コロナ対策の持続化給付金 不支給取り消しを 全国 89 事業者が提訴 新型コロナウイルス対策の持続化給付金をめぐり、要件を満たすのに不支給の決定を受けたとして、全国の個人事業主や中小企業の 89 事業者が 15 日、国に決定取り消しや不支給となった給付額相当の計約 9 千万円の損害賠償を求める訴えを、東京地裁に起こした。 持続化給付金は、事業に継続性があり、前年同月比で売り上げが半減した場合に支給される。 訴状によると、原告は昨年 9 月以降、税理士を通じて確定申告書などの必要書類を提出したが、理由も明かされないまま不支給となったという。 原告「お金より不公平さ訴えたい。」 申請手続きの中では、振り込みが分かる通帳の写しなどの追加提出を求められたが、収入を現金で受け取っている事業者は用意できなかった。 原告側は「追加資料は本来必要ない。 要件を満たすのに不支給決定をしたのは法の適用を誤っており違法。」と訴えている。 原告側は、給付金事業の事務局が同月に交代したのを機に不支給決定が急増したとも指摘。 それまでは原告と同じ取引先から収入を得ている事業者が支給決定を受けた場合もあるといい、法の下の平等を定めた憲法 14 条に違反すると主張している。 原告の一人で提訴後に会見した飲食店経営の山田晃靖さん (36) = 愛知県 = は 100 万円を申請したが、認められなかった。 山田さんは「必要な書類をそろえたのにどうして不支給なのか理由も分からない。 お金よりも不公平さを訴えたい。」と強調。 「国の要請に従って真面目に営業を自粛し、売り上げは赤字になった。 国にはきちんと補填してほしい。」と求めた。 弁護団は「不正受給は許されないが、支給されるべき人が支給されないのはより許されない」と語った。 中小企業庁は「訴状が届いていないのでコメントは控える」とした。 (村上友里、asahi = 9-15-21) ウェブ面接で「全身見せて」 就活セクハラ横行、対策は 採用面接やインターンシップなどの場で、学生へのセクシュアルハラスメントがあとを絶ちません。 就活生の 4 人に 1 人が被害者という調査結果もあります。 実態をもとに、「就活セクハラ」の被害に遭ったらどう対応すべきかを考える動画を学生がつくりました。 相談例もとに動画制作 「あなたの第一印象はスタイルがいい。」 女子大学生は、面接担当の男性社員からの言葉に息をのんだ。 入社面接の場で、もう 1 人の面接担当者が電話のため席を外した直後だった。 「きっと男性からモテるタイプですよね。 椅子から立って全身を見せていただけますか?」 「後ろ姿も見せてもらえますか?」 金城学院大学(名古屋市)の 4 年生、町田美穂さん (21) が昨年つくった就活セクハラの啓発動画の一場面だ。 就活セクハラの相談にのる日本ハラスメント協会代表理事の村嵜(むらさき)要さんに協力してもらい、相談の具体例と学生に向けた助言を盛り込んだ。 社会課題の解決に取り組む授業の一環だった。 「これから就活をする後輩たちに、これ以上、被害に遭ってほしくない」との思いを込めたという。 オンライン面接でも 新型コロナ禍で広がったオンライン面接でも、セクハラは起こる。 動画はこんな事例も紹介している。 自宅からのウェブ面接にのぞんだ女子学生に対し、面接担当の男性が言う。 「女性らしくない、ちょっと汚い部屋だ。 もう少し部屋を女性らしく、きれいにした方が印象がいい。」 さらに「ウェブカメラを動かして部屋の奥のほうも見せていただけますか。」 「(学生の)違う雰囲気も見たい。 次の面接は部屋着で。」と求められたケースも。 「部屋が広そうだが、彼氏と住んでいるのか」と聞かれ、否定しても「どのくらいの頻度で彼氏が遊びに来るの」としつこく迫られる例もある。 村嵜さんは「選考や応募した業務に直接関係ない質問に答える必要はない」と言う。 面接担当者が学生の緊張を和らげようとしていることもあるが、「回答は選考や業務に関係する質問に限らせていただきます」と応じればよいという。 「食事会」に誘われたら 動画は、採用担当者からメールで食事に誘われる場面も採り上げ、「あなたならどう回答しますか」と問いかける。 メールは「2 次面接の前に 2 人でいちど、お酒でも飲みながらリラックスした雰囲気で話をしませんか」といった内容だ。 「食事会」がセクハラかどうかを見極めるポイントはいくつかあるという。 ▽ ほかの学生も交えた複数人で行われるのか、▽ 複数人でも女性だけ集められているのか、▽ 人事担当者は複数人で来るのか、▽ 公式な選考フローにのっとった食事会なのか、といった点だ。 動画は、メールの返信例として「気になることは面接で質問します」と断ったり、更に強く誘われる場合は「学校の規定で禁止されており、学校に報告する必要もある」と伝えたりすることを勧める。 被害に遭ったらひとりで抱え込まず、大学や身近な人に相談することも大切だ。 最近、自身の就活を終えた町田さんは、コロナ禍で社員との接点が減っていることを踏まえ、「社員に直接会えて、助言してもらえる機会は以前よりも貴重。 学生が誘いを断るのは難しいのでは。」と多くの就活生の気持ちを推し量る。 それだけに、送り出す大学側の取り組みの強化も訴える。 「なにがセクハラにあたるのか知らない学生も多い。 今後も継続的に、キャリア教育のなかで、こうした被害が起きうることを伝え続けてほしい。」 金城学院大では動画を全学生に配信した。 ユーチューブ (https://youtu.be/2zjTJWnlCD0) でも見ることができる。 「4 人に 1 人」が被害 厚生労働省が就活やインターンシップを経験した 2017 年 - 19 年卒業の男女(1 千人)に聞いたところ、セクハラを受けたと答えた人が 25.5% にのぼった。 4 人に 1 人が被害に遭った計算だ。 セクハラの内容は「性的な冗談やからかい (40.4%)」が最も多く、「食事やデートへの執拗な誘い (7.5%)」が続いた(複数回答可)。 選別する企業と選別される学生の力の差を背景に、ハラスメントが横行している現状がうかがえる。 だが、就活生を守る法規制は心もとない。 男女雇用機会均等法は、従業員へのセクハラが職場で起きないよう、事業主に相談窓口の設置や被害後の対応などを義務づける。 しかし就活生への対応は昨年 6 月に示された指針で「望ましい」と触れられただけで、義務になっていない。 企業の 7 割が対策「特にない」 実際、対策を取る企業は少ない。 厚労省が就活セクハラへの取り組みを 6,247 社に聞いたところ「特にない」が 71.9% にのぼった。 「就活生らへのセクハラを行ってはならない旨の方針の明確化・周知」や、「就活生らからの相談への適切な対応」といった回答はいずれも 1 割前後だ。 「エントリーシートを添削してあげる。」 近鉄グループホールディングスの人事担当者がそう言い、インターンシップに参加した学生をホテルに誘ったと週刊誌が 6 月、報道した。 同社は社員が事実を認めたとして懲戒解雇した。 同社は、採用面談は複数の担当者で行い、面談予定の申告や面談後の上司への報告を徹底するといった再発防止策を打ち出した。 社員が守るルールの冊子を学生にも渡し、社内と顧問弁護士事務所に相談窓口も設けたという。 これらの対応についてハラスメントに詳しい広島大学の北仲千里准教授は「防止策は評価できるが、セクハラが人権侵害につながるという根本の教育を社員に継続的にする必要がある」と指摘する。 学生が入りたい企業であるほど被害を訴えにくい現実を踏まえ、「被害にあった人を大学や性暴力のワンストップセンターなどが支援しながら、企業への相談につなげる態勢も必要だ」と話す。 (高橋末菜、asahi = 8-22-21) 夏のボーナス 8.27% 減 コロナ禍の影響鮮明に 経団連が 5 日発表した大手企業の今夏のボーナス妥結額(最終集計)は、平均で前年比 8.27% 減の 82 万 6,647 円だった。 減少は 3 年連続。 下げ幅は今の調査方式になった 1981 年以降で、リーマン・ショック後の 2009 年(17.15% 減)に次いで過去 2 番目に大きかった。 コロナ禍による業績悪化の影響が昨夏以上に鮮明に表れた。 最終集計は、18 業種の 159 社(約 91 万 5 千人)の状況をまとめた。製造業(129 社)の平均は 5.94% 減の 83 万 9,927 円、非製造業(30 社)の平均は 17.00% 減の 77 万 3,522 円。 非製造業の下げ幅は、比較可能な 97 年以降で最も大きかった。 業種別でみると、セメント、食品、非鉄・金属など 7 業種が前年より増え、商業、私鉄、建設など 11 業種は前年より減った。 経団連は「コロナ禍の影響の大きさは業種ごとに異なり、同じ業種内の企業間のばらつきも大きい(労働政策本部)」としている。 (木村裕明、asahi = 8-5-21) ◇ ◇ ◇ 夏のボーナス支給労働者、昨夏比 79 万人減 進む二極化 今夏のボーナス支給は昨年冬に続いて落ち込み、業種間の二極化も進みそうだ。 製造業などで業績が回復する一方で、飲食・宿泊などサービス業は苦境が続く。 金額が減るだけでなく、支給自体のとりやめも拡大。 ボーナスをもらえる働き手の比率は 2 年連続で下がり、過去 30 年の最低水準になるとの見方もある。 全日本空輸 (ANA) がボーナスゼロの方針を労働組合へ 5 月に伝えるなど、運輸やサービス関連企業の今夏の支給状況は厳しい。 「生活するのがやっと。 この状況がいつまで続くのか。」 航空会社勤務の 30 代女性はそう漏らす。 月収は感染拡大前より 3 - 4 割減り、就職後から続ける貯金の余裕がなくなった。 旅客がいつ戻るかわからず、将来不安が消えないという。 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、昨冬の平均支給額は前年比 2.6% 減の約 38 万円。 業種別では、飲食サービス 20.1% 減、運輸・郵便と生活関連サービス約 17 - 18% 減。 一方で、電気・ガス、金融・保険などはプラスだった。 今年の夏はどうなるか。 メガバンク系調査会社の 3 社は前年比 1 - 3% 台の落ち込みになると予測。 みずほリサーチ & テクノロジーズの嶋中由理子氏は「製造業の回復が見込まれる一方で、対人型のサービス業は休業要請の影響が色濃く出る」と話し、業種間の二極化が進むとみている。 1 - 3% 台の減少はボーナスが出る事業所ベースでの平均値。 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングによると、支給事業所の働き手は昨夏より 79 万人減の 3,988 万人になる。 飲食、レジャー、空運などの業種で見送りが広がり、支給労働者比率は約 78% と 1990 年以降の最低水準に下がると想定。 受け取れない人も含めた全労働者ベースでみると、支給額は 4.8% 減(製造業 2.8% 減、非製造業 5.2% 減)と大きな落ち込みになるという。 同社の丸山健太氏は、来夏には業績好転がボーナスにも反映されるとみる。 一方で、「在宅勤務の広がりやレジャーの楽しみ方の変化によって、業績がコロナ禍前の水準に戻らない業界も出てくる」と指摘する。 消費の変化はすでに、くっきりと表れている。 総務省の家計調査(2 人以上世帯)によると、昨年の実質消費支出は前年比 5.3% 減で、過去 20 年で最大の落ち込みだった。 外出自粛で、被服及び履物や教養娯楽などの費目が前年と比べて 20% ほども減った。 感染拡大後、旅行や外出にお金を使えずにためる人も多い。 こうした「強制貯蓄」が昨年 1 年間で約 20 兆円に及ぶと、日本銀行は推計する(4 月の「経済・物価情勢の展望」)。 高所得層ほどサービス消費の支出が多く、強制貯蓄の半分以上は年収 600 万円以上の世帯によるものという。 家計調査でみた昨年の平均貯蓄額は、2 人以上世帯で前年比 2.1% 増の 1,791 万円。 勤労者世帯だと同 0.1% 増の 1,378 万円だった。 一方で、明治安田生命の 3 月のアンケート(回答者 1,620 人)によると、家計の貯蓄額は 3 年ぶりに減った。「減少」と答えた割合は自営業・自由業やパート・アルバイトで高い傾向がみられた。 日本総研の小方尚子氏は「コロナによる景気後退は通常と異なり、その影響が一部の人に集中している。 平均的な姿が、『(お金を)使うところがない』となっているが、厳しい世帯は存在する」と指摘する。 コロナ禍による打撃の違いで、働く一人ひとりの実感と統計が映す全体像は差がある。 夏のボーナス減が消費のマイナス要因となる一方で、強制貯蓄されたお金が今後使われていくとの見方もある。 消費の先行きは読みにくくなっている。 ボーナスや残業代が減り、家計は赤字になりやすい。 大幅な貯蓄取り崩しを避けるためにも、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏はボーナス支給期にお金の使い方を家族でよく話すように勧める。 「日頃から家計を管理していない人も多いので、これを機会に通信費や生命保険など毎月の固定費を見直した方がよい」と話す。 (稲垣千駿、asahi = 6-27-21) 5 月の生活保護申請、前年の 2.3% 増 2 カ月ぶり増加 今年 5 月の生活保護の申請件数は 1 万 8,400 件と、前年の同じ月に比べて 2.3% 増えた。 3 月以来、2 カ月ぶりの増加となった。 5 月に新たに生活保護の利用を始めた世帯は 1 万 5,607 世帯で、前年同月比で 7.7% 減った。 厚生労働省が 4 日、発表した。 申請件数は昨年 9 月から今年 3 月まで 7 カ月連続で増加した後、4 月に減少していた。 5 月に生活保護を利用していた世帯は全国で 163 万 8,591 世帯で前年水準より 2,355 世帯多く、0.1% 増。 厚労省保護課は「依然として雇用情勢に厳しさが残っており、今後の動向を注視していきたい。 前年の夏は申請件数が減ったため、今年は反動で前年比でプラスとなる可能性が考えられる」としている。 (久永隆一、asahi = 8-4-21) ◇ ◇ ◇ 生活保護の申請、11 年ぶり増加 20 年度 22.8 万件 2020 年度の生活保護制度の利用申請件数は、前年度に比べて 2.3% 増、新しく利用を始めた世帯数は同 2.1% 増となった。 申請件数と利用開始世帯数はともにリーマン・ショック直後の 09 年度に増えて以降は減少が続いていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて 11 年ぶりに増加に転じた。 厚生労働省が 2 日、今年 3 月の申請件数などの概数を公表し、20 年度分が出そろった。 20 年度の申請件数は 22 万 8,081 件、利用開始世帯数は 20 万 2,856 世帯だった。 20 年度の申請件数の毎月の推移をみると、新型コロナに対応する最初の緊急事態宣言が出た 20 年 4 月に伸び率が前年同月比 24.9% 増と跳ね上がり、年度内で最も高くなった。 同 5 - 8 月は前年同月を下回って推移したものの、同 9 月から今年 3 月まで 7 カ月連続で前年同月を上回った。 この 7 カ月間は増加幅も上がり続け、3 月は前年同月比 8.6% 増となった。 保護開始世帯数でも、20 年 4 月が同 14.9% 増で、年度内で最も高い伸びを示した。 6 - 8 月は前年を下回ったものの、同 11 月以降は前年を上回る状態が続いた。 (久永隆一、asahi = 6-2-21) 上場企業年間給与 10 万 8 千円減、コロナ禍で急ブレーキ 人手不足を背景にした従業員給与上昇に、コロナ禍で急ブレーキがかかった。 東京商工リサーチがまとめた上場 2,459 社の 2020 年度の平均給与は、603 万 2 千円と前年度から 10 万 8 千円減った。 比較できる 12 年度以降で初の減少。 給与が減った会社は 6 割の 1,508 社にのぼった。 業績悪化でボーナスが減ったり、時短営業や操業調整で残業代が減ったりしたことが響いたとみられる。 給与を業種別にみると、ゼネコンなどの建設業が 732 万 4 千円と最高で、小売業の 476 万 7 千円が最も低かった。 1.5 倍超の差があり、差額(255 万 7 千円)は 12 年度以降で最大。以前から広がっていた業種差がさらに拡大した。 また、16 年度以降の従業員数の変化について、比較できる上場 1,898 社分を調べたところ、20 年度に減ったのは 697 社で、この 5 年間で最多となった。 減少率はサービス業 (7.1%)、小売業 (4.3%)、製造業 (4.0%) が大きかった。 希望退職募集や店舗閉店などが響いた。 21 年に入って早期・希望退職の募集人数が 1 万人を超えたのは前年より 3 カ月早い 6 月で、人員減の傾向は足元でも強まっている。 ただ、減少した企業だけをみて減少率が最大だったサービス業も、業界全体での従業員は 3.4% 増えていた。 調査をまとめた東京商工リサーチ情報部の小川愛佳氏は「同じ業界内でも人を減らさずに済んでいる企業と、減らさざるを得ない企業の二極化が表れた結果だ」と指摘している。 (小出大貴、asahi = 7-28-21) 5 年ルールで無期雇用に転換、対象者の 3 割 厚労省調査 1 年などの有期で雇われた社員が、契約更新を重ねて通算 5 年を超えたら定年までの無期雇用に転換できる「5 年ルール」。 その権利を 2018 - 19 年度に得た人のうち、実際に使った人は約 3 割だったことが 28 日、厚生労働省の初の調査でわかった。 有期雇用社員の約 4 割がルールを知らない実態も明らかになった。 5 人以上を雇う全国の 5,662 事業所から昨年 4 月時点の回答を得た。 そこで働く社員 6,670 人にも今年 1 月の状況を聞いた。 調査によると、無期雇用に転換できる権利を得た人のうち、権利を行使したのは 27.8%。 行使せずにそのまま働く人が 65.5% だった。残りは本人都合などで退職済みの人だった。 事業所の規模によっても権利行使の状況に差が出た。 1 千人以上の事業所では 39.9% が権利を使ったのに対し、5 - 29 人では 8.6% にとどまった。 無期雇用を望む理由(三つまで回答可)は「雇用不安がなくなる」が 8 割強を占めた。 望まない理由は「高齢、定年後の再雇用者」が約 4 割、「現状に不満はない」が約 3 割、「契約期間だけなくなっても意味がない」が約 2 割だった。 一方、5 年ルールについて、有期雇用社員の 38.5% が何らかの内容を知っていたが、「何も知らない・聞いたことがない」と答えた人も 39.9% にのぼった。 厚労省は「制度の周知が必ずしも十分ではない(労働基準局)」とみる。 今後、対策やルールの見直しが必要かどうかを検討していくという。 5 年ルールは、不安定な雇用に悩む非正社員を減らすねらいで改正労働契約法に盛りこまれ、13 年から適用された。 権利を得た社員が無期雇用への転換を希望したら、雇う側は拒めない。 ただし権利を得る直前に「雇い止め」になるケースもあり、契約が更新されなかった働き手が訴訟を起こす例が相次いでいる。 (内藤尚志、asahi = 7-28-21) 無国籍の子ども、2 割以上が国籍を得られず 国が初調査 2016 - 20 年に日本で生まれ、0 歳の時点で法務省が無国籍と認めた子ども 305 人のうち、2 割以上の 69 人が 21 年 4 月現在でも国籍を得られていないことが 20 日、同省の初めての調査で明らかになった。 上川陽子法相は 20 日の会見で調査結果を公表し、「窓口で適切に案内できるよう、より丁寧な説明をおこなっていく」と話した。 調査では子どもが無国籍になった理由をまとめた。 最も多かったのは、パスポートや出生証明書など国籍を立証する資料の不足。 全体の 76% にあたる 232 人が該当した。 このうち 44 人は 21 年 4 月現在でも無国籍だった。 次いで多かったのが、南米のブラジルやボリビアなど在日大使館ではなく、その国に戻って手続きをする必要があるケースだ。 63 人が当てはまり、うち 17 人は 21 年 4 月現在でも無国籍。 母が無国籍の子どもも 2 人いた。 調査では、これらを含めて理由を五つに分類した。 だが今回はサンプル調査で、今後対象が広がれば、「まだほかのパターンもありうる(同省)」としており、無国籍の子どもにかかわる全容は把握できていない。 上川法相は会見で、「年齢が上がるにしたがって無国籍状態のかたの割合が減少していく」と指摘したうえで、「無国籍を理由に不利益を被ることのないよう、関係機関と連携して対応する」とも話した。 (藤崎麻里、asahi = 7-20-21) 最低賃金目安、28 円上げ 930 円 過去最大の上げ幅 雇い主が働き手に最低限払う時給換算の最低賃金について、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は 14 日、現在 902 円の全国加重平均を 28 円引き上げ、930 円にする目安をまとめた。 コロナ禍対応で昨年の引き上げ幅は 1 円だったが、今年は政府の方針も踏まえ、再び上昇ペースが速まる見通しになった。 最低賃金は中央審議会の目安を参考に、都道府県ごとの審議会が実際の引き上げ幅を決める。 通常、目安は物価などをもとに分けた A - D の地域ごとに示されるが、今回は全地域が 28 円になった。 1978 年度に現制度が始まって以来最大の上げ幅。 目安通りなら、最も高い東京都が 1.041 円、最も低い県が 820 円となり、全都道府県の最低賃金が 800 円を超す。 最低賃金は 2016 - 19 年に年 3% の上昇が続いたが、昨年は政府が雇用の維持を優先すると表明。 中央審議会も「現行水準の維持が妥当」と答申し、引き上げの流れが止まった。 今年は菅義偉首相の強い意向もあり、政府が再び「全国加重平均 1 千円」の早期実現をめざすと表明。 経営者側はコロナ禍による宿泊・飲食業への打撃が大きいなどとして、現行水準の維持を求めていた。 (山本恭介、asahi = 7-14-21) ◇ ◇ ◇ 「海外は上げた」と最賃引き上げ促す政府 議論大詰め どこまで今年は最低賃金を引き上げるのか。 その目安を決める議論が 7 月中旬の決着をめざし、大詰めを迎えている。 政府は、最低賃金をコロナ禍でも引き上げた海外の例を持ち出して引き上げに意欲的だ。 ただ国同士では単純に比べられないもどかしさもある。 日本の最低賃金の全国加重平均は現在 902 円。 厚生労働省の中央審議会が今年の引き上げ幅の目安を議論中だ。 ここで決まる目安を参考に地方審議会が都道府県ごとの引き上げ幅を決め、10 月ごろから新たな最低賃金になる。 今年はコロナ禍を理由に、経営者側が引き上げに抵抗している。 政府は今年 6 月に閣議決定した骨太の方針で、最低賃金は早期に「全国加重平均 1 千円」をめざすと表明。 根拠の一つに「感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取り組み」を挙げた。 経済財政諮問会議の民間議員も日本の水準を「国際的に見て低い」と指摘し、引き上げを求めた。 最低賃金、政府一転「平均 1 千円」 議論激化の見通し 最低賃金は、国によって物価水準が違うため、単純に金額を比べても生活実感とずれてしまう。 そこでよく使われるのが、経済協力開発機構 (OECD) の統計だ。 その国にいるフルタイム労働者の賃金データの順位の真ん中に位置する「中央値」に対し、最低賃金の金額が占める割合だ。 この割合が低いほど、政府が低賃金での労働を許容している、ともいえる。 2019 年の統計では、日本の割合は 44% だった。日本より低いのはチェコ、エストニア (43%)、アイルランド (42%)、米国 (32%) などだった。 日本より高いのはフランス (61%)、イギリス (55%)、豪州 (54%)、カナダ (51%) などだった。 日本では昨年、コロナ禍の雇用への影響を心配し、中央審議会が「現行水準の維持」と答申した。 その結果、最低賃金の上昇率は 0.1% にとどまった。 だが海外をみると、日本より上昇率が高い国がみられた。 厚労省によると、イギリスは予想物価上昇率に少し上乗せし、前年より 2.2% 上げた。 フランスは政府裁量による上乗せを見送ったが、賃金上昇率との連動で 0.99% 上げた。 ドイツは今後の経済回復を見据え、1,6% 上げた。 韓国では労使協議がもめたものの、最終的に 1.5% 引き上げた。 ただ、各国とも例年より引き上げ幅は小さかったという。 日本は最低賃金の引き上げをデフレ脱却策の一つに位置づけ、安倍政権のころから積極的に取り組んできた。 今回、各国に後れず、引き上げの流れを取り戻したいという狙いがのぞく。 大和総研の神田慶司・シニアエコノミストも、最低賃金の引き上げを支持する立場だ。 ただし、足元では「欧米の引き上げの流れを、単純に日本に当てはめてよいのか慎重に検討するべきだ」と指摘する。 日本の特徴として、パートタイム労働者の賃金がフルタイムよりも低い賃金格差が問題視されている。 そして働き手のなかにパートが占める比率が特に高いのが、コロナ禍で打撃を受けている宿泊・飲食業だ。 このため、最低賃金の引き上げを急ぐと、宿泊・飲食業で人件費の負担が増し、短期的には雇用そのものが危うくなりかねないという。 また、神田氏は「全国加重平均 1 千円」と絶対額を示す日本の目標の定め方にも疑問を示す。 「イギリスは『絶対額』ではなく、労働者全体の中央値の 3 分の 2 という『水準』を目標にしている。 その方が景気に連動し、企業も対応しやすい。 海外を参考にするなら、そういう議論にもいかしていくべきだ。」と話す。 (山本恭介、asahi = 7-11-21) 雇用の回復、地域で明暗 緊急事態宣言が影響か 雇用の指標として厚生労働省が毎月発表する「有効求人倍率」をめぐり、新型コロナ対策の緊急事態宣言が繰り返される地域とそれ以外の地域で、回復具合に差が出始めている。 営業自粛要請などが地域経済の足かせになっていることをデータが裏付けている形だ。 求人倍率は、求職者 1 人に対し、求人が何件あるかを示す。 有効求人倍率(季節調整値)の全国平均は 2019 年 12 月には 1.57 倍あった。 これが 20 年 4 - 5 月に全国が対象になった 1 回目の緊急事態宣言を経て、同 10 月には 1.04 倍まで低下。 都道府県別の倍率も軒並み下がり、20 年中はほぼ横ばいで推移した。 21 年の都道府県別の有効求人倍率(就業地別)は、動きが 2 極化している。 1 月以降、宣言や「まん延防止等重点措置」が断続的に出ている東京都と大阪府。 5 月を昨年 10 月と比べると、東京は 0.05 ポイント、大阪は 0.03 ポイントそれぞれ悪化し、まだ底が見えない。 同様に宣言や重点措置の対象になった愛知、福岡、沖縄などの地域も回復は 0.1 ポイント未満と小幅だ。 一方、今年に入ってからは宣言の対象になっていない地域では、数値が大きく回復したところがある。 例えば、福井県は昨年 10 月から 0.25 ポイント、秋田県は 0.28 ポイント改善し、コロナ禍前の水準を取り戻す勢いだ。 5 月の倍率が 1.81 倍で全国トップだった福井県は今年、警戒を呼びかける県独自の「緊急事態宣言」を 2 回出したが、飲食店に酒類の提供自粛などは求めていない。 県によると、県内の製造業も求人意欲を取り戻しているという。 企業の採用意欲を表す新規求人数に宣言や重点措置が与える影響を厚労省も注視している。 田中誠二職業安定局長は 6 月 29 日の記者会見で、「コロナ感染が経済活動に与えている影響を通じ、労働需要にも影響を与えている可能性が考えられる」と語った。 厚労省は、休業手当を払って雇用を維持した企業を支援する雇用調整助成金の拡充などを続けてきた。 だがコロナ禍が長引くにつれ、財源不足を心配する声も上がり始めている。 第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミストは都道府県による差が出ている状況について「緊急事態宣言などが地域の雇用に影響を与えているのは明らかだ」と指摘する。 コロナ禍が長引く地域ほど苦しい事業所が増えているとして、「ワクチン接種を進め、感染の早期収束をすることが必要だ」と訴える。 (野口陽、山本恭介、asahi = 7-7-21) 「人間の暮らしできない」 非正規公務員の低収入・雇用不安、コロナ禍で追い打ち 国や地方自治体で働く非正規公務員の現状を調べている団体「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」は 7 月 5 日、東京・霞が関の厚労省で記者会見を開き、当事者に対しておこなったアンケート調査結果を公表した。 アンケートでは、長引くコロナ禍や、昨年 4 月から導入されている「会計年度任用職員制度」によって、経済困窮や将来への不安、メンタル不調を抱えている人が多いことが浮き彫りとなった。 また、非正規公務員の約 8 割が女性であり、ジェンダー不平等の問題も指摘されている。 アンケート結果を受けて、はむねっとは「社会生活の支え手である非正規の公務員が不安定な雇用状態にあることは、すべての人に関わる問題であり、状況改善をする必要がある」と訴えている。 関東地方の公共職業安定所(ハローワーク)で働く女性は会見で、「正規職員が毎年、削減されて非常勤職員が置き換わっています。 国の機関がこうした状態では、国が瓦解しかねないという危機感を持っています。」と語った。 ● 9 割が「将来に不安」抱える 調査は今年 4 月から 6 月にかけてインターネットで実施し、1,252 人から有効回答を得た。 このうち女性は 97.2% で、大多数を占めた。 回答者の職種は 30 種以上で、住民に直接応対する領域、市民生活に関連する職種が多かった。 最も多かったのが一般事務 (23.7%)、次いで学校図書館司書 (15.1%)、図書館員 (12.7%) となっている。 これ以外にも、博物館や美術館、公務員の職員や、保育士、教師、学童保育職員など多岐にわたった。 回答者の就業形態は 2020 年度から導入された会計年度任用職員が 76.1% となっており、雇用期間は 1 年および、1 年未満を合わせると 93.8% で、「不安定な身分で働いている人が非常に多かった。 会計年度職員への移行時には説明もなく大幅な賃金の減額がおこなわれた例っもあった。(はむねっと副代表、瀬山紀子さん)」という。 また、2020 年の収入を聞いたところ、52.9% が 200 万円未満で、回答者の 3 人に 1 人は「主たる生計維持者(世帯の中で生活費を主に負担している人)」だった。 主たる生計維持者でない場合も、自分の収入がないと家計が厳しいとした人が 52.7% におよんだ。 こうした短い雇用期間と低収入により、将来不安でメンタル不調を抱えている人も少なくないという。 直近 1 カ月の体調についてたずねたところ、メンタル面で「不調」、「やや不調」と答えた人は、45.9% だった。 また、93.5% の人が将来について「いつも不安」、「一定の時期に不安」、「時々不安」と回答している。 はむねっとでは、「職務内容や経験に関する評価基準がなく、報酬額の上限が正規職員の大卒初任給相当と設定されるなどの職務の実態に合わない不合理な現状があるのではないか。 また、専門職としての役割を求められる職務につく人が、給料や待遇が低く、昇給も無く、不安や焦燥感にかられながら働いている。」と分析している。 これ以外にも、妊娠出産による雇い止めへの不安から、「子どもを持ちたくても持てない」という声もあり、雇用への影響を心配してパワハラなどがあっても問題にできないと感じている人もいた。 ● 「ボランティアで仕事しているわけではない」 アンケートには、自由回答でさまざまな意見が寄せられた。 一部抜粋する。
はむねっと代表の渡辺百合子さんは、アンケート結果について「非正規雇用で働くということと、コロナという二重の苦境が明らかになりました。 また、非正規雇用の 8 割が女性であり、ジェンダー不平等も関わっていると認識しています。 ここに寄せられた声を公表するだけでなく、今後は提言など制度的な問題の改善を訴えていきたいです。」と話している。 (弁護士ドットコム = 7-5-21) 雇用調整助成金の特例措置 8 月末まで継続を決定 厚生労働省 「まん延防止等重点措置」などが出された地域を対象にした「雇用調整助成金」の特例措置について厚生労働省は厳しい雇用情勢が続いているとしてことし 8 月末迄継続することを決めました。 「雇用調整助成金」は売り上げが減少しても企業が従業員を休業させるなどして雇用を維持した場合に休業手当などの一部を助成する制度です。 厚生労働省によりますと、去年 2 月から今月 11 日までの支給決定件数は 365 万 1,791 件、金額にして 3 兆 7,276 億円に上っています。 厚生労働省は、1 日の助成金の上限を 1 万 5,000 円に、助成率を大企業と中小企業のいずれも最大 100% に引き上げる特例措置を一部の地域や企業に行っています。 具体的には「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の対象地域で自治体からの要請に基づき休業や営業時間の短縮などに協力する企業や、直近 3 か月の売り上げなどが前の年や 2 年前と比べて 30% 以上減少している全国の企業が対象です。 厚生労働省は、この特例措置の期限をことし 7 月末としていましたが、厳しい雇用情勢が続いているとして、ことし 8 月末まで継続することを決めました。 それ以外の地域や企業では、1 日の助成金の上限を 1 万 3,500 円に、助成率をいずれも最大で中小企業は 90%、大企業は 75% としていて、この水準を 8 月も継続するということです。 厚生労働省は、9 月以降の対応については雇用情勢などを踏まえたうえで今後、決定したいとしています。 (NHK = 6-18-21) 政府 非正規労働者など雇用確保に向けた追加対策取りまとめ 政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で非正規で働く人などへの影響が長期化しているとして、関係閣僚による会議で、職業訓練のさらなる利用促進や最低賃金を引き上げるための環境整備など、雇用の確保に向けた追加対策を取りまとめました。 政府は 8 日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、非正規で働く人やひとり親などの雇用確保に向けた追加対策を取りまとめました。 この中で、菅総理大臣は「新型コロナが長引く中で、非正規雇用労働者をはじめとする雇用への影響が続いており、より効果的な追加対策を決定した」と述べました。 そのうえで、職業訓練のさらなる利用促進やデジタルやグリーンなどの成長分野への人材の移動、それに賃金格差が広がらないよう最低賃金を引き上げるための環境整備などに取り組むと説明しました。 さらに、大手企業が下請け企業に支払う代金を一方的に減額するような行為を防ぐため、実態調査を行うほか、飲食・宿泊業を中心に金融支援を強化する考えを示し、こうした対策に連携して取り組むよう、関係閣僚に指示しました。 (NHK = 6-8-21) 4月の完全失業率2.8%、男女でみると異なる動き 総務省が 28 日発表した 4 月の完全失業率(季節調整値)は 2.8% で前月より 0.2 ポイント悪化した。 男女別にみると男性が 3.2% で 0.4 ポイント増と大きく悪化。 女性は 2.3% で 0.1 ポイントの改善だったが、新型コロナ禍で厳しい雇用環境が続いており、注意が必要だ。 完全失業率は、労働力人口に占める完全失業者の割合を示す。 仕事がなくても職を探していなければ、完全失業者にも労働力人口にも数えられない。 男性の悪化は完全失業者が 122 万人と前月より 14 万人増えた影響が大きい。 だが労働力人口は 3,806 万人と 6 万人増え前月の 26 万人減から増加に転じた。 新型コロナ禍で職探しをあきらめた人が増えた懸念も出ていたため、前向きな材料だ。 総務省によると、定年を迎えた人や勤め先の都合で雇用を切られた人などが新たに仕事を探しはじめた可能性があるという。 一方、女性が改善したのは完全失業者が 71 万人と 2 万人減ったためだ。 ただし労働者人口は 3.054 万人で 10 万人減と 2 カ月連続で減少し、職探しをあきらめている人がまだ相当数いる可能性がある。 総務省の担当者は「新型コロナの影響で、女性が多く働く飲食などの対面サービスの非正規雇用はなお厳しい状況にある。 そのため、いまなお女性は仕事を探せていないのでは。」と話す。 一方、厚生労働省が同日発表した 4 月の有効求人倍率(季節調整値)は 1.09 倍で前月より 0.01 ポイント低下した。 今年1月以降、1.09 - 1.10 倍とほぼ横ばいで推移している。 業種別の新規求人数は、宿泊業・飲食サービス業が前年同月比で 2.9% 増えた。 プラスは 19 年 10 月以来 1 年 6 カ月ぶり。 ただ、教育・学習支援業の 43.6% 増、製造業の 32.8% 増などと比べると低い水準が続き、業種間の格差が大きいままだ。 (山本恭介、岡林佐和、asahi = 5-28-21) コロナ禍の昨年度、大学中退者 1.6 万人減 その理由は 全国の大学・短大で 2020 年度に中退・休学した学生は、前年度から約 2 万 1 千人減の約 12 万 5 千人だった。 文部科学省が 25 日発表した。 コロナ禍のもとでも中退・休学者が減った理由について、文科省は、学費負担について心配する学生に対し、各大学が授業料減免や悩み相談などの支援に力を入れた結果とみている。 文科省は今年 3 - 4 月、全国の国公私立大学・短大・高等専門学校 1,082 校を対象に調べた(回答率 95%)。 大学・短大の中退者は前年度比 1 万 6,216 人減の 5 万 7,913 人。 学生数に占める割合は同 0.55 ポイント減の 1.95% だった。 中退の理由は「経済的困窮」が 16.7% で最も多かった。 「転学等 (16.1%)」、「学生生活不適応・修学意欲低下 (15.3%)」が続いた。 休学者は同 5,253 人減の 6 万 7,034 人。 休学の理由も、経済的困窮が 15.8% で最多だった。 コロナ禍の影響と判明している中退者は 2,024 人、休学者は 4,627 人。 国は昨年度、家計が急変した学生について、低所得世帯向けの修学支援制度の対象に加えたり、アルバイト先がなくなった学生に支援金を給付したりする対策を強化。 文科省は、各大学や短大などにこれらの支援策を周知するよう通知してきた。 担当者は「丁寧に対応するよう、重ねて大学にお願いしたことが良かったのでは」と話す。 文科省はこの日、新型コロナの学生生活への影響について全国の大学・高専生約 3 千人にアンケートした結果も公表した(有効回答 1,744 人)。 オンライン授業について、6 割弱が「満足」、「ある程度満足」と回答。 2 割が「あまり満足していない」、「満足していない」と答えた。 オンライン授業の良かった点としては 79.3% が「自分の選んだ場所で授業を受けられた」、66.1% が「自分のペースで学修できた」ことを挙げた。 一方、悪かった点は、53% が「友人などと授業を受けられず寂しい」ことを挙げた。 「質問など相互のやり取りの機会が少ない (43.9%)」、「対面授業よりも理解しにくい (42.7%)」との回答も目立った。 文科省はオンライン授業をめぐり、「対面による学生同士や学生と教職員の間の人的な交流等も重要な要素」、「学生の学修機会確保のために格段の取り組みを」などと、対面授業を採り入れるよう促す通知を各大学にしてきた。 担当者のもとにはオンライン授業に否定的な声が寄せられていたといい、学生の半数超が「満足」という今回の結果は意外だったという。 「対面とオンラインをうまく使い分けた授業をしてほしい」と大学に期待する。 (桑原紀彦、asahi = 5-25-21) |