カレンダーの「赤い字」にご注意 五輪で 3 つの祝日変更

今夏は祝日にご注意を - -。 東京五輪・パラリンピック開催に合わせて海の日、山の日、スポーツの日が変更になっている。 修正が間に合わず、カレンダーや手帳の多くが、変更前のまま。 7 月 19 日が赤字のカレンダーの人は要注意だ。

千葉県松戸市の 60 代男性は 7 月末に誕生日を迎える娘のため、同月 17 日から 3 日間の予定で遠出するつもりだった。 妻から「祝日が動いているよ」と言われて初めて気づき、日程を練り直しているという。 埼玉県所沢市の会社員男性 (52) が使うカレンダーや手帳は祝日の変更が反映されていなかった。

岩手県に帰省する日程を考えた時、22 日から 4 連休になっていることを知った。 「五輪が延期されることは分かっていたのだから、もう少し早めに祝日の日程を決めてくれていたら」と話した。

祝日の変更は、改正東京五輪・パラリンピック特別措置法で決まった今年のみの特例措置。 東京五輪・パラリンピックの開催期間中、混雑を緩和することで、選手らの円滑な移動と市民生活の両立を図るのが目的だ。

海の日は 7 月 19 日(月) → 22 日(木)、
スポーツの日は 10 月 11 日(月) → 7 月 23 日(金)、
山の日は 8 月 11 日(水) → 8 日(日)に変更され、翌 9 日(月)は振り替え休日になる。

このため 7 月 19 日は平日で、23 日の五輪開会式前後は 4 連休、8 月 8 日の閉会式前後は 3 連休、10 月 11 日は平日になる。

一部のアプリでも反映されず

カレンダーの出版、印刷業者 28 社でつくる全国カレンダー出版協同組合連合会(東京都台東区)は「変更に気づかず、間違って会社や学校に行ったり休んだりしないよう気をつけてほしい」と呼びかける。 カレンダーの印刷は、早い業者で 1 年前から取りかかる。 改正特措法の成立が昨年 11 月末だったため「どの業者もスケジュール的にまったく間に合わなかった。 変更が決まるのを待っていたら、カレンダーを市場に出せなかった。」と話す。 「カレンダーはサイズや文字の大きさがバラバラなので、全てに対応できる修正シールをつくるのも難しい」と悩む。

紙のカレンダーだけでなく、一部のカレンダーアプリでも反映されていないものがあるので注意が必要だ。 内閣官房は、周知のチラシを作成し首相官邸のホームページで公開。担当者は「大会まであと 1 カ月を切ったが、混乱を防ぐため周知していきたい」と話す。 (池上桃子、藤野隆晃、asahi = 6-30-21)


コンビニは DHC と「取引中止を」 5 万人分の署名提出

化粧品大手ディーエイチシー (DHC) が、在日韓国・朝鮮人に対する差別的な文章を会長名で公式オンラインショップに公開していた問題で、市民団体が 24 日、取引先のコンビニ各社に対し、同社との取引中止を求める約 5 万人分の署名を提出した。 DHC は昨年 11 月、同社のサプリメントが他社より優れていると主張する中で、在日韓国・朝鮮人への差別的な言葉を使った文章を、吉田嘉明会長名で自社サイトに掲載。 さらに、今年 4 月と 5 月にも、差別的な文章を載せた。 文章はすでに削除されている。 高知県南国市や神奈川県平塚市など各地の自治体が、DHC との協定を解消する動きも起きている。

市民団体は「DHC との取引の停止をコンビニ各社に求める会」。 団体の世話人で、差別の問題も取材してきたジャーナリストの清義明さん (54) が市民らに呼びかけて結成。 オンライン署名サイト「Change.org」で、先月から署名を始め、今月 23 日時点で 5 万 2,353 筆を集めた。 24 日には、「セブン-イレブン」、「ローソン」、「ファミリーマート」、「ミニストップ」の運営会社を回り、署名を提出した。

署名とともに提出した文書では、DHC が文章を削除したことに対し「消費者や被差別当事者などへの公式の見解は一切なく、この批判を真摯に受けとめている様子はまったく見られません」と指摘。 「このような企業と取引を続けていくのは、企業姿勢や社会的責務を問われることになります」とした。 今後、各社の回答を集めた上で、後日公開するという。 清さんは署名の際の取材に、DHC の差別的文章について、特定の民族や国籍の人たちを排除する「ヘイトスピーチ」と指摘。 「ヘイトスピーチを容認する企業と取引をしてもよいのか。 見直してほしい。」と話した。

署名を受け取った各社は、朝日新聞の取材に、次のように回答した。

・ ミニストップは親会社のイオンが答えた。 イオンは今月 2 日、DHC がイオンに対し「文章の非を認め、発言を撤回」したことなどから取引を続けると表明しており、回答も 2 日付の発表にならったとしている。
・ 「取引先に対しても、人種・民族・国籍の事由を理由とする不当な差別を助長するようなことがないように求めております。 個別の取引先との取引の当否または適否については回答を控えさせて頂きます。(セブン-イレブン)」
・ 「取引先に対し、人権に対する考え方をご理解頂けるよう対話を続けていく。(ローソン)」
・ 「ビジネスパートナーと協働して人権尊重を推進すべく努めております。 個々の案件については回答を控えさせて頂きます。(ファミリーマート)」
・ 「(DHC に)当社の方針にご賛同、ご理解いただいたものと判断し、取引を継続することといたします。」(ミニストップ)
また、DHC 広報部は取材に対し「コメントを差し控えさせていただきます」と回答した。 (高橋健次郎、asahi = 6-24-21)


民間 AM 局の大半、7 年後までに FM 化へ 対応端末必要

全国の民間 AM ラジオ 47 局のうち 44 局が、2028 年秋までに FM ラジオ局に転換をめざすことになった。 15 日、在京 3 社が代表して会見し、明らかにした。 28 年以降も AM を併用する局もある一方、一部の局は AM を停波して FM に一本化する方針だ。 AM は遠くまで電波を飛ばせるが、遮蔽物や他の電波が多い都市部での受信しにくさや、送信所に広い敷地が必要で河川敷などが多いため水害に弱いことなどの課題があった。 各 AM 局は 14 年以降、AM の番組を FM で同時に放送する「FM補完放送(ワイド FM)」を実施しているが、AM と FM の二重費用や、FM に比べて高い設備更新費などが負担になっていた。

ただ現在の制度では AM 局が AM 放送をやめて FM だけのラジオ局になることはできない。 日本民間放送連盟(民放連)が 19 年、これを可能にする制度改正を求めたのを受け、総務省は 22 年にかけて制度を改め、23 年にも停波の実証実験を始める方針だ。 この日会見した在京 3 局(TBS ラジオ、文化放送、ニッポン放送)によると、総務省の実証実験には、47 局のうち 21 局が参加する意向を示しているという。

在京 3 局は早ければ、放送免許の更新時期にあたる 28 年秋に AM を停波する。 ほかの AM 局も、AM を補完的に残しながら FM に転換したり、AM 停波時期を検討したりしているという。 ただし北海道と秋田の計 3 局は、放送エリアが広大であることなどを理由に AM 放送を続ける。 現在の AM 局の放送を FM 転換後も聴き続けるにはワイド FM の周波数(90.0 - 94.9 メガヘルツ)を受信できる端末が必要。 FM が聴けるラジオでも、90 メガヘルツ未満の目盛りしかなければ、聴くことはできない。

19 年の国の調査によると、ワイド FM 対応端末の普及率は 53% にとどまる。 さらに、FM 波が届かない山間地域などへの対応も課題として残る。 入江清彦・TBS ラジオ会長は「あくまで事業者の経営判断だが、今のリスナーを軽んじる判断はあり得ない。 各社、今のリスナー確保に努めながらやっていく。」と述べた。 一方 NHK は AM 波を維持するが、今年 1 月に公表した中期経営計画(21 - 23 年度)で、現在の AM 第 1 と第 2 を一本化し、25 年度に FM と合わせて 2 波にする方針を示している。 (野城千穂、asahi = 6-15-21)


牛肉、食用油、あの野菜も … 食品の値上げ続々 理由は

身近な食品の値上がりが相次いでいる。 食用油や小麦粉などの加工品から、牛肉や野菜といった生鮮食品まで品目は幅広い。 需要が増えて原料価格が上がったり、天候不順で生産量が減ったりと原因も様々。 家計の負担が、じわりと重くなりそうだ。

とりわけ値上げが目立つのが、食用油だ。 J-オイルミルズは 8 月 2 日から、家庭向け油を 1 キロあたり 50 円以上、値上げする。 値上げは今年に入って 3 回目で、年初時点に比べると計 110 円以上の値上げになる。 年 3 回も値上げをするのは 2012 年以来 9 年ぶりで、値上げ幅は記録が残る中で最大だ。 日清オイリオグループや昭和産業も同様の値上げを発表している。

原因は、原料の輸入大豆の価格高騰だ。 国内で消費される植物油は、菜種油と大豆油が、あわせて半分を占める。 農林水産省によると、5 月のシカゴ大豆相場は一時、1 トンあたり 610 ドル前後と、昨年同時期の倍前後まで高騰した。 アフリカ豚熱で減っていた中国の豚肉生産が回復し、搾りかすがエサになる大豆の輸入量が急増している。 農水省の担当者は「コロナ禍で行き場を失った投機マネーが流れ込んでいる可能性もある」と指摘する。

影響でマヨネーズも値上がり

J-オイルミルズは、7 - 9 月の仕入れ値は、大豆が前年同期比 8 割増、菜種が約 2 倍になると想定する。 広報担当者は「原料価格は過去に類を見ない水準になっている」と話す。 八馬史尚社長は 5 月の会見で「価格改定しても、原料価格の高騰が(値上げ分を)上回っている。 非常に厳しい状況が続くと想定している。」と話した。 影響は食用油だけにとどまらない。 キユーピーと味の素は、原料に油を使うマヨネーズの値上げを発表した。 また、大豆の価格高騰につられる形で小麦の相場も上がっており、日清フーズやニップンは小麦粉やパスタの値上げを発表した。

そばも、じわりと値上がりしている。 主な輸入先の中国で大豆などへの転作が進み、原料価格が高騰しているという。 そばチェーン「ゆで太郎」は、かけそばなどを平均 20 円値上げ。 立ち食いそば店「名代富士そば」のダイタングループは現時点で値上げの予定はないが、広報担当者は「主な仕入れ先の中国で、価格が下がる見込みがない。 厳しい状況だが、可能な限り耐えていきたい。」と厳しさを訴える。

ジャガイモ 38% 高、巣ごもりでカレー需要?

牛肉や野菜など、生鮮食品も値上がりしている。 特に上がっているのが輸入牛肉だ。 独立行政法人農畜産業振興機構 (ALIC) によると、米国産牛は、肩ロースやサーロインなどの 4 月の卸価格が前年より 1 - 2 割高い。 牛丼や焼き肉に使われるショートプレート(バラ肉)は 6 割以上高く、今後の小売価格にも響く可能性がある。 輸入牛の値上がりは、天候不順の影響が大きい。 豪州では一昨年までの干ばつで牧草が育たず、牛の出荷を早めたため生産量が減った。 その結果、米国産の牛肉も、消費が伸びている中国や韓国との間で争奪戦が激化している。

日本の輸入牛のシェアは、豪州産と米国産が計 9 割近くを占める。 農水省によると、豪州産の輸入量が回復するには 2 年ほどかかるという。 担当者は「新型コロナのワクチン接種が進む米国内でも、外食などの消費が戻っている。 当面、価格は高めに推移しそうだ。」と話す。

フードマーケットつばさひばりケ丘店(東京都西東京市)では、輸入牛は豪州産を主に扱っていたが、今年 1 月以降は店頭から消えた。 米国産も、6 月中旬には値上げをしなくてはいけない状況という。 久保田浩二店長は「高くなったとお客様が感じないような工夫が必要になる」と話す。 別の首都圏のスーパーは、平日は牛肉の少量パックを増やして「割安感」を出す工夫を重ねているという。

コロナ禍の巣ごもり需要が影響しているのが、ジャガイモだ。 農水省の調査では、5 月 24 - 26 日の平均価格は 1 キロ 569 円と、平年より 38% 高い水準。 天候不順で、春先から出回る九州産の出荷が少ない一方、コロナ禍で自炊をする人が増え、カレーでの利用やレトルト食品向けの需要が増えているという。 ただ、収穫量が増えるにつれて価格は落ち着く見通し。 (若井琢水、高木真也、田幸香純、asahi = 6-7-21)


出生数、過去最少の 84 万人 婚姻が急減して戦後最少に

2020 年に国内で生まれた日本人の子どもは 84 万 832 人と、前年より 2 万 4,407 人 (2.8%) 減って過去最少となった。 減少は 5 年連続で、政府の推計よりも 3 年早く 84 万人台に入った。 婚姻数は前年より 12.3% 減の 52 万 5,490 組と急減し、戦後最少となった。 新型コロナウイルスの影響も重なり、日本の少子化が加速している。 厚生労働省が 4 日、人口動態統計を発表した。 20 年の出生数は、90 万人を初めて割り込んで「86 万ショック」と呼ばれた 19 年の 86 万 5,239 人から、さらに大きく減った。 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の直近の推計(17 年)では、84 万人台になるのは 23 年と見込まれていた。

一人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、20 年が 1.34 と、前年から 0.02 ポイント下がった。 低下は 5 年連続。 都道府県で最も低いのは東京都の 1.13。 最も高いのは沖縄県で 1.86 だった。 政府は、昨年 5 月に改訂した少子化対策の指針「少子化社会対策大綱」で、基本的な目標に、子どもがほしいという希望がかなった場合に見込める出生率「希望出生率 1.8」を掲げているが、遠く及ばない。

婚姻数は前年から一気に 7 万 3,517 組減った。 日本では婚姻数の減少に合わせて出生数が減る傾向にあり、今後の出生数をさらに押し下げる可能性がある。 厚労省は、新たな元号に合わせた前年の「令和婚」の反動による減少が要因の一つとみるが、専門家からは、コロナ禍の影響も要因として指摘されている。 また、離婚件数は 19 万 3,251 組と、前年より 1 万 5,245 組 (7.3%) 減った。 一方、死亡数は 137 万 2,648 人で、11 年ぶりに減少した。 死因別にみると「肺炎」が前年より 1 万 7,073 人減ったことが大きく、コロナ対策として手洗いやマスク着用などを徹底したことが、他のウイルスの予防にも役立ったとみられている。

出生数と死亡数の差である「自然増減数」は、53 万 1,816 人減と、過去最大の減少だった。 日本総研の藤波匠・上席主任研究員の試算では、21 年の出生数は 79 万 7 千人まで落ちこむ。 社人研の推計では 80 万人台を割るのは、2030 年と見込んでおり、9 年早まることになる。 少子高齢化が加速すると、将来の働き手の減少や消費の縮小につながり、年金や医療、介護などの社会保障制度の安定性も揺るがしかねない。 (久永隆一、asahi = 6-4-21)

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昨年の妊娠届 4.8% 減、過去最少か 出生数 1 万人超減

2020 年に全国の自治体に提出された「妊娠届」は 87 万 2,227 件で、前年から 4.8% 減った。 19 年の同 3.3% 減よりも落ち込み幅は大きくなった。 新型コロナの感染拡大を背景に、妊娠を控える動きが広がったとみられる。 厚生労働省が 26 日発表した。 妊娠届は、妊娠 11 週までに 9 割以上が提出している。 2018 年度分までは年度ごと(4 月 - 翌年 3 月)の集計しかなく単純比較はできないが、20 年(1 - 12 月)は過去最少とみられる。 初の緊急事態宣言が出ていた 5 月が前年同月比 17.6% 減と、年間で最も大きく落ち込み、7 月も同 10.8% 減と落ち込んだ。

コロナ流行期の自粛が妊娠などに与える影響を調査している厚労省の研究班(代表者 = 安達知子・愛育病院長)は「昨年 3 月から 5 月が一番の自粛期間だった。 この時期に妊娠を控えて妊娠届が減ったのだろう。」との見方を示す。 一方で、年後半は減少幅が小さくなり、9 月と 12 月は同 1% 台の減少だった。 厚労省の担当者は「5 月と 7 月は明らかに届け出数が減っており、コロナの影響があったと思われるが、1 年を通すと例年とほぼ変わらない減少幅と考えられる」と話す。 ただ、26 日に発表された今年 1 月の妊娠届数は前年同月比 7.1% 減となっており、昨冬以降の感染拡大が妊娠や出産に影響している可能性がある。

厚労省は近く、20 年の出生数を公表するが、例年通りの推計を当てはめると 85 万人を割り込む見通しだ。 19 年(86 万 5,239 人)よりも 1 万人以上減る計算になる。 コロナ禍で少子化が加速する懸念も強まっている。 (久永隆一、asahi = 5-26-21)

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1 月の出生数急落、14% 減 コロナ禍で出産控え加速

今年 1 月の出生数が前年同月と比べマイナス 14.6% の 6 万 3,742 人だったことが、厚生労働省の人口動態統計の速報値で明らかになった。 速報値には、国内で生まれた外国人や国外で生まれた日本人も含まれ、厚労省によると 2000 年以降で最大の減少率という。 新型コロナウイルスの感染拡大によって妊娠や出産を控える動きが出生数にもあらわれた形で、少子化が一層進む懸念がある。 1 月の出生数は昨年 1 月の 7 万 4,672 人から 1 万 930 人減った。 新型コロナの感染拡大以降では昨年 5 月の前年同月比 9.7% 減が最大の落ち幅だった。 昨年は通年でマイナス 2.9% だったが、今年 1 月に入って減少幅が拡大した。

厚労省の担当者は「昨年 5 月から妊娠届の件数が目立って減っている。 その頃、妊娠していた方が出産を迎える時期で、出生数が減ったのだろう」と話す。 妊娠後に自治体に出す妊娠届は、妊娠 11 週までに全体の 9 割以上が提出されるが、政府が 1 回目の緊急事態宣言を出していた時期と重なる昨年 5 月は、妊娠届が前年同月比 17.6% 減と大きく落ち込んでいた。 同 10 月までの推移をみると、増減はあるものの、前年の同月と比べていずれもマイナスが続く。

出生数の確定値(国内の日本人の出生数)は 16 年に統計を取り始めた 1899 年以降初めて 100 万人を割り込むと、2019 年に 86 万 5 千人と初めて 90 万人を割り込んで「86 万ショック」と呼ばれた。 20 年の確定値はまだ出ていないが、85 万人を割り込むとみられており、今年はコロナ禍による出産控えから、80 万人割れする可能性があるとの見方が出ている。 (久永隆一、asahi = 3-24-21)


繰り返される豪雨の逃げ遅れ、避難情報はなぜ届きにくい

異例の早さで西日本は梅雨入りし、日本列島は本格的な出水期を迎える。 近年は雨の降り方が激甚化、局地化し、毎年のように豪雨災害が起きている。 そのたびに指摘されるのが避難の遅れだ。 市町村が住民に避難を促すために発表する避難情報は、なぜ届きにくいのか。

「何しよる、早う来い」と防災会

2018 年 7 月の西日本豪雨で広島県三原市では 21 人(災害関連死を含む)が亡くなった。 中心部から北西に約 10 キロの、なだらかな山と田畑に囲まれた高坂町地区。ある住民の男性 (74) の自宅近くでは、すぐ脇を流れる仏通寺(ぶっつうじ)川があふれ、近くの護岸が 40 メートルほどごっそり崩れた。 7 月 6 日夜、市内全域に避難指示が出たことは、男性はテレビを見て知っていた。 部屋から懐中電灯を照らし、仏通寺川があふれているのを見た。 川の石と石がぶつかり合う音も聞こえ、やがて水が庭に流れてきた。

「何しよる、早う来い。」 自主防災会の役員に避難するよう促されたが、男性は田んぼの様子を見て、過去の経験から「まだ大丈夫」と家にとどまった。 家屋への浸水は免れたが、庭は 40 センチほどの高さまで泥水につかった。

男性だけではない。 三原市と東京の民間調査会社「サーベイリサーチセンター」が、避難指示を受けていた市民から無作為に 1,200 人を選んでアンケートしたところ、75.4% が避難していなかった。 避難しなかった理由は「自宅・職場にいても安全だと思った」が 65.4% と最も多かった。 「避難した経験がなかった (33.6%)」、「近所の人も避難していなかった (22.6%)」が続いた。 「警報や避難の情報を見聞きしたが、どうすればいいか分からなかった」という人もいた。

情報で人は動かないのか

避難指示などはなぜ伝わりにくいのか。 関西大社会安全学部の元吉忠寛教授(災害心理学)の答えは「人間は情報に基づいて行動することが苦手だから」と明快だ。 「情報で住民の『リスク認知』を高めようとしても、避難を促せない可能性がある。」 元吉教授によると、人類は目の前にある危険を経験しながら進化してきたため、直接的な危険には感情的に反応できる。 「だが災害では、直接的な危険を目の当たりにした段階で避難を始めては遅い。 避難にも危険が伴う。」

そこで元吉教授が呼びかけるのが「計画避難」だ。 安全で快適な避難場所を事前に決めておき、危なくなる前にそこへ行くことを、ルール化しておくというわけだ。 行きたくなる場所に避難するなら、ハードルは下がる。 ホテルや旅館に泊まる、子どもが住むマンションへ行き孫と遊ぶ - -。 元吉教授はそんな「避難所」を提案する。 従来の避難所の環境改善にも力を入れるべきだと訴える。 「人は現状より劣悪な環境にわざわざ行くことはしない。」

では、避難を促す「情報」はどうあるべきか。 5 月 20 日から市町村の避難情報は、これまでの「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が避難指示に一本化された。 避難のタイミングをより明確にするのがねらいだ。 ただ、これが住民の行動にどれだけ結びつくかはまだ分からない。

センサー設け、避難の「スイッチ」に

京都府福知山市は今年から避難情報とは別に、補完情報も発信する。 「避難情報では、市民が災害の危機をリアルに捉えられない(森下邦治・危機管理室長)」と考えるためだ。 補完情報とは、災害につながりそうな予兆を地域ごとに見つけ、知らせる仕組みだ。 浸水については、低い土地などにセンサーを設ける。 センサーが浸水を検知すると、LINE (ライン)やメールで自治会長らに伝わり、そこから住民に伝わる。 「ここが浸水すれば避難」という「スイッチ」だ。

市東部の観音寺地区には、低地の水路脇など 3 カ所に設置された。 西日本豪雨では水路から水があふれ、浸水被害も相次いだ。 自主防災会長の小滝篤夫さん (72) は「手遅れにならないうちに、早めに避難を始めることが大切。 最近の浸水害は大型化している。 センサーには期待したい。」と話す。

広島県三原市でも西日本豪雨の後、地元の防災士が動き出した。 「土砂が流出」、「川が増水してきた」といった災害につながりそうな現場の様子を防災士が撮影し、映像を地元ケーブルテレビ局と FM ラジオ局の担当者らに LINE で送り、災害放送に役立ててもらう。 危機を目に見えるかたちで伝え、避難を促そうという取り組みだ。 市防災士ネットワーク会長の竹原茂さん (70) は「画像は身近な危機を具体的に伝えられる。 写真の撮り方はもちろんだが、LINE で送る際に、現場の状況を簡潔でわかりやすく説明する訓練も重ねたい」。 (神元敦司、asahi = 5-31-21)


火災保険料が大幅値上げへ … 自然災害増、値上げのスピード追いつかず

火災保険料が大幅に値上げされる見通しとなった。 豪雨や台風など、自然災害が増えているためだ。 損害保険各社で作る「損害保険料率算出機構」は、一般住宅を対象とする火災保険料の目安となる「参考純率」を、約 11% 引き上げる方向で調整している。 金融庁に届け出て審査を受けた後、正式に発表する。 参考純率は、損保各社が過去に支払った保険金額などを踏まえて算出される。 引き上げが決まれば、2019 年以来、2 年ぶり。 引き上げ幅は 05 年 (8.7%) を上回り、過去最大となりそうだ。

損保各社は、22 年度に火災保険料の値上げに踏み切るとみられる。 参考純率を目安に、個別の事情を加味するため、値上げ幅は 11% よりも大きくなる可能性が高い。 19 年に参考純率が 4.9% 引き上げられた際には、損保大手 4 社は保険料を 6 - 8% 値上げした経緯がある。 火災保険は、火事による家屋の損害だけでなく、風水害による被害にも保険金が支払われる。 ここ数年、自然災害は増加傾向にあり、主要各社の火災保険収支は赤字傾向となっている。

日本損害保険協会によると、18 年度の損保各社の自然災害に伴う保険金支払額(地震による被害を除く)は、過去最大の約 1.5 兆円になった。 19 年度も 1 兆円を上回った。 20 年度は約 2,500 億円に減少したものの、自然災害の増加に、値上げのスピードが追いついていないのが実情だ。 機構は、自然災害の発生状況を、なるべく早く保険料に反映することを目指し、参考純率の適用期間を、これまでの 10 年から 5 年に短縮する。 契約のタイミングによって保険料に大きな差が出ることを防ぐ狙いもある。 主要各社の火災保険の契約期間は、22 年度以降、現在の最長 10 年間から、最長 5 年間に短縮される見通しだ。 (yomiuri = 5-28-21)


10 - 20 代の約半数、ほぼテレビ見ず「衝撃的データ」

10 代、20 代の半数がほぼテレビを見ない - -。 NHK 放送文化研究所が 20 日に発表した国民生活時間調査で「テレビ離れ」が加速している実態が浮かび上がった。 この調査は日本人の生活実態を探ろうと、1960 年から 5 年ごとに実施。 今回は昨年 10 月に行った。 全国 10 歳以上の 7,200 人を無作為に抽出し、郵送によって、4,247 人から有効な回答を得た。

テレビ視聴は、調査日にテレビを 15 分以上視聴した場合のみ「見た」として集計。 平日に「見た」人は、▽ 10 - 15 歳 56% (前回 2015 年は 78%、22 ポイント減)、▽ 16 - 19 歳 47% (同 71%、24 ポイント減)、▽ 20 代 51% (同 69%、18 ポイント減)。 いずれも 5 年で 20 ポイント前後減った。 上の年代でも、30 代 63% (同 75%、12 ポイント減)、▽ 40 代 68% (同 81%、13 ポイント減)、▽ 50 代 83% (同 90%、7 ポイント減)と減少。 60 代は前回と同じ 94%、70 歳以上は 95% で 1 ポイント減だった。 全体でも 85% から 79% に下落している。

若年層のテレビ視聴減少の背景要因として、主に夜間帯はインターネットの利用の活発化、朝の時間帯は男女を問わず化粧や身支度などの身の回りの用事が増えていることを挙げている。 渡辺洋子研究員は「衝撃的なデータ。 若年層にとってテレビは毎日見る『日常メディア』ではなくなってしまったために減少幅が大きくなった。」とみている。 21 日には調査データをNHK 放送文化研究所のホームページ で公開する予定。 (宮田裕介、asahi = 5-20-21)


災害時呼びかけは「避難指示」に 20 日から勧告は廃止

災害時に市区町村が住民に避難を呼びかける「避難勧告」が 20 日で廃止となり、「避難指示」に一本化される。 内閣府は、改めて自分が住む地域の災害リスクの把握や状況に応じた避難方法の確認を求めている。 避難勧告はこれまで、災害のリスクがある場所にいる人全員に避難を呼びかけ、避難指示はさらに重ねて避難を求める情報だった。 20 日午前 0 時に勧告が廃止され、これまで勧告が出されていたタイミングで指示が出される。

避難指示は 5 段階ある大雨警戒レベルのうち、2 番目に危険度が高いレベル 4。 指示が出た時点で、基本的には避難を始めることが求められる。 マンションの高層階などに住んでいる場合は、必ずしも避難所へ行く必要はない。 最も危険度が高いレベル 5 は名称が「災害発生情報」から「緊急安全確保」へと変わり、災害発生が切迫した段階で出される。 この時点では避難所へ移動するのは危険なので、自宅の 2、3 階や付近の高い建物への移動など状況に応じた行動を住民に求めている。 (asahi = 5-19-21)