過去最高に暑かった 10 年 2100 年までに 1 千兆ドル超の被害も

世界気象機関 (WMO) は 19 日、2023 年は世界の平均気温が産業革命前よりも 1.45 度上昇し、直近 10 年間も観測史上最も暑かったと発表した。 今後、気候変動対策を取らなければ被害は 2100 年までに 1 千兆ドル(約 15 京円)を超えるとし、対策をした方が費用を抑えられるとした。 WMO によると、2014 - 23 年の平均気温は、1850 - 1900 年より 1.2 度上回った。 大気中の温室効果ガス濃度が高まったことに加え、22 年から 23 年にかけては海面水温が上昇する「エルニーニョ現象」の発生で急激な気温上昇につながったという。

国際ルール「パリ協定」の下で世界が目指す、気温上昇を 1.5 度に抑える目標に近づく中、洪水や干ばつ、山火事など気候変動との関連が示唆される被害も広がっている。 10 月にメキシコのリゾート地アカプルコをハリケーンが直撃し、150 億ドル(約 2 兆 2,500 億円)、米ハワイで 8 月に 100 人以上の死者を出した山火事では 56 億ドル(約 8,400 億円)の経済的損失を生んだという。 WMO のセレステ・サウロ事務局長は「一時的とはいえ、1.5 度にこれほど近づいたことはない」と警鐘を鳴らした。

対策を進めなかった場合には、被害額は少なくとも 25 - 2100 年に 1,266 兆ドル(約 19 京円)に上ると試算した。 一方、対策のための資金は、21 - 22 年に 1.3 兆ドル(約 195 兆円)と、19 - 20 年の 2 倍になった。 ただ、1.5 度目標に沿うには、30 年までに 9 兆ドル(約 1,350 兆円)、50 年までにさらに 10 兆ドル(約 1,500 兆円)が必要とされる。 まだまだ不足しているが、試算された被害額よりも安上がりに済むという。 (市野塊、asahi = 3-19-24)


「もしトラ」でも温暖化対策「ひっくり返せない」 米大統領上級顧問

米バイデン政権のジョン・ポデスタ上級顧問が 13 日、都内で朝日新聞などのインタビューに応じた。 約 3,700 億ドル(約 55 兆円)を再生可能エネルギーや電気自動車の補助などに充てる「インフレ抑制法 (IRA)」に言及。 11 月の大統領選で気候変動対策に後ろ向きなトランプ元大統領が再選した場合でも「すべてをひっくり返すことは不可能だ」と述べた。 米国の新たな温室効果ガスの削減目標は、次の政権に持ち越さず年内に公表することも明らかにした。

ポデスタ氏は 2022 年 9 月から IRA など国内の温暖化対策を担当。 今月、ケリー気候変動担当大統領特使の退任に伴い、業務を引き継いだ。 ポデスタ氏は、IRA が、所得の低い地域に産業と雇用をもたらしており、共和党が優勢な地域も恩恵を受けていると強調。 「政治的議論がどうであれ、一般の人はクリーンエネルギー路線を支持している」と述べた。 米国は 30 年までに温室効果ガスを 05 年比で 50 - 52% 減らす目標を掲げている。 国連に提出することになっている新目標について「米国が早めに発表することによってほかの国を促せるか」を見極めた上で、「年末までには出せると思う」と話した。

世界の 3 割の排出量を占める中国について、ポデスタ氏は、新たな石炭火力発電の建設をやめるだけでなく、減らしていくよう求めることが必要だとし、「排出量を減らすため、圧力をかけ続ける」と述べた。 中国の担当者とすでにオンラインで会談しており、近く対面する合意をしたという。 また、充電池や重要鉱物などで、大きなシェアを占める中国に頼らないサプライチェーンを国内や日本を含めた友好国でつくると話した。

岸田政権や産業界は、二酸化炭素の回収・貯留や水素・アンモニアの活用などの新たな技術を強調している。 原発活用にもかじを切った。 ポデスタ氏は再エネや蓄電池と比べて経済性に疑問があるとし、「いつ実質排出ゼロの社会にたどり着けるか、スピードとスケールが問題だ。 すでに成熟して、拡大可能な技術がある」と話し、洋上風力などの再エネに力を入れるべきだとの考えを示した。 (香取啓介、asahi = 3-13-24)

John Podesta : 1949 年、米イリノイ州シカゴ生まれ。 クリントン政権で大統領首席補佐官、オバマ政権で気候変動問題担当の顧問。 2016 年の大統領選では、民主党候補のヒラリー・クリントン陣営の選挙対策本部長。 シンクタンク「米進歩センター」を創設し、所長を務めた。


マーシャル諸島の米実験場に高波 地球温暖化、全島浸水の予測も

米軍が核実験を繰り返した太平洋の島国マーシャル諸島で、核搭載可能な弾道ミサイルや迎撃システムの開発の中核となってきたクエゼリン環礁の米軍実験場が水害の危機に直面している。 1 月には同環礁ロイ・ナムル島の軍施設を高波が襲い、甚大な被害が出た。 将来の地球温暖化による海面上昇で地下水源の喪失や全島浸水に見舞われると予測されている。 米軍は同環礁で最大の南端のクエゼリン本島や 2 番目に大きい北端のロイ・ナムル島などから住民を締め出して租借。 環礁海域を利用し、米本土との間で長距離弾道ミサイルを発射し、迎撃する実験を繰り返してきた。

米軍によると、ロイ・ナムル島は 1 月 20 日の高波で軍施設や兵員宿舎を含む広範囲の浸水が起き、飛行場も閉鎖に追い込まれた。 本島に避難させた。復旧には「数カ月かかる可能性がある」という。 米地質調査所の論文では、悪いシナリオによればロイ・ナムル島で、今世紀中に高波で毎年、島全体が浸水すると予測した。 (クエゼリン環礁・Kyodo = 3-3-24)


国内最大級の水素製造施設 脱炭素に向けサントリー白州工場で活用へ

山梨県北杜市白州町にある大手飲料メーカー・サントリーの天然水工場兼ウイスキー蒸溜(じょうりゅう)所に、再生可能エネルギーで製造した水素を供給する大型施設の起工式が20 日、工場の隣接地であった。 国内最大規模、世界でトップクラスの施設となり、水素を年間 2,200 トン製造する能力を持つ。 2025 年度の稼働をめざす。 使用するのは、山梨県などと進める「P2G システム」。 太陽光などの再生可能エネルギー由来の電力を活用し、水の電気分解によって二酸化炭素を出さずに水素を製造する技術だ。 県内で実証事業が続くなど、カーボンニュートラル社会の実現に向けて国内外から注目されている。

大型施設の建設地はサントリー工場に隣接する 3 千平方メートルの県有地。 県やサントリーホールディングス (HD)、東レ、東京電力 HD、日立造船などがプロジェクトに参加する。 総事業費約 170 億円のうち、国のグリーンイノベーション基金事業として約 110 億円の補助を受ける。 大型の建物を 2 棟建設し、ウイスキー蒸溜所と天然水工場につながる長さ約 2 キロのパイプラインで、製造した水素を有償で供給する。 当面は天然水工場で殺菌用の蒸気を発生させる燃料として使い、将来的にはウイスキー蒸溜所のボイラーでも使いたいという。 現在は燃料に液化天然ガスを使用しており、導入後は二酸化炭素を年間 1 万 6 千トン削減できる見込み。

サントリー HD の藤原正明常務執行役員は「お客様と直接接点のある商品を作る会社が、しっかり水素に取り組んでいることを社会にアピールできるチャンスになる」と話す。

世界トップクラスの水素利用エリアに

県によると、水素の製造に使うのは普通の水で、再生可能エネルギーを最大限活用するのにふさわしいシステムという。 地元の太陽光や水力による電力を活用し、エネルギーの「地産地消」につなげる計画だ。 長崎幸太郎知事は起工式のあいさつで「世界トップクラスの水素利用エリアが白州の地に生まれることになる。 このシステムが国内外に広がり、水素社会の実現につながるよう取り組みを進めたい。」と述べた。 出席した上月良祐経済産業副大臣は「世界各国ではカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速している。 中でも水素は必要不可欠なエネルギーであり、水素プロジェクトのまさに旗手として大きな一歩を踏み出した。」と評価した。 (羽場正浩、asahi = 2-21-24)


テスラが産廃の不法投棄でカリフォルニア 25 郡に訴えられる

罰金軽い〜。 Tesla (テスラ)が製造やメンテで出る有害物質を普通ゴミと混ぜて不法投棄していたことがわかり、シリコンバレーをはじめとするカリフォルニア州内 25 の郡に訴えられました。 何を捨ててたの? サンフランシスコ地方検察局が同社のゴミ出しを抜き打ちチェックしたところ、本来であれば危険物・有害物質として分けて保管し、専門の処理施設に移送しなければならないはずのゴミたちが一緒くたに出されていることが判明した次第です。

具体的には使用済みのバッテリー、オイル、ブレーキ液、鉛酸バッテリー 、エアロゾル、不凍液、洗浄液、プロパン、塗料、アセトン、液化石油ガス、接着剤、ディーゼル燃料などなど。 製造拠点のフリーモント工場からは自動車の金属パネル溶接スパッタ廃棄物(銅含有のおそれあり)、廃ペンキ混合カップ、下塗り塗料で汚れた拭き物やデブリなんてのも出てきて、ほかの郡でもサービスセンターや充電センターを調べてみたら、シリコンバレーのみならず、遠くはモントレー、オレンジカウンティ、プレイサー、リバーサイド、サンディエゴ、サンホアキンカウンティでも日常的に行なわれていたんですね。 (satomi、Gizmodo = 2-11-24)


「捨てた」再エネ電気、45 万世帯分 出力制御急増で 朝日新聞集計

太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」が 2023 年に急増し、1 年間に制御された電力量が全国で計約 19.2 億キロワット時に達したことが朝日新聞の集計でわかった。 過去最多だった 21 年の 3 倍超で、約 45 万世帯分の年間消費電力量に相当する。 再生可能エネルギーを生かし切れていない。

電気は発電量と使用量をそろえないと周波数が乱れて大停電になるおそれがある。 発電量が過剰になる時に、発電量と使用量のバランスを保つため大手電力が再エネの発電を一時停止するのが出力制御だ。 国のルールでは、まず二酸化炭素 (CO2) の排出量が多く、出力を上げ下げしやすい火力を減らし、余った電気を他の地域に送る。 次にバイオマス、太陽光・風力の順で再エネを抑える。 出力を簡単に調整できないとされる原発は最後となる。

出力制御は、太陽光の導入が早かった九州で 18 年秋に始まり、22 年春以降に東京電力管内を除く全国に広がった。 22 年は中国、四国、東北、北海道、23 年は沖縄、北陸、中部、関西の各電力エリアで始まった。 大手電力が 23 年末までの需給実績を公表したのを受けて、送電網が別の沖縄と未実施の東京を除く 8 社の太陽光と風力の制御量を集計した。 23 年 1 - 12 月の制御量は約 19.2 億キロワット時で、過去最多だった 21 年(約 5.8 億キロワット時)の約 3.3 倍、22 年(約 3.0 億キロワット時)の約 6.5 倍だった。 全体の 7 割を九州が占めた。 (asahi = 2-10-24)


木を植える遊牧民、支援する欧州 アフリカで「緑の長城」実現するか
- 「緑の長城」 アフリカの挑戦 -

温暖化が進むサハラ砂漠南部のサヘル地域に木々を植え、「緑の長城」をつくる - -。 サヘルでは、東西約 8 千キロにわたる「グレート・グリーン・ウォール (GGW)」構想が進んでいる。 はたして、実現できるのか。 構想の最西端の地セネガルで現状を探った。 セネガル北部ウィドウは、遊牧民たちが暮らす集落だ。 低木がまばらに並ぶサバンナで、家畜のウシやヤギが草をはむ。 この国で最初に GGW 構想の植林が始まった場所だ。 開始時の 2007 年に植えられた木は、4 メートルほどの高さに育っていた。 強さ増す熱風に、乾く大地。 遊牧民たちは木を植え始めた。

世界平均の 1.5 倍の速さで気温上昇

「雨が減り、草が生えなくなり、昔ほどウシを飼えなくなった。 だけど、植林事業があるから生活していける。」 遊牧民フラニのセイバン・ソウさん (64) は、そう言って笑った。 ウィドウでは遊牧民フラニの人たちが、木の世話や植林を手伝う。 植林されているアカシア・セネガルという木から樹脂「アラビアゴム」を採取し、市場で売って利益を得ている。地元では伝統薬などに利用されるが、日本でも絵の具や食品添加物としても使われているものだ。

サヘルは、もともと雨が少なく、農耕に適さない地域もある。 一方で、広大な草原が広がり、家畜を飼う遊牧民たちにとって重要な暮らしの場となってきた。 しかし、国連によると、サヘルは世界平均の 1.5 倍の速さで気温が上昇。 乾期にサハラ砂漠から吹く熱風「ハルマッタン」は強さを増し、雨が減っている。 セネガルで GGW の代表を務めるオマル・バー氏は「気候変動が移民や難民の問題につながっている」と指摘する。 温暖化により、遊牧民にとっての資源である草原が縮小。 農耕民も作物の収穫量が減り、生活の糧を失っている。 その結果、欧州への移民を試みたり、過激派組織にリクルートされたりする人たちが後を絶たない。

植林が仕事に 移民の震源地の変化

アフリカから押し寄せる移民の問題や、現地での過激派組織の台頭に頭を抱えるのが欧州諸国だ。 これらの問題の解決策として、GGW の支援に重点を置く。 多くのサヘル諸国の旧宗主国であるフランスのマクロン大統領は 21 年 1 月、気候変動をめぐる国際会議で国連や世界銀行などとともに、GGW 構想を加速させるために 143 億ドル(約 2 兆 970 億円)を支援すると表明。 また、欧州連合 (EU) は 21 年 11 月、毎年 7 億ユーロ(約 1,110 億円)の支援をすると発表した。

GGWは、単なる植林活動ではない。 植林を通して雇用を生み、地域経済の発展もめざす。 セネガル東部の小さな町バケルでは、18 - 45 歳の 115 人を雇用。 種から苗を作り、畑を耕し、木を植える活動に参加して、賃金を得ていた。 家族を養える分だけの安定した収入を得られるため、移民として欧州に渡った人が戻り、GGW に従事するケースもある。 シェイク・フェイさん (41) は 12 年間、移民としてギリシャに住んだ経験がある。

だが、定職に就けず、理想の生活とはほど遠かった。 「移民が成り上がるチャンスはなかった。 家族とも離ればなれで、二度と会えないと思った。」 そこで 3 年前に帰郷し、GGW の植林事業への参加を決めた。 いま、故郷で畑を耕し、汗を流す。 「今が一番充実している。 環境問題に貢献でき、子どもの教育費も稼げる。」と笑う。 元通りにならないこともある。 一度、欧州をめざした移民の出戻りは、親族にとっては「恥」とみなされる。 帰郷後は、両親と会えないままだという。

壮大な計画、資金難のおそれ

国連によると、GGW は当初、総額 80 億ドル(約 1 兆 1,730 億円)を投じて、植林する構想だった。 30 年までに 1 億ヘクタールの荒れ地を緑にし、その過程で 1 千万人の雇用を生む。 年間 2 億 5 千万トンの炭素を吸収することを見込む。 だが、07 年に始まった構想は想定通りに進んでいるわけではない。 予算は想定外に膨らみ、開始から 15 年が過ぎたが、全体の「15% ほどしか植林は進んでいない(オマル氏)」とみられる。 セネガルでも、果物畑をつくるために植林していた一部地域の木々が、水不足で枯れ果ててしまった。

構想を進める間も、気候変動は待ってくれない。 一進一退の状況のまま、資金不足に陥る可能性もある。 GGW 構想は支援によって成り立っており、それ自体がお金を生むわけではない。 援助がなくなれば、地域の雇用はなくなり、環境だけでなく、地域の不安定化にもつながる。 「たしかに壮大な構想かもしれない。 でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。 地球規模の危機を乗り越えるためにも、国際社会の支援が必要だ。」 オマル氏は、そう呼びかける。(セネガル北部ウィドウ・今泉奏、asahi = 2-4-24)

グレート・グリーン・ウォール (GGW) : アフリカ大陸のサハラ砂漠南部に広がるサヘルの砂漠化を止めるため、約 8 千キロにわたり植林する構想。 2007 年にアフリカ連合 (AU) が主導して始まり、サヘル諸国で進んでいる。


生態系、全国調査を 海藻・海草など、ためる炭素 - - ブルーカーボン 研究者ら寄付募る

地球温暖化の原因となる二酸化炭素 (CO2) を、海藻などの「藻場」がどのように吸収・貯留しているのか - -―。 海に取り込まれる炭素「ブルーカーボン」とその生態系を解明する全国調査に向けて、北海道大や筑波大の研究者らが、インターネットで寄付を募るクラウドファンディング (CF) を始めた。 沿岸の浅い海に広がる「藻場」では、海藻や海草が光合成をすることで、大気中の CO2 が吸収され、その一部は海底などに貯留される。 こうして海の生態系に取り込まれた炭素はブルーカーボンと呼ばれ、その働きが世界的に注目されている。

しかし、日本列島は南北に長く、沿岸には様々なタイプの藻場が存在する。 藻場を構成する生物の種類によって、炭素の吸収や貯留の仕組みはそれぞれ異なる。 その働きは季節によっても大きく変動するとみられている。 実態を明らかにするため、藻類学や生態学など様々な学問分野の研究者が集まり、日本の沿岸に広がる「ブルーカーボン生態系」の全国調査プロジェクトを昨年夏に立ち上げた。

計画では、北海道から沖縄まで全国の藻場を対象に、炭素循環のメカニズムについて実態解明を進める。 藻場は、さまざまな生き物を育む「海のゆりかご」としても重要で、生物多様性に関する調査も同時に進める方針だ。 CF は 1 千万円を目標額とし、フランスの海洋環境調査団体「タラ・オセアン財団」の日本支部が事務局をつとめる。 集めた資金は、調査の際に必要となる経費に使いたいという。

国内各地では、沿岸の藻場が消失する「磯焼け」と呼ばれる現象が深刻化している。 プロジェクトのメンバーの和田茂樹・筑波大助教(生態学)は「一連の調査・研究を通じて、磯焼けのメカニズムの解明も進めたい」と話している。 調査の実現に向けた CF は、2 月 16 日までの予定。 (山本智之、asahi = 1-17-24)

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海藻などの「ブルーカーボン」 CO2 吸収量に算定へ 政府方針

政府は、海藻や海草などに吸収された二酸化炭素 (CO2) 「ブルーカーボン」を正確に算定し、温室効果ガスの削減量として国連に報告する取り組みを本格化させる。 政府が認証する削減実績「クレジット」として民間投資を呼び込むことも狙う。 伊藤信太郎環境相が 9 日に中東ドバイで開催中の国連気候変動会議 (COP28) で表明する。

ブルーカーボンは、マングローブや海草・海藻などが光合成をすることで吸収・固定された CO2。 日本は温室効果ガスを 2030 年度に 13 年度比で 46% 削減する目標を掲げているが、排出量から森林の吸収量を差し引いている。 ここに海草などの分布状況から算定した吸収量も含める。 来年 4 月に国連に世界で初めて海草・海藻の吸収・固定量の算定結果を報告し、次の排出量公表から使う見込み。 30 年には吸収量のうちのブルーカーボンは 1 割程度になるとみている。 クレジットとして企業に買ってもらうことや、海外との算定方法の共有も目指す。 海洋生態系の保全や、漁業、観光などとの相乗効果も期待できるという。

また、世界の温暖化対策のため、人工衛星「いぶき」を使った温室効果ガスの排出量推計で、アジアやインド太平洋地域の国での削減目標づくりを支援する。 現在モンゴルと始めているが、30 年までに 6 カ国まで増やす。 気候変動で深刻化する災害に適応するための「早期警戒システム」も支援する。 ウェザーニューズや日立製作所などと連携し、高精度の気象や洪水予測を提供。 25 年までに東南アジア諸国連合 (ASEAN) の半数での導入を目指す。

COP28 は 8 日から閣僚級交渉が始まった。 成果文書案では「化石燃料の段階的廃止(フェーズアウト)」を打ち出すのか、「排出対策のない」と対象を限定する言葉を入れるのかが焦点になっている。 (ドバイ = 市野塊、asahi = 12-8-23)