「不況になったらクビ」はもう限界? 米国企業で "雇用の日本化" が進む理由

コロナ禍における 日米の雇用対策の違い

総務省の発表では、日本の失業率は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の 2019 年が 2.4%、パンデミックに入った 2020 年と 2021 年が 2.8% とさほど上がっておらず、2022 年 7 月は 2.6% とパンデミック前の水準に戻りつつある。 厳しい行動制限でサービス・接客業や観光業などが大きく停滞していたのにもかかわらず、失業率はわずか 0.6% しか上がらなかったことは驚異的だ。 「企業支援で雇用を守り、国民の生活を守る」という日本流のシステムが、いまだに健全に機能していることがわかる。

それに対して、米労働省労働統計局によるアメリカの民間失業率は、パンデミック直前の 2019 年 2 月の失業率が 3.5% であったのに対して、2020 年 8 月には 14% まで跳ね上がっている。 2022 年に入ってからは 3% 台を維持しているが、今度は労働者が戻ってこない状態に陥っている。

パンデミックにおいて、このように日米で国民の生活の守り方は大きく分かれた。 日本は仕事がなくても雇用を守る企業を支援することで、失業者が増えないようにするというやり方が中心だが、アメリカは大量解雇が起こる前提で失業者に直接給付をするというやり方である。 日本式のやり方は、これまで生産性の低い企業を温存して効率を下げる悪いやり方として、批判にさらされてきた。 では、本当にアメリカ式が正しいのだろうか。

2021 年 10 月 15 日の『ウォールストリート・ジャーナル(「米労働者 430 万人、仕事に復帰しないのはなぜ」)』によると、特に不足している職には「大卒資格が要らない職」、「女性」、「サービス業」という特徴があるという。 ちなみに、この記事が掲載された 2021 年 10 月のアメリカの失業率は 4.6% だった。

これまでは移民労働者に依存してきた低賃金労働を、コロナ禍で国境を閉ざしたことでまかなえなくなったことが、人手不足の一つの理由として挙げられるだろう。 また、女性労働者が戻ってこない理由として、託児所や保育園・幼稚園などで労働者不足に陥っていて子どもを受け入れられないとか、保育料が高くて子供を預けてパートで働くと割に合わないなどが考えられる。 ただし、そういった個別の理由だけではなく、私はいまアメリカ経済に根本的な変化が起こっていると考えている。 それは人々の価値観に大きな変化が起きたのではないかというものだ。

アメリカで始まった グレート・レジグネーション

そのきっかけとなったのが新型コロナウイルスのパンデミックだ。 自宅にいることを強いられて、人と会うことを制限されて、家族とできるだけ長い時間一緒にいることの大切さに気づいた者がかなりいたと考えられる。 実際、パンデミック中(2020 年)のアメリカ人の総労働時間は、パンデミック直前(2019 年 1 - 3 月)より 9.2% 減っている(日本人はマイナス 5.4%)。

パンデミック前は子供を預けて共働きしてできるだけ世帯年収を上げることを当然だと考えてきた人たちの中にも、年収アップより家族との時間を優先する人々が増えたと考えられる。 それと軌を一にして、アメリカで興味深い現象が起きた。 2021 年の春頃に起きた「グレート・レジグネーション(大量離職)」である。 なお、レジグネーションの基本語義は「辞任」だが、この場合は勤めている会社を辞めることである。 経済が戻り始めたのに、失業者が減るどころか、それまで勤めてきた会社を退職する人が増えたのである。

特に退職者が多かったのがレストランやホテルなどの接客業だが、それは、コロナ禍で打撃を受けた上に、コロナ禍が収束しても賃金上昇の幅が他業種より小さかったことが大きな理由だろう。 富裕層向け経済誌『フォーブス』は、グレート・レジグネーションについて、サービス業を避ける労働者が増えたからだと主張をしている。 たしかにレストラン、ホテル、小売り、倉庫、ヘルスケアなどの業種は他業種より給料が低く、そのわりには客のクレームや暴力などに遭いやすい面があり、ほかに良い職があれば避けたいと思うのは当然だろう。

グレート・レジグネーションの進行が指摘された 2021 年の離職者数は 4,800 万人で、2022 年に入ってからも離職者数は月 400 万人以上というペースである。 投資会社モントレー・フールによると、離職者の多い年齢層はミレニアル世代で、特に収入の高い専門職の辞職率が高いという。 ちなみに、ミレニアル世代とは 1980 年から 1995 年の間に生まれた人たちのことで、現在は 20 代後半から 40 代の働き盛りにあたる。

グレート・レジグネーションが起きた背景には、パンデミックの収束を機にキャリアアップのための転職を目指した者が増えたことが一つある。 もう一つは、テレワークで柔軟に時間を使えるようになったことで、同じようなスタイルで続けられるように新たな職に就こうとした者が増えたためだと考えられる。 たとえば、昼間にパートナーや子供と散歩する、スポーツジムで鍛えたあとに自宅で働くといった働き方を経験したことで、働く時間を自分の都合に合わせられる職が人気になっている。

コロナ禍で自宅中心のライフスタイルに慣れた人たちが、行動制限を解除されても、転職して同じようなスタイルで続けようとしていることも、退職増加の背景にあると考えられる。 グレート・レジグネーションにおいて、もう一つ興味深い現象は、55 歳以上で退職した者がまだ労働市場に十分戻ってきていないことだ。 そのまま引退するつもりか一時的なのかはわからないが、この年齢層でも慌てて働く必要はないと考える人が増えているのは確かだ。

株主優先主義から 従業員優先主義へ

2000 年代以降のアメリカ経済は、中国経済の成長を取り込むことで大きく成長してきた。 ただし、中国側も外資を呼び込むために投資環境を整えており、アメリカからの莫大な投資がウォール街から流れ込み、中国企業の成長を吸い上げる形でアメリカは金融大国化した。 その過程で国内の工場は次々と中国に移転して製造業が衰退した。 その結果、「投資家とエリート社員」と「その他の労働者」の格差が拡大して、IT を中心に成功した投資家が利益を総取りする極端な格差社会を形成している。

これはカール・マルクスが描いたような資本家と労働者が対立する社会に似ている。 トランプ政権で BLM (ブラック・ライブズ・マター)やアンティファ(アンチ・ファシスト)などの社会主義運動に酷似した人権運動が拡大した背景にも、アメリカが金融大国化して投資家が利益を独占する一方で、中国などに製造業の拠点を移したことでサービス業化が進み、長期間にわたって中間層の所得が伸び悩んだことが原因だと考えられる。

また、パンデミックではトランプ政権は国民救済のために大型予算を組み、バイデン政権もそれを引き継いでいる。 さらにバイデン政権はケインジアン的な財政支出で大型予算を組み、学生ローンの一部を免除するなど、リベラル政策を広げ、「疑似ベーシックインカム」制度のような様相を呈している。 このことによって、失業した者も低賃金労働に飛びつくことなくじっくりと就職活動を進めることができるようになり、コロナ収束で需要が伸びても企業側は労働者確保に苦心することになった。 そのため、賃金が急激に上昇しており、エネルギー高騰をきっかけに起こった高インフレに拍車を掛けることになった。

これはいわば労働組合を介さず、国家レベルでストライキが起こっているようなものである。 企業側はそれに対応するために「株主優先」から「従業員優先」にシフトせざるをえなくなっているのである。 それとは対照的に、仕事が減ってもレイオフせずに給料を支払い続けて雇用を維持した企業は、労働者不足に強く悩まされることなくコロナ収束後のスタートを順調に切ることができたが、こういった企業は、もともと賃金が高い優良企業か信頼度の高い安定した大企業の一部に限られる。

実際、2021 年 9 月には求人が 1,000 万件以上もあり、需要はあるのに人手不足で店が開けられないとか、客室乗務員 (CA) などの職員が足りずに飛行機が飛ばせないなどの報道が相次いでいる。 アメリカでもすでに「人件費はコスト」の効率主義を脱して、「人材を生かす」の方向にかじを切り始めている。 それを起こすきっかけとなったのが、グレート・レジグネーションだ。 今後は人を大事にする企業にさらに良い人材が集まり、そうではない企業との二極化が生じることになると予想される。

中国とのデカップリングで進む アメリカ経済の「日本化」

アメリカ企業が「株主優先」から「従業員優先」にシフトしている背景の一つとして、トランプ政権が行った中国とのデカップリング(切り離し)で、これまでのように中国投資ができなくなったことが挙げられる。 近年は中国でも人件費が高騰して以前のような優位性はなくなったものの、依然として中国の投資環境は圧倒的だが、ゼロコロナ政策や水不足(拙稿『「中国の水問題」が危機的状況、世界的な食糧不足や移民増加の可能性も』参照)などで中国リスクが意識されるようになると、有力な投資先としてアメリカ国内が注目されるようになった。

ただ、以前のように好況期に雇用して不況期に大量解雇する「使い捨て」に労働者側から反発が起こるようになり、企業側は人件費を「削減すべきコスト」と見る姿勢から、いかに定着してもらうかに苦心しなければならなくなっている。 これは「アメリカ企業の日本化」と呼んでもいい現象だろう。 それまでのアメリカは、カリフォルニア州北部のシリコンバレーを中心に、世界中に人材を集めてイノベーションを起こし、実際の生産は中国に投資することで金融大国化してきた。 だが、AI や 5G で中国に肉薄されることで、これまでのやり方を改めなければならなくなっている。

また、中国のイノベーション力に対する評価も大きく変わっている。 「グレートファイアウォール」で情報が遮断された中国は、これまで技術を盗むだけでイノベーションに向かないと考えられてきた。 だが、国内に巨大市場を持ち、莫大な政府援助を餌にして多数のスタートアップを集めて熾烈な開発競争をさせる「中国流イノベーション」が驚異的な成果を上げ始めていることを認めざるをえなくなっている。

これまでどおり同盟国との連携は続けるにしても、かつてのシリコンバレーのような爆発的なイノベーションが期待できない今、ワシントンとしても中国と同じようなイノベーションモデルも取り入れざるをえなくなっている。 グレート・レジグネーションは人手不足と高インフレを引き起こした。 そのために、アメリカ企業が「日本化」しており、その結果としてアメリカ経済が大きく変質している。 人手不足と高インフレは、その過程に起きた一現象にすぎないと考える。 (白川司、Diamond = 9-26-22)


春闘、大手の賃上げ率 2.27% 4 年ぶり上昇も物価高対応が課題

経団連は 27 日、大企業の春闘の妥結結果を発表した。 16 業種 135 社の集計では定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率は 2.27% となった。 上げ幅は 4 年ぶりに前年より上昇した。 回答が出そろった春以降に物価の上昇が加速しており、実質でみると賃上げ幅は抑えられそうだ。 経団連の担当者は、経済活動の正常化や「人への投資」の機運の高まりが背景にあるとしている。

賃金が増えても足元では物価が上がっている。 6 月の消費者物価指数は、生鮮食品をのぞいた総合指数が 10 カ月連続で前年同月比で上昇した。 上げ幅は 3 カ月連続で 2% を超えた。 住友商事グローバルリサーチの鈴木将之氏は「多くの企業が 4 月ごろに賃金を上げるが物価は毎月上がる。 タイムラグが消費を冷やしかねない。」と懸念する。 物価上昇の負担感を和らげようと、一時的な手当を用意するところも出始めた。 IT 大手のサイボウズは「インフレ特別手当」を出す。

政府は来年の春闘について早くも「今年以上」の賃上げを呼びかけ始めた。 岸田文雄首相は経団連の会合で 22 日、「コロナ前の業績を回復した企業は 3% 以上の賃上げを実現していただきたい」と訴えた。 来年の春闘まで半年ほどあるのに、具体的な数字を示して賃上げを要請するのは異例だ。 企業側の対応が例年以上に注目される。 (友田雄大、asahi = 7-27-22)


フリーランスが新たな雇用の調整弁? 企業はコスト減「偽装委託だ」

いま、雇われないで働く人が増えています。 フリーランス(個人事業主)として、企業と業務委託契約を結ぶ働き方です。 働く側にとっては、働く時間や場所を自由に選べるなどの利点があるとされていますが、実態としては雇われている人と変わらないケースも。 リーマン・ショック後、非正規労働者の立場の不安定さが問題になり、保護する動きが広がりました。 そのかわりに、企業が新たな「雇用の調整弁」として業務委託に切り替えているのではないか - -。 そんな指摘もあります。

AI が管理するアマゾン配送「限界だ」

「AI (人工知能)で仕事が管理され、荷物量が増えた。 是正されないと、働きながら死んでしまうかもしれない。」

6 月 13 日、アマゾン配達員らで作る「アマゾン配達員組合」横須賀支部の結成の記者会見で、支部長の男性はこう語った。 運転手らは、日本法人「アマゾンジャパン」が委託した運送会社やその下請け会社と業務委託契約を結んで働く。 だが、実態としては、アプリを通じて配達先や労働時間を管理されており、「労働者」に近い、というのが主張の内容だ。 会見に同席した菅俊治弁護士は、「個人事業主としての業務委託契約は『偽装』。 労働者として契約するべきだ。」と指摘した。

組合設立に関わった 50 代の男性ドライバーは、個人事業主として、2 次下請けの運送会社と業務委託を結ぶ。 普段の働き方はこうだ。 朝 8 時、配送拠点に出勤。 軽バンに荷物を積み込み、アマゾンが導入したという AI のルート指示を受けて、夜 10 時ごろまで働く。 最近は 1 日 170 個ほど配る日が増え、休憩時間が 1 時間もない日もある。 報酬は日当 1 万 8 千円。 どんなに働いても、残業代は出ない。 男性は、雇用されているわけではないからだ。 ガソリン代や車の維持費など月 5 万円は自己負担で、手元に残るのは月 22 万円ほどだ。

男性は「契約が業務委託というだけで、残業代や労働時間など、労働法制の保護が受けられなくなるのはおかしい。 限界だ。」と話す。 宅配業界では、2017 年、宅配最大手「ヤマト運輸(東京)」で労働環境の過酷さや残業代の未払いが問題となった「宅配クライシス」と呼ばれた出来事が起きた。 ヤマトはその後、運賃の全面値上げや荷物量の抑制に踏み切った。 一方、EC (ネット通販)市場の拡大などで、その後も宅配便の取り扱い個数は伸び続けた。

その分の仕事を担ってきたのが、フリーランスの運転手たちだ。 国土交通省によると、軽貨物の運送業者は 15 年度末の約 15 万 4 千から、21 年度末には約 19 万 8 千まで増えた。 同省担当者によると、「事業者数の大半が個人事業主とみられる」という。

フリーランスの働き方が問題になっているのは、物流業界だけではない。 個人でも加入できる全国一般東京東部労組の須田光照書記長によると、こうした業務委託に関する相談はコロナ禍以降、増えているという。 須田さんは「実際の働き方は雇用と同じなのに、業務委託にすることで、解雇規制や最低賃金などの労働法の規制から逃れることができる。 使用者にとって、労働者を使いやすい最終形態のように感じる。」と話す。

物流以外でも広がる業務委託、実態は …

フリーランスは働く側にとって、スキルや経験を生かし、柔軟な働き方ができるメリットがあるといわれる。 だが、データからは、雇用に近い働き方をしている人も多いことがうかがえる。 総務省の国勢調査によると、自営業者の中でも、契約上は自営だが、特定の発注者との関係が強く、雇用の要素が強い「雇用的自営」の割合が増えている。 2005 年が 149 万人と、自営業主のうち 30.9% だったのが、15 年には 164 万人、41.5% に増えた。 内閣官房のフリーランス実態調査(20 年)でも、フリーランスの 3,234 人のうちの約 4 割が「業務の内容や遂行方法で具体的な指示を受けている」、約 2 割が「勤務場所や時間が指定されている」と回答し、雇用に近い働き方をしていた。

こうした動きを後押ししたのが、インターネットを介した仕事のマッチングのシステムだ。 第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは、「以前は、業務委託はエンジニアなど一部の専門性のある仕事に限られていたが、情報技術の発達で仕事のマッチングが容易になったこともあり、近年では多くの業種で急速に拡大している」と話す。 「企業側からすると、雇用すると解雇が難しく、コストが固定化される。 業務委託にすれば、人件費を抑えるというメリットがあり、今後はこうした働き方が主流になっていく可能性がある。」と指摘する。

コロナ禍で加速した動き

日本労働弁護団理事の笠置裕亮弁護士のもとには、コロナ禍が広がり始めたころから、業務委託に関する相談が増えている。 「企業が人件費を減らす目的で、雇用から業務委託に切り替える動きが、20 年ごろから出始めた印象だ」と話す。 中には、年収は半減するけれども正社員でそのまま働くか、業務委託に変更するかの選択を迫られた事例もあったという。 例えば、20 年夏に相談が寄せられたケースでは、企業から委託を受けて駅前などでチラシを配ったり、各戸にポスティングしたりしていた広告会社のアルバイトが、コロナ禍で仕事が減ったのを機に 100 人規模で解雇され、業務委託への転換を促されたという。

雇用されている労働者であれば、解雇や雇い止めは、労働法制の規制がある。 一方、業務委託などのフリーランスでは、こうした保護の対象になる「労働者」かどうかは、働き方の実態に応じて労基署などが個別に判断することになっており、一方的に契約を解除された場合などで、救済のハードルは高い。 雇用されていれば会社と折半する健康保険料や年金保険料も、フリーランスでは全額自己負担になり、会社としては人件費の削減になる。

背景には非正規労働者の保護

笠置弁護士は、業務委託への切り替えの動きの背景に、ここ 20 年ほどで大きく変わってきた雇用の規制の問題があると見ている。 99 年に製造業や建設などを除いた派遣労働が原則自由化され、小泉政権下の 04 年には製造業にも解禁された。 労働市場の規制緩和が進み、厚生労働省によると、雇用者のうちの非正規の割合は、94 年は 20.3% だったのが、09 年は 33.7%、21 年は 36.7% と増えた。 ところが、08 年のリーマン・ショック以降、非正規の立場の弱さが問題に。 保護の必要性が議論されるようになった。

13 年には、有期雇用が通算 5 年を超えると無期雇用へ変更を要求できる「無期転換ルール」などができ、解雇が難しくなった。 一方、IT が発展して仕事のマッチングがしやすくなり、単発で業務委託などを結んで仕事を受ける「ギグワーク」と呼ばれる仕事も広がった。 そこで、労働法の規制を受けにくい業務委託の形が、新たな「雇用の調整弁」と使われるようになった、と笠置弁護士はみる。 「これまで働き方の前提とされてきた雇用という枠組みが希薄化して溶け出し、業務委託のモデルにとってかわっているように感じる」と話す。

労働政策研究・研修機構の統括研究員の呉学殊(おうはくすう)さんは、「業務委託では、発注側の企業と働く側が対等な関係とはいえないことが問題。 労働組合を作る団結権を広く認め、国が標準規約書を作ってそれに基づいた契約をするなど、不平等な契約関係を是正する必要がある。」と指摘する。 また、現在は労働者と認められれば労働時間や労災などの保護が受けられる一方で、労働者と認められないと保護が基本的に適用されない「オール・オア・ナッシング」の状況にあるとして、「柔軟な法や制度の適用のために、労働者の範囲の再検討などが必要だ」と話す。 (片田貴也、asahi = 7-26-22)


ジェンダーギャップ指数とは 日本 116 位、下位が常態化

世界経済フォーラム (WEF) は 2022 年版のジェンダーギャップ指数を発表した。 日本は 146 カ国中 116 位で、前年(156 カ国中 120 位)より順位は上がった。 だが指数自体は下がり、主要 7 カ国 (G7) では最低ランクが常態化している。 同指数は各国が男女平等をどれだけ実現できているかを示す指標だ。 どのような基準で算出しているのか。 日本が浮上するには何が必要かなど、3 つのポイントから読み解く。

・ ジェンダーギャップ指数とは何か?
・ なぜ日本は G7 のなかで圧倒的に順位が低いのか?
・ 浮上にはどんな取り組みが必要か?

(1) ジェンダーギャップ指数とは何か?

ジェンダーギャップ指数は女性活躍の通知表のような指標だ。 WEF が経済、政治、教育、健康の 4 分野に関する統計データから算出する。 現在の指数の形の発表は 2006 年から始めた。 WEF は経済や政治のリーダーたちと連携する国際機関で、年次総会(ダボス会議)開催などで注目される。 ジェンダーギャップ指数のリポートは、WEF にとって競争力やリスクに関するものと並ぶ「フラッグシップリポート」のひとつとなる。

データは 14 項目に及び、経済分野では労働参加率や管理職の女性比率、男女の賃金格差など 5 項目、政治では国会議員や閣僚の女性比率など 3 項目ある。 教育は識字率など 4 項目、健康は健康寿命など 2 項目で構成している。 データはさまざまな国際機関などからとっている。 例えば今回、管理職比率は国際労働機関 (ILO) の 21 年もしくは最新のデータを使っている。 議員比率は列国議会同盟 (IPU) の 22 年 3 月時点のデータだ。

指数は男性の値を 1 とした場合、女性はどのくらいの水準なのかを表す。 0 が完全に不平等な状態で、1 に近づけば近づくほど男女格差は小さい。 日本の管理職に占める女性比率を指数にすると 0.152 にとどまり、調査国のなかでは 130 位だ。 順位は相対評価で決まる。 健康寿命は 1.039 と 1 を上回る。 だが、女性の健康寿命が男性に比べて長い国が多いため、順位は 69 位となる。

男女格差の状況を国・地域別で順位付けするのは WEF だけではない。 世界銀行は女性の経済的な権利を調べてまとめている。 22 年の日本の順位は 190 カ国・地域中、103 位タイだった。 移動の自由や年金など 8 項目で評価し、100 点満点はフランスやカナダなど 12 カ国。 日本は賃金に関する項目が響いて 78.8 点にとどまった。 男女平等は国連が示した「持続可能な開発目標 (SDGs)」の 17 項目のうちのひとつだ。 国際社会では男女格差が大きい社会は人権上の問題があるととらえられるほか、属性にかかわらず能力を発揮することが競争力に直結するという認識が広がっている。

(2) なぜ日本は G7 のなかで圧倒的に順位が低いのか?

06 年にジェンダーギャップ指数が発表されるようになって以来、日本は一貫して下位グループだ。 G7 をみると米国は 27 位、英国は 22 位、フランスは 15 位と日本を圧倒的に引き離している。 G7 と差が大きいだけではない。 同じ東アジアの韓国には 20 年に逆転された。 調査国数は毎年変動するため単純な比較はできないが、日本は下から数えて 2 - 3 割の順位が定位置だ。

なぜほかの先進国に差をつけられているのか。 多くの先進国では、意思決定層が男性に偏る構造にメスを入れている。 選挙の立候補者や企業の役員などに女性を一定数割り当てるクオータ制の導入だ。 男女の賃金格差是正に向け、賃金差の公表や分析を企業に求める国も多い。 一方、日本は構造に切り込む決定打がない。 選挙で男女の候補者数を均等にするよう政党などに促す「政治分野の男女共同参画推進法」が 18 年に施行されたが努力義務にとどまり、罰則規定はない。 賃金格差是正については端緒についたばかりだ。 今年 7 月から、女性活躍推進法の省令改正で大企業は賃金差の情報公開が義務付けられるようになった。

(3) 浮上にはどんな取り組みが必要か?

今回順位を上げたドイツはメルケル前首相の在任期間が 16 年となるなど、政治分野のリーダーシップ比率が高かった。 ベトナムは国会議員の女性比率が上昇した。 日本の指数で最も低いのは政治分野だ。 21 年の衆院選では女性の当選者が全体の 9.7% にとどまり、前回の 10.1% から低下した。 7 月 10 日の参院選で女性の当選者数は過去最高になったものの、日本の国会議員の女性比率は衆院とあわせて全体で 15% 程度だ。 女性が政治の世界に飛び込みやすいよう、議員を働きやすい仕事にするほか、現職が優先されがちな選挙制度なども含めて政治のあり方を変える必要がある。

経済分野でも日本の課題は多い。 欧州連合 (EU) は 6 月、域内の上場企業に一定比率の女性を取締役に登用するよう事実上義務づける法案で大筋合意した。 社外取締役で 40% 以上か、すべての取締役で 33% 以上を少数派の性別にする必要がある。 これまで個別の国で対応していたクオータ制が EU 全体の取り組みとして広がる。 翻って日本。 「登用したいがポストに見合う女性がいない」、「女性がリーダーになりたがらない」と二の足を踏む声が根強い。 このままではほかの先進国との差はさらに広がる。

共働きが多数派になった今、効率的な働き方を徹底すると同時に、女性に集中する家事・育児負担を分散させる必要がある。 「リーダーに向いていない」という女性本人や周囲の無意識の偏見を取り除く研修を実施するなど地道な取り組みが欠かせない。 6 月に政府がまとめた男女共同参画白書では結婚や家族の変化を踏まえ「もはや昭和ではない」と指摘した。 当面は大きな国政選挙がない「黄金の 3 年間」となる。 女性活躍を後押しする制度や政策をどれだけ整えられるかが問われている。 (天野由輝子、nikkei = 7-13-22)

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海外より大きい日本の男女の賃金格差 すでに「男女平等」の企業も

日本の男女間の賃金格差は、海外に比べて大きい。 その解消に向け、政府は今夏から企業に賃金格差の開示を義務づける方針だ。 いまは格差を開示している企業は少ないが、すでに賃金の「男女平等」を実現しているという企業もある。 厚生労働省が昨年行った賃金構造基本統計調査によると、女性の平均賃金は月 25 万 3,600 円。 男性の賃金の 75.2% だった。 経済協力開発機構 (OECD) の調べでは、日本の女性の賃金は中央値でみて男性の 77.5% で、韓国とイスラエルに次いで格差が大きかった。 調査した 43 カ国・地域の平均は 88.4% だった。

日本の格差が大きい背景には、女性は、▽ 低賃金の非正規雇用が多い、▽ 賃金が高い管理職に占める比率が低い、▽ 出産などでいったん退職した人は勤続年数が短く賃金が上がりづらい、といったことがあるとされる。 格差の解消に向け、政府は今夏から常時雇用する労働者が 301 人以上の企業に、男女間の賃金格差の開示を求める。 上場企業には早ければ 2023 年に、有価証券報告書への記載も義務づける予定だ。

賃金格差の開示について、中央大の阿部正浩教授(労働経済学)は「投資家や就職を控える学生は、企業の人材活用のあり方を注視している」と話し、企業に格差の改善を促す効果はあるとみる。 その上で、「企業は男女それぞれの平均賃金だけでなく、勤続年数や役職などに応じた賃金格差も開示することが望ましい」と注文する。 すでに賃金が男女平等だと掲げる企業もある。 たばこ大手のフィリップ・モリス・ジャパンでは、男女間の賃金格差は平均で1%だけという。

同社では従業員の国籍が 31 カ国にまたがり、「ダイバーシティー & インクルージョン(多様性と社会的包摂)が重要。 従業員に色んな違いがあったほうが組織のパフォーマンスを発揮できる。 男女の平等はその第一歩です。」と伊藤雅之・人事部マネジャーは話す。 男女平等を実現できている一因が、「ジョブ型」の雇用制度だ。 社員は契約時に職務(ジョブ)の内容と賃金水準が決まっており、賃金は 1 年を通じた評価に応じて一定の範囲内で差がつく。 男女で雇用形態や任される仕事が違うということはなく、結果的に女性の管理職も多いという。

それでもわずかに女性の賃金の方が低いのは、出産・育児などで休職した期間が、仕事の評価対象に含まれないことが影響しているという。 男女が同じように育児休暇を取るようになれば、賃金格差の解消にもつながる。 同社は男性にも育休取得を促しており、今後は支援制度を拡充していくという。 (橋本拓樹、asahi = 5-29-22)


中小企業の賃金 1.5% 上昇、24 年ぶり高水準 最低賃金の参考に

厚生労働省は 12 日、今年の中小零細企業の賃金上昇率が 1.5% で、24 年ぶりの高さだったことを明らかにした。 今年の最低賃金の引き上げ幅を決めるための参考資料として公表されたもので、引き上げ幅を押し上げる一因となりそうだ。 全国の従業員 30 人未満の企業に、6 月の賃金が 1 年前よりどれだけ増えたか聞き、約 4,700 社が回答した。 昨年はコロナ禍の影響などで上昇率は 0.4% まで下がっていた。 今年は企業の業績回復が進み、物価高などの影響もあって、賃金が伸びたとみられる。

賃金上昇率を業種別にみると、政府が予算をつけて賃上げした医療・福祉が 2.2% (前年 0.8%)と最も高く、次いで製造業が 1.6% (同 1.0%)。 コロナ禍で特に打撃を受けた宿泊業・飲食サービス業も 1.5% (同 0.1%)と大きく回復した。 都道府県を経済情勢に応じて A - D の 4 ランクに分けた結果では、東京や大阪などの A が 1.4%、京都や広島などの B が 1.3% だったのに対し、C が 1.6%、D が 1.9% と、地方の上昇率が大きかった。 現在の最低賃金は全国加重平均で 930 円。 昨年の引き上げ幅は 28 円で過去最高だった。 今年は物価高の中でさらに大幅な引き上げとなるかが焦点で、今月下旬に目安額が決まる予定だ。 (橋本拓樹、asahi = 7-12-22)

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英国は 1,570 円、ドイツは 1,720 円に … 日本の最低賃金が低い背景

最低賃金は近年、約 3% の引き上げが続く

雇い主が働き手に払うべき最低賃金(時給)について、今年の引き上げ幅の目安を決める議論が 28 日、始まった。 コロナ禍の影響を強く受けた一昨年をのぞき、近年は 3% 程度の引き上げが続く。 異例の物価高の中、例年を超える引き上げ幅になるかが焦点だ。 医療機器メーカーで働く女性 (31) は、都内で一人暮らし。 月収は 17 万円。 時給換算すると、都の最低賃金をわずかに上回る程度だ。 節約のため、服はすり切れるまで着ている。 帰省したら、両親が心配して新しい服を買ってくれた。

「同級生には親に仕送りしている人もいるのに、情けない。 いつまでも親に心配をかけたくない。」

正社員としてフルタイムで働く。 それでも手取り約 14 万円の半額は家賃に消え、残りと両親からの仕送りでやりくりする。 コロナ禍で医療機器を扱う仕事は忙しくなったのに、賃金はなかなか上がらない。 そこに追い打ちをかけたのが、食品や生活必需品などの物価の大幅な上昇だ。

異例の物価高 過去最大の引き上げ幅更新なるか

「ぜいたくがしたいわけではない。 普通に働いているのに、親の援助なしに生活できないなんておかしい。 最賃が上がれば、自分の賃金で衣食住をまかなえるようになるのでは。」

最低賃金をめぐっては、公益・労働者・使用者の代表でつくる厚生労働省の中央最低賃金審議会が、毎年夏に引き上げ額の目安を出す。 それを受けて都道府県ごとに引き上げ幅を決める。 今は最も高い東京都で 1,041 円、最も低い高知県などでは 820 円だ。 近年は全国加重平均で年 3% 程度の引き上げが続いてきた。 コロナ下で初めての審議となった一昨年は目安額が示されず、各地の引き上げ額も 0 - 3 円にとどまった。 だが昨年は一転、28 円増の 930 円と過去最大の引き上げ幅になった。

さらに今年は、大幅な物価高が進む。 5 月の消費者物価指数は、値動きの大きい生鮮食品をのぞいた総合指数が 2 カ月連続で前年同月より 2.1% 伸びた。 最低賃金を決める基本的な3要素は、「一般的な賃金水準」、「企業の支払い能力」に加え、物価上昇が大きく影響する「労働者の生計費」。 今年は昨年に続いて過去最大の引き上げ幅を更新するかどうかが注目される。 この日の審議会では、後藤茂之厚生労働相が「政府としては引き続きできる限り早期の全国加重平均 1,000 円の実現に向け、最低賃金の引き上げを図って参ります」とあいさつした。 目安は 7 月下旬にも出される見通しだ。 (三浦惇平、平林大輔)

昨年度、首相の圧力 使用者側に大きな不満

最低賃金を上げれば企業は人件費が増えるため、特に経営が厳しい中小企業の団体は例年、引き上げに慎重な姿勢を示してきた。 それでも今年は物価高を踏まえ、引き上げ容認の雰囲気が広がる。 日本商工会議所が全国の中小企業を対象として 2 月に行った調査では、最低賃金を「引き上げるべき」と答えた企業は前年比 13.6 ポイント増の 41.7%。 「引き下げるべき」と「引き上げはせずに、現状の金額を維持すべき」の合計 (39.9%) を上回った。 三村明夫会頭は「昨年とは状況が変わっている印象」と認めたうえで、コロナ禍で苦境が続く業種では経営状況にも配慮するよう求めた。

一方、政府からの引き上げ圧力は、今年はやわらいでいる。 「成長と分配の好循環」の実現に向けて賃上げを進めたい政府は近年、大幅な引き上げを呼びかけてきた。 特に昨年は菅義偉首相(当時)が審議会の議論に先立って、コロナ禍前と同水準の引き上げを求めた。 その姿勢が、公労使で議論して決めるという審議会の慣行をないがしろにしたと受け取られ、特に厳しい経営環境の中で引き上げを強行された使用者側には大きな不満が残った。

日商の三村会頭は 4 月の記者会見で、「最低賃金法に書かれていることが、昨年は守られていなかった。 政府の強い方針があって、ありとあらゆるものがそれを前提に議論された。 すべての中小企業が、不満に思っている。」と話した。 岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の実行計画でも、最低賃金の引き上げは柱の一つに位置づけられている。 それでも 5 月の会議では「引き上げ額については、公労使三者構成の最低賃金審議会において、しっかりと議論いただきたい」と述べるなど、審議会への配慮を強調する姿勢をみせている。

一方、今回の参院選では、野党各党は大幅な引き上げが必要だと主張。 社民や共産などは「全国一律で 1,500 円」までの引き上げを求めている。 (橋本拓樹、友田雄大)

海外より低い日本の最低賃金

海外主要国の最低賃金は、物価の違いを考慮しても日本より高水準だ。 厚生労働省の資料では、昨年 4 月時点で英仏独は 1,200 - 1,300 円台。 物価の影響を除いた経済協力開発機構 (OECD) の「実質最低賃金」をみても、こうした国々に比べると日本は低くなっている。 米国も連邦の最低賃金は約 800 円だが、州ごとの最低賃金もあり、高いと 2 千円程度のところもある。

日本の水準が低い背景に、勤続年数などに応じて賃金が上がる一般労働者と、短時間労働者との賃金格差の大きさがあると指摘されている。 最低賃金は短時間労働者を念頭に決まるので、それだけ低くなりがちだ。 一方、海外は同じ職務であれば、一般労働者と短時間労働者の賃金単価の差は比較的小さいとされる。 さらに海外では直近でも大幅な引き上げが相次ぐ。 独立行政法人「労働政策研究・研修機構」によると、英国は今年 4 月から成人向けの最低賃金を 6.6% 引き上げて 9,50 ポンド(約 1,570 円)に。ドイツも 7 月に約 6.4%、10 月にはさらに約 14.8% 引き上げて 12.0 ユーロ(約 1,720 円)とする。

フランスでは消費者物価の上昇にあわせて自動的に引き上げており、5 月から 2.65% 増の 10.8 5ユーロ(約 1,550 円)になった。 (asahi = 6-28-22)


「パタゴニア」パート社員ら労組結成 雇用「5 年未満」見直し求める

米アウトドア用品メーカー「パタゴニア」日本支社のパート社員らが 11 日、労働組合を結成した。 同支社ではパート社員の雇用期間に「最大 5 年未満」と制限を設けている。 結成した社員らは「通算 5 年を超えて働けば、有期から無期雇用への転換を認められる働き手の権利を奪うものだ」として、年数制限の撤回を求めている。 結成されたのは「パタゴニアユニオン」。 国内店舗で働くパート社員や正社員ら 4 人が参加し、11 日に結成大会をオンラインで開いた。

2013 年施行の改正労働契約法では、非正社員が同じ会社で通算 5 年を超えて働いた場合、本人が希望すれば無期に転換できる。 「5 年ルール」とも言われる。 ただ、雇用期間を制限し、無期転換できないようにする「不更新条項」を設ける企業もある。 こうした条項は「無期転換逃れだ」として、働き手が訴える裁判が各地で起きている。 新労組の代表には、札幌市内の店舗で働くパート社員の女性 (50) が就いた。 この女性は「有期雇用で働く人たちの『雇い止め』への不安を解消しようという法の趣旨に反している。 粘り強く撤回を求めていきたい。」と話す。

パタゴニア日本支社は朝日新聞の取材に「『無期転換逃れ』という主張は遺憾。 今後とも関係法令を遵守して誠実に対応していきたい。」とコメントした。 労組結成を支援してきた札幌地域労組によると、不更新条項の撤廃を求めて労組が結成されるのは初めてという。 労働問題に詳しい嶋ア量(ちから)弁護士は「企業にとって社会に貢献する一番の手段は、雇用を安定させることだ。 非正規社員の待遇を安定させることを意図した法の趣旨を逸脱した不更新条項は残業代未払いと同じように、反社会的なルールといえる。 働き手は泣き寝入りせず、不更新条項の撤回を求めて声をあげていくことが大切だ。」と指摘する。

パタゴニア日本支社は東京や大阪、札幌、福岡などに直営 22 店舗を展開し、従業員数は約 760 人。 「ビジネスを手段として環境に警鐘を鳴らす」という理念を掲げ、アウトドア用品や衣料品などを製造・販売する。 売上高の一部を地域社会や環境活動に寄付し、修理しやすく、使い回しできる環境に配慮した製品で知られる。 (編集委員・堀篭俊材、asahi = 7-11-22)


連合がメーデー中央大会 芳野会長「雇用と暮らしを守る」

5 月 1 日のメーデーを前に、労働組合の中央組織・連合が 29 日、東京・代々木公園でメーデー中央大会を開いた。 芳野友子会長は、正社員だけでなく、非正社員やフリーランスが働く環境の改善も必要だとして、「雇用と暮らしを守り、将来の希望につなげることが重要だ」と訴えた。 大会は 93 回目で、フリーランスの代表者が初めて登壇した。 映画の小道具を制作する SAORI さん (38) だ。 仕事の発注者に比べて立場が弱く、不利な条件で契約を結んでいると指摘。 「業界で働く全ての仲間が安心して働ける世界にしていきたい」と語った。

来賓では、岸田文雄首相の代理として松野博一官房長官が出席。 政権が取り組む賃上げ政策などをアピールした。 コロナ禍を受けて過去 2 年の大会はオンラインのみで開催したが、今年は会場でも実施した。 ただ、参加者は 2019 年は約 3 万 7 千人(主催者発表)にのぼったが、今回は感染対策として 5 千人程度に制限した。 別の中央組織の全国労働組合総連合(全労連)や全国労働組合連絡協議会(全労協)は、5 月 1 日に東京都内で式典を開く。 (三浦惇平、asahi = 4-29-22)