ファミマ、麻布台ヒルズ店で「服」が爆売れ コンビニならではの強みとは

ファミリーマートが 2021 年 3 月から全国展開している「コンビニエンスウェア」というアパレルブランドがある。 同社のブランドカラーである緑と青のラインがあしらわれた靴下を見たことがある読者も多いのではないか。 11 月 24 日にオープンした「ファミマ!! 麻布台ヒルズ店」では壁面を大きくつかって衣料品を陳列している。 靴下やタオルだけでなくデニムジャケットまで並ぶ店内は、アパレルショップの雰囲気すら感じさせる。

ファミリーマートがアパレルにここまで力を入れる理由とは何か。 同社で衣料品部門を担当する須貝健彦氏に聞いた。

コンビニエンスウェアとは、ファミリーマートで扱う衣料品を見直し、客のニーズを「緊急需要」から「目的買い」にシフトさせるべくスタートしたブランドだ。 19 年に関西エリアで実験を経て、21 年 3 月に全国展開している。 コンセプトは「いい素材、いい技術、いいデザイン。」 ファッションデザイナーの落合宏理氏と共同開発し、素材やシルエット、パッケージデザインに至るまでこだわったという。

同ブランドの開始当初は、靴下などの基本的なアイテムがラインアップの中心だった。 現在では撥水パーカーやカーディガン、ショートパンツ、サンダルなど今までのコンビニには並んでいなかったカテゴリーを取りそろえている。 21 年 10 月にプロジェクトに参画した須貝氏はこう振り返る。 「自分が実際にコンビニエンスウェアの T シャツを着たとき『すごく良いな』と思ったのですが、同時に『これが T シャツだけでなく、全身のアイテムがそろうともっと良いのに』と、いち消費者として感じていました。

また、コンビニは夏に売り上げが上がる業態なので、タオルや T シャツ、ショートパンツなどの夏シーズンに合わせた商品ラインアップの拡充に力を入れてきました。」 全国に約 1 万 6,400 店舗ある店舗網を生かし、身近にあるコンビニで全身のコーディネートがそろえば、顧客に大きなメリットを提供できると考えたそうだ。 ベーシックな商品を扱うユニクロも、全国の店舗数は約 800 店舗である。 「普段使いしたい」と思わせる商品力があれば、販売網で大きく優位に立てるというわけだ。

「ファミマ!! 麻布台ヒルズ店」の反響もすさまじい。 限定デザイン商品の発売日だった 12 月 5 日では、衣料品部門の売り上げは前日比で約 20 倍に増加。 この日だけでプリント T シャツが 83 枚、パーカーが 24 着、デニムジャケットとパンツの合計で 16 着が売れたという。 「1 人で 5 - 6 万円分の服を買うお客さまも複数いました。 最も売れたのは昔のファミリーマートのロゴをあしらった『太陽と星の T シャツ』です。 発売から 1 時間以内に最初に準備していた分が売り切れ、その後も再陳列を待つ方が並んでいました。(須貝氏)」

コンビニの店舗内に、服屋のように商品をハンガーで陳列して成功をおさめた麻布台ヒルズ店。 このトライアルの成功からどのような展望を描いているのか。 「まだオープンから 2 週間しかたっていませんが、この期間の数字を見て判断するのであれば、全国に展開する可能性も十分にあると考えています。 各主要都市に旗艦店という形で同様の取り組みを行ったり、地方限定の特色を出していったりする可能性もあります。 実際にお客さまから『もっといろんなところで買えたらいいのに』という声もいただいています。」

一方で、アパレル業界全体の市場規模は 1990 年に 15 兆円を超えていたが、現在は10 兆円以下にまで縮小している。 こうした局面でアパレル事業を拡大することについてはどう考えているのか。 「アパレル全体の市場規模に比べると当社の売り上げはまだ全然大きくないことに加え、流行に左右されない定番のアイテムを中心にそろえているため、売り上げはもっと大きくできると思っています。 具体的には、今後も毎年 1.3 - 1.5 倍のペースで売り上げを伸ばしていけると考えています。」

コンビニでコーヒーを買う光景が当たり前になったように、コンビニで普段着を買うこともまた当たり前にしていきたいと意気込む須貝氏。 街のコンビニが担う役割は、今後もさらに拡大していくのだろう。 (岡安太志、ITmedia = 12-27-23)


淡路島「西海岸」をファッション拠点に、繊維商社が小学校跡を再利用

新リゾート地として注目される兵庫・淡路島の「西海岸」をファッションの拠点に - -。 6 年前に閉校した兵庫県淡路市江井の旧江井小学校が 17 日、ファッションブランドの販売店などが入る施設「ei-to (エイト)」としてオープンした。 同校の卒業者が創業した大阪の繊維商社が開設にこぎつけた。 この商社は「増見哲(ますみてつ、増見喜一朗社長)」。 衣服の商品企画のほかに、廃棄生地の糸を使った衣服や、製造時に生地を余さずに活用するカバンなど、環境に配慮した衣服・雑貨を製造・販売している。

自社ブランドの発信場所を探していた 2 年前、淡路市が旧江井小の跡地利用者を公募していることを知った。 同校は、増見社長の祖父で創業者の哲男氏(故人)の母校。 さらに、3 階建ての校舎の再利用や海山に囲まれた立地が、同社の環境重視の考えに合うとして購入を名乗り出たという。 1 階に同社のブランド品を販売するショップや、大阪・心斎橋の老舗コーヒー店によるカフェ、製品をつくる工房が入居する。 2 階には江井の歴史を紹介したスペース、3 階には写真スタジオがそれぞれ入り、「ei- to」の施設名は、「江井とともに」との思いが込められているという。

増見社長は「淡路島の西海岸には、しゃれた飲食店が続々と進出している。 これからはさらにファッションの盛んなエリアにし、その先駆けとして発信していきたい。」と話している。 (天野剛志、asahi = 12-17-23)


売れ残り衣料品の廃棄禁止を EU 大筋合意、ユニクロなどファストファッション業界に影響

欧州連合 (EU) は 6 日までに、アパレル事業者に売れ残った衣料品や靴の廃棄を禁止する規制を導入することで大筋合意したと発表した。 環境への負荷を減らすためリサイクルを強化する。 正式に承認されれば、規制発効の 2 年後に適用される。 中小零細企業は対象外で、中堅企業は 6 年間の移行期間を設ける。

流行を取り入れた安価な衣料品を大量生産するファストファッション業界の事業モデルに影響が出るのは必至だ。 「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングや「ZARA」を擁するスペインのインディテックスなどは対応を迫られる。 全加盟国で構成する理事会と欧州議会が 5 日に大筋合意したのは「エコデザイン規制」の改正案。 従来はエネルギー関連製品に限定していた規制の適用範囲をほぼ全ての製品に拡大する。 規制に違反した場合の罰則は各国で定める。 (kyodo = 12-6-23)


海外の難民キャンプへ 中学校で子ども服回収活動

草津市内の中学校で、着なくなった子ども服を回収し、海外の難民キャンプへ届ける活動に生徒たちが取り組みました。 草津市の松原中学校です。 体育館に次々と運び込まれていくのは、各家庭で着なくなった子ども服。 中学校では、ユニクロや GU を展開する大手衣料メーカー・ファーストリテイリングによる難民キャンプへ服を届ける活動に 2 年生の生徒が参加しています。

生徒たちは、今年 9 月からおよそ 2 カ月間、校内だけでなく、市役所や商業施設など市内 15 か所に、自分たちで作った回収ボックスを設置して協力を呼びかけました。 27 日は、こうして回収した服の梱包作業が行われ、全ての 2 年生およそ 150 人が参加しました。 体育館に集められた服は 7,234 着にもなり、生徒たちは、サイズ別に分けたり、1 枚ずつ畳んだりして、発送の準備を進めていきました。 集まった服は段ボール箱 66 箱に梱包され、今後、ファーストリテイリングの事務局へ送られた後、海外の難民キャンプに届けられるということです。 (BBC びわ湖放送 = 11-27-23)


アパレル起業「生きた証しを」 26 歳から闘病、親に秘していた思い

「Re」という名の、小さな小さなアパレルブランドがあった。 肌触りのいいボタンダウンのシャツ、パジャマのように着られるワンピース、サルエルタイプのイージーパンツ。貝ボタンやテーパードの袖、刺?(ししゅう)のロゴにもこだわりがある。 何年も持ち続けたくなる服たちだ。 「Re」は 2018 年、当時 32 歳だった大村泰さんが、仙台でたった一人で立ち上げた。 皆からはヤスと呼ばれた。 服とサッカーが大好きで、いつも周りに人がいる。 そんな若者だった。

神戸大大学院を出て、東京の IT 企業で働いていた 26 歳のとき、白血病を発症。 仙台の実家に戻り、骨髄移植に伴う合併症で闘病を続けながらの起業だった。 お気に入りだったブランドのデザイナーに意匠を頼み、生地メーカーや縫製工場とも自ら交渉した。 資金は会社員時代の蓄えをあてた。 商品ができあがると、フェイスブックなどで宣伝。 店舗ではなく、バーやレストランを臨時に借りて、販売会を開く形をとった。 神戸で、東京で、仙台で。 仲間がふらりと立ち寄って、服を選び、気に入って知り合いに教えた。 それが「Re」の流儀だった。

軌道に乗せる 神戸転居の直後に …

ブランドをいよいよ軌道に乗せるべく、19 年、神戸に引っ越した。 病身での一人暮らしに不安はあったが、デザイナーやメーカーは関西にいた。 密に打ち合わせをしようと考えた。 新しいアイテムを追加し、工場に数百点単位で発注をかけた。 Re とは別に、入院中もオシャレに着られる病院着の開発に手をつけた。 だが、それ らを売ることはかなわなかった。 無情にも病気が追いかけてきた。 転居の 2 カ月後に体調が悪化して神戸で入院生活を過ごし、20 年 7 月、亡くなった。 コロナ禍の中、友人たちとも会えないままの旅立ちだった。

知識も経験も乏しく、一からの服づくりはハードルが高い。 彼はなぜ挑戦したのだろう。 死から 3 年近くたった今年 5 月。 父親の泉さん (75)、母親陽子さん (75) は、息子の遺品のパソコンを整理していて、備忘録のようなファイルを見つけた。 17 年 5 月の日付で、動機について書いてあった。 「何のために生き残ったのか、答えのない問いを探している。 自分の存在を忘れないでほしい。 自分を増やすことはできない。 自分の代わりとなるものを作って生きた証しにしたい。」 「病気で何もかも失ったと思ったけど、友達は残っていた。 この服を着た人が、服の良さとか、この服が出来た経緯とかを話すことで、人と人がつながるきっかけになればうれしい。」

「まだ俺は終わっていないと、自分を奮い立たせるためにも、やりたい。」

両親にも打ち明けたことのなかった思い。 「話してくれていたらよかったのに」と、陽子さん。父親の泉さんは「ヤスは死を覚悟して、焦っていたのかもしれない。」

服の最後の販売会、友たちは集まった

「Re」の商品につけるタグには、こんな文句が印刷されている。

「Try it, and you will see」(やってみる、やればわかる)
「What do YOU want in life?」(人生で大事なものは何だ?)

今年 9 月、東京・渋谷で「Re」の最後の販売会が開かれた。 実家に大量の在庫品が残っているのを知った大村さんの大学時代の友たちが、両親に持ちかけて企画した。 ホテルの一角を借り、長イスに遺影を置き、ハンガーにシャツやワンピースをかけて並べた。 昔の仲間やその知り合い、そのまた知り合いが集まってきて、いくつもおしゃべりの輪ができた。 コロナで会えなかった同士の、久々の再会の場にもなった。 この日、50 着ほどが売れた。 シャツの袖に腕を通すとき、人は思い出すのだろう。 34 年の人生を駆け抜けていった若者のことを。 (編集委員・石橋英昭、asahi = 11-5-23)


「憧れの的」だったアパレル店員、今は人手不足 待遇改善で定着狙う

大手アパレル企業が、販売員の待遇改善に取り組んでいる。 流行のファッションを着こなして店頭に立つ販売員は、かつては若者の憧れの的だった。 しかし、人気が下火となった今、業界は深刻な人手不足に悩む。 給与増につながる仕組みを取り入れて、人材確保につなげようとしている。 紳士服ブランド「ジョセフ・アブード」の高島屋新宿店。 店内に陳列された服を整える植岡昭人さん (60) は、この店で一番のベテラン販売員だ。

1980 年代の DC ブランドブームを見て、販売員に憧れた。 27 歳のとき、グラフィックデザイン関連からファッションの現場に転職。 以来、約 33 年間、店頭に立ち続けてきた。 100 人以上いる顧客の名前や好みを把握し、その人に合ったスタイルを提案。 植岡さんに会うために、北海道や東北から来店する客もいるという。 「客の喜びが目に見えることが仕事のやりがい」と話す。 植岡さんは今年1月に定年を迎え、再雇用で働く。この春、勤め先のオンワード樫山から「ショップマイスター」に認定された。 定年を迎えた販売員の中で、スキルが高い人が選ばれる制度だ。

同社では再雇用の従業員の給与は定年前より低くなるが、マイスターは定年前の水準が維持される。 初年度となる今回は 14 人が選ばれた。 植岡さんは「給与が上がるのはもちろん、会社に認められたことでモチベーションは上がった」と喜ぶ。 オンワード樫山がこうした制度を導入した背景には、採用を取り巻く環境の変化がある。 販売員は長らく人気の職業だった。 DC ブランドがはやった 80 年代、販売員は「ハウスマヌカン」と呼ばれ、若者の憧れに。 90 年代のギャルブームでは、「ギャルの聖地」だった渋谷 109 のショップ店員らが「カリスマ」店員と呼ばれ、99 年の流行語にもなった。

だが、流行の発信地が SNS に変わったことで魅力が減少。 体力的な負担が大きい立ち仕事や土日出勤がある勤務環境、給与水準の低さから敬遠されるようになった。 「新卒で販売職を採用するのは難しい(同社販売人財課)」中で、販売力のあるベテランに注目。 定年後も定着して働いてもらおうと導入したのがマイスター制度だ。 同課の冬木麻子課長は「販売員は人気があった一方で、給与や社内での地位は低かった」と振り返る。 そして、「ファッションを直接届けられるのは現場の販売員だけ。 待遇の改善に取り組んでいきたい」と意気込む。

EC への貢献で給与アップ

店頭販売員によるネット通販 (EC) の売り上げへの貢献度を評価し、給与に反映する企業も出てきた。 コロナ禍で多くのアパレル企業が EC 強化に乗り出しており、販売員の SNS の発信力に期待をかける。 セレクトショップを手がけるユナイテッドアローズは 10 月、「DX セールスマスター」制度を新設した。 自社 EC サイトへのコーディネート画像の投稿などで、EC の売り上げや閲覧回数の増加に貢献した人を認定し、年 2 回の賞与にインセンティブ(報奨金)を上乗せする。 任期は 1 年で、初代のセールスマスターには 3 人が選ばれた。

同社によると、すでに販売員の SNS 投稿がきっかけで売れた商品の売り上げは、自社 EC 全体の売上高の 50% 超を占めるという。 「ワンアフターアナザー ナイスクラップ」などをもつパルグループホールディングスも SNS のフォロワー数や EC への貢献度を評価し、給与に上乗せしている。 フォロワーが多く、EC への貢献も高ければ、年収は「平均より数百万円規模でアップする社員もいる」(同社広報)」という。 販売員のモチベーション向上は売り上げ増加につながっている。 同社の 2023 年 2 月期の EC 売上高は423 億円と、3 年前の約 2.5 倍に大きく伸びた。

上昇するアパレル販売員の転職求人倍率

パーソルキャリアが運営するアパレル業界専門の転職支援サービス「クリーデンス」によると、今年 7 - 9 月のアパレル販売員の転職求人倍率は 3.97 倍だった。 20 年の調査開始以来、過去最高となった。 転職求人倍率はコロナ下での行動制限がなくなった昨年以降、増加傾向にある。 店舗に客が戻り始めて採用を強化する企業が多く人手不足感が目立っている。 国内企業だけでなく、外資系の高級ブランドでも店舗の人手が足りないという。

アパレル販売員の転職求人倍率の推移

「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは今年 1 月、年収を最大 4 割引き上げることを決めた。 入社 1 - 2 年で就任する店長は月 29 万円から 39 万円になる。 グローバルに展開する同社は給与水準を高めることで、優秀な人材を獲得したい考えだ。 人材確保を狙って給与を上げる企業は相次いでいる。 クリーデンスによると、22 年のアパレル販売員の平均年収は 321 万円で、前年より 5万円アップした。 店長の平均年収も前年比 14 万円増の 394 万円だった。 しかし、国税庁の調査では会社員やパートを含めた22年の平均給与は 458 万円で、アパレル販売員は依然として低いままだ。

クリーデンスの事業責任者の荒木学さんは「アパレル販売員が稼げる環境は整いつつある」とした上で、「売り手市場は来年度以降も続く。人材確保のためには企業はより踏み込んだ賃上げが求められる」と話した。 (益田暢子、asahi = 10-30-23)


イオンの衣料品売り場「専門店」風に … 第 1 号の浦和美園店、年齢層やシーンごとに 6 エリア

イオンリテールは 23 日、年齢層や着用シーンごとに商品を分類して「専門店」のように陳列した総合スーパー (GMS) の新たな衣料品売り場を報道陣に公開した。 従来の男女別の売り場では多様化する消費者の需要に応えられていないと判断し、販売する商品は変えずに売り場を刷新することで消費者の取り込みを図る狙いだ。 第 1 号店として公開したイオン浦和美園店(さいたま市)では、ファミリー向けの「デイリーカジュアル」や Z 世代など若年層向けの「ネクストエイジ」、靴や旅行用品の「雑貨」など 6 つの売り場に分けた。

また、セルフレジや店員が接客しながらレジ業務を行えるタブレット型レジも新たに導入し、業務効率化も進める。 新たな売り場は 2024 年春までに大阪府や岐阜県、愛知県の計 3 店舗に拡大する方針だ。 GMS の衣料品販売はユニクロなどの専門店やインターネット通販との競合で苦戦が続くが、イオンは「衣料品は中高年層を中心に需要があり、売り上げを伸ばす余地はある」としている。 GMSではイトーヨーカ堂が今年 3 月、衣料品事業からの撤退を表明している。 (yomiuri = 10-24-23)

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イオンが 5 つの衣料品専門店立ち上げ、若年層の取り込み狙う

イオンが、シニアや若者向けなどシーンや年代別に 5 つの衣料品専門店を立ち上げた。 既に千葉県船橋市のイオン船橋店で既存の「トップバリュコレクション」を含む全 6 店舗を試験的に導入しており、2024 年 2 月までに関東圏の 2 店舗に新たに売場を出店する予定。 2030 年までには 6 店舗合わせて同社の総合スーパー店舗数の 8 割に相当する 240 店舗に広げていく計画だという。

展開していくのは、デイリーカジュアルを専門に手掛ける「トップバリュコレクション」、オケージョンウェアを展開する「スマートメドレー」、スポーツウェアの「スポージアム」、旅行にフォーカスしたウェア・雑貨などを取り扱う「プラスモーブ」、10 代を中心とした若年層をターゲットにした「ダブルフォーカス」、シニア向けの「オトナギ」の計 6 ショップ。 それぞれイオンで取り扱っている PB (プライベートブランド)、NB (ナショナルブランド)からブランドコンセプトに合ったアイテムをセレクトして販売していくほか、タレントやデザイナーなどを起用した取り組みも検討する。

今後は、ショッピングセンターなど同社の他グループ店舗での展開のほか、駅ビルといったイオングループ以外の施設への出店も視野に入れる。 担当者は「GMS の衣料品は好調とは言えない状況が続いている。 シニア層には受け入れてもらえている一方で、若年層の取り込みができていない課題があるので、売場をシーン・年代別に分けることで 30 代以下の人たちが入店しやすい環境を作ることを狙いとしている。」と話した。 (Fashion Snap = 6-2-23)


国内生産を行う「美装いがらし(新潟県糸魚川市)」 自社ブランドやデザイナーズブランドを拡販へ

今や日本で供給された衣料品のうち、国産品が占める数量の割合は 1.5% となっている。 (「日本のアパレル市場と輸入品概況 2023」日本繊維輸入組合調べ) 世界の工場・中国のみならず、ベトナム、インドネシア、ミャンマーなどの ASEAN 諸国から安価な衣料品が入ってきていることが要因だが、ここ数年金額ベースは変わっていない中、単価が低いものが大量に入ってきている現状がある。

創業以来 55 年、ブラウス専業の株式会社美装いがらし(新潟県糸魚川市)は、日本 3 大デザイナー・山本耀司氏によるブランド「ヨウジヤマモト」、国内大手セレクトショップのブランド、デザイナーズブランドの洋服を製造している。 これは海外移転や重衣料と比べて単価が低いことなどから、国内では同業が少なくなってきたという現状があり、同社の手縫いの技術や素材に対応した技術が背景にある。

美装いがらしの五十嵐昌樹専務は「業界の課題としては、根本的には人口減があり、家計に占める繊維製品の支出がまた減ったという業界紙の報道があった。 物が余っている中でどう売っていくか。 各アパレルに聞いてもリアルが戻ってきて 2021、2022 年は前年実績は超えているが、2019 年は超えていないと聞く」と話す。 「コロナ禍の最中は店頭が閉まり、発注がなくなった。 弊社は 1 年目はマスクと防御服で半分の売り上げをカバーしたが、イコール半分仕事がなくなったということ。 それでも 1 年目は増収増益だった。 しかし、2 年目は自社ブランドも閉店し、アパレルも在庫が膨らんでいたので作らず、弊社的には製造の方でかなり影響があった。」

また、「一方で、コロナが 5 類になり、直近 1 年間は年がら年中フル生産だった。 理由は国内でできる会社がないことと、為替の影響、弊社は研修生がおらず日本人のみだからだと思う。(五十嵐専務)」 なお、業界は人材不足が課題。 同社は今年 1 月から 10 数人が入社しており、人材育成に力を入れている。 市内や U・I ターンなどの若年層が多いという。

一方で、美装いがらしでは、全体の 40% が自社ファクトリーブランド(工場発のブランド)「アオ」が占める。 「私はファッションの学校を出たわけでもないからもしれないが、半年前に展示会をして生産するというアパレルのやり方はギャンブルに思えた。 価格決定権がほしかった。(五十嵐専務)」 企画・開発・製造・販売の垂直統合の仕組みが強みで、独自素材の開発や信州大学(長野県)との連携による肌触りの数値化が特徴。 現在、阪急百貨店や新潟伊勢丹で販売するほか、ネット販売や国内約 50 店舗に卸している。

また、同社では、地域でオーガニックコットンを育てて、ベビー肌着を糸魚川市で生まれた子供に届ける「アオコットンプロジェクト」を 9 年前にスタートし、地元糸魚川市内の小学校・中学校などで綿花栽培や服育の授業なども行い、地域コミュニティにも力を注いでいる。 アパレル業界は以前から中国製が当たり前の時代だが、その意味でも逆に「日本製」、「Made in Japan」が大きな付加価値となる。 新潟で意匠性の高い服を作り続ける美装いがらしの今後の動向に注目したい。 (梅川康輝、にいがた経済新聞 = 10-21-23)


入場チケットは不要な衣料品 高島屋がナイトクラブでイベント

大手百貨店が、日本初上陸のナイトクラブでサステナイベントを開催。 高島屋が開催した「サステナブルファッションイベント」は、10 月 6 日に東京・銀座にオープンするシンガポール発のナイトクラブ「Zouk Tokyo」で行われ、着なくなった衣料品が入場チケットの代わりに回収された。 この回収された衣料品に含まれるポリエステルを、ケミカルリサイクルと呼ばれる分子レベルまで分解するリサイクル技術により、繊維などの原料にして再利用するという。

再生ポリエステルの生地を使用した若者に人気のブランドとのコラボ商品もお披露目され、百貨店と接点のない世代をサステナで取り込み、新たな顧客獲得につなげたい考え。 高島屋 MD 本部・氏家友彦マーチャンダイザー「若年層もあるが、昨今ジェンダーレスとかエイジレスもあるので、いろんな層を獲得しないと先はない。」 世界全体では年間 9,200 万トンもの衣類が廃棄されている現実があり、高島屋は商品を販売するだけでなく、回収もセットで行うことで循環型社会の実現を目指すとしている。 コラボ商品は、4 日から全国の高島屋で発売する予定。 (FNN = 10-3-23)


世界的ブランド yoshiokubo がバングラデシュ労働者雇用と廃棄ロスを救う「Phoenix Lab. Project」

国内初、バングラデシュの雇用と廃棄ロスを救うアップサイクルプロジェクトが始動

「Smasell (スマセル)」を運営する株式会社ウィファブリックは、衣料品の輸出大国バングラデシュの工場でアパレル大手企業から数千億円規模でキャンセルされた商品をアップサイクルし販売するプロジェクト「PHOENIX LAB. PROJECT(フェニックスラボプロジェクト)」を始動した。 「Phoenix Lab. Project」では、ポップアップショップを展開し、大阪はルクア 1100、阪急百貨店にて予約先行販売を開始する。

現在、バングラデシュは中国に次ぐ世界第 2 位のアパレル輸出国として急速に経済成長を遂げており、さまざまなファッションアイテムがつくられている。 2013 年に過酷な労働環境で 1,000 人以上の死者が出たラナ・プラザ倒壊事故後、現地の労働環境を守るさまざまな取組が行われてきたが、コロナ禍において衣料品の需要が急減し、縫製工場への注文取り消しや延期が相次いた。 その影響により、1,115 工場が操業を自粛。 輸出オーダーのキャンセルは 3 億 400 万ドル、9 億 5,200 万ピースに上った。

結果、女性を中心に約 400 万人が就業する縫製業の停滞が生活に甚大な影響をもたらした。 (BGMEA : バングラデシュ縫製品製造輸出業協会 2020 年 4 月 6 日)
また、電力供給の不安定さから納期遅れもあり、キャンセル品は慢性的に多く、過剰在庫が山積みになっている、という実態がある。(WTO 世界貿易統計レビュー 2022)

こういった状況を踏まえ、行き場を失った衣料品を良質なデザインに再生し、手ごろな価格で提供することで現地の失われた数百万人規模の労働者の雇用を守り、数千万円規模ファッションロスを救う事を目的としてプロジェクトを発足された。 第一弾はプロジェクトに賛同した、 ミラノコレクション、 パリコレクションと世界を舞台に第一線で活躍し続ける日本ブランド「yoshiokubo」、 同国に特化したOEM の株式会社わんピースと株式会社ウィファブリック(スマセル)の 3 社によって展開されている。 (Eleminist = 9-20-23)


「七日町 1 丁目」にこだわりきょう開店 元大沼社員、旧本店近くに婦人服店

2020 年 1 月に経営破綻した百貨店・大沼(山形市)で、最後の山形本店長を務めた道家英之さん (53) = 山形市 = と食品統括部長を務めた小笠原克巳さん (58) = 同 = が 13 日、旧山形本店に近い同市七日町 1 丁目で婦人服店「サロン・ド・ドゥ」をオープンさせる。 にぎわい創出とともに、旧大沼跡地に商業施設が新設された場合に入居する夢を抱き、場所は「七日町 1 丁目」にこだわった。 破綻後の 20 年 7 - 9 月、商業コンサル会社と元従業員有志が閉店セールを展開。 百貨店として復活する夢が膨らんだが、コロナ禍もあり実現しなかった。 2 人は今年 5 月、大沼と取引のあった会社を受け継ぎ、道家さんが社長、小笠原さんが副社長に就任。 七日町 2 丁目の婦人服店「サロン・ド・ロゼ」に関わった。

その中で新店の話が持ち上がった。 扱うのはアパレル大手オンワード樫山(東京)のブランド「23 区」、「J.PRESS」で、共にかつて大沼で扱った。 安価な衣料品の台頭に伴いアパレル業界は激変の時代で、道家さんは「利益が出るか不安もあった」と明かす。 ただ、2 ブランドは大沼の閉店により同市周辺で扱う店がなかった。 2 人は、山形から百貨店の灯を消してしまったことを悔いていた。 新店は七日町と中心市街地の活性化も狙う。 「やるしかない。」 オンワード樫山の協力もあり、腹は固まった。 スタッフとして元同僚 5 人を雇用した。

12 日は開店準備がほぼ終わり、商品がきれいに並べられた。 小笠原さんは最終確認に当たるスタッフを見て、「お客さまに感動してもらえる店になった」と胸を張った。 10 月 7 日には新たな商品取り寄せサービスも始め、ブランド数や店舗数を増やすことが目標だ。 旧山形本店は 20 年 12 月、競売で市都市振興公社が落札し、市立病院済生館を含めた再開発の検討が進む。 「跡地に商業施設ができるなら、新店を出店の足がかりにしたい。」と道家さん。 その日までに、かつての大沼の客や従業員はもちろん、多くの人が集う店にするつもりだ。 営業時間は大沼と同じ午前 10 時 - 午後 6 時半。 (山形新聞 = 9-13-23)


「円安倒産」再び増加 すでに前年超え アパレル関連の倒産目立つ

帝国データバンクは 8 日、2023 年 8 月 31 日までに発生した「円安倒産」の発生状況についての調査・分析結果を報告した。 円安による輸入コスト上昇等が直接・間接の要因となって倒産した「円安倒産」は、2023 年 8 月に 7 件判明した。 2023 年は 8 月までで 47 件判明しており、すでに前年(2022 年 : 34 件)を上回るなど、円安倒産が再び急増している。 このペースが続いた場合、2023 年の年間倒産件数は 70 件台に到達し、2016 年(98 件)以来 7 年ぶりの水準に近づく見込みとなる。

2023 年の 47 件を業種別に見ると、『卸売業』が 24 件で最多、全体の半数以上を占めた。 次いで、『小売業』が 12 件と続き、『卸売業』と合わせて全体の約 77% を占めた。 特に、繊維原料や衣料製品を輸入に依存する繊維・アパレル関連(製造・卸・小売)が 16 件と目立ち、コロナ禍で売り上げが落ち込んでいるなかで円安による輸入コスト増が追い打ちをかけ、事業継続を断念するケースがみられた。 円安は総じて、輸出企業の売上増加に繋がるほか、インバウンドなどの消費を押し上げるなどメリットも大きい。 しかし、輸入価格上昇により物価高騰が長期化するなか、企業でも円安のマイナス面が顕在化してきた。 円安による原材料やエネルギー価格の高騰が、企業経営に与える影響は日増しに高まってきている。

進む円安基調 増加するコスト負担が企業経営の重しに

9 月 5 日の東京外国為替市場で、円相場は一時 1 ドル = 147 円台に値下がりし、2022 年 11 月以来 10 カ月ぶりの水準まで円安ドル高が進んだ。 欧米との金利格差が縮まらないことで、米ゴールドマン・サックスなどが円の対ドル相場予想を円安・ドル高方向に修正するなど、今後も円安基調が続くとみられている。 足元では、ガソリン価格が 16 週連続で値上がりしているほか、10 月に大手電力 10 社すべてで電気料金の値上げが予定されているなど、円安の押し上げにより燃料費や電気代の高騰が続く。 こうしたエネルギーコスト増加が、ポストコロナで本業を十分に立て直せていない中小・零細企業の経営に追い打ちをかける形で、「円安倒産」はさらに増加する可能性がある。 (Oricon = 9-8-23)


米衣料品店フォーエバー 21 の運営会社、中国発の衣料品 EC サイトのシーインとの提携を発表

カジュアル衣料チェーンのフォーエバー 21 (本社 : カリフォルニア州ロサンゼルス)などを運営する米国アパレル運営会社のスパーク・グループは 8 月 24 日、衣料品の電子商取引 (EC) を手掛ける中国発の SHEIN (シーイン)との提携を発表した。 発表によると、今回の合意により、シーインは米国のブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループと米国のショッピングモールなどの不動産投資信託会社サイモン・プロパティ・グループを含むジョイント・ベンチャー、スパーク・グループの約 3 分の 1 の株式を取得し、スパーク・グループはシーインの少数株主となる。

シーインとフォーエバー 21 は、ともに最新の流行を意識したデザインの衣料品を低価格で販売するファストファッションブランドとして知られているが、シーインはオンラインで商品を販売しているのに対し、フォーエバー 21 はショッピングモールへの出店を中心に実店舗を展開している。 今回の提携により、両社は顧客にリーチする新たな手法を手に入れることになる。

フォーエバー 21 は、約 1 億 5,000 万人の顧客を抱えるシーインの EC サイトでの流通を拡大することが見込まれる。 一方、シーインは、既存の顧客や潜在的な新規顧客が買い物をする米国のモールにおいて、より大きな存在感を示すことになる。 また、米国内のフォーエバー 21 の実店舗内へのシーインの店舗の併設や、EC サイトで購入された商品の返品を可能にすることといった、新たなアプローチをテストする機会を得ることになる。

シーインは主に Z 世代(注 1)から支持されており、同社はインスタグラムや TikTok などのプラットフォーム上でインフルエンサーを起用するマーケティング活動を行っており、近年は米国のファストファッション業界での存在感を高めている。 ブルームバーグによると、新型コロナ禍前の 2020 年 1 月時点では、ファストファッションの市場シェアは 12% だったが、2022 年 11 月には 50% まで拡大した。

他方でシーインは、ファストファッションの生産が環境に与える影響や、非倫理的な労働慣行の疑惑を巡って、強い批判に直面してきた。 同社は米国での新規株式公開 (IPO) を計画していたが、2023 年 5 月には超党派の連邦議会議員が米国証券取引委員会 (SEC) に書簡を送り、同社がウイグル族による強制労働を利用していないことを確認するまでは IPO を認めないよう要請した。

また、同社は「デミニミス・ルール(注 2)」と呼ばれる非課税基準額以下での輸入を利用することによって、他の小売企業に比べて関税の支払い額を低く抑えていることも問題視されている。 米国の規制当局や議員らが中国に密接なつながりや本社を持つ企業を精査する一方で、シーインはその本社をシンガポールに移転しており、中国では商品を販売していないほか、中国からの綿花の調達も否定している。 (樫葉さくら、JETRO = 8-30-23)

(注 1) 一般的に、1997 - 2012 年にかけて生まれた世代。
(注 2) 米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。 デミニミスは 2016 年に成立した「2015 年貿易円滑化・貿易執行法」により、それまでの 200 ドルから、現在の 800 ドルに引き上げられた。