる人を一時制限した。 イタリア本土から水道水の供給が止まり、島内の貯水池だけでは水をまかなえなくなった。 地元メディアによると、スペイン南部の町カディスやコスタ・デル・ソルでは、節水のために海水浴後のシャワー使用が中止になっている。 欧州連合 (EU) の気候情報機関「コペルニクス気候変動サービス (C3S)」によると、南緯 60 度から北緯 60 度の平均海面水温は、直近の今年 5 月まで 14 カ月連続で過去最高値を更新している。 C3S のサマンサ・バージェス氏は「主に温室効果ガスと熱帯太平洋のエルニーニョ現象の影響で高温が続き、気候は不安定になるだろう」としている。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 7-3-24) 「不必要な渡航は控えて」 台湾、中国への渡航警戒レベルを引き上げ 台湾の行政部門で対中政策を担う大陸委員会は 27 日、中国本土や香港、マカオへの渡航警戒レベルを上から 2 番目に一段階引き上げ、不必要な渡航を控えるよう呼びかけた。 中国が 21 日、台湾の独立を目指す動きに対して刑罰を科す方針を示したことなどを受けたもの。 強制力はないという。 委員会は発表文で、2015 年以降、中国で反スパイ法、香港で国家安全維持法(国安法)など国家安全に関わる法令が相次いで施行されたと指摘。 中国が 21 日に公表した指針で「さらにリスクが高まった」とし、「不必要な渡航を避けるよう強く勧める」と訴えた。 20 日の会見では、この 1 年で台湾の退役軍人ら少なくとも 8 人が中国で拘束されていると明かしている。 27 日の発表でも、台湾から中国に渡航した人が「不法に拘束、留置、取り調べを受けるケースが相次いでいる」と注意を呼びかけた。 これまでの警戒レベルは上から 3 番目で、渡航の必要性の検討を呼びかけるものだった。 同委は、新型コロナウイルスが流行した 2020 年 11月、中国の湖北省などを対象に最も高いレベルに引き上げたこともある。 (台北・高田正幸、asahi = 6-27-24) 韓国のリチウム電池工場で火災、22 人死亡 中国籍の労働者ら犠牲 ソウル近郊の京畿道華城(ファソン)市のリチウム電池製造工場で 24 日午前 10 時半ごろ、火災が発生した。 消防によると工場の作業員ら 22 人の死亡が確認された。 犠牲になった 20 人が外国人で、うち 18 人が中国籍だという。 消防によると 2 人が重傷、6 人が軽傷を負った。 現場の工場 2 階ではリチウム電池の検品と包装の作業をしており、工場内に 3 万 5 千個が保管されていた。 目撃者は「リチウム電池が爆発した」と証言しているという。 消防の到着時には電池が連続して爆発しており、捜索や救助が困難な状況だったという。 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は 24 日夜に現場を視察。 「発火物質が非常口前に積まれていたため、(作業員らが)脱出できず死者が多く発生した」として遺憾の意を示した。 また、「化学物質による火災は既存の消火器や消火栓での鎮火が難しい」として、早期鎮火のための対策を指示した。 (ソウル・太田成美、asahi = 6-24-24) メッカ大巡礼の死者 1,100 人超に サウジ高官「わが国に落ち度なし」 サウジアラビアにあるイスラム教の聖地メッカへの大巡礼「ハッジ」中の死者が、21 日までに 1,100 人を超えた。 多くは酷暑による熱中症が原因とみられているが、サウジ高官は同国の巡礼の管理に「落ち度はなかった」と主張した。 同高官は AFP に対し、「わが国に落ち度はなかったが、リスクを理解していなかった一部の人々による判断ミスだ」と語った。 サウジ政府関係者がハッジ中の死者についてコメントするのは初めて。 各国の発表などに基づいた AFP の集計では、21 日までの死者は計 1,126 人となっている。 同高官によれば、サウジ政府は 19 日に終了したハッジが最高潮を迎えた 15 - 16 日に 577 人の死亡を確認した。 だが、この数字は死者全員を網羅したものではないという。 サウジ当局は先に、今年のハッジには昨年とほぼ同じ約 180 万人が参加し、うち 160 万人が外国人だと述べていた。 ハッジの許可証は国ごとに割り当てられた上で、抽選で個人に配布される。 しかし、たとえ当選したとしても費用は高額で、許可証なしで巡礼すれば数千ドル(数十万円)の節約になるため、サウジが一般の観光ビザを導入して入国措置を緩和した 2019 年以降、非正規巡礼者が急増している。 ただし、サウジ治安部隊に見つかれば、身柄を拘束され、強制送還されるリスクがある。 今年のハッジ開始前、サウジ当局は、許可証なしでハッジに参加しようとしていた非正規巡礼者 30 万人以上をメッカから排除したと発表していた。 だが、先述の高官は 21 日、「聖地の入り口に到着した巡礼者の参加を許可するようにと上から命令があった」と認めた。 同高官によると、非正規巡礼者は推定 40 万人で、ほとんどがエジプト人だという。 ハッジの時期は太陰暦であるイスラム歴に基づいて決まり、今年はサウジの酷暑の時期に行われた。 サウジの国立気象センターによると、メッカの聖モスクの気温は 17 日に 51.8 度まで上昇した。 だが、非正規巡礼者は、冷房を備えたテントなど、巡礼を支援するために用意された施設を利用することができなかった。 エジプト人の非正規巡礼者は今週、AFP の取材に対し、病院を受診するのにも救急車を呼ぶのにも苦労したと語った。 中には亡くなった人もいるという。 また、メッカなどを巡るハッジ用のバスで法外な料金を求められ、炎天下を何キロも徒歩で移動せざるを得ない中、疲労で路肩に倒れ、そのまま動かなくなった巡礼者を見掛けたこともあったと話した。 先述のサウジ高官は、「非正規巡礼者のバス利用を禁止しているわけではないが、こうしたバスは、参加を事前に把握している正規の巡礼者のために用意したものだ」と説明。 非正規巡礼者が歩いているバスルートは、食料や救急車などの医療サービスが用意されておらず、バス用の幹線道路だと指摘した。 (AFP/時事 = 6-22-24)
メキシコ初の女性大統領、シェインバウム氏勝利 現政権の路線継承 [メキシコ市] 2 日投票のメキシコ大統領選挙は、与党・国家再生運動 (MORENA) のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長 (61) が勝利した。 就任は 10 月 1 日でメキシコ初の女性大統領が誕生する。 選管当局の抽出速報集計によると、気候科学者でもあるシェインバウム氏は 58.3 - 60.7% と、メキシコの民主主義史上最高の得票率となる勢いだ。 野党候補のソチル・ガルベス上院議員は 26.6 - 28.6% の得票率にとどまり、敗北を認めた。 シェインバウム氏は支持者を前に「共和国 200 年で初の女性大統領になる」と勝利宣言。 財政的責任を果たし、中央銀行の自主性を尊重すると表明した。 またロペスオブラドール大統領を「メキシコをより良い方向に変えた、並外れたユニークな人物」と呼んで謝意を表した。 ロペスオブラドール大統領は貧困対策に取り組み、通貨ペソ上昇や低失業率を実現した。 同氏の政策路線をシェインバウム氏は継承する方針だが、アナリストは財政赤字が膨らみ、成長が低迷する中では難しいとみている。 ただ議会選では上下両院で与党とその連合会派が過半数を獲得する見込みで次期大統領の後ろ盾となりそうだ。 (Kylie Madry、 Valentine Hilaire、Reuters = 6-3-24) 地滑りで 2 千人が生き埋めか パプアニューギニア政府が国連に報告 パプアニューギニア中部の村で 24 日に起きた地滑りで、パプアニューギニア政府は「2 千人以上が生き埋めになった」と国連に報告した。 AFP 通信などが報じた。 被災地は山岳地帯にあり、地盤も不安定なため、救助や捜索は難航している。 AFP などによると、パプアニューギニアの国立災害対策センターが 27 日、首都ポートモレスビーの国連事務所に被害状況を報告した。 地元メディアによると、被災した地域の人口約 4 千人のうち、約半数が生き埋めになったと推定されている。 農地や家畜、道路にも大きな被害が出ているという。 地滑りはポートモレスビーから約 600 キロ北西の山岳地帯にあるエンガ州で、24 日未明に発生した。 多くの人が就寝中に土砂や倒壊した建物の下敷きになったとみられている。 なお断続的に地滑りは起きており、地元当局は周辺住民の避難ルートの確保や救助隊の安全対策を急いでいる。(バンコク・大部俊哉、asahi = 5-27-24) ◇ ◇ ◇ パプアニューギニアで地滑り、670 人以上死亡か パプアニューギニア北部の山間部で大規模な地滑りが発生し、住宅 150 棟以上が土砂の下敷きになった。現場では懸命の捜索救助活動が続けられているが、国際移住機関 (IOM) の 26 日の推定によると、死者は 670 人を超す可能性がある。 地滑りは首都ポートモレスビーから約 600 キロ北西にあるエンガ州のヤンバリ村で現地時間の 24 日午前 3 時ごろ発生。 当初は約 100 人が死亡と推定されていたが、IOM によると、犠牲者数はその推定を大幅に上回っている。 被災したヤンバリ村の人口は当初 4,000 人と伝えられていたが、実際の人口はそれよりずっと多いことが分かった。 村では住宅 250 棟あまりの住民 1,250 人が避難。 近くに住む親類や友人の家に身を寄せている。 現場は今も落石が続いて地盤にかかる圧力が増大し、極めて危険な状況にある。 人々は農業用具などを使って土砂に埋まった遺体を掘り起こしているという。 AFP 通信が配信した現場の写真には、急な山の斜面が崩れて土砂がむき出しになり、地元住民ががれきによじ上って捜索救助活動を行う様子が写っている。 (CNN = 5-27-24) 現代の学生運動は「ネットワーク型」へ 多様な関心、ガザ連帯に集結 パレスチナ自治区ガザ地区へのイスラエルの攻撃に対する大学生の抗議運動が米国各地のキャンパスに広がり、欧州、そして日本の大学にも及んでいる。 1990 年代後半以降に生まれた Z 世代と呼ばれる若者たちの動きは、社会運動の新たな転機になりうるのか。 米ニューヨークのコロンビア大で学生らがキャンパス内にテントを張り座り込みを始めたのは、4 月 17 日。 翌日、学長の要請を受けキャンパス内に入った警官隊が 100 人以上を逮捕したが、運動は全土に波及した。 イエール大や西海岸のスタンフォード大でもキャンプが設けられ、各地で多くの逮捕者を出しつつも運動が続いている。 学生たちは、イスラエルやそれを支援する米政権への抗議のほか、大学が運用する基金の投資先を開示し、イスラエルの軍需産業に関連する企業への投資をやめる「ダイベスト」などを訴えている。 「秩序が優先されるべきだ」と運動を批判したバイデン大統領への抗議の声も上がり、今年の大統領選に影響する可能性も取りざたされる。 こうした動きは米国のみならず、欧州の大学でも拡大。 先月末から日本でもキャンプを設営する動きが見られはじめている。 東京大では 4 月末から、キャンパス内のテントで学生が泊まり込みを始めた。 パレスチナ問題に関する読書会を開いたり、大学に対してイスラエル軍需産業に関わる企業との協力関係があるかどうかを明らかにし、あれば関係を絶つよう求めたりしている。 5 月 16 日夜には集会を開き、東大のほか早稲田大、国際基督教大など首都圏各地の大学から集まった学生ら約 150 人が「日本の大学、沈黙するな」、「フリー、フリー、ガザ(ガザに自由を)」などと声を上げた。 2022 年にロシアのウクライナ侵攻が始まった際は、侵攻に抗議する声明を東大をはじめ各地の大学が出した。 一方、ガザでの武力衝突に対しては、開始から半年以上が経った現在でも、同様の声明を出した大学は限られる。 キャンプに参加する東大生の一人は「ダブルスタンダードだ」と憤る。 記事後半では、抗議活動に見られるある特徴や、60 年安保や全共闘などの従来の学生運動との違いを、専門家や当事者世代が指摘します。 運動は各地の大学キャンパスにも広がる。京都大でもキャンプが設けられたほか、明治大や慶応大、青山学院大などでも、立て看板を設置したり、メッセージを掲げて立つスタンディングを行ったりして、パレスチナへの連帯を示す動きがある。大学に対しては、即時停戦を求める声明を出すことや、イスラエルの学術機関などとの関係を絶つ「アカデミック・ボイコット」を行うことなどを求めている。 「多様化していた社会問題への関心が、共通の訴えのもとに集まりつつある。」 高校時代、校則を問うドキュメンタリー「北園現代史」を制作し、同世代の学生による社会運動を取材してきたライターで明治学院大 4 年の中村眞大さん (21) は話す。 一連の抗議運動には、ジェンダー平等を訴える団体の人、気候変動問題に取り組む人、立て看板の設置を認めるよう大学と交渉している人など、これまでそれぞれのテーマで個々に行動していた学生たちが加わってきているという。 「これまで見たことがない動きだ」と中村さんは驚く。 SNS で連日伝えられる、ガザでの悲惨な光景。 そしてウクライナ侵攻と比べた大学の対応の落差。 こうした要素が、これまでは問題意識が散らばっていた学生たちの関心を集める共通のテーマになった。 環境問題やジェンダーと違い、「現在まで継続的に取り組んでいる既存の学生団体がなかったのも、参入のしやすさにつながっているのでは」と中村さんは考える。 それぞれの運動によって、大学当局や民間企業、日本政府やイスラエルなど、抗議の対象が分かれているのも特徴だという。 中村さんは「現状は、国会前や大使館前など、一つの場所に集まって抗議をするような動きではない」と分析する。 「グループ型」から「ネットワーク型」への変質 - -。 「高校紛争」や「平成・令和 学生たちの社会運動」を著した教育ジャーナリストの小林哲夫さんは、今回の運動の形をこう表現する。 これまでつながりが無かった学生たちが現場で知り合い、新たな行動を始める。 SNS の普及を背景に、2015 年の安保関連法制反対運動のころから見られるようになったもので、「60 年安保や 70 年前後の全共闘運動で見られてきたような、学生団体や組織がリードする形ではない。」 抗議集会や座り込みといった「伝統的な」方法ではなく、「本読みデモ」を開く学生もいる。 パレスチナ問題に関する本を一斉に黙読して、通行人に訴える読書会だ。 街頭で練り歩くだけでなく、スタンディングも読書会も、本来の意味での「デモンストレーション」になりうる、と小林さんは言う。 「キャンパスから人がいなくなったコロナ禍を経て、キャンパス内でこそ意味がある行動を学生が始めている。」 デモ形態が多様化する背景には、キャンパスや学生への大学の管理が年々厳しくなっていることがあると小林さんはみる。 各地のキャンパスで大規模なキャンプが設けられている米国に対し、日本ではキャンプが続くのは東大や京大など一部にとどまる。 大学側から撤去を求められてやむなく撤収した例もある。 デモへ参加することが就職に不利に働くのでは、と不安視する学生も多い。 「それでも、彼らは行動に移している。 対立を避け、かつ最大限のアピールをできる方法を模索しているのでは。」と小林さん。 これまでにない動きが起き始めているとはいえ、行動に移す学生はいまだ少数派なのが現実だ。 同世代の中村さんによれば、パレスチナの話をすると「思想が強い」と避けられることも多いという。 「あれだけ人が集まるアメリカの大学はうらやましく思う。」 一方で、「少数派の人たちがつながることができる場は、昔より圧倒的に増えている」とも感じている。 「学生運動が、組織化をしなくても成り立つ時代になっているのでは」 (平賀拓史、asahi = 5-23-24) 暴風雨で 4 人死亡、73 万世帯停電 米ヒューストン「復旧に数週間」 全米 4 位の人口約 220 万人を誇る米南部テキサス州ヒューストンで雷をともなう暴風雨があり、17 日までに 4 人が死亡した。 市が明らかにした。 16 日から停電が続く世帯も多く、復旧に数週間はかかる見通しだという。 17 日午前、市内で記者会見を開いたウィットマイヤー市長は、暴風雨により最低でも 4 人が死亡し、他に 1 人の死因を調べていると明かした。 市を含むハリス郡にはハリケーン級で風速約 45 メートルの強風が吹き荒れたとし、一部地域では竜巻のような現象も起きたとみられている。 電気を送る鉄塔が倒れた影響で一時は約 93 万世帯が停電に。 いまもなお懸命な復旧作業が続いているが、17 日午前時点でなお約 73 万世帯が電気なしの生活を強いられているという。 また、市では 2,500 の信号が作動していないとした。 商業地区では、窓ガラスが割れたビルや、水があふれ浸水した場所もあるという。 倒木や様々な破片などが散らばり通れない道路もあることから、市民に外出を控えるよう呼びかけていた。 市内の学校は 17 日は休校になっている。 近隣の州も警戒を強めている。 AP 通信によると、ルイジアナ州やアラバマ州では豪雨の可能性があると伝えている。 (ニューヨーク・遠田寛生、asahi = 5-18-24) インドネシア火山噴火で数千人が避難、空港閉鎖 マレーシア便も欠航 インドネシアの北スラウェシ州にあるルアング火山(標高 725m) が再び噴火して溶岩や火山灰が噴出し、数千人が避難を強いられている。 付近の空港は閉鎖され、空の便の欠航が相次いだ。 ルアング火山は 4 月中旬以来、噴火を繰り返している。 4 月 30 日には 3 回の噴火が起きて溶岩や噴煙が噴き上がり、インドネシア火山地質災害対策局 (PVMBG) は警戒レベルを最高に引き上げた。 「火山性物質が海中に崩落」して津波が発生する恐れもあるとして、警戒を呼びかけている。 ロイター通信によると、対岸のタグランダン島では当局が 1 万 2,000 人以上に避難勧告を出した。 国家防災庁 (BNPB) は 5 月 2 日、大勢の人たちが港に集まって避難を待つ写真を公開した。 背後には噴煙を吹き上げる火山が映っている。 (CNN = 5-3-24) 日米比、マニラ周辺の「ルソン経済回廊」整備で一致へ 日本、米国、フィリピンの 3 カ国による初の首脳会談が 11 日、ホワイトハウスで開かれる。 米政府高官によると、主要 7 カ国 (G7) などが主導して途上国のインフラ整備を支援する枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ (PGII)」に基づき、フィリピンの首都マニラや要衝を結ぶ「ルソン経済回廊」を整備することで一致する。 2022 年に PGII が創設されて以降、インド太平洋地域では初の回廊整備支援となる。 22 年に発足したフィリピンのマルコス政権は、南シナ海の領有権問題で中国と対決姿勢を強めている。 フィリピンは日米からの経済支援をてこに、経済・開発分野での中国依存度を引き下げたい狙いがある。 米高官によると、ルソン島にあるスービック湾、クラーク、マニラ、バタンガスを結ぶ地域で、港湾、鉄道、クリーンエネルギー、半導体の供給網(サプライチェーン)関連のインフラを整備する。 米国際開発金融公社が投資促進に向けて、フィリピンに地域事務所を開設する。 またフィリピンの情報インフラを整備するため、オープン無線アクセス・ネットワークの技術普及支援にも乗り出す。 日米比の海上保安機関、海上自衛隊と米比両海軍の協力強化でも合意する。 フィリピンが実効支配する南シナ海のアユンギン礁(英語名・セカンドトーマス礁)では、中国側が比側の拠点への補給活動の妨害を続けており、米国も懸念を強めている。 米軍は 1992 年までにフィリピンから撤退したが、過去にスービック湾に海軍基地、クラークに空軍基地を保有していた経緯があり、今回の支援を通じて重要拠点を整備したい思惑もあるとみられる。 フィリピンは昨年、スービックとクラークを結ぶ鉄道建設計画で、当初予定していた中国からの金融支援を断る方針を決めている。 首脳会談にはバイデン米大統領、岸田文雄首相、マルコス比大統領が出席する。 (ワシントン・秋山信一、mainichi = 4-11-24) ◇ ◇ ◇ 中国をけん制 … 日本・アメリカ・オーストラリア・フィリピンが初の共同訓練 衝突相次ぐ南シナ海で 中国が海洋進出を強める南シナ海で 7 日、フィリピン軍は日本、アメリカ、オーストラリアと初めて 4 カ国で共同訓練を行った。 フィリピン軍によると、今回の訓練は南シナ海のフィリピンの EEZ・排他的経済水域内で行われ、日本からは海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」が参加した。 日本など 4 カ国は、共同訓練を初の「海上協同活動」と位置づけ、隊列を組んだ航行の連携などを確認したという。 中国が海洋進出を強める南シナ海では、3 月もフィリピンの船が中国海警局の船から放水砲を受けてけが人が出るなど、両国の衝突が相次いでいて、共同訓練を通じて中国をけん制する狙いがあるとみられる。 4 月 11 日には日本、アメリカ、フィリピンの 3 カ国首脳会談も予定されている。 (FNN = 4-8-24) ◇ ◇ ◇ 中比、南シナ海で衝突激化 = 習政権「包囲網」に危機感 【北京】 中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海での衝突が、過去 1 カ月間で激しさを増している。 中国の習近平政権は、フィリピンの背後に控える米国の存在にいら立ちを強め、日米比による対中包囲網強化と対抗するため、オーストラリアや欧州との関係改善を急いでいる。 「米国の介入が(南シナ海の)混乱を最もあおっている。」 中国国防省報道官は 3 月 28 日の記者会見で、フィリピンが米国を後ろ盾に「虚偽情報を広めている」と強弁した。 3 月 5 日、フィリピンが実効支配し中国も領有権を主張するアユンギン(中国名・仁愛)礁近くで、中比の船舶が衝突し、比側の乗組員が負傷した。 21 日には中国海警局が、南沙(英語名スプラトリー)諸島の鉄線礁に比側の 34 人が上陸したと非難する声明を発表。 23 日にはアユンギン礁付近で、中国海警船が比船に放水銃を発射し、再び比側に負傷者が出た。 一連の衝突で、米国は同盟国フィリピンを支持し、米比相互防衛条約の発動を示唆して中国をけん制。 3 月 19 日にはブリンケン米国務長官とマルコス比大統領が会談し、「南シナ海における国際法順守」に共同で対処すると強調した。 マルコス氏は、中国と国境紛争を抱えるインドにも接近。 3 月下旬にジャイシャンカル印外相をマニラでもてなし、防衛や海洋分野での協力拡大で合意した。 日米比 3 カ国は 4 月、ワシントンで首脳会談を開く。 フィリピンとの「準同盟」化を視野に入れる日本は、安全保障面での連携強化に前向きで、年内に南シナ海で 3 カ国合同の警戒監視活動を行うとも報じられている。 フィリピンは習政権が統一をもくろむ台湾に近く、南シナ海問題で西側諸国が結束を固めれば、中国による台湾侵攻への抑止力となり得る。 危機感を強める習政権は 3 月下旬、王毅共産党政治局員兼外相を豪州に派遣。 貿易拡大を掲げ、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS (オーカス)」への揺さぶりを図った。 中国商務省は豪州産ワインに課していた高関税の解除も発表した。 習国家主席は 3 月 27 日、対中半導体規制を進めるオランダのルッテ首相と北京で会談。 ルッテ氏から、経済や先端技術分野で中国との「デカップリング(分断)」とは距離を置くとの発言を引き出した。 近くドイツのショルツ首相の訪中のほか、習氏のフランス訪問も取り沙汰されている。 (jiji = 4-1-24) 皆既日食が北米を縦断、4 分間の天体ショーに魅了 太陽が月の陰に完全に隠れる皆既日食が 8 日、北米を縦断して各地で観測された。 最後に観測されたのはカナダの東端に位置するニューファンドランド島で、時刻は現地時間の午後 5 時 16 分だった。 皆既日食は太平洋に面したメキシコ西部のマサトランで始まり、続いて米テキサス州の空が暗くなった。 同地はあいにくの曇り空だったが、雲の合間から息をのむような光景を垣間見ることができた。 米航空宇宙局 (NASA) によると、皆既日食の経路の中央線に位置する地域では、太陽が完全に隠れた状態が 3 分半 - 4 分間続いた。 米大陸では南部のテキサス州から北東部のメーン州にかけ、推定 3,200 万人が住む地域を皆既日食が縦断した。 皆既日食の経路から外れた地域でも、太陽の一部が欠けて見える部分日食の現象が起きた。 太陽が真っ暗になった状態が 4 分間続いたテキサス州フレデリックスバーグでは、集まった人たちから感嘆の声が上がった。 月に隠れた太陽が光の輪のように見える金環日食となった瞬間もあった。 皆既日食の経路上に位置するオハイオ州クリーブランドの NASA グレン研究センターには、ビル・ネルソン NASA 長官や宇宙飛行士のスティーブ・ボーウェンさん、さらにはスヌーピーなども、全員が日食グラスをかけた姿で集まった。 米国で次に皆既日食が起きるのは、米アラスカ州の 2033 年 3 月 30 日。 続いて 44 年 8 月 22 日にノースダコタ州とモンタナ州およびカナダ北部で観測され、45 年 3 月 12 日には西部のカリフォルニア州から東部のフロリダ州にかけて米大陸南部を横断する。 (CNN = 4-9-24) |