鎮魂と復興、そして幸福願う 福島で「東北六魂祭」

【清野有希子】 東日本大震災の犠牲者の鎮魂と復興を願い、東北 6 県の夏祭りが集まる「東北六魂祭」が 1 日、福島市で始まり、12 万人(実行委発表)の来場者でにぎわった。 一昨年の仙台市、昨年の盛岡市に続き 3 回目。

パレードには約 1 千人が参加。 福島わらじまつりを先頭に、山形花笠まつり、仙台七夕まつり、盛岡さんさ踊り、青森ねぶた祭、秋田竿燈まつりが市中心部を練り歩いた。 東京電力福島第一原発事故でいまも福島県の約 15 万人が避難生活を続けている。 今年は「福」がキーワード。 「幸福が来るように」との願いを、福島の「福」に重ねた。 (asahi = 6-1-13)

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東北六魂祭の福島市開催 風評被害払拭など期待

東北の代表的な夏祭りを楽しめる「東北六魂祭」が 6 月 1、2 日に福島市で開催されることが正式に決まり、地元では観光への波及効果や風評被害払拭への期待が高まっている。 東北 6 市の夏祭りによるパレードが国道 4 号(北五老内町交差点〜北町交差点)で行われるほか、福島市役所西棟建設予定地をメーン会場に県内 12 市のステージがある。

実行委員会によると、盛岡市で昨年 5 月に開かれた六魂祭では経済波及効果が約 93 億円(電通総研調べ)に上った。 福島市観光コンベンション協会の水口和栄常務理事 (61) は「一過性のイベントに終わらせず、また来たいと思ってもらえる福島の魅力を発信したい」と話す。 土湯温泉観光協会の池田和也事務局長 (55) は「六魂祭に訪れた人たちが福島の実際の様子を見ることで、風評被害の払拭に効果がある」と期待する。

一方、実行委には誘導や警備といった安全対策が求められる。 実行委会長の瀬戸孝則市長は 24 日の記者会見で「最低でも 1 日 10 万人が訪れ、実際はもっともっと多くなるだろう。 今後の課題として取り組んでいきたい。」と述べた。

県内 12 市(福島除く)のステージは以下の通り。

▽ 会津彼岸獅子舞(会津若松)、▽ 音楽都市こおりやま(郡山)、▽ じゃんがら念仏踊り(いわき)、▽ 安珍念仏踊り(白河)、▽ 松明(たいまつ)太鼓(須賀川)、▽ 蔵のまち喜多方夏まつり(喜多方)、▽ 相馬民謡(相馬)、▽ 二本松の提灯(ちょうちん)祭り(二本松)、▽ 鬼五郎幡五郎太鼓(田村)、▽ 相馬流れ山踊り(南相馬)、▽ 霊山太鼓まつり(伊達)、▽ 安達太良太鼓(本宮) - yomiuri = 1-25-13


福島のフラガール、伝える復興 全国出前授業スタート

【橋本弦】 福島県いわき市のレジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」のフラガールが全国をめぐり、踊りを披露したり被災体験を語ったりする出前授業「フラガールきづなスクール」が 17 日、広島県福山市立南小学校を皮切りに本格的にスタートした。

出前授業は、各地の小学 3 - 4 年生が対象で、要望のあった小学校をフラガールが訪問。 復興へ取り組む福島の姿を伝え、「がんばることの大切さ」を子どもたちと一緒に考える。

今回は福山市がいわき市に応援職員を派遣するなどの縁から、1 カ所目として訪問した。 授業には 3 年生の児童約 60 人が参加。 フラガール 3 人が故郷への思いを込めて制作したオリジナル曲「アイナ(ふるさと)ふくしま」に合わせて踊りを披露。 児童らもフラダンスの手の動きの手ほどきを受けた。 (asahi = 5-18-13)


起き上がりムンク、叫び中 予約殺到 2 カ月待ちも

【金川雄策】 ノルウェーの画家ムンクの代表作「叫び」をモチーフにした「起き上がり小法師(こぼし)」、その名も「起き上がりムンク」が、生産が追いつかないほどの人気ぶりだ。 野沢民芸品製作企業組合(福島県西会津町)では、デザイナーや職人が絵付け作業に追われている。

ムンク生誕 150 周年を記念し、スカンジナビア政府観光局が同組合に依頼したのがきっかけ。 盗まれても元の美術館に帰ってきた「叫び」を、倒しても起き上がる福島県の伝統工芸品に重ね合わせたという。 (asahi = 5-10-13)


「農業の復興元年に」 福島・広野町

3 年ぶりの田植え始まる

東京電力福島第一原発事故のあと、3 年ぶりに稲作を再開する広野町で田植えが始まった。 3 日は農家の大和田久司さん (63) が、約 1 ヘクタールの田んぼに田植え機を巡らせた。 放射線量が基準値を超えたものを流通させないよう、コメは全袋検査の対象となる。

広野町の稲作は、国による作付け制限や町からの自粛要請が続いたが、昨年の実験栽培で収穫されたコメが全て基準値(1 キロあたり 100 ベクレル)を下回ったため、再開が決まった。 ただ、町内の生産者のうち、今年再開するのは 3 分の 1 の 110 戸にとどまる。 大和田さんは田んぼの除染、放射性セシウムの吸収を抑えるカリウム散布などの対策を済ませ、この日の田植えに臨んだ。 「こうやって青空の下に出るのが本当の農家の姿だね。 一生懸命頑張って、今年を農業の復興元年にしたい。」と笑顔を見せた。 (asahi = 5-4-13)


福島の海、コウナゴ漁再開 試験操業、徐々に広がる

【中山由美、笠井哲也】 原発事故から 2 年以上経っても漁の自粛が続く福島県。 北部で昨年から行われている試験操業ではこの春、沿岸に近い海域で主力のコウナゴ漁が再開された。 だが、南部は試験操業にこぎつけられない。

北部の相馬市の松川浦漁港。 夜明け前に出かけた相馬双葉漁協の 50 隻が午前 8 時すぎ、次々戻ってきた。 銀色に光るコウナゴでいっぱいの箱を漁師たちが岸壁にあげていく。 「2 年は長かった。 海に出られるのはうれしい。」 コウナゴ操業委員長の今野智光さん (54) はそう話しながらも手放しでは喜べない。 水揚げ量はほんのわずか。 「原発の汚染水も心配。 やっと第一歩というところだ。」

漁協職員がサンプルを手にプレハブへ急ぐ。 放射性物質を調べる検査室がある。 「検出下限値以下。 大丈夫だ。」 コウナゴは加工場へ運ばれ、塩ゆでのあとボイラーで乾燥させる。 事故前は天日干しもしていたが、今は避けている。 加工が済んだものも検査。 測定が終わったのは夜だ。 翌朝、多くは東京の築地市場へ向かった。 (asahi = 4-29-13)


隔離米、進まぬ処分 福島産、出荷できない 1.7 万トン 業者、風評を懸念

東京電力福島第一原発事故の影響で出荷できなくなった福島県産のコメがたまっている。 「隔離米」と呼ばれ、事故があった 2011 年産を中心にその量、1 万数千トン。 焼却処分するのが国の方針だが、風評被害を心配する施設側が焼却を拒み、処分が進まない。 農家からは「燃やさず、再利用できないか」との声も出ている。 (asahi = 4-25-13)


復興願い八重桜「はるか」植樹 綾瀬さんら福島・白河で

放送中の NHK 大河ドラマ「八重の桜」に出演している俳優の綾瀬はるかさんと西島秀俊さんが 20 日、白河市の市南湖公園で、震災からの復興への願いを込めて八重桜を植樹した。

植えたのは、森林総合研究所が開発、綾瀬さんが命名した八重桜「はるか」。 復興のシンボルとしてのはるかを国内外に広めるプロジェクトの一環で、約 1.5 メートルの若木 1 本を植えた。 順調に育てば、再来年の春には花を咲かせるという。 綾瀬さんは「もうちょっとたくさん植えたかったです」と笑顔。 西島さんは「復興を願う気持ちが世界中に広がっていけばすばらしい」と話した。 (asahi = 4-21-13)


原発避難、「藩主」ら集団移住構想 相馬から広島へ

【逸見那由子】 東京電力福島第一原発事故の被災者が、集団で広島県神石(じんせき)高原町に移住する構想が持ち上がっている。 福島の旧相馬中村藩主家 34 代当主・相馬行胤(みちたね)さん (38) と神石高原町の牧野雄光町長が 11 日に町役場で記者会見し、明らかにした。 20 - 30 家族が関心を寄せ、早ければ夏にも移住が始まるという。 相馬さんは父親の代から北海道に移り住んだが、先祖の故郷・福島県相馬市でシイタケ農園を開くなどして、北海道と福島を行き来してきた。

避難生活を送る人たちから「仕事がない」、「放射能が心配」という声を聞いた相馬さんは、約 1 年前から集団移住を検討。 昨秋、被災地支援に取り組む NPO 法人「ピースウィンズ・ジャパン(東京都)」の代表理事で神石高原町に住む大西健丞(けんすけ)さんの勧めで町を訪ね、先月には妻と 3 人の子どもと一緒に町に引っ越した。 相馬さんの知り合い家族が後に続くことを検討しており、将来的に公募も計画している。 (asahi = 4-16-13)


福島・葛尾の小中学校、避難先で再開 「2 年待ち望む」

【西村隆次】東京電力福島第一原発事故で全村避難が続く福島県葛尾村の小、中学校が 8 日、避難先の同県三春町で 2 年ぶりに再開された。 村にはまだ戻れないが、閉校した中学校の校舎を使い、「葛尾小中学校三春校」として小学生 14 人、中学生 5 人で再出発した。

この日午前、開校式と入学式があり、小学生 1 人、中学生 3 人が入学した。 小学校のただ 1 人の新入生、渡辺さくらさん (6) は、桜色の洋服で登校した。 学校から 7 キロ離れた町内の仮設住宅で暮らす。 父の商店経営、政広さん (37)、母の知子さん (35) は「2 年間、待ち望んだ葛尾の小学校。 入学に合わせて開校してもらえて、うれしい。」と口をそろえた。 (asahi = 4-8-13)


桜のトンネル 2 千本 福島・富岡、9 割は立ち入れず

【笠井哲也】 桜の名所、福島県富岡町の夜(よ)の森地区で 2 千本の桜が花を咲かせた。 東京電力福島第一原発事故から 2 年。 3 月の区域再編で並木の一部は歩けるようになったが、9 割は今もバリケードの向こう側にある。

「夜の森の桜」と呼ばれる。 2.5 キロのトンネルは毎年 10 万人以上の観光客を集めた。 小中学校の通学路でもあった。 原発事故で町の全域が立ち入り禁止に。 町民は全国に散り、毎年の桜まつりも途絶えた。 今年 3 月下旬、放射線量に応じて町は 3 区域に再編された。 並木は南側の約 300 メートルのみ、日中だけ入れるようになった。 (asahi = 4-7-13)


初の戸建て復興住宅完成 広がる喜びと不安 福島・相馬

【佐々木達也】 福島県相馬市の程田(ほどた)明神前災害公営住宅(復興住宅)が完成し、30 日、入居予定者への鍵引き渡し式があった。 国土交通省によると、戸建ての復興住宅としては岩手、宮城、福島の被災 3 県で初めて。 新たな住み家を見て回った入居予定者らは、喜びの半面、将来に不安ものぞかせる。

完成したのは、市営住宅跡地約 9,800 平方メートルに作られた戸建てタイプの 46 戸。 いずれも 2LDK の平屋建て 24 戸と、2 階建て 22 戸だ。 46 世帯約 100 人が生活する。 造成などを含め、総事業費は約 6 億 8 千万円。 鍵引き渡し式には入居予定の 26 世帯約 60 人が出席。 立谷秀清市長が「入居されるみなさん、お待たせしました。 仮設住宅で暮らす方々に、こういう生活が待っていると希望を与えるような暮らしをしていただきたい。」とあいさつした。 (asahi = 3-30-13)


福島県の有機農家ら、東京・下北沢に出店 交流の拠点に

福島県内の有機農家らが 16 日、東京・下北沢にカフェを開いた。 県産野菜や米を使った料理を出し、農産物も販売する。 震災復興に向けて歩む福島と東京の人々とのつながりを生み出す場にしたいという。

店の名は「コミュニティ & オーガニックカフェふくしまオルガン堂下北沢」。 約 60 平方メートルにカフェと米やジュース、みそなどの販売コーナーがある。 食材や販売品は放射能検査をし、その結果を表示する。 16 日は正午から開店セレモニーがあった。 田畑の写真などが飾られた店内は来賓で満員。 「福島の復興に向けた希望の広場に」と抱負が語られた。 (asahi = 3-16-13)


小さな神社で新年の願いを 福島・南相馬、津波から再建

大震災による津波で、一帯が更地になってしまった福島県南相馬市の原町区下渋佐にある八坂神社で 1 日、周辺に住んでいた人々が、再建された小さな社に初もうでに訪れた。 海が目の前に広がるこの地区では、津波で多くの住宅が損壊、流失し、神社も流された。 地元の人によると、昨年 9 月に新しい社と鳥居が贈られ、再建された。 (asahi = 1-1-13)


綾瀬命名「はるか桜」大河舞台福島に植樹

綾瀬はるか (27) が新種の「桜」になった。 24 日、都内で行われたイベント「元気を咲かそう! ふくしま大交流フェア」に、NHK 大河ドラマ「八重の桜(来年 1 月 6 日スタート、日曜午後 8 時)」の共演者とともに出席。 今年 4 月に福島県の佐藤雄平知事を表敬訪問した際に贈呈した新種の八重桜の命名式も行われた。

綾瀬は、照れ笑いをこらえながら名前が書かれた巻物を開いた。 「はるか」の文字が見えた瞬間、会場にはどよめきが起こった。 綾瀬は「え〜、『はるか』です」と発表。 理由を聞かれる前に「自分の名前にしようと思ったわけではなく、はるかかなたの未来にまで(桜が)広がっていってほしいという意味を込めて …、自分の名前にしました」と説明。 「がんこ桜」という案もあったが、却下されたという。

大河ドラマでは、福島県会津若松市出身の新島八重を演じる。 4 月に福島県庁を表敬訪問した時、震災復興へ歩みを進める同県民に「見てくださる方が、少しでも頑張ろうって思っていただけたら。 そういう力になれたら。」と新種の桜を贈った。

「八重の桜」を制作する NHK が、被災地福島に何かできないかと模索。 偶然にも同時期に林野庁が所管する森林総合研究所が、新種の桜を開発中だったため今回の企画が浮上した。 綾瀬の手から福島県に渡った「はるか桜」だが、冬の福島の気温では育たないため現在、東京・八王子市内に植えられている。 NHK 内藤慎介プロデューサーは「来年春には福島で植樹式ができれば」と話した。

「はるか桜」が花を付けるのは 10 年後。 綾瀬は「1 本もらって家で育ててみたいな」と話し、親心が芽生えた様子だった。 (三須一紀、日刊スポーツ = 12-25-12)


復興へ、水耕レタスすくすく 福島・川内で試験栽培中

【川村直子】 福島県川内村で、レタスの水耕栽培が試験的に始まっている。 東京電力福島第一原発事故で被災した地域の再生がねらい。 飲用の地下水を使い、赤や青の人工光で栽培する。 役場近くに設置されたコンテナの中で、600 株がすくすくと育つ。 警戒区域が今春に解除された村では、村民の多くが従事していた原発関連労働に代わる雇用の場をつくるため、放射性物質の影響を受けない水耕栽培の工場建設を計画。 来年 4 月からの本格稼働をめざしている。 (asahi = 12-23-12)


大槌復興食堂、決意の 1 周年 住民手作り、自立へ正念場

【東野真和】 東日本大震災で壊滅的被害を受けた岩手県大槌町で、地元の住民が立ち上げた「おらが大槌復興食堂」が 11 日でオープンから 1 年を迎える。 被災者の雇用、全国から訪れる人やボランティアの交流の場など多様な役割を担い、復興の先駆けとなってきた。 2 年目に入るいま、「自立」に向け正念場を迎えている。

「夢を語り合い、走り出してからもう 1 年です。」 9 日、岩間美和(よしかず)店長 (44) は、昼食に立ち寄った大手流通・イオングループの視察団にあいさつした。 50 人ほどが入れるプレハブの食堂は、家の基礎ばかりになった市街地の中で活気をみなぎらせる。 (asahi = 11-10-12)


国宝・阿弥陀堂、復興の輝き 福島・いわき

東日本大震災で被災した福島県いわき市の国宝・白水(しらみず)阿弥陀堂が 9 日夜、ライトアップされた。 国の史跡でもある庭園で、モミジ、カエデなどの紅葉やお堂が闇に浮かび上がった。 震災で国指定重要文化財の本尊、阿弥陀如来像などが破損し、本堂も被害を受け、年間 10 万人いた拝観客が昨年は 10 分の 1 ほどに激減。 修復が終わり客が戻り始めたことから、弾みをつけようと地元の企業などが企画した。 この日は試験点灯で、ライトアップは 10 日から 20 日まで。 (asahi = 11-10-12)


福島に「復興本社」設立 = 来年 1 月に 4,000 人規模 - 東電

東京電力が、福島第 1 原発事故の賠償や除染などの業務を行う機能を本社から福島県に移管し、来年 1 月にも「福島復興本社(仮称)」を設置する方向で検討していることが 3 日、明らかになった。 現在の福島関連業務の担当者約 3,500 人に加え、新たに 500 人程度を派遣し、人員は全社員の 1 割超に当たる 4,000 人規模に達する。 来週発表する新たな経営方針に盛り込む。

現在は賠償や除染などを本社主導で行っているが、新たに設ける福島復興本社に権限を移し、地元住民や自治体の意向をより的確に反映させることができるようにする。 トップには副社長級の幹部を充てる。 福島県などと調整した上で最終決定する。 (jiji = 11-3-12)


復興支援、会津若松でランドセル生産 東京の会社が進出

かばん製造・販売会社の「羅羅屋(ららや、本社・東京都品川区)」が、今年 8 月に福島県会津若松市に建設した工場で、来春の新 1 年生向けのランドセルの生産が最盛期を迎えている。

羅羅屋は埼玉県川口市にも工場があるが、震災の復興支援のため、会津若松市にも進出した。 従業員 28 人のうち 23 人を地元から採用。 来年 3 月までには約 7 千個のランドセルを生産する予定だ。 同社営業部の北宏志さん (29) は「会津若松市で生産されたランドセルが全国に初めて出荷されます。 地元に根付く工場になって欲しい。」と話した。 (asahi = 10-27-12)


警戒区域の試験田で稲刈り 福島・大熊「再生の一助に」

【石毛良明】 東京電力福島第一原発事故で警戒区域に指定されている福島県大熊町の試験田で 10 日、栽培された稲の刈り取りがあった。 汚染度合いが高い田んぼで稲がどのくらい放射性セシウムを吸収するかを確かめ、将来の再生に役立てるのが目的だ。 試験田は大熊町役場のそばで、第一原発から約 6 キロ。 白い防護服を着た町職員らが鎌で稲を刈り、束ねた。 2 週間ほど乾燥させ、玄米で放射線量を測る。

町は今年 6 月、4 メートル四方の 2 区画にコシヒカリを植えた。 一つは表土 5 センチをはぎ取って除染し、もう一つはそのまま。 地上 1 メートルの線量は、除染した田が毎時 5.2 マイクロシーベルト、除染していない田が同 7.6 マイクロシーベルトだった。 田を管理している町職員松本清之さん (35) は「何年後、何十年後になるか想像もつかないが、大熊に戻って農業を続けたいという町民の手助けになれば」と話す。 (asahi = 10-11-12)


果樹王国福島、復活に手応え 除染徹底で価格戻る

全国有数の果樹産地である福島県内で、モモや日本ナシなどの果物が出荷ピークを迎えている。 昨年は福島第 1 原発事故による放射線への不安から価格が大幅に下落したが、樹木の除染を徹底した今年は放射性物質がほぼ不検出に。 安全性を強調できたことで価格はモモで事故前の 8 割、日本ナシで事故前の水準に戻った。 ただ、風評被害が残る贈答品は回復が遅れている。 (nikkei = 9-7-12)


除染・健康管理に IAEA が協力 福島県と合意

欧州を訪問中の佐藤雄平福島県知事は 31 日、ウィーンの国際原子力機関 (IAEA) 本部で天野之弥(ゆきや)事務局長と会談した。 佐藤氏は会談後、東京電力福島第一原発事故後の除染や住民の健康管理について、IAEA と福島県が共同プロジェクトに取り組むことで合意したと明らかにした。

佐藤知事によると、天野氏は「福島の事故は世界全体の問題だ」と発言。 共同プロジェクトの詳細は今後詰めるが、IAEA が除染や健康管理の専門家を現地に派遣することなどが想定されるという。 佐藤知事は「IAEA の協力を得られ、福島県民も安心する」と記者団に語った。 IAEA は今年 12 月、日本政府との共催で原子力安全に関する国際会議を福島県で開く。 天野氏も福島入りする予定で、その際にプロジェクトについても協議するとみられる。 (ウィーン = 玉川透、asahi = 9-1-12)


屋内遊び場、福島に続々 砂場・水遊び … 公園代わり

福島県内でこの夏、「屋内遊び場」のオープンが相次いでいる。 砂場やジャングルジム、ボールプールに乳幼児コーナー。 原発事故の影響で、今も外遊びがままならない子どもたちにとって、貴重な公園代わりになっている。 水遊びのできる砂場に、敷き詰められた緑の人工芝、天井の壁紙には青空に浮かぶ白い雲 …。 (asahi = 8-21-12)


福島県で唯一開設の海水浴場が終了 来客は震災前の 4%

震災から 2 年ぶりに福島県内でただ一カ所開かれていたいわき市営の勿来海水浴場が 12 日、28 日間の開設期間を終えた。 背後地の津波被害が少なかったことなどからオープンに踏み切ったが、客足は暫定集計で 8 千人ほどと、震災前の約 4% にとどまった。 (asahi = 8-13-12)


福島、仕事あっても働けない あきらめきれぬ帰還

原発事故で避難を強いられる福島県の被災者たちが、仕事を見つけにくい状況に置かれている。 復旧工事などの需要から、統計上は求人数が増えているが、生活の先行きが見通せないため、避難先で定職に就きづらい事情がある。 7 月 31 日に発表された 6 月の有効求人倍率(季節調整済み)は福島県で 1.01 倍となり、19 年ぶりに「1」を超えた。 求人数は前年同月より 34.2% も増加。 ただ、復旧工事や除染で人手が足りない建設業や介護福祉関連の仕事が多い。

東京電力福島第一原発に近い福島県浪江町に住んでいた岡田利典さん (51) は、避難先の同県本宮市の仮設住宅で母親 (83) と暮らす。 同県富岡町の縫製工場に勤めていたが、警戒区域となり、工場は休業したままだ。 岡田さんは昨年夏、仮設住宅に近いハローワークで、メーカーの求人を見つけた。 面接に行くと、こう言われた。 「住民票は浪江町のままですね。 就職するなら、こちらに完全に引っ越す覚悟を決めてほしい。」 その決断は簡単ではない。 就職を見送った。

「ハローワークは、求人がたくさんあるから働けと促す。 一方、町は浪江に帰ろうと呼びかけている。 避難先で定職に就くと、帰還をあきらめないといけない。 どうしたらいいのか ・・・」。 岡田さんは悩む。 (大月規義、asahi = 8-11-12)


「原発にはもう頼らない」 福島の農家、太陽光で生産

福島県三春町の農家の女性 6 人で作る「芹沢農産加工グループ」が太陽光発電による電気を冷凍庫や保管庫、もちつき機に利用し、農産加工品を生産している。 東北電力の原発は再稼働していないが、「原子力発電にはもう頼らない。」 そんな心意気を原発事故の影響に苦しむ福島から示す。

グループ代表の会沢テルさん (71) は「原発事故で一瞬にして、私たちの食に対する安全は否定された。 原発に頼らない生活をしたい、と太陽光の利用を考えた。」と話す。 太陽光発電の施設建設費は約 100 万円。 通常価格の 3 分の 1 といい、原発事故後、町の農業女性と農業再生に取り組んでいる「福島・農と食再生ネットワーク(西沢江美子代表)」が支援金やカンパを集めて協力した。 (asahi = 7-17-12)


海開き:ビーチに歓声、2 年ぶりに 福島・勿来海水浴場

福島県いわき市の勿来(なこそ)海水浴場で「海の日」の 16 日、海開きがあり、若者や家族連れの歓声が 2 年ぶりに戻った。 福島原発事故の影響で昨夏、同県内のビーチはすべて閉鎖されたが、同原発の約 60 キロ南にある同海水浴場は今季、海水の放射性物質などの検査で安全性を確認し、県内で唯一再開した。

海開き式では、渡辺敬夫市長や地元の子どもたちがテープカット。 市内から 2 人の息子ら家族 4 人で訪れた佐藤美由紀さん (37) は「去年は海に行けなかった分、子どもたちははしゃいでいる。 県内の他の海水浴場も早く元に戻ってほしい。」と話した。 市は放射線量を毎日測定し場内に掲示する一方、津波などの避難路確保のために砂浜に海の家や売店を置かないなどの「安全対策」をとっている。 茨城県境にある同海水浴場は福島県内最大規模で、震災前の来場者は約 18 万人。 (中尾卓英、mainichi = 7-16-12)