セブン、オッシュマンズ売却 非中核事業の売却加速

セブン & アイ・ホールディングスは 10 日、スポーツ用品販売を手掛ける完全子会社オッシュマンズ・ジャパン(東京)の全株式を 3 月 1 日に靴販売大手エービーシー・マートへ売却すると発表した。 売却額は非公表。 グループ内で成長や相乗効果が見込めない非中核事業を手放す。 セブンは昨夏、雑貨販売の Francfranc (フランフラン)の一部株式を売却。 百貨店「そごう・西武」も売却に向けた手続きを進めるなど、非中核事業の見直しを加速させている。 (jiji = 2-10-22)

◇ ◇ ◇

セブン & アイ、百貨店そごう・西武を売却検討 コンビニ事業に注力か

小売り大手のセブン & アイ・ホールディングス (HD) が、傘下で百貨店を運営するそごう・西武を売却する方向で検討していることがわかった。 不振が続く百貨店事業を切り離し、成長を続けてきた主力のコンビニ事業への注力を強める狙いがあるとみられる。 コンビニ「セブン-イレブン」やスーパー「イトーヨーカドー」を営むセブン & アイは、百貨店のノウハウを取り込んでさらなる成長につなげるため、2006 年に当時のミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を子会社化した。

しかし、アパレル不況やネット通販の台頭などで、百貨店事業は苦境が続いてきた。 地方店を中心に、閉店や他社への譲渡を重ねた結果、傘下入り当時は 28 あったそごう・西武の店舗数は、現在では 10 まで縮小。 うち 2 店は百貨店からショッピングセンターに業態転換するなどの改革も進めてきた。 さらに近年は新型コロナ禍による外出自粛が追い打ちをかけており、そごう・西武の 21 年 3 - 11 月期決算は、営業損益が 63 億円の赤字だった。 22 年 2 月期も営業赤字を見込んでいる。

一方、セブン & アイの稼ぎ頭はコンビニ事業で、21 年 3 - 11 月期の連結決算では、営業利益 3,029 億円のうち国内外のコンビニ事業が 99% を占めた。 そごう・西武の売却交渉は、投資ファンドや事業会社と進めるとみられ、得た資金をコンビニ事業へのさらなる成長投資に振り向ける可能性がある。 (asahi = 1-31-22)

◇ ◇ ◇

セブン & アイに「コンビニ事業への集中」要求、ヨーカ堂やそごう・西武の切り離し念頭か

米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルは 26 日、約 4.4% の株式を保有するセブン & アイ・ホールディングスに対し、事業部門の売却などの検討を求める書簡を送ったと発表した。 セブン & アイの社外取締役で「戦略検討委員会」をつくり、4 月までに同委員会が検討結果を報告するよう要請した。 書簡では、セブン & アイの営業利益の大半を占めるコンビニエンスストア事業に集中することを要求。 コンビニ以外の事業の保有について、「代替策を模索」するよう求めている。

業績が振るわない百貨店のそごう・西武や、スーパーのイトーヨーカ堂の切り離しが念頭にあるとみられる。 セブン & アイの社外取締役に対し、複数の機関投資家から経営戦略について意見を聞くことも求めた。 セブン & アイは「提案について検討し、適切な対応を行っていく」とのコメントを発表した。 バリューアクトは「物言う株主」として知られ、国内ではオリンパスや任天堂に投資。 一部企業には社外取締役を派遣している。 (yomiuri = 1-27-22)


東証最上位のプライム市場、1,841 社でスタート 1 部の約 8 割移行

東京証券取引所は 11 日、いまの 5 つの市場を 3 つに再編する 4 月の再編を前に、上場企業 3,777 社の移行先を公表した。 最上位のプライム市場には東証 1 部の約 8 割にあたる 1,841 社が移るが、現時点で上場基準を満たせず、経過措置の制度を使って移行する企業も含まれる。 銘柄を厳選して世界中から投資を呼び込む考えだったが、新市場は従来とあまり顔ぶれの変わらないままでの始動となりそうだ。

東証は 4 月 4 日にいまの 5 つの市場を、▽ グローバル企業向けのプライム、▽ 中堅企業中心のスタンダード、▽ 新興企業向けのグロースの 3 つにする。 スタンダードには 1,477 社が、グロースには 459 社がそれぞれ移行する。 最上位のプライム市場への上場には「流通株式時価総額 100 億円以上」などの基準がある。 昨年 6 月末時点で 1 部上場企業の約 3 割にあたる 664 社がプライムの基準を満たしていなかった。各上場企業は、こうした基準をにらみながら、昨年末までに東証に希望する移行先の市場を申請していた。

東証の市場は 2013 年に大阪証券取引所と経営統合後、市場を整理しなかったため、新興市場が二つあるなど、投資家からわかりにくいと指摘されてきた。 日本の株式市場が欧米や中国の主要市場に時価総額で後れを取るなか、各市場の性格を明確にして投資マネーを呼び込み、競争力を高めることをめざす。 今回の再編にあわせ、東証では今年 10 月から東証 1 部全体の値動きを表す東証株価指数 (TOPIX) の銘柄の見直しにも着手するほか、24 年度中に取引時間を 30 分間延長する方針だ。 (稲垣千駿、asahi = 1-11-20)


日本企業の M & A、過去最多に 脱炭素の流れ受け事業再編が活発化

2021 年に日本企業が関わった M & A (合併・買収)の件数は 4,280 件(速報値)で、過去最多になったことがわかった。 新型コロナウイルスの感染拡大や世界的な脱炭素の流れを受け、事業の再編が活発化している。 M & A 助言大手のレコフが公表情報をまとめた。 21 年の M & A (出資を含む)の件数は前年より 550 件 (14.7%) 多く、過去最多だった 19 年を上回った。 コロナ禍で案件は一時減ったが、全体的には増加傾向だ。 国内市場の先細りなどを背景に大企業が子会社を売るケースがめだつ。 DX (デジタル化による変革)のため技術がある企業が買われている。 4 月の東京証券取引所の市場再編を控え、上場基準に対応するための再編も出ている。

レコフによると、21 年の取引総額は 16 兆 4,844 億円だった。 最高額は三菱 UFJ フィナンシャル・グループ (MUFG) による米地銀 MUFG ユニオンバンクの売却で約 1 兆 9 千億円。 2 位と 3 位は構造転換を進める日立製作所の案件だ。 米 IT 企業のグローバルロジック社を約 1 兆円で買収し、中核子会社である日立金属を日米の投資ファンド連合に約 8 千億円で売却する。 脱炭素もキーワードになっている。

石油元売り最大手の ENEOS ホールディングスは、子会社で道路舗装大手の NIPPO の株式を約 1,900 億円で売って非上場化する。 舗装用のアスファルト合材をつくる過程で大量の二酸化炭素 (CO2) が出ることが経営課題となっていた。 エネオスは北海油田で原油生産を手がける英国子会社も約 1,900 億円で手放す。 一方で、太陽光などの再生可能エネルギー大手のジャパン・リニューアブル・エナジーを約 2 千億円で買う。 エネオスは車の電動化などで遅くとも 40 年には国内の石油需要が半減するとみており、石油関連事業の変革を急ぐ。

石油資源開発や大手商社も

石油資源開発 (JAPEX) はカナダのシェールガスやオイルサンド事業から撤退した。 事業を担っていた子会社を売却し計約 1,300 億円の損失を計上した。 オイルサンドは砂と油の混合物で、石油を得るために多くの CO2 を出す。 ほかにも大手商社などで、石炭火力発電や炭鉱開発からの撤退にともなう会社の売却が相次ぐ。 コロナ禍の影響が大きい飲食や旅行業などでも再編が広がる。 回転ずし大手のスシローを展開するフード & ライフカンパニーズは、持ち帰りすし店の京樽を買収した。 旅行大手 JTB は福利厚生代行を手掛ける子会社を売却した。

レコフのグループ企業の社長で情報分析を担う吉富優子氏は「経営者は株主に十分説明できる戦略をとらなければいけなくなっている。 不採算事業の売却など M & A を活用する傾向は続いていくだろう」と話す。 (新田哲史、asahi = 1-2-22)


ポイント発行 1 兆 4 千億円、「バブル」の盛り上がり 官民あげて過熱

買い物などの金額に応じてもらえるポイントの発行が急拡大している。 野村総合研究所は 2020 年度の発行額が過去最大の 1 兆 4 千億円相当に達したと推計。 「マイナポイント」など、政府の政策で発行されたポイントが急増したことが大きな要因だ。 「楽天経済圏」を掲げる楽天グループなど、ポイントを使った顧客の囲い込みや事業拡大の動きも加速している。

推計の対象は、家電量販店、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ネット通販、クレジットカードなどの決済業を含めた 11 業種。 発行企業の売上高やポイント還元率などから試算し、少なくとも民間分が約 1 兆円相当、政府系が約 4 千億円相当と見積もった。 ボーナスポイントなども含めると、実際にはこの 1.5 - 2 倍の規模になっている可能性があるという。

還元率は企業によって違うが、100 円につき 0.5 - 1 円相当のポイントがつくのが一般的だ。 最近では、提携する様々なお店やサービスの利用時にたまり、それらの支払いにも使える「共通ポイント」が広がり、民間の発行額は右肩上がりで伸びてきた。 20 年度はコロナ禍で航空会社のマイル発行が急減し、初めて前年度割れしたが、17 年度と比べると 1 割増。 今後も増え続け、25 年度には 3 割増になると推計されている。

マイナポイント、最大 2 万円分も

さらに、ここ数年急増しているのが、政策によるポイント付与だ。 19 年 10 月の消費増税時には、消費の落ち込みを防ぐ狙いもあり、キャッシュレス支払いに対して決済額の最大 5% 分のポイントをつけた。 20 年 9 月からは、マイナンバーカードの取得者に最大 5 千円分の「マイナポイント」を付与。 今後はカードと健康保険証や預貯金口座をひもづけると、最大 2 万円分のポイント付与になる。

こうした政府のポイントを自社のキャッシュレス決済で使ってもらおうと、ポイントの上乗せ特典を打ち出す事業者が相次ぎ、官民一体で「ポイントバブル」ともいえる乱発が続いている。 ポイント商戦はもともと、家電量販店や大手スーパーなどが力を入れてきたが、最近存在感を高めているのは携帯電話会社だ。

高齢化や料金値下げで、通信事業の伸びは見込みにくい。 そこで、各社ともポイントを使って顧客を囲い込み、QR コード決済や証券・保険などの金融関連、電力販売など幅広い生活サービスに進出する戦略を描いている。 携帯業界では後発組となる楽天モバイルだが、ポイント事業では先を行く。 楽天グループは楽天市場などでたまるポイントで様々な消費行動をカバーできる経済圏「楽天エコシステム」を広げてきた。 発行額は年々膨らみ、20 年に 4,700 億円分。02 年からの累計発行額は今年 8 月に 2.5 兆円相当を超えた。

NTT ドコモは、携帯電話利用などでたまる「d ポイント」を、コンビニや百貨店などグループ外の様々なお店でも使えるようにする「共通ポイント化」で、勢力圏の拡大をめざす。 20 年度は前年度より約 500 億円多い約 2,500 億円分が使われたという。

ソフトバンクは来年 4 月から、携帯の利用料金などに応じてたまる「ソフトバンクポイント」を始める。 今は「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブグループの共通ポイント「T ポイント」を付与しているが、自前のポイントに切り替え、ポイント事業を強化する狙いだ。 グループで手がけるキャッシュレス決済ペイペイでの支払いにも使えるようにする。 KDDI は、コンビニ大手ローソンなどと取り組む共通ポイント「Ponta (ポンタ)」で対抗している。

「ポイント巧者」めざす消費者、広がる経済圏

野村総研の冨田勝己氏は「ポイントは以前は付与して(自社で)使ってもらうものだったが、最近は経済圏という考え方になってきた。 (d ポイントなど)共通ポイントの加盟店にとっては、スマホ利用者に自店で買い物してもらうような送客の潤滑油になっている。 消費者は効率的にためて使う『ポイント巧者』をめざし、店舗側は販促効果を期待して加盟し、楽天やドコモなどのポイント経済圏の影響力が高まっている。」と話す。 (杉山歩、中川透、asahi = 12-26-21)


過去最大、107 兆円の来年度予算案閣議決定 歳入の 34% 超は借金

政府は 24 日、一般会計の歳出総額が 107 兆 5,964 億円となる 2022 年度当初予算案を閣議決定した。 21 年度の当初予算から 0.9% (9,867 億円)増え、10 年連続で過去最大を更新した。 税収も過去最高を見込み、国の借金である国債の新規発行額は減るが、歳入の 3 分の 1 以上を借金に頼る危機的な状況は変わっていない。 当初予算の歳出が 100 兆円を超えるのは 4 年連続。 計算上、国内総生産 (GDP) の約 2 割に相当する規模だ。

歳出の 3 分の 1 を占める社会保障費は 1.2% 増の 36 兆 2,735 億円を計上し、過去最大となった。 8 月末時点で 6,600 億円と見込んでいた高齢化などによる伸びは、2 年に 1 度見直す診療報酬の全体の改定率をマイナス 0.94% とすることなどで 4,400 億円に抑えた。 一方、43 歳未満の女性を対象に人工授精などの不妊治療に保険を適用するのに計 174 億円を計上するなど、新たに増やした部分もある。

岸田文雄首相が強い意欲を示している看護や介護、障害福祉、保育分野などの職員らの賃金を 3% 上げる予算も用意した。 来年 9 月までは 21 年度の補正予算で財源を確保しており、10 月以降の半年分として 600 億円弱を計上。 看護師は新型コロナに対応する医療機関などで働く人が対象で 9 月までは 1%、10 月から 3% 月給があがる。

コロナ対応の予備費は、前年度と同じく 5 兆円を計上した。 足元の新規感染者数は低い水準にあるが、感染力が強いとみられるオミクロン株の市中感染が国内でも見つかり始めている。 保健所や地方衛生研究所の強化に 6.4 億円、水際対策の強化に 217 億円をつけた。 防衛費は 1.0% 増の 5 兆 3,687 億円と 10 年連続で増加。 過去最大を更新した。 F2 戦闘機の後継となる次期戦闘機の開発など、研究開発費を 37.6% 増の 2,911 億円とした。

歳入面では、税収を 21 年度の当初予算より 7 兆 7,870 億円多い 65 兆 2,350 億円と見込んだ。 21 年度の税収は、20 日に成立した補正予算で修正され、63 兆 8,800 億円と見込んでいるが、実現すればそれも超えて過去最高となる。 ただ、借金なしでは歳出はまかなえず、新たな国債を 36 兆 9,260 億円発行する。 21 年度の当初予算よりも 6 兆 6,710 億円減るが、まだ歳入の 34.3% を占める。 これにより、国債残高は 22 年度末時点で 1,026.5 兆円となる見込みだ。 (榊原謙、伊沢友之、asahi = 12-24-21)


1 人当たり GDP、日本は 19 位 20 年度推計

内閣府が 24 日発表した 2020 年度の国民経済計算年次推計によると、国別の豊かさの目安となる 1 人当たり名目 GDP は 20 年(暦年)で 4 万 48 ドル(約 428 万円)となり、経済協力開発機構 (OECD) 加盟 38 カ国中 19 位だった。

日本経済研究センターの予測では日本の 1 人当たり名目 GDP は 27 年に韓国、28 年に台湾を下回る。 高齢者人口の増加に加え、デジタル化の遅れに起因する労働生産性の伸びの弱さが主因だ。 22 位の韓国との差は 19 年に比べ縮まっており、日本の低迷が続けば日韓逆転が現実となる。

20 年度の実質 GDP は 4.5% 減と、リーマン・ショックがあった 08年度(3.6% 減)を上回る大きな落ち込みとなった。 新型コロナウイルスの感染拡大で個人消費、設備投資、輸出がいずれも落ち込んだ。 名目 GDP は 3.9% 減だった。

コロナ下で消費が抑えられる一方、特別定額給付金の支給などで可処分所得が増え、所得に対する貯蓄の割合を示す家計貯蓄率は 13.1% と 19 年度 (3.7%) から大きく上昇した。 基準が異なるため単純比較はできないが、1993 年度以来の高さを記録した。 家計貯蓄は実額ベースで 42.0 兆円となり、前年から 30.8 兆円増えた。

雇用者報酬は 1.5% 減となり、8 年ぶりに前年度を下回った。 他方、経済全体の落ち込みに比べればマイナス幅は限定的だったことから、GDP が働く人にどれくらい分配されたかを示す労働分配率は 75.5% と前年 (71.9%) から大きく上昇し、旧基準の統計が始まった 1955 年度以降で最も高かった。 (nikkei = 12-24-21)


SBI、新生銀行に対する TOB 終了 保有比率は 48% 近くに到達か

ネット金融大手の SBI ホールディングス(HD)による新生銀行に対する株式公開買い付け (TOB) は 10 日、終了した。 関係者によると、SBI の新生銀株の保有比率は買い付け上限としていた 48% 近くに達した模様だ。 SBI は今後、新生銀に役員を送り込むなどして連結子会社化する方針で、新生銀は SBI 傘下で再出発することになった。 SBI は TOB の結果を精査しており、最終的な保有比率は 11 日に公表する。

新生銀はすでに来年 2 月の臨時株主総会で SBI の人事案を受け入れ、会長に五味広文・元金融庁長官、社長に川島克哉・SBI HD 副社長を選ぶ方針を示している。 新経営陣のもと、将来的には過半数の新生銀株を握り、金融庁に銀行持ち株会社の認可を申請することも検討する。

SBI は 9 月、新生銀に対する TOB を一方的に開始し、新生銀経営陣は当初、「株主の利益を損ねる」などとして強く反発。 買収防衛策の導入を決め、その賛否を問う臨時株主総会を 11 月 25 日に開く予定だった。 だが、2 割強の新生銀株を持つ国の支持が得られず、防衛策が否決される見通しとなり、総会前日に防衛策の取り下げを決定。 総会も中止し、SBI が求める経営陣の刷新を受け入れることも明らかにし、SBI 傘下に入る公算が大きくなっていた。 (細見るい、asahi = 12-10-21)

◇ ◇ ◇

新生銀、取締役会で SBI への買収防衛策を正式決定

新生銀行は 17 日午前、取締役会を開き、ネット金融大手 SBI ホールディングス (HD) から一方的に提案されている株式公開買い付け (TOB) に対し、買収防衛策を導入することを決定した。 SBI による TOB は、新生銀の株主を巻き込んだ対立に発展することになった。

SBI への質問状とともに同日午後 4 時に発表する方針。 新生銀関係者によると、導入を決めたのは「ポイズンピル(食べたら毒がまわる、という意味)」と呼ばれる防衛策。 SBI 以外の株主に新株を無償で配り、SBI の保有比率を下げることを狙う。 実行するには株主総会での決議が必要で、SBI は株主総会の結果が出るまで TOB 期間を延長せざるを得なくなる可能性が高い。 新生銀には、株主に正当性を説明したり、SBI に代わる「友好的な買収者(ホワイトナイト)」を探したりする時間をつくる狙いもあるとみられる。

SBI は TOB で直近の株価から約 4 割上乗せした 1 株 2 千円での買い取り価格を示している。 新生銀が防衛策を実行するには、これ以上の株価を現経営陣が実現できることを株主に理解してもらい、株主総会で賛同を得る必要がある。 (小出大貴、asahi = 9-17-21)

◇ ◇ ◇

SBI が新生銀行に TOB 敵対的買収に発展する可能性も

ネット金融大手の SBI ホールディングスは 9 日、約 20% の株を持ち筆頭株主となっている新生銀行に対し、株式公開買い付け (TOB) をすると発表した。 SBI は 2019 年 4 月から新生銀株を市場で徐々に買い、資本業務提携を同行に提案していたが、前向きな回答を得られなかったとして TOB に踏み切った。 新生銀の対応次第では今後、敵対的買収に発展する可能性がある。

SBI の発表によると、新生銀行は公表している経営計画を達成できておらず、利益が減る傾向にある。 一方で、こうした状況に経営陣が抜本的な対応策を講じず、自発的な経営改革を期待するのは難しいと判断。 SBI としては提携関係をさらに強化して経営を立て直すため、TOB に踏み切ることを決断したという。 SBI は新生銀株式を 48% まで取得する計画。 SBI 広報は「子会社化することで適切な施策を早期に実施できるようにし、業績改善させていく」としている。

一方、新生銀は「SBI ホールディングスより事前の連絡を受けておらず、当行取締役会の賛同を得て実施されたものではありません」と表明。 今後の対応については「情報を分析したうえで、早急に株主の皆様にご案内いたします」とした。 (asahi = 9-9-21)


固定資産税の据え置き特例、住宅地は延長せず 評価額上がれば負担増

政府・与党は 7 日、土地の評価額が上がっても固定資産税の額を据え置く今年度の「コロナ特例」について、住宅地は 2021 年度末の期限で終え、延長しない方針を固めた。 商業地は税額の据え置きはやめ、負担増を最大でも通常の半分に抑える措置にする。 与党内の協議の結果、住宅地や農地などは特例をやめる一方、商業地は前年度からの固定資産税の増加を土地の評価額の 2.5% 分の税額までとする制度に変えたうえで、1 年間継続する方向となった。 10 日ごろにまとめる与党税制改正大綱に盛り込む。

今回の税制改正の議論では、全国市長会や全国町村会、総務省側が税収減が 1 千億円以上になるなどとして廃止を主張。 一方、経団連や日本商工会議所、経済産業省側はまだコロナ禍に苦しむ業界があるなどとして継続を求めていた。 これを受け、自民党は当初、自治体などの側に立って特例をなくすことを主張。 公明党は延長を要望し、両党間で調整が続いていた。

固定資産税は市町村(東京 23 区は都)が、土地などの価値に応じ、毎年 1 月 1 日時点の所有者に課す税金。 1950 年からあり、19 年度の税収は決算ベースで約 9 兆 2 千億円。市町村税の約 4 割を占める基幹税の一つだ。 3 年ごとに見直す評価額に合わせて税額も改められ、直近では 21 年度が見直しの年だった。 土地の評価が上がった場合は増税になるが、急激な負担増を避けるために、土地の評価額の 5% 分の税額までしか前年度から加算しない仕組みになっている。 (吉田貴司、古賀大己、松本真弥、asahi = 12-7-21)

<固定資産税> 市町村(東京 23 区は都)が、土地や建物などの価値に応じ、毎年 1 月 1 日時点の所有者に課す税金。 税額は課税評価額の 1.4% が標準だが、市町村ごとに異なる。 資産の価値は 3 年に 1 回見直され、税額に反映される。 毎年 4 - 6 月ごろ、市町村(東京 23 区は都)から資産の所有者に納付書が送られる。 地方税制が大きく改正された 1950 年につくられた。 2019 年度の税収(決算額)は約 9 兆 1988億円。8716万人(土地4106万人、家屋4153万人、償却資産457万人)が納税した。税収が景気変動に比較的左右されにくく、市町村税の約4割を占める基幹税だ。


21 年の新規上場 126 社見込み リーマン・ショック前以来の高水準

東京証券取引所は 29 日、2021 年に新規株式公開 (IPO) した企業が前年より 33 社多い 126 社になる見込みだと発表した。 リーマン・ショック前の 06 年の 188 社以来の多さ。 金融緩和などによる資金調達しやすい環境が、上場を後押ししているとみられる。 市場別では新興企業向けのマザーズが 94 社で、1999 年の市場開設以来最多となる見通し。 調達額は全体で計 7,670.1 億円で、10 億円以上を調達した企業は全体の約 7 割に上る。 転職支援サイト「ビズリーチ」運営のビジョナルなど、時価総額 1 千億円超の大型 IPO も 5 件あった。

新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた昨年 3 - 4 月、計 18 社が IPO を中止するなどした。 その後、世界的な金融緩和の効果などで株式市場が急回復し、投資意欲が高まって急速に増えている。 東証は来年 4 月、5 市場を三つに再編するが、東証は「企業の IPO 意欲は依然旺盛で、相応の数が準備を進めている。 再編が(増加傾向に)影響することはない(広報担当者)」という。 (稲垣千駿、asahi = 11-29-21)


国債の残高、初めて 1 千兆円突破へ 政府が補正予算案を閣議決定

政府は 26 日、岸田政権で初となる経済対策を盛り込んだ 2021 年度補正予算案を閣議決定した。 歳出の総額は 35 兆 9,895 億円で、補正予算案としては過去最大。 財源の約 6 割は国の借金である国債で、残高は 21 年度末に初めて 1 千兆円の大台に乗る見通しだ。 補正予算案に計上した歳出の 9 割近くにあたる 31 兆 5,627 億円は、子ども向けの給付金などを軸とした経済対策に充てる。 当初予算と合わせた 21 年度の一般会計の歳出総額は 142 兆 5,992 億円で、175 兆円超だった 20 年度に次いで過去 2 番目の規模だ。

財源は、前年度の剰余金と見込みより増えた税収などが 13 兆 9,315 億円あるほかは、22 兆 580 億円の国債を追加で発行する。 この結果、当初予算ベースで 990 兆円余とされていた 21 年度末の国債の残高は 1,004 兆 5 千億円となり、初めて 1 千兆円を超える見込み。 この補正予算案は 12 月 6 日召集の臨時国会に提出され、政府・与党は年内に成立させる構えだ。

日本の財政状況は先進国では突出して悪く、国内総生産 (GDP) の大きさと比べた公的債務の比率は 20 年で 256.2%。 米国の 127.1% やドイツの 68.9% の数倍の比率だ。 ただ、岸田文雄首相はコロナ禍で傷ついた経済の立て直しに向け、当面は積極的な財政出動を続ける方針を示す。 「財政再建の旗は降ろさない」としつつも、具体的な取り組みは後回しになっているのが実情だ。 (榊原謙、asahi = 11-26-21)

◇ ◇ ◇

国債発行、経済対策で 22 兆円増 財政悪化止まらず

経済対策の裏付けになる 2021 年度補正予算案を巡り、政府が 22.1 兆円の国債発行を計画していることが分かった。 21 年度の発行額は当初予算の 1.5 倍に膨らむ。 政府は税収見込みを 6 兆円程度上方修正して財源にあてるが、国債の大量増発は避けられない。 財政悪化に歯止めがかからず、中長期的な財政再建に向け、政府の説明責任が問われる。

政府は経済対策の裏付けとして、26 日にも 21 年度補正予算案を閣議で決める。 一般会計は 36 兆円で、うち経済対策分が 31.6 兆円を占める。 財源となる歳入には税収見積もりを上方修正した分を 6.4 兆円、20 年度予算からの剰余金を 6.1 兆円計上する。 それでも足りないため、歳出額の 6 割にあたる 22 兆円超は国債発行でまかなう。 岸田文雄首相は日本経済新聞などのインタビューで経済対策の財源について「赤字国債はじめあらゆるものを動員する」と話していた。 ただ国債を償還する際に必要な財源については明確な説明をしていない。

財政悪化は歯止めがかからない状況だ。 普通国債の発行残高は 2010 年度時点で 636 兆円だったが 10 年あまりで 1.5 倍以上に膨らむことになる。 アベノミクスが本格化した 13 年度以降は残高の増加ペースが 10 兆 - 40 兆円と縮小傾向にあったが、新型コロナウイルス禍で大規模な財政支出に踏み切った 20 年度は約 60 兆円増えた。 専門家の間では新型コロナ禍に伴う財政支出に関して平常時の予算を切り分けて財源を確保すべきだとの主張が根強い。 東日本大震災の際は所得税を 25 年にわたって 2.1% 上乗せしたり、10 年間住民税を 1 人 1,000 円ずつ増やしたりと、長期にわたって広く薄く国民に負担を求める形で復興予算の財源を確保した。 (nikkei = 11-24-21)

◇ ◇ ◇

高市氏、PB 黒字化目標「凍結に近い状況に」 財務次官の指摘を批判

次期衆院選(19 日公示、31 日投開票)を目前に控え、各党の政策責任者らが 10 日、NHK の討論番組に出演した。 自民党の高市早苗政調会長は、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するという政府の財政再建目標は「凍結に近い状況が出てくる」と述べた。 高市氏は、岸田文雄首相が国家的な課題に取り組むため「財政の単年度主義の弊害是正」を掲げていることを踏まえ、「長期的なスパンで取り組むべきことがあるということで、これは実質上、一時的にこのプライマリーバランスについては凍結に近い状況が出てくる」と述べた。

また、財務省の矢野康治次官が今月 8 日発売の月刊誌「文芸春秋」に寄稿し、衆院選や自民党総裁選での政策論争を「バラマキ合戦」と懸念を示したことについて、高市氏は「大変失礼な言い方だ」と批判した。 そのうえで「基礎的な財政収支にこだわって本当に困っている方を助けない。 未来を担う子供たちに投資しない。 これほどバカげた話はない。」と述べた。 矢野氏の寄稿をめぐっては、岸田首相は 10 日のフジテレビの番組で「いろんな意見が出てくる。 これは当然あっていいと思う。」と述べ、「いったん方向が決まったならば、関係者にはしっかりと協力してもらわなければならない。」と語った。

また、鈴木俊一財務相は 8 日の閣議後会見で、寄稿を読んでいないとしたうえで「麻生太郎前大臣に了解を取った上で、寄稿されている。 今までの政府の方針に何か反する、否定するようなものではないと受けとめている。 中身について特段、問題というような思いはもっていない。」と話していた。 一方、10 日の NHK 討論番組では、公明党の竹内譲政調会長は経済対策に絡み、「0 歳から高校 3 年生まで全ての子どもたちに 1 人当たり一律 10 万円相当の支援を行うべきだ」と強調。 「コロナ禍で、大変大きな負担が、子育て世帯とか、子供たちにかかっていることは明らかだ」と語った。 (asahi = 10-10-21)

〈編者注〉 高市さんの答弁には、矛盾があることにお気づきなのでしょうか? 「子どもたちへの投資」を述べられていますが、その子供たちが大きくなって、積み重なる負債を背負わされるのです。


実質 GDP、年率 3.0% 減 7 - 9 月、消費・輸出低調

|内閣府が 15 日発表した 2021 年 7 - 9 月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除く実質で前期比 0.8% 減、このペースが 1 年間続くと仮定した年率換算は 3.0% 減だった。 マイナス成長は 1 - 3 月期以来、2 四半期ぶり。 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で個人消費が振るわず、半導体不足に伴う自動車の減産で輸出も低調だった。 項目別に見ると、個人消費は前期比 1.1% 減、企業の設備投資は 3.8% 減だった。 公共投資は 1.5% 減。 輸出は 2.1% 減、輸入は 2.7% 減だった。 景気実感に近いとされる名目 GDP は前期比 0.6% 減、年率換算 2.5% 減。 (kyodo = 11-15-21)

◇ ◇ ◇

景気総括判断、自動車減産続き 1 年半ぶり下方修正 … 財務局 10 月報告

|財務省は 27 日、全国の財務局による 10 月の管内経済情勢報告を発表した。 半導体不足で自動車の減産が続いており、景気の総括判断を「持ち直しの動きが続いているものの、供給面での制約などもあって、テンポが緩やかになっている」と引き下げた。 下方修正は昨年 4 月以来、1 年半ぶり。

前回 7 月は「一部に弱さがみられるものの、持ち直しつつある」としていた。 全国 11 地域のうち、自動車産業が盛んな東海、中国、四国、福岡の 4 地域を引き下げた。 半導体のほか、新型コロナウイルス感染拡大で東南アジアからの部品調達が滞っていることが響いた。 九州は半導体製造装置の生産が好調として、上方修正し、残る 6 地域は据え置いた。

個別項目では、個人消費について、東海、中国、四国、福岡の判断を引き下げた。 生産活動は関東、東海、中国、福岡で下方修正し、九州を引き上げた。 雇用情勢は製造業を中心に底堅さが見られるとして、北海道、関東、中国、九州の判断を上方修正した。 経済情勢報告は 3 か月ごとに、全国財務局長会議で報告され、「個人消費」、「生産活動」、「雇用情勢」の 3 項目で判断している。 (yomiuri = 10-27-21)


巨額投じた国の新型コロナ対策 浮かび上がるずさんな予算執行

会計検査院が 5 日に公表した決算検査報告には、巨額の国費が投じられた新型コロナウイルス対策の事業をめぐる調査状況が盛り込まれた。 「アベノマスク」や「Go To 事業」といった安倍・菅両政権肝いりの事業が俎上に載せられ、検査院は国に適切な予算の執行を求めた。 売り上げが減った企業に支給する持続化給付金では、不透明な業務委託に注文がついた。

検査院によると、今年 3 月末までに 423 万件、計 5 兆 5,147 億 4,297 万円を給付。 国が給付事務を 769 億 208 万円で委託した「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」は、業務の大半を電通に 767 億 1,391 万円で再委託し、さらに 2 次請けで電通のグループ会社 4 社に再委託。 3 次請けにはパソナも名を連ね、最大で 9 次請けまで延べ 723 社が参加していた。

うち 92 社は個人情報を取り扱うため国の承認が必要だが、検査院によると、大半は承認がないまま業務に参加し、承認が事後的だった可能性があるという。 検査院は再委託について「国が容易に管理できる範囲にとどめるべきだ」と指摘。 中小企業庁は「全国の申請会場で大勢のスタッフが必要でおのずと委託先が多くなった」と説明した。

業務委託の選定過程も問題視された。 中小企業庁は入札前、サ推協とは 3 回面会したが、ほかの民間 2 業者との面会は 1 - 2 回。検査院は「公平な競争に疑念を招かないよう」求めた。 同庁は「前代未聞の巨大事業で、過去に電子申請業務の経験があるサ推協の知見を得るため、他業者より多く接触した」とした。 相次ぐ不正受給が問題化している雇用調整助成金(雇調金)も調べた。 コロナ禍の特例措置もあり、昨年度は約 228 万件の支給決定があり、約 3 兆円が支給されている。 検査院が首都圏や関西などの 49 事業者を抽出検査したところ、1 割の 5 事業者が計 9,673 万円を不正受給していたことが判明。 雇用関係を偽るなどしていた。

また、複数の会社が同一人物を雇っているとして、各社がそれぞれ雇調金を受給していたケースも判明。 5 - 6 社と雇用関係があるとされた人物もいた。 検査院は今後の対応策を検討するよう厚生労働省に要求。 同省は「限られた人員で審査業務をしており、迅速さを優先した結果不正を多く許した」とした。 雇調金と持続化給付金については、不正受給や過払いなど不適切な支払いが合計で約 20 億円確認された。

抜け穴狙った不正多発 「Go To トラベル」

「Go To キャンペーン事業(トラベル、イートなど)」では、予算 2 兆 7,470 億円のうち支出済みは 9,431 億円で、執行率は 34% にとどまった。 感染急拡大で事業が一時停止したためとみられる。 このうち「Go To トラベル」では制度の抜け穴を狙った不正が多発した。 事業は、旅行代金の 35% を割り引いたうえで 15% 分のクーポン券も配り、半額を補助する仕組み。 宿泊予約をして電子クーポンだけを受け取って無断キャンセルする手口が頻発したことを受け、検査院が調べたところ、クーポン不正利用は 2,114 万円に上った。 予約者を特定できた 64 万円分は返還を請求中だが、返還額は 14 万円という。

感染拡大で旅行キャンセルの多発に直面した旅行業者への支援策でも、ずさんな対応が浮かび上がった。 感染の急拡大で昨年 11 月以降にトラベル事業が停止した際、旅行業者支援のため、国は中止された旅行代金の 35 - 50% を補償。 計 1,157 億円を支払った。 国は旅行業界全体を支援するのが目的だとして、影響を受ける飲食や観光、交通、宿泊などすべての関連業者に公平に分配するよう、旅行業者に要請していた。 ところが、観光庁は「分配しない場合、トラベル事業への参加登録を取り消す」としただけで、実際に業者間でどう分けたかを把握していなかった。 検査院は検証するよう求めた。

保管想定せず、費用かさむ アベノマスク

厚生労働省が調達した布マスクは計 2 億 9 千万枚で、3 割近い 8,272 万枚(115 億 1 千万円相当)が今年 3 月末時点で倉庫に保管されていた。 昨年 8 月からの保管費用は計 6 億 96 万円で、支払先は日本郵便が 5 億 2,265 万円、佐川急便が 7,831 万円だった。 検査院によると、介護施設向けの一律配布が昨年 7 月末に中止になり、翌 8 月からは配送を担う日本郵便に在庫の保管も委託された。 対象は介護施設などに向けた布マスクのほか、全世帯向けのアベノマスク約 400 万枚も含む計 8 千万枚以上。 11 月からは委託先が佐川急便に変わり、同社が 3 月末まで保管した。

朝日新聞が厚労省に取材したところ、日本郵便は当初配送だけで保管は想定しておらず、保管場所も十分になかった。 そのため倉庫業者に委託するなどして、経費がかさんだという。 同省は費用を節約しようと一般競争入札で落札した佐川急便と契約。 だが、日本郵便の保管場所から佐川急便の倉庫への移送費のほか、段ボール箱に詰め替えたりラベルを貼り替えたりといった費用もかかった。

同省の担当者は「国の税金で買ったマスク。 無駄にはできないが、保管費が高額になっているのが現状だ。」と話す。 今年度の保管を日本通運に委託しており、「昨年ほど高額にはならないが、億単位にはなる。」としている。 感染拡大に伴うマスク不足を受け、当時の安倍晋三首相の肝いり政策として 2020 年 4 月以降に布マスクを調達した。 磯崎仁彦官房副長官は先月 27 日の会見で「調達に特に問題があったと考えていない」としていた。 (後藤遼太、asahi = 11-6-21)

新型コロナ対策の分野別の予算執行状況 * 金額の単位は円、1 億円未満は切り捨て
総額繰越額不用額執行率
感染防止対策9兆6,500億3兆0,084億3,587億65%
経済・雇用対策46兆1,529億13兆0.361億5,399億71%
国際協力2,813億62億0.02億98%
地方創生臨時交付金7兆8,792億5兆2,640億7億33%
その他1兆4,649億4,651億1,772億56%


追加経済対策 35 兆円検討 18 歳以下に 10 万円

政府・与党が、新型コロナウイルス対応や格差是正を含む追加経済対策の財政支出を 35 兆円前後とする方向で検討していることが 5 日、分かった。 18 歳以下の子供や若者に対する 10 万円の給付金を盛り込む方向だ。 ただ、所得制限を設けて高所得者を除く案もあり、自民、公明両党の幹事長が 8 日に協議し最終調整する。 財源の裏付けとなる令和 3 年度第 1 次補正予算案を年内に成立させ、対策を早期に実施する。

岸田文雄首相は追加経済対策の規模を「数十兆円」としてきた。 コロナ禍で消費は低迷し、国全体の需要と供給力の差を示す「需給ギャップ」は内閣府の試算で約 22 兆円(10 月 4 日時点)の需要不足となっており、これを上回る規模の対策が必要とみられている。 財源には 2 年度決算の剰余金(約 4 兆 5 千億円)や 2 年度から 3 年度に繰り越された予算の一部(10 数兆円)を充て、不足分は赤字国債の発行も検討する。

対策の柱となるのは、首相が掲げた「成長と分配の好循環」のカギを握る非正規雇用や子育て世帯などへの給付金だ。 公明党は 18 歳以下に「一律」で 10 万円相当を支給する公約を掲げたが、所得水準などの制限を設けない一律支給は政府内に異論がある。 鈴木俊一財務相は 5 日の記者会見で「必要なところにはしっかり予算をつけるが、メリハリをつけなければならない」と指摘した。

このほか、対策には感染者数の減少を受けた観光支援事業「Go To トラベル」の再開や、大学の研究力底上げに向けた 10 兆円規模の「大学ファンド」の運用開始に向けた措置、4 年度税制改正での賃上げに積極的な企業に対する法人税の優遇措置なども盛り込む見通しだ。 感染の再拡大に備え、3 年度予算で 5 兆円を確保したコロナ予備費の積み増しも検討する。

政府は週明けにも開催する「新しい資本主義実現会議」で主なメニューを緊急提言案として示し、11 月中旬に対策を決める。 対策に必要な費用を手当てする 1 次補正は年内に臨時国会を開いて成立させる方針で、令和 4 年度予算案と合わせ切れ目なく対策を取る「15 カ月予算」と位置づける。 (sankei = 11-5-21)