法隆寺 CF、1 億円超 コロナで拝観者減り、境内の整備費募る

世界遺産・法隆寺(奈良県斑鳩町)が、境内の植木の手入れなどの費用をクラウドファンディング (CF) で募ったところ、開始から 9 日目の 23 日で、目標額の 5 倍の 1 億円を突破した。 用意していた返礼品の一部が不足する展開となり、法隆寺は CF のウェブサイトに、「予想をはるかに超えたご支援をいただいた。 感謝に堪えない。」などとするコメントを載せた。 寺社が CF で資金を募るケースは増えているが、文化財の修復などを目的としたものが中心で、日常経費を求めるのは異例だ。

今回の CF は、コロナ下で、収入の柱の拝観料が減ったことが背景にある。 2019 年度に約 65 万人だった拝観者数は 20 年度は約 20 万人、21 年度は約 35 万人に減った。 檀家(だんか)のいない法隆寺にとって、拝観料の減少の影響は大きいという。 支出を抑えるため、大規模な建物の修理費(年間約 5 千万円)、文化財指定を受けていない彫刻や絵画の修理費(同 1,400 万円)を一時的にカットし、草刈りや樹木の剪定などの境内整備費(同約 2 千万円)を 4 割近く減らしたという。 だが、拝観者の目につきにくいところでは樹木が伸び放題になるなどしていた。

法隆寺は来年、世界遺産登録から 30 周年を迎える。 古谷正覚管長は CF 開始時の会見で、「大勢の方に来ていただくためにも境内をきれいにしたい」と訴えていた。 今月 15 日に CF を始めると、翌日には目標額の 2 千万円を達成。 23 日午前 10 時ごろ 1 億円を突破した。 返礼品が不足することから 22 日、返礼品ありの 5 万円以上の 6 コースと返礼品なしの 1 万円以上の 5 コースなど一部のコースに限定の御朱印(希望制)を追加するという対応を決めた。  資金は境内整備に重点的に使い、残りは未指定文化財の修理などに充てるという。

法隆寺は 607 年、推古天皇と聖徳太子によって創建されたとされる。 約 18 万 7 千平方メートルの境内に、国宝・重要文化財 55 棟を含む約 150 の建物、国宝・重要文化財約 2,500 点を含め約 6 万 5 千点の美術工芸品がある。 五重塔、金堂などの西院伽藍(がらん)は世界最古の木造建築として知られる。 CF (https://readyfor.jp/projects/horyuji) は 7 月 29 日まで。(米田千佐子、asahi = 6-23-22)


食べログの独禁法違反認定 口コミ評価点の計算方法めぐり 東京地裁

大手グルメサイト「食べログ」で、チェーン店であることを理由に不当に評価点を下げられて損害を被ったとして、焼き肉・韓国料理チェーン店を展開する「韓流村(東京)」が、食べログを運営する「カカクコム(東京)」に約 6 億 4 千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が 16 日、東京地裁であった。 林史高裁判長は食べログ側の対応を独占禁止法違反(優越的地位の乱用)と認め、3,840 万円の支払いを命じた。

食べログは、利用者からの口コミ評価をもとに飲食店を 5 点満点で評価する。 現在は約 82 万店に 4 千万件以上の口コミ評価があり、評価点は原則月 2 回更新。 口コミの単純平均ではなく、独自の「アルゴリズム(計算手順)」で算出するが、点数の不正操作を防ぐため、詳しい計算方法は明らかにしていない。 ただ、今や多くの人がグルメサイトを利用しており、サイト側のアルゴリズム変更で表示順位や評価点が変わると客足に大きく影響する。 今回の裁判では、食べログ側の運用が、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」や「差別的取り扱い」にあたるかが争点となっていた。

突然の下落 アルゴリズムが「チェーン店だけ下げた」

原告の韓流村は、東京や大阪、名古屋で 30 店舗以上をチェーン展開する。 訴状によると、韓流村は 2019 年 5 月 21 日、21 店舗の食べログの評価点が、平均 0.2 ポイント、最大で 0.45 ポイント下落したことに気づいた。 調べてみると、他の飲食チェーンの点数も一様に大きく下がっていた。 韓流村は、食べログがアルゴリズムを更新した際に、チェーン店だけを対象に不当に評点を下げたと主張。 独禁法に違反するとしたうえで、来店者が減ったことによる損害の賠償と、チェーン店の評価点を一律に下げるアルゴリズムの運用差し止めを求めた。

これに対して食べログ側は、アルゴリズムを使った評価点は、そもそも独禁法が規制対象とする「取引」行為にあたらないなどと反論していた。

公取委も懸念

グルメサイトのアルゴリズムをめぐっては、公正取引委員会が 20 年、恣意的な運用をして特定の店の点数や順位を落とし、飲食店間の競争に悪影響を及ぼしたり、サイトにとって都合の良い契約に誘導させたりすれば、独禁法に違反する恐れがあると指摘した。 このため、点数や順位を決める重要な要素などを開示して透明性を高め、第三者のチェック体制もつくって公正性を確保するのが望ましいと求めていた。 (田中恭太、asahi = 6-16-22)


トマト農家の熟練の技、AI が再現 カゴメと NEC が世界展開へ

カゴメと NEC は、世界的に需要が高い加工用トマトの生産を、AI (人工知能)で効率化するシステムを開発した。 AI が大規模な農場で水や肥料を与える最適な時期や量を教えてくれる。 熟練者でなくても安定した収穫が見込め、コスト削減や生産者の拡大につなげるねらいだ。 両社が 15 日、システムの販売や技術開発をする合弁会社を来月ポルトガルに設立すると発表した。 5 年目に売上高 30 億円をめざす。

両社は 2015 年から、カゴメの農場があるポルトガルで実験を続けてきた。 農場に置いたセンサーで気象や土壌のデータを測り、人工衛星から撮影した農場の画像と組み合わせて、場所ごとに必要な水や肥料の量がわかるようにした。 さらに熟練者の農場のデータも AI に学習させた。 AI を活用して栽培したところ、平均的な農場と比べて収量が 3 割増え、肥料の量が2割減ったという。国内のほか、欧米やオーストラリアなど7カ国で実証を含めて事業化している。

両社によると、トマトの生産額は世界で 1 千億ドル規模。 生食用に加え、ケチャップやトマトソースといった加工用も年々需要が高まっている。 ただ気候変動の影響で、栽培が難しくなっている地域もあるという。 課題のひとつは、生産者が必ずしも AI の指示通りに動かないことだ。 これまでの経験や勘に頼り、必要以上に水や肥料を使ってしまう人もいるという。 今後、作業を自動化する技術も研究する。

合弁会社の CEO に就くカゴメの中田健吾氏は会見で「今後は大市場の北米に進出する。 まったく新しい農業ができつつある。 世界に広めて農業に革新をもたらしたい。」と話した。 一方、NEC は将来的にはこれらの技術をトマト以外の作物にも広げたい考えだ。 (伊沢健司、asahi = 6-15-22)


政府、骨太の方針に Web3.0 環境整備を明記へ

政府が 6 月に策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」で、ブロックチェーンを活用し新たな価値移転や決済の仕組みを生み出す次世代型インターネット「Web3.0」の推進に向け環境を整備する方針を盛り込むことが 5 月 26 日、分かった。 各国で取り組みが進む中、日本の出遅れを防ぎ競争力を高める。 Web3.0 の特徴は、ブロックチェーンの暗号技術を使って、利用者個人のコンピュータが相互につながる「非中央集権的」なネットワークだ。 巨大 IT 企業などの仲介業者を介さず、情報や暗号資産(仮想通貨)をやりとりできる。

3 次元の仮想空間「メタバース」や、複製できないデジタル資産「NFT」などの新技術が注目されており、新たなデジタル経済圏として期待が高まっている。 ただ、国内の環境整備では、利用者保護や新技術を用いた取引の法的位置付けを明確にするよう求める声がある。 また、他の金融資産に比べ暗号資産の税負担が重く、起業家の海外流出を招いたとの指摘もある。 自民党では担当大臣の設置や税負担の軽減など、次世代を見据えた国家戦略の策定が提言されていた。

海外でも国を挙げ Web3.0 を推進する動きが相次ぎ、バイデン米大統領は 2022 年 3 月、デジタル資産の研究加速を命じる大統領令に署名。 英国も 4 月、必要な法整備や業界との連携で関連する投資と雇用を呼び込み、「世界的ハブ」になるための計画を発表した。 (sankei = 5-27-22)

Web3.0 新しいインターネットの在り方を示す概念。 「1.0」は 1990 年代からの初期を指し、Web サイトを閲覧するなど情報発信が一方的だった。 「2.0」は 2000 年代に生まれ、SNS などで双方向のコミュニケーションが可能になったが、個人情報など膨大なデータが米 IT 大手に独占されて問題になった。 22 年は「3.0」の元年といわれている。


「急げ!」 DV 夫から逃げ出した離婚調停 危険な裁判所は変われるか

離婚調停や民事裁判を全面的にIT化し、そのあり方を劇的に変える関連法の改正案が、18 日に国会で成立する見通しとなった。(村上友里、根岸拓朗、田中恭太)

「急ぎましょう!」 2019 年 10 月ごろ、本田正男弁護士は依頼人の女性と一緒に横浜家裁川崎支部の廊下を走って玄関を飛び出した。 庁舎裏に待たせていたタクシーに飛び乗ると、すぐに発進させた。 追ってくる人影がないことを確認し、ようやく息をついた。 数分前、家裁の一室で女性と夫の離婚が成立した。 女性は夫から DV を受け、他県に避難していた。 夫が書記官から離婚成立後の手続きについて説明を受けている隙を突いて逃げた。

離婚事件を多く扱ってきた本田弁護士は「こうしたことは日常茶飯事。 DV 被害者らにとって裁判所は一番危険な場所」という。 これまでの離婚調停は、途中段階では電話会議が利用できたが、離婚成立時には双方が裁判所に出頭しなければならなかった。 本田弁護士の経験では、成立日に夫から渡された飼い犬のカゴに GPS 端末がつけられていたこともあった。

過去には裁判所で殺人事件

片方だけが家裁に行く途中段階の期日でも、19 年 3 月には東京家裁を訪れた妻を待ち伏せた夫が刃物で殺害する事件が起きた。 警視庁によると、夫はこの日の調停には出席予定ではなかったが、家裁 1 階入り口の自動ドア付近で、現れた妻の首をナイフで刺して逃走。 約 5 分後に近くの日比谷公園内で身柄を確保された。 ナイフは 3 本所持し、リュックサックからはガソリンとみられる液体が入ったペットボトルも数本見つかった。

今後は全過程が IT 化され、離婚成立時もウェブ会議で済む。 「危険性や苦労が減る」と本田弁護士は期待する。 司法統計によると 20 年に成立した離婚調停は約 1 万 6 千件。 家裁に赴く手間が省かれ、仕事や育児を抱える人や遠くに住む人も利用しやすくなり、円滑な成立につながるともみられている。(村上友里)

裁判官の仕事ぶりにも変化か

付箋(ふせん)を手元に置き、書類を 1 枚 1 枚めくりながら読み込む。 主張と関連する証拠がどこに載っているのか、机に広げた紙に書き出していく - -。 民事裁判では、そんな裁判官の仕事ぶりが変わりそうだ。 複雑な訴訟ではファイル何十冊にも上る資料が今後は原則電子化される。 システムの仕様は未定だが、文字の検索のほか、ワンクリックで証拠のファイルに飛べたり、複数の裁判官による合議裁判で全員が同時に資料を見たりできるようになれば、利便性は高まる。 ベテラン裁判官は「かなり効率的になるのではないか」という。

一方、別の裁判官によると、複数の書類を広げて作業する人が多いといい、「仮に一つのディスプレーしかなければ、証拠を見ながら判決を書くのは難しくなる」と話す。(〈編者注〉 この方は PC をお使いになったことがないと思われます。 同一画面に、いろんな資料を表示できるのが PC です。 だからこそ、マイクロソフトは、開発した OS を "Windows" と名付けたのです。)

審理の質が向上するのではという声もある。 法廷の議論を重視するのが本来の裁判の理念だが、現実には双方の主張や反論は交互に書面で提出され、法廷のやり取りは最低限にとどまってきた。 争点が絞られず、互いの主張がかみ合わないまま、延々と書面が飛び交うケースもある。 オンライン化されると、裁判官、原告、被告の三者がパソコン上で画面を共有して争点を整理し、双方の主張を書き込み、その表を見ながら議論するといった進め方も増えそうだ。 最高裁民事局の担当者は「IT 化を、現状を変えて裁判の原点に立ち返るきっかけにしたい」と語る。

弁護士の変化も大きい。 今は、多くの法律事務所が裁判所近くに集まって「裁判所城下町」を形成している。 オンライン化で近さは必ずしも必要ではなくなり、街の風景も変わるかもしれない。 遠方の裁判所に行く場合にかかっていた時間や費用も大幅に減る。 「司法過疎の解消につながるのでは。」 岡山県新見市で唯一の法律事務所を構える大山知康弁護士の期待は特に大きい。 「地方のニーズに応えながら、都市部の事件も請け負って十分な収入を得る。」 そんな働き方が可能になれば、弁護士のほぼ半数が東京に集中する現状を変えるきっかけになるのでは、と思い描く。

IT 弱者、置き去りの懸念

課題も残っている。 一つは、裁判の証人尋問や離婚調停で、当事者や弁護士以外の人がカメラに映らない場所から助言や指示をする恐れがあることだ。 最初にカメラで部屋全体を撮影してもらうなどの対策をしても、完全に防ぐのは難しいという指摘がある。 離婚調停をめぐっては、元家裁判事の梶村太市弁護士は「調停は裁判官らが双方の当事者と信頼関係を築き、互いに納得して終えるのが望ましいが、画面上のやり取りで可能なのか」と懸念する。

さらに、7 カ月以内に迅速に判決に至る新制度についても、国会では批判が相次いだ。 当事者間の力の差が大きい消費者契約や個別の労働関係の訴えは対象外とされたが、野党の一部は「当事者の主張・立証の機会が制限され、粗雑な審理や誤判の危険性が高まる」と訴えた。 IT に不慣れな高齢者らへの配慮も欠かせない。 法制審議会の議論に加わった大坪和敏弁護士は、裁判所に誰でも利用できるパソコンやプリンターを設置するほか、弁護士会などによる支援を提案する。 「取り残される人がいないように、裁判所や弁護士会が役割分担して体制を整える必要がある」と話した。 (asahi = 5-17-22)


統制? 放任? インターネットにおける表現の自由を考える

インターネットの普及に合わせて、各国ではさまざまな政策が取られました。 しかし現在は、GAFAM に代表されるようなインターネット企業に与えられた特権を見直そうという動きがあります。 SNS による誹謗中傷やフェイクニュースなど世界中に広まった「無責任な空間」は、今後どのように変化していくのか。 国際政治アナリストで世界経済にも詳しい渡瀬裕哉氏が語ります。

責任が免除されたことによって起きたこと

グレート・ファイアウォールは、中国共産党が 1993 年に計画した国家政策です。 運用が始まったのは 1999 年、本格的に稼働したのが 2003 年です。 中国は、世界中でインターネットが一般へ普及するのと歩調を合わせて、検閲システムの開発を行っていることがわかります。 中国共産党政府にとって、言論の自由があまりに広がると、政治体制を脅かす可能性があることが開発理由のひとつですが、もうひとつ、巨大な国内市場を活かして微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)などの国内 IT 企業を育てたい、という産業保護政策的な意味合いもあります。

では、自由主義側はといえば、アメリカのグーグルやツイッター、フェイスブックなどが大きく成長しましたが、まったく政府から支援を受けていないわけではありません。 アメリカでも、インターネットの黎明期だった 1990 年代に、米国通信品位法が作られました。

通信品位法第 230 条は、IT 企業や SNS などのサービスメディアの発展促進をうたい、特に SNS などのプラットフォーム運営企業は、投稿される情報や表現についての責任を免除されました。 既存の出版社もさまざまな情報や言論が掲載されるという点は同様ですが、掲載した情報には責任を取らなければなりません。 内容によっては、情報の対象となった人や団体から訴えられてしまうことがあります。 ところが、フェイスブックやツイッターに誰がどのような書き込みをしても、フェイスブック社やツイッター社は責任を負わなくてよい、という法律の例外規定ができたのです。

この免責が引き起こしたのは、フェイクニュースの氾濫です。 誤った情報があふれかえっていても、責任を取る人がいないからです。 これが顕著に現れたのが 2020 年のアメリカ大統領選挙でした。 「トランプ陣営が勝っているはずなのに、バイデン陣営が不正をして多数の票を獲得している」という趣旨の誤った情報が氾濫した結果、最終的には選挙結果に不満を持つ人たちが、アメリカ連邦議会議事堂を襲撃する事件に至りました。

産業の保護育成という面で見れば、中国もアメリカも、自分たちのプラットフォームを使うように仕向けていると言えますが、表現や言論の自由から見れば、両者ともに問題があります。 中国は、政府が載せてよいもの・見てはいけないものを決め、統制しています。 これは明らかに問題です。 アメリカは、それとは逆にプラットフォームビジネスを独占させることを意図して、免責特権を与えました。 野放しにすることで歪な産業が育ったのです。

プラットフォームビジネスは出版や報道と同様に、言論や表現の自由のもと、編集権をもった運営者が情報の正誤について、責任をもって利用者に提供するのが本来の形です。 まったくの虚偽情報が書き込まれ、他の人に悪影響を与えたのであれば、書き込んだユーザーだけでなく、SNS 事業者が訴訟の対象にならなければいけないのです。

日本は、アメリカと同じような形となっています。 通称「プロバイダ責任制限法」と呼ばれる法律では、権利侵害や犯罪などユーザーによる違法な情報で損害賠償が発生した際、プロバイダが責任を取らなければならない場合の条件が列挙されています。 何か事件があったとき、プロバイダの責任の有無から争わなければいけないし、情報そのものが法に触れない場合は、各事業者の自主的な努力にのみ任されているのです。

見直される時期になったインターネット企業の特権

連邦議会議事堂が襲撃されたことは、多くの自由主義国に衝撃を与えました。 アメリカでは今後、現在のプラットフォーム企業に与えられている特権の見直しを行う議論が、本格化していくと考えられます。 こうした議論は、アメリカやヨーロッパで進んでいます。 アメリカ共和党からは、プラットフォーム企業も出版社のように編集権と責任を両方持たせることで、普通のメディアのようにしていくべきではないか、という意見が出されています。

ヨーロッパはまた別の議論を行っていて、これだけ SNS が普及した現状では、ユーザーの書き込みを止めるのは難しいという前提に立っています。 このため、民主的に選ばれた代表者によって審査をする仕組みや手続きを作り、監督しようという意見があります。 日本でいうと、放送に対して視聴者などからの問題の指摘に対応し、審査を行う第三者機関の BPO (放送倫理・番組向上機構)のようなものの SNS 版を作ってはどうかということです。

2020 年現在、世界での SNS 普及率は 51%、ユーザー人口は 39 億 6,000 万人です。 ここまで広がってしまった SNS やプラットフォーム、無責任な空間というものに対して、どのように再度責任を求めていくのかという枠組みは、今、世界の国々で議論されているところなのです。

表現の自由とのバランスにおいて、こうした議論を規制と捉えるのか、もしくは責任と権利が一体化した形に戻ると捉えるのか、いろいろな考え方があります。 ただひとつ確かなのは、対象となっているのが、世界的に広がった大きなビジネスだということです。 GAFA と呼ばれるような、世界を席巻するほど大きくなったビジネスのあり方そのものを変えてしまうかも知れない、そんな議論が進んでいるのです。

インターネットの世界はリアルな状態に戻るのか

私自身は、匿名のような形でみんなが情報発信をして、ウソでもなんでも情報が流れるままにしておくよりは、情報を発信する人が権利と責任の両方を持つという当たり前のことを、もう一度取り戻していくほうが大事だと考えています。 インターネットの発展と普及の歴史を振り返り、これからも続いていく過程にあると考えると、最終的には権利と責任の一体化した状態に戻っていくと考えています。 なぜなら、現実はもともとのリアルの世界に近づいていくものだからです。

リアルの世界からインターネットの世界に言論空間が移る過程で過渡的に広がったのが、ツイッターやフェイスブックなのであり、フェイクニュースが流れてもいいという捉え方は一時的な現象であって、誰もが当たり前にインターネットを介した生活が日常となれば、もともとのリアルの世界に近い権利構造に落ち着いていくのでしょう。

現在、日本ではインターネットを介したイジメや誹謗中傷が社会問題となっています。 人の集まる商店の中で拡声器を使って陰口を叫んでいたら、お店の人に追い出されるのは当たり前です。 こうした負の現象には、一定の社会的な罰則が必要な面もあります。

現在は、誰の名誉でも簡単に毀損できてしまう環境です。 訴訟になっても、名誉毀損や誹謗中傷の被害に対する慰謝料の相場は、10 万円から 50万円と言われており、実際には訴訟を起こしづらいのです。 権利と責任の一体化によって、そうした金額の相場を引き上げることや、現代に合わせた罰則規定の整備も議論されていくことが、望ましいのではないでしょうか。 (NewsCrunch = 5-4-22)


秋田市などのなりすましメール 80 万件 不正アクセスは設定ミスから

秋田県は 20 日、メール送信時の安全保護のために、東北 6 県と新潟県が導入を進めているクラウド上のセキュリティーシステムへの不正アクセスが判明したと、発表した。 このシステムから秋田市をかたったなりすましメールが約 42 万件送信された。 青森県八戸市、新潟県糸魚川市、福島県郡山市のなりすましメールを合わせると 4 自治体計約 80 万件の送信が確認されている。

秋田県デジタル政策推進課によると、7 県がシステムを共同調達した発注先「SB テクノロジー」が、設定ミスをしたことが原因という。 このシステムは自治体の庁内ネットワークと外部のインターネットとの通信を監視したり、送受信するメールの安全性を確保したりするもの。 7 県は 4 月から導入する。 秋田県の場合、県と県内全 25 市町村が利用する予定で、3 月から順次利用を始めていた。 秋田県はこれまで単独で別のシステムを利用していたが、共同調達の方が費用を抑えられるため、7 県で同じシステムを使うことにしたという。

秋田県によると、県内では現時点で秋田市と横手市のドメインをかたるものが確認されている。 秋田市のドメインは「city.akita.akita.jp」。 件名は「Re」、「Hello」や、「REF:Instruction to Credit your Account with the Sum of (US$10Million)」と英語で 1 千万ドルの入金を案内するものなどで、送信時間は、18 日午後 4 時 46 分 - 6 時 55 分ごろ。送信先は、「gmail.com」が多く、海外とみられるドメインもあるという。 すでに不正アクセスが出来ないように対策が講じられた。

また、八戸市をかたるメールは 24 万 5 千件、糸魚川市は 9 千件、郡山市は 12 万 7 千件送信されたという。 秋田県が管理する連絡先が抜き取られるなどの情報漏洩被害は、確認されていない。 県は、不審なメールを受信した場合「開封せずに削除してほしい」と呼びかけている。 また、県は、SB テクノロジーに再発防止策をまとめるよう要望している。 (高橋杏璃、asahi = 3-21-22)


「アマゾン」そっくり? フィッシングサイト公開容疑で男 4 人逮捕

個人情報を盗むために通販大手「アマゾン」のログインページに似せたサイトを作って公開したとして、愛知県警は 24 日、名古屋市守山区、無職梅本直弥容疑者 (34) = =詐欺罪で起訴 = ら男 3 人を不正アクセス禁止法違反の疑いで再逮捕し、発表した。 また、同市名東区、無職堤陽大容疑者 (26) を同法違反容疑で逮捕した。 4 人とも容疑を認めているという。

サイバー犯罪対策課によると、梅本容疑者らは昨年 9 月、通販会社を装って個人情報を入力させ盗み取る「フィッシングサイト」を作るなどした疑いがある。 「お支払方法更新のご案内。」と記したメールを送り、添付の URL をクリックするとログイン用の ID やパスワード、クレジットカード情報を入力させるようになっていたという。 県警は、他人の個人情報を買っていた梅本容疑者が昨年 6 月ごろ、自前で情報を入手しようと、プログラマーだった堤容疑者に制作を持ちかけたとみている。 送信したメールは約 1 万 3 千件にのぼるという。 (asahi = 2-26-22)


広告費、ネットが初の「マスコミ全体」超え 全体は 2 年ぶり増加

国内広告費はネットの優勢が拡大している

広告大手の電通が 24 日発表した 2021 年の国内の広告費は、前年比 10.4% 増の 6 兆 7,998 億円だった。 増加は 2 年ぶり。 新型コロナ禍からの経済復調や東京五輪・パラリンピック開催も背景に、コロナ前の 19 年(6 兆 9,381 億円)に迫る水準まで回復した。 伸び続けるインターネット広告費が、新聞・雑誌・ラジオ・テレビの合計の広告費を初めて上回った。

テレビ・新聞・雑誌・ラジオの「マスコミ 4 媒体」がネット以外から得た広告費は、8.9% 増の 2 兆 4,538 億円。 4 媒体いずれも前年を超え、中でもテレビは 11.1% 増と大きく回復した。 巣ごもり需要があった飲料関連や、緊急事態宣言が全国で解除された秋以降はレジャー・外食関連が好調だった。 4 媒体がネット経由で得たデジタル広告費は 1,061 億円で、初めて 1 千億円を超えた。

一方、ネット広告費は 21.4% 増の 2 兆 7,052 億円で、記録が残る 1,996 年以降で初めて、マスコミ 4 媒体の合計広告費を超えた。 ユーチューブやティックトックなどの動画配信サービスの広がりを背景に、特に動画広告が伸びたという。 ネット広告費が総広告費に占める割合は、39.8% に高まった。 電通メディアイノベーションラボ研究主幹の北原利行氏は「一番身近な機器としてスマホを多くの人が使っていることからも、今後もネット広告は伸び続けていくと思う」と指摘している。 (田幸香純、asahi = 2-24-22)


衛星インターネット「スターリンク」、顧客数 25 万人突破か

イーロン・マスクは 2 月 15 日、「25 万台以上のスターリンクのユーザーターミナル」という一文をツイートした。 マスクは具体的な説明をしていないが、このツイートは、スペース X が 2020 年に立ち上げた衛星インターネットサービス「スターリンク」の利用者が、25 万人を超えたことを意味しているものと受け取れる。 仮に 25 万人がスターリンクの端末を利用しているとすると、利用料が月額 100 ドルであることから考えて、同社の収益は月に 2,500 万ドルに達することになる。 つまり、同社は年間で少なくとも 3 億ドルの収益を得ていることになる。

もちろん、25 万台という数字が、現在利用されている端末数ではなく、これまでに製造されたハードの台数を意味している可能性もあるが、スペース X は、先週 40 基のスターリンク衛星を失った後、現在 2,000 基近くの衛星を軌道に乗せている。 打ち上げにかかるハードコストは 1,500 万ドル程度であり、1 回の打ち上げで 50 基の衛星を打ち上げると仮定すると、1 基あたりの打ち上げコストは約 30 万ドルとなる。 つまり、既存の 2,000 基の衛星コンステレーションの構築にかかったコストは 6 億ドルと試算でき、スペース X は、現状のペースで行けば 2 年でそのコストを回収できることになる。

もちろん、衛星インターネットの運営には、地上局や R & D 費用など他にも多くのコストがかかるため、月額 100 ドルのすべてが打ち上げ費用に充当されるわけではない。 しかし、ここで実際のビジネスが動いていることは明らかであり、顧客が増えればコストの回収スピードも早くなる。 さらに、スペース X は 2 月 2 日、企業向けにより高速で広帯域のサービスの「スターリンク・プレミアム」を発表しており、これはさらに多くの収益をもたらすことになる。 プレミアム版は今年の第 2 四半期に開始され、料金は月額 500 ドルになるという。

同社が先週失った 40 基の衛星は、打ち上げ直後に低軌道で発生した地磁気嵐の犠牲となったが、これは太陽嵐で地球の大気が暖められて膨張し、抗力が発生して衛星の速度が低下して軌道から離脱したためだった。 このようなトラブルは、より高い軌道に衛星を送り込むことで解決できるとされている。 (John Koetsier、Forbes = 2-18-22)


民放 4 局のネット同時配信、4 月開始へ TVer のシステム開発進み

テレビ番組を放送と同時にインターネットで見られる同時配信について、既に始めている日本テレビ以外の民放 4 局が 4 月に始める見通しとなった。 当初、昨年末から今年初めの開始を想定していたが、配信のプラットフォームとなる「TVer (ティーバー)」のシステム開発の遅れで延期していた。

テレビ東京の石川一郎社長は 17 日の定例記者会見で、4 月中に始める意向を明らかにした。 複数の民放局関係者によると、テレビ朝日、TBS、フジテレビも同時期に始める方向で調整しているという。 民放キー局の同時配信は、日本テレビが先行して昨年 10 月から夜の時間帯に民放共通のプラットフォームである TVer で実施。 他局は追いかけ再生も可能な TVer の新システムで始めることにしていたが、開発に遅れが生じ、始められずにいた。 TVer によると、システム開発が進み、最終的な準備を進めているという。 (田島知樹、asahi = 2-17-22)


北朝鮮にハックされて頭にきたセキュリティ研究員がしかえし → 北朝鮮全土ネット遮断

パジャマでサイバー攻撃

「国家の主な財源がハッキング」と言われる国なんて、世界広しといえども(経済制裁でまともに貿易できない)北朝鮮ぐらいなわけですが、ここのスパイに猛攻をかけられてウンザリした米国のセキュリティ研究員が、米政府が何もしないことにしびれを切らせて先月ひとりオペレーションで報復、北朝鮮がまるまるインターネットから消え去る変事となりました。

消えていたのは長いときで 6 時間ほどです。 攻撃がミサイル発射テストの前後に集中していたことから、最初はどこかの政府軍のサイバー攻撃かと思われていたのですが、Wired に名乗りをあげたのは意外にも匿名希望の P4x さん個人。 主要なサーバーとルーターに狙いを定めて全自動の DOS 攻撃をプログラムし、パジャマのズボンにスリッパ履きでときどき様子を見ながら延々回していたと言っていて、証拠も示しました。

使ったのは、特定の HTTP ヘッダの処理がエラーになるウェブサーバ専用ソフト NginX の脆弱性などです。 北朝鮮は Apache も年代物バージョン。 また、北朝鮮独自の Red Sea OS も検分してみたところ Linux の古いバージョンがベースなので、おそらく脆弱性もそのままになっているのではないかというのが P4x さんの見立てでした。

ネット利用は人口のわずか 1% なのにハッキングスキルは世界最高水準

北朝鮮全土のネットが遮断されたといっても、夜は真っ暗になる北朝鮮。 インターネットにアクセスできる国民は 1% とされます。 じゃあネットを使いこなせていないのかというと、そんなことはなく、北朝鮮のハッカー軍団(国外にいる)のスキルは世界最高水準です。 言うなれば「ジャマイカ代表選手がボブスレーで金メダルをとるようなこと (The New Yorker)」が現に起こっているのであります。

被害は年々拡大するばかり

北朝鮮パロディ映画を配信したソニーも総攻撃を受けましたし、2019 年には 17 の国の金融機関、暗号通貨取引場、マイニングを狙ったハッキングが最低 35 件国連に報告され総額 20 億ドル(約 2,300 億円)もの外貨が軍事費に流用されています(Reuters)。 足のつかない暗号通貨に味をしめたのか、昨年は 7 件の暗号通貨プラットフォーム攻撃で被害は 4 億ドル(約 462 億円)にも達しました。

最近 2 度目の発射テストに成功して胸筋ぷるぷるの極超音速ミサイル「火星 8 (Hwansong-8)」も、元をただせば韓国の軍事機密のハッキング。 これを大いに参考にしながら開発したっぽいことが国連の最新調査の草案で明らかになっています (NK News)。 核開発や軍拡の資金源を断つためにせっせと経済制裁してるのに、ブロックすればするほど抜け穴ができて、クリプトで抜け穴が常態化してしまってる感。 個人が 1 度や 2 度報復したところでこの流れは堰き止められないかも …。 (Gizmodo = 2-10-22)


愛知県の PCR 検査システムにサイバー攻撃 ビットコインを要求

愛知県は 10 日、新型コロナウイルスの PCR 検査のデータを管理しているシステムが、ランサムウェア(身代金ウイルス)によるサイバー攻撃を受けたと発表した。 システムには検査結果などが記録されていたが、いまのところ情報漏洩は確認されていないという。 県によると 5 日、職員がシステムを立ち上げたところ、使用できなくなっていた。 画面には英語で、復旧と引き換えに暗号資産のビットコインを支払うよう表示された。 支払いが遅れれば遅れるほど、「身代金」の値段が上がるとする記述もあったという。

県は要求には応じず、現在はサーバーを一時停止してアクセスされないようにしている。 PCR 検査のデータ管理は、バックアップデータをもとに引き続き行われているという。 システムには、保健所の検査を受けた濃厚接触者の氏名や年齢、検査結果など約 4 万 3 千人分が記録されていた。 愛知県の大村秀章知事は 10 日の記者会見で、「人の命と健康に関わるシステムに攻撃するのは許すことのできない非道。 誰がやったのか、しっかり解明してもらいたい。」と話した。 (小林圭、asahi = 2-10-22)

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ランサムウェア被害急増、昨年 146 件 警察庁「身代金払わないで」

パソコンやサーバーのデータを暗号化し、復元と引き換えに身代金を要求するコンピューターウイルス「ランサムウェア」による被害の申告が、昨年は計 146 件警察に寄せられた。 警察庁が 10 日、発表した。 被害は増え続けており、警察庁は「世界中で被害が広がり、市民生活への影響も出ている。 対策を急ぐ必要がある。」としている。 警察庁はランサムウェアによる被害状況を 2020 年から集計している。 20 年下半期の 21 件から、21 年上半期は 61 件と急増、 下半期も 85 件とさらに増えた。

21 年の計 146 件は 33 都道府県警に申告があった。 業種別では製造業が 55 件と最も多く、卸売り・小売業 21 件、サービス業 20 件と続く。医療・福祉は 7 件あり、うち 5 件が病院だった。 学校法人などもある。 10 月には徳島県つるぎ町の町立半田病院で電子カルテのシステムなどが使えなくなり、診療や患者の受け入れに影響が出た。 感染経路が分かった 76 件のうち、41 件が社外から社内ネットワークに接続するための VPN 機器から侵入していた。 パソコンを遠隔で操作するリモートデスクトップからの侵入も 15 件あった。 コロナ禍で在宅勤務が増える中、こうしたシステムの欠陥を狙われている、と警察庁はみている。

データの暗号化に加え、金銭を支払わないとデータを公開すると脅す「二重恐喝」も目立ち、手口が分かった 97 件のうち 82 件を占めた。 直接的な金銭の要求があった 45 件のうち 41 件はビットコインなど暗号資産での支払いを求めていた。 金銭を払った例があるかどうか警察庁は明らかにしていないが、同庁は「犯罪者の資金源になるので支払いはしないように」と企業側に求めている。

一方、不正送金などサイバー犯罪の昨年の摘発件数は前年比 24% 増の 1 万 2,275 件で過去最多。 サイバー攻撃の予兆とみられる不審なアクセスは、警察庁の検知センサー 1 カ所の 1 日あたり 7,335 件と、5 年間で 4 倍近くに増えた。 多くが海外からのアクセスという。 不正アクセスによる情報流出や国家を背景にしたグループによるサイバー攻撃も確認されているとして、警察庁は「サイバー空間の脅威は極めて深刻な情勢」と分析。 対処の体制を強化するため、サイバー警察局と警察庁が自ら捜査するサイバー特別捜査隊を 4 月に発足させたい考えだ。 (編集委員・吉田伸八、asahi = 2-10-22)


国の公文書管理も「紙」から「デジタル」へ 内閣府が新ガイドライン

国の公文書管理の基本が「紙」から「デジタル」にかわる。 内閣府の公文書管理委員会が 4 日開かれ、公文書管理の新しいガイドライン案を了承した。 これをもとに各中央省庁は今後、文書管理規則をつくる。 旧ガイドラインを、@ 新ガイドラインと、A 細目を定めた「内閣府公文書課長通知」に分けた。 新ガイドラインでは、省庁が公文書を作成・保存する際は、電子媒体によることを「基本とする」とされた。 紙の文書を外部から入手した場合も、スキャナーなどで取り込んだ電子媒体を「正本」とみなすことができる。 電子媒体化しても、保存期間は紙と変わらない。 もとの紙は1年未満に廃棄できる。

メールや SNS の扱いについて、新ガイドラインは、職員が発信した内容も「行政文書に当たる可能性がある」との原則を新たに記載した。 そのうえで旧ガイドラインにあった意思決定過程や事業の合理的な検証に必要なものは原則保存するとの記述を踏襲した。 細目を定めた課長通知では、行政機関が SNS で発信した写真や動画は保存すべき行政文書にあたると指摘。 送受信から一定期間がたったメールを自動廃棄するシステムは使わないように、改めて求めた。 一方で、私用アカウントからの SNS 発信は、職務に関わる内容であっても、一般的に行政文書にあたらない、とした。 (編集委員・谷津憲郎、asahi = 2-4-22)


海賊版漫画サイト 講談社・集英社など 4 社、米国 IT 企業を提訴

漫画の海賊版サイトのデータを配信して出版社の著作権を侵害しているとして講談社、集英社、小学館、KADOKAWA が 1 日、米国 IT 企業「クラウドフレア」に計 4 億 6 千万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした。 クラウドフレアは取材に対して、直接的な関与などを否定している。 訴状などによると、クラウドフレアは元のサイトのサーバーが配信するデータを一時的に複製(キャッシュ)して配信する「コンテンツデリバリーネットワーク (CDN)」を提供する事業者。

出版社側は最大手の海賊版サイトと契約し、日本にあるサーバーから違法な画像データを配信してきたと指摘。 昨年度以降、米国著作権法に基づき、クラウドフレアに海賊版の配信をやめるよう順次通知してきたが、配信が続いているという。 損害額について通知から昨年 12 月末までの配信分で 1 社あたり 1 億円 - 39 億円と試算し、その一部として 1 億 5 千万円ずつの賠償と海賊版の配信の差し止めなどを求めている。

出版社側はこの海賊版サイトが海外を拠点としており、特定が難しいと判断し、CDN 事業者の提訴に踏み切った。 出版社側は、海賊版サイトが大量のアクセスに対応して膨大なデータを遅延なく配信するには同社の CDN が不可欠になっていると判断した。 メールアドレスの登録など匿名でも契約できることが身元の特定を嫌う海賊版サイトにとって好都合になっている点も問題視した。

クラウドフレアは取材に「著作権侵害に直接的に関与していない。 当社が問題の根源ではない。」などとコメントした。 この海賊版サイトは月間 3 億回のアクセスがあり、「進撃の巨人」、「ONE PIECE」などの人気作を含む約 4 千点を配信してきたという。 海賊版サイトは、「漫画村」が刑事事件に発展し、18 年に閉鎖。 19 年に現れた「漫画 BANK」も、出版社が米国の裁判所に運営者の情報開示を求める手続きを取ると閉鎖された。 だが、その後も海外を拠点にしたサイトが急成長しており、出版社は対応に追われ続けている。(赤田康和、asahi = 2-1-22)