米ブラックロック、アジアの劣悪労働環境に「NO」
コロナ大量感染のゴム手袋大手、ESG マネー逃避も

【シンガポール = 村田菜々子】 世界各国が株高に沸く陰で、東南アジアの劣悪な労働環境に対する投資家の視線が厳しさを増している。 米資産運用最大手ブラックロックは 6 日、新型コロナウイルスの大規模なクラスター(感染者集団)を出したマレーシアのゴム手袋製造大手トップ・グローブの株主総会で、社外取締役 6 人の再任に反対票を投じたと伝わった。 欧米の投資家を中心に、工場や従業員寮の環境整備が遅々として進まない企業への批判は強い。 今後は株価の波乱要因として無視できなくなってきた。

労働問題、ESG ブームで改めて脚光

東南アジアの労働問題は根が深い。 トップ・グローブは医療現場で使う使い捨てゴム手袋の世界最大手だが、こうした大企業でも生産の前線を支えるのは周辺の貧しい国々からやってくる労働者たちだ。 彼らは生きるために過酷な環境にも耐えざるを得ない。 報道によると、トップ・グローブで昨年 11 月ごろにクラスターが発生した後に管理体制の不備を内部告発した従業員が解雇されたという。 現地メディアによれば、トップ・グローブ株を約 1% 保有するとされるブラックロックは 6 日の株主総会で一連の事態に憂慮を表明。 「個人用防護具の最大手としての立場を考えると、コロナ対策や従業員の健康・安全管理の不備は同社の評価に深刻な影響を与えかねない」と述べ、現経営陣の対応に苦言を呈した。

社内の感染拡大によるトップ・グローブの業績への打撃はそれほど大きくない。 工場の一時操業停止が年間の売上高を 4% ほど押し下げる程度とみられる。 コロナ禍でゴム手袋の需要が急増したことに伴う好業績に水を差す水準ではない。 だが、折しも欧米勢を中心に ESG (環境・社会・企業統治)投資が隆盛局面を迎えている。 ブラックロックはその代表選手。 ESG への傾斜を強める「物言う株主」が企業の労働環境整備の遅れをやり玉に挙げ、他の投資家のマネー流出を招けば株価の波乱要因になってもおかしくない時代だ。

タイやシンガポールにも同じ構図

2020 年はトップ・グローブのほかにもマレーシアのゴム手袋大手コッサン・ラバー・インダストリーズや、パナソニック傘下のパナソニック・マニュファクチャリング・マレーシアでクラスターが発生し、タイのツナ缶世界最大手であるタイ・ユニオン・グループも集団感染に見舞われた。 シンガポールでも外国人労働者の寮で大規模な感染が発覚した。 いずれも構図はトップ・グローブと同じだ。 米政府が 20 年 7 月にトップ・グローブ製品の輸入差し止め命令を出すなど、アジアの「労働者搾取」に国際社会の目は厳しい。 ESG ブームが当分続くと予想される中、アジアの株式市場で思わぬ「銘柄選別」が起こる可能性には注意すべきだろう。 (NQN/nikkei = 1-8-21)


脱中国の台湾、世界 1 位の成長 … 中国の顔色を伺う韓国に完勝

今年一年で最も輝かしい経済成長を遂げた国は、人口約 2,357 万人の台湾だ。 台湾の行政院は先月 27 日「当初 1.56% だった 2020 年度の経済成長率見通しを 2.54% に上方修正する」と発表した。 これは、国際通貨基金 (IMF) が 10 月に予想した今年の韓国と中国の経済成長率(それぞれ -1.9%、0.9%)を大きく上回る。

IMF は同月、台湾の今年の経済成長率を 0% と見通していた。 しかし、今年 10 月と 11 月の台湾の輸出額は単月ベースで過去最高(1 位と 2 位)を記録した。 下半期の経済が予想以上の超好況の兆しを見せると、台湾政府が予想値を修正したのだ。 この見通しが現実になれば、台湾は 1991 年以来、29 年ぶりに中国の経済成長率を追い抜くことになる。 同時に、人口 2,000 万人以上の世界の主要国の中で、経済成長率 1 位の座に就くことになる。

台湾、3 年連続で韓国に完勝 … 29 年ぶりに中国も上回る

IMF の 2021 年度の経済成長率見通しでも、台湾 (3.2%) は韓国 (2.8%) を上回る。 文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足した 17 年から来年までの 5 年間で、18 年を除く 4 年は全て台湾の経済成長率(21 年は見通し)の方が高い。 昨年からは 3 年連続で台湾の完勝だ。 来年には台湾ドルの漸進的な切り上げも行われ、台湾の 1 人当たりの国民所得が史上初めて 3 万ドルを超えて韓国を本格的に脅かすとの見方が有力だ。

IMF は最近の報告書で「国内総生産 (GDP) に占める政府債務比率に関しては、台湾は 17 年の 34.0% から今年は 35.6%、25 年には 29.3% と安定的に管理されるだろう」との見通しを示した。 一方で韓国については、17 年の 40.1% から今年は 48.4%、5 年後には 65.0% へと悪化すると予想した。 国の予算を管理する政府の財政運営能力面でも、台湾の方が韓国よりも模範国家として認められているというわけだ。

1970 - 80 年代には、韓国と台湾は共に「アジアの 4 竜」として争っていたが、2003 年に 1 人当たりの国民所得で韓国が台湾を追い越して以降は差が広がり続け、韓国は台湾を「格下」と見てきた。 そのため韓国にとっては今の状況は実に恥ずかしいことだ。 いったいなぜ、このような逆転が起きたのか。 結論から言えば、中国に対する執権層の態度が、両国の経済の運命と国の命運を分ける重要な鍵として作用しているのだ。 台湾と韓国は GDP と総輸出に占める中国の割合が、それぞれ世界 1 位と 2 位であり、経済面での中国依存度が高い国なのだ。

中国と堂々と渡り合う台湾 vs 中国を格上のように敬う韓国

しかし最近 4 年間は、両国の対応は対照的だった。 新型コロナウイルスへの対応を見てもそうだ。 台湾は世界で最初に中国からの入国と往来を全面的に遮断し、強力な「中国防火壁」を立てた。 反対に韓国は、中国との経済協力や経済面での衝撃を理由に、これまで全面的な遮断措置を取らずにいる。

それぞれの結果は既にご存じの通りだ。 台湾で今年 1 月 22 日に初めて新型コロナの感染者が確認されて以降、これまで(12 月 30 日午後 9 時 39 分現在)の累積感染者数は 797 人、死亡者数は計 7 人で、韓国で最近確認されている 1 日の新規感染者数よりずっと少ない。 同じ期間の韓国の累積感染者数(5 万 9,773 人)と死亡者数(879 人)は、台湾と比べてそれぞれ 75 倍、126 倍多い。 台湾の人口が韓国の約半数だという点を考えても「K 防疫」の完敗だ。

2016 年 5 月に就任した蔡英文総統の「脱中国の産業政策」も経済復興の大きな力となっている。 蔡総統は、中国で高賃金化が進んで企業環境が不安定になっていることから、中国に進出している台湾企業の国内への復帰を積極的に誘導した。 その結果、昨年 8 月までに中国の工場などを撤収して台湾に U ターンすることを決め、台湾への再投資計画を明らかにした企業は 102 社にも上る。 世界最大の自転車メーカー「ジャイアント」や、コンピューターメーカー「コンパル・エレクトロニクス」、世界最大のファウンドリ(半導体の受託生産)企業「TSMC」などは、すでに台湾への移転を完了したか、または移転を進めているところだ。 これらの企業の台湾への投資計画は 5,047 億台湾ドル(約 1 兆 8,500 億円)に達する。

米中の覇権争いが激化する中、台湾政府は TSMC の米国アリゾナ州への半導体工場建設(120 億ドル投資)と、電子機器受託製造企業「フォクスコン」のウィスコンシン州への最先端液晶パネル工場建設(100 億ドル)を許可し、確実に「米国側」についた。 米中の対決という地政学的な変化に伴う反射利益に加え「コロナ特需」まで享受した台湾の IT 企業各社は、殺到する注文のおかげで今年は過去最高の好況を満喫している。

台湾は「脱中国」で超好況 … 韓国は THAAD 報復解除もまだ

おかげで、今年で在任 5 年目となる蔡英文総統は、台湾の歴代総統の中で最高の支持率 (74.5%) を記録した。 今年 5 月に行われた蔡総統の(2 期目の)就任式には米国のポンペオ国務長官をはじめ、41 か国・地域から 92 人の要人が映像で祝賀メッセージを送った。 国際社会で「仲間外れ」だった台湾の存在感をも急激に高めたわけだ。 韓国政府はどうだろうか。 2017 年末に文在寅大統領が 3 泊 4 日で訪中した際、中国の指導部との食事はわずか 2 回で、残り 6 回の食事を「ぼっち飯」で済ませるなど、中国をまるで「上国」(かつて小国から朝貢を受けた大国)のように敬っている。 さらに、終末高高度防衛ミサイル (THAAD) の韓国配備への報復措置から丸 3 年が過ぎた今でも、報復を解除するという発言を引き出せずにいる。

流血の天安門事件(1989 年 6 月)から 31 年を迎えた今年、世界中で、事件以来最も熱い反中の波が野原を燃やす炎のように広がった。 米国に近い日本・オーストラリア・カナダはもちろん、中国に友好的だった EU、インド、東南アジアの国々まで「中国の幻想」から目覚め、中国に背を向けた。 来月発足予定の米次期政権も、中国に高強度の圧力をかける方針を重ねて表明している。 2021 年も文在寅政権が中国への幻想にとらわれ、中国の顔色を伺うような態度を取り続けるのなら、経済が悪化して台湾との差が開くばかりか、国運の衰退を招くだろう。 (ソン・ウィダル、韓国・朝鮮日報 = 12-31-20)


世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は 2 位、1位は …

<世界 101 カ国の月ごとの検索データをもとに、海外移住に関連したフレーズと目的地となる国を分析。 各国ごとにもっとも検索された国を抽出し、ランク付けされた …。>

安全でフレンドリーなカナダが人気

先日の米大統領選直後、米国では「ニュージーランドに移住するには」というフレーズの検索が急増したとの報道があったが(ニュージーランド・ヘラルド)、世界の人たちはどの国に憧れを抱き、暮らしたいと思っているのだろうか? グーグルの検索データからはじき出されたのは、カナダがもっとも人気が高く、続いて日本という結果だった。 米誌フォーブスなどが伝えた。

調査を行ったのは、米フィンテック・スタートアップ企業のレミトリーだ。 同社によると、「海外移住するには」というフレーズが検索された回数は、2020 年 1 月から 10 月の間に 29% 増加したという。 そこで同社は、世界 101 カ国の月ごとの検索データをもとに、海外移住に関連したフレーズと目的地となる国を分析。 各国ごとにもっとも検索された国をはじき出し、ランク付けした。

移住したい国として世界でもっとも検索されたのは、カナダだった。 移住先としてカナダを検索した人が多かった国は 30 カ国に上ったという。 レミトリーは、世界平和指数で上位に入るほど安全な国であること、失業率が低いこと、移住の際にビザ取得の選択肢が多いこと、地元の人たちがフレンドリーであること、景色が美しいことなどが理由だとしている。

北米で人気の日本は英国好き

一方で、そんな憧れの国カナダの人たちが引っ越したいと考えて一番多く検索した国は、日本だった。カナダを含め 13 カ国の人が日本へ移住する方法を検索したようで、全体としても 2 位になった。 日本が人気だった理由としてレミトリーは、景色の美しさと治安の良さ、仕事が多いこと、生活の質が良いと評判であることなどを挙げている。

日本への移住方法を検索した人が多かった国はカナダの他に、米国、オーストラリア、ジョージア、モンテネグロなどがあった。 北中米諸国ではカナダを移住先と考えた国が 8 カ 国もあった一方で、カナダと米国では日本が人気だったことになる。 一方で、日本でもっとも検索された移住先は、英国だった。 英国に移住したいと考えた人が多かった国は、日本以外では英連邦であるセントルシアだけだった。

アジアでもっとも人気が高かった移住先は、「場所によって分かれた」とレミトリーは分析している。 南・東南・東アジアでは日本がもっとも人気が高かった一方で、中東やアラブ諸国では、カタールへの移住について多く検索された。カタールが人気の理由は、賃金が高く所得税がないこと、首都ドーハを中心にモダンなライフスタイルであること、などだという。

欧州各国からもっとも人気だった移住先はドイツで、医療体制が整っていること、経済が好調であること、公共交通機関が整っていること、犯罪率の低さ、環境の良さ、仕事が多いことが理由だという。 全体のランキングではドイツを上回ったスペインは、南米諸国からの移住先として人気だった。 言葉が通じることや文化が似ていることが理由だと考えられている。 また、医療体制、治安の良さ、生活の質の良さも魅力のようだ。 意外なところでは、米国に移住したいと考えた人が多かった国は 2 カ国だけだったが、そのうち 1 カ国はロシアだった(もう 1 カ国はノルウェー)。 (松丸さとみ、NewsWeek = 11-30-20)

全体のランキングは以下の通り(カッコ内の数字は移住先として検索した人が多かった国の数)。

1. カナダ (30) / 2. 日本 (13) / 3. スペイン (12) / 4. ドイツ (8) / 5. カタール (6) / 6. オーストラリア (5) / 7. スイス (4) / 8. ポルトガル (3) / 9. 米国 (2) / 10. 英国 (2)


「住みやすい都市」東京が世界首位に 米経済誌

米経済誌のグローバルファイナンスが公表した「住みやすい都市」の 2020 年の世界ランキングで、東京が首位になった。 欧米などの主要都市に比べて、新型コロナウイルスによる死者数が相対的に少ないことが評価された。 コロナ死者数のほか、経済力や研究開発力など 8 項目でランキングを集計した。 東京は新型コロナへの対応のほか、先進的な交通機関などでも高い評価を得た。

東京都の小池百合子知事は「海外から評価をいただき、大変光栄だ。 国際金融都市に向けた取り組みを加速する上でも、大きな後押しになる。」と話す。 2 位はロンドンだった。 経済や文化の評価はきわめて高い半面、人口あたりのコロナ死者数の多さが響き、東京の後じんを拝した。 1 位の東京、3 位のシンガポールのほか、アジアではソウル(8 位)がトップ 10 に入った。 政情不安が続く香港は 11 位だった。 (nikkei = 11-12-20)


EU、ベラルーシ大統領に制裁へ デモ弾圧の責任問う

欧州連合 (EU) は 6 日にも、ベラルーシ大統領選の不正疑惑をきっかけにした市民の抗議デモを弾圧した責任を問い、同国のルカシェンコ大統領らに制裁を発動する見通しだ。 EU はこれまでルカシェンコ氏に反政権派との対話を促して制裁対象から外していたが、事態が好転する兆しがないと判断した。 今回の制裁は、ルカシェンコ氏のほか、国家安全保障担当の大統領補佐官を務める同氏の息子らも追加する方向だ。 EU は既に 10 月から内相ら政権関係者 40 人に対して EU 域内の資産の凍結や渡航を制限する制裁を科してきた。

8 月 9 日の大統領選では、同国の選挙管理委員会はルカシェンコ氏の「圧勝」を発表。 同氏は選挙の不正疑惑に対する市民らの大規模抗議が続く中、9 月に一方的に 6 期目の就任式を強行した。 EU は、政権側が反政権派の立候補を相次いで阻んだうえ、選挙結果も偽造されたと断定。 従来の任期が切れる 6 日以降はルカシェンコ氏を正統な大統領とみなさない考えを示してきた。 EU は抗議デモへの暴力や報道規制なども強く非難しつつ、反政権派との対話の仲介役を務める用意があるとの立場をとってきた。 今回、ベラルーシ側との協議が極めて難しくなることも覚悟のうえ、ルカシェンコ氏への制裁に転じる。

また、欧州議会はかねて、ルカシェンコ政権には厳しい対応が必要だと指摘し、先月、人権や民主主義を守る活動をたたえる「サハロフ賞」をベラルーシの反政権運動に贈ることを決定。 市民側に寄り添う姿勢をいっそう鮮明にしていた。 ルカシェンコ氏に対しては、国家連合を組む隣国ロシアが支援。 9 月の首脳会談では、プーチン氏が経済的苦境にあるベラルーシに 15 億ドル(1,600 億円)の支援を表明するなど連携の強化を強調した。

ただ、反政権派は 10 月 25 日からのゼネスト入りを宣言。 ルカシェンコ氏は支持層である国営工場での大規模ストライキは抑え込んだものの、大統領選から 3 カ月たった今も数万〜十数万人規模の市民デモが週末ごとに繰り返されている。 政権は治安部隊を大量投入して抑え込みを図り、緊張状態が続いている。 (ブリュッセル = 青田秀樹、モスクワ = 喜田尚、asahi = 11-6-20)

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ベラルーシの野党指導者が行方不明に 覆面の男らが拘束か

ベラルーシの著名な野党指導者マリア・コレスニコワ氏が 7 日朝、首都ミンスクで覆面をした男性らにマイクロバスに押し込められた後、行方不明になっていることが明らかになった。 コレスニコワ氏の現在の居場所は明らかになっていない。 インタファクス通信は、警察はコレニスコワ氏を拘束していないと話していると報じた。 コレスニコワ氏は、反政権派の先鋒として、先月の大統領選で現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領 (66) の再選に反対した 3 人の女性のうちの 1 人。 主要対立候補だったスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏 (37) の選挙事務所のメンバーだった。

この大統領選をめぐっては不正選挙の懸念が浮上しており、4 週にわたってルカシェンコ氏の辞任を求める抗議デモが続いている。 6 日には首都ミンスクなどで行われたデモで 600 人以上が逮捕された。  ベラルーシのニュースサイト Tut.by は目撃者の話として、7 日の朝に覆面の男性らがコレスニコワ氏から携帯電話を奪い取り、同氏をマイクロバスに押し込んだと伝えた。

コレスニコワ氏は、野党が権力委譲のために設置した調整協議会のメンバーの 1 人。 一方ベラルーシ政府は、「調整協議会の創設と活動は、国家権力の掌握と国家安全保障を損なうことを目的としている」として、野党指導者らを刑事訴追した。 反政権派の 3 人の女性のうち、コレスニコワ氏以外の 2 人はすでにベラルーシを離れている。 そのうちの 1 人、ヴェロニカ・ツェプカロ氏は投開票の行われた 9 日にベラルーシを脱出。 チハノフスカヤ氏も 11 日にリトアニアに脱出した。

チハノフスカヤ氏はコレスニコワ氏の拘束について、調整協議会の活動を阻止するためのものだと指摘。 リトアニアから、「(当局が)我々を怖がらせるほど、人々が街に出てデモをするだろう」と声明を発表した。 調整協議会も、ルカシェンコ大統領が「大々的にテロの手段を使っている」と非難した。 また、協議会の広報担当アントン・ロデネンコフ氏とイワン・クラフツォフ事務局長も行方不明になっているという。 警察は、拘束についての情報はないとしている。

イギリスのドミニク・ラーブ外相は「コレスニコワ氏の身の安全を非常に懸念している」として、ベラルーシ政府に同氏の安全な帰還を最優先するよう求めた。 BBC ロシア語が 8 月に行った取材でコレスニコワ氏は、一連のデモは「権力を求めるものではなく」、「人間の尊厳と自己尊重を求めている」と説明。 ボディーガードを雇用しないことを決めたと話していた。 「バスいっぱいの治安部隊には、何人ボディーガードがいても意味がない。 我々は警察国家の能力を把握している。」 別の女性活動家オグラ・コワルコワ氏は 5 日、拘束される恐れがあるためポーランドに脱出したと発表した。

6 日のデモでは 600 人超が逮捕

インタファクス通信の報道によると、首都ミンスクでの 6 日の抗議デモのあと、警察は帰宅中の参加者を拘束した。 この時撮影された動画には、平服の男性らが平和的なデモ参加者を棒で殴っている様子が映っている。 ベラルーシ内務省は、この日だけで全国で 633 人を逮捕したと発表。 ユーリ・カライエフ内相は、治安部隊の行動を擁護した。 国営ベルタ通信によると、カライエフ内相は「彼ら(目撃者)はベラルーシ警察の残虐性について話しているが、私はこう言いたい。 世界のどこにも、ここ以上に人道的で節度のある、冷静な警察はいない。」と述べたという。

最近では、黒ずくめの服装にバラクラヴァ(目出し帽)をかぶった治安部隊が、夏休みから戻った大学生を標的にし、路上や大学の建物から所属不明のミニバンに引きずり込んでいる。 デモと警察による鎮圧が始まって以来、これまでに 4 人が死亡し、数百人が負傷している。 欧州連合 (EU) は 7 日、ベラルーシ政府に対し、抗議を受けた逮捕は「恣意的で説明がされていない」として、逮捕された市民の釈放を求めた。

EU は 8 月の大統領選の結果を認めず、ベラルーシに制裁を科すことを決定している。 ロイター通信は EU 外交筋の話として、ベラルーシ内相を含む 31 人の政府高官が制裁の対象になる予定だと報じた。 199 4年以来、同国の実権を握っているルカシェンコ大統領は、西側諸国の介入を非難している。 一方ルカシェンコ政権を支持しているロシアは 7 日、同氏が「数日以内」にモスクワを訪問する予定だと発表した。 (BBC = 9-8-20)

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ベラルーシ大統領選、不正を暴露 地元メディア、証言や録音

【モスクワ】 今月 9 日のベラルーシ大統領選でルカシェンコ大統領が 6 選を果たした結果は「捏造」だと国内外で批判が止まらない中、地元メディアなどは音声の証拠を提示し、不正が横行していたとみられる実態の一端を暴露している。 中央選管の最終集計によると得票率はルカシェンコ氏が 80.10%、反政権側の女性チハノフスカヤ氏が 10.12% だった。 地元メディアによると、北東部ビテプスクの学校の投票所では、地元当局者が選管職員に対し、ルカシェンコ氏とチハノフスカヤ氏の票数を入れ替えて最終結果とするよう指示する場面の録音が流出した。 (kyodo = 8-20-20)


中国・アジア企業、増益に転換 世界景気回復けん引
7 - 9 月、日欧は 3 割減益

企業業績の新型コロナウイルスからの回復に差が出ている。 世界の主要企業の 2020 年 7 - 9 月期は、純利益が前年同期比 9% 減となった。 経済再開が進み、4 - 6 月期の同 6 割減から改善した。 中国とアジアが増益に転じた一方、日欧は 3 割減益だった。 欧米が感染再拡大に直面する中、中国・アジアが全体に占める比率は 3 割を超え、けん引役となっている。 QUICK・ファクトセットの企業財務データを使い、約 1 万 2,000 社の実績や市場予想を調べた。 7 - 9 月期の純利益は 6,950 億ドル(約 73 兆円)と前年同期比で 9% 減った。 1 - 3 月は同 81% 減、4 - 6 月は同 59% 減で、減益幅は徐々に縮小してきている。

7 - 9 月期に増益に転じたのがアジア(前年同期比 27% 増)と中国(同 19% 増)だ。 特に中国は唯一、増収(8% 増)に転じた。 実質国内総生産 (GDP) が 4.9% 増と景気回復で先行し、企業業績にも表れている。 消費が戻り、養豚の牧原食品の純利益は約 6.6 倍、白酒製造大手の貴州茅台酒は 7% 増、電気自動車の比亜迪 (BYD) も約 15 倍となった。 業種別で好調なのが IT 関連だ。 中国のパネル大手の京東方科技集団 (BOE) の純利益は約 7 倍に拡大。 アジアでは台湾積体電路製造 (TSM) の純利益が四半期ベースで過去最高だった。

米国は巨大 IT 企業が下支えする。 米国は全体では 5% 減益となったが、利益額の大きいアマゾン・ドット・コム、アルファベット、フェイスブックの 3 社は増益を確保した。 アップルを加えた 4 社を除くと減益幅が 9% と拡大する。 世界貿易機関 (WTO) の予測では 20 年の貿易量が前年比 9.2% 減となる見込みで、企業業績は内需との関係が強まっている。 景気回復が遅れ、IT の存在感も小さい日欧は、日本(29% 減)、欧州(33% 減)と落ち込む。 欧州は比率の大きい素材・エネルギー関連が不振だった。

日本は前年同期に消費増税前の駆け込み需要があった。 反動に加え、「7 月の感染再拡大で外出を控える傾向が強まった(東武鉄道の三輪裕章取締役)」ことで運輸関係の落ち込みが目立つ。 製造業も足踏みが続く。ファナックは 7 - 9 月に 13% 増益となったが、「日本の設備投資の様子見感が強い。(山口賢治社長)」 地域別売上高は中国や米州が 4 - 6 月期を上回った一方、日本は減少が続いた。 ただファナックや村田製作所、コマツといった製造業を中心に、21 年 3 月期の業績予想を上方修正するなど明るい兆しも出てきている。

欧米の 7 - 9 月の GDP はコロナ禍前の水準には届かない。 回復途上で感染者が再拡大しロックダウン(都市封鎖)せざるを得ないなど、「スローダウンを少し深押しする可能性が出てきている。(クレディ・スイス証券の松本聡一郎氏)」 現時点の市場予想では、世界企業の 10 - 12 月期の純利益は前年同期比横ばいまで回復する見通し。 中国とアジアは 10 - 12 月期も増益を維持する見通しだ。 中国・アジアが世界全体に占める比率は 3割強と米国の 4 割に近づきつつある。 株式市場でも中国の時価総額が急拡大している。 (nikkei = 11-3-20)


トルコ沖地震、死者 100 人に 救助活動続く、救出女児ら回復へ

【イスタンブール】トルコ、ギリシャ沖のエーゲ海で発生した地震で、トルコ当局は 3 日までに、国内の死者は 98 人、負傷者は 990 人以上となったと発表した。 死者はギリシャ側の 2 人と合わせて計 100 人となった。コジャ保健相は 2 日に相次いで救出された女児と少女は回復傾向にあるとツイッターで明らかにした。 女児は病室でカメラに向かって手を振る姿が報じられた。 当局によると、負傷者の大半は病院での治療を終え、約 150 人が入院中。 被害が集中するトルコ西部イズミル県バイラクルでは 17 の全壊建物のうち 12 カ所で捜索が終了した。 2 日夜は残る 5 カ所で救助活動が続いた。 (kyodo = 11-3-20)

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地中海 ギリシャで M7.0 の地震 津波発生の可能性あり

日本時間の 10 月 30 日(金) 20 時 51 分頃、海外で規模の大きな地震がありました。 震源地は地中海(ギリシャ、ドデカネス諸島)で、地震の規模(マグニチュード)は 7.0 と推定されます。 (* 震源は米国地質調査所国立地震情報センター = USGS,NEIC による。) 震源から 150km 余り離れたギリシャのシロス島で 0.08m の海面変動が観測されました。 この地震について、イタリア、ギリシャ、トルコの当局からそれぞれ、津波発生の可能性があるとの情報が発表されています。

震源近傍では "日本での震度 5 弱 - 5強" 程度の揺れか

USGS によると、震源近傍では最大で改正メルカリ震度階級の Z 程度の揺れがあった模様です。 厳密な比較はできないものの、日本の気象庁震度階級に換算すると震度 5 弱から 5 強程度に相当する揺れとみられます。 (ウェザーニュース = 10-30-20)


米カリフォルニア州で山火事、LA 周辺で 6 万人避難

米カリフォルニア州ロサンゼルスの周辺で 26 日、山火事が発生し、800 ヘクタール以上が焼けて約 6 万人が自宅から避難した。 空からの消火活動は強風で中断された。 早朝にロサンゼルスの南東約 60 キロのアーバインの丘陵地帯で発生した山火事「シルベラード火災」は、乾燥と強風により急速に延焼した。 米国立気象局 (NWS) は、低い湿度、枯れた植物、強風が重なり、今年は「最も山火事が起きやすい危険な気象条件」になっていると警告。 27 日夜まで非常に山火事が発生しやすい状況が続くとしている。 アーバインの北方約 27 キロに位置するヨーバリンダでも、26 日昼すぎに山火事「ブルーリッジ火災」が発生。 445 ヘクタール超に燃え広がり、住民らは避難を余儀なくされている。 AFP = 10-27-20)


「核兵器廃絶への大きな一歩」被爆地・広島に喜び広がる 核禁止条約年明け発効へ

核兵器禁止条約の批准国・地域が発効に必要な 50に達したことを受け、広島では 25 日、被爆者や平和運動に携わる人たちに喜びの声が広がった。 今度こそ核兵器の終わりの始まりに -。 被爆 75 年の節目に発効への道筋がついたことを歓迎する一方、実現までに険しい道のりが予想される核兵器廃絶に向けて決意を新たにした。 日本政府には、条約への参加を強く求めた。

「大きな興奮を覚えている。 ただちに廃絶が進むわけではないが、悲願である核兵器の禁止・廃絶を具体化する大いなる一歩。」 日本被団協代表委員を務める広島県被団協の坪井直理事長 (95) はコメントを発表した。 核兵器保有国と日本政府を含む「核の傘」の下にいる国々には条約への参加を要請。 「険しい道が続くのかもしれないが、忌むべき兵器を世の中から無くしたい」と前を見据えた。

「世界が動いた感動と感激で胸がいっぱいだ。 諦めることなく、声を出し続けることが大事だ。」 箕牧(みまき)智之理事長代行 (78) も力を込める。 核保有国の為政者に向けて「広島を訪れて核兵器の恐ろしさを肌で感じ、条約批准へ政策を転換してほしい」と求めた。 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長 (76) も「さらに世論と運動を強め、条約を拒否する諸国を追い詰める。 核兵器のない世界の実現、核被害者の支援に一層の努力を続けたい。」と誓った。 (中国新聞 = 10-25-20)


世界経済、進む優勝劣敗 中国は 21 年 8% 成長の予測

【ワシントン = 河浪武史】 世界経済の勢力図の優勝劣敗が鮮明になってきた。 国際通貨基金 (IMF) の予測では中国は 2021 年に 8% 成長に戻り、米国との経済規模の差が 25% まで縮まる。 先進国、新興国の優劣を分けるのは、徹底した新型コロナウイルス感染抑制と、財政出動を可能にする財政の健全性がカギになる。 8 日まで約 1 週間続いた中国の国慶節(建国記念日)を祝う大型連休。 南部リゾート地の海南島では、免税店が旅行客でにぎわった。 中国税関総署によると、連休中の免税品購入客は前年同期比 44% 増えた。 同時期の国内旅行者数は 6 億人強と前年の 8 割に回復した。

新規感染者数がほぼゼロまで減った中国はいち早く危機を封じ込めた。 経済は 4 - 6 月期に 3.2% 成長と復調し、7 - 9 月期の予測は 5% 強。 4 - 6 月期の実質国内総生産 (GDP) はドル換算で 3.3 兆ドル(約 350 兆円)となり、年率換算で 30% 超のマイナスだった米国(4.3 兆ドル)との差を 23% に縮めた。 中国の回復が目立つのは、製造業の比率が高いためだ。 サービス業中心の国で外出規制の影響が長引くなか、製造業はコロナ危機の打撃が比較的小さい。 中国の GDP の約 4 割は製造部門で、輸出は 9 月に前年同月比 9.9% 増と 1 年半ぶりの高水準となった。

IMF の予測通りに推移すれば、米国の GDP は単純計算で 21 年に 21.2 兆ドル、中国は 15.8 兆ドルとなる。 中国の経済規模は金融危機の 08 年時点で米国の 31% だったが、21 年には 75% に迫る。 19 年時点で世界経済に占める先進国の比率は 43% で、新興・途上国は 57% だった。 IMF は先進国の成長率を 20 年はマイナス 5.8%、21 年はプラス 3.9% と予測し、新興・途上国はマイナス 3.3%、その後はプラス 6.0% と見込む。 回復の早い新興・途上国の比率は一段と高まる。

コロナ危機後の勝ち組の条件は「感染抑制」と「健全財政」。 成長のけん引役と期待された新興国も濃淡が分かれる。 ベトナムは 1 - 9 月期の経済成長率が前年同期比 2% と、プラス圏を維持する。 累計感染者数がわずか約 1,100 人で、GDP に占める工業・建設業の比率も 3 割超と高い。 東南アジア諸国連合 (ASEAN) 各国が軒並みマイナス成長の見通しのなか、経済規模で上位のタイやシンガポールとの差が一段と縮む。

財政余力が乏しい国は、巨額の財政出動に動きにくい。 ブラジルは感染封じ込めに失敗し、20 年は 5.8% の大幅なマイナス成長となりそうだ。 通貨レアルは対ドルで年初から 2 割も下落し、財政不安で低所得者への現金給付を白紙撤回した。 南アフリカやトルコも通貨下落による財政不安で成長加速の道筋が描けない。 逆に外貨準備の豊富なインドネシアは大規模な財政出動もあり、20 年の成長率はマイナス 1% 前後にとどまりそうだ。

先進国でも優劣は明らかだ。 米国は中国の追い上げを許すものの、21 年に 3.1% の経済成長を見込む。 巨大 IT 企業はコロナ危機による在宅勤務などがむしろ追い風で、米アップルは 4 - 6 月期の売上高が前年同期比 11% も増えた。 トランプ政権は GDP 比 15% にあたる 3 兆ドルの財政出動に踏みきり、20 年のマイナス成長幅は当初の予測より大幅に縮小した。

一方、日本では米 IT 企業のような成長の旗手が見当たらない。 官民ともデジタルトランスフォーメーション (DX) で後れを取り、産業の新陳代謝も進まず、21 年は 2% 台の成長にとどまる。 財政出動の効果も限定的だ。 1 日から政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」に東京発着分を加えたが、日本航空 (JAL) の 10 月の国内線の旅客数は前年比 5 割と 9 月から 1 割程度の改善にとどまりそうだ。

日本は感染者数が少ないにもかかわらず、20、21 年とも米国より成長率が低位に沈む。 日本の回復の遅れについて、IMF のギータ・ゴピナート首席エコノミストは 13 日の記者会見で「日本は中期的な潜在成長率が高齢化などで 0.5% と低い。 外需依存が大きいのも要因だ。」と述べた。 欧州も落ち込みが大きい。 ユーロ圏の 20 年の成長率見通しはマイナス 8.3% と日米より谷が深い。 中国向け輸出が多いドイツはマイナス 6% と比較的底堅いが、経済が観光に依存するイタリアはマイナス 10.6%、スペインはマイナス 12.8%。 春のロックダウン(都市封鎖)後の回復が鈍いなか、感染の第 2 波が広がれば欧州全体に波及する恐れもある。

日米欧や中国など 20 カ国・地域 (G20) は 14 日、財務相・中央銀行総裁会議を開き、途上 73 カ国の公的債務の返済猶予を決める方針だ。 コロナで深刻になった新興・途上国の債務危機を放置すれば、債権者である先進国にそのまま跳ね返る。 国際決済銀行 (BIS) によると、南アやブラジル、トルコといった債務リスクの高い国の対外債権の保有者は、日米欧が大半を占める。 国際経済はヒト・モノ・マネーで密接に絡み合っており、コロナ危機の敗者は世界景気の重荷となる。 (nikkei = 10-14-20)


米年末商戦、物流の波乱 中国発の輸送に遅れ

新型コロナウイルスの影響で国際物流が目詰まりし、米年末商戦の足かせとなるおそれが出てきた。 海運や空輸の減便で中国発の輸送需給が逼迫し、米国の商品在庫は歴史的な低水準だ。 コンテナ船運賃も最高値に跳ね上がった。 世界の消費をけん引する米国の最大商戦が伸び悩めば世界の経済回復は鈍りかねない。 「例年なら中国 - 米国間のコンテナ船運賃の上昇は落ち着く頃だが、今年は異常。(日本の海運関係者)」 香港の情報会社フレイトスによると中国発米西海岸行きの運賃は 9 月下旬、40 フィート(約 12 メートル)コンテナあたり 3,900 ドル(約 41 万円)を突破した。 昨年同時期の 3 倍弱で、過去最高水準だ。 10 月も高値圏は続く。

物流の逼迫が響く。 11 月下旬のブラックフライデーから 12 月のクリスマスへ続く米国の商戦にあわせ、毎年 7 - 10 月に中国などアジアから米国への家電や家具、玩具などの輸送が活発になる。 所要日数は中国から米西海岸までで 3 週間弱。 ただ今年はコロナ禍での物流作業の遅れや貨物需要の減少で、春から世界の海運大手が大幅に減便した。 「5 月は当初計画より約 2 割減った。(日本の海運)」 夏場から回復し始めたが、遅れを取り戻せていない。 米小売業は商品不足が顕著だ。 在庫残高は 7 月時点で前年同月を 1 割強下回る。 在庫残高を小売売上高で割った倍率は 1.23 倍と 1992 年以降で最低水準に落ち込んだ。

家電量販大手ベストバイやホームセンター最大手ホーム・デポでは一部地域で食洗機や電子レンジ、冷蔵庫などの在庫切れに悩む。 在宅勤務の拡大に伴う家電需要の急増も重なり、客が注文しても配送まで数カ月かかる例もある。 各社はセール期間を 12 月末まで延長するなど、感染予防のための混雑回避と在庫不足の対応をあわせ商戦の戦略を練り直す動きも出ている。 個人用防護具 (PPE) などの輸送需要は増す中でも、便数の回復はなお緩やかだ。 中国 - 米国間は 9 月も当初計画比 5% 弱の減便が続く。 近年供給過剰ともいわれる海運業界は、急な増便による運賃の下落や商戦後の輸送量の急減に対する警戒を崩さない。

急場対応で目立つのが、コンテナ積載率の改善だ。 「日本の空コンテナは中国やアジアに回せ。」 外資系海運の日本支社に本社から号令がかかる。 「中国 - 欧米間に比べ(消費回復に力強さを欠く)日本向けの輸送需要は弱い。(日本海事センターの後藤洋政研究員)」 荷動きの鈍い日本の余力は他地域に移る。 航空貨物も逼迫している。 運賃指標の TAC インデックスによると、香港発北米行きの運賃は現在 1 キログラム 43 香港ドル(約 580 円)と 7 月上旬から 2 割強高い。

航空貨物は旅客機の貨物室で運ぶケースが多いため、コロナ禍の人の移動の低迷に伴う旅客機の減便が響く。 専業の航空貨物会社は増便で前年比 3 割ほど輸送能力を高めているものの旅客機の減便の影響が上回り、航空貨物全体の能力は前年を 3 割下回ったままだ。 目先は米アップルの新製品やソニーのゲーム機「プレイステーション (PS) 5」の発売などで短期輸送の航空便の需要が高まるが、業界の増便は不透明な情勢だ。

同様に年末商戦を控えた欧州向けでは中国から陸路の鉄道で運ぶ動きが加速している。 中国 - 欧州間で貨物列車の 2020 年の運行本数は 8 月時点で 19 年通年の 9 割を超え、年間 1 万本を上回る勢い。 外出制限などを余儀なくされてきた消費者の購買意欲をどう喚起するのか。 年末商戦はその試金石となるだけに物流の制約解消が焦眉の急だ。 (黄田和宏、内山倫子、ニューヨーク = 白岩ひおな、香港 = グレース・リー、nikkei = 10-11-20)

コンテナ船 値崩れ阻止へ大幅減便

世界のコンテナ船による物資の輸送量は米中貿易摩擦の影響で 2019 年後半から頭打ちとなり、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけている。 ドイツのライプニッツ経済研究所と海運経済研究所が公表する世界のコンテナ輸送量指数は、2 月に前月比 8% 低下し、3 年ぶりの低水準をつけた。 足元では北米向けの輸送需要が回復しているものの、19 年半ばの水準には届いていない。

海運業界では近年、輸送効率の改善とコスト削減を目的にコンテナ船の大型化が進んだ。 輸送能力の大幅な増加に伴い市場は供給過剰に陥り、各社は運賃の低迷に苦しんできた。 生き残りに向けて世界的な再編も加速し、コンテナ船業界は現在、大手同士がアライアンス(同盟)を組み、3 陣営に集約が進んでいる。 日本の海運大手 3 社の共同出資によるコンテナ船会社も同盟に加わる。

コロナ禍での輸送需要の落ち込みを受けて、海運各社は運賃の値崩れを阻止するため大幅な減便に踏み切った。 こうした中で市場の過剰供給が徐々に解消に向かい、採算も改善している。 コンテナ船世界最大手の AP モラー・マースク(デンマーク)はコロナ禍の中でも 4 - 6 月期の純利益が前年同期の 3 倍に急増した。