中国は世界経済をけん引できなくなる? 原因となる 3 つの変調を読み解く

新型コロナウイルスの感染再拡大と行動制限強化、製造業活動の減速など、足元では中国経済の変調が浮き彫りになっています。 こうした変調の要因を紐解き、中国景気の先行きを考えます。

7 月の中国経済は総じて景気鈍化

7 月中旬以降、中国では国内各地で新型コロナウイルスのデルタ株とみられる感染が拡大し、省を跨いだ移動や国内旅行などに制限が掛かっている状況となっています。 6 月下旬にも同様の措置が広東省でとられましたが、今回は広範囲に及んでおり、中国景気への大きな下押し圧力になるとの懸念が広がっています。 こうした中で公表された 7 月分の主要経済統計は、いずれも市場予想から下振れ、中国景気の悪化懸念が一段と強く意識されました。 経済統計の中身を見ると、特に目立ったのが消費の減速で、外食サービス消費の鈍化など行動制限強化の影響がうかがえます。

その他、不動産投資の減速や自動車製造業の生産が 3 ヵ月連続で前年比減少するなど、行動制限以外の要因によるとみられる下振れもあり、中国景気の悪化を示唆する内容が多く見受けられます。 先進各国と比べて感染者数が少ないものの、中国当局が「ゼロコロナ」を目指すという新型コロナウイルス対策方針を掲げているため、比較的厳格な感染抑制措置が採られており、8 月の経済統計は更なる下振れが想定されます。

中国経済の変調を引き起こした 3 つの要因

足元の中国経済の変調を紐解くと、(1) 当局が行ってきた政策正常化に伴う景気鈍化、(2) 供給制約の悪影響、(3) 足元の新型コロナ対応による経済活動抑制という 3 つの原因が浮かび上がります。 中国当局は早期に経済回復を果たしたことで、新型コロナ対応からの脱却を進め、その過程で不動産政策の厳格化や信用の伸び抑制を行っており、年央以降の中国経済は成長率の鈍化が進むというのが今年の前半の大方の見方でした。

こうした中、生産活動に必要な原材料価格の高騰や他国での感染拡大に伴って主要部品の供給・物流の滞りはじめ、景気の波を作り出す製造業の活動に下押し圧力が掛かっています。 さらに、7 月下旬以降の国内デルタ株感染拡大と行動制限強化は前述のように広範囲に影響を及ぼしており、回復の兆しが見られたサービス消費に影を落としています。 つまり、現在の中国経済は、元より力強さの見られない状況が想定されていた中で、製造業への下押し圧力増大とサービス業の活動抑制が同時に発生し、景気への下押し圧力がより強まっている状況と言えるでしょう。

世界経済のけん引役としての姿は期待薄

中国経済の変調が 3 つの要因により発生していることを示しましたが、これらのうち (3) 足元のコロナ対応による経済活動抑制は、一過性の側面が強いと言えます。 国内の感染は現状では、8 月中旬にピークアウトしており、このまま感染拡大が抑えられれば、行動制限によって抑制されていたサービス消費のリバウンドがある程度は期待できます。 一方で、(2) 供給制約の悪影響は、原材料高および部品の供給不足共に短期的な解消は見込みづらいと考えています。 原材料は需要が底堅く、価格の高止まりが続く可能性があります。

また、半導体など部品の供給不足に対しては、設備投資が進んでいるもようですが、積み上がった受注分への対応もあり、納期が過去の水準まで短期化するには時間がかかるでしょう。 即ち、マージン縮小や生産の抑制など製造業企業への圧力が長引くことを意味しており、この状況が長期化する場合、当局は圧力を受けている分野への追加支援を行う可能性が高いでしょう。

7 月に入り当局は、預金準備率の引き下げや下期の経済政策方針として改めて景気安定化に向けた施策の実施を示すなど、景気悪化への対処として圧力を受けている分野へ支援を実施する方向に舵を切っています。 その上で、不動産や IT・ハイテク企業などを対象に、引き締めるべきところは締めるという姿勢を堅持しています。 従って、筆者は中国経済の変調を助長していた感染拡大が落ち着き、当局の政策姿勢も景気安定化に向けた措置実施へ傾いた以上、早晩、ある程度景気が安定方向へ向かうと考えています。

ただし、厳格な不動産政策の下、同分野の投資減速という景気への大きな下押し圧力が残っているほか、今後も感染抑制のために厳格な行動制限措置が散発的に導入され、景気が都度悪化する可能性が高い状況でもあります。 また、製造業を苦しめる供給制約も引き続き残っています。 以上のことからまとめると、現在の中国景気を下押しする要因は薄れつつあり、これ以上の過度な懸念は必要ないと考えられる一方で、先行きの明るい材料はさほどありません。 当局が景気浮揚に乗り気ではないことも加味すると、筆者は、中国経済に世界経済のけん引役としての役割は期待しづらくなっていると考えています。 (須賀田進成、Money Plus = 8-30-21)


中国経済への打撃、すでに顕在化 - 業界締め付けの影響広がる

→ 鉄鋼生産は 7 月に 1 年 3 カ月ぶりの低水準に落ち込んだ
→ 市場は不動産業界の下振れ圧力を若干過小評価 - 野村の陸挺氏

中国政府が進める鉄鋼から教育、不動産に至る多くの業界に対する締め付けは、金融市場を混乱させ、国内経済の成長見通しを鈍らせている。 政府は今後数年にわたり企業に対する規制を強化すると示唆しているものの、新型コロナウイルスの新たな流行で予想以上に進んでいる景気減速に対して、規制のペースと強度を当局が注意深く管理する必要があるとエコノミストは指摘する。

カーボンニュートラル : 中国は二酸化炭素の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを 2060 年までに達成するという野心的な目標を設定している。 そのため政府は鉄鋼生産の削減を表明。 共産党政治局は目標達成を狙った極端な措置に警告しているものの、鉄鋼生産は 7 月に 1 年 3 カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。 石炭生産も少なくとも 4 カ月ぶりの低水準となっている。

不動産規制 : 中国は住宅ローン金利の引き上げや一部大都市での土地入札の一時停止、プライベートエクイティー(未公開株、PE)ファンドによる住宅用不動産開発向けの資金集め禁止などを通じ、価格が高騰した不動産市場への規制を強めている。 「住宅は投機ではなく、住むために建てられる」と政策当局は強調する。

中国房産信息集団 (CRIC) によれば、こうした規制はすでに住宅販売に打撃を与えており、国内の 1 級都市では 2 カ月連続で住宅販売が減少した。 野村ホールディングスは国内総生産 (GDP) 成長鈍化の半分以上は不動産規制によるものだとみており、GDP 成長率は 1 - 6 月の 12.7% から 7 - 12 月には 4.7% に落ち込むと想定。 不動産市場規制は住宅販売減少と投資削減を招くだけでなく、建材や家具、家電の生産・販売と住宅ローン向け金融事業に影響が及ぶ。

野村の中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏は「不動産業界の下振れ圧力を市場は若干過小評価している」と分析。 「今後 6 カ月から 1 年間に投資と建設は伸びが鈍化するか、縮小の可能性もあり、関連業界や地方政府の収入に比較的大きなインパクトを与える」と予想した。

教育産業 : 中国は 1,000 億ドル(約 11 兆円)規模に上る教育テクノロジーセクターの抜本的な見直しに着手し、学校の教科課程を教える企業が利益を出すことや資本を調達、株式を公開することを禁じた。

政府の狙いは格差を是正し、教育コストを引き下げて出産数を増やすことだが、短期的には資本・労働市場に痛みをもたらす。 ただ、教育テクノロジー企業関連の雇用・消費への影響は一時的なものとなりそうだとエコノミストはみている。 こうした支出減少は他分野での持ち直しに打ち消されるためだ。 コメルツ銀行の新興国市場担当シニアエコノミスト、周浩氏(シンガポール在勤)は「放課後の家庭教師を雇う企業の雇用が減少した後、公立学校でより多くの雇用が創出されよう」と述べ、こうした業界規制は短期的な構造調整を引き起こすものの総需要に影響を与える公算は小さいだろうと説明した。

地方政府 : 地方政府の資金借り入れペースが鈍っている。 プロジェクトに対する検証が厳しくなっていることなどが理由だ。 そのため今年は当初考えられていたよりインフラ投資による景気の後押しが小さくなりそうだ。 華創証券によると、7 月のインフラ投資は前年同月比 10% 減った。 ING グループの大中華圏担当チーフエコノミスト、アイリス・パン(彭)氏はインフラ支出の減少は今年の GDO 成長率を約 0.5 ポイント押し下げると話した。 (Bloomberg = 8-26-21)


中国経済、7 月は予想上回る減速 - デルタ変異株で景気リスク増す

→ 7 月の小売売上高と工業生産、伸び率がいずれも予想下回る
→ 脱炭素やコロナ、半導体不足の重層的な影響がうかがえる - 謝棟銘氏

中国の経済活動は 7 月に予想以上の鈍化を示した。 豪雨による浸水被害や外需鈍化で既に打撃を受けたが、新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大でリスクがさらに増した。 7 月の小売売上高は前年同月比 8.5% 増と市場予想の中央値(10.9% 増)を下回る伸びにとどまった。 6 月は 12.1% 増だった。 工業生産は前年同月比 6.4% 増えたが、予想の 7.9% 増に届かなかった。 6 月は 8.3% 増だった。 失業率も 5.1% に悪化した。 1 - 7 月の固定資産投資は前年同期比 10.3% 増。 市場では 11.3% 増加と見込まれていた。

中国の減速は世界経済の回復ペースが鈍りつつある状況を示す新たな兆しとなる。 先週末発表された 8 月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は約 10 年ぶりの低い数字となった。 米経済見通しやインフレ、さらにはコロナ感染急拡大への懸念の高まりを反映した。 オーストラリア・ニュージーランド銀行 (ANZ) の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「7 月の指標は中国経済が極めて急速に勢いを失いつつある様子をうかがわせる」と指摘。 デルタ株拡大で 8 月の活動へのリスクが増すとの見方を示した。 昨年のコロナ禍での経済活動停止に伴う統計上のゆがみをならした 2 年平均でも、全体的に減速感が顕著になっている。

中国共産党政治局、的を絞った景気対策の強化示唆 - リスクに対応

中国国内ではコロナ感染が広範囲に拡大しており、下期に入り既に足取りが鈍くなり始めた景気回復の新たな重しになりつつある。 米国などに比べれば全体の感染者が少ないとはいえ、7 月半ば以降に確認された新規のコロナ症例を受けて的を絞ったロックダウン(都市封鎖)や移動制限、大規模検査が再び行われている。

政府はコロナゼロ目標を達成するため積極的な措置を講じており、個人消費が鈍りサプライチェーンも妨げられる中で、経済的な犠牲を伴う恐れがある。 野村ホールディングスやゴールドマン・サックス・グループ、JP モルガン・チェースなど金融機関は 7 - 9 月(第 3 四半期)と通年の成長率見通しを相次いで既に下方修正した。 中国政府が設定した今年の目標も 6% 超と慎重だ。

オーバーシー・チャイニーズ銀行の大中華圏調査責任者、謝棟銘氏は「中国による脱炭素に向けた取り組みやコロナを巡る不透明感、世界的な半導体不足の重層的な影響がうかがえる。 製造業はなお期待が持てそうだが、景気サイクルの下り坂から中国を引き上げるには十分ではないこともあり得る。」と分析した。 (Bloomberg = 8-16-21)

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中国、4 - 6 月 7.9% 成長 生産堅調でも資源高に懸念

【北京 = 川手伊織】 中国国家統計局が 15 日発表した 2021 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) は物価の変動を調整した実質で前年同期比 7.9% 増えた。 企業部門による堅調な工業生産が支えた。 懸念は資源高で、企業収益が伸び悩めば、21 年後半の設備投資や個人消費の重荷になる可能性がある。 成長率は、日本経済新聞社と日経 QUICK ニュースが共同で実施した市場調査の平均 (7.7%) をわずかに上回った。 前年に新型コロナウイルスの打撃でマイナス成長となった反動で大幅増となった 1 - 3 月よりは鈍った。 新型コロナ前の 19 年 4 - 6 月と比べると 11.4% 増加した。

季節要因をならした前期比での伸び率をみると、21 年 4 - 6 月は 1.3% だった。 1 - 3 月の 0.4% から加速した。 先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は 5.3% 程度となる。 3 月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)終了後、新型コロナの再拡大を警戒した移動制限が緩み、経済活動が活発になった。 景気の実感に近い名目 GDP は前年同期と比べて 13.6% 増えた。 15 日は GDP と同時に他の統計も公表した。

工業生産は 1 - 6 月に前年同期比 15.9% 増えた。 19 年同時期と比べた年平均の伸びは 7.0% で、1 - 3 月 (6.8%) からわずかに加速した。 新エネルギー車や工業ロボット、半導体の生産が全体を押し上げた。 工場やマンションの建設などを示す固定資産投資は 1 - 6 月に前年同期比 12.6% 増えた。 過去 2 年間の年平均では 4.4% 増え、1 - 3 月 (2.9%) より拡大した。 政府が低所得者向けの賃貸物件の建設を促す不動産建設は堅調だった半面、投機規制の影響で不動産販売額は伸び悩んだ。

4 - 6 月の輸出入(ドル建て)は四半期ベースでともに過去最高となった。 携帯電話など情報家電のほか伝統的な輸出品である衣料や玩具は伸びた。 輸入は資源高で原油や鉄鉱石の調達額が急増し、輸出から輸入を引いた貿易黒字は前年同期より 1 割近く落ち込んだ。 百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は 1 - 6 月、23.0% 増えた。 19 年同時期と比べた年平均増加率は 4.4% となり、1 - 3 月 (4.2%) からわずかに上振れした。

雇用や所得の回復はなお遅れている。 1 - 6 月の都市部の新規雇用は 698 万人だった。 前年同期を 24% 上回ったが、新型コロナ前の 19 年 1 - 6 月の水準(737 万人)には届いていない。 最近の資源高が企業収益を圧迫しており、企業の設備投資を今後下押しする可能性がある。 中国人民銀行(中央銀行)は 15 日から、一部の小型銀行を除いて市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す「預金準備率」を 0.5% 引き下げた。 コスト高に苦しむ中小零細向けの貸し出しを増やすよう促す。 (nikkei = 7-15-21)

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中国経済の回復、5 月も足踏み - 指標は軒並み予想下回る

→ 5 月の小売売上高は 12.4% 増、工業生産 8.8% 増 - 予想に届かず
→ 内需がコロナ前水準に戻らず、政策正常化ペースより慎重に - 丁爽氏

中国経済は 1 - 3 月(第 1 四半期)に記録的な成長を遂げたものの、回復は 5 月も足踏みとなった。 小売売上高など主要経済指標が軒並み予想を下回った。 5 月の工業生産は前年同月比 8.8% 増。 ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は 9.2% 増、4 月は 9.8% 増だった。 小売売上高は前年同月比 12.4% 増えた。 予想は 14% 増加、4 月は 17.7% 増。 失業率は 5% と前月の 5.1% から低下した。 1 - 5 月の固定資産投資は前年同期比 15.4% 増。 市場では 17% 増加と見込まれていた。

中国経済の新型コロナウイルス禍からの回復は重工業と不動産、好調な輸出がけん引役となっている。 一方、個人消費の出遅れが続いており、より持続可能な成長を実現するには消費の戻りが欠かせない。 ワクチン接種の加速や労働市場の改善に伴って消費は徐々に持ち直しつつあるが、直近の端午節 3 連休の支出動向は消費者の慎重姿勢が続いていることを示している。 政府のデータによれば、端午節連休の観光支出はコロナ前の水準を約 25% 下回った。 5 月の労働節連休の旅行者数はやや上回ったものの、支出は 2 年前の水準の 77% にとどまった。

ソシエテ・ジェネラルの大中華圏担当エコノミスト、ミシェル・ラム氏は「消費の持ち直しは期待されているほど力強くない」と分析。 広東省で最近確認されたコロナ感染が「回復にとってさらなるリスクになる」と述べた。 スタンダードチャータードの大中華圏担当チーフエコノミスト、丁爽氏は「底堅い工業生産は主に外需が後押しする一方、内需はまだコロナ前の水準に戻っていない」と指摘。 「中国当局は政策の正常化ペースにより慎重になるだろう」と見込んだ。 (Boomberg = 6-16-21)


中国輸出、7 月に伸び鈍化 - アジアのデルタ株拡大などリスク増大

→ 中国経済の回復が下期に新たな圧力に直面するとの懸念強まる
→ 輸入は内需回復などが追い風となり 7 月も力強い伸び示す

中国の輸出は 7 月に伸びが鈍化し、市場予想を下回った。 中国経済の回復が今年下期に新たな圧力に直面するとの懸念が強まった。 税関総署が 7 日発表した 7 月の輸出はドル建てで前年同月比 19.3% 増。 エコノミスト予想中央値は 20.0% 増だった。 6 月は 32.2% 増。 一方、輸入は前年同月比 28.1% 増加。 エコノミスト予想の中央値は 33.3% 増、前月は 36.7% 増だった。 この結果、7 月の貿易黒字は 565 億 8,000 万ドル(約 6 兆 2,400 億円)となった。

中国の輸出は今年上期を通じて力強く回復した。 世界各地で新型コロナウイルスの感染抑制のための制限措置が徐々に解除され需要を下支えしたためだ。 しかしこの数カ月はデルタ変異株がアジアで広がり、サプライチェーンが脅かされるなど貿易リスクが高まっている。 7 月の中国製造業購買担当者指数 (PMI) では、新規輸出受注指数が 3 カ月連続で低下。 当局者は比較対象になる昨年下期が好調だったことも挙げて、今年後半の貿易の伸びが鈍化する可能性があると警告している。 一方、輸入は現在も続く内需回復や一次産品の値上がりが追い風となり 7 月も力強い伸びを示した。 (Bloomberg = 8-7-21)


中国中車、時速 600 キロのリニア完成 JR 東海に肉薄

【大連 = 渡辺伸】 鉄道車両製造で世界最大手の中国中車は 20 日、時速 600km で走るリニアモーターカーが完成したと発表した。 中国の鉄道として最速となる。 JR 東海はリニア車両で最高時速 603km を記録しており、それに迫る形となる。 鉄道分野で世界的に技術開発競争が激しくなりそうだ。 中車の孫永才董事長は発表文で「中国の高速リニアは産業化する能力がある」とコメントし、実用化へ意欲を示した。 具体的な計画は明らかにしていない。 同社は巨大経済圏構想「一帯一路」などの国に車両を輸出しており、技術力をアピールする狙いもありそうだ。

同車両は 5 両編成。2016 年 10 月に開発に着手。 20 年 6b月に試験走行に成功後、調整を続けてきた。 車両は軽さや強度の高さが特徴という。 19 年時点の試算では列車を待つ時間などを含めた所要時間は北京と上海間で 3 時間半。新幹線に比べ約2時間短縮できるという。 JR 東海はリニア車両の試験走行で 15 年、鉄道の世界最高速度である時速 603km を記録。 営業運転で最高時速 500km となるリニア中央新幹線の計画を進めている。 中車は 20 年 12 月期の売上高が 2,276 億元(約 3.8 兆円)、純利益が 113 億元。 同社は 15 年、国有鉄道メーカーの中国北車と中国南車が合併して誕生した。 (nikkei = 7-20-21)


中国、預金準備率の引き下げ検討 中小の資金繰り支援

【上海 = 土居倫之】 中国国務院(政府)は 7 日開いた常務会議で、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す「預金準備率」の引き下げなど緩和的な金融政策を検討していると明らかにした。 中小企業の資金繰りを支援する狙い。 実施時期は「適切な時期」として具体的には明らかにしなかった。

預金準備率を下げると、市中銀行が人民銀行に預けるお金が減り、その分、貸し出しなどに回すお金が増える。 中国では商品市況高騰で原材料の仕入れ負担が増した中小・零細企業の経営が悪化しており、銀行に中小零細向けの貸し出しを増やすよう促す狙いだ。 中国では地方銀行や農村商業銀行など貸出先に中小企業が多い銀行に絞って、預金準備率を引き下げるケースがある。 中国人民銀行(中央銀行)は 2020 年 4 月、農村商業銀行などを対象にした預金準備率の引き下げを発表した。 (nikkei = 7-8-21)


深セン、賃金抑制にカジ 工場の中国外移転に歯止め
17 年ぶり条例改正で残業代圧縮 全国に波及も

【広州 = 川上尚志】 中国南部広東省の深セン市が企業の賃金抑制に乗り出す。 条例を 17 年ぶりに本格的に改正し、残業手当の規定撤廃などを盛り込む。 中国は人件費の高騰で生産拠点が東南アジアなどに移転しており、企業負担の抑制を狙う。 中国の産業モデル地区である深センの施策は全土に広がる可能性もある。 深センでは 2004 年 12 月に施行した給与条例について、21 年 5 月末から市人民代表大会(市議会に相当)で改正案の審議が始まった。 可決され次第、施行に向けた手続きに入る。

改正案の主なポイントは 3 つある。 まず非正規労働者の残業代の抑制だ。 従来は春節(旧正月)など政府が定める法定祝日に働く場合に残業代を平日の 3 倍払う必要があった。 改正案では、この「3 倍規定」を削除し平日と同じ水準にする。

2 つ目はボーナス支給のルール改正だ。 中国では勤務期間に応じてボーナスを年末に支給する。 例えば、1 カ月で辞めた従業員にも 1 カ月分のボーナスを支払う必要がある。 改正案ではボーナスについて「労働契約などで別途定めることができる」と規定する。 契約などで明記すれば、短期で辞めた従業員にボーナスを払わないで済む可能性がある。

3 つ目は給与の支払期限の延長だ。 現行では当該月の翌月 22 日までに支払う必要がある。 改正案では 30 日までに延ばせるよう明記するが、市人民代表大会では 30 日よりは短くすべきだという意見もあり、調整が続いている。

深セン市政府は条例改正の狙いについて「企業の経営を支えることが労働者の中長期的な利益にかなう」と説明する。 改正案が成立すれば、企業は従業員 1 人当たりに払う給与を抑えることができる。 中国では雇用水準が新型コロナウイルス禍前の水準を回復しておらず、市政府は新規雇用の増加につながるとの思惑もあるようだ。 改正案は深セン市に拠点を置く外資系企業も対象になる。 中国の企業法務に詳しい水野コンサルタンシーホールディングスの水野真澄社長は、改正案について「深センで工場を運営する企業などが人件費を抑えられる利点がある」と話す。

一方で「労働契約の切り替えを伴う場合は労働者側の反発も予想され、実務面では慎重に対応する必要がある」とも指摘する。 条例改正案のパブリックコメントでは、不採用になったものの「労働者の収入を高めていくというこれまでの政府の方針と異なる」などの意見も出た。 深センは改革開放のモデル都市として 1980 年に経済特区に指定された。同市で新たな産業政策や制度が試行され、後に全国に導入される場合が多い。 例えば企業の破産制度を定めた条例はまず深センで 90 年代半ばから施行され、その後に全国に広がった。 今回の給与条例の改正案が成立すれば、中国の労働法制の転換につながる可能性もある。

中国では 2008 年に施行した労働契約法をきっかけに、労働者の権利を強化する方向で法整備が進んできた。 給与水準も上昇が続いている。 中国国家統計局によると、「農民工」と呼ばれる農村から都市への出稼ぎ労働者の平均月収は 20 年に 4,072 元(約 7 万円)で、10 年間で 2 倍に増えた。 日本貿易振興機構(ジェトロ)がアジアとオセアニアに進出した日系の約 6,000 社から聞き取った 20 年の調査によると、「製造業・作業員」の基本給(月額)の平均は中国で 531 ドル(約 5 万 9,000 円)。 タイ(447 ドル)やマレーシア(431 ドル)など東南アジア諸国の多くを上回る。

とくに電機や繊維など広東省と得意分野が重なるベトナム(250 ドル)は中国の半分以下にとどまる。 韓国サムスン電子は携帯電話の組み立て工場をベトナムに移したほか、中国企業も家具や繊維の工場をベトナムに移す。 中国国家統計局によると、売上高 2,000 万元(約 3 億円)以上の外資製造業の数は 21 年 4 月時点で約 4 万 3,700 社。 ピークの 14 年と比べて 1 万 4,000 社 (24%) も減った。 製造業全体でみれば高付加価値品への移行も遅れており、低賃金を武器に築いた「世界の工場」の地位は揺らいでいる。

中国では中小企業を中心に経営環境も厳しさを増す。 中国国家統計局によると 5 月の製造業購買担当者景気指数 (PMI) は前月より 0.1 ポイント低い 51.0 で、2 カ月連続悪化した。 深セン大学の陶一桃・教授は条例改正の背景について「新型コロナ問題が中小零細企業の発展に大きな打撃を与えており、足元では原材料価格の上昇なども致命的な問題になっている」と指摘する。 習近平指導部が重視する内需の拡大を実現するには、消費の盛り上がりが欠かせない。 条例改正で目先の雇用を増やすことに成功したとしても、中長期では 1 人当たりの所得を高めるための施策が必要になりそうだ。 (nikkei = 6-28-21)


中国の経済構造に変化 - 「クレジットインパルス」低下、減速意味せず

→ 建設業など与信集約型セクターの役割が小さくなる
→ サービス業やテクノロジーセクター台頭、新株発行や内部留保活用も

中国で製造業を営む楼仲平さんには、銀行や行政からの新規融資に関する提案が後を絶たない。 楼さんは規模が小さめの企業にもようやく関心が向けられるようになったと感じている。 米スターバックスなどに飲料用ストローを供給している双童日用品の経営者、楼さんは「多くの融資会社が資金を投じたいとか、もっと早く発展できるよう手助けしたいと言って接触してくる」と語った上で、「資金繰り環境はこれまでになく良好だ」と話す。

中国当局は国内の与信拡大にブレーキをかけつつあるものの、必ずしも経済の伸びや商品需要の減速を示唆するものではないことを楼さんの経験は示している。 与信と成長率の関係性にかつてほどの強さがないためだ。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に関連する輸出の好調は続く見通しで、今年は外需が中国経済のけん引役の 1 つとなっている。 国内に目を向けると、新規融資が楼さんのような民間企業にも見られる一方で、多額の借り入れをしなくても事業を拡大できるサービス・テクノロジー企業が中国経済全体に占める割合も大きくなっている。 ビジネスモデルの変化に伴い、高水準の負債を抱える不動産セクターへの投資と、与信が切り離されたと主張するエコノミストもいる。

クレジットインパルス

中国ウオッチャーは景気循環の指標として、国内総生産 (GDP) に対する新規貸し出しの伸びを示す「クレジットインパルス」に注目する。 国内の不動産開発企業やメーカー、地方政府は新規の借り入れをてこに投資を進め、雇用や工業用製品・商品の輸入需要を後押ししてきた。 これが生み出すのは、オーストラリアの GDP から新興国通貨の強さに至るまで、あらゆるものを関連付けるグローバルな産業サイクルだ。 中国のクレジットインパルスと歩調を合わせて米国債利回りが上昇する傾向があったり、S & P 500 種株価指数が下がりやすくなったりする。

中国当局がコロナ対応策の段階的縮小を探る中で、同国のクレジットインパルスは昨年終盤にピークを打ち、それ以降は低下傾向にある。 しかし、これが国内経済の減速を必ずしも意味するわけではない理由を幾つか挙げる。

民間セクター

中国人民銀行(中央銀行)は昨年、中小企業向けの貸し出しに限定した金融機関への資金供給を大きく増やした。 公式統計や独自データによると、これで中小企業向け与信の割合は大幅に高まったことが示されている。 民間企業は一般的に同じセクター内の国有企業に比べて効率性が高いため、民間投資は中国経済の生産力をより大きく高めることにつながることから、この点は非常に重要だ。

サービス業・ハイテクセクター

中国経済の軸足はこの 10 年で重工業・投資から「ニューエコノミー」と呼ばれるサービス業・テクノロジーセクターへと移ってきた。 中国の GDP に占めるサービス業の割合は昨年、約 55% と 10 年前の 45% から上昇した。 サービス企業は設備など固定資産への投資が比較的少額で済むのが普通だ。 多くの国・地域と同様にオンラインに移行するサービスは増えており、コロナ禍でデジタルシフトが加速していることを示す証拠もある。

建銀国際の崔歴チーフエコノミストは「最も与信集約型のセクターである建設業はもはや需要押し上げの主な源泉ではなくなり、与信の伸びによる中国の成長サイクルへの影響はこの数年で薄れた」と話す。

内部留保とエクイティーファイナンス

中国企業は新株発行や内部留保の活用など公式の与信指標には表れない方法で事業を拡大することも可能だ。 PwC によると、中国本土の証券取引所への上場で調達した資金は昨年、前年からほぼ倍増した。 (Tom Hancock、Bloomberg = 6-18-21)


中国家電に M & A の波 シェア拡大・海外展開に弾み

【広州 = 比奈田悠佑】 中国の家電メーカーが再編に動き始めた。 電子レンジ大手のギャランツは米家電大手の中国事業を買収した。 テレビ大手 TCL は地元の冷蔵庫大手に出資し、製品ラインアップの幅を広げる。 世界最大市場の中国で家電の普及が一巡するなか、M & A (合併・買収)を活用してシェア拡大や海外展開に弾みをつける。

ギャランツが米社事業買収

「互いに補い合い、大きな化学反応をもたらすだろう - -。」 5 月 22 日、ギャランツの梁恵強・副董事長は米家電大手ワールプールの中国事業会社、恵而浦(中国)の総裁に就任し、記者発表会でこう述べた。 ギャランツは 5 月上旬までに関連会社を通じ、恵而浦の株式の 50% 超を取得、傘下に収めた。 恵而浦は中国で冷蔵庫や洗濯機を販売してきたが、ここ数年は他のメーカーに押されている。 2020 年 12 月期の売上高は前の期比6%減の 49 億元(約 820 億円)、最終損益は 1 億 5 千万元の赤字と 2 年連続の最終赤字に陥っている。

ギャランツは電子レンジの自社ブランドを展開するほか、受託製造も得意とする。 業績は公表されていないが、世界市場でのシェアは 3 割とされる。 ただ電子レンジ以外で手掛ける冷蔵庫などの存在感は中国でも薄い。 恵而浦の知名度を生かしながら業容を拡大する狙いがあるようだ。

TCL グループは白物で出資拡大

冷蔵庫の設計・製造受託に強い広東奥馬電器は 5 月 10 日、TCL グループ傘下企業などが奥馬電器株の 24% 強を取得し、筆頭株主になったと発表した。 TCL は 1 月から奥馬電器株を段階的に取得していた。 一時は敵対的買収の様相も呈していた。 黒物家電が主力の TCL はテレビで世界シェア 3 位につけ、液晶パネルの外販も手掛ける。 グループではエアコンなど白物家電も取り扱うが、規模は限定的だ。 奥馬電器への出資を通じて補完する。

ギャランツや TCL がラインアップ拡充に走る背景に、中国家電市場の成長が頭打ちとなっていることがある。 調査会社の北京奥維雲網大数据科技によると、中国の 20 年の家電販売総額は 7,056 億元と前年比で 11% 減少した。 前年割れは 2 年連続だ。 事業の多様化の動きは広がっている。 エアコンなどを主力とする美的集団は 5 月中旬、幹部が「5 年以内に海外売上高を 350 億ドル(約 3 兆 8 千億円)に引き上げる」との目標を明らかにした。 20 年通期の海外売上高の 8 割増にあたる数値だ。 国内依存に危機感を持ち始めているもようで、当面 4 割強にとどまる海外売上高比率の向上を急ぐ。

大手同士の再編に発展も

中国の家電大手は重電や産業機器も手掛けながら成長した日本の電機メーカーと異なり、BtoC (消費者向け)ビジネスが中心だ。 白物から黒物まで幅広く手掛けるハイセンスは 5 月末、経営再建中の日本の自動車向け空調大手、サンデンホールディングスに 200 億円超を出資、買収した。 海外事業と BtoB (法人向け)事業を一挙に強化する狙いだ。

各社は M & A のほか、自社による新事業の育成にも動く。 空調大手の珠海格力電器はグループ内で医療関連事業を立ち上げた。 冷蔵庫や洗濯機を主力とするハイアールもバイオ医療事業を強化している。 いずれも高齢化などで中国の医療・ヘルスケア市場が拡大することをにらんでいる。 中国の家電メーカーは東芝や三洋電機など、日本メーカーの事業を相次いで取り込んできた。 中国内での再編が動き始めるなか、大手同士の合従連衡に発展する可能性もある。 (日経産業新聞 = 6-14-21)


中国で「反外国制裁法」が成立 欧米の制裁に対抗

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で 10 日、外国から制裁を受けた際に報復する「反外国制裁法」が成立した。 高速通信規格「5G」や新疆ウイグル自治区を巡る問題で圧力を強める欧米に対抗する狙いがある。 具体的な内容は近く公表される。 国営新華社通信は同法について、「外国の差別的な措置に反撃する際の強力な法治による支えと保障を提供するため、反外国制裁法の制定が必要だ」と伝えた。 中国が強力な報復措置をとるようになれば、欧米との間の緊張関係が高まる可能性がある。

中国は、トランプ米前政権で続いた中国企業などへの制裁への対抗策を次々に制定している。 昨年 10 月には、安全保障を理由に輸出規制を厳しくする「輸出管理法」を制定。 他国が中国に対して輸出規制などの措置をとった場合に、同じ措置をとれるとした。 また、商務省が 1 月に施行した「外国の法律及び措置の不当域外適用を阻止する弁法」では、外国の不当な制裁に従って中国企業との取引をやめるなど損害を与えた場合、中国側は損害賠償請求できると明記。 日本企業にも影響を与える可能性がある。 (北京 = 西山明宏、asahi = 6-10-21)


中国企業、かつてないペースで米国上場 - 年初来 IPO 規模 66 億ドル

中国企業は今年これまでのところ、かつてないペースで米国での上場を進めている。 米中間の緊張や米証券取引所の上場廃止のリスクが妨げになっていないことが示された。 ブルームバーグの集計データによれば、中国本土や香港の企業による米国での年初来の新規株式公開 (IPO) 規模は計 66 億ドル(約 7,120 億円)とこの時期としては過去最高で、前年同期の 8 倍に上っている。 このうち電子タバコメーカー、RLX テクノロジー(霧芯科技)が 16 億ドルと最大。 (Julia Fioretti、John Cheng、Bloomberg = 4-25-21)


中国経済の V 字回復、「転換点」過ぎたもよう - ゴールドマン

→ 政策の焦点が長期的な安定性と成長の問題への対応にシフト
→ 2019 年との比較で住宅着工と製造業投資は低迷

中国経済は 1 - 3 月(第 1 四半期)に記録的な急成長を遂げたが、新型コロナウイルス禍からの V 時回復はそこで終わり、現在は潜在成長率の水準に戻りつつあると米銀ゴールドマン・サックス・グループはみている。 中国経済は「転換点を過ぎたようだ」とホイ・シャン氏ら同行のエコノミストが 20 日のリポートで指摘。 「政策の焦点もコロナ禍で下振れした経済の回復支援から、長期的な安定性と成長の問題への対応にシフトした」との分析も示した。

ゴールドマンのエコノミストらはロックダウン(都市封鎖)があった昨年の GDP 急減に伴うゆがみを回避するため、2019 年と比較。 輸出と不動産販売は明らかに好調だが、住宅着工と製造業投資は低迷していると説明した。 こうしたパフォーマンスの格差は今後ある程度、収束するかもしれないがペースは鈍いとしている。 今年 3 月の小売売上高改善にもかかわらず、1 - 3 月期の家計貯蓄率は「執拗に高水準」で、短期的に家計消費が急増する強い兆しはないとも指摘。 「かなりのたるみが残っており、家計消費は遅れを取り戻すだろうが、不確実性の大きさと集団免疫獲得への長い道のりを考えると、ペースは恐らく抑制されるだろう」とコメントした。 (Bloomberg = 4-20-21)

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中国 GDP、1 - 3 月は過去最大の伸び - コロナ低迷の反動も

→ GDP は前年同期比 18.3% 増、予想 18.5% 増 - 前期比では伸び鈍化
→ 景気回復なおまだら模様、金融政策の転換速まると予想せず - 華興証

中国経済は 1 - 3 月(第 1 四半期)に急拡大した。 新型コロナウイルス禍で昨年導入されたロックダウン(都市封鎖)による落ち込みから投資と輸出主導で持ち直していたが、小売売上高も 3 月に大きく増加。 よりバランスが取れた回復を示唆している。 16 日発表された 1 - 3 月の国内総生産 (GDP) は前年同期比 18.3% 増と過去最大の伸び。 ブルームバーグのエコノミスト予想中央値は 18.5% 増だった。

前年同期はコロナ感染拡大を抑え込むため経済活動が停滞を余儀なくされた影響で GDP が落ち込んでおり、統計にはゆがみが生じている。 3 月の工業生産は前年同月比 14.1% 増。 市場予想は 18% 増加だった。 小売売上高は前年同月比 34.2% 増加。 市場予想は 28% 増。 1 - 3 月の固定資産投資は前年同期比 25.6% 増えた。 予想は同 26% 増だった。 中国経済は昨年 1 - 3 月の歴史的な縮小から着実に持ち直している。 コロナ禍で中国製の医療機器や電子製品の需要が急増しており、中国の景気回復は堅調な工業生産と輸出が主導。 個人消費は出遅れていたが、今回の指標はセンチメントの大幅改善を示唆している。

UBS の中国担当チーフエコノミスト、汪涛氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「中国経済の持ち直しはバランスがやや取れてきた」と指摘。 金融・財政政策の正常化が始まる中で、今後数四半期に不動産やインフラ投資は鈍化する見通しだと分析した上で、「今後の回復は先行してきた建設業から家計消費へと移っていくだろう」と述べた。 中国経済の勢いをより反映している前期比で見ると、GDP は 0.6% 増と 3.2% 増へと上方修正された昨年 10 - 12 月から伸びが鈍った。 汪氏はその主因として年初に確認されたコロナ新規感染やそれに伴う春節(旧正月)連休中の移動制限、追加の財政出動が乏しかった点を挙げた。

16 日の中国株式市場では CSI300 指数が一時 0.6% 下落する場面もあった。 華興証券香港のマクロ・戦略調査責任者、●(= まだれに龍)溟氏は「中国経済は過熱から程遠い」と指摘。 消費の改善は 1、2 月の移動制限に伴う繰り越し需要が一因で、景気回復はなおまだら模様だと語り、「消費者セクターに過熱を示す確固とした根拠はなく、金融政策の転換が速まるとは考えていない」と述べた。 (ジェームズ・メーガ、Lin Zhu、Bloomberg = 4-16-21)

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中国経済、今年は 10 年ぶり高成長か - UBS が 9% に見通し引き上げ

中国経済は今年、当初の想定を上回る高成長になるとの見通しを UBS グループが 16 日示した。 国内経済の力強い回復に加え、米国の経済対策が中国の輸出を後押しするとしている。 UBS の汪涛氏らエコノミストはリポートで、2021 年の国内総生産 (GDP) 成長率を 9% と予想。 そうなれば 10 年ぶりの高成長で、経済規模の米中逆転が早まる可能性もある。 これまでは 8.2% と見込んでいた。

「インフラ・不動産投資が鈍化したとしても、国内消費が実質で 10% 回復するとみており、輸出拡大と共に、企業の設備投資支援に寄与するはずだ」としている。 1 - 3 月の GDP は、中国が新型コロナウイルス封じ込めのロックダウン(都市封鎖)を行った前年同期に比べ 19% 余り増えると予想した。 (Bloomberg = 3-16-21)