上場企業、過去最高益水準に 脱コロナと円安追い風 先行きに不安も

コロナ禍からの回復や歴史的な円安を追い風に、上場企業の 2023 年 3 月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が過去最高水準になる見通しだ。 業績の重しになっている資源高や半導体不足が今後は和らぎ、好調が続くと予想する企業が多い。 一方、海外経済の減速や、物価高による国内消費への悪影響が懸念材料となっている。

昨年春の株式市場の区分変更前の東証 1 部に上場する 1,308 社(金融を除く)について、SMBC 日興証券が集計した。 11 日までに決算を発表した 703 社(全体の53.7%)と、未発表企業の業績予想などをもとに試算した。 売上高は前年比 14.2% 増の 580.3 兆円、本業のもうけを示す営業利益は 4.2% 増の 39.1 兆円となる見込み。 日興によると、純利益は過去最高だった 22 年 3 月期の約 34 兆円を若干上回る見通しだという。

脱コロナ、陸運業は純利益 10 倍超

好業績の最大の要因は脱コロナだ。 特に、コロナ禍での行動制限で大きな打撃を受けていた非製造業が著しく改善した。 コロナ規制の緩和で客足が戻り、空運業は純損益がコロナ前の 20 年 3 月期以来、3 年ぶりに赤字から黒字に転換し、陸運業は純利益を 10 倍以上増やした。

昨年、歴史的な水準まで進んだ円安や資源高の影響では明暗が分かれた。 海外で広くビジネスを展開する商社は、外貨で稼いだ分が円換算で膨らんだほか、権益を持つ原料炭などの資源やエネルギーの価格高騰で、過去最高益の更新が相次いだ。 一方、電気・ガス業は資源高が強い逆風となり、赤字に転落した。 非製造業全体での純利益は 34.7% 増えた。

製造業も円安が輸出を後押しするなどし、売上高が 16.9% 増加した。 だが、資源、エネルギー価格の高騰による仕入れコストの急増などで純利益は 5.5% 減った。 半導体導体不足で生産を思うようにできなかった点も、足かせになったとみられる。

好業績続くが、不安も

好業績は今後も続きそうだ。 決算発表済み企業の 24 年 3 月期の業績予想などを集計したところ、売上高は前年比で 2.6%、営業利益は 12.7%、純利益は 2.6% の増加を見込む。 原材料・エネルギー高が落ち着き、半導体不足も改善して業績が上向くと、多くの企業が見込んでいる。 ただ、不安要素もある。 欧米の中央銀行は物価高を抑えるため、景気を冷やす利上げを進めており、世界的な景気減速の懸念が強まっていて、海外での売り上げや国内からの輸出が落ち込むおそれがある。 国内でも賃上げを上回る物価高が続いており、消費の減退が業績を押し下げる可能性もある。 (山本恭介、asahi = 5-12-23)


イトーヨーカ堂、3 大都市圏軸に集約へ 「他社への事業承継も協議」

流通大手セブン & アイ・ホールディングス (HD) の井阪隆一社長は 2 日、朝日新聞のインタビューに応じ、傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂の店舗を首都、関西、中京の 3 大都市圏を軸に集約していく考えを明らかにした。 同じ傘下で食品スーパーのヨークと今年度中に経営統合を進め、2026 年 2 月期までの黒字化をめざす。

低価格衣料品店やネット通販が台頭するなか、大型の総合スーパーは苦戦している。 ヨーカ堂は構造改革の一環として、店舗数を今年 4 月末時点の 125 店から、26 年 2 月末までに 93 店に縮小する計画だ。 井阪氏は閉鎖を進める地域や店舗名については具体的な言及はしなかったが、一部地域では「(他社への)事業承継も考えて協議している」と述べた。 ヨーカ堂は自社による衣料品事業からの撤退を決めており、残る店舗では食品と医薬品を中心とした品ぞろえにしていく方針だ。

新コンセプト店「SIP ストア」、今秋にも千葉に

井阪氏はヨーカ堂とヨークの経営統合について、「それぞれ固定費が発生し、効率の悪いオペレーションを継続して目標(達成)は難しい。 経営統合が順当ではないか」と指摘。 本社機能の統合など合理化も進めてコストを削減し、利益体質につなげたい考えを示した。 将来的には高級食材スーパーのシェルガーデンとも統合を進める。 統合後の 3 社の店舗ブランドのあり方については「時間をかけて練っていきたい」とした。

ヨーカ堂をめぐっては、大株主の米投資ファンド、バリューアクト・キャピタルから売却を求められてきた。 井阪氏は「一定の利益を上げなければ、グループの中にいる意味がない」としつつ、グループのプライベートブランド (PB) の開発にスーパー事業の関係者が多く関与していることを挙げ、「ただちに切り離すとセブン-イレブン・ジャパンの成長は 2 - 3 年で剥落する」と述べ、売却に否定的な見方を示した。

また、今後の構造改革の進展などによってはヨーカ堂の株式上場や「違うパートナーと一緒になる」ことも選択肢になるとした。 さらに、グループの新たな収益源を探るため今秋にも、新コンセプト店「SIP ストア」を千葉県内に出店する計画を明らかにした。 新店はスーパーとコンビニの中間ぐらいの売り場面積や品ぞろえで、高齢者や働く女性、単身世帯の需要を見すえて冷凍食品や生鮮品を充実させ、つくりたてのパンも並べる予定だ。 まずは直営で運営し、来年以降の展開を検討する。

百貨店のそごう・西武については、米投資会社と売却契約を結んだものの、売却の実施は延期が続く。 そごう・西武の一部社員からは「会社の説明が不十分」と不満の声もあがる。 井阪氏は「店の姿がなかなか見えないところだが、そこが合意形成の焦点。 そこが見えれば、もう少しきちんとした説明ができると思う。」としたうえで、「百貨店事業やブランドの継続、雇用維持を条件に売却先が決まった。 しっかり守るように体制をつくっていきたい。」と語った。 (末崎毅、益田暢子、asahi = 5-2-23)

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セブン & アイ、売上高 10 兆円突破 国内小売り初、海外コンビニ好調

セブン & アイ・ホールディングスが 6 日発表した 2023 年 2 月期の連結決算は、売上高に相当する営業収益が前期比 35.0% 増の 11 兆 8,113 億円となった。 国内小売業で 10 兆円を突破するのは初めて。 21 年の米社事業買収で急拡大した海外のコンビニが好調だった。 本業のもうけを示す営業利益は 30.7% 増の 5,065 億円、純利益も 33.3% 増の 2,809 億円と伸長。 いずれも過去最高を更新した。 グループ会社では、大株主の米投資ファンドに切り離しを迫られているスーパー大手イトーヨーカ堂の純損益が 3 期連続の赤字。 売却決定後に譲渡を 2 度延期している百貨店大手そごう・西武は 4 期連続の赤字となった。 (jiji = 4-6-23)


日本、自国生産拡大が急務 G7 農相会合

主要テーマとなる食料安全保障の課題は、ウクライナ危機後に一気に噴出した。 途上国の食料不足が顕在化した上、近年頻発する気象災害が各国農業に与える影響も深刻化。 自国を優先するため、主要な食料や肥料など生産資材の輸出規制に乗り出す国が相次いだ。 輸入先の多様化だけでは対応が難しくなっており、食料の輸入依存度が高い日本は自国生産の拡大に向け抜本改革が求められる。

世界的な穀倉地帯であるロシアとウクライナの戦争が起きた昨年以降、途上国を中心に食料を十分に購入できない人が増え、飢餓人口が急増。 熱波や洪水といった気象災害の多発も加わり、各国の食料囲い込みの動きも加速した。 ウクライナのクブラコフ副首相兼インフラ相は 17 日、ロシアによる貨物船の検査妨害により、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出を実現させているロシアとの合意が「停止」の危機にあると主張。 ロシアは合意の期限を 5 月中旬と主張しており、停止されれば再び世界的な供給不足に陥ることが懸念される。

特に食料自給率(令和 3 年度、カロリーベース)が 38% と G7 内で突出して低い日本にとって深刻な問題となる。 歴史的な円安で輸入価格が上昇していることも追い打ちとなって、食品価格のさらなる上昇にもつながりかねない。 今回の G7 農相会合では食料自給率の低い日本や途上国の観点も踏まえ、農業の「生産性向上」と「持続可能性の確保」を両立する方向性を G7 で共有するよう調整が進む。

化学肥料や農薬を使わない有機栽培などを取り入れた持続可能な農業は、肥料も大半を輸入に頼る日本には受け入れやすい。 環境負荷の少ない農法のため、欧米各国も導入推進には前向きだ。 ただ、「肥料や農薬を減らせば収穫量の減少につながる恐れもある。 生産性向上に逆行する面も持つ。(農林水産省幹部)」 このため、野心的な高い目標を設定して主導権を握りたい欧州と、急速に持続可能な農業へシフトすることによる生産量の減少を懸念する米国では温度差もある。 導入推進を巡って欧米の主張が交錯しているところもあり、妥結点を探る議長国の日本は難しいかじ取りを担う。 (西村利也、sankei = 4-22-23)


訪日客の消費額、1 - 3 月は 1 兆円超え コロナ前の 9 割近くに回復

観光庁は 19 日、1 - 3 月の訪日外国人客(インバウンド)による旅行消費額が 1 兆 146 億円だったと発表した。 新型コロナウイルス感染拡大前の 2019 年同期と比べ、88.1% まで戻った。 昨年 10 - 12 月の 5,952 億円から 1.7 倍に増えた。

訪日客数は 19 年同期の 6 割しか戻っていないが、1 人当たりの消費額が 21 万 1,957 円と 1.4 倍になった。 消費額が増えた理由について、観光庁は、円安の効果や久しぶりの訪日旅行で消費意欲が高いことを挙げる。 さらに、親族訪問や留学生など滞在期間が長い人の割合が多いことも影響したとみている。 宿泊費が 19 年同期比で 168 億円増えて 3,458 億円となり、費目別でも最多の 34.1% を占めた。

政府は 3 月末に閣議決定した観光立国推進基本計画で、年間の訪日消費額を早期に 19 年を上回る 5 兆円とし、25 年までに 1 人あたりの消費単価を 20 万円に引き上げる目標を示した。 観光庁の担当者は「観光の回復に向かう過渡的な段階であり、中長期滞在客の押し上げ要因が依然として続いている。 19 年の状況と大きく異なり、今期の統計だけで計画達成の状況は評価できない。」と話す。 (asahi = 4-19-23)


大企業・製造業が 5 四半期連続悪化、マイナスが目前 3 月の日銀短観

日本銀行が 3 日発表した 3 月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の業況判断指数 (DI) が 5 四半期連続で悪化した。 前回の昨年 12 月調査(プラス 7)から 6 ポイント悪化してプラス 1 となり、マイナスが目前となった。 特に悪化しているのが、資源を仕入れ、加工して販売する「素材産業」だ。 全業種の中で最も業況が悪かったのは、石油・石炭製品でマイナス 46。 紙・パルプ(マイナス 25)、木材・木製品(同 20)と下位 3 業種はいずれも素材産業だった。 石油・石炭と木材・木製品は前回からともに 13 ポイント下がり、悪化幅も大きかった。

景況感を冷やしているのは、昨年からの急激な原燃料の高騰だ。 製紙産業では工程で大量の熱と電力が欠かせず、燃料は輸入の石炭や重油が中心になる。 昨年は石炭の価格が一時、従来の 4 倍以上になり、木材やパルプの輸送費なども大きく膨らんだ。 製紙業界関係者は「デジタル化などで紙の需要が落ちる中、値上げを言い出せない環境が続いてきた。 今回、さすがに一定の値上げは取引先に受け入れてもらえたが、ずっと我慢してきた分、急激な高騰に追いつかない。」と背景を語る。

最近は石炭の価格が下がり始め、為替の円高傾向もあり、「厳しい環境が少し緩和方向に来ているが、予断は許さない」という。 すでに業績にも深刻な影響が出ている。 製紙大手の大王製紙と日本製紙は 2 月、2023 年 3 月期の通期業績予想を相次いで下方修正した。 大王製紙は昨年 11 月の発表ですでに 300 億円の最終赤字を見込んでいたが、トイレットペーパーなどの家庭向け商品で価格改定の浸透の遅れが想定されることなどから、損失が拡大して 400 億円の赤字となる予想を示した。 日本製紙は昨年 8 月の発表で 250 億円の最終赤字を見込んだが、海外子会社の一部事業撤退に伴う減損処理分 200 億円も合わせ、赤字幅を 480 億円に見直した。

業績の悪化は製紙業界に限らず、今回、業況がマイナス 1 だった化学や、マイナス 3 だった繊維など他の素材メーカーにも広がっている。 繊維大手の帝人は昨年 11 月、純損益を 160 億円の黒字とする 23 年 3 月期の業績予想を発表したが、今年 2 月には中国の景気低迷に伴う需要減などを理由に、180 億円の赤字に見直した。

UBE も関連会社のセメント事業での販売価格是正の遅れなどを挙げ、昨年 11 月に 20 億円の黒字としていた 23 年 3 月期の業績予想を、今年 2 月には 60億円の赤字に下方修正した。 住友化学も昨年 11 月には 23 年 3 月期の純損益を 1,050 億円の黒字と見込んでいたが、今年 2 月、一転してゼロに下方修正した。 合成樹脂などの石油化学製品の価格下落や、円高進行に伴う為替差益の減少などを理由に挙げている。 (江口悟、asahi = 4-3-23)

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二つの景気指数に異なる動き 後退局面近い? そこまで悪化してない?

政府が公表する二つの景気指数の違いが大きくなっている。 かたや、景気の後退局面に入るのは近いとの見方もあるが、もう一方は、そこまでの悪化は見られない。 なぜそんなことが起きるのだろうか。

内閣府が 3 月 27 日に公表した 1 月の景気動向指数(2015 年 = 100)の改定値は、景気の現状を示す値が前月より 3.0 ポイント低い 96.4 だった。 下落は 2 カ月ぶり。 パソコンやスマートフォン向けの半導体需要が落ち込んだ影響で、生産や輸出が低迷した。 直近のピークだった昨年 8 月の 101.0 と比べると 4.6 ポイント低くなった。 景気の基調判断は昨年 12 月、1 年 3 カ月ぶりに「改善」から「足踏み」に引き下げた。 3 - 4 月には景気がすでに後退局面に入った可能性が高いことを示す水準まで判断を引き下げるとみるエコノミストもいる。

一方、同じ内閣府が公表する「景気を把握する新しい指数」は、1 月の指数が前月より 1.2 ポイント低い 101.2 で、ピークだった昨年 8 月からの低下幅は 2.5 ポイントにとどまる。 製造業中心の景気動向指数と比べて、新しい指数はサービス業の活動や働く人の所得なども盛り込まれている。 内閣府は、より景気の動きを的確に把握するためだとして昨夏から新しい指数の公表を始めたが、あくまで「参考」との位置づけで基調判断も示していない。 特徴としては、現行の景気動向指数より変化が少ない。

政府は今後も景気動向指数にもとづき基調判断を続ける予定だが、二つの景気指標の違いが広がれば、混乱を招く可能性もある。 (北川慧一、asahi = 4-2-23)


法人所得過去最大の 75.5 兆円 税収は 9 番目、21 年度調査 - 国税庁

2021 年度に決算期を迎えた法人の課税所得金額が 20 年度比 18.5% 増の 75 兆 5,808 億円に上り、過去最大となったことが 30 日、国税庁の調査で判明した。 これまでは新型コロナウイルスが流行する前の 18 年度で 69 兆 7,456 億円だった。 コロナ禍による落ち込みからの回復がみられる。 一方、法人税額は 20 年度比 18.5% 増の 13 兆 2,464 億円で過去 9 番目。 これまで最大だった 1990 年の 17 兆 7,484 億円とは開きがあり、法人税率の大幅引き下げなどが影響しているという。 調査は全国の法人から約 211 万社を抽出し、法人税の確定申告書などを基に全体を推計。 営業収入は約 1,478 兆円で、3 年ぶりの増加となった。 (jiji = 3-30-23)


公示地価 1.6% 上昇、2 年連続プラスに … コロナ禍からの回復鮮明に

国土交通省は 22 日、2023 年の公示地価(1 月 1 日時点)を発表した。 全国の全用途平均は前年比 1.6% 上昇した。 前年 22 年の上昇率は 0.6% だった。 新型コロナウイルス感染拡大の影響が和らいで、地価の回復が鮮明となり、2 年連続でプラスとなった。 全国約 2 万 6,000 の調査地点のうち、6 割弱にあたる 1 万 4,849 地点が上昇し、下落は 6,940 地点。 横ばいは 3,802 地点だった。 国交省は「全体で見ると、コロナ前への回復傾向が顕著で、地方も上昇が広がっている」と説明している。

用途別では住宅地が 1.4% 上昇し、商業地は 1.8% の上昇だった。 いずれも 2 年連続で上昇し、上昇率も拡大した。 住宅地は都市部や地方の中核都市でマンション開発が活発で、交通の便が良いエリアを中心に回復した。 都市部の周辺でも割安感のある場所で上昇した。 商業地は、国内外の観光客が戻りつつあり、ホテルや飲食店の需要拡大に期待が広がっている。 テレワークの定着による、オフィス縮小の動きも一服した。

地域別では、東京、大阪、名古屋の 3 大都市圏の全用途平均が 2.1% 上昇し、地方圏は 1.2% の上昇だった。 地方圏では、札幌、仙台、広島、福岡の主要 4 市で上昇率が拡大している。 全国の地価トップは、住宅地が 6 年連続で、「東京都港区赤坂 1-14-11(1 平方メートルあたり 512 万円)」で、2.4% 上昇した。 商業地は 17 年連続で、「東京都中央区銀座 4-5-6 (山野楽器銀座本店、同 5,380 万円)」で、1.5% 上昇した。 (yomiuri = 3-22-23)


東京 23 区 2 月の消費者物価指数 3.3% 上昇 上昇率は鈍化

東京 23 区の先月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、速報値で去年の同じ月より 3.3% 上昇しました。 1 月の上昇率の 4.3% と比べると 1 ポイント低くなっていて、政府による負担軽減策で電気料金の上昇が抑えられたことが主な要因です。 総務省によりますと、東京 23 区の生鮮食品を除いた消費者物価指数は、先月中旬時点の速報値で 2020 年の平均を 100 として、1 年前の 100.4 から 103.7 に上がり、上昇率は 3.3% となりました。

1 月の上昇率の 4.3% と比べると、1 ポイント低くなっていて、上昇率が鈍化したのは、去年 1 月以来、1 年 1 か月ぶりです。 これは政府による負担軽減策でエネルギー価格の上昇が抑えられたことが主な要因で、

▽ 「電気代」は 1.7% 減少し、1 年 7 か月ぶりにマイナスに転じたほか、
▽ 「ガス代」は 20.2% の上昇となりましたが、上昇幅は 1 月の半分程度に縮小しています。

総務省は負担軽減策で上昇率は 0.98 ポイント押し下げられたと試算し、これがなければ上昇率は 1 月と同じ水準の 4.3% 程度になったとしています。 一方、食料品は 2 月が「値上げラッシュ」となったことなどから「生鮮食品を除く食料」は 7.8% 上昇していて、上昇率は 1976 年 8 月以来、46 年 6 か月ぶりの高い水準となっています。 総務省は「政府による負担軽減策で電気代と都市ガス代の上昇が抑えられたが原材料価格の高騰などで食料品の価格上昇は続いている。 引き続き、物価の動向を注視したい。」と話しています。

東京 2 3区の指数は、 全国に先立って公表されるため先行指標として注目されています。 先月の全国の指数は今月 24 日に発表されます。 (NHK = 3-3-23)

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11 月の消費者物価、3.7% 上昇 40 年 11 カ月ぶり高水準

総務省が 23 日発表した 11 月の全国消費者物価指数(2020 年 = 100、変動の大きい生鮮食品を除く)は 103.8 となり、前年同月に比べ 3.7% 上昇した。 伸び率は消費増税時を上回り、第 2 次石油危機に伴うインフレ(物価上昇)が続いていた 1981 年 12 月 (4.0%) 以来、40 年 11 カ月ぶりの高水準となった。 上昇は 15 カ月連続。 原材料価格の高騰や円安の影響で、11 月は食料品 800 品目超で値上げがあったほか、エネルギー価格の高止まりも続いた。 10 月の伸び率 (3.6%) も上回った。 (杉山雄飛、mainichi = 12-23-22)


22 年 10 - 12 月期 GDP、前期比 0.2% 増 2 四半期ぶりプラス

内閣府が 14 日発表した 2022 年 10 - 12 月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動を除いた実質で前期比 0.2% 増で、2四半期ぶりのプラス成長となった。 この状態が 1 年続いた場合の年率換算は 0.6% 増となった。

新型コロナウイルスの感染が落ち着き、政府が観光支援策「全国旅行支援」を行ったこともあり、国内旅行などのサービス消費が好調で、個人消費は前期比 0.5% 増だった。 また、水際対策の大幅緩和による訪日外国人旅行客(インバウンド)の回復で、サービス輸出が増え、GDPのプラスに寄与した。 市場では、23 年 1 - 3 月期も、プラス成長が続くとの見方が強いが、物価高や海外経済減速による輸出減などの懸念もある。 (松山文音、mainichi = 2-14-23)

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日本の経済成長率見通し 1.8% IMF が前回予測を上方修正

国際通貨基金 (IMF) は 26 日、最新の日本の経済見通しを発表し、2023 年の成長率を 1.8% とした。 昨年 10 月の前回予測 1.6% から引き上げる一方、世界経済の急な減速といった下振れリスクにも言及した。 IMF は同日に出した声明で、日本経済の動向をコロナ禍とウクライナ危機の影響からの「回復の最中」と評価。 抑制されてきた需要の回復や水際対策の緩和に支えられ、短期的には回復が続くと分析しつつ、▽ 更なる地政学的緊張の高まり、▽ 世界経済の急減速、▽ 供給制約の継続といった海外要因のリスクを挙げた。

金融政策では、「緩和的な金融政策スタンスが引き続き適切」としながら、「生産性と実質賃金を改善する政策」などで支える必要性を強調した。 日本銀行が昨年 12 月に金融緩和策を修正したことに触れ、「物価に関する双方向のリスクを踏まえると、長期金利の一層の柔軟化は、将来の急激な金融政策の変更を回避するのに役立つだろう」とした。

物価上昇率は 23 年の第 1 四半期(1 - 3 月)がピークで、24 年末までに 2% を下回る水準に徐々に低下すると予測した。 ギータ・ゴピナート筆頭副専務理事は会見で「日本のインフレはいま転換点に来ている」と指摘。 「(日銀が目標とする) 2% のインフレが続くためには、賃金がもっと大幅に伸びないといけない。 不確実性があるなかでの慎重な政策ステップが求められる」と話した。 (松山尚幹、asahi = 1-26-23)

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来年度の GDP 成長率は実質 1.5% の見通し … 世界経済の減速で成長ペースは鈍化

政府は 22 日、国内総生産 (GDP) の 2023 年度成長率について、物価変動の影響を除いた実質で前年度比 1.5% とする経済見通しを閣議了解した。 7 月に内閣府が示した試算 (1.1%) を上方修正したものの、世界経済の減速の影響で 22 年度(1.7% の見通し)から成長ペースは鈍化すると見込んだ。 23 年度の実質 GDP の実額は 558.5 兆円と、コロナ禍前の 18 年度(554.5 兆円)を上回り、過去最高となる見通し。 生活の実感に近い名目 GDP 成長率は、2.1% とした。

電気料金などの負担軽減策に加え、物価高に対応した賃上げが進むと想定し、個人消費は実質で 2.2%、企業の設備投資は 5.0% 伸びると見込んだ。 いずれも 7 月時点から引き上げた。 22 年度の消費者物価指数(総合)の上昇率は前年度比 3.0% と、1990 年度 (3.3%) 以来、32 年ぶりに 3% 台となる見通し。 原材料高や円安の影響で、飲食品などの値上げが相次いでいるためだ。 23 年度は 1.7% と上昇ペースが鈍化すると見込んだ。 (yomiuri = 12-22-22)


「国産モルトウイスキー」迎えた 1 世紀 サントリー 100 億円投資へ

日本初となるモルトウイスキーの蒸留所の建設が始まってから今年で丸1世紀。この蒸留所を手がけるサントリーは節目と位置づけ、ウイスキー関連の取り組みを次々と打ち出す。一方、原酒は製造に時間がかかって不足気味。需要の高まりに応えきれないジレンマも抱える。 「品質向上と需要創造を次の 100 年も愚直にやっていく。」 サントリーの鳥井信宏社長は 1 日、100 周年にあわせて開いた記者会見でこう語った。

鳥井氏の曽祖父で、サントリーを創業した鳥井信治郎氏は 100 年前の 1923 年秋、山崎蒸溜所(大阪府島本町)の建設に着手した。 これが、大麦麦芽のみを使ったモルトウイスキーをつくる国内初の蒸留所の始まりだ。 いまも「角瓶」や「オールド」の原酒の一部をつくる。 蒸留所の名を冠した高級ウイスキー「山崎」は国際的な評価も高い。 サントリーはウイスキー市場を盛り上げるチャンスとみて、来年にかけて山崎蒸溜所と白州蒸溜所(山梨県北杜市)の設備に 100 億円規模を投じる計画だ。

ウイスキーの一部は「入手困難、続く」

目玉の一つが、両蒸留所の一部に導入する「フロアモルティング」という伝統的な製法。 原料の大麦を床一面に広げ、人の手でかき混ぜて麦芽へと変えるもので、機械による工程より強い香りを引き出せる。 市販向けにこの麦芽をどう使うかは決まっていないが、将来の品質向上のための実験的な取り組みになると期待する。 見学スペースも改修する。 両蒸留所の見学は一時休み、今年秋ごろに再開するという。

国内のウイスキー市場は再成長の途上にある。 サントリーによると、市場全体の数量は1983 年にピークを迎えて以降、四半世紀あまり低迷が続いた。 そこからサントリーが 2008 年、ウイスキーに炭酸水を加えた「ハイボール」ブームをしかけ、日本ウイスキーの評価の高まりもあって近年は再び増加傾向にある。 それでもピークに比べると 21 年の数量は半分程度だ。 サントリーはハイボールの国内でのさらなる普及にも力を入れる。 コンビニやスーパーに並ぶ「角ハイボール缶」を 1 月下旬から順次刷新。 香りをより高め、炭酸を強めにした。

さらに高級ウイスキーを使う「プレミアムハイボール缶」も新たに売り出す。 第 1 弾として「白州」のハイボール缶を 6 月 6 日に数量限定で出し、秋には「山崎」も発売する。 希望小売価格は 350 ミリリットルで税込み 660 円と通常の 3 倍だ。 森本昌紀・スピリッツカンパニー社長は「ハイボールを真の『ソウルドリンク』に昇華させたい」と意気込む。

一方、悩みの種は原酒不足だ。 ウイスキー独特の香りは、10 年や 15 年といった長期間、たるで熟成させることで生まれる。 低迷期に減らした原酒の増産が追いつかない。 サントリーも 10 年ごろから熟成のための貯蔵スペースを増やして増産に取り組むが、十分な量を確保できるのはまだ先だ。 サントリーの鳥井社長は「消費者の皆様にご迷惑をおかけしていることに関しては大変申し訳なく思っている。 ますます需要が増加する可能性もある。 大変心苦しいが、いましばらくは一部のウイスキーはなかなか手に入らないことが続くかと思う。」と話す。

原酒不足の深刻さは他社も同じだ。 アサヒビールは 15 年、ニッカウヰスキーの「余市」と「宮城峡」のうち、「10 年」、「15 年」といった熟成年数が表示された商品の販売を終えた。 20 年には「竹鶴」でも同様に取りやめた。 数量限定で復活させることはあるが、熟成期間を示さない「ノンエイジ」の販売に集中している。 会社の希望小売価格を超えた高額な販売もある。 サントリーの「山崎 12 年(700 ミリリットル)」の希望小売価格は 1 万 1 千円だが、大手通販サイトには 2 万円台の出品もある。 鳥井社長はこうした状況を「認識している」としたうえで、「対策を考えていきたい」と述べた。 (山下裕志、asahi = 2-4-23)


GPIF 赤字 1.8 兆円 10 - 12 月、債券安で 4 四半期連続

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) は 3 日、2022 年 10 - 12 月期の運用実績が 1 兆 8,530 億円の赤字だったと発表した。 22 年 1 - 3 月期から 4 四半期連続の赤字だった。 世界的な利上げに伴う金利上昇で債券価格が下落し、22 年秋から年末にかけての円高進行で円換算ベースの外国資産額が目減りした。 4 四半期連続の赤字は米国企業の不正会計が発端の「エンロン・ショック」が響いた 02 年 4 - 6 月期から 03 年 1 - 3 月期まで以来の約 20 年ぶり。

GPIF は国民が払った国民年金と厚生年金の保険料の一部を一括して運用する公的機関。 将来の給付に備え、国内外の株式と債券の構成をそれぞれ 25% を目安に運用している。 22 年 10 - 12 月期の資産運用の損益率は 0.97% のマイナスとなった。 10 - 12 月に金利が上昇し、保有する債券が値下がりして評価損が発生したため運用上のマイナスが膨らんだ。 資産別の運用損益額は、外国債券が 2 兆 6,651 億円の赤字、国内債券が 8,475 億円の赤字、外国株式が 926 億円の黒字、国内株式が 1 兆 5,670 億円の黒字だった。

GPIF は四半期ベースで運用資産の詳細な売買状況を開示していない。 SMBC 日興証券の末沢豪謙氏は資産配分の修正について「国内株式と外国株式がそれぞれ約 4,000 億円、約 6,000 億円の売り。 一方で、国内債券と外国債券はそれぞれ約 2,000 億円、約 5,000 億円の買いだった」と分析する。 海外の年金基金も株式と債券の同時安で苦戦した。 オランダ大手 ABP は保有債券の値下がりや株安が響き、22 年通年の損益率はマイナス 17.6% だった。 世界最大級の政府系ファンド (SWF) であるノルウェー政府年金基金も 22 年の損益率はマイナス 14.1% と大きく落ち込んだ。

GPIF はマイナス 4.8% と、株式比率が多い海外勢より損失を抑えられた面はある。 厳しい運用状況が続くものの、年金財政自体への影響は限定的といえる。 運用を始めた 01 年度から 22 年 12 月末までの実質利回りは平均で年率 3.38% と、目標とする 1.7% を上回っているためだ。 GPIF の運用で積み立てた資金は将来の年金給付の 1 割ほどをまかなう想定となっている。 年金制度の維持に向けては GPIF の積立金運用よりも、給付そのものの抑制が重要となる。 将来世代の年金水準を維持するためには、負担の分かち合いは欠かせない。

足元では当初に比べて給付水準は高止まりしている。 給付自体を抑えなければ、GPIF の積立金を取り崩す時期が早まる恐れがある。 (nikkei = 2-3-23)


インボイス登録、9 月末まで受け付け可能に 半年延長

消費税の税率や税額を請求書に正確に記載・保存するために 10 月に導入するインボイス制度を巡り、政府は事業者登録の受け付けを事実上延長する方針を決めた。 制度開始に間に合わせるには原則 3 月末までに申請する必要があったが、未登録の事業者が残っており、事情を問わず 9 月末まで受け付ける。 制度の円滑な導入につなげる。

16 日の関係省庁会議で明らかにした。 4 月以降の申請には「困難な事情」があることが要件だったが、理由の申告を不要にする。 手続き柔軟化の方針は 2022 年 12 月に閣議決定した 23 年度税制改正大綱に盛り込んでいた。 22 年 12 月末時点の登録率は法人が 75%、個人は 34% にとどまっている。 インボイス制度では企業などが取引をするときに、原則として「適格請求書」と呼ばれる書類を使う。 消費税が 8% と 10% の複数税率となったことで、納める消費税から自社で支払った分を差し引く際に必要になった。 国税電子申告・納税システム「e-Tax」から手続きすると 3 週間ほどで通知書が届く。

仮に 9 月末に申請した場合、登録番号の取得は制度開始に間に合わない。 さかのぼって取引先に番号を知らせるなどの対応をとってもらう。 国税庁は「余裕を持って早めに対応してほしい」と呼びかける。 納税を免除されてきた売上高 1,000 万円以下の事業者がインボイスを発行する課税事業者になる場合、納税額を売上時に受け取る消費税の 2 割に抑える特例を設けるといった負担軽減措置なども 10 月に導入する。 (nikkei = 1-16-23)


佐川やデンソーなど 13 社公表 価格転嫁拒否で公取委

公正取引委員会は 27 日、原燃料費や人件費などコスト上昇分を下請け企業などとの取引価格に反映しなかった企業として佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA 全農)、デンソーなど 13 社の社名を公表した。 こうした行為は独占禁止法の「優越的地位の乱用」に該当する恐れがある。 公取委は法令違反を認定したわけではないと説明している。

13 社はほかに、▽ 三協立山、▽ 大和物流、▽ 東急コミュニティー、▽ 豊田自動織機、▽ トランコム、▽ ドン・キホーテ、▽ 日本アクセス、▽ 丸和運輸機関、▽ 三菱食品、▽ 三菱電機ロジスティクス。

独禁法の運用方針によると、下請け企業と発注企業の価格交渉の場で、価格転嫁の必要性について明示的に協議しなかったり、転嫁しない理由を回答しなかったりして、価格を据え置くことは価格転嫁拒否になり、「優越的地位の乱用」に該当する恐れがある。 公取委の調査で、多数の取引先にこうした行為があった企業の社名を公表した。 公取委は社名公表のほか、4,030 社に注意喚起の文書を送付した。 (nikkei = 12-27-22)


大企業製造業が 4 期連続悪化、非製造業は改善 日銀短観

日銀が 14 日発表した 12 月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数 (DI) は前回の 9 月調査から 1 ポイント悪化し、プラス 7 となった。 円安と資源高を背景とした原材料コストの増加が景況感を下押しし、4 四半期連続で悪化した。 大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響緩和から 3 期連続で改善し、プラス 19 となった。

業況判断 DI は景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。 12 月調査の回答期間は 11 月 10 日 - 12 月 13 日。 回答基準日の 11 月 28 日までに企業の 7 割台半ばが答えた。 大企業製造業の業況判断 DI はプラス 7 と、QUICK が集計した市場予想の中心値(プラス 6)をやや上回った。 原材料コスト高などが全体の景況感の足かせとなった。 石油・石炭製品はマイナス 33 と前回から 40 ポイント悪化し、素材業種の紙・パルプや化学も前回から 8 ポイント悪化した。

サプライチェーン(供給網)の改善や販売価格へのコスト転嫁の進展から景況感が改善した業種もみられた。 自動車がマイナス 14 と前回から 1 ポイント改善したほか、金属製品はプラス 8 と 8 ポイント改善した。 ただ先行きは海外経済の減速懸念も強く、大企業製造業全体でプラス 6 と足元から小幅の悪化を見込む。

非製造業では新型コロナの感染抑制と経済活動の両立が進んだことで景況感の改善が続く。 大企業非製造業の業況判断 DI はプラス 19 と市場予想(プラス 17)を上回った。 コロナ禍で一時マイナス 91 まで景況感が落ち込んでいた宿泊・飲食サービスも、前回から 28 ポイント改善し 0 となった。 政府の観光促進策「全国旅行支援」や新型コロナの水際対策の緩和も景況感改善の後押しになった。

長引く原材料高で、企業がコストを販売価格に転嫁する動きも徐々に強まる。 販売価格が「上昇」との回答から「下落」の割合を引いた販売価格判断 DI は大企業製造業でプラス 41 と、調査を開始した 1974 年 5 月以降で過去最高だった。 仕入れ価格判断 DI も大企業製造業でプラス 66 と 1980 年 5 月(プラス 77)以来の高水準で推移している。

企業の消費者物価見通しも高水準にある。 全規模全産業の 1 年後の見通し平均は前年比 2.7% 上昇と、調査を始めた 2014 年以降で過去最高となった。 3 年後見通しは 2.2%%、5 年後見通しは 2.0% と、どれも 2% 台になっている。 企業の事業計画の前提となる 22 年度の想定為替レートは全規模全産業で 1 ドル = 130 円 75 銭と、9 月調査(125 円 71 銭)から円安方向に修正された。 足元の円相場は一時 1 ドル = 135 円台で推移しており、修正された想定レートより円安・ドル高水準にある。 (nikkei = 12-14-22)

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国内の景気「停滞感」強まる 企業トップが懸念する物価高と米国経済

全国の主要 100 社を対象にした朝日新聞のアンケートで、国内景気が「足踏み(踊り場)状態にある」と答えた企業が 46 社にのぼり、5 - 6 月の前回調査より 9 社増えた。 「緩やかに後退」とした企業を合わせると 53 社に達した。 物価高による個人消費の低迷や米国の利上げに伴う景気減速への警戒感が強まっている。 調査は春秋の年 2 回行っている。 今回は 11 月 14 - 25 日に実施した。

国内景気について、「緩やかに拡大」と答えた企業は、前回の 59 社から 46 社に減った。 「拡大」は 2 社が 0 社になった。 一方、「緩やかに後退」は 1 社から 7 社に増えた。 「後退」は 0 社だった。 今後の国内景気の懸念材料を二つまで挙げてもらったところ、「原油・原材料価格の上昇」が最多の 59 社だった。 「個人消費の低迷」が 34 社で 2 番目に多く、前回の 16 社から倍増した。 「円安の進行」も 20 社あった。 原材料価格の高騰や、輸入品の値上がりに拍車をかける円安の進行によって、景気のかぎを握る個人消費が停滞するとの不安が高まっている。

アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長は「まだ世の中の企業は値上げしきれていない。 今後も値上げが続く可能性があり、個人消費は厳しい。」と語った。 ファミリーマートの細見研介社長も「9 月以降、若年層の消費が陰りだしている。 値上げに賃上げが追いついておらず、家計が圧迫されるという不安で財布のひもが締まってくるだろう。」と危機感を募らせる。 今後 3 カ月の個人消費の見通しを尋ねると、「緩やかに回復する」が前回から 20 社少ない 44 社だった。 逆に「一進一退が続く」は 17 社増えて 44 社だった。

国内景気の懸念材料では「米国経済の先行き」が前回の 3 倍の 24 社に増えた。 米連邦準備制度理事会 (FRB) の大幅な利上げによって米国経済が減速し、日本経済の回復に水を差すとの懸念があるようだ。 一方、コロナ禍に伴う行動制限などがなくなり、個人消費を中心に景気は復調傾向にあるとの見方も多かった。三井住友フィナンシャルグループの太田純社長は、「コロナショックの落ち込みから、リバウンド局面に入っている」と指摘した。 10 月からの「全国旅行支援」が消費を後押ししているとの声もあった。 (田中奏子、栗林史子、asahi = 12-5-22)