生活に「ゆとりなくなってきた」 56% 物価高で 13 年半ぶり高水準

日本銀行が 12 日に発表した 6 月の生活意識に関するアンケートで、暮らし向きについて「ゆとりがなくなってきた」との回答が 56.8% まで増えた。 リーマン・ショック後の 2009 年 12 月以来となる水準。 物価高を理由に挙げる人が最も多かった。 調査は 20 歳以上を対象に 3 カ月ごとに実施し、今回は 5 月 11 日 - 6 月 6 日に 2,110 人が答えた。 暮らし向きについて「ゆとりがなくなってきた」と答えた人は、1 年前の調査から 13.6 ポイント増加。 21 年 12 月の調査以降、7 期連続で悪化している。 「ゆとりが出てきた」と答えた人は 4.1% だった。

ゆとりがなくなってきた理由を複数回答で尋ねると、最も多かったのが「物価が上がったから」で、89.2% だった。 「給与や事業などの収入が減ったから (36.1%)」が次に多かった。 実際、1 年前と比べて物価が「かなり上がった」が 66.3%、「少し上がった」が 29.2%。 両方合わせると 95.5% にのぼり、過去最高だった。 1 年後の物価は「かなり上がる」が 28.2%、「少し上がる」が 58.1% 。 9 割弱が上昇を見込んでいた。

ただ、景気については、1 年前と比べて「良くなった」と答えた人が前回より 6.9 ポイント増え、13.7% になった。 「悪くなった」は前回より 14.3 ポイント低い 49.6% で、20 年 3 月以来の低さだった。 日銀は、調査開始直前の 5 月 8 日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが 5 類に移行し、規制が緩和された影響とみている。 (土居新平、asahi = 7-12-23)


「救急車逼迫アラート」 東京消防庁が初めて発出 猛暑日の予想で

気温の上昇で熱中症の搬送者が急増する恐れがあるとして、東京消防庁は 10 日午前 8 時半、「救急車逼迫アラート」を出した。 アラートの運用は今年 7 月 1 日から始まり、実際に出されるのは初めて。 気象庁は 10 日の最高気温について、猛暑日となる 35 度と予想。 東京消防庁によると、熱中症による同庁管内の搬送者数は、9 日の 31 人を大幅に上回る可能性がある。

救急車逼迫アラートは、23 区内か多摩地区の救急隊の出動率が 80% を超えたり、その状態が続いたりすることが予想される時に出される。 同庁はウェブサイトや SNS で周知して、救急車の適正な利用を呼びかける。 同庁の担当者は「必要な人のもとに救急車が早期に到着できるよう、救急車の適時・適切な利用にご協力をお願いします」と話している。 (遠藤美波、asahi = 7-10-23)


夏休みの国内旅行客、コロナ前の水準に 海外ベスト 5 の四つはアジア

旅行大手 JTB は 6 日、夏休みに国内旅行をする人が前年比 16.9% 増の 7,250 万人となる見通しだと発表した。 コロナ前の 2019 年と同じ水準まで回復する見込みだ。 新型コロナが 5 類に移行したことで、観光消費は戻りつつある。 同社は 7 月 15 日 - 8 月 31 日に 1 泊以上の旅行をする人数について、宿泊施設の予約状況やアンケートなどをもとに推計した。

1 人当たりの国内旅行費用は前年比 8.1% 増の 4 万円と見込み、1996 年に調査を始めてから最高となった。 ホテル代金の高騰に加え、旅行日数を増やして遠方に旅行する傾向が強まっていることも費用が増える要因となっているという。 アンケートでは、コロナ禍で旅行を控えていた 60 代以上で旅行への意欲が高まっている。 5 日時点での旅行の予約は、沖縄や関西、北海道が好調で、前年比 20% 増だった。 開業 40 周年の東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン (USJ) などテーマパークに人気が集まっている。

一方、海外旅行をする人は 120 万人の見通しで、19 年と比べて 39.6% にとどまっている。 円安や燃油サーチャージの高騰の影響で、韓国や台湾など近場の需要が高まっている。 エイチ・アイ・エス (HIS) が 5 日に発表した夏休みの旅行予約動向調査によると、海外旅行は前年比で約 7 倍となったが、19 年と比べると 53.4% にとどまる。 旅行の平均単価は 17 万 8 千円で、前年比 86.3% だった。 格安航空会社 (LCC) の運航再開やアジアの予約が伸びたことが単価を下げた要因という。 旅行先の 1 位はソウルで、20 代の予約が 3 割を占めるなど若者に人気だという。 ホノルル、台北が続いた。 (長橋亮文、asahi = 7-6-23)

夏休みの人気の海外旅行先 (HIS の調査 かっこ内は 2019 年の順位)
1 位 ソウル (ホノルル)
2 位 ホノルル (ソウル)
3 位 台北 (グアム)
4 位 シンガポール (台北)
5 位 バンコク (シンガポール)


福沢諭吉 → 渋沢栄一 24 年 7 月に新紙幣を発行、5 千円札・千円札も

鈴木俊一財務相は 28 日、20 年ぶりとなる新紙幣の発行時期について、2024 年 7 月前半をめざすと明らかにした。 1 万円札と 5 千円札、千円札の紙幣のデザインを一新したうえで、新たな偽造防止技術を採用し、使いやすいデザインにする。 これまで発行開始は 24 年度上期としていた。 同日、新紙幣を印刷する国立印刷局東京工場(東京都北区)で新 1 万円札の製造工程が公開された。 「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の肖像画が描かれた用紙が印刷機で刷られ、機械が偽造防止用の世界初の技術、3D ホログラムを貼り付け。 1 束 1 千枚にまとめられ、10 束ずつにラッピングされていた。 日本銀行には、40 束単位で納入されるという。

新紙幣は ATM やお店のレジなどでのテストを入念にするため、21 年 9 月に印刷を始めており、23 年度は計 30 億 3 千万枚を印刷予定。 紙幣のデザインは、偽造防止対策などで約 20 年ごとに変更している。 今回は、肖像が立体的に動いて見える最先端のホログラムを使い、すかしも高精細なものを取り入れた。 額面の数字を大きくし、指の感触でお札の種類がわかるよう工夫した。 1 万円札の肖像の変更は、1984 年に聖徳太子から福沢諭吉に変わって以来、約 40 年ぶり。 5 千円札は樋口一葉から津田塾大学を創設した津田梅子、千円札が野口英世から血清療法を確立した北里柴三郎になる。 (神山純一、asahi = 6-28-23)


NHK 受信料収入が 4 年連続で減 22 年度決算 事業収支は黒字

NHK は 27 日、2022 年度の決算(単体)を発表した。 受信料収入は前年度より 76 億円減の 6,725 億円で 4 年連続の減収となった。 また、受信料の契約件数は 4,144 万件と前年度比 11 万件減。 世帯支払率は 78.3% と 3 年連続で低下し、1 年以上支払っていない「未収数」は前年度より 25 万件増えた。

支払率低下について NHK は、コロナ禍や物価高が要因とみている。 今年 10 月には受信料の約 1 割値下げが控えており、さらなる減収が見込まれる。 担当者は「値下げが追い風となるよう、視聴者の皆様に丁寧な説明に努め、受信料の公平負担に取り組みたい」と話している。 一方で、訪問営業の縮小に伴う営業経費の削減や設備投資の抑制で支出を抑えた結果、事業収支は 263 億円の黒字となった。 (NHK = 6-27-23)


男女平等、日本は世界 125 位で過去最低 ジェンダーギャップ報告書

世界経済フォーラム (WEF) は 21 日、世界各国の男女格差の状況をまとめた 2023 年版「ジェンダーギャップ報告書」を発表した。 日本は男女平等の達成度合いで、調査対象となった 146 カ国のうち 125 位(前年は 116 位)。 経済と政治分野の遅れが響き、2006 年の発表開始以来、順位は最低だった。 WEF は教育・健康・政治・経済の 4 分野で男女差を分析。 男女が平等な状態を 100% とした場合、世界全体の達成率は 68.4% で前年から 0.3 ポイント改善した。 女性の労働参加などが鈍ったコロナ下で、悪化していた達成率はコロナ禍前の水準まで回復した。 ただ、今の是正ペースでは、平等の実現には 131 年かかると試算している。

日本の達成率は 64.7%。 衆院議員や閣僚に女性が少ない政治分野は世界 138 位。 収入や企業の役員・管理職の割合での平等も進まず、経済分野も世界 123 位と低迷している。 男女平等に最も近かったアイスランドは達成率 91.2% で、14 回連続で首位だった。 2 位はノルウェー (87.9%)、3 位フィンランド (86.3%)、5 位のスウェーデン (81.5%) と北欧諸国が上位に並んだ。 (和気真也、asahi = 6-21-23)


どうなる卵の価格 鳥インフル落ち着き、一部に下落の動き

高止まりが続く鶏卵の卸売価格が、落ち着く兆しを見せている。 今月中旬から、小ぶりの卵の価格が 3% ほど下がり始めた。 季節的な要因のほか、鳥インフルエンザの影響がやわらぎつつあるとみられる。 専門商社「JA 全農たまご」によると、大阪の MS サイズ(やや小ぶり)の価格(基準値)が 12 日に 1 キロ 345 円を付けた。 前営業日より 10 円下がった。 福岡も 10 円安くなった。 東京と名古屋も 15 日に前日と比べて 10 円下げた。

前年と比べて 7 - 8 割高い水準続く

鶏卵の価格は昨秋からの鳥インフルの感染拡大で、全国的に高騰。 この春以降は前年比 7 - 8 割高い水準が続いている。 関係者によると、夏になると卵が小ぶりになり、消費も鈍る傾向がある。 加えて、4 月上旬を最後に鳥インフルの発生がなく、供給が正常化し始めていることも一因という。 (加藤裕則、asahi = 6-15-23)


Z 世代が使う「蛙化現象」って? 流行語から見える今どきの人間関係

10 代から 20 代半ばの Z 世代を中心に「蛙化現象(かえるかげんしょう)」という言葉が流行している。 実は心理学用語だが、意味を変えて、友人と恋愛について語るときに使われるようだ。 一体、どんな意味?

東京都の女性会社員 (26) がマッチングアプリで知り合った男性と初めての食事に出かけた時のことだった。 趣味も合い、会話もほどよく盛り上がった。 「これから関係が発展するのかな?」 そんな期待を持ち始めたとき、「事件」は起きた。 ささいなことに …、会計にあたり、レジの前で相手の男性が慌て始めた。 スマートフォンで店の割引クーポンを出そうとしているらしい。 だが、ページをうまく開けず、あたふたとスマホをたぐった。 ささいなことだとわかっている。 でも、その姿に気持ちがすっと離れるのを感じた。 「会計くらいスマートにしてほしい。」 結局、その男性とはうまくいかなかった。 友人にその話をするとみんなが言う。

「それ、蛙化~」

21 年ごろから SNS で頻繁に使われ

Z 世代を対象としたシンクタンク「Z 総研(東京都)」が 5 月 8 - 14 日にインターネット調査を実施したところ、言葉部門で「蛙化現象」がトレンドランキングの 1 位に選ばれた。 中学生 - 26 歳の 950 人から有効回答を得た。 Z 総研によると「蛙化現象」は「異性の格好悪い部分を見ると気持ちが冷める」といった意味合いで使われる。 2021 年ごろから SNS で頻繁に使われ始めた。 動画投稿サイト「ユーチューブ」では、恋人への気持ちが冷めていく蛙化現象の心境をリアルに歌った楽曲も登場し、Z 世代に浸透しているという。

「推し」との落差が気になる

原宿を歩いていたフリーター女性 (19) も「蛙化」をよく使う。 女性は流行の裏側に、アイドルら「推し」を応援する「推し活」が広がったことが影響しているとみる。 自身も熱心なアイドルファン。 異性の友達と食事にいっても、ことあるごとに「自分の推しとは違う」と相手の小さな欠点を見つけて、冷めてしまう。 理想を体現した「推し」との落差が目につくのだ。 アイドルファンの友だちで集まれば、自分が経験した蛙化トークで盛り上がるのがお決まりだ。

「恋愛をしなくても、推しがいれば楽しい。 推し活が普通になったことと、蛙化はめっちゃ関係していると思う。」

マッチングアプリですぐ次の彼氏が

東京都のネイリストの女性 (22) は、マッチングアプリの存在が大きいと話す。 かつて、彼氏が飲食店の店員に失礼な態度をとったときに、「蛙化」が起きたという。 そして次の日に別れた。

「マッチングアプリを使えば、次の相手がすぐに見つかる。 少しでも嫌な人とずっとつきあっていたくない。 蛙化という言葉がはやっているのは、そんな私たち世代の恋愛への考え方が詰め込まれているのかも。」

「蛙化現象」という言葉からは、若い世代がネットで多数とつながることがたやすくなっている半面、関係が切れることにもドライな面が見える。

心理学の用語としては

「『蛙化現象』の本当の意味は少し異なる」と話すのは、東京都府中市にある府中こころ診療所の春日雄一郎院長だ。 もともとはグリム童話「かえるの王様」が由来の心理学用語。 「好きな相手に好意を抱かれると、逆に相手に嫌悪感を抱く」状態を指す。 自己肯定感が低いために「自分を好きになった相手を信じられない」、「いつか相手から嫌われてしまう前に、自己防衛的に自分から嫌う」といった心理状態が背景にあると考えられている。 一方、Z 世代で流行している「蛙化現象」は、「相手のささいな言動で気持ちが冷める」といった状態を指し、本来の意味から変わっている。

自他を過度に「理想化」

「相手の悪いところが見えると、一気に評価が正反対になってしまうのは、相手への過度の理想化があるのでは」と春日院長は分析する。 Z 世代は自分自身を過度に理想的に見せようとする傾向にあると春日院長はみる。 最近、SNS で理想の自分を振る舞い続けることに疲れ、心のトラブルになったなどの相談が複数寄せられているという。 「例えばインスタグラムに見栄えがいい自身の写真を投稿し、そこで褒めてほしいという思いがある。 理想の自分を求めることが時代の特徴としてあるのかもしれません。」 それが他者にも広がり、恋愛相手に過度な理想を追い求めてしまうとみる。 ただ、年齢や経験を重ねれば、欠点がない人間がいないことを知っていく。

春日院長は「成熟するにつれて(Z 世代での)蛙化現象も落ち着くのではないでしょうか。 『一気に冷めた』という言葉で傷つく相手もいます。 表現にも思いやりをもってほしいとも思います。」と話す。 (福岡龍一郎、江戸川夏樹、asahi = 6-10-23)

Z 世代が選ぶ 2023 年上半期に流行した言葉のトップ 10 (Z 総研のアンケートから)

  1. 位 : 蛙化現象
  2. 位 : かわちい (「かわいい」の言い換え。 TikTok で流行。)
  3. 位 : うちゅくしぃ/うちゅくちぃ (「美しい」の言い換え。 TikTok で流行。)
  4. 位 : トヨナガタクト (韓国のアイドルオーディション番組に出演した豊永拓斗さんの自己紹介が人気に)
  5. 位 : ちゅき (「好き」の言い換え)
  6. 位 : ~ニキ・~ネキ (兄貴・姉貴の略)
  7. 位 : お前今日何したんだよ (TikTok で流行)
  8. 位 : スシローを救いたい (回転ずしチェーン・スシローの店舗での迷惑行為の動画に対する反応として広まった)
  9. 位 : えぐい/えぐいてぇ (「つらい、厳しい」などの意味)
  10. 位 : ちょえ(ちょっと待っての略。 人気ユーチューバーから広まった。)

()内は言葉の意味やZ 世代に広まった経緯。 Z 総研への取材に基づく。


同性婚を認めないのは「違憲」 国への賠償請求は棄却 名古屋地裁

法律上同性同士の結婚(同性婚)を認めていないのは憲法に違反するとして、愛知県内の同性カップルが国を訴えた訴訟の判決が 30 日、名古屋地裁であった。 西村修裁判長は「憲法 14 条にも同 24 条 2 項にも違反する」との判断を示した。 ただ、国への賠償請求は棄却した。 同種訴訟で、憲法 14 条に違反するとの司法判断は 2021 年 3 月の札幌地裁判決に続いて 2 例目。 同 24 条に違反するとの判断は初めて。

訴状によると、原告側は、相続や税の配偶者控除など、結婚することで異性カップルが得られる権利や利益を同性カップルが得られないことは差別にあたり、「法の下の平等」を定めた憲法 14 条に違反すると主張。 同性婚を認めないことは「婚姻の自由」を保障する憲法 24 条にも反すると訴えていた。 その上で、08 年以降、同性カップルの権利保護などを求める国連からの勧告が再三あったほか、15 年以降は「パートナーシップ制度」を導入する地方自治体が増えたと説明した。 こうした国内外の動きを踏まえ、原告が提訴した 19 年よりも前に国会は同性婚を認める必要性を認識していたと指摘。 「立法不作為」による賠償責任もあるとした。

同種訴訟は全国 5 地裁で起こされ、今回の判決は 4 件目。 違憲性について、札幌は「違憲」、22 年 6 月の大阪は「合憲」、同年 11 月の東京は「違憲状態」と判断は分かれたが、賠償請求はいずれも棄却していた。 6 月 8 日には福岡地裁で判決が予定されている。 (asahi = 5-30-23)

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LGBT 法案「修正は後退」 当事者や専門家らが批判の声

与党が LGBTQ など性的少数者への理解増進を目的とする議員立法「LGBT 理解増進法案」の修正案をまとめたことを受け、当事者らの団体が 16 日、国会内で集会を開いた。 当事者や専門家らが修正は「後退」だとして批判の声を上げた。 法案は、超党派の議員連盟を中心に議論してきた案から、自民党内の一部保守派への配慮から修正。 性的指向などを理由とした「差別は許されない」との文言を「不当な差別はあってはならない」、「性自認」としていた言葉は「性同一性」とした。

主催団体の浅沼智也さんは、「不当な差別」に変わった点について「『正当な差別』の存在を認めている」として批判した。 「性同一性」への変更についても、性自認は「自称」だという誤った説を踏まえているとして、「理解増進を進める前提として、大きな影響がある」と懸念を示した。 主要 7 カ国首脳会議の直前という時期について、浅沼さんは「国際社会に向けて『やってる感』を演出するだけ」と話した。

法整備を求める署名を呼び掛ける運動に携わった松岡宗嗣さんは、議論の過程で報じられた反対派の国会議員による発言に触れ、「がくぜんとした」と振り返った。 「少なくとも(超党派議連による)合意案に戻すべきだ。 少しでも差別や暴力から守られる法律を作ってほしい。」と訴えた。 (藤沢美由紀、mainichi = 5-16-23)

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自民、LGBT 法案議論を先送り「統一選に悪影響」 与党内に不満も

LGBT 理解増進法案をめぐる経緯

性的少数者への理解を広げるための「LGBT 理解増進法案」について、自民党は本格的な議論を 4 月に投開票される統一地方選後に先送りする方向だ。 首相秘書官の差別発言を受けて、岸田文雄首相が法案提出に前向きな姿勢を示したが、党内の意見がまとまらないことで選挙に悪影響となることを懸念した。

法案は 2021 年、自民も含む超党派の議員連盟を中心にまとめたが、盛り込まれた「差別は許されない」の文言に自民の保守系議員が反発。 自民の党内対立に発展し、国会提出を見送ることで収拾を図った経緯がある。 今年 2 月の首相秘書官(当時)による差別発言をきっかけに、首相が自民に法案提出の準備を指示した。 首相指示後の 2 月、萩生田光一政調会長が法案推進派の稲田朋美元政調会長、法案に慎重な立場の古屋圭司元国家公安委員長らと非公式に会談したが、意見は平行線で党内議論の再開時期も決まらなかった。 その影響からか、性的少数者に関する会議はこの間、自民は一度も開いていない。

4 月下旬まで続く選挙を意識

23 日には統一地方選が告示され、4 月 23 日まで全国で選挙が続く。 自民内は「選挙前に党内を二分する議論はしない方がいい」との意見が支配的で、政調幹部は「5 月の大型連休明けに議論すべきだ」と主張。 法案推進派は「先延ばしして嵐が過ぎ去るのを待つ狙いだ」と不信感を強めるが、一方で「急いで議論したら収拾がつかなくなる。 統一選後に落ち着いて議論すべきだ」との声もあり、議論先送りの方向では一致する。

差別発言からも対応を急ぐべき問題であるにもかかわらず、選挙と党内事情を優先する自民に、与党内でも不満は高まる。 公明党の山口那津男代表は 14 日の記者会見で、5 月 19 日に開幕する主要 7 カ国 (G7) 広島サミットを念頭に、理解増進法案について「一刻も早く成立させるべきだ。 G7 各国の中で、日本だけが制度的な対応をしていない。 自民が後ろ向きな姿勢で、議長国を務めるというのも恥ずかしいことだ。」と非難した。

自民執行部では、統一地方選後に一気に議論を進め、サミットまでに法案を成立させるシナリオも浮上する。 だが実質 2 週間ほどしかなく、法案に反発する議員らも納得する形で成立までこぎ着けられるのかは見通せない。 自民の閣僚経験者は「多様性こそが活力をうむ。 理解増進法すら出来ないのであれば、自民党は終わってしまう。」と危機感を示している。 (森岡航平、asahi = 3-20-23)


ウクライナの穀物 36% 減 農水省が白書で食料安全保障を特集

農林水産省が 26 日に発表した 2022 年度の「食料・農業・農村白書」は、ロシアによる侵攻でウクライナの穀物生産量が大幅に落ち込み、小麦などの国際価格も高止まりしていることから、「食料安全保障上のリスクが増大している」と指摘した。 白書は「食料安全保障の強化に向けて」とする特集で、米農務省のデータからウクライナの穀物を分析。

22 年 7 月から 23 年 6 月までの 1 年間の生産量が、前年同期比36% 減の 5,500 万トンになるとの見通しを示した。 小麦は世界全体の輸出量の 6.8% を占め、国際価格は侵攻直後の 22 年 3 月に過去最高値を記録。 その後に下落したが、米国やカナダの不作などが影響し、高い水準で推移している。 白書では「食料を安定的に供給していく上でターニングポイントを迎えている」としている。 野村哲郎農水相は 26 日の閣議後会見で「日本は海外に依存しすぎだった。 (できるだけ)日本で生産するよう構造転換を進めたい。」と話した。 (加藤裕則、asahi = 5-26-23)


北陸 42%、沖縄 38%、中国 29% … 電力 7 社が 6 月から値上げへ

大手電力 7 社の家庭向けの規制料金が 6 月 1 日から値上げされることになった。 政府が 16 日に開いた関係閣僚会議で、標準的な家庭で 14 - 42% 引き上げることを了承した。 値上げ申請前の昨年 11 月と比べて月額 2,078 - 5,323 円上がる。 各社が申請した値上げ率からは圧縮された。 近く経済産業相が認可する。 政府が認めた標準的な家庭の値上げ率は、

▽ 北海道 21%、▽ 東北 24%、▽ 東京 14%、▽ 北陸 42%、▽ 中国 29%、▽ 四国 25%、▽ 沖縄 38%

となる。 各社はこれより 4 - 14 ポイント分高い値上げ率で申請したが、経済産業省の審査で縮小した。 さらに、東京と北海道以外の 5 社は 4 月の値上げ予定が 6 月に延びた。

今回の値上げは、ウクライナ侵攻で火力発電の燃料費が高騰したことから 7 社が申請した。 規制料金は、こうした燃料費の上昇分を乗せられる上限が決まっており、いずれも上限に達していた。 値上げされた料金は、7 月の請求分から適用される。 一方で、2 月からの政府の補助金で、標準的な家庭は月額料金から 2,800 円引かれる。 さらに、再生可能エネルギー普及のための賦課金や燃料費の下落で、実際の請求額はウクライナ侵攻前の水準となる見通しという。 補助金は 9 月が期限で、延長されなければ、その分の負担は増すことになる。

規制料金は、全国の家庭向け電力販売量の 3 割超を占める。 残りは大手の自由料金と、新電力会社の利用者で、規制料金とは別に値上げを進めている。 今回の値上げに連動して引き上げられる料金プランもあり、影響は広がりそうだ。 エネルギー問題に詳しい国際大学の橘川武郎教授は「値上げはやむを得ない」としたうえで、「火力発電の比率が高いため、化石燃料の値段が上がれば電気料金に響く。 再エネの導入を加速させ、石炭とアンモニアを混ぜた発電を進めて化石燃料依存を減らすべきだ。」と指摘する。 (伊沢健司、岩沢志気、asahi = 5-16-23)

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電気料金値上げ幅、7 社中 6 社が圧縮 最近の為替・燃料価格で再計算

経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会(電取委)は 4 日、大手電力 7 社が申請した家庭向け規制料金の値上げ幅について、最近の燃料価格を反映した再算定結果を示した。 北陸電力を除く 6 社が値上げ幅を圧縮した。 電取委は石炭の調達方法を見直すなどして値上げ幅をさらに圧縮することを提案し、議論を続けることになった。

申請時の値上げ幅は平均 28.1 - 45.8% だったが、その後に大きく変動した為替水準や燃料価格などをもとに計算し直した結果、平均 17.6 - 46.9% となった。 北海道、東北、東京、中国、四国、沖縄の 6 電力で値上げ幅が圧縮された。 東電は、29.3% から 17.6% になった。 価格の下がった液化天然ガス (LNG) の火力の割合が多いことなどが要因だ。

一方、石炭火力の割合が多い北陸電では、石炭価格の上昇で 45.8% から 46.9% に膨らんだ。 7 社は 1 月までに値上げを申請し、電取委が審査している。 4月以降に値上げするとしていたが、岸田文雄首相が「厳格かつ丁寧な査定による審査」を西村康稔経産相に指示し、再算定を求められていた。 (宮川純一、asahi = 4-4-23)

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電気料金、4 月から月 800 円程度安く 政府が再エネ賦課金を見直し

再生可能エネルギー普及のために電気料金に上乗せされる賦課金について、政府は 22 日、標準的な使用量の家庭(月 400 キロワット時)で 4 月から月 800 円程度下がるとの見通しを示した。 賦課金は年度ごとに見直しており、現在は 1 キロワット時あたり 3.45 円で、5 月請求分から 2 円ほど安くなる。 電気の市場価格高騰で再エネの販売収入が増えることが理由という。 (asahi = 3-22-23)


75 歳以上の医療保険料を引き上げ 参院厚労委で法案可決、成立へ

一定以上の収入がある 75 歳以上の医療保険料を引き上げる健康保険法などの改正案が 11 日、参院厚生労働委員会で自民党、公明党、国民民主党の賛成多数で可決された。 12 日の参院本会議で成立する見通し。 75 歳以上の約 4 割が負担増となる。 高齢化による医療費増に加え、今後は少子化対策の財源確保のため、高齢者にも負担を求める動きが、一層加速しそうだ。

改正案は、75 歳以上が新たに出産育児一時金の財源の一部を負担するようにするほか、現役世代の負担軽減のため、高齢者の保険料の伸び率と若い世代が高齢者医療に出す支援金の伸び率を同程度にそろえる。 75 歳以上の医療費は 1 割を高齢者の保険料で、4 割を現役世代からの支援金で賄っているが、高齢者の保険料がこの 15 年間で 1.2 倍になった一方、現役の支援金はそれを上回る 1.7 倍に増えていた。

法改正で高齢者の負担は段階的に増える。 まず、2024 年度に年金収入 211 万円超の人の保険料が上がり、25 年度には 153 万円超の人も対象になる。 また、政令の改正で年収約 1 千万円超の高所得者の保険料上限額が、今の年 66 万円から 24 年度に 73 万円、25 年度からは 80 万円へと大幅に引き上げられる。 年収別に負担増をみると、年収 200 万円の人は 25 年度に年 3,900 円増、年収 400 万円では年 1 万 4 千円増となる見通し。 これに高齢化など医療費の自然増による負担も加わる。

収入に比例した負担の仕組みは、現役世代間でも強化。 給与水準が高い大企業の会社員らが加入する健康保険組合や公務員の共済組合では負担が重くなり、財政が厳しい中小の健保組合は負担減になる。 ただ改正案では、中小企業の会社員らが加入する協会けんぽの財政を支える国庫補助金も大幅に減る。 このため野党は「国費の削減が目的だ」などと批判。 採決では立憲民主、日本維新の会、共産、れいわ新選組などの各党が反対した。

保険料の負担増は今回の制度改正以降も検討が続くことになる。 少子化対策の財源として、政府は社会保険料に上乗せして徴収する案を検討。 さらに医療保険改革も迫られる見通しで、年齢に関わらず収入に応じて負担を求める動きは強まっていきそうだ。 (村井隼人、asahi = 5-11-23)