青森の「黒いダイヤ」はほとんどが中国向け … 輸出停止でホタテも「国内にあふれている」

東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止したことを受けて、青森県内の水産関係者に動揺が広がっている。 県産水産物の輸出は多くが中国向けだからだ。 県内水産関係者は販路開拓を模索するが、設備投資のハードルは高く、影響の長期化も懸念される。(鈴木瑠偉)

通関できず

「中国向けに輸出したホタテ 50 トンが通関できず戻ってきた。 輸出停止で、さらに 350 トンの在庫がある。」 「国内にホタテがあふれて相場が下がっている。」 8 月 31 日、中国の禁輸を受けて宮下宗一郎知事が緊急的に開催したホタテ加工会社との意見交換会では、こうした苦境の声が寄せられた。 宮下知事は「売り先の確保に新たな手を打たなければならない」と決意を述べた。

禁輸措置の余波は「黒いダイヤ」とも呼ばれるナマコにも広がる。 中国でナマコは高級食材として扱われ、水揚げしたもののうちほとんどは中国に向かう。 10 月にナマコ漁が解禁される平内町漁業協同組合では、ナマコの売り上げが年間 10 億円ほどに上り、ナマコだけで生計を立てる漁師がいるほどだ。 同漁協の担当者は「このままではナマコの値段がつかない。 国の対応に尽きると思う。」と解禁前の解決を望んだ。

中国依存脱却を

日本貿易振興機構(ジェトロ)青森によると、2021 年の県内水産物輸出のうち、金額ベースで 50% 以上が中国向けだった。 中国は数少ないナマコの消費国であるほか、水産加工業が発展しており、自国で再加工して米国などに輸出できる殻付きホタテの需要が高い。 人員不足に悩み、殻むきが難しい県内水産業にとっては理想的なビジネスパートナーだった。

ただ、処理水の海洋放出は数十年間続く見通しで、禁輸も長期化する恐れがあり、中国依存からの脱却は急務だ。 野辺地町のホタテ加工会社「マルイチ横浜」の横浜充俊社長は新たな輸出先としてシンガポールなどのアジア諸国に目を向けるべきだとして、「殻むきの機械化や高付加価値化など、他の市場に打って出るには設備投資が必要。 中国市場がなくとも水産業が成り立つよう、国や県に支援してほしい。」と訴えた。

解決の道筋は

食品の輸出入に詳しい弘前大学の石塚哉史教授(食料経済学)は「国内市場が先細る中、巨大な中国市場に代わる輸出先はなく、販路拡大も難航する恐れがある。 1 次産業の発展には解決への道筋を立てることも重要だ。」と指摘する。 中国の禁輸は世界貿易機関 (WTO) の食品安全に関する衛生協定に基づくもので、解決へのルールが整備されている。 衛生協定では、輸入制限は科学的根拠に基づくことなどが求められ、日本政府が WTO に提訴し、不当な措置だと認められれば、中国は輸入を再開することになる。

ただ、中国はこれまでも尖閣諸島を巡る対立でレアアース(希土類)の実質的な禁輸に踏み切るなど、貿易制限が「外交カード化」しているとの見方もある。 石塚教授は「提訴などの硬派な対応だけでは、農産物への影響拡大など、報復につながりかねない。 産地を守るためにも、政府は 100 回批判されれば 101 回説明する覚悟で打開に動くべきだ。」と述べた。 (yomiuri = 9-6-23)


塩害か? 収穫目前に控える新潟こしひかりに異変
 田んぼが茶色く稲が枯れる … 初めての出来事に農家も驚き隠せず

こちら、田んぼなんですけど、茶色に染まっていますね。 うわーこれはひどい …。(ディレクター)

収穫を目前に控えるブランド米「コシヒカリ」に、今、異変が起きています。 9 月 4 日、めざまし 8 は、米の生産量が日本一である新潟県に向かい、田んぼが茶色に染まってしまった原因を取材しました。 新潟市北区の阿賀野川沿いでは、美しい緑色の田んぼが広がる一方で、多くの田んぼが茶色く変色しているのが見てとれます。

初めてなんだもんだから "塩害" というのが、これ(茶色のところ)が全部。(被害に遭った米農家)
赤くなってるところ? 茶色くなっていますね。(ディレクター)
縦にね。(被害に遭った米農家)

なぜ、稲が茶色に? 被害の原因は塩害か?

稲が枯れた理由は「塩害」とみられており、この地で 50 年以上米を栽培する農家も驚きを隠せません。

8 月 11 日か 12 日に、阿賀野川の水を田んぼに入れているわけだけど、その水をなめたんだけど、ものすごくしょっぱい。 ものすごいよ。(被害に遭った米農家)

この周辺では、約 11 ヘクタールにわたって収穫直前の稲が枯れる被害が出ています。 原因とみられるのは今年の猛暑。 新潟市では、7 月下旬以降雨がほとんど降らず、深刻な水不足になっていたといいます。 被害が出た田んぼは、河口から約 10km 離れた、河川敷にあるのですが…、渇水で川の水位が下がったことで海水が逆流し、農業用水に塩水が混ざったとみられます。

やはり今年は、暑かったですか?(ディレクター)
暑い暑い、だから(米に)毎日水をかけてた。(被害に遭った米農家)
かけてた水がもしかしたら?(ディレクター)
だめだった …。(被害に遭った米農家)

茶色の米を手に取ってみると、もみの中に米粒が入っていません。 茶色の米は、米粒が実っているように見えますが、よく見ると枯れているものがほとんど。 中には、米粒が入っているものもありますが、食べてみると …、

あ、(塩味が)します。 塩辛いまではいかないですけど、初めて口に入れた瞬間に塩っぽい味がしましたね。(ディレクター)

田んぼの塩害について専門家は?

田んぼの調査に入った新潟大学農学部の三ツ井敏明教授にこの状況について伺いました。

一般的なその水田土壌に比べて、7 倍ぐらい塩分が、塩分濃度が高いということを確認しています。 植物の成長を抑えてしまうぐらいの悪影響があります。(新潟大学農学部三ツ井敏明教授)

三ツ井教授によると、鉄分が酸化し、稲が赤茶色になっている可能性があるといいます。 その上、被害は長期化する恐れも。 問題解決には、雨や雪などで土壌に含まれる塩分が流れていくのを待つしかないというのです。

塩ってこんなにことになっちゃうんですね。(ディレクター)
初めてだからわからないって。(被害に遭った米農家) (FNN = 9-5-23)


「大曲の花火」でヒマワリの大輪を夜空に ウクライナの平和願って

日本三大花火大会のひとつで、日本一の花火師を決める「大曲の花火(第 95 回全国花火競技大会)」が 26 日、秋田県大仙市の雄物川河畔であった。 全国から選抜された東京や愛知、福岡など 12 都県の 28 社の花火師が腕を競い、夜空に 1 万 8 千発の大輪を打ち上げた。

競技の合間に地元 4 社が共同で打ち上げる企画は、今年は「平和」がテーマ。 2 千発の花火でウクライナの国花ヒマワリを表現し、ロシアの作曲家・ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」が添えられた。 「火薬は使い方を誤れば人々を悲しませ、花火にすれば感動を呼ぶ。」 企画した地元・北日本花火興業の今野義和社長 (59) がメッセージを込めた。

競技は、煙で夕空に色模様を描く「昼花火」でスタート。 日没後に「夜花火」へ移り、伝統的な大型の 10 号玉と、音楽に合わせて花火につけられたタイトルを表現する創造花火が打ち上げられた。 4 年ぶりに来場制限がなく、露店も復活。 ネット販売では最高額 5 万円のプラチナ席が 5 分で完売し、約 10 万人分の有料観覧席が売り切れた。 (室矢英樹、asahi = 8-26-23)


南魚沼産コシヒカリが … 水不足、農業に打撃 首都圏でも懸念

記録的な猛暑が続く中、新潟県、福島県と長野県の一部などで水不足が起きている。 農作物にも深刻な被害が出始めた。 台風の上陸などで大雨が降った地域がある一方で、少雨に悩む地域があり、首都圏でも水不足が懸念されている。 良質なコシヒカリの産地として知られる新潟県南魚沼市。 「枯れて実がついていない。 こうなると、もういくら雨が降っても元に戻らない。」 約 80 ヘクタールの田んぼでコメを育てる農家の関隆さん (71) はそうつぶやき、うつむいた。

貯水率 0% のダムも

目の前に広がる約 15 アールの田んぼでは、青々としているはずのコシヒカリの稲が 3 分の 1 ほど変色して黄色みを帯びていた。 枯死したためという。 地面は乾燥で白くなり、ひび割れていた。 新潟県は梅雨明けしたとみられる 7 月 21 日から晴天が続き、新潟地方気象台によると、今月 23 日までの降水量は主要な 17 の観測地点のうち 9 地点が平年の 1 割未満。 農業用の長福寺、坪山両ダム(いずれも十日町市)では貯水率が 0% になった。 気温も高く、農作物に被害が広がっている。

県の 22 日時点のまとめでは、枯死などの被害が確認されたのは、県の農地全体の 0.4% にあたる 614 ヘクタール。 中でも深刻なのがコメで、225 ヘクタールに上る。 枯死を免れても品質への不安は尽きない。 品質が落ちれば価格が下がり、生活に直結する。 関さんは「自然相手だからどうしようもないが、何もできず稲に申し訳ない。」と肩を落とす。

農業用水の供給を停止

雨が降らず、農業用水の供給が停止された地域もある。 福島県では羽鳥ダム(天栄村)を水源とする矢吹原土地改良区(矢吹町)で今月 18 日のダム貯水率が 16.4% まで低下し、水底の一部が露出するほどに。 同日から農業用水の供給を止めた。 改良区では白河市や矢吹町など県南 5 市町の約 1,350 ヘクタール分を賄っていた。 本来なら 9 月 10 日まで供給するはずだったという。 今季の供給が始まった 5 月 8 日時点の貯水率は例年より少ない 87%。 「今年は雪解け水も少なく、供給は抑えめにしていた」と担当者。 しかし、その後も雨に恵まれず、貯水率の低下が止まらなかった。

供給エリアの下流域ほど状況は厳しく、「コメの実入りが悪くなりそうだ」といった農家の声も届くが、打つ手がないのが実情という。 福島県によると、農業用水の供給ができなくなった地区はほかになく、深刻な水不足は限定的という。(井上充昌、荒海謙一、asahi = 8-25-23)


プロポーズにバラの花束は古い? 10cm の差が変える業界の慣わし

花の生産地に変化が起きている。 きっかけは 4 年前、長さに新しい規格が追加されたことだ。 大きな花束から小さな花束へ。 需要の変化に対応するためだったが、思わぬ好循環も生まれた。

70 センチにばっさり 「今までは絶対なかった光景」

7 月下旬、福島市の JA ふくしま未来花卉(かき)共選場。 お盆に向けた小菊の出荷作業が最盛期を迎えていた。 農家から納入されたばらばらの長さの小菊を、アルバイト従業員が 10 束ほど手に取り、機械を使って下半分の葉を落とす。 さらに茎をばっさり。 長さはどれも70センチだ。 箱詰めされ、「未来小菊」として東京の卸市場へと出荷される。 「今までは、絶対になかった光景」と園芸係長の斎藤孝太郎さん。 切り花の値段は、市場の競りで決められる。 その基準は長さと質。 特に大輪菊やスプレー菊、小菊の場合は長さが重要だ。

自宅に飾りたい スーパーで花を買う人増加

以前は長さ 80 - 90 センチがランク上位「秀」の条件で、そこから段階式に値段が下がっていった。 1970 年後半 - 80 年代前半から、業界の慣行として続いてきたという。 その結果、「質が良くても、長さが足りないと低価格になっていた」と卸最大手の大田花き(東京都)営業本部の大西克典副本部長は話す。 ただ、自宅用の花束なら 50 - 60 センチもあれば十分。 長くても結局、花屋やスーパーでばっさりと切られることに。 消費者の購入代金には、不要な枝や葉を捨てる費用も含まれていた。

大西さんによると、最近は、スーパーから短く切ってほしいと依頼を受けることも増えていたという。 この矛盾を解消するため、2019 年、大田花きが事務局を担う「フラワー需給マッチング協議会」が、従来より短い「スマートフラワー」といわれる規格を追加した。 菊の場合は70センチだ。 スマートという言葉には、無駄を無くすという意味を込めた。 大西さんによると、リンドウやキキョウなど、長さよりも品質が重視される花もある。 ただ、生産者は「長くて立派なものをつくって評価されたい」とい意識で花を育てるため、「1 本単価」が重視されてきたという。

ただ、それではスーパーなど、同じ品質で、決められた量を定期的にほしいと考える顧客には対応しにくい。 大田花きのまとめでは、94 年には切り花を花屋で購入する人が 7 割で、スーパーマーケットで買う人は 1 割ほどだった。 19 年には、花屋とスーパーが 3 割強で拮抗している。 従来の規格を保ちつつ、スマート規格を追加することで、販売先の需要に応え、新しい消費者を開拓することが目的だという。 生産地にも変化が起きている。 福島の小菊の場合、需要がピークになる 7 月に合わせて、4 月下旬に植える。 日照時間や気候を考えると、この時期が最適だ。

だが、雨が少なかったり、猛暑が続いたりすると、7 月になっても 80 センチまで伸びきらず、捨てられたり、破格の値段で買いたたかれたりするものもあったという。 80 センチ以下の花は規格外として、出荷しない生産者も多かったという。 「品質はよいのに、もったいなかった」と斎藤さん。 「スマートフラワー」規格を追加後は、こうした花を出荷できるように。 生産地で不要な葉や茎を取り除くため、箱に詰められる量も増え、輸送コストやゴミの量も減ったという。

新規参入が増え、人手不足解消に

効率化も進んだ。 JA ふくしま未来では 2 年前、加工場を本格稼働。 お盆などのかき入れ時には、農家から花を集め、加工を一手に担うようになった。 スマートフラワー用の箱は定形。 70 センチの長さに切りそろえ、葉を落とす。 「すべて同じ規格だから加工場でできる」と斎藤さん。 これまでの農家は、自分で分別や箱詰めをしていた。 今でも 80 センチ以上あるものは、農家が直接市場に出すこともあるが、スマート規格として出荷する短いものは加工場に出す。 その場合、農家は花を収穫し、JA に納入するだけで作業は終わる。

この 3 年間で、新規で生産を始めた農家が 30 軒あるという。 斎藤さんは「これまでは、十分な長さまで育てるだけの技術の習得に数年かかることもあり、新規参入を阻んでいた。 新しい規格は、人手不足の解消にも一役買っている。」と話す。 現在は、落とした葉や切った茎はゴミとして出しているが、生産地に近いこともあり、再利用できる道を探っている。 斎藤さんは「誰も損をしない工夫だったら、やるべきです。 持続可能な道を探るのが、未来の農業だと思う。」

「豪華」から「身近」へ、消費者の変化

農林水産省の作況調査によると、切り花の出荷量はピーク時の 1996 年の 57.5 億本から、2021 年は 32.4 億本と、半分近くに減った。 消費者のニーズも変化している。 バブル時代は、プロポーズにバラ、誕生日にはカサブランカの花束を贈るのが「憧れ」とされ、銀座のクラブにはコチョウランが並べられた。 葬式では、大きな祭壇に花が飾られた。 大田花き「花の生活研究所」の桐生進所長は、「結婚式や葬式を家族だけする人も多い。 家から個人が主役になり、彩り方も変わってきている。」という。

最近は豪華で高価な花より、スイートピーやヒメヒマワリなどが好まれる。 さらには、野に生えている小さな草花を家に飾りたいという人も多い。 「ライフスタイルの変化に沿って、売り方も多角的になってきている」と話す。 東京・JR 新宿駅にある花屋「青山フラワーマーケット」。 8 月上旬、男性 2 人組が笑顔で花を選んでいた。 20 代の兄弟で、実家がある長野県への帰省を前に、長さ 40 センチほどのヒマワリを中心とした黄色いブーケを母親のために買った。 値段は 1,500 円。 「いつも野菜を送ってくれるので、お礼のつもりで。」

運営するパーク・コーポレーションの広報担当・酒井陽子さんによると、同社では 2000 年に日常使いの「ライフスタイルブーケ」を発売。 いま、主流は 500 円 - 1 千円台の小さなブーケで、「ちょっとしたお礼や自分へのご褒美として使われている。」 コロナ禍で家にいる時間が増えたことで、自宅の台所、居間、玄関などに花を飾る人も増え、動きは加速しているという。 大田花きの大西さんは「スマートフラワーはまだ産声を上げたばかり」と言う。 導入コストに見合うだけの流通量に満たない生産地もある。 「生産地でも、まだ『短いモノが安い』という概念が根強い。 浸透するには時間がかかる。」と話す。 (江戸川夏樹、asahi = 8-20-23)


大雨でダイヤ乱れた東海道新幹線、今夜は全車自由席に

静岡県内の大雨の影響でダイヤの大幅な乱れが続く東海道新幹線について、JR 東海は 16 日、本来であれば東京駅や新大阪駅を同日午後 5 - 7 時半ごろに出発予定だった列車をすべて全車自由席に切り替えると発表した。 各駅で乗車を待つ多くの人々を輸送するのが目的。 午後 7 時現在、東京駅を出発する列車は約 4 時間の遅れが出ていて、実際には午後 9 時以降に出発する列車が対象になる。 以降の列車は運転を取りやめる。 山陽新幹線との直通運転は終日取りやめている。 (細沢礼輝、asahi = 8-16-23)

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鳥取市が緊急安全確保を発令

鳥取市は 15 日午後 4 時 40 分、市内全域の 8 万 1,915 世帯 18 万 1,859 人に対し、5 段階の避難情報で最も警戒レベルが高い「緊急安全確保」を発令した。

鳥取に大雨特別警報

気象庁は 15 日午後 4 時 40 分、鳥取県に「大雨特別警報」を発表した。 重大な災害の起こる恐れが著しく高まっているとして、最大級の警戒を呼びかけている。 (asahi = 8-15-23)

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鳥取県、再び 1 時間に 90 - 100 ミリの猛烈な雨 「記録的短時間大雨情報」

鳥取県では、15 日 8 時までの 1 時間に 90 ミリから 100 ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨情報」が発表されました。 鳥取県では局地的に雨雲が発達しています。 レーダーの解析で、15 日 8 時までの 1 時間に鳥取市鹿野付近で約 100 ミリ、鳥取市鳥取付近で約 90 ミリ、三朝町付近で約 90 ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨情報」が発表されました。 大雨による土砂災害や低い土地の浸水、川の増水に警戒してください。 土砂災害や浸水の危険のある場所にお住まいの方は、あらかじめ決めておいた避難場所まで移動することがかえって危険な場合もあります。 そのような場合は、近隣のより安全な場所や 2 階以上の部屋など、少しでも安全な場所へ移動しましょう。

数年に一度しか発生しないような短時間の大雨を観測・解析した時に、各地の気象台が発表します。 基準は地域ごとに異なります。 その地域にとって「災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量」であることをお知らせするため発表するものです。 土砂災害や川の増水などの災害は、急に発生して、一気に被害が広がるため、避難が遅れると、命にかかわります。 そこで、避難のタイミングが重要です。 警戒レベル 3 の場合、高齢者や障害のある方などは、安全な所へ避難しましょう。 警戒レベル 4 では、対象地域の方は、全員速やかに避難してください。 警戒レベル 5 になると、すでに災害が発生している状況ですので、命を守る行動が必要です。 警戒レベル 5 になってからでは、安全な避難が難しい場合がありますので、早めの避難が必要です。

天気が荒れてしまうと、道路状況が悪くなったり、暴風で物が飛んできたりするなど、避難の際の危険度が高まります。 避難指示が出されていなくても、少しでも危険を感じたら、自ら避難しましょう。 不安を感じたら、その時が避難のタイミングです。 「自主的に、早めに、安全な所へ避難する」という防災意識をもって、避難する際は、近所の方々にも声をかけ、複数で行動してください。 (日本気象協会 = 8-15-23)

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和歌山と三重が暴風域に 台風 7 号、時速 15 キロで進む

お盆休み中の日本列島に、台風 7 号が接近しています。 気象庁によると、移動速度が遅いため、西日本や東日本で大雨や暴風、高波などの影響が長引く恐れがあります。 14 日から一部で大荒れの天候となる可能性があり、15 日ごろには本州に近づき、その後上陸する見通しです。 気象庁は、河川の水位上昇への警戒や、早めのハザードマップの確認などを呼びかけています。

強い台風 7 号は 14 日午後 5 時時点で和歌山県・潮岬の南東にあり、時速約 15 キロの速さで北西に進んでいる。 15 日に近畿から東海にかなり接近し、上陸する恐れがある。 中心気圧は 970 ヘクトパスカル。 中心から半径 130 キロ以内で風速 25 メートル以上の暴風が吹いている。 関東甲信から中国、四国の広い範囲で、非常に激しい雨が同じ場所で降り続ける線状降水帯が 14 日午後 - 15 日に発生する恐れがある。 15 日午後 6 時までに予想される 24 時間降水量は多い所で、▽ 東海 450 ミリ、▽ 近畿 400 ミリ、▽ 四国 300 ミリ、▽ 関東甲信 250 ミリ、▽ 中国 200 ミリ、▽ 北陸 180 ミリ。 (asahi = 8-14-23)

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東海道新幹線、15 日は名古屋 - 新大阪間で運転取りやめ 台風の影響

台風 7 号の接近に伴い、JR 東海は 13 日、東海道新幹線の名古屋 - 新大阪間について、15 日は終日、運転を取りやめると発表した。 また、15 日は東京 - 名古屋間で、通常ダイヤでの運転を取りやめて大幅に運転本数を減らすという。グリーン車を除き、全車両で自由席となり、臨時ダイヤで運転する。 JR 東海によると、14 日、16 日は計画運休は実施しないものの、台風の影響次第で運転の見合わせが発生する可能性がある。 当日の運転状況の詳細は、同社のホームページなどで確認できる。 (asahi = 8-13-23)

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台風接近の中、帰省ラッシュがピーク 新幹線は乗車率 200% も

夏休みの帰省ラッシュが 11日、ピークを迎えた。 JR 各社の指定席予約がコロナ禍前(2018 年)の 9 割超まで回復する中、各地の新幹線の駅は故郷や旅行へと向かう乗客らで混み合った。 JR 東京駅は、キャリーバッグを引く人などで朝からごった返していた。 東京都千代田区の会社員、佐藤拓郎さん (37) は、家族で山形県東根市の実家に帰省。 長男の礼理(れいすけ)さん (7) は「プールに入りたい」と声を弾ませる。 17 日に東京に戻る予定だが、気がかりなのは本州に接近中の台風 7 号。 佐藤さんは「晴れているうちに、子どもたちを遊ばせたい」と話した。

東京都台東区の会社員の女性 (42) は、大阪市内の実家に帰省する。 最近、職場など身の回りで新型コロナウイルスの感染者が増えてきたという。 マスクを着けて消毒用のアルコールも持参。 「移動中も感染対策に気を付けたい」と語った。 JR 東日本、東海によると、この日午前に東京駅を出発する東北、北陸新幹線や東海道新幹線「のぞみ」、「ひかり」の指定席は満席。 下り自由席の乗車率は、「のぞみ」で 110 - 200% に達したほか、東北・上越・北陸新幹線の多くで 100% を超えた。 上りのピークは 15 日で 13 - 16 日は混雑が続く見込みという。 JR 東海は、台風 7 号の影響で東海道新幹線は 13 - 16 日に計画運休や運転見合わせをする可能性があると発表している。 (asahi = 8-11-23)


4 年ぶりの「終わらぬ夜」に熱気 岐阜・郡上で「徹夜おどり」始まる

岐阜県郡上市で 13 日夜、日本三大盆踊りの一つ「郡上おどり」のクライマックスとなる「徹夜おどり」が始まった。 コロナ禍での中止や縮小を経て、4 年ぶりにお盆に合わせて明け方まで踊りを楽しむ通常開催に戻った。 台風接近に伴い、14 日以降の実施は当日判断するとしている。 午後 8 時すぎ、雨が降る中、唄や笛、三味線などのおはやしに合わせ、浴衣姿の踊り手が手拍子やげたの音を響かせた。

風情が漂う中心街の狭い通りに、踊りの輪が幾重にも広がるなど、「おどりのまち」の城下町の熱気は最高潮を迎えた。 運営委員会によると、この日はコロナ禍前と同水準の 6 万 5 千人が訪れた。 「徹夜おどり」は 16 日まで 4 夜連続で行われる予定。 ただ、台風 7 号が接近していることで、14 日以降の開催は、最新の気象状況を踏まえて当日判断するという。 (深津弘、asahi = 8-13-23)


戻ってきた「踊る阿呆に見る阿呆」 阿波踊り開幕 20 万円の席も

真夏の風物詩、徳島市の阿波踊りが 12 日、開幕した。 新型コロナウイルスが 5 類に移行し、4 年ぶりに通常に近い開催となった。 多くの「踊る阿呆」の姿が戻り、国内外から「見る阿呆」も大勢訪れて、笛や太鼓、鉦(かね)などの鳴り物にかけ声が合わさった本調子の「ぞめき」を楽しんだ。 午後 6 時、JR 徳島駅に近い藍場浜演舞場で、編み笠に着物姿の踊り手たちが一糸乱れぬ群舞を披露してスタートした。

1 席 20 万円のプレミアム桟敷席が初めて設けられ、外国人観光客らが畳敷きに座椅子を置いた特別な空間で、踊りの熱気を感じながら阿波尾鶏や阿波牛を使った特製料理に舌鼓を打った。 コロナ対策を施して開催された昨年夏は、踊り連から 800人を超える感染者が出た。 教訓を踏まえ、踊り手の控室のスペースを広げ、空気清浄機を増設して感染防止に努めている。 (内海日和、杉山匡史、asahi = 8-12-23)


ランドセルなど学用品を「ジモティー」でリユース 千葉県が後押し

役目を終えたランドセルや制服、後輩に譲りませんか - -。 家庭に眠る学用品などの再利用(リユース)を後押しする取り組みが、千葉県内の自治体で始まっている。 教育費の負担軽減のほか、環境に配慮した教育をめざす狙いもある。 県は 7 月 13 日から、地域情報サイトを運営するジモティー(東京都品川区)と連携協定を結び、キャンペーン「#ちばリユースクール」を始めた。 学用品に特化した同社と自治体の連携は全国初だという。

同社のサイト「ジモティー」では、不用となった品の情報を手数料無料で掲載でき、ほしい品物は受け渡し場所や支払い方法などを出品者に直接問い合わせて取引する。 キャンペーンではランドセルや裁縫セットなど不用になった学用品を「#ちばリユースクール」とハッシュタグをつけて出品してもらうよう呼びかける。 ハッシュタグをつけることで、県内の保護者が必要な学用品をより見つけやすくなる。 学用品のリユースを進める県がジモティーに連携を打診し、実現したという。 これまでも学校のバザーなどで学用品を譲り合うことはあったが、全県的な取り組みは初めて。 県教委は学校を通じて保護者にキャンペーンを周知する。 担当者は「家庭でリユースを考えるきっかけにもなればうれしい」と話す。

すでに 90 件近く予約

文部科学省の「子供の学習費調査(2021 年度)」によると、公立校の年間の学用品代は、平均で小学校約 2 万 4 千円、中学校約 3 万 2 千円、高校約 5 万 3 千円。 18 年度の前回調査から平均で約 3 割弱増加した。 柏市では、来春入学の新中学 1 年生を対象にした「柏市制服バンク」を 6 月 1 日に始め、制服のリユースに乗り出した。 制服を譲りたい人が市ホームページの申請フォーム上に学校名や種類、サイズなどを登録し、譲り受けたい人とマッチングする仕組みだ。 マッチング後に市内外の約 30 店舗の提携クリーニング店に制服を持ち込むと、クリーニング後に店側が希望者に引き渡す。就学援助を受けている家庭に優先的に譲渡する。 譲った人には市教委から 1 千円分の図書カードを贈る。

市教委の担当者によると、今年度は 100 件のマッチングを目標としており、今月 4 日時点ですでに 90 件弱の登録があったという。 市立中の制服は新品だと 3 万 5 千円 - 4 万円かかる。 市を含む東葛地域では校内ではジャージーに着替えて過ごすため、制服は 3 年間着ても比較的きれいな状態が保たれるという。 担当者は「きれいな状態でタンスの中に眠っている制服を、もう一度次の世代の子に使ってもらえたら」と話す。 (近藤咲子、asahi = 8-6-23)


びわ湖大花火に地元が反対決議 高く長い有料席は「公平性に欠ける」

琵琶湖の夏の夜を彩る「びわ湖大花火大会」が 8 日に開催される。 コロナ禍を経て 4 年ぶりとなる中、地元住民からは開催反対の決議文が大会実行委員会に出された。 異例の事態はどうして起きたのか。 花火大会では、大津市の大津港一帯から約 1 万発が打ち上げられる。 例年、大津市の人口とほぼ同じ約 35 万人が県内外から訪れる。 今年は「安全確保のため」として、有料観覧(4,500 - 6 万円)を前回から約 1.1 万席増の 5 万席とした。 有料席エリアは大津港マリーナから、堂の川までの約 2 キロとなり、前回より約 500 メートル延長される。 有料席と道路の境界には観覧者の滞留防止のため、高さ約4メートルの目隠しフェンスを設置する。

当日は混雑が予想されることから、実行委は JR 大阪駅や京都駅、三ノ宮駅などのデジタルサイネージ(電子看板)で「有料観覧席のチケットをお持ちでない方は来場をご遠慮ください」と呼びかけている。 県内 14 の大学にもポスターを掲示した。 担当者は「雑踏事故防止のために、できうることをしたい」と話す。 一方、地元の中央学区自治連合会(52 自治会、自治会員計 2,074 世帯)は 7 月 20 日、花火大会開催に反対する決議文を賛成多数で承認。 翌 21 日に大会実行委へ提出した。 決議文では反対の理由として、▽ 交通渋滞や混雑が激しいこと、▽ ごみや深夜までの騒音による住環境の悪影響、▽ 高く長い有料席と約 4 メートルのシートによる壁の増設、の 3 点を挙げる。

自治連合会の青木正博会長 (72) によると、毎年のように交通渋滞やごみの問題に悩まされ、対策を要望してきたが改善されず、フェンスで花火が見えづらくなり、地元の不満が高まったという。 「地元の不快感、拒否感が増した。 地元住民は花火大会をテレビで見なさいと言われているようなものだ。」と話す。 決議文では「有料席を購入できる人は限られ公平性に欠ける」などとし、「だれのための花火大会か、何の意味が花火大会にあるのか」と指摘する。

青木会長は「観光振興も大事だが、地域で困っている人の気持ちも大切にしてほしい。 夏の風物詩として、誰もが楽しめる花火大会にしてほしい。」と話す。 決議文を受け、川戸良幸実行委会長は「コロナ禍からの復活という希望の花火であり、予定通り実施したい。 来年度以降は地域住民の意見を聞いて、どのようにするか検討したい。」とコメントを出した。 (林利香、asahi = 8-5-23)


半導体製造を拠点に、地域経済を活性化 北海道と熊本県が協定締結

北海道は 2 日、半導体関連分野での連携強化をめざして熊本県と「半導体関連国家プロジェクト推進等に関する連携協定」を結んだ。 いずれも進出が決まっている半導体製造拠点を核に関連企業を集積し、地域経済を活性化することをめざしている。 今後、関連予算など国への要望で協力していくほか、情報共有や人材育成などで関係を深めていく。 同日、熊本市内で締結式があった。 鈴木直道知事、熊本県の蒲島郁夫知事のほか、千歳市に進出が決まっている次世代半導体製造会社「ラピダス」の小池淳義社長や同市の横田隆一市長らが出席した。

熊本県では、世界最大の半導体受託製造会社、台湾積体電路製造 (TSMC) が、熊本市に隣接する菊陽町に新工場の建設を進めており、2024 年末までに生産開始することをめざしている。 協定には、半導体関連事業での連携、国への要望での協力に加え、企業間での交流や観光交流への拡大なども盛り込まれた。 半導体製造に必要不可欠な人材育成やインフラ整備、水資源の確保など課題解決でも協力していく。

締結後、取材に応じた鈴木知事は「半導体を国内調達することは、やらなければならないこと。 熊本県や北海道がこのプロジェクトを成功させることが日本の発展に大きく寄与する」と話した。 蒲島知事は「我々が感じた課題や人材育成などで体験を共有し、一緒に解決していくことが大事」と協定の意義を述べた。 式後、鈴木知事は熊本大学を視察した。 TSMC の県内進出で半導体に関わる人材育成が急務となる中、同大では来年度、「情報融合学環」を新設する。 工学部には、国内の大学では初めてとなる半導体教育に特化した「半導体デバイス工学課程」を設ける。 半導体分野の研究や活躍できる人材育成をめざして県や企業との連携も始めている。

意見交換の場であいさつした鈴木知事は「前例のないプロジェクトを成功させるには人材の育成が何より重要。 先駆的に取り組んでいる熊本大学の取り組みを学ばせて欲しい。」と話した。 視察には、北海道大学の寶金清博総長や公立千歳科学技術大学の宮永喜一学長も同席。 人材育成に向けた先進事例の報告に耳を傾けた。 (長谷川潤、asahi = 8-2-23)


ふるさと納税、過去最高の 9,654 億円 上位は固定化「新たな格差」

ふるさと納税

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関東甲信が梅雨明け 関東は来週半ばから猛暑日相次ぐ見込み 熱中症に警戒を

気象庁は22日、関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表した。平年より3日遅く、昨年より1日早い。 関東はこの日、午前は雲が多かったものの、雲間に夏本番の太陽がのぞくと、みるみる気温が上昇。東京都心で最高気温33.4度など、広い範囲で30度以上の真夏日となった。 6月8日の梅雨入り発表以降、都心の雨量は平年の同期間の半分に満たないが、宇都宮市や水戸市では平年を上回る雨量を観測した。国土交通省関東地方整備局によると、関東の水がめとされる利根川水系8ダムの合計貯水量は、平年の110%(21日現在)。 来週半ばから関東では35度以上の猛暑日となる所が相次ぐ見込み。気象庁は熱中症への注意を呼びかけている。 (宇佐見昭彦、東京新聞 = 7-22-23)

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沖縄が梅雨明け、平年より 4 日遅れ 梅雨前線は本州付近へ北上へ

気象庁は 25 日、沖縄が梅雨明けしたとみられると発表した。 平年より 4 日、昨年より 5 日遅い。 日本の南の太平洋高気圧の張り出しが強まることで、梅雨前線は本州付近へと北上し、沖縄では晴れる日が多くなる見通し。 (asahi = 6-25-23)


秋田中央道路、冠水で通行止め続く 復旧の見通し立たず

JR 秋田駅の東西を結ぶ地下トンネル「秋田中央道路」は、路面が冠水したため、15 日夜から通行止めが続いている。 復旧の見込みについて、県は「排水作業を進めているが、電気設備の点検などもあり、復旧の見通しが立たない」としている。 通行止めとなったのは 15 日午後 6 時ごろ。 排水ポンプに不具合が生じたのが原因とみられる。 (秋田魁新報 = 7-17-23)

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秋田新幹線、17 - 18 日も終日運休 大雨の影響で再開見通し立たず

東北地方で梅雨前線が停滞して大雨となっている影響で、JR 東日本秋田支社は 16 日、15 日午前から運休している秋田新幹線(盛岡 - 秋田)について、17 日も始発から終日運転を見合わせると発表した。 18 日についても、終日運転を見合わせる予定。 避難指示などの影響で設備などの点検作業に入れず、再開の見通しが立っていないとしている。 運休区間のバスなどによる代行輸送は予定していない。 (asahi = 7-16-23)

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秋田県、旭川ダムを緊急放流 下流で氾濫のおそれ、注意呼びかけ

秋田県は 15 日夕、秋田市の旭川ダムの緊急放流を始めた。 旭川は秋田市中心部を流れる河川。 緊急放流により水位が上がって氾濫する可能性もあり、県は流域住民に対し、身の安全の確保を最優先に行動するよう呼びかけている。 県によると、旭川ダムの緊急放流は初めて。 (asahi = 7-15-23)

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秋田大学付属病院、救急外来受け入れストップ … 大雨冠水で救急車入れず

大雨の影響を受けて、秋田市の秋田大学医学部付属病院は 15 日、救急の外来患者受け入れを一時的に停止すると発表した。 再開時期は未定という。 周辺の道路が冠水し、救急車が病院に入れないためで、入院患者の診療は行っている。 (yomiuri = 7-14-23)


南阿蘇鉄道、地震から 7 年ぶり全線再開 喜びの住民とベテラン運転士

2016 年 4 月の熊本地震で被災した第三セクター「南阿蘇鉄道(本社・熊本県高森町)」が 15 日、7 年 3 カ月ぶりに全線(17.7 キロ)での運行を再開した。 被害が大きく不通となっていた南阿蘇村の中松 - 立野間(10.6 キロ)が復旧し、立野から JR 豊肥線肥後大津駅(大津町)への乗り入れ(9.7 キロ)も始まった。 不通区間にあった駅では保育園児らも加わって地元の人たちが出迎え、全国から集まった鉄道ファンらと車窓越しに喜びをわかちあった。

南阿蘇鉄道は全 10 駅のうち 9 駅が無人。 運休で鉄道利用客がいなかった区間も含め、駅舎は飲食店を営むなどして守られてきた。 中松駅では高嶋千恵さん (51) が「大人も子どもも楽しめる秘密基地に」と、おもちゃを飾るカフェを被災直後から経営。 この日、列車が入るたびにホームで小旗を振った。 中松駅は全線復旧によって「折り返し駅」から「途中駅」になり、列車はドアを開け閉めして去っていく。 店主としては不安も膨らむが、年齢や列車に乗る乗らないを問わない、地元の人たちの「最寄り駅」を目指すという。 人々をつなぐ場として「駅は守る」。 地元の人たちや鉄道ファンでごった返す祝賀ムードの中で、覚悟を新たにしていた。(城戸康秀)

住民らが沿線で歓迎する中、一番列車を任されたベテラン運転士は「一人でも多くの方々に完全復活した姿を楽しんでほしい」と喜びをかみしめた。 「出発進行。」 白い手袋の人さし指が前方に伸びた。 午前 6 時、寺本顕博さん (68) が運転する 2 両編成の列車が高森駅(熊本県高森町)のホームを離れ、立野駅(南阿蘇村)に向かった。 途中の駅では「おかえり南阿蘇鉄道」の横断幕や歓迎の小旗などに迎えられ、乗客たちも笑顔で手を振ってこたえた。 25 歳で国鉄の運転士になった寺本さんは、分割民営化で JR 九州に移り、2006 年 4 月に南鉄に出向。 65 歳になった 4 年前に南鉄社員になった。 運転士一筋だったが、南鉄に来て働き方は一変した。

「それまで『持ち場は運転席』だったのが、駅の窓口にも座り、お客さんや電話予約に対応する。 できることはなんでも全員でやるんです。」 熊本市内の自宅から JR と南鉄を乗り継いで本社のある高森駅に通い、高森 - 立野間を往復した。 観光客向けのトロッコ列車に車掌として乗れば、マイクを握って名所案内をする。 海外からの客も増え、韓国語や中国語を学んで片言の案内をすると喜んでもらえた。 トロッコ列車の利用客は 13 - 14 年度に 5 万人台に達し、普通列車の利用も伸びて経営に明るい兆しが見えてきた 16 年 4 月、熊本地震が起きた。 14 日の前震で運転を見合わせていたところ、16 日の本震に見舞われた。

土砂に埋もれた線路、ねじ曲がったレール、壁に亀裂が走ったトンネル。 「復活は無理かもしれない」と思ったが、国の全面的な支援を受けて全線再開が決まった。 「再出発できたのは、『この鉄道を残してほしい』という地元の人たちの熱意と全国からの応援があったからこそです」と感謝する。 今年 2 月、架け替えられた第一白川橋梁近くでレールの締結式があり、不通だった中松 - 立野間(10.6 キロ)を含む全線が一本につながった。 それに先立ち、寺本さんら社員は総出でさびまみれのレールを小型電動工具で磨いた。 踏切近くなど要所要所の作業だったが 10 日前後かかったという。「真冬でしたが寒いとは思いませんでした。」

地震の傷痕は、立野駅が近づくにつれて目立つようになる。 一番列車を走らせる寺本さんの足元を、白く新しい敷石や枕木が通り過ぎていく。 前日まで続いた試運転もあって、レールは輝きを取り戻した。 午前 6 時 31 分、列車は定刻通り立野駅に着いた。 「この近辺は悲しい記憶も詰まった場所。 (亡くなった方々に)南鉄は復活を果たしてここまで来られたと伝えたい。」 社内一のおしゃべりという寺本さんの話が、この時だけ途切れた。 10 人いる運転士のうち 7 人は地震後に入った若手。 試運転では最年長の寺本さんが指導役を務めてきた。 「若い人はやはり慣れるのが早い。 自信を持って運転していると思います。」と後輩たちを頼もしく見ている。 寺本さんもまだ運転席を離れる気はない。 いつか運転できなくなっても、南鉄で働き続けたい。 「まだまだ元気だし、この鉄道が好きですから。」 (asahi = 7-15-23)