旅行支援事業で不正請求 530 万円 日本旅行 虚偽の人件費を報告

旅行大手の日本旅行は 16 日、愛知県の全国旅行支援事業「いいじゃん、あいち旅キャンペーン」の業務で、人件費計約 530 万円を県に不正請求していたと発表した。 勤務実態がないスタッフの出退勤記録簿などを作成し、虚偽報告をしていたという。 同社によると、愛知法人営業部長は 2022 年 7 月 - 23 年 4 月、宿泊料金の割引に関連した書類などを審査する業務で、延べ 163 人分の出退勤記録簿や日報について部下に虚偽記載を指示し、人件費を不正請求した。 病欠などで出勤できなかったスタッフの代わりに、補充要員として同営業部社員の名前を勤務表に記入させたが、実際は働かせていなかったという。

社内調査に対し愛知法人営業部長は「指定された人員を確保しなければいけないと考えた」と話しているという。 5 月 10 日、県から「不正の疑いがある」と連絡があり、社内の調査で発覚した。 業務は JTB が県から受注し、日本旅行に再委託していた。 同社はほかにも 38 都道府県で同様の業務を請け負っており、さらに調査を続ける。 (asahi = 5-16-23)


中国富裕層が担い手に、斜陽の国内温泉旅館 - 外国人所有が 4 割

静岡県熱海市に戦後、憧れの新婚旅行先だった温泉旅館がある。 1934 年に開業し、吉田茂元首相ら政財界の要人も愛用した「つるや旅館」だ。 尾崎紅葉の小説「金色夜叉」に登場する「お宮の松」の正面に位置する。 80 年代にかけて団体旅行でも人気だったが、2001 年の閉館後は廃虚となり熱海衰退のシンボルとも呼ばれた。 この跡地を香港に本社を置くグローリー・チャンピオン・エンタープライズ・リミテッドが 17 年に買収し、約 250 億円かけて改修。 全 87 室に温泉風呂とバトラー(執事)がつく高級宿「熱海パールスターホテル」として昨年 9 月に開業した。

少子高齢化による働き手不足や経営者の高齢化、施設の老朽化などが重なり温泉旅館の廃業が相次いでいる。 この担い手として台頭しつつあるのが中国富裕層だ。 新型コロナウイルス禍で経営が悪化して積極的な銀行融資が見込めない中、相場の倍近い高値もいとわない中国資本が売却先として魅力を増している。

物件仲介も手掛けるホテル旅館経営研究所の辻勇自所長は、高齢となった旅館経営者から海外への売却依頼が増え、同時に中国系資本からの紹介依頼も急増していると指摘。 「今後 10 年間で温泉旅館の外国人所有率は 4 割程度になる」との見通しを示した。 問い合わせは 19 年から増加傾向にあり、香港に拠点を持つ富裕層の割合が急増しているという。 中国からの投資が増える背景には習近平政権の政策がある。 アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏をはじめ、不動産やテクノロジー、金融などへの締め付けを強めた結果、警戒感を強めた富裕層が世界各国への資産移転を始めた。

潤沢な資金

太平洋を一望する関西の温泉宿の経営者(78 歳)は、3 年前に働き手不足のため旅館を手放す決意をした。 約 5 億円で売りに出すと国内からは半値なら買う、との回答が 1 件のみ。 売却先を中国に広げると 5 社が手を挙げ、買値を上乗せする業者もあった。 うち 2 社は中国人富裕層の資産管理会社だ。 交渉中のため、匿名で取材に応じた。

学習院大学経済学部の渡辺真理子教授は、中国共産党が学習塾の非営利化を進めるなど教育への介入を始めたことで富裕層が投資だけでなく移住を視野に入れ始めたと指摘する。 在留資格を得ることで国外で子供の教育機会が得られるためだ。 中国から日本への移住では、「経営管理ビザ」や「高度専門職ビザ」の在留資格の取得や相談が増えている。 継続的に安定した事業を行うことが要件のため、旅館の買収と経営をセットで検討するケースも増えている。

海外投資家向けに不動産紹介やコンサルティング事業を行うパープル・キャピタルの管翼代表取締役は、同社が仲介した富裕層はポルトガルやギリシャなど世界数カ所で同時に在留資格を取り、それぞれ現地流のサービスを徹底していると指摘。 日本でも大規模修繕で老舗旅館の付加価値を高めて日本人を雇用しており、利ザヤ目的に短期間で転売するとのイメージはあてはまらないとしている。

1980 年をピークにホテル・旅館の施設数は減少してきた。 政府は海外からの旅行客を増やそうと 2008 年に観光庁を設立し、翌年から中国人にも個人観光ビザの発給を開始。 その後も政府は訪日客増を成長戦略の柱に位置付け、18、19 両年は 1 年間で 3,000 万人を超えた。 しかし、部屋食を提供する温泉旅館はインバウンド需要を十分に取り込めないままコロナ禍に直面し、負債を抱えての事業継続が難航している。

熱海再生

中国資本の買収が地域の再生につながる例も見られ始めた。 熱海のパールスターホテルでは、運営を任された日本人スタッフが開業前から熱海市と対話を重ね、食事を提供しない「泊食分離」形式を取った。 宿泊客に地域の飲食店で料理を楽しんでもらうためだ。 経営戦略室の大川真美支配人は、新婚旅行先として人気だった時代を知る世代だけでなく、初めて日本を訪れる海外客にも「今の熱海の魅力を知ってもらうこと」が経営戦略でもあると述べた。

熱海市の人口は約 3 万 4,000 人。 年間約 300 万人が訪れるが旅館食の提供により飲食店や地元の農漁業者への恩恵は限られていた。 熱海市観光建設部の立見修司次長は、観光客向けに地産地消のメニュー作りが進めば野菜農家や漁業者の販路確保となり、高齢化の歯止めにつながる可能性もあると歓迎する。 最大の課題である「働き手不足」の解消も進むとみている。 「定休日」を設けて従業員を休ませる宿が増える中、世界水準のサービスでインバウンドを呼び込む外資は、平日の宿泊需要を増やして収益の平準化に寄与する。 海外で「熱海」がブランド化すれば、繁忙期に頼らない経営は他の旅館にも波及する。

熱海市の宿泊客数は 1969 年度の 532 万人をピークに減り続け、2011 年度に約 250 万人に半減した。 2000 年代はゴーストタウンとやゆされたが、シニアの団体旅行を想定したプロモーションを個人客向けに切り替えたことで、新型コロナ感染拡大前の 18 年度には309万人にまで回復していた。

インベスト・ジャパンはどこへ

中国資本に宿を託したいが周囲の偏見を恐れて二の足を踏む経営者も多い。 箱根でペンションを経営する 50 代のオーナーは 1980 年代に企業の保養所を買い取って年 1,000 万円程度の収益を得る運営をしてきたが、老朽化による建て替え費用が捻出できずにいる。 老朽化した施設は資産価値がないと敬遠する日本人より、設備投資を惜しまず旅館経営を引き継いでくれる中国資本を選びたいのが本音だという。 オーナーは中国資本への売却検討が知られると偏見による批判を受ける可能性があるとして匿名で取材に応じた。

学習院大学の渡辺教授は、タイやベトナムが中国からの投資を自国の経済発展につなげているのに対し、日本は反中国感情が阻害要因となって投資魅力を失わせていると指摘。 政府が「インベスト・ジャパン」を掲げるのであれば、リスク管理を助言できる民間のコンサルタント会社を活用するなど中国資本の取り込みを模索すべきだと語った。 観光庁の宿泊旅行統計によると、3 月の宿泊者数は前年同月比 49% 増ののべ 4,973 万人。 うち外国人は同 23.9 倍の 789 万人だった。 政府は 4 月、30 年までに対日直接投資 100 兆円を目指して海外から人材や資金を呼び込むアクションプランを公表している。 (萩原ゆき、Bloomberg = 5-15-23)


NY でこいのぼりに阿波踊り、NARUTO も ジャパンパレード開催

米ニューヨークで 13 日、日本の文化を紹介し魅力を発信する「ジャパンパレード」が開催された。 ニューヨークに拠点を置く文化サークルや団体、日系企業など 90 組、約 2,500 人が、セントラルパーク沿いの通りを約 1 キロを練り歩いた。 気温が 25 度を超え、蒸し暑さも感じられた午後 1 時過ぎ、パレードは始まった。 こいのぼりを振りながら歩く親子に着物姿の男女、太鼓の演奏、阿波踊り …。 沿道には数万人が集まり、催しを楽しんだ。

世界的な人気を誇る漫画「NARUTO - ナルト -」のミュージカル作品の出演者の乗った車両が通り過ぎると、ひときわ大きな声援が上がった。 開催は 2022 年に続き 2 回目。 07 年から開催していた「ジャパンデー」のイベントから形式を改め、パレードを催している。 約 2 万人が集まった 22 年は日本の食べ物の屋台に多数の人が集まって混雑したため、今年は店舗数を増やした。

1992 年のアルベールビル五輪フィギュアスケート女子で金メダルを獲得したクリスティ・ヤマグチさんも参加した。 ヤマグチさんは日系 4 世で、パレードを率いる「グランド・マーシャル」の役を務めた。 ニューヨークでは新型コロナウイルスの感染拡大後、アジア系が被害を受ける暴力事件などが相次いだ。 ヤマグチさんも、今回のような交流の重要性を感じているという。

「アジア系米国人は特にこの 3 年間、本当に大変だったと思う。 文化を共有し、学ぶことはとても大切だ。 互いを理解すればするほど寛容になり、より多くの人を受け入れることができるようになる。」

ニューヨークのアダムス市長もパレードに加わった。 日の丸の小旗を振って行進し、式典では「多様性を祝う場に参加することができてとても誇りに思う」と話した。 森美樹夫ニューヨーク総領事は、特に地方の名物料理を前面に押し出したと説明した。 「これを機会に、色々な方に東京や京都、大阪だけではない姿を見ていただいて、地方の魅力を訴えていきたい」と語った。 (ニューヨーク = 遠田寛生、asahi = 5-14-23)


石川・珠洲で震度 6 強、M6.3 建物倒壊、下敷きの情報

5 日午後 2 時 42 分ごろ、石川県珠洲市で震度 6 強の地震があった。 気象庁によると、震源地は石川県能登地方で、震源の深さは約 10 キロ。 地震の規模はマグニチュード (M) 6.3 と推定される。 東北から近畿の広範囲で揺れを観測した。 日本の沿岸で若干の海面変動の可能性があるが、被害の心配はないとしている。 能登半島では、その後も震度 4 など地震が相次いで発生した。

石川県警珠洲署によると、珠洲市内で建物が倒壊したとの通報が数件あった。 珠洲市の地元消防によると、市内の建物 2 棟が倒壊。 それぞれ 1 人が下敷きになっているとの情報がある。 政府は首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置した。 東京電力によると、新潟県の柏崎刈羽原発で異常は確認されていない。 関西電力によると、福井県内の美浜、大飯、高浜原発にも異常はないという。 北陸電力によると、石川県の志賀原発に異常はない。 JR 東日本によると、地震の影響で長野 - 金沢間を走行中の北陸新幹線上下 3 本が停電し緊急停止した。 (中日新聞 = 5-5-23)


オスプレイ配備計画、用地売却を決定 佐賀空港 地権者臨時総会

佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画を巡り、駐屯地予定地の地権者でつくる管理運営協議会は 1 日、臨時総会を開き、防衛省に用地を売却することを決めた。 地権者の 3 分の 2 以上の賛成により議決した。 配備実現に向けて前進した形だが、反対する地権者の一部は「民法上、協議会の多数決で用地売却は議決できない」として法的手段も辞さない構えを見せており、なお曲折も予想される。

協議会によると、賛成 184 票、反対 49 票だった。 空港西側の用地 31 ヘクタールは全て佐賀県有明海漁協南川副支所が所有する。 地権者 254 人の内訳は組合員 159 人、元組合員ら 95 人。 土地は漁協名義で登記されているが、内規でそれぞれの持ち分を定めている。 同支所の田中浩人運営委員長を会長とする管理運営協議会で所有地の取り扱いを決めてきた。

協議会は、事前に提出された書面による意思表示を含め、地権者の 2 分の 1 以上の出席で臨時総会が成立し、3 分の 2 以上の賛成があれば、用地の売却に応じるとしていた。 田中会長は「議決は一度きり。 結果に従うべき。」との認識を示している。 一方、配備に反対する地権者らは、用地は民法上の「共有」に当たり、譲渡するには地権者全員の合意が必要になると主張。 協議会に用地を売却する権限はないとして、法的手段も辞さない考えを示している。

佐賀県は 2014 年 7 月に防衛省からオスプレイ 17 機の配備要請を受けた。 18 年 8 月に山口祥義知事が受け入れを判断。 漁協は昨年 11 月、空港建設時に県と結んだ自衛隊との空港の共用を否定した協定の見直しに応じた。 防衛省は地権者に 1 平方メートル当たり 6,031 円の買収単価を提示し、補助率の高い漁業振興策について説明していた。 (佐賀新聞 = 5-1-23)


観光地で広がる「宿泊税」、独自財源で探る振興策 … 「宿泊客減るのでは」懸念も

新型コロナウイルス関連の制限緩和による観光需要の高まりを受け、自治体で「宿泊税」を導入する動きが広がっている。 人口減少で税収が減る中、独自財源の確保策として注目されるが、コロナ禍で下火になっていた。 収入は主に観光振興に使われるが、実質的な値上げになるため慎重な意見もある。(田ノ上達也)

宿泊税条例を昨年 3 月に設けた長崎市は、コロナの感染状況を踏まえ、今月 1 日から課税を始めた。 税額は宿泊料金に応じて 1 人 1 泊あたり 100 - 500 円。 初年度は約 3 億 7,000 万円の税収を見込んでおり、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の展示施設整備や体験型プランづくりの支援に充てる方針だ。 コロナ禍前は年間約 270 万人だった宿泊客も、21 年は約 114 万人に減っている。 担当者は「訪れた人の満足度や利便性を高めることで、さらに宿泊客が増えるという好循環につなげたい」と話す。

国際的なスキーリゾートとして知られる北海道ニセコ町は 3 月、宿泊料金の 2% を徴収する定率制の宿泊税導入を目指すと発表した。 宿泊事業者らの意見を踏まえ、今年度中にも条例案を議会に提出する計画だ。 試算では、宿泊客がコロナ禍前の水準まで回復すれば年間 2 億円の税収を期待できる。 地域交通の整備や、災害や感染症の影響を受けた事業者を支援する基金の創設などに使うという。 松江市は導入を検討する有識者会議を今年度中に設ける方針で、担当者は「観光という重要な産業を伸ばすには新たな財源の確保が必要だ」と話す。

ただ、コロナ禍で大きな打撃を受けた観光地には慎重な意見もある。 静岡県熱海市は 1 人 1 泊 200 円を徴収する条例案を昨年 11 月にまとめ、市民や事業者の意見を募ったところ、「近隣の温泉地に流れて宿泊客が減るのではないか」、「(税収を充てる事業が分からず)使途が不透明だ」などの懸念が相次いだ。 諮問機関も丁寧な説明を求め、市は 2 月議会への提案を見送った。 神奈川大の青木宗明教授(租税論)は「自治体が独自に設ける税なので、地元に十分説明して合意を得る必要がある。 導入後も使途を明確に示すことが重要だ。」と指摘する。 (yomiuri = 4-30-23)

宿泊税 = 自治体が総務相の同意を得て徴収できる法定外目的税の一つ。 ホテルなどの宿泊客が対象で、税率や使途を条例で定める。 東京都が 2002 年に初めて導入した。 総務省によると、今月 1 日現在、東京、大阪、福岡の 3 都府県と、金沢、京都、福岡、北九州、長崎の 5 市、北海道倶知安町に広がっている。


廃線のがれたローカル線、開通 100 年 駅前に響いた 70 年ぶりの歌

かつて国鉄の廃線対象の路線だった山形鉄道フラワー長井線が 22 日、赤湯 - 荒砥駅間(約 30.5 キロ)の全線開通 100 年を迎えた。 山形県白鷹町の荒砥駅前であった記念式典で、開通 30 年に祝い歌を披露した当時の中学生約 25 人が 70 年のときを経て歌声を響かせた。 1923 年 4 月 22 日に荒砥駅まで開通した。 60 年代に入ると赤字路線として廃線候補になり、地元は反対運動を展開。 県と沿線 4 市町などが 88 年に第三セクターの山形鉄道を設立し、運行を引き継いだ。

開通 30 年の歌は楽譜が見つからず、元生徒の記憶をもとに再現した。 古い資料で確認できた歌詞もあり、最後の「みんなで祝おう 感謝しよう」の部分は元生徒の記憶でよみがえった。 「荒砥前広場を中心に開通 30 周年記念事業が盛大に行われた。 私たちは中学生で、目抜き通り 1.3 キロを日の丸の旗を振り、歌いながら祝いの行進をし、式典で全員でこの歌を歌った。」

当時、荒砥中 3 年だった高谷誠司さん (85) はこの日、あいさつで経緯を説明。 強い風が吹くなか、そろいの法被姿で舞台に立ち、鉄道が「文化の恵み」や「物産」を運んでくれたという歌詞を歌い上げた。 当時 1 年だった埼玉県の五十嵐徹さん (82) は高校卒業後、地元を離れて警視庁の警察官になり、定年まで勤めた。 「曲を聴き、当時の記憶とともに歌を思い出した。 きょうは懐かしい顔ばかりで、みんな元気でびっくり。 地元に帰って式典に参加できてよかった。」と話した。

長井線は普段 1 両か 2 両編成だが、100 周年を記念した 4 両編成の列車が初めて走った。 長井市が拠点のアマチュアフォークグループ「影法師」は、長井線存続運動のテーマソングだった「今日もあの娘(こ)は長井線」を披露するなど、会場は家族連れらでにぎわった。 (坂田達郎、asahi = 4-23-23)


イモの病克服へ種苗を自社生産 焼酎大手の霧島酒造、収穫量回復狙う

焼酎大手の霧島酒造(宮崎県都城市)は 6 日、原料のサツマイモ確保に影響を与えている「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」の克服に向け、感染していない種苗を自社で生産し、農家に提供する方針を発表した。 生産施設も建設中。 イモ不足は一部製品の販売休止を招いており、苗を切り替えることで収穫量の回復につなげる狙いがある。 基腐病は、サツマイモの根元から腐敗する病気。 同社は主に宮崎、鹿児島両県の農家から年間約 10 万トンを仕入れて原料に使うが、2021 年と 22 年は確保できた量が計画を下回った。 同社に出荷する農家も、感染が拡大した 20 年以降、減少率が上がっているという。

同社はサツマイモの購入価格を引き上げたり、農薬散布を支援したりしているほか、主流の「コガネセンガン」以上に抵抗力が強い「みちしずく」という品種の普及を進めてきた。 ただ、江夏順行社長は「基腐病と真っ正面から戦わねばならない」と語り、その手段として種苗の生産施設建設に 1 月に着手したことを明らかにした。 従来のサツマイモ生産は、収穫した一部を種芋として苗を育て、翌年に植えるサイクル。 だが、基腐病は種芋が感染していた場合は苗も感染する。 成長の途中や土壌を通して感染することもある。

培養によって、菌がいない苗を増やすことができることから、志比田工場近くの 1 万 7,565 平方メートルに 14 億円をかけ、育苗ハウスや管理研究棟を建てる。 9 月から稼働し、年 250 万本分の苗を供給する予定で、健全な苗への切り替えを促し、病気の克服をめざす。 江夏社長は「農家は運命共同体。 発病の可能性のない苗で、病気の拡大を根本から防ぎたい。」と語った。 (中島健、asahi = 4-6-23)


少子化対策に「マッチングアプリ」 きっかけは市長と若手との飲み会

人口減少対策としてマッチングアプリに期待する自治体がある。 三重県桑名市は昨年 11 月、国内大手アプリ「Pairs (ペアーズ)」を運営する事業者と連携協定を結んだ。 恋愛・結婚を希望する市民に、アプリの利用方法を教えるイベントを開いたり、アプリを試せる機会を提供したりする。

自治体も期待する「マッチングアプリ」

協定を主導した伊藤徳宇市長 (46) は語る。 「日本全国の課題と同じで、桑名市も人口減少のフェーズに入った。 本腰を入れて対策をしていかないといけない。 一番重要なのは子育て支援策を拡充していくことだが、それだけでは足りない。」 桑名市は名古屋市のベッドタウンとして住民を増やしてきた。 しかし、2015 年に 14 万 3 千人だった人口が、昨年 2 月には 14 万人を下回った。 特に 19 年以降、減少傾向が顕著になっている。

市が注目したデータが、未婚率の上昇だ。 30 歳代前半で、1990 年の男性の未婚率は 26.1% だったが、2020 年には 44.5% に。 女性は 9.1% から 30.7% となった。 「結婚や交際を希望しながら出会うチャンスがなく、結婚が遅れていく人もいる。 ここにも行政として手を尽くしていく必要があるのではないかと考えた。」 伊藤市長がアプリの利用を思いついたのは、昨年 4 月の若手職員との飲み会がきっかけだった。 「コロナ下で飲み会もなく、出会いがないのでは」と聞いたところ、「マッチングアプリを知らないのですか」と返された。 具体的な使用例も次々と教えられたという。

「衝撃ですよね。 堅い職業の公務員が普通に使っている。 30 歳代よりも下のデジタルネイティブ世代には抵抗感がない。」 マッチングアプリと出会い系の違いは、本人確認の有無だ、と考える。 「Pairs」も、利用者に不審な動きがないか、24 時間態勢で巡回パトロールしていると聞いた。 「以前の出会い系と比べると、安全性は高まっている。 それでも不純な動機で出会いを装ってくる人もゼロではない。 出会った時に何か起こるかもしれない。 そこは我々から伝えていかないといけない。」

若手からは、理想の相手について「職場恋愛は別れるリスクがある。 公務員とは付き合いたいから、名古屋市の職員とマッチしたい。」という声もあった。 結婚した市民が都市部に流出する可能性もある。 「街の魅力を高めるのが一番大事。 住みやすさ、子育てのしやすさとかに力を入れていく。 選んでもらえる街を作っていく。」 桑名市は 23 年度から、15 歳以下だった児童手当を 18 歳以下までに拡充し、所得制限も撤廃となる。

「子育て支援だけで、少子化の対策をしようとしても難しいと思う。 もっと幅広くやっていかないといけない。 出会って結婚する人が増えたら、子どもが増えるとシンプルに考えている。 国はもっと未婚化対策に力を入れてもいいのではないか。」 (asahi = 4-3-23)


獺祭、米 NY で酒造り開始 「経営者として失格かも」会長語る

日本酒「獺祭(だっさい)」の蔵元、旭酒造が米ニューヨークで酒造りを始めた。 新しい酒蔵が 3 月に完成し、旭酒造として初めての海外生産に挑む。 桜井博志会長は「和食店だけでなく、米国の一般的な飲食店で飲まれる存在を目指す。」と話す。 商品名は「DASSAI BLUE (獺祭ブルー)」。 「青は藍より出でて藍より青し」にちなみ、「日本の獺祭を超えて欲しい(桜井会長)」という思いを込めた。 今年夏に米国で発売する。 販売価格は高いもので、720 ミリリットルで 90 - 100 ドルを想定している。

3 月、NY 市内から車で 2 時間ほど北上したハドソン川沿いにある約 6 万平方メートルのスーパーマーケットの跡地に精米工場と酒蔵が完成した。 2017 年に米国での生産を決め、19 年に生産を始める予定だったが、新型コロナや現地の環境規制などの対応で 4 年ずれ込んだ。 費用も 30 億円の計画が 80 億円に膨らんだ。 原料米は当面、日本から酒米「山田錦」を輸入する。 米アーカンソー州で山田錦の生産にも取り組んでおり、徐々に米国産米に切り替えていく予定という。 今年の生産量は 720 ミリリットル換算で約 15 万本。 数年かけ、生産量を今年の 10 倍超に増やす計画だ。

旭酒造は、原料米の削り度合いが大きく高価な「純米大吟醸」の生産に絞ったうえ、「杜氏(とうじ)の勘」ではなく、科学的なデータを重視。 機械で管理した環境で一年中生産を可能にしたことで価格を抑え、人気を得た。 桜井会長は「ライバルは日本酒ではなくワインやシャンパン。 文化の発信拠点という意味で NY での生産を決めたが、米国市場はまだ手探り。 試行錯誤の日々だ」と話す。(ニューヨーク = 真海喬生)

桜井会長、米大学生に語る

「我々は必ず失敗します。」 今年 2 月 7 日、米ニューヨーク (NY) のコロンビア大学。 扇形の講義室で 100 人ほどの学生らを前に、日本酒「獺祭(だっさい)」の蔵元、旭酒造の桜井博志会長が語りかけた。 3 月にニューヨーク州ハイドパークに酒蔵が完成し、初めて海外での酒造りに挑む。 米国での事業でどんな戦略を描いているのか、との学生の問いかけに、失敗するだろうと予言。 「企業経営者としては失格かもしれない」とも続けた。 どういうことなのか。

そもそも、旭酒造の NY 進出は「失敗続き」だった。 縮小傾向にある日本の酒市場を前に、2017 年、米国での酒蔵建設を決めた。 当初は原料米にカリフォルニア米の銘柄「カルローズ」を使い、30 億円を投じて酒蔵を建設。 19 年に生産を始める予定だった。 だが、カルローズでは思うような酒がつくれず、当面は日本から酒米「山田錦」を調達することに。 コロナ禍で建設工事が思うように進まず、排水処理に関する規制をクリアするための設備の追加購入などで、投資額は 80 億円と 3 倍近くに膨らんだ。 生産開始は 4 年ずれ込んだ。

旭酒造の直近 1 年間の売上高は約 165 億円。 売上高の半分近くを一つの拠点の建設に投じたことになる。 ニューヨークで和食店を経営する男性は「NY の酒蔵だけで80億円かけると、投資額を回収するのに何年かかるんだろうという印象。 大丈夫なのか。」と話す。 旭酒造は、高価な「純米大吟醸」に絞った酒造りにこだわる。 「杜氏(とうじ)の勘」ではなく、科学的なデータを重視。 機械で管理した環境で季節を問わず一年中生産することで価格を抑え、人気を博した。

成功できた理由について桜井会長は、「負け組だったこと」と「少ない人数でとにかくトライ & エラーを早く繰り返したこと」を挙げる。 桜井会長が酒蔵を受け継いだのは 84 年。 山口県の過疎化が進む地域で、地元向けの安価な日本酒をつくっていた。 売上高は少しずつ減り、1 億円を切っていた。 やがて杜氏が会社を去り、製造を担う社員は 4 人だけに。 そして、吹っ切れた。 高級だが、まだ安定した生産技術がなかった純米大吟醸づくりに挑戦し、東京市場に進出。 「負け組で後がないから決められた」と話す。 また、少人数だったことで社員との間で意思統一しやすく、「少量で酒をつくり、何度もトライ & エラーを繰り返せたことで質がぐんぐん上がっていった」と振り返る。

NY には、日本から製造を担うベテラン 3 人を送り込んだ。 現地スタッフ 5 人を加え、少人数で酒造りに挑む。 そして 3 月 20 日には自らも妻と共に NY に移住。 酒蔵から車で 15 分ほどの近くで暮らし始めた。 「72 歳で英語もできないのに」と話す。 少ない人数で未知の市場に挑む構図は、かつての自らの姿と重なる。 桜井会長は「米国での酒造りも試行錯誤が必要だが、販売のほうも手探り。 これからいろいろ試してみるしかない。 だから必ず失敗する。 でも、日本であれこれ考えるより、米国に飛び込んだほうがきっと理解できる。」と話す。 (ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 3-29-23)


浅間山の噴火警戒レベル 2 へ引き上げ 2021 年 3 月以来 気象庁

気象庁は 23 日、群馬・長野県境にまたがる浅間山について、5 段階ある噴火警戒レベルを 1 (活火山であることに留意)から、2 (火口周辺規制)に引き上げたと発表した。 火口から約 2 キロの範囲では噴石や火砕流に警戒するよう呼びかけている。 同庁によると、21 日から火山性地震が増加している。 また、山の西側が膨張するわずかな変化が観測された。 浅間山で噴火警戒レベルが 2 になるのは、2021 年 3 月以来。 (宮野拓也、asahi = 3-23-23)


佐賀県産の有明ノリ生産、「20 季連続日本一」ならず 兵庫が首位に

昨年まで 19 季連続で販売枚数、販売額ともに国内トップだった佐賀県産の有明ノリが、今季は不作で、兵庫県産に日本一の座を譲ることが確実となった。 17 日に佐賀市で行われた入札会で、佐賀県有明海漁協の深川辰已参事が「兵庫に追いつくのは無理」と、首位陥落を宣言した。

養殖ノリの漁期は秋から翌年の春まで。 今季、有明海ではノリの種付け直後から、赤潮や少雨によって極端な栄養塩不足が続き、ノリの色落ちや成長不足に悩まされてきた。 今季通算 8 回目となるこの日の入札会も、販売枚数は前年同期の 7 割弱、販売額は 8 割にとどまった。 昨年 10 月からの累計では販売枚数 9 億 593 万枚、販売額 167 億 6,703 万円で、漁協が目標に掲げていた 18 億枚、225 億円には遠く及ばない。

全国漁連のり事業推進協議会の今月 16 日付調査では、兵庫県の今季の累計は 15 日時点で販売枚数が 9 億 3,647 万枚、販売額が 184 億 8,420 万円で国内トップ。 兵庫県は 5 月まで漁が続くのに対し、佐賀県は 3 月末で漁を終える。 今季最後となる 31 日の次回入札には、200 万枚ほどしか出品されない見通し。 「20 季連続日本一」の目標達成は絶望的になった。 佐賀市のノリ生産者、川崎賢朗さん (62) は「日本一といっても、生産量は個人差があるし、自分のこととしてあまり考えなかった。 でも、実際に日本一でなくなると聞くと、悔しくなった。」と話す。

深川参事は「自然との闘いなので、仕方のない面はある」と肩を落とす。 今季の有明海は、赤潮原因のプランクトンがノリの成長に必要な栄養塩を奪い、川から流れ込む栄養塩も少雨で不足。 漁協は栄養塩を補う「施肥」や、プランクトンを食べるカキの投入などの手を打った。 1 月に雨が降ったこともあって栄養塩は徐々に回復し、終盤はノリの量も質も持ち直してきたが、盛り返すには至らなかった。 特に南部は厳しい状況が続き、同漁協大浦支所では今季の販売枚数ゼロのまま、既に漁を終えた。

深川参事は、2 年前と 3 年前の豪雨で、赤潮の原因プランクトンを食べてくれる二枚貝が死んだ影響が出たとも感じている。 「人間の手でできることは限られていると痛感するが、来季に向け、サルボウガイなどの二枚貝を放流し、(海底を耕す)『海底耕耘』をしながら自分たちの漁場環境を改善したい」という。 「口溶けのよさや甘みは日本一。 佐賀ノリのファンは全国に多い。 悔しいが、来季は頑張って日本一を奪還したい。」 (野上隆生、asahi = 3-18-23)


被災地の人口急減、悪循環・復興の足かせに … 「3・11」から 12 年

関連死を含めて 2 万 2,000 人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災から 11 日で 12 年となる。 被災地では交通網の整備や住宅の高台移転などの復興事業が進んだが、想定以上の人口減少が課題となっている。 国勢調査でみると、岩手、宮城、福島 3 県の沿岸部と東京電力福島第一原発事故の影響を受けた計 42 市町村では、震災前(2010 年)の約 257 万人から 10 年間で約 14 万人減少し、復興の足かせとなっている。

警察庁などによると、震災による死者・行方不明者数は 1 万 8,423 人で、長期の避難生活などで亡くなる震災関連死は 3,792 人に上る。 被災 3 県などに最大約 12 万戸あった仮設住宅は約 420 戸まで減ったが、原発事故の影響が続く福島を中心に 3 万 0,884 人が今も避難している。 国勢調査では、10 年間の県全体の人口減少率は岩手 8.9%、宮城 1.9%、福島 9.6% と、いずれも全国の 1.4% を上回る。

市町村別では、3,970 人の死者・行方不明者が出た宮城県石巻市で 2 万 0,675 人の減少。 被災 3 県の沿岸部では、定住や帰還を促す様々な取り組みがなされているが、若い世代を中心に都市部へ流れる傾向がみられる。 仙台市は 5 万 0,718 人増、隣接する名取市は 5,584 人増となった一方、その周辺では人口の流出が著しい。 11 日は各地で追悼行事が行われ、岸田首相は福島市で開かれる県主催の式典に出席する。

福島沿岸部は帰還 18%

急激な人口減少は、原発事故で被災した福島県沿岸部で一層深刻になっている。 避難指示が出された市町村は当初の 11 から 7 に減ったものの、約 8 万 8,000 人だった居住人口は 18% の約 1 万 6,000 人にとどまる。 復興庁などが 21 年に行った住民意向調査では、10 - 40 歳代で「帰らないと決めている」と答えた人は双葉、大熊など 4 町で 5 割を超えた。 人口減が帰還を思いとどまらせ、さらに人口減を加速させるという悪循環を断ち切るため、各自治体は企業誘致などの対策を講じているが、抜本的な解決策にはなっていない。 (yomiuri = 3-10-23)


ホームは地下 5 階、吹き抜けや動く歩道 地下鉄七隈線の博多駅を公開

福岡市営地下鉄七隈線の博多駅の内部が4日、報道機関に公開された。 延伸区間(天神南 - 博多、1.6 キロ)は 27 日に開業する。 七隈線のホームは地下 5 階に造られ、県内で最も地下深い駅になる。 空港線ホームとの距離は約 150 メートル。 コンコースには約 55 メートルの動く歩道が設置され、3 分ほどで乗り換えられる。 現在は、空港線との乗り換えに天神 - 天神南間(約 650 メートル)で徒歩 10 分ほどかかるため、大幅に短縮される。

また、駅構内の案内表示は、外国人らにも分かりやすいようユニバーサルデザインを採用。 地下 2 階には吹き抜け空間も造られた。 市は、七隈線博多駅の利用者を 1 日 7 万 5 千人と見込む。 七隈線延伸は 2020 年度に開業する予定だったが、トンネル工事中だった 16 年 11 月に大規模な陥没事故が起き、2 年遅れた。 事業費も 450 億円から 587 億円に膨らんだ。 (板倉大地、椎木慎太郎、asahi = 3-4-23)


日本ドラマ「初恋」台湾でヒット 北海道ロケ地で語られる「新鮮さ」

台湾でいま、北海道があつい。 「コロナ後」の旅行先として人気なワケは、ネットフリックス配信のドラマ「First Love 初恋」。 長年、韓流ドラマに後塵を拝してきた台湾で久々のヒット作となったドラマが、ロケ地・北海道への旅行を後押しする形だ。 迎える地元も、万全の備えで好機を迎えている。

2 月 15 日朝、台湾北部の桃園空港では、札幌に向かう便の搭乗カウンターに、数十人の旅行者が列を作っていた。 4 泊 5 日の団体ツアーに夫婦で参加した台湾人の男性会社員 (34) は「過去に東京や福岡に行ったが、北海道は初めて。 『初恋』のロケ地巡りが楽しみだ」と笑顔を見せた。 このツアーは、作品に登場する小樽市の天狗山や、札幌市の中島公園にある天文台などの観光を売りにする。 男性は「学生時代は日本のドラマをよく見たが、説教くさい作品もあり、近年は筋がわかりやすい韓国や中国ドラマに興味が移っていた。 『初恋』は古典的なテーマや構成が逆に新鮮で楽しめた」と話した。

親日家の多い台湾ではかつて、日本のドラマやアニメが人気だった。 ただ、近年は苦戦を強いられる。 台湾の研究機関「文化内容策進院」などの調査では、言語別のテレビドラマの放映時間数で日本作品のシェアはこの 20 年間で半減した。 2005 年の約 13% から 19 年に 5% 強まで下がり、韓国(19 年 25.61%)、中国(同 32.53%)の作品に引き離されている。 長期的な劣勢のなか、「初恋」は日本のドラマでは久しぶりの大ヒットだ。 昨年 11 月の放映以降、台湾の人気ランキングで 3 週連続の首位を記録。 人気を見た多くの旅行社が「ロケ地巡り」の宣伝や団体旅行の販売に乗り出し、満席になる札幌便もある。

関連ツアーを設けた台湾大手の「東南旅行」によると、旅行先で北海道は人気トップ。 同社の担当者は「日本のドラマをテーマにしたツアーは、国ぐるみで旅行社に協力してくれる韓国と比べて、すぐに思い出せないほど久しぶりだ」と語る。

ロケ地マップの繁体字版 PR に力入れる札幌

ドラマの舞台となった札幌市もこのチャンスを逃さない。 コロナ禍の影響で 3 年ぶりの本格開催となったさっぽろ雪まつり。 2 月 4 - 11 日の期間中の来場者は 175 万人にのぼった。 大通会場には、アジアを中心に外国人観光客の姿も多く見られた。 期間中、隠れた観光スポットとなったのが、中島公園内にある天文台だ。 あまり知られていない施設だが、「初恋」の配信が始まった直後の昨年 12 2月以降、観光客でにぎわうようになった。 天文台は主人公がデートした場所で、今はポスターも飾られている。 香港、韓国、シンガポール、マレーシアなどから訪問者があり、なかでも目立つのが台湾だ。

台湾や香港での「初恋」人気を受けて、さっぽろ産業振興財団はロケ地マップの繁体字版を作成し、雪まつり会場でも配布した。 「初恋」は 20 年に撮影予定だったが、コロナ禍で 1 年延期。 撮影中の 21 年は緊急事態宣言が出されたため一時中断した。 撮影現場が変更されたロケ地も多かったという。 札幌市は 14 年に全国でも珍しい「映像の力により世界が憧れるまちさっぽろを実現するための条例」を制定し、映画やドラマを通じた札幌の PR に力を入れている。 16 年からは札幌を舞台にする作品には 2 分の 1 の補助率で上限 1 千万円の補助金も出しており、「初恋」も対象になった。

ただ、課題もある。 「初恋」ではボランティアのエキストラに多数の応募があったが、まだロケは迷惑と拒否されるケースは多い。 香港出身で同財団の李嘉兒さんは「ロケが札幌市のブランド化につながることを市民にもっと理解してもらう必要がある」と話す。 (桃園 = 石田耕一郎、日浦統)

回復傾向のインバウンド 鍵握るのは個人旅行

2022 年 10 月に新型コロナの水際対策が緩和されたことを受け、インバウンド(訪日客)は回復傾向にある。 日本政府観光局の統計では、22 年 12 月の訪日客数は 137 万人にのぼり、前月と比べて約 1.5 倍となった。 韓国からの訪日客数が大幅に増加し、タイや米国でも回復基調にあることが客数を押し上げたという。 ただ、22 年全体の訪日客数は 383 万 1,900 人と、コロナ前の 19 年と比べると 10% 程度に過ぎない。 台湾でみても 22 年 12 月は 17 万 200 人にとどまり、19 年同月の半分弱となっている。

V 字回復に向け、鍵となるのが、割合の多い個人客をどう増やしていくかだ。 中国からの団体客復活が見通せないなか、地元が舞台の作品が増えれば、ロケ地を巡るロケツーリズムが期待できる。 観光庁の担当者は「撮影された場所を聖地にして観光資源にする。 そんなロケツーリズムの取り組みにとても期待している。」と話す。 (asahi = 2-20-23)


出生率 2.95 … 「奇跡のまち」岡山県奈義町を岸田首相が視察

岸田首相は 19 日、子育て支援に力を入れる岡山県奈義町を訪れ、子育て支援施設を視察した。 同町は 2019 年に合計特殊出生率が 2.95 となり、「奇跡のまち」として注目されている。 首相は、子育て中の家族が同世代や地域の高齢者と交流できる「なぎチャイルドホーム」の利用者らと意見交換した。 子育て世帯が高齢者に子育ての悩みを気軽に相談でき、一時預かりなども行える施設だ。 育児の合間にできる仕事を紹介する「しごとコンビニ」の拠点も訪問した。 首相は視察後、記者団に「(同町は)多世代にわたり地域ぐるみで子どもの成長を支える街づくりをしている。 社会全体の意識を変えていくことが重要だ。」と語った。 (yomiuri = 2-19-23)


沖縄の無人島、中国系企業が半分購入 「リゾート開発計画」村は困惑

沖縄本島の北方にある無人島・屋那覇(やなは)島(沖縄県伊是名村)で 2021 年、中国系企業が島の半分ほどの土地を購入していたことが、村への取材でわかった。 この企業はホームページで「リゾート開発計画を進めている」としているが、これまで地元に説明はないといい、困惑が広がっている。 この中国系企業は、東京都内に本社を置き、不動産投資やリゾート開発を手がけている。 伊是名村によると、島の面積は 74 万平方メートル(東京ドーム 16 個分)で、企業は 21 年 2 月にこのうち半分ほどの土地を購入した。 民間同士の取引で、島の 26% にあたる村有地は含まれていないという。

1 月末、中国人女性が動画投稿アプリ「TikTok」の国内版「抖音(ドウイン)」で島の様子を映した動画を投稿。 15 日時点で 39 万 9 千件の「いいね」がついている。 女性は、別の動画で登記書類を示しながら、「島を購入した」などと説明した。 中国メディアの報道によると、女性の家族の会社が購入し、用途として「商業目的も排除しない」と述べたという。 村によると、中国人女性の投稿が国内でも注目を集め、村には 15 日までに「中国に土地を売っただろう」などと事実誤認や誹謗中傷の電話やメールが少なくとも数十件寄せられているという。

屋那覇島は、人口約 1,300 人の伊是名島から南に 1 キロ余りの位置にある。 波が穏やかなのが特徴で、周辺にはモズクの養殖場がある。 釣りスポットとしても人気だという。 村の担当者は、リゾート開発計画が実際に行われている事実は確認できていないとしつつ、「本当ならば環境への影響が心配だ」と話す。 朝日新聞はこの企業にホームページから取材を申し込んだが、15 日正午までに回答はない。 松野博一官房長官は 13 日の記者会見で屋那覇島について、安全保障上、重要な土地の利用を規制する「土地利用規制法」の対象ではないと説明しつつ、「政府としては関連動向について注視していく」と述べた。 (小野太郎 上海=井上亮、asahi = 2-15-23)