フジ第三者委、中居正広さんから女性への「性暴力があった」と認定 元タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルをめぐって問題視されているフジテレビの一連の対応をめぐり、同社と親会社のフジ・メディア・ホールディングス (FMH) が設置した第三者委員会(委員長・竹内朗弁護士)が 31 日、調査報告書を公表した。 業務の延長線上と指摘 中居さんによる女性への「性暴力による被害があり、重大な人権侵害があった」と認定し、業務の延長線上にあったものと指摘した。 (asahi = 3-31-25) フジ・メディア HD、業績見通しを下方修正 売上高 501 億円減に フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングス (FMH) は 30 日、それぞれ定例の取締役会を開き、元タレントの中居正広さんの女性とのトラブルに端を発する一連の問題を受け、FMH の 2025 年 3 月期決算の見通しを大幅に下方修正した。 FMH の発表によると、昨年 5 月の予想と比べて、フジの放送収入全体で 233 億円の減収。 FMH 全体の純利益は 192 億円減の 98 億円と見通す。 主な要因は一連の問題で、フジが CM 料金の請求を自主的に取りやめたことだという。 FMH の売上高は不動産事業の売り上げが下回ることなども影響し、501 億円減の 5,482 億円と予想している。 週刊文春の訂正にも言及 1 月中旬以降、大手企業を中心に CM を公益社団法人 AC ジャパンの公共広告に差し替える動きなどが相次ぐ。 企業側からは今後の CM 出稿をキャンセルしたいとの要請があったことを受け、キャンセル分に加え、AC への差し替え分についても広告料金を請求しない方針も明らかにした。 30 日の取締役会後、フジの清水賢治社長は報道陣の取材に応じ、FMH の社外取締役 7 人が 27 日にガバナンスの立て直しや信頼回復のために要望していた「経営刷新小委員会」の設置を明らかにした。 取締役会の下に設け、社外取締役が検証や提言を行うという。 清水社長は、中居さん問題の契機になった会食へのフジ社員の関与について、内容を一部訂正した週刊文春へも言及。 17 日のフジの一度目の記者会見より前に、週刊文春は誤りを把握していたことから「なぜあのタイミングで(訂正を)出したのかが一番疑問に思った」とし、「きちんとした対応が必要なのではないか」と述べた。 同誌編集部は 28 日、フジ社員の関与にかかわる内容の一部を訂正し、謝罪していた。 (堀越理菜、岩沢志気、asahi = 1-30-25) フジ港社長、嘉納会長が辞任 日枝氏の進退発表なし 会見 10 時間超 フジテレビは 27 日、嘉納修治会長と港浩一社長が同日付で辞任した、と発表した。 元タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルに端を発した一連の問題の責任を取るという。 フジは同日、東京・台場のフジ本社で臨時取締役会後に会見を開き、両氏が辞任を報告。 「(トラブルは)人権侵害が行われた可能性のある事案」などと述べ謝罪した。 批判を浴びた前回会見から一転、会見には大勢の報道陣が詰めかけた。 休憩を挟んで 10 時間 23 分にわたって行われ、28 日未明まで続いた。 後任のフジ社長には、親会社であるフジ・メディア・ホールディングス (HD) の清水賢治専務が 28 日付で就任する。 会見で港社長は、フジの番組に出演していた中居さんのトラブルについて「人権侵害が行われた可能性のある事案」と言及。 これに対する対応に「至らなかった点があると痛感している」と述べ、「私自身が人権への認識が不足していたこと、そのことで、会社全体のガバナンスを十分に機能させることができなかった」と謝罪した。 トラブルの契機とされる食事会については、社員の関与を改めて否定。 ただそれ以前に、中居さんと女性、社員が同席したバーベキューがあったことは確認しているとし、こうした点については第三者委員会に調査をゆだねるとした。 一方で、役員の進退を巡っては、約 40 年にわたり経営陣にとどまり、現在はフジサンケイグループ代表であり、フジと HD の両社で相談役を務める日枝久氏の責任を問う声も出ていたが、進退に関する発表はなかった。 会見ではその点も問われたが、遠藤龍之介・フジ副会長は、トップ交代後の経営体制は「あくまでも暫定的なもの」と強調。 第三者委員会の調査結果が出る時期を一つの区切りに「それぞれの役員がそれぞれの責任を取るべきだというふうに思っておりまして、それは常勤役員全員に波及する」と述べるにとどめた。 親会社の HD 社で、嘉納氏は会長、港氏は取締役を務めているが、いずれも 27 日付で退任した。 フジを巡っては、中居さんのトラブルを 2023 年 6 月に把握しながら、中居さんの番組の放送を約 1 年半継続した対応に批判が出ていた。 また、そうした対応を説明するため今月 17 日に開いた会見で、参加メディアを限定し、動画撮影を禁止した点にも批判が噴出。 企業が自社 CM の放送を差し止める動きも拡大し、23 日にフジが開いた社内向け説明会では、社員から経営陣の退陣を求める声も出ていた。 (asahi = 1-27-25)
日枝氏 37 年君臨のフジ 異例の統治構造、カメラ追い出した末の窮地 注目された先週のフジテレビの記者会見で、ひとつの質疑が目にとまった。 今回の件について日枝氏に相談しているか。 そう聞いた記者に対して、港浩一社長 (72) はこう答えた。
社長や会長を歴任した日枝久氏 (87) はいま、フジと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(フジ HD)両社で取締役相談役を務める。 元トップとはいえ、もはや代表権を持つわけでもない人物だ。 今どき大手企業の不祥事にかかわる会見で、こうしたやりとりが交わされるのは異例だろう。 1988 年に 50 歳で初めての生え抜き社長になって以来、日枝氏は 37 年にわたりフジに君臨してきた。 フジ HD を売上高 5,664 億円のリーディングカンパニーに押し上げた立役者でもある。 そしてその同社が今、タレントの中居正広氏が起こしたトラブルに端を発して、大きな逆風にさらされている。 港社長の責任は重いし、今回の一連の判断に日枝氏が関わっているかは明らかではない。 とはいえ、この?末はフジ特有の統治構造と無縁なのだろうか。 いまも影響力
かつて長く日枝氏に仕えた元側近に話を聞くと、そう切り出した。 ひとつの人事が例に挙がる。 いまフジ会長を務める嘉納修治氏 (74) は、2017 年の会長就任後、19 年に関西テレビ会長に転出。 昨年再びフジに戻った。 「自ら系列局へ異動する会長は普通いませんよね。 人事権を持っているのは誰なのか、ということなんです。」 バラエティー畑出身の港氏が、上がりポストと目されていた子会社の共同テレビジョンから 3 年前にフジ社長として呼び戻されたときも、社内外に驚きの声が広がったそうだ。 枢要な案件になると日枝氏に報告が上がり、その意向で会社が動いた。 評価されていた人でも意見を言うと疎まれ、立場を追われるのを幾度となく見てきたと元側近はいう。 フジの遠藤龍之介副会長は 23 日、報道陣の取材に応じた際、こう述べた。 「すごく、すべてのことを日枝が決めているというふうに言われるんですけど、実はそんなことは本当にないんですよ。 ただ、やっぱり影響力があることは間違いない。」 フジ HD は 23 年、経営課題全般や取締役の選任・解任などについて取締役会に助言する組織として経営諮問委員会を設置した。 このメンバーにも、社外取締役や嘉納会長とともに日枝氏が名を連ねている。 「87 歳のトップが長く権力を持ち、いまの社長のような人物が外向きには上に立つ。 そうした構造が今回のようなガバナンス不全を招く要因になっているのではないか。」と元側近は見る。 当初の対応への疑問 別のキー局で危機管理に携わってきた幹部は、フジが今回のトラブルを認識した後に中居氏側の「話を聞いた」ものの、「調査というスタンス」ではなかったと説明したことに驚いたそうだ。 仮に業務と直接関係のないトラブルだとしても、中居氏はフジの重要な取引先だ。 忖度して女性を守らなかったと言われかねない。 ましてや、ジャニーズ問題もあって世間の目は厳しくなっている。 「相手が大物ならなおさら、勝負しないと会社がつぶれます。 そういう類いの案件なのは明白で、調査もせずに番組に起用し続けるのは、私はちょっと考えられません。」 しかもフジ HD は外国人保有株の割合が多く、中には「物言う株主」として知られる米投資ファンドもいる。 なのに、フジは日ごろから妙に危機感が薄いと他局では話題になっていたそうだ。 「ガバナンスの欠如は株主に特に攻められやすい。 なぜこうなったのか本当に不思議です。」 テレビの心髄 日本テレビや TBS に遅れて開局したフジの転機の一つに、1985 年の日航ジャンボ機墜落事故がある。 テレビで唯一、生存者が救出される場面の生中継に成功。 重さ 100 キロの機材を分解し、5 人で 4 時間の山道を担ぎ上げて実現させた。 この年の新聞協会賞も受賞。 バラエティーなどで黄金時代を築くなか、報道機関としても評価を高めた。 たとえ現場から遠く離れていても、テレビ画面を媒介として、視聴者が息を詰めて現場を見守っている。 当時のフジ幹部は「これこそテレビだ」と書き残した。 映像や生中継の力を知り尽くし、それを支えに生きてきたはずのテレビ局が今回、記者会見場からテレビカメラを追い出した。 女性のプライバシーへの配慮が必要な案件で、不測の事態に備えての難しさはあったのかもしれない。 だが、この局面で会見への参加を一部の新聞などに限定したら、結果がどうなるかは火を見るより明らかだったはずだ。 テレビ局が自己否定をしてまでも守りたかったものとは、いったいなんなのだろう。 (田玉恵美、asahi = 1-25-25) 万博協会、フジテレビへの CM 出稿見合わせ イベントは中止含め検討 元タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルにフジテレビ幹部社員の関与があったと報じられた問題で、大阪・関西万博を主催する日本国際博覧会協会は 24 日、フジへの CM 出稿を当面見送ると明らかにした。 万博開幕後に予定していたフジが関係するイベント 2 件の中止も検討しており、今後、同社の調査結果を受けて最終判断するという。 万博協会によると、4 月 13 日の開幕前後から万博を PR する CM の出稿を検討。 会期中にはフジが関係する音楽イベント 2 件が予定されていた。 万博協会はすでに CM 出稿を見送る意向をフジに伝え、事実関係の早急な解明を求めたという。 (岡純太郎、asahi = 1-24-24) 大ガスと関電、フジテレビ系列局の CM 差し替え 「総合的に判断」 大阪ガスは 24 日、関西テレビ放送(カンテレ)の番組で流している自社の CM をすべて公益社団法人 AC ジャパンの広告に差し替える方針を明らかにした。 中居正広さんと女性とのトラブルに端を発したフジテレビの問題が、系列局のカンテレにも波及したかたちだ。 大ガスの担当者は差し替えの理由について、「報道の情報や世の中の動向をみて、総合的に判断した」としている。 24 日付で決定し、契約している CM 枠については 25 日以降、順次 AC ジャパンの広告に差し替える。 関西電力も、フジテレビ製作の番組で、カンテレで流す自社 CM を、順次、AC ジャパンに差し替えるという。 関電の担当者は「コンプライアンス(法令順守)の重視の観点と一連の報道から、総合的に判断した」と話した。 (森下友貴、asahi = 1-24-25) フジテレビ労組、組合員が急増 専務が労組とのやり取りで辞意表明 タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルにフジテレビ幹部社員の関与があったと報じられた問題を受け、フジの労働組合の組合員が急増している。 フジ労組によると、先週始めは 80 人ほどだったが、23 日時点で、500 人を超えたという。 また、複数の関係者によると、21 日に人事担当の川島徳之専務が労組とのやりとりの中で、問題の道筋がついたら辞任する意向を示したという。 組合員急増の背景には、社員がフジ執行部への不満を募らせている状況がある。 一連の報道をめぐり、フジは 17 日に記者会見を開き、港浩一社長が、説明の遅れなどを謝罪。 ただ、会見で設置を公表した調査委が、日本弁護士連合会が定める第三者委の要件を満たさないことや、参加者を限定するなどした会見のあり方に批判が集まった。 企業の CM 見合わせが相次ぐなど影響が広がっている。 会見への批判は、社内からも噴出。 若手社員を中心に会社の先行きに不安を抱いているという。 会見後に労組に入ったという別の局員は、「現場は対応に追われている。 会社は危機感をもって、生まれ変わってほしい。」とこぼしていた。 (堀越理菜、asahi = 1-23-25) 米ファンド、フジに 2 通目の書簡 「週内に TV カメラ入れて会見を」 タレントの中居正広さんによる女性とのトラブルで、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが、フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングス (HD) に、テレビカメラを入れた会見を週内に開くことなどを書簡で求めたことが 21 日、分かった。 日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置も求めた。 ダルトンと関連会社は今月 14 日に、フジ側に第三者委員会での調査などを求める書簡を送っており、一連の問題での書簡は 2 通目。 フジテレビの港浩一社長らは 17 日に記者会見を開いたが、参加できたのは一部の報道機関で、テレビ取材は認めず、港社長は多くの質問に答えることができなかった。 ダルトンはこうした点を問題視。 「疑問が残った」と指摘し、「衝突事故に他ならなかった」と批判した。 「信頼を回復するどころか、正反対の効果をもたらし、評判を傷つける結果になった」とした。 その上で、週内にテレビカメラを入れ、すべてのメディアが参加できる会見を開くよう求めた。 17 日の会見でフジテレビは、弁護士を中心とした調査委員会を設けることを表明したが、「現時点では日弁連のガイドラインに基づく第三者委ではないと思う(石原正人常務)]としていた。 ダルトンはフジ側に対し、会社から独立した委員のみで構成することなど日弁連のガイドラインを列挙。 これに沿った第三者委員会の設置を要求した。 調査対象は「中居さんに限定されるべきではない」としたほか、「今年 6 月の株主総会の少なくとも 1 カ月前」までに調査結果と最終報告書を公表するべきだと主張した。 ダルトンは「物言う株主」として知られ、グループでフジ・メディア HD の株式の 7% 以上を保有しているという。 ダルトンは「取締役会はこの問題に責任を負っている」、「株主総会は必然的に、取締役会の能力と誠実さへの投票になる」とも指摘し、適切に対応するよう求めた。 (ニューヨーク・真海喬生、asahi = 1-22-25) フジテレビへの CM 差し止め、30 社超に広がる イオンやキリンなど 企業がフジテレビでの自社 CM の放送を差し止める動きが広がり、朝日新聞の調べでは少なくとも 30 社以上にのぼっている。 タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルにフジテレビ幹部社員の関与があったと報じられた問題を受けての対応だ。 多くの企業がフジテレビで自社 CM を流すのをやめ、代わりに公益社団法人 AC ジャパンの CM を放送することを決めている。 イオンは 21 日から CM を差し止める。 理由については「(先日のフジテレビの)会見に関して、当社としては十分な説明とは認識することができなかったため」とした。 今後は「事実が明らかになってフジテレビの改善に向けた体制が整うなど、総合的に判断が可能となった時点で再開を検討する」という。 20 日から CM をやめると発表したキリンホールディングス (HD) は「企業の社会的責任として、全てのビジネスパートナーに当社の人権方針の理解と順守を求めている」とした上で、「(フジテレビで)必要な調査が十分に行われ、事実が明らかにされた上で、適切な対応がなされるまで同社に対する広告出稿を停止する」とした。 日本メナード化粧品も CM を取りやめたといい、「報道されている内容は重大な人権、コンプライアンス、ガバナンスの問題を含んでいると考えた。 調査委員会の調査結果やフジテレビの対応状況を注視したい」とした。 セブン & アイ・ホールディングスは 20 日午後の放送分から当面の間、自社 CM をやめる。 広報によると、一連の報道を受けて「総合的に判断した」という。
花王は情報番組「めざまし 8」など五つの番組に出してきた CM を、原則として 18 日放送分から中止している。 「企業活動全体を通じた人権尊重」を掲げる同社の人権方針などにのっとり、総合的に判断した。 今後再開するかどうかなどは、フジテレビ側の調査・検証の結果などを踏まえて決めるという。 NTT 東日本は、18 日から自社 CM を差し止めしている。 「一連の報道内容をふまえて総合的に判断した」としている。 第一生命保険は 20 日から、スポンサーを務める番組「R4 Street Dance」の CM を当面の間差し止める。 日本生命保険傘下のはなさく生命保険も、「めざまし 8」に出稿している CM を 21 日分から AC ジャパンの広告に差し替える。 CM 放映をやめたある大手企業の幹部は、海外投資ファンドの動向を理由に挙げた。 米投資ファンドのダルトン・インベストメンツとその関連会社は 14 日、フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングスの取締役会に対し、調査や信頼の回復を求める書簡を送付したと明らかにした。 この幹部は「米国の機関投資家が『問題だ』と言ったことが大きかった。 世界はそう見ているよなと。 日本の中の考え方だけで正常か、異常かと判断するのはよくない。 こちらも株主に説明ができない」と話した。 別の企業の広報担当者は CM の再開時期について、「調査委員会による調査結果の公表が一つのめどになる」と話すが、結果が納得できるものになるかはわからない。 今後はフジテレビの対応と、世論の動向を見て再開を判断していくことになるという。 (asahi = 1-20-25) 「やらないほうが …」フジ社内で広がる幻滅 CM 撤退、会見で加速か タレントの中居正広さん (52) が起こした女性とのトラブル報道に端を発した問題は、30 社超の企業がフジテレビでのCMの放送を差し止めるまでに広がった。 問題の焦点は、フジのガバナンスや経営問題にも及ぶ。 17 日に行われた社長会見には社内外から批判の声が上がっている。 大手広告会社の幹部によると、風向きが完全に変わったのが、17 日のフジの港浩一社長の会見だった。 外部弁護士を中心とする調査委員会の設置を会見で発表。 調査を委ねるとして、質問には「調査に関わることなので回答を控える」と繰り返した。 加えて、フジは 2023 年 6 月に被害状況を把握していたが、中居さんのレギュラー番組の放送を続け、スポンサーには一切知らせていなかった。 「3 回の改編時期も、何事もなく続いていた。 おかしいだろう。」という反発が、業界内に広がったという。 幹部「やらないほうがよかった」 番組に不祥事があった場合の大半は、その番組の CM だけが、差し替えられるなどしてきたが、今回は番組単位ではなく、局の全てのタイムテーブルからスポンサーが撤退の動きを見せるという異例の展開だ。 フジ局内でも「会見で状況が悪化した」という受け止めが多い。 幹部の一人は「結果論だが、やらないほうがよかった。 悪循環を断ち切るために、次の説明の機会では真摯に向き合うしかない」と話し、ある社員は「会見前から、きちんと説明ができるのか、不安の声があった。 調査委の概要すら説明できず、幻滅している」とこぼす。 現状について、別の幹部は「経営全体への影響も、どんどん深刻な状況になっている。 存亡の危機だ。」ともらす。 フジテレビの 2024 年 3 月期の売上高は 2,382 億円。 このうち、CM 枠の販売による広告収入が 1,473 億円で 6 割を占める。 ただし、現時点では AC ジャパンの CM が流れても、広告料金はテレビ局に支払われるという。 フジ関係者によると、深刻な影響が出るのは、4 月以降の番組だ。 先週、春の番組改編に伴う広告会社向けの説明会があったばかり。 問題が直撃したのは、4 月期の広告セールスが始まるタイミングだった。 この幹部は「大変なことになる」と話し、「雰囲気を変えられるとすれば、調査委員会の発表内容だ。 ターニングポイントにしたいのだが …。」 「会見やり直し」署名も フジテレビの姿勢を問う動きは企業にとどまらない。 オンライン署名サイト「Change.org (チェンジ・ドット・オーグ)」では 19 日から、「メディアに携わる人間として看過できない」などとして、フジテレビの会見やり直しなどを求める署名が始まった。 発起人は琉球新報編集委員の南彰氏。 20 日午後 7 時半時点で署名数は 2 万を超えた。 呼びかけでは、出席者が放送取材の記者会に加盟する新聞・通信社やスポーツ紙に限られたことなどを踏まえ、「このような不公正な記者会見をメディアが自ら行っていたら、政治家や大企業などが記者会見を制限したり、説明を拒んだりしたときに、異議を唱え、是正させていくことができなくなります」などとしている。 今回、フジテレビの会見後に自社 CM を公益社団法人 AC ジャパンの CM に差し替える企業が目立ったことについて、広告会社の関係者は「AC への差し替えはかなり重い。普通は、事故や自然災害、もしくは自分たちが不祥事を起こした時くらいしかやらない」と明かす。 広告とメディアの関係を研究する関西学院大の難波功士教授は「会見は世間の疑問にこたえられておらず、より問題を深刻化させた。 スポンサー企業側は今回の対応で『本気だ』という姿勢を世間に明確に伝えようとしているのではないか」と指摘。 「テレビが大きな力をもっていた時代とは変わったということを(フジは)感知できていないように映る。」と話す。 (堀越理菜、編集委員・後藤洋平、滝沢文那、中村英一郎、浅沼愛、asahi = 1-20-25) |