韓国の印象「良い」が「良くない」を初めて上回る 日韓共同世論調査

非営利団体「言論 NPO(東京都)」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」は 12 日、2013 年以来毎年実施している日韓共同世論調査結果を発表した。 相手国に対する印象を「良い」と答えた割合は、日本が 37.4% で過去最高となり、「良くない」の 32.8% を初めて上回った。 一方、韓国では「良くない (53.3%)」が「良い (28.9&%)」を大きく上回っており、温度差が浮き彫りとなった。 元徴用工問題を巡り、韓国政府が 3 月、韓国の財団が賠償金を肩代わりする解決策を発表して以降、日韓首脳会談は 6 回に上る。 こうした活発な要人往来を踏まえ、日韓関係が「悪い」との回答が日本で 21.2%、韓国で 42.0% となり、いずれも前年に比べ約 20 ポイントも減少した。

一方、韓国政府の対日政策を「評価する」との回答は、日本で前年比 22.6 ポイント増の 34.8% だったのに対し、韓国では同 0.5 ポイント増の 21.7% と横ばいにとどまった。 元徴用工問題の解決策を「評価しない」は、日本の 16.7% に対し、韓国は 34.1% に上った。 日本の 32.1% が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に「良い印象を持つ」と回答した一方、韓国で岸田文雄首相に「良い印象を持つ」は 8.5% と低調。 言論 NPO の工藤泰志代表は記者会見で「日韓関係改善は政府主導。首脳に対する印象がお互いの認識にかなり影響している」と分析した。

また、東京電力福島第 1原発の処理水の海洋放出と国際原子力機関 (IAEA) の検証については、「IAEA の検証を信頼できず放出すべきでない」という回答は日本で 2.2% だったのに対し、韓国では 29.6% に達した。 調査は両国の 18 歳以上を対象に 8 - 9 月に行われ、日本の 1,000 人、韓国の 1,008 人から回答を得た。 (川口峻、mainichi = 10-12-23)

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台湾緊張の原因「日本」が増加 中国人の意識をどう読む 日中調査

NPO 法人「言論 NPO」などが 10 日に発表した日中共同の世論調査では、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出問題について、中国には強硬な政府の主張とは異なる意見を持つ人も相当数いることが明らかになりました。 今回の調査結果で、注目すべき点について言論 NPO の工藤泰志代表に聞きました。

処理水放出に「心配している」と答えた中国人は日本人より少し多かったものの、いずれも半数以上が「心配していない」、「現時点では判断できない」と答えるなど、日中で似た傾向になりました。

この結果に驚いた人は多くいます。 日中関係の発展を妨げるものとして処理水問題をあげた中国人は 5.8% とわずかでした。 中国人が処理水の問題を政治対立にするべきではないと考えているのは大事なことです。 一方で中国人の 5 割弱、日本人の一定数 (33.2%) も処理水に不安を感じているのです。 これは日本が不安の解消に向けて努力をしなければいけないということを示しています。

両国国民が「外交努力が足りない」と認識

日中関係で注目していることは何ですか。

今年は日中平和友好条約の締結 45 周年の節目の年です。 この条約は、「全ての紛争を平和的手段で解決する」、「武力による威嚇に訴えない」ことなどを内容としたもので、平和協力の基本原則です。 この条約について「機能していない」と答えた人が日本で 4 割を超え、中国では約 6 割にのぼりました。その理由に両国の国民が「外交努力が足りない」ことをあげているのに注目しなければいけません。 北朝鮮や台湾海峡など様々な問題がある局面で政府間の対話が行われていません。 両国の国民は政府間の骨太の議論を求め、目を背けてはいけないと政府に突きつけているのです。

米中対立の原因を中国人で「米国」にあるとする人が減り、「米中双方」にあると考える人が増えました。

米中対話の進展が一定程度、中国国民に浸透した結果だと思います。 台湾海峡で緊張が高まる原因も中国人で米国と答えた人が減る一方で、日本と答える人が増えました。 これは対話がいかに重要かということを示しています。 日本と米国は同盟国ですが、日本に求められているのは米国の言う通りにやることだけではありません。 地域の安定化を図るために、日本は米国ができないことをやる。 そういった環境を整えることが同盟国の米国を助けることもあります。 それが外交です。

今回初めて核をめぐる問題について調査をしました。

世界における核戦争勃発の可能性について、「近年中」「遠くない将来」にあり得ると答えた中国人が 5 割強、日本人が約 4 割いました。 半数の中国人が危機感を持っているというのは驚きでした。 そしてその理由として両国ともに最も多かったのが「ロシアがウクライナ侵攻で核の使用を示唆しているから」というロシアに起因するものです。 両国民の関心が高い中で、どう日中が核の問題に協力できるのかを考えなければいけません。 (聞き手・岩田恵実、asahi = 10-11-23)


「若い世代ほど中国に親近感」 朝日新聞の記事にツッコミ殺到
中国通「本質的に怖い国、変わらない」

→ 「若い世代ほど中国に親近感」内閣府調査を報じた朝日新聞の記事が話題
→ ネットは「自分の感覚と合致する」との声の一方で「データが信じられない」
→ 中国ウォッチングサイト「黒色中国」のツイッターの指摘は …

朝日新聞デジタルが9月28日に配信した記事が先週末、ネット上で大きな話題を呼んだ。同サイトが配信したのは、『若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化』というタイトルの記事だ。 記事では、「内閣府の外交に関する世論調査からは、あるデータが浮かび上がる」とし、若い世代ほど中国への親近感が高いと指摘したが、ネットでは違和感を抱いた人が続出したようだ。

「このデータは信じられない。」

朝日新聞が引用した内閣府の世論調査によれば、中国に「親しみを感じる」と回答した人の比率は、70歳以上で13.2%、60代で13.4%だった。若い世代になればなるほど、この比率は高まっていき、40代は24.6%、30代は25.7%、18〜29歳は41.6%だった。この結果を朝日新聞は、『若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化』というタイトルの記事として配信した。 この記事について、「これは私も感じるな」「やっぱり自分の感覚と合致する」といった反応があった一方で、「このデータは信じられない」「教育の問題。中国は怖い国。そう教えるべき」といった反応も少なくなかった。

実際に中国に詳しい人はこの記事をどう見たのか。中国ウォッチャーとして知られるWebサイト「黒色中国」のツイッターアカウント(フォロワー8.5万人)は、朝日新聞の記事のもとになった調査について、次のように指摘していた。 こちらは、「中国に親しみを感じるか」、「日本と中国との関係は全体として良好だと思うか」という非常に単純な設問であって、これらの質問をどのように受け止めるかは、人それぞれであろう。 そのうえで、実際の中国がどんな国なのかを正しく伝えるのが本来のメディアの仕事だと警鐘を鳴らしていた。

朝日新聞の記事、「若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化」は、「群盲象を評す」を逆手に取った手法で作られたものであり、若い世代に天安門事件や少数民族弾圧、領土問題など、「実際の中国がどんな国なのか」を正しく伝えるのが、本来のメディアの仕事ではなかろうか。

メディアの "本来の役割" 指摘も

「黒色中国」のツイッターアカウントはさらに、リスペクトできる面もある一方、本質的に怖い国なのは変わらないとし、そうした側面を国民に正しく伝えるのがメディアの役割だと続けた。 現在の中国が優れた製品や楽しいコンテンツを作っているのは否定しない。リスペクトできる面もたくさんある。ただ、中国独特の政治体制により、本質的に「怖い国」なのは変わらない。それを理由に差別や排外主義に陥らず、隣国を正しく理解し、理性的に対応できる世論を作るのがメディアの役割だろう。

また、この記事を受けて、SNSなどでは「この記事が中国に利用されそう」と危惧する人も少なくなかった。 早速、記事が配信された翌日に、中国駐大阪総領事の薛剣氏は、次のようにツイートしていた。記事内でコメントした東京大学大学院アジア情報社会コースの園田茂人教授のコメントを引用した形だ。 「年齢が高い世代は冷戦体制下を生き、西側と東側、市場経済と計画経済といった二分法や対立を記憶し、(中国について)天安門事件では感情を高ぶらせたことも覚えているため、それを修正することは難しい。」 (箕輪健伸、SAKISIRU = 10-4-22)

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若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化

日中国交正常化から 29 日で 50 年となる。 日中関係が冷え込んだまま迎える節目だが、内閣府の外交に関する世論調査からは、あるデータが浮かび上がる。 それは、若い世代ほど、中国への親近感が高いことだ。

「ガチ中華」にハマる若者 受け入れない親は「中国を下に見ている」

中国に「親しみを感じる」とした比率は、70 歳以上で 13.2%、60 代で 13.4% と低迷している。 40 代では 24.6% とやや上昇する。 それが、18 - 29 歳では 41.6%。 全体平均 20.6% の 2 倍超だ。 一体なぜなのか。

「地理のテストのグラフで、一気に伸びている国があれば、中国だった。」

早稲田大 4 年の菱井創さん (22) が、中学時代に中国に抱いたイメージは「急激に発展した国」というものだった。 地理の授業で見る鉄鉱石生産量や電力消費量の推移などの数値で、2000 年代ぐらいから急伸しているのは、中国だけだった。 小学生のとき、中国製ギョーザによる中毒事件が大きな問題となり「中国は怖い国」だと感じた。

しかし、その後も経済成長を続ける中国の勢いに陰りは見られなかった。 高校 2 年のとき、中国の春秋戦国時代を舞台に描いた人気漫画「キングダム」を学校の図書館で全巻読み、「中国の広大さ」を実感。 漢文の授業で「2 千年以上も前の外国語を原文で読める」ことに魅力を感じ、大学では中国の文学や文化を学ぶことにした。

オランダのライデン大学に留学中の楢本珠貴さん (22) は、子どもの頃から世界遺産に興味があった。 紫禁城、万里の長城など数多くの世界遺産を持つ中国は「いつか行ってみたい」国だった。 しかし 2012 年、日本政府による尖閣諸島国有化をきっかけに、中国各地で反日デモが発生。 テレビで日本車が群衆に破壊される様子を見てショックを受けた。

「中国人は反日の人が多いから、親しくなれない」と思っていた。 しかし、3 年前にオランダに留学し、中国人留学生の友だちができ、先入観が崩れた。 「国同士の関係は難しくても、人同士なら仲良くなれる」という事実が新鮮だった。 専攻した国際学を学ぶ中で、欧州から見ると「日本と中国が小さな島をめぐって争うのは不合理。 経済的にも利益がない。」という見方があることも知った。

若い世代が他の世代に比べて中国への高い親近感を示した前述の内閣府調査。 世代間での格差の広がりは、ここ 10 年ほどで目立つようになった。 それは、2010 年に日中の国内総生産 (GDP) が逆転し、その差が開いていった時期と重なる。 アジア各国の国民意識について研究する東京大大学院の園田茂人教授は、対中認識の世代差の主な原因となっているのは、世代によって異なる「記憶の問題」だと指摘する。

年齢が高い世代は「冷戦体制下を生き、西側と東側、市場経済と計画経済といった二分法や対立を記憶し、天安門事件では感情を高ぶらせたことも覚えている」ため、それを修正することは難しい。 一方、若い世代にとっての中国は「すでに発展をしていて、その中に市場経済もある」存在だった。 「市場経済の中で、IT によるコミュニケーションやゲームなど媒介物を利用する彼らにとって、そこでモノが動いている限り、政治についてそんなに目くじらを立てるようなものなのかと見えるのではないか」と分析する。 (山根祐作、asahi = 9-28-22)


日中 50 周年行事が本格化 習氏のお見舞いで始動 祝賀ムードは遠く

今月 29 日に日中国交正常化から 50 周年を迎えるのを前に 24 日、北京市内で現地の日系経済団体などによる記念イベントが始まった。 中国側の行事も始まっているが、険しい国際情勢もあって祝賀ムードは限定的となっている。 節目に日中の指導者がどのようなメッセージを発するかが焦点だ。 24 日、北京市中心部のショッピングモールで始まった記念イベントは、日本料理と中華料理を組み合わせた創作メニューの紹介、オンラインを通した双方のミュージシャンのコラボレーションなどのほか、日本の食品、自動車メーカーなどがブースを出した。

現地の日本企業を中心とする実行委員会と、中国公共外交協会が主催した。 関係者によると、中国当局からイベントの開催許可が出たのは、今月に入ってから。 中国の「ゼロコロナ」政策の影響もあるが、ペロシ米下院議長の訪台などで深まる米中対立の下、日中の政治状況が緊張含みで推移していることが影響したとの見方は強い。 それでも 8 月下旬、新型コロナに感染した岸田文雄首相に習近平(シーチンピン)国家主席が見舞いの電報を送ったことで、「日中関係を落ち着かせ、コントロールしようとする中国指導部のシグナル(日中外交筋)」との受け止めが広がった。

以降、中国公共外交協会、中国人民対外友好協会などが相次いで 50 周年の記念イベントを開催。 「50 周年を機に初心を見つめ直し、中日関係の発展に新たな推進力を注ごう(程永華・前駐日大使)」といった前向きなメッセージを送り始めている。 ただ、中国側の報道などは限定的で、市民に祝賀ムードが広がっているとは言いがたい。 日本留学を経験した妻につきあってこの日のイベントに足を運んだ 33 歳の男性も「正直、自分の周りで 50 周年が話題になることは少ない」と話す。

それでも 10 年前は尖閣国有化に反発する反日デモで記念行事どころではなかっただけに、今月、記念の座談会を開いた日本留学 OB 団体幹部は「開けたことを素直に喜びたい」と話す。 今後は記念日当日の 29 日に向け、日中首脳がどのような形式で、どのようなメッセージを交わすかに注目が集まる。 オンラインや電話による首脳協議の実現には課題が多いが、29 日は中国日本友好協会が迎賓館の釣魚台国賓館で記念のレセプションを開き、中国高官の参加も見込まれる。

習氏が唱える「新しい時代の要請に合致した中日関係の構築」について、どこまで踏み込んだメッセージを出すかは、10 月に発足する新たな党指導部の対日姿勢を占う目安にもなる。 (北京 = 林望、asahi = 9-24-22)

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歴史・台湾「あいまいにせず」 中国外相、日本にくぎ

経団連と在日中国大使館は 12 日、日中国交正常化 50 周年を記念するシンポジウムを東京都内で開いた。 林芳正外相が「建設的かつ安定的な日中関係の構築に向け歩んでいきたい」とのビデオメッセージを寄せたのに対し、中国の王毅国務委員兼外相は歴史や台湾問題に触れ、「原則的問題についてあいまいにしてはならない」とくぎを刺すなど、厳しい日中関係を反映した会合となった。

経団連会館と北京をオンラインで結び開催した。 十倉雅和経団連会長は、国交正常化以降に製造業や貿易分野で結びつきが強まったことに触れ、「日本と中国は緊密で互恵的な関係を構築し、中国各地の経済発展にも寄与してきた」と説明。 長年の企業活動が両国関係を支える基盤になっていると強調した。 一方、孔鉉佑駐日大使は基調講演で「台湾独立を支持したり、挑発的行為に参加したりすることで中日関係にこれ以上のダメージを与えないように」と要求。 中国本土と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を堅持するよう改めて求めた。 (jiji = 9-12-22)


中国のエコノミストが日本を見直した理由

「日本はなぜ経済発展したか、興味があります。」 10 数年前、筆者が北京のある大学で担当した日本概況という授業で、学生に「日本のどんなことに興味があるか」というテーマでアンケートを行った時に、学生数人がこのように述べた。 筆者が北京での留学生活を始めた当時、日本の高度成長や日本製品に興味のある中国人が多かった。 なぜなら、当時の中国は発展段階にあったため、生産力も日本ほどではなかった。 だが、改革開放 40 年で、中国製品の質も上がり、キャッシュレス決済などの技術は日本を超えている。 日本を追い抜いて世界 2 位の経済大国になった中国で最近、日本経済について書かれた評論が出ている。

日本経済回復の「三つの要因」

有名な政治経済問題作家の関不羽氏は「日本の『失われた 30 年』を基準にするのはちょっとおかしい」と題する記事を 8 月に発表し、ネット上で広まった。 記事は冒頭で、次のように述べた。 「『回復力の欠乏』、『デフレ疲れ』という国内経済情勢が、将来的に中国経済が日本の『失われた 30 年』の二の舞になるのではないかと多くの論客を懸念させているが、考えすぎだ。」 ドイツのある金融メディアは 6 月、中国が不動産や地方の財政状況といった要因により、日本が 90 年代に陥った「失われた 10 年」のような停滞期に入ろうとしていると指摘したが、関氏はこのような懸念を否定している。 関氏の記事は、日本の「失われた 30 年」について、これまで言われていた「常識」を覆したものといえる。

記事は、「経済発展が停滞していた時期に社会秩序が安定し、国民生活の質が大きく落ち込むことなく維持された」とし、「非常に得難い成果」と評価した。 その要因として、記事は次の三つの要因を挙げている。

第一に、しっかりとした経済的基盤だ。 「失われた 30 年」は、金融改革や財政改革が遅々として進まず、政府の刺激策にもかかわらず経済が低迷を続けていたというイメージだが、記事は、「日本経済は1995 年まで高い成長率を維持しており、停滞に陥った時も日本の GDP の総量は米国の 7 割に達しており、経済の量と質も、日本は間違いなく先進国だ」と述べ、日本の経済基盤は「しっかりしていた」と評価した。

第二に、良好な外部環境だ。 記事は、日本が国際社会との協調によって経済発展を図ったことを評価し、「日本は『失われた 30 年』以前にグローバルシステムへの統合に成功しており、対外交流や国際経済協力の外部環境は良好だった」と述べた。 日本と国際社会の関わりの中でよく言及されるのは米国との貿易摩擦だ。 記事は、「それは拡大することはなく、日米両国は多くの国際問題で緊密な協力を維持してきた」と日米関係の安定が日本経済の発展に大きな役割を果たしたとしており、「プラザ合意が日本を陥れた」という見方にも否定的態度で、日中両国の一部論調にありがちな「米国従属論」とは一線を画している。

第三に、健全で安定した国内の市場環境だ。 記事は、戦後日本の市場環境は「全体的に安定している」と評価し、「政府と企業の高度な相互信頼、安定した政策期待、規範化した法治環境、十全な財産権保護などの基本的配置が完璧だ」として、「それらは経済停滞期に日本企業がさらに悪化することなく生き残ることを保証した」と述べた。

以上の三つの要因は、「世界でどれだけの国が再現できるだろうか」として、日本特有の優位性として評価している。

中国は日本ほどではない? さらなる発展の土台づくりを行う中国

記事は最後に、「現在の中国の経済情勢は局面打開の道を模索しており、日本の経験と教訓を参考にすることができるが、日本と比較して、大したことないと思うことではない」と結んでいる。 ここで筆者が言いたいのは、中国は日本の上述の三つの要素をまだ備えていないのに、日本の経験を完全に参考にするのは難しいということだ。 中国は改革開放 40 年で対外開放を進め、世界経済における中国のウェイトは高まっている。 中国を取り巻く国際環境は改革開放前より良くなっている。

国内市場は市場経済に合致した経済制度の整備が進んでいるが、記事が挙げた日本の優位性である「規範化した法治環境」や「財産権の保護」は整ってきているが、まだ「完備」の域に達しているとはいえない。 また、「政策期待の安定化」についても、現在さまざまな経済回復措置を講じて人々の期待の安定に努めている。 中国は「資源配置において市場に決定的な役割を果たさせる」ことを主眼に置き、市場競争を妨げるさまざまな要因を取り除こうとしている。 法治社会づくりや諸政策・制度の規範化はその一環だ。 中国政府は 7 月に民営企業のさらなる発展を促す措置を打ち出し、民間セクター重視の姿勢を強調した。 中国政府は「新しいタイプの政商関係」の構築を目標に掲げている。 それは記事で挙げられた「政府と企業の高度な相互信頼」に似ている。

このように、中国は日本経済発展の三要素を築いている段階であるといえる。

「落ちぶれた国」日本、「伸びゆく国」中国の図式は過去のもの?

今年に入ってから、経済関係の個人メディアが論じる日本経済は、「日本が復活した」というものが多い。 彼らは日本の物価が上昇し始め、日経平均株価が上昇を続け、企業が従業員の賃上げを始め、不動産を購入する人が増え始めたという事実を描き、さらに日本の製造業が還流し、起業の波が起き始めたことを考察している。 以前の中国メディアの日本に関する論調は「停滞」、「喪失」、「活気がない」、「希望がない」といったもので、日本と中国は「日が暮れて発展の道がなくなっている国」と「伸びゆく国」と比較して論じられていた。

筆者が 2012 年に中国のテレビ番組に出演した時、共演した中国人の日本問題専門家は、「日本は長期的に停滞して『低調(控え目)』になっていますが、中国は今、給料がどんどん上がるなど前に向かっています」と、「衰退している国」と「伸びている国」の構図で話していた。 これらの認識は、2010 年に中国の GDP が日本を追い越してから、かつて好調だった日本の産業が徐々に色あせ、世界トップ 500 社にランクインする日本企業がますます少なくなる一方で、中国企業がますます多くなり、「日本の製造業神話が崩壊した」という見方が多くなった。 そのため、「日本はすでに貧困大国に転落した」、「日本のエンジニアが競って中国に来て職を求めている」と報じる中国メディアもあった。

だが、現在は状況が変わり、中国人は突然、日本の「復活」に気づいた。 今は「日本にとって、また国運を左右するビッグチャンスが訪れているかもしれない」と言い切る個人メディアもある。 中国のエコノミスト、何帆氏は 7 月 19 日に WeChat に発表した記事で、中国人が米国、欧州経済に注目し、日本にはあまり関心を払わない理由として、「日本は 1980 年代末から 90 年代初めにかけてバブル崩壊を引き起こし、その後、失われた10 年、20 年、30 年に入ったため、日本経済はとっくに駄目になったと思われているからだ」と述べた。 何氏はさらに、状況は常に変化するとして、「タイムスパンが十分に広がると、新たな経済の波が起こる。 日本経済は昔とは少し変わってきたようだ。」と述べ、日本経済に改めて注目する必要性を説いた。

「日中関係改善の突破口?」中国エコノミストが日本経済を再評価

中国人が日本経済に注目したのは、中国経済の現状と関わりがある。 3 年にわたるコロナ禍による経済不振で、今後の中国経済に対する人々の期待は以前ほどではなくなった。 また、不動産業の不振や地方財政の悪化、若者の失業問題など課題が多い。 日本は「失われた 30 年」の中で、財政、金融、雇用などの面で課題が多かったが、現在はある程度持ち直したため、日本に学ぼうという空気が出てきたのだろう。 今年に入ってから、日本企業を訪問した中国企業視察団が非常に多くなっているが、それは「日本に学ぶ」という中国国内の空気をある意味体現している。

中国政府は一貫して「外国の経験に学ぶが、やみくもに引き写さない」という態度をとっている。 そのため、中国の一部主流メディアは慎重な姿勢を保っている。 例えば、「21 世紀経済報道」は社説で「日本経済の回復を理性的に見る」としている。 中国メディアの言葉で、「理性的に見る」とは「やみくもに崇拝するな」という意味だ。 中国は世界 2 位の経済大国になっており、改革開放開始直後と違い、外国のものを「やみくもに崇拝」するようなことはないだろう。 ただ、中国人、特に中国のエコノミストが日本経済に注目していることは、日中関係にとってプラスとなる。 相手国に「全く無関心」という状況であれば、両国関係の改善は望めない。

現在、日中の政治関係が悪化しているが、経済面、文化面などを突破口にして「官(政府)」を動かすことが重要だと筆者は考える。 中国のエコノミストが日本経済を「再評価」したことは、両国関係改善に向けての中国側の一種の「シグナル」とも取れる。 (吉田陽介、Record China = 9-23-23)


中国人に対する発言「差別的」とされた市議 謝罪決議の非掲載求める

大阪府泉南市の添田詩織市議 (33) が 7 月の市議会定例会の一般質問で、中国人に対する差別的な発言をしたとして、市議会が謝罪と反省を求める決議をした。 添田氏は 12 日、「決議の手続きは市議会規則に反しており違法だ」として、市議会の広報誌に決議内容を掲載しないよう求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。

添田氏は 7 月 7 日の一般質問で、市が採用している国際交流員について取り上げ、「市民目線でいえば、中国籍の方が就くのは大丈夫か、ありえへん、怖いという声がある」と述べた。 市教育委員会によると、国際交流員は市内の小中学校に通う外国人の児童・生徒への通訳や異文化交流の授業を担当し、4 人のうち 1 人が中国出身だという。 添田氏の発言について、山本優真市長と冨森ゆみ子教育長は、国連の人種差別撤廃条約に違反し、ヘイトスピーチ対策法が定める「不当な差別的言動」にあたるとして、田畑仁議長に抗議文を提出した。 人権団体からの抗議も相次ぎ、市議会は 7 月 26 日、添田氏に謝罪と反省を求める決議を全会一致で可決した。

一方、添田氏はこの決議が実質的な懲罰にあたると主張。 懲罰動議について「事案の発生から 3 日以内に提出」と定めた市議会規則に違反するとして、広報誌「議会だより」に掲載しないよう求めた。 12 日の申し立て後に行った記者会見では、自身の発言について「市民の懸念を代弁したに過ぎない。 市民の暮らしと安全を守るためのもので、差別やヘイトというのは筋違いだ。」と主張した。 添田氏の申し立てを受けて、山本市長は取材に対し、「市民の声だとしても、個人を特定される形で公の場で取り上げ、不当な差別を助長する恐れがある」、田畑議長は「法的手続きを取るのであれば反論していく」とコメントした。 (森下裕介、田中章博、asahi = 9-12-23)


「世界に一つだけの花」が私と日本の出会いだった - 中国人学生

原題 : 音楽をコミュニケーションの掛け橋にしよう

強いリズムの打楽器を伴って中国の伝統楽器二胡を奏でる女子十二楽坊は「茉莉花(ジャスミンノハナ)」のような中国の古典曲のみならず、自由奔放な西洋音楽をも中国の民族楽器で演奏したので、日本でも一大ブームを巻き起こしました。 まだ幼なかった小学 1 年生の時、彼女たちが演奏する不思議な美しい曲を聴きました。 それが「世界に一つだけの花」、私と日本の出合いでした。

歌詞の意味も分かりませんでしたが、受験勉強や入学試験など何かに真剣に取り組んだ時に、いつもこの曲を心の中で口ずさんでいました。 その時、「私も楽坊のお姉さんたちと同じように、二胡を持って舞台に上がりたい」という夢が心の中に芽生えました。 このことをきっかけに、日本に興味を持ち、二胡を学び始めました。

2011 年 5 月 7 日、東日本大震災の被災者の方々を支援するために、著名な二胡演奏家崔学東さんが日本の三味線演奏家浜盛重さんと、愛知県名古屋市の中村文化小劇場でチャリティーコンサートを開催しました。 この中日両国の演奏家が共演した演奏会では、二胡の穏やかで低い響きと三味線の南方風の音色が鮮やかにコラボレートし余韻はいつまでも私の心に響いていました。 そして、観客席で曲名すら知らない曲に目を潤ませている人々の姿を見て、音楽には心を動かし、共感させる力があることを実感しました。 「私も二胡を引こう、美しい音で相手に感動を伝えたい」と、子供のころから持っていた心の夢は、さらに大きく育っていきました。

その夢を胸に、2020 年 9 月、私は西安外国語大学の日本語科に入学し、日本語を勉強するために、二胡を背負い西安へ向かいました。 2 年生になってから、相互学習で日本の関西外国語大学の風花さんと知り合いになりました。 風花さんは中国には一度も来たことがありませんが、中国文化に憧れを持っている明るい日本の女の子です。 私が二胡を演奏しているビデオを彼女に送ったら、「これが二胡、大好き!」と彼女はたいへん興奮していました。

私は「そうなの、私は小学 1 年の頃からずっと二胡の練習をしていたの。 演奏会にも出たこともあるのよ。」と、自慢げに答えました。 「へえー、かっこいい! 私はまだ中国に行ったことがないんだけど、二胡の音を聞くとね、すぐにまだ見ぬ中国が心に浮ぶわ。 音楽ってそこまでの不思議な力があるのね。」と風花さんは言いました。 「音楽の力」、彼女と音楽の話を重ねていくうちに、その言葉が私の心に実感として沸いて来ました。

中国の著名な社会学者、人類学者である費孝通先生は文化の交流について、「各美其美、美人之美、美美与共、天下大同」と述べておられます。 それは、「人々には美しいところがある。 それを見つけて、さらにその目で人の美しさを見つけようとすれば、世界は一家族のごとく睦まじくなるのだろう。」という意味です。 確かに、人は環境、言葉、思想、肌の色もそれぞれ違えば、性格や顔形も一人ひとり違います。 しかし、その違いこそが、まさに「世界に咲く一つだけの花」のように、美しいものではないでしょうか。 音楽もそうだと思います。 たとえ歌詞や曲名が分からなくても、その曲が持っている本来の美しさに人は心を打たれるのです。 崔学東さんの二胡に涙した観客、それがそのことをもの語っていると思います。

これからの人生で、日本人に限らず、いろんな国の人々と交流する機会があると思います。 その時、たとえ言葉が通じなくても、「音楽の力」を掛け橋にしてコミュニケーションをしたら、きっとお互いの心の距離を縮め、親近感を高めることができるだろうと思います。 これが、二胡を練習し、日本語を勉強してきた私の大きな宝物だと思っています。 (覃越・西安外国語大学、Record China = 9-3-23)


「ドンキのパクリ」と言われた中国の店、閉店次々 激安人気だったが

中国で「ドンキのパクリ」と言われたディスカウントストアが相次いで閉店している。 日本の「ドン・キホーテ」に似た看板の「BOOM BOOM MART 繁栄集市」は、賞味期限が近い商品を激安価格で売って若者の人気を集めた。 2020 年の創業から約 2 年で上海などに約 20 店を出し、1.5 億元(約 30 億円)を売り上げたという。 だが、中国メディアによると、今年 3 月ごろから卸業者と支払いの不履行などでトラブルになり、少なくとも 15 件の訴訟を抱えているという。

23 日に上海の店舗の電話に出た関係者とみられる男性は「店はすでに封鎖した。 少し前に身売りの話もあったが、それもかなわず閉店した」と話した。 ほかの店舗もすでに営業していないという。 香港メディアは「『偽物ドンキ』、賞味期限切れ間近の商品を販売 2 年で破産へ」などと報じている。

賞味期限近づいた菓子、値段は?

日本で「ドン・キホーテ」などを運営する「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス (PPIH)」は、海外向けには香港や台湾などで「DON DON DONKI」を展開している。 19 年に香港で開店を始めたドンキは、新型コロナ禍で香港人が日本に旅行に行けないことから「日本を疑似体験」したい人を引きつけてきた。 繁栄集市も「巣ごもり需要」を狙い、ドンキがまだ進出していない中国本土に出店したとされる。

繁栄集市の売り場の写真や、買い物をしたという消費者らによると、エビ味の袋菓子が 1.5 元(約 30 円)、ポッキーは 4,2 元(約 85 円)で中国本土の物価の中でも比較的安く、特価の時はアルコール飲料が 1 本 1 元(約 20 円)で売られていた。 店舗紹介のアプリには、消費者とみられる人の「賞味期限があと 2 カ月に迫ったチョコパイの 30 個入りを 15.8 元(約 315 円)で買った」などと笑顔のマークがつけられた投稿が並ぶ。 市場価格の半額ほどの値段だ。 「買ってすぐ食べるから、実利がある」と記す人もいた。 創業者は、22 年までに 60 店舗まで増やし、23 年には上場計画もあったとされる。 (広州 = 奥寺淳、asahi = 8-26-22)


ユニクロ、ダイソー酷似で急成長 異形の中国企業が突然の「脱日本」

「ばかげている。 これまで散々、コピーをしておきながら。」

19 日、記者の携帯に、香港人の 30 代会社員からこんなメッセージが送られてきた。 この知人がそう怒ったのは、中国の雑貨チェーン「名創優品産業」が「脱日本宣言」を発表したことに対してだ。 名創優品という名前に心当たりがない人ならば、まず同社の店舗の写真を見てもらいたい。 3 年前、米国で撮影したものだ。 日本語のカタカナで「メイソウ」。海外の消費者に、まるで日本企業を名乗るかのようだ。 そして、このデザインはまるで - -。 そう。 名創優品は「ユニクロとダイソー、無印良品を足して 3 で割ったような中国ブランド」と言われながら急成長し、世界に 5 千店舗以上を展開してきた。

「パクり」と呼ばれても押し出してきた日本を …

これまで「パクリ」といわれても日本を前面に出してきた同社が、「消費者を傷つけた」と謝罪し、「脱日本宣言」をした。 背景に何があったのか。 「日本のデザイナーによるブランドとして運営してきたことに、多くのネットユーザーからの批判を招き、消費者の感情を害してしまいました。 慚愧の念に堪えず、謝罪します。」 「メイソウ」、「MINISO」として、世界約 100 カ国に 5,113 店舗(5 月時点、うち中国は 3,197 店舗)を展開する同社が突然、こんな内容の謝罪声明を出したのは今月 18 日だ。

声明は続く。 2015 年から 18 年にかけ店舗の世界展開を進めたころ、日本人を首席デザイナーに迎え、「日本人デザイナーによるブランド」と対外宣伝してきたと説明。 これについて、「会社が成長する初期段階で、ブランドの立ち位置や営業行動で過ちを犯し、回り道をしてしまった」と謝罪した。 さらに声明は、謝罪にとどまらない。 同社は、海外展開を進めるうえで、「深刻な過ちがあった」とし、関係した幹部を処分したことも明らかにした。

炎上また炎上

「深刻な過ち」が何かは明らかにしていない。 しかし、今月に入り、同社がギリシャで事業展開を始めた際の 18 年の式典で、日本とギリシャ国旗が掲げられていた写真がアップされて、中国のネット上で炎上。 「中国企業なのに日本の国旗を掲げるのは受け入れがたい。 祖国への裏切りだ。」などと批判が集まった。 ブルガリアやイラン、モンゴルと戦略的に業務協力を結ぶ式典でも、机の上には中国国旗ではなく、日の丸が掲げられた写真がネット上で暴露された。

また、7 月にはスペインの SNS で公表した同社のディズニー関連商品の告知で、キャラクターが「芸者の服装を身につけている」と表現。 これも中国のネット世論から「これは中国の旗袍(チーパオ)だ」と指摘を受けて、非難を浴びた。 こうした事情が背景にあったとみられる。 同社はこれまで、ユニクロに似た「メイソウ」とカタカナで書かれた赤い看板を店舗に配置。 買い物袋には「MINISO JAPAN」と大きく記載し、商品の会社説明欄には「東京都中央区銀座3丁目」の住所が記載されていた。

中国のブログでも、「名前はダイソーと無印商品のパクリで、ロゴはユニクロのまねだ」と揶揄されてきた。 同社の本社は中国南部の広州市だ。 にもかかわらず、商品のパッケージで「銀座」を語っていたので、そもそも銀座の住所が実在するのか記者は 19 年に訪ねたことがある。

銀座の住所、訪ねると

雑居ビルに入る小さな一室を訪れると、男性の中国人社員と数人のスタッフが勤務していた。 確かに事務所はあったが、パッケージで会社の住所を語るほどの規模ではなかった。 一方、広州の本社にも行ってみたが、こちらは旧市街にある金色のビルに大きな事務所があった。 当時、広州本社の広報担当者にどこの国の企業かと尋ねたら、「中国のブランドだが、日本人によるデザイン」と回答。 あいまい戦略ながら、日本のイメージをブランド戦略に利用していることは明らかだった。

こうして世界展開を進め、21 年度に 90 億 7 千万元(約 1,800 億円)を売り上げる雑貨チェーンに成長。 ダイソーやユニクロを知らない国の消費者には、「ミニソウのブランドがオリジナルに見える(知的財産権に詳しい日本人弁護士)」ともいわれた。 ただ、名創優品によると、20 年ごろから、「JAPAN」のロゴ入り買い物袋をやめるなど、日本の露出を減らし始めたという。

18 日に広州の店舗で確認すると、「銀座」の住所が印刷された商品はタオルなど一部の商品にとどまっていた。 さらにここ数年は、米ディズニーやマーベルと提携し、それらの商品展開も進めるなど、日本のイメージからの転換を少しずつ図っていた。 それでも、謝罪に追い込まれたのは、中国でもネット世論の圧力が強いことが背景にある。

「愛国」強いるネット世論

中国では、強制労働が疑われる新疆ウイグル自治区の綿花を使用しないと公表したスウェーデン衣料品大手 H & M など、欧米企業が非難の的になり、相次いで閉店に追い込まれている。 中国の企業であっても、ひとたびネット上で炎上すれば、謝罪や処分をして、顔の見えない世論の怒りを収めないと事業に影響が出かねないのだ。 さらに、最近の中国では、日中関係をめぐる市民感情が悪化していることも関係している可能性がある。 名創優品の謝罪を伝えるニュースサイトには、こんなネットユーザーの書き込みがずらりと並ぶ。

「中日関係が最近悪くなり、日本ブランドを偽るうまみがなくなったから、祖国に回帰したいのだろう。」
「企業は利益の前に、愛国であるべきだ。」

一部には、「旧ドイツのナチスは民族への恨みから生まれた。 私たちのネット上の民族主義をみて、心配にならないのか。」という理性的な声もある。 しかし、こうした書き込みも攻撃対象になり、企業は「愛国」の側にたって、炎上の火消しに力を注がざるを得ないのが現状なのだ。 今月 10 日には、江蘇省蘇州の日本食レストランが並ぶ通りで、和服を着てコスプレの写真を撮っていた若い女性が治安関係者に連行されたとされる事案も発生。 女性は「中国人は和服を着ることはできない」と大声で怒鳴られ、和服を引っ張られる動画がネット上に出回った。

これについて、共産党機関紙・人民日報系の環球時報前編集長の胡錫進氏は、「日本が米国と協力して中国を抑え込もうとし、中日関係が緊張していることから、民衆の反日感情を刺激したのだろう」と指摘。 最近の日中関係をめぐる市民感情の悪化が、こうした事案を生んでいると分析する。

「来年 3 月末までに脱日本の作業を完了させる。」

名創優品は謝罪声明のなかで、宣言した。 そして、こう続けた。

「正々堂々と、中国ブランドとして、中国の文化を発揚していく。」

「ジョークか」 それでも優先させるもの

まったく恥を知らない。 正々堂々と中国ブランドとは、ジョークか - -。 冒頭の知人からの記者へのメッセージは、そう続いていた。 このように、同社の宣言にあぜんとする人は少なくない。 けれど、消費者に、何を今さら、矛盾した対応だと思われようとも、謝罪を優先せざるを得ない事情が、いまの中国社会にはあるようだ。 知的財産権に詳しい西村あさひ法律事務所の野村高志・上海事務所代表はこう語る。

「中国では、この種の問題は長引くと沈静化せず、激しさを増すことが多い。 このため迅速に社会に向けておわびし、収束をはかることが定型のパターンになっているのです。」 (広州 = 奥寺淳、asahi = 8-20-22)


秋葉国家安全保障局長、中国・楊氏と会談 台湾情勢などで 7 時間

秋葉国家安全保障局長は、中国の外交を統括する楊潔※チ政治局委員と 7 時間にわたって会談しました。 台湾海峡をめぐる緊張が高まる中で会談が行われた背景には、日中国交正常化 50 年の節目に、関係が決定的に悪化するのを避ける双方のねらいがあるものとみられます。 (※チ = 竹かんむりに褫のつくり)

台湾海峡をめぐっては、アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が、大規模な軍事演習を行うなど緊張が高まっていて、発射された弾道ミサイルの一部が、日本の EEZ = 排他的経済水域の内側に落下するなど、日中関係にも影響が及んでいます。 今回の会談は中国の呼びかけで、17 日午後に北京に隣接する天津で行われ、7 時間にわたって意見が交わされました。

秋葉局長は、中国軍の軍事演習は、地域や国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるものだとして抗議し、自制を求めました。 一方で、両国の国交正常化 50 年の節目を来月に控えていることも踏まえ、対話の重要性を再確認し、両国の「建設的かつ安定的な関係」の構築に向けて対話を継続していくことで一致しました。 日中両国は、中国が海洋進出の動きを強めていることに加え、ウクライナ情勢での立場の違いなどもあり関係が悪化していて、台湾情勢の緊張も波及し、さらに厳しさを増しています。

今回の会談の背景には、国交正常化 50 年を前に、関係が決定的に悪化するのを避ける双方のねらいがあるものとみられます。 日中関係をめぐって、岸田総理は先の記者会見で「今のような時こそ、しっかり意思疎通を図ることは重要だ」と述べていて、政府としては、国交正常化 50 年の節目も見据えつつ、関係改善の模索を続けていく方針です。

楊氏「台湾問題は中国と日本両国間の基本的な信頼に関わる」

中国外務省によりますと会談の中で、楊政治局委員は「台湾は、中国の領土の不可分の一部分だ。 台湾問題は中国と日本の関係の政治的な基礎、そして両国間の基本的な信頼に関わるものだ」と述べました。 そのうえで、日中関係について「中国と日本の 2000 年以上の歴史と国交正常化 50 年の歩みは、平和共存、友好と協力が両国関係の唯一の正しい選択だということを明確に示している。 日本は、両国と両国の人々の長期的な利益に焦点を当て、中国に対する正しい認識を確立し、前向きで現実的かつ理性的な対中国政策を追求すべきだ。」と強調したということです。 (NHK = 8-18-22)