日本と EU 半導体やレアアースの調達で協力 「脱中国」念頭に 日本と欧州連合 (EU) は 2 日、経済分野の課題を話し合う閣僚級の会合を開き、半導体や重要鉱物などの戦略物資の調達で協力することで合意した。 これらの分野で攻勢を強める中国を念頭に、特定の国に依存しない供給網(サプライチェーン)の構築をめざす。 パリで開かれた「ハイレベル経済対話」に、上川陽子外相と斎藤健経済産業相、EU の担当幹部が出席し、この日、共同声明をとりまとめた。 声明では、特定の国が巨額の補助金で戦略物資の生産能力を高め、市場をゆがめていると指摘。 こうした状況を「武器」として利用されることに懸念を示し、「より透明、強靱で持続可能なサプライチェーンを構築する」と表明した。 名指しはしなかったが、中国が電気自動車 (EV) などの生産に欠かせないレアアース(希土類)といった戦略物資を、外交カードにしていることを踏まえたとみられる。 日本は経済安全保障の分野で「仲間づくり」を急ぐ。 4 月 10 日には米国との間で、半導体や重要鉱物などの供給で協力すると確認。 5 月 1 日にはフランスとも重要鉱物の供給網構築で合意した。 レアアースなどの確保に向けて、資源国への支援も検討する。 EU も重要資源や先端技術について中国への依存を減らす「デリスキング(脱リスク)」を打ち出している。 EU の行政を担う欧州委員会は昨年 10 月、中国製の EV が、中国政府からの補助金で不当に安くなっていないか調査した。 一方、各国が包囲網を強めるほど、中国が対抗して輸出規制などに踏み切る可能性がある。 野村総合研究所の木内登英氏は「中国が反発して半導体や太陽光パネルの原材料を規制すれば、(それらを使う)日本企業にとって打撃になる」と指摘する。 (長橋亮文、asahi = 5-3-24)
米政府が ASML に中国向けサービス業務打ち切り要請へ = 関係者 [ワシントン] バイデン米政権は来週、オランダの半導体装置メーカー最大手 ASML に対して、中国での製造装置向けの保守点検などのサービス業務を打ち切るよう要請する方針だ。 事情に詳しい 2 人の関係者が明らかにした。 関係者の話では、エステベス米商務次官(産業安全保障担当)が 8 日にオランダ政府当局者や ASML 幹部と面会し、こうしたサービス契約を巡る問題を話し合う。 協議の中では、米国側がオランダの半導体製造装置の出荷を制限する中国の半導体工場のリストの追加を求める可能性もあるという。 オランダ外務省は、エステベス氏と会談を行うことは認めたが、議題は明らかにしていない。 「オランダは常にパートナーと有意義な議論を行っている。 8 日もその一例だ。」とだけコメントした。 今回の動きは、米政府が中国の先端半導体生産能力をさらに抑え込もうとする取り組みの一環。 背景としては昨年、米国が中国向け先端半導体技術輸出の規制を進めていたにもかかわらず、中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)が国産とうたった先端半導体を搭載した最新スマートフォンを発表し、世界を驚かせた出来事が挙げられる。 ただ大型で高価な半導体製造装置は定期的な保守点検が欠かせない以上、ASML の中国でのサービス業務が打ち切られれば、中国にとっては打撃になるとみられている。 ASML の売上高に占める中国の比率は昨年 29% と、台湾に次いで大きかった。 (Karen Freifeld、Alexandra Alper Toby Sterling、Reuters = 4-5-24) 三井物産、EV 100 万台分のリチウム確保 ブラジルの鉱山で 三井物産は 28 日、電気自動車 (EV) 100 万台分の電池生産をまかなうのに必要なリチウム精鉱を確保したと発表した。 精製は当面、中国で進めるとみられるが、同国以外での精製も検討する。 重要物資の安定供給の確保につなげる考えだ。 ブラジル南東部のミナスジェライス州でリチウム鉱山の開発を進める米アトラスリチウム社に 3 千万ドル(約 45 億円)を投じて、約 12% の株式を取得する。同時に、2024 年内を見込む生産開始から 5 年あまりで計 31.5 万トンを取り扱う契約を結んだ。 内外の自動車や蓄電池メーカー向けに販売するという。 リチウムの需要は、EV をはじめとする社会の電化にあわせて拡大が続くと見られている。 国別の産出量はオーストラリアやチリが多いものの、今回のネベス鉱山の精鉱は品質が良く、産地の状況などから操業コストが抑えられて競争力があるという。 経済安全保障の確立にも貢献できるプロジェクトだが、リチウム鉱石からの精製工程は中国に集中している。 三井物産は将来的に、精製分野への参画も検討する考えだ。 リチウムの確保に向けては、日本の商社では豊田通商や三菱商事も開発や精製に参画している。 (青田秀樹、asahi = 3-28-24) 次期スパコン「性能、富岳の 5 倍以上」 専門委了承、30 年にも整備 計算速度で世界 1 位を達成した「富岳」に続く次世代の旗艦スーパーコンピューターについて、文部科学省の専門委員会は 19 日、富岳の 5 - 10 倍以上の計算能力をめざすとする報告書の中間とりまとめ案を大筋で了承した。 急速に発展する AI (人工知能)の計算能力も世界最高水準を目標とし、遅くとも 2030 年ごろの運転開始を目指すと明記。 一方で実用性を高めるため「計算速度のみを追求しない」との方針案も了承された。 理化学研究所と富士通が開発した富岳は 20 年 6 月に計算速度のランキング「TOP500」で世界一となり、現在も 4 位を維持している。 一方で文科省の別の専門部会は 21 年、バイオや防災などのシミュレーションを含む研究の計算基盤や、その開発力を自国で持つ必要性から今後も「世界最高水準のスパコンが必要」との意見をまとめていた。 その上で 19 日の委員会では、次の主力計算機について、「富岳の 5 - 10 倍以上の計算能力、AI 性能では運用開始時点で世界最高水準を目標とすべきだ」との報告書案を了承した。 次期スパコンも理研を開発主体の候補として実現可能性についての聞き取りが行われることが決まった。 報告書は今夏までに最終的にとりまとめられた上で、文科省が開発に向けた予算要求などを始める見通し。 文科省によると、富岳の開発には国費で約 1,100 億円を要したとしている。 (竹野内崇宏、asahi = 3-20-24) 水素燃料電池のクレーン稼働へ = 世界初、米 LA 港で実証 - 三井 E & S 【ニューヨーク】 港湾設備などを手掛ける三井 E & S と米子会社のパセコは、米カリフォルニア州のロサンゼルス港で水素燃料電池を搭載したクレーンの実証を近く始める。 ディーゼルの代わりに水素を用いることで、稼働に伴う温室効果ガス排出量をゼロにする。 世界初の取り組みといい、将来的に国内外での普及を目指す。 港でコンテナを整理するために使われる門型のクレーンが対象。 水素と空気中の酸素を反応させて発電し、動力源にする。 大分市の工場で製造した 1 台をロサンゼルス港に搬入済みで、今後 4 年間の実証を通じて港湾関係者らにアピールする。 (jiji = 3-3-24) TSMC 熊本、年内稼働へ = 台湾半導体が開所式、第 2 工場支援決定 半導体の受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造 (TSMC) は 24 日、熊本県菊陽町に昨年末完成した日本国内初の工場の開所式を行った。 新工場は今年末までに稼働し、スマートフォンや自動車向けの半導体を生産する。 TSMC は熊本県内に第 2 工場を建設する計画で、経済産業省は同日、最大で 7,320 億円の補助を決定。 第 1 工場と合わせて 1 兆 2,000 億円規模の財政支援により、経済安全保障上の重要物資と位置付ける半導体の国内生産を後押しする。 開所式で、TSMC 創業者の張忠謀氏は第 1 工場について、「半導体製造の日本のルネサンスになる」と期待を表明。 ビデオメッセージを寄せた岸田文雄首相も「わが国の半導体産業、ユーザー産業の双方にとって大きな一歩だ」と述べた。 式典後に取材に応じた斎藤健経産相は「世界では半導体製造能力の確保に向けた大競争時代を迎えている」と述べ、政府による巨額支援の必要性を強調した。 (jiji = 2-24-24) ◇ ◇ ◇ TSMC が第 2 工場建設を発表 トヨタも出資、2027 年稼働へ 半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造 (TSMC) は 6 日、日本国内で二つ目の工場を熊本県内に建設すると正式に発表した。 トヨタ自動車も新たに出資し、2027 年末までの稼働をめざす。 TSMC によると、第 2 工場は今年末までに建設を始める。 場所の詳細については「熊本県の中で場所を検討している(広報)」とするにとどめた。 第 1 工場とあわせ、技術者など 3,400 人以上の雇用が生まれるという。 トヨタは工場を運営する TSMC の子会社に新たに出資する。 デンソーとソニーグループも追加で出資する方針で、比率はTSMC 86.5%、ソニー 6%、デンソー 5.5%、トヨタ 2% となる。 投資額は第 1 工場と合わせて 200 億ドル(約 2 兆 9 千億円)を超える見込みで、「日本政府からの強力な支援を受ける前提で検討している」としている。 第 1 工場は今月、開所式を行い、今年 10 - 12 月期には量産を始める予定だ。 両工場には、日本政府が計 1 兆円超の補助金を投じる。 1 月の決算会見で、劉徳音会長は「第 2 工場の建設を真剣に検討している。 日本政府は非常に協力的で、協議中だ。」と語っていた。 (杉山歩、asahi = 2-6-24) ◇ ◇ ◇ TSMC、第 2 工場も熊本・菊陽町に建設 2 月発表か 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造 (TSMC) が熊本県に建設を検討中の第 2 工場に関し、第 1 工場と同じ菊陽町とすることが 28 日、分かった。 菊陽町を含む熊本 3 区を地盤とする坂本哲志農相が同日、地元首長や県議を集めた会合で明らかにした。 TSMC が 2 月に正式発表するという。 第 1 工場の建屋は既に完成し、2 月 24 日に開所式を開く。 第 2 工場は、第 1 工場の近くに立地するとみられる。 第 2 工場では、第 1 工場よりも先端品となる回路線幅 7 ナノメートル(ナノは 10 億分の 1)相当の製品などを生産する見通しだ。 劉徳音董事長(会長)は 1 月 18 日、第 2 工場建設について日本政府と協議中だと説明しており、政府による補助額などが固まった可能性がある。 TSMC の子会社、JASM は第 1 工場に約 86 億ドル(現在の為替レートで約 1 兆 2,700 億円)を投資。 このうち政府は最大 4,760 億円を助成する。 JASM にはソニーグループとデンソーも出資している。 第 2 工場の投資額は第 1 工場に比べ大きくなる可能性が高い。 (kyodo = 1-28-24) ◇ ◇ ◇ TSMC 工場建屋が完成、熊本 開所式 2 月 24 日で調整 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造 (TSMC) は 5 日、熊本県菊陽町に建設していた国内初工場の建屋が 2023 年末に完成したと明らかにした。 製造装置の搬入を始めており、生産ラインの立ち上げ準備を進める。 24 年末に製品を出荷する予定。 関係者によると、2 月 24 日に開所式を行う方向で調整している。 工場を運営する TSMC 子会社の JASM は 22 年 4 月に建設を開始。 24 時間体制の急ピッチ工事により、23 年 8 月にはオフィス棟の一部で運用を始めた。 工事が完了した工場棟は地下2 階地上 4 階建て。 半導体生産に必須のクリーンルームの延べ床面積は約 4 万 5 千平方メートルに及ぶ。 (kyodo = 1-5-24) 経営再建のルネサス復配、前身の NEC エレクトロニクス以来 19 年ぶり 半導体大手ルネサスエレクトロニクスは 8 日、2023 年 12 月期に 19 年ぶりとなる株主への配当を実施すると発表した。 1 株当たり 28 円とする。 合理化による経営再建が進み、安定的な収益力を確保できたとして、復配に踏み切る。 株主への配当は、前身の NEC エレクトロニクスが 05 年 3 月期に実施して以来となる。 柴田英利社長は「配当は安定的に慎重に上げていきたい」と述べた。 同日発表した 23 年 12 月期連結決算(国際会計基準)は、最終利益が前期比 31.4% 増の 3,370 億円となり、過去最高だった。 売上収益は 2.1% 減の 1 兆 4,694 億円となった。 ルネサスはリーマン・ショック後の市況悪化を受け、NEC エレクトロニクスが日立製作所と三菱電機の半導体統合会社と合併し、10 年に発足した。 その後も業績の低迷は続き、13 年に官民ファンドの INCJ (旧産業革新機構)の傘下に入り、工場の集約や人員削減による合理化で経営再建を進めてきた。 (yomiuri = 2-8-24) 経団連会長企業の住友化学が巨額赤字に転落 … 石油化学と住友ファーマの医薬品が大苦戦 双子の赤字 - - が経団連会長会社で総合化学大手の住友化学を「ちょっとした瀬戸際(業界筋)」に追い詰めている。 本業の石油化学事業と上場子会社・住友ファーマを核に展開する医薬品事業が大苦戦。 先週末には業績予想の下方修正を迫られ 2024 年 3 月期の最終損益は 2,450 億円の巨額赤字(国際会計基準、前期は 69 億円の黒字)に転落する。 「創業以来の危機的状況(岩田圭一社長)」だ。 業績減額修正は昨年 11 月に続いて今期 2 回目。 最終赤字幅はその際の修正値 950 億円から一段と膨れ上がり、過去最悪となる。 さらに住友ファーマでは収益計画の下振れに伴い今後、バランスシートに計上されている無形資産(23 年末で 3,323 億円)やのれん(同 2,224 億円)の減損テストを実施予定。減損が認識されれば赤字額は再膨張する恐れもある。 (重道武司、日刊ゲンダイ = 2-8-24) キオクシア・WD 次世代半導体に 1,500 億円助成 三重と岩手の工場 経済産業省は 6 日、半導体大手キオクシアなどによる次世代半導体の生産に最大約 1,500 億円を助成すると発表した。 過去に助成を決めたが半導体不況で滞っていた計画にも、最大約 929 億円の助成を再認定。 スマートフォンやパソコンの記憶媒体として使われる半導体メモリーの生産基盤強化を進める。 キオクシアと、協業先である米ウエスタンデジタル (WD) との合弁会社は三重県四日市市と岩手県北上市の工場で最先端半導体「3 次元フラッシュメモリー」の生産計画を進めており、この投資に国が最大 3 分の 1 を助成する。 経産省は 2022 年にも四日市工場への投資に助成を決めたが、半導体メモリーの市況悪化を受けて計画は停滞。 今回決定した計 2,429 億円分の助成のうち 929 億円分は、対象をより先端の次世代半導体に変更して改めて認定した。 (asahi = 2-6-24) 電子部品振るわず 5 社減益 1 社赤字、家電向け低調 電子部品大手 7 社の 2023 年 4 - 12 月期連結決算が 2 日、出そろった。産業機器や家電向けの需要が低調で村田製作所など 5 社の純利益が前年同期比で減少した。 アルプスアルパインは赤字に転落。 売上高も 5 社が減収だった。 モーター大手ニデック(旧日本電産)は増収増益を確保した。 村田製はゲーム機や産業機器向けの販売が減少し、純利益は前年同期比 18.0% 減の 1,750 億円だった。 村田恒夫会長は需要減少が続いていたスマホ市場の「底は打った」と回復に期待を示した。 TDK はデータセンター向けの需要が大幅に減少し12.7%減の1194億円。京セラは半導体関連の販売が落ち、23.9%減の903億円。 (kyodo = 2-2-24) 韓国サムスン電子、23 年の営業利益は 85% 減 半導体部門が赤字に 韓国のサムスン電子が 31 日に発表した 2023 年 12 月期の通期決算は、本業のもうけを示す営業利益が 6 兆 5,700 億ウォン(約 7,300 億円)で、前年より約 85% 減った。 主力の半導体部門が市況の悪化で赤字になったことが響き、2008 年 12 月期以来の低い利益水準となった。 サムスン電子によると、半導体部門の営業損益は 14 兆 8,800 億ウォンの赤字。 前年は 23 兆 8,200 億ウォンの黒字だった。 四半期ごとでみると同部門は直近の 10 - 12 月期も赤字だったが、直前の 7 - 9 月期より赤字幅は縮小。 同社は、パソコンやスマートフォン向けの半導体メモリーなどの需要は回復基調にあるとしている。 23 年 12 月期の全体の売上高は 14% 減の 258 兆 9,400 億ウォン。 純利益は 15 兆 4,900 億ウォンだった。 (ソウル・稲田清英、asahi = 1-31-24) 次世代の「光半導体」開発、経産省が最大 452 億円支援 … NTT ・アイオン構想の中核技術 経済産業省は 30 日、NTT が主導する光技術を使った次世代半導体の研究開発に最大 452 億円を支援すると正式に発表した。 光半導体は、NTT が掲げる次世代通信基盤「IOWN (アイオン)」の中核となる技術の一つで、NTT は政府の後押しをふまえて開発を加速させる考えだ。 支援を受ける 3 件の事業では、NTT は 2029 年までに、パソコンやスマートフォンなどの中央演算装置 (CPU) やメモリを光でつなぐ部品などの研究開発を行う。 半導体大手キオクシアや NEC、富士通、古河電気工業、新光電気工業など国内 7 社も参加する。 光半導体は、実現すれば電力消費の大幅な抑制につながるとされる。 斎藤経産相は同日の閣議後記者会見で、「情報伝達の高速化や低消費電力化による将来のゲームチェンジにつながる」と述べ、日本の半導体産業の復権に期待を示した。 NTT のアイオン構想では、通信回線や半導体の信号処理を電子から光に置き換え、低遅延で大容量の通信や情報処理を目指す。 今回の事業は、2032 年頃の実現を目指す光半導体に向けた関連技術の研究で、米インテルなど海外勢との連携も視野に入れている。 (yomiuri = 1-30-24) ニデック、中国で EV 駆動装置苦戦 「価格がぼんぼん下落」と永守会長 [東京] ニデック(旧日本電産)は 24 日、2024 年 3 月期の連結営業利益(国際会計基準)予想を前年比 80.1% 増の 1,800 億円に下方修正した。 従来予想の 2,200 億円から 18.2% 引き下げた。中国で電気自動車 (EV) の価格競争が激化している影響を受け、駆動装置事業で構造改革費用を計上する。 成長領域としてきた同事業を再スタートしたい考え。 永守重信・会長兼最高経営責任者 (CEO) は苦戦する中国市場について、モーターと減速機、インバーターを一体化した EV 向け駆動装置「イーアクスル」の「価格がぼんぼん落ちて、想定と全然違う水準になってしまった」と説明。 「50 年間の会社経営の中で、競争相手もお客さんも全部赤字なんて事業は初めて」と語った。 下方修正後の営業利益見通しは、IBES がまとめたアナリスト 18 人の予想平均値 2,196 億円を下回った。 ニデックは今年度、イーアスクルの販売台数見通しを 2 回引き下げていた。 2 度目の下方修正となった昨年 10 月の前回決算公表時、収益性重視の姿勢を明確にして車載事業の戦略方針を転換した。 それに伴い、今回の決算発表では在庫の減損処理など一時費用として通期業績見通しに 450 億円を織り込んだ。 ニデックが新たに公表したイーアクスル事業の来年度業績見通しによると、上期まで赤字が続き、10 - 12 月期に黒字転換、25 年 1 - 3 月期に 45 億円の営業利益を計上する。 米クライスラーなどを傘下に抱える欧州自動車大手ステランティスとの合弁会社の販売が伸びる上、国内自動車メーカーからの受注も寄与すると見込む。 永守会長は保守的な見通しとする一方、「いったん信用を落としているので、今は何を言っても信用できないという人が多い」と語り、結果で証明する姿勢を示した。 同時に公表した 23 年 4 - 12 月期の連結業績は、営業利益が前年同期比 36.1% 増の 1,693 億円で同期間で過去最高を更新した。 産業用モーターがけん引した。 株主還元を拡充し、発行済株式数の 0.34% に当たる 200 万株、総額 110 億円を上限とする自社株買いを決議。 年間配当予想を 1 株 75 円とし、従来予想から 5 円上積みした。 永守会長は、かねてから同社の問題になっている自身の後継者について、来月新たな人事を公表することも明かにした。 ニデックは現在 5 人いる副社長の中から 4 月に次期社長が就任し、小部博志社長が会長兼 CEO に就く方針を発表していた。 永守会長は退任後、M & A (企業の合併・買収)に専念するという。 (Miho Uranaka、Reuters = 1-25-24) 能登半島地震、電機業界のサプライチェーンに甚大影響も 北陸は電子機器産業の重要地 新年を迎えて早々、石川県能登地方を中心に最大震度 7 をはじめとする地震が断続的に北陸を襲った。 世界各国のメディアも速報。 被害が拡大する中、被災地への心配や無事を祈る声が広がっている。 経済や産業面でも、「電子機器のサプライチェーンへの大きな影響を懸念している(台湾の電子機器受託製造企業幹部)」との指摘がある。 北陸には液晶パネルを生産するジャパンディスプレイ (JDI) の石川工場、東芝の半導体製造拠点や Kokusai Electirc の半導体製造装置の生産工場がある。 電源大手のサンケン電気も石川県に国内最大のパワー半導体製造拠点がある。 ほぼすべての電子機器に使われるのが積層セラミックコンデンサー (MLCC) という電子部品だ。 世界シェア約 4 割を持つ電子部品大手の村田製作所では MLCC の主力工場の 1 つが福井県に所在している。 同社では、ほかにも電子部品の生産拠点が石川県や富山県にあり、影響の大きさが懸念される。 村田製作所広報は「工場は正月休みだったため、稼働はしていなかった。 設備への被害状況は従業員の安全確保を優先しながら、確認中である」と回答した。 実際、多くの企業では正月休みで従業員もほとんどいなかったことから、1 月 1 日時点では生産設備への被害状況や事業への影響はまだ不明である。 JDI 広報は「石川工場、鳥取工場とも生産現場は稼働していなかった。 従業員の 8 割から影響なしとの連絡がある。 一部従業員が避難しており予断を許さない状況。」と説明。 東芝も「状況を確認中」だ。 石川県にモーターの生産拠点などを持つパナソニック ホールディングスは地震発生から 1 時間半後の状況として、石川県、福井県、富山県、新潟県で勤務・居住する従業員の 94% の安全確認が完了したと回答。 物的被害についても「現時点では当社拠点の被害情報の報告はない」とした。 Kokusai Electric は「社内で確認してもらっている最中だが、今のところ現場から(大きな混乱があるなどの)情報は入ってきていない」と答えた。 生産設備への影響を心配する声も ある電子部品企業の首脳は「揺れの規模を考えれば、生産設備への影響は大きいだろう。 社内には危機対応チームの編成を指示し、従業員の安全を十分に確保してから影響を精査し、顧客へ速やかに説明していきたい」と明かした。 地震はなお相次いでいる。 気象庁も、今後 1 週間程度は大きな地震が続く恐れがあり、とくに今後 2 - 3 日は最大震度 7 程度の地震に注意するよう呼びかけている。 企業としては従業員の安全確保が最優先である。 事業やサプライチェーンへの影響が判明するまで時間がかかるだろう。 エレクトロニクス産業の関係者からは注目が集まる地域の 1 つでもあり、懸念の声が相次ぎそうだ。 (劉 彦甫/石阪 友貴/梅垣 勇人、東洋経済 = 1-2-24) 国と東京都に約 1.6 億円の賠償命令 「大川原化工機」国賠訴訟 生物兵器の製造に転用できる機器を無許可で輸出したとして逮捕、起訴され、その後起訴が取り消された「大川原化工機(横浜市)」の社長らが、東京都と国に計約 5 億 7 千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が 27 日、東京地裁(桃崎剛裁判長)であった。 判決は「必要な捜査を尽くさなかった」として、警視庁の逮捕、東京地検の起訴を違法と認め、都と国に計約 1 億 6 千万円の賠償を命じた。 警察の逮捕に加え、検察官の起訴を違法とした判決は極めて異例だ。 警視庁公安部は 2020 年 3 月、同社の「噴霧乾燥機」は軍事転用可能で、輸出規制の対象なのに国の許可を得ずに輸出したとして、外国為替及び外国貿易法違反の容疑で大川原正明社長ら 3 人を逮捕した。 東京地検が同月に起訴したが、21 年 7 月、輸出規制の要件の一つである殺菌性能を同社の機器が満たすと立証できないとして起訴を取り消した。 この間に逮捕、勾留されていた同社顧問の相嶋静夫さんは胃がんが悪化し、72 歳で亡くなった。 判決は、公安部の逮捕前の任意聴取で、機器の設計担当だった相嶋さんら複数の従業員が、機器には殺菌に必要な温度に達しない箇所があると具体的に説明しており、その確認は「犯罪の成否を見極める上で、当然に必要な捜査だった」と指摘。 実験をしていれば殺菌できないことは容易に明らかになったのに、これをせずに逮捕したことは違法だった、と認定した。 地検の検察官も、起訴前に同様の報告を受けており、確認していれば要件に該当しないことは「容易に把握できた」と指摘。 勾留請求や起訴が違法だったと判断した。 また、公安部の警部補が元役員に対し、殺菌要件の解釈をあえて誤解させた上で供述調書に署名押印させたとし、「偽計を用いた取り調べだ」として、違法性を認めた。 訴訟では今年 6 月、証人として出廷した現役の公安部の警部補が、事件について「まあ、捏造ですね」と証言。 別の警部補も「捜査幹部がマイナス証拠を全て取り上げない姿勢があった」などと述べていた。 (金子和史、asahi = 12-27-23) 東芝、コバルト不使用の電池を開発 - 28 年の実用化目指す 東芝は 28 日、レアメタルの一種であるコバルトを含まない 5 ボルト級高電位正極材料を使った新たなリチウムイオン二次電池を開発したと発表した。 2028 年の実用化を目指す。 発表によると、新電池は 3V 以上の高電圧や 5 分間で 80% の急速充電性能などを実証した。 課題だった電解液の分解時のガスの発生も、電極の構成部材を改良することで副反応を大幅に低減した。 電池の応用先としては電動工具や産業機器など小型から始め、将来的には車載用途への展開を目指す。 世界的に電気自動車 (EV) シフトが進む中、主要部品である電池にも製造過程で環境や人権などへの配慮が求められるようになっている。 コバルトは最大産出国のコンゴで採掘時の児童労働などの問題も指摘される。 パナソニックホールディングスもコバルトを含まない電池の技術開発にめどが付いているという。 (古川有希、Bloomberg = 11-28-23) 東大で IBM 製 127 量子ビット量子コンピュータが稼働開始 東京大学と日本 IBM は 11 月 27 日、127 量子ビットのプロセッサ「Eagle」を搭載した量子コンピュータ「IBM Quantum System One with Eagle プロセッサー」の稼働を始めたと発表した。 従来のスーパーコンピュータでは不可能だった大規模で複雑な計算が可能になるとしている。 2021 年には IBM 製 27 量子ビットの量子コンピュータを日本で初めて設置しており、今回のマシンは量子ビット数が以前に比べ約 4.7 倍に。 23 年 6 月には米 IBM とカリフォルニア大学バークレー校が科学誌「Nature」で、100 を超える量子ビットの規模であれば量子コンピュータが従来のコンピュータによる計算を超える結果を導けると発表した。 東大の相原博昭副学長は、127 量子ビットマシンの設置について「北米以外では初」として、日本の量子関連技術の研究を各分野で進めるとした。 (ITmedia = 11-28-23) 宇宙から超高エネルギー粒子が飛来 発生源は不明「存在自体が謎」 宇宙から降り注ぐ、極端にエネルギーの高い粒子(宇宙線)を日米などの研究グループが米ユタ州で検出した。 32 年前に検出した過去最高エネルギーの「オーマイゴッド粒子」に匹敵する。 ただ、発生源や加速される仕組みは不明。 謎の粒子は「アマテラス粒子」と名付けられた。 日米韓などからなる「テレスコープアレイ実験」の国際研究グループが 23 日、論文を米科学誌 サイエンス に発表した。 装置全体の面積は琵琶湖と同じ 地球には、宇宙のかなたから高エネルギーの粒子が宇宙線として降り注いでいる。 中でも、桁違いに高い「超高エネルギー宇宙線」は、人類が加速器で作れるエネルギーの 1 千万倍に達する。 ただ、1 平方キロの面積に 1 世紀に 1 個ほどしか飛来しない。 「テレスコープアレイ実験」は、ユタ州の荒野に琵琶湖と同じ広さ(700 平方キロ)に並べた 507 台の検出器や望遠鏡で粒子の到来を待ち構える。 研究グループは 2021 年 5 月 27 日未明、宇宙線が地球の大気とぶつかって生み出す大量の粒子を観測した。 23 台の検出器がほぼ同時に信号を記録。 計算により、244 エクサ電子ボルト(エクサは 100 京)のエネルギーを持つ宇宙線の粒子 1 個が、南西の方角から飛んできたと判明した。 エネルギーの高さは、1991 年に米国で検出され、驚かれたオーマイゴッド粒子(320 エクサ電子ボルト)に次ぐ。感度のいい最新の装置では、最大エネルギーの検出例となった。 244 エクサ電子ボルトを例えると 蛍光灯が放つ光のエネルギーは約 2 電子ボルト。 今回の粒子はその 100000000000000000000 倍(10 の 20 乗倍)の桁違いのエネルギーを持つことになる。 粒子が到来したのは明け方。 信号の発見者が日本人だったこともあり、日本神話に登場する太陽神の名からアマテラス(天照)粒子と名付けた。 「宇宙の『未知』を教えてくれる神秘的で謎に満ちた粒子です」と、発見者である大阪公立大の藤井俊博准教授(宇宙物理学)は語る。 飛来してきたのは天の川銀河の外から。 ただ飛来方向は、銀河がほとんど存在しないスカスカの空洞エリアだった。 星形成が活発な銀河はあまりないという。 一体どこからやってきたのか 理論上、超高エネルギーの宇宙線は、宇宙誕生の大爆発(ビッグバン)の名残である電波に邪魔されて、1.5 億光年より長い距離を進むことができない。 1.5 億光年は、137 億光年以上離れた宇宙の中では「近所」だが、観測しやすい近場には発生源が見つからなかったのだ。 重い星の爆発、光では見えない未知の天体、宇宙に充満する暗黒物質の崩壊、宇宙誕生時にできた「宇宙ひも」など様々な発生源が考えられている。 研究グループは過去 15 年以上の観測で、超高エネルギーの粒子を、アマテラス粒子を含めて計 31 個検出しているが、いずれも発生源の特定には至っていないという。 オーマイゴッド粒子も同様だ。 藤井さんは「アマテラス粒子は、我々が考えつかないような謎を解明する道しるべになるかもしれない。 最初は発生源が分からずガッカリしたが、今は新たな謎にワクワクしている。」と話した。 「何か」が存在するのは間違いない。 ☆ 東京大カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉・特別教授は「私たちの銀河系の近くに、粒子をものすごく速く加速する『何か』が存在するのは間違いない。 普通の天体などではないだろう。 存在自体が大きな謎で、現代物理学の標準理論を超えた現象かもしれない。 まずは粒子の正体を明かし、発生源を絞り込むことが重要だ。」と話した。 (石倉徹也、asahi = 11-24-23) 大衡の半導体工場「来年後半の着工めざす」 準備会社、県・村と協定 宮城県大衡村に建設が予定される半導体製造工場を巡り、SBI ホールディングス (HD) と台湾の半導体受託生産メーカー「力晶積成電子製造 (PSMC)」が出資する準備会社「JSMC」と県、同村は 14 日、新工場の立地に向けた協定を結んだ。 新工場の着工時期について JSMC はこの日、2024 年後半をめざす考えを示した。 工場の建設予定地は大衡村の「第二仙台北部中核工業団地」。 総投資額は 8 千億円を超える見通しで、政府からの一定の補助金を見込む。 工場は 27 年に稼働を始め、自動車や産業機器向けの半導体を製造する予定だ。 本格稼働後は、台湾から来日する技術者などを含めて従業員は約 1,200 人になる。 この日、県庁での協定締結式に出席した JSMC の呉元雄代表は会見で、宮城を選んだ理由について「東北大学など優秀な大学がある。 東北は半導体企業にとって人材が集まるいいところだ」などと説明。 今後政府や企業、大学などと連携し、人材育成も進めていく意向を語った。 工場の着工時期について呉代表は「できれば来年の後半に着工したい」とし、本格稼働後の売上高は年間 1,500 億 - 2 千億円になる見通しだとも語った。 この日結んだ協定は、工場の立地に向けて土地取得やインフラ整備などで 3 者が協力する内容。 村井嘉浩知事は「東北大学や高専などで育った技術者がどんどん県外、東北から出て行っていた。 東北で育った技術者を養っていける環境を作りたかった」、大衡村の小川ひろみ村長は「村の活性化に必ずつながっていく」と期待を語った。(中島嘉克) ☆ 半導体工場の建設計画を受け、SBI グループと資本業務提携の関係にある仙台銀行(仙台市)は 14 日、同日付で「みやぎ半導体プロジェクトチーム (PT)」を設置したと発表した。 半導体工場の建設資金への対応やサプライヤーとして参入をめざす地元企業への支援などを進めるという。 PT の体制は 6 人で、うち 1 人は SBI 側がオブザーバーとして参加する。 この日、同市内で会見した鈴木隆頭取は半導体工場の建設計画について「非常に喜ばしいことだ。 宮城県の経済にとって間違いなくプラスになる」と話した。 (asahi = 11-15-23) ◇ ◇ ◇ 宮城に半導体工場、SBI と台湾 PSMC が調整 26 年稼働を目指す SBI ホールディングス (HD) と世界有数の半導体受託生産メーカーである台湾の PSMC が、宮城県に共同で半導体工場を建設する方向で調整に入ったことがわかった。 2 期にわたって建設し、1 期目は約 4 千億円をかけ、2026 年の稼働を目指すという。 SBI 関係者への取材で分かった。 両社は今年 7 月、半導体工場建設に向けて準備会社を設立することで合意し、立地の選定などを進めていた。 主に自動車向けの半導体を製造するという。 2 期目を含めた総投資額は約 8 千億円にのぼるとみられる。 政府も半導体産業を強化しようとしている。 経済産業省は、半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造 (TSMC) が熊本に建設中の工場に、最大 4,760 億円を補助する。 岸田政権が月内にとりまとめる経済対策でも、半導体支援に使う基金の予算計 3.4 兆円を要求している。 (東谷晃平、asahi = 10-28-23) 半導体装置大手ディスコ、広島・呉に新工場 経済効果に地元期待 広島県呉市創業の半導体製造装置メーカー大手「ディスコ(東京)」が市内に新工場を建設する。 市によると、少なくとも 2 千人の雇用と年間 1,500 億円の出荷額が見込まれる。 市では 9 月末に日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区(日鉄呉)が事業を停止したばかりで、経済効果に期待の声が上がる。 新工場は、廃止予定の市総合スポーツセンター(郷原町地区)の跡地に建てられる。 市は 13 日の臨時議会に、土地と建物をディスコに 25 億 1,095 万円で売る議案と、センターを廃止する条例改正案を提出し、賛成多数で可決された。 センターをめぐっては市が昨年、施設の老朽化やアクセス面の課題を理由に移転・再配置する方針を表明。 敷地は産業団地として買い手を募り、唯一手を挙げたディスコと今年 3 月に立地協定を結んでいた。 ディスコはスマホなどの製造に欠かせない半導体の素材を切断する装置などを手がけ、装置によっては「世界シェアの 7 - 8 割を占める(同社広報室)」という。 1937 年創業で、市内にはすでに主力工場をはじめ 2 工場があるほか、長野県にも工場がある。 日鉄呉の事業が停止したばかりとあって、新工場の経済効果に地元財界からは期待が高まる。 呉商工会議所の若本祐昭会頭は「雇用面など地元経済にとっては非常にありがたい。 工場の建設、運営などに、様々な業種がそろう地場企業を活用してほしい。」と語る。 (興野優平、asahi = 11-14-23) 防衛費増で受注増、前年比 5 倍のメーカーも 重工・電機「想定以上」 ミサイルやレーダーなどを手がける大手重工・電機メーカー各社が、防衛事業の受注を伸ばしている。 政府は昨年、2027 年度までの 5 年間の防衛費の総額を、これまでの 1.5 倍となる 43 兆円に増額する方針を決定。 岸田政権が防衛政策を転換し、メーカーの利益水準を改善するなど支援を本格化させたことで、各企業の業績にも影響が出始めている。
三菱重工業の泉沢清次社長は、6 日にあった中間決算の説明会で語った。 上半期の航空・防衛・宇宙事業の受注高は、前年と比べて約 5 倍の 9,994 億円と過去最高になった。 長射程のスタンド・オフ・ミサイル関連の開発で 4 月に防衛省と契約を結んだことなどが要因となった。 通期の見通しも 8 千億円上方修正し、ほとんどが防衛事業の伸びによるものだという。 川崎重工業も防衛事業の 23 年度の受注高の見通しが 4,600 億円程度となり、前年より 2 千億円増える。 防衛事業の売上高も前年から約 400 億円増え、2,800 億円強となる見込みだ。 NEC も、防衛と航空宇宙領域を合わせた事業の上半期の受注高が前年比で 40% 増えた。 主に防衛領域が好調だったことが要因といい、藤川修取締役は「かなり大きな数字の受注が来ている」と語った。 装備品の受注増に伴い、人員や設備投資を増やす動きも進む。 三菱電機は 5 月、防衛・宇宙事業の人員を 1 千人増員し、約 700 億円の設備投資を実施すると発表した。 10 月には、レーダーなどを製造する工場に新たな製造棟を建てる計画も明らかにした。 三菱重工も急増する受注に対応するため、設計部門などの人員を増員するという。 防衛産業の利益率は海外では 10% を超える企業もあるなか、日本では平均 8% と低く、実質 2 - 3% という調査結果もあった。 国内では大手企業も含めて事業の撤退や縮小が近年、相次いでいた。 防衛省はこれを問題視し、10 月から、発注の際に見積もる企業の利益率を従来の 8% 程度から最大 15% に引き上げた。 品質管理や納期の順守など企業努力に応じて利益率を上乗せする仕組みを新たに採り入れた。 NEC は「(利益率は)もともと低いが、新規の案件では改善し始めている。 マックスに近い利益率を取れるようにしたい。(藤川取締役)」としている。 このほか、三菱電機は 10 月、同社が持つレーザー技術に関連し、オーストラリア国防省と警戒能力の向上のための装備品を共同開発すると発表した。 海外との共同開発を拡大する動きも出始めている。 (杉山歩、田中奏子、asahi = 11-13-23)
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