中国、ノキアとエリクソンに報復措置検討 米紙報道

【ニューヨーク = 吉田圭織】 中国政府が欧州連合 (EU) に対し、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を次世代通信規格「5G」から排除した場合、フィンランドのノキアとスウェーデンのエリクソンに報復措置を検討していることが分かった。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版が 20 日、報じた。 同紙によると、中国商務省は中国内で製造されたノキアとエリクソン商品が輸出できないようにする規制の導入を検討している。 ノキアとエリクソンは 5G を巡ってファーウェイと競合関係にある。

中国と対立を深めている米国は、情報漏洩の危険があるとしてファーウェイの機器を 5G の通信網から排除するように同盟国に呼びかけてきた。 英国はこのほど、ファーウェイ製品を 5G から 2027 年までに完全に排除すると決定した。 21 年以降は同社製品の新規購入も禁じられる。 中国は EU 諸国が英国に追随することを懸念している。 (nikkei = 7-21-20)


空っぽのトランク手に空港へ 台湾でバーチャル海外旅行

新型コロナウイルス対策で出入境を厳しく制限している台湾で、海外旅行に出かける気分で飛行機に乗り込めるイベントが 7 日に開かれた。 手荷物やパスポートを確認する手続きもあり、参加者は半日の「バーチャル海外旅行」を味わった。 海外渡航者が前年比 1% まで減るなか、将来の往来解禁に向け、空港の存在をアピールするのが狙い。

台北の松山空港に集まった参加者は搭乗口近くのレストランで昼食をとった後、飛行機に乗り込んで見学。 空のスーツケースを手に孫娘と参加した黄玉鳳さん (60) は「5 月に横浜に出かける予定だったが、かなわなかった。 早く行きたい。」と語った。 計 3 日間の体験会に約 3 万件の応募があり、計 90 組(180 人)が選ばれた。 利用者減で免税品店も苦しんでおり、空港ロビーでは特売会も開かれた。 (台北 = 西本秀、asahi = 7-10-20)


米、オンライン授業のみの留学生は入国禁止 強制送還も

米移民税関捜査局 (ICE) は 6 日、今秋以降、オンライン授業のみを受講する留学生には学生ビザを発給せず、入国も認めない、と発表した。 すでに米国にいる場合でも、通っている学校が全てオンライン授業に移行した場合には、通学制の授業を行う学校に転校するか、帰国するよう求めており、従わない場合は強制送還の可能性も示唆している。 日本からの留学生にも影響が出そうだ。

影響を受けるのは学業目的で大学や語学学校などに留学する「F-1」、職業訓練のために滞在する「M-1」と呼ばれるビザ。 国務省によると 2019 会計年度では計 40 万人に発行されており、そのうち日本人は約 1 万 5 千人だった。 新たに留学を目指す人も影響を受ける。 トランプ政権は、外国人が米国で働くために必要な就労ビザなどを年内は発給しない方針も示している。 新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ経済を回復させるにあたり、米国人の雇用を優先するとしているが、パンデミック(世界的な大流行)を自身の政策である移民規制に利用していると批判の声も上がる。

新型コロナの感染予防で、各教育機関がオンライン授業に切り替えている。秋から始まる新学期に向け、授業再開の検討がされているが、通学は制限される見通しだ。 ハーバード大は学部生の通学を新入生など 40% に抑えるとし、プリンストン大は秋学期と春学期で通学できる学年を変え、キャンパスの人数を減らすとしている。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 7-7-20)


世界の成長見通し、マイナス 4.9% に下方修正 IMF

国際通貨基金 (IMF) は 24 日、4 月に発表した世界経済見通しを下方修正した。 2020 年の世界の成長率は、前回予測より 1.9 ポイント悪い前年比 4.9% 減とした。 新型コロナウイルスの影響で、世界大恐慌以来の不況を予測した 4 月時点から、不況の「谷」がより深まる見通しだ。 IMF は 4 月以降の感染拡大や経済再開の動向を分析し、感染者数が減り始めた先進国でも、人との距離を置くことに伴う営業活動や生産性の低下が 20 年後半も続く、と指摘。

感染者数が増え続けている新興国や発展途上国は、乏しい財源のため先進国に比べて政策対応が遅れており、貧困や格差の激化に強く警鐘を鳴らしている。 IMF の統計でさかのぼれる 1980 年以降、世界経済のマイナス成長はリーマン・ショック直後の 09 年(0.1% 減)だけだった。

21 年はプラス成長を見込むが、回復の勢いは弱そうだ。 21 年の世界の成長率は 4 月時点より 0.4 ポイント下方修正され、20 年比 5.4% 増にとどまる見通しだ。 米国は今年、4 月の予測より 2.1 ポイント低い 8.0% 減に落ち込み、リーマン・ショック直後の 09 年(2.5% 減)を大幅に上回る不況に陥る。 ユーロ圏も 2.7 ポイント悪化の 10.2% 減。 特にフランスやイタリア、スペインで大きく下方修正し、いずれも今年は約 13% 減という深刻な景気後退に見舞われる。

日本は 4 月予測より 0.6 ポイント引き下げ、5.8% 減。 21 年にはプラス成長に戻るが、前回予測より 0.6 ポイント低い前年比 2.4% にとどまる。 日本を含む先進国は、21 年の回復後も、国内総生産 (GDP) が危機前の 19 年の水準まで戻ることは見込めない状況だ。 新興・発展途上国は IMF の統計でさかのぼれる 80 年以降、マイナス成長に陥ったことはなかった。 しかし 20 年は 4 月予測から 2.0 ポイント悪い 3.0% 減へと落ち込む。 感染の震源地だった中国は主要国で唯一、1.0% 増のプラス成長を見込む。 5 月の消費回復などを踏まえ、引き下げ幅も 0.2 ポイントと比較的小さかった。 それでも世界経済の回復をリードする勢いはない。

6 月下旬に入ってからも、1 日当たりの新たな感染者数は増加傾向が続く。 感染者が 100 万人を超えたブラジルの 20 年の成長率は、前回予測より 3.8 ポイント低い 9.1% 減を見込む。 (ワシントン = 青山直篤、asahi = 6-24-20)


中国、米食肉大手タイソン工場からの鶏肉輸入停止 新型コロナ感染で

中国税関総署は 21 日、新型コロナウイルスの感染者が確認された米食肉大手タイソンの工場からの鶏肉輸入を停止したと発表した。 税関総署はウェブサイトで、タイソンがアーカンソー州スプリングデールの工場で新型コロナのクラスター(感染者集団)が発生したと確認したことを受けて輸入停止を決定したと説明した。

タイソンの広報担当者はロイターに対し、状況の把握に努めているとした上で、タイソンは政府の安全基準に完全に準拠した食品生産を行うため米当局と緊密に連携していると強調。 「世界保健機関 (WHO)、米疾病対策センター (CDC)、米農務省、米食品医薬品局 (FDA) が、食品を介した新型コロナ感染の証拠はないという見解で一致している点は重要だ」と指摘した。 中国は先週、従業員の新型コロナ感染が確認されたドイツの食肉加工工場からの豚肉製品の輸入も停止した。

中国は北京の食品卸売市場で集団感染が発生したことを受け、輸入食品の監視を強化。 先週から食肉や海産物、生鮮品のウイルス検査を開始し、一部の港では食肉を積んだすべてのコンテナを開けて検査を行っている。 関係筋が 19 日明らかにしたところによると、税関総署は中国に食品を輸出する業者に対し、品物がウイルスに汚染されていないと申告する書類への署名を求めている。 (Reuters = 6-22-20)


1 万円で飛行機乗り放題や税控除 国を挙げて観光再生策

外出制限が終わり、大半の経済活動が再開されたマレーシアで、大きな影響を受けていた旅行業界が再起に向けて動き出した。 感染拡大の恐れが残る中でどうやって旅行に出てもらうかが課題だ。 同国に本拠を置く格安航空会社エアアジアが乗り放題の航空券を売り出すなど、観光の活性化に向けて民間企業も知恵をしぼっている。 「国内旅行をすることで、私たちは地域を支援することができる。 経済の再建に貢献することができる。」 マレーシアで国内旅行が解禁された 10 日、エアアジアはそんな声明とともに、国内線乗り放題のチケットを期間限定で発売すると発表した。 価格は 399 リンギ(約 1 万円)で、来年 3 月まで 16 カ所の間の移動に使えるという。

当初は 11 日から 3 日間限定での販売予定だった。 発売直後からこのチケットを使った空路の予約が入り始め、3 日間で 7、8 月を中心に 1 万 2 千フライトを超える予約が入った。 そこで、さらに期間を延長し、最終的に 15 日まで販売した。 「大盤振る舞い」の背景には、深刻な経営事情がある。 同社のマレーシア事業では 1 - 3 月の乗客数が前年比 27% 減。 4 月以降はほとんどの便を飛ばせておらず損失が急拡大している。

運航を再開しても、乗客が乗らなければ飛ばすだけ損失が出る。 それよりは需要全体を刺激して、少しでも空路に戻ってもらおうという狙いだ。 同社は「旅行業の復活には、まとまった努力が必要。 ホテルや旅行業者などとも協力していきたい。」とする。 とはいえ、乗り放題のチケットばかりが売れても、収益は戻らない。 エアアジアは 2月末から3月にかけて、国際線を含む乗り放題券をマレーシア国内向けに約6万枚販売した。この時は、日本からもネット回線をマレーシア経由のように見せてチケットを買えるのではないかと、ネット上で話題になった。

広報担当者は、当時も今回も「あくまでマレーシアに住む人に限り、購入・使用できる」と述べ、「購入時に異常で詐欺的な行為があった場合は、当社にチケットを取り消す権利がある」と説明する。 ホテル業界でも、事前割引を採用する動きが広がっている。 マレーシア・ホテル協会は、こうしたプロモーションなどの結果「7 月以降に需要が出てきている」と説明。 2021 年にも一定の需要が見られるとして「復活が確実なものになるサイン」と期待する。

マレーシア政府は 3 月中旬から原則外出禁止などの厳しい制限を敷いてきたが、5 月から段階的に緩和。 6 月 10 日からの追加緩和でほとんどの経済活動を解禁し、州をまたぐ移動や国内観光も認めた。 17 日時点の感染者数は 8,515 人、死者は 121 人。 1 日あたりの新規感染者数が 10 人以下の日も多く、8 月末までこの状態を続けて感染が広がらないか確認する方針だ。

ただ、観光業の大きな収入源だった海外からの観光客の受け入れは、まだ認めていない。 350 万人以上が働くとされるマレーシアの観光業は、外出制限の影響が大きかった産業のひとつ。 そこで政府は、国内観光をした場合には税金を控除するといった対策を打ち出した。 「休日には国内観光をしよう。」 観光担当の大臣らは、そう積極的にアピール。 ペナンなどの観光地には少しずつ客足も戻っており、期待は大きい。 とはいえ、消費者の不安を払拭するには、時間もかかりそうだ。

リゾート地として知られるランカウイ島では、「観光再開の発表直後、数千の予約が入った」という業界関係者の発言が報じられ、話題を呼んだ。 ところが、これは逆に「混雑や感染の危険を招く」といった市民や従業員の反発を招き、ホテル協会が「数千といった規模の予約は確認できていない」と火消しする事態になった。 特に注目されるのが、資産や時間に余裕のある高年齢層の動向だ。 高齢者は新型コロナに感染すると重症化の危険が高いとされる。 旅行業者からは「シニア層の外出が奨励されていない状況では、国内観光の復活は難しいのでは」といった声も出ている。 (シンガポール = 西村宏治、asahi = 6-20-20)


中国、米農産物購入を加速させる計画 - ハワイでの協議後

→ 大豆やトウモロコシ、エタノールなどの購入を今後増やす方針
→ ポンペオ米国務長官はハワイで中国共産党の楊潔チー政治局員と会談

中国は今週のハワイでの米国側との協議を受け、第 1 段階の貿易合意の履行のため米国産農産物の購入を加速させる計画だ。 新型コロナウイルス流行の影響などで購入が進んでいなかったが、大豆やトウモロコシ、エタノールなどの購入を今後増やす方針だと、非公開情報だとして事情に詳しい関係者 2 人が匿名を条件に述べた。 別の関係者によると、中国政府は第 1 段階の貿易合意の内容を満たすように国有の農産物輸入会社に求めた。 中国商務省にファクスでコメントを求めたが応答はない。 新型コロナの発生源や香港の国家安全法制を巡り米中の対立が強まる中で、貿易問題についても懸念していた市場にとって安心材料となる。

ポンペオ米国務長官は 17 日にハワイで中国共産党の楊潔チー政治局員と会談。 中国側が第 1 段階合意の下で交わした約束を全て守る考えをあらためて示したと 18 日にツイートしていた。 ポンペオ長官はツイート以上の詳細は明らかにしていない。 会談が行われた経緯やどちらが会談を呼び掛けたかは分かっていない。 中国は第 1 段階合意で、米国産農産物 365 億ドル(約 3 兆 9,000 億円)相当を購入すると約束。 貿易戦争前の 2017 年の 240 億ドルから増やすことになっていた。 しかし米農務省のデータによると、今年 1 - 4 月の購入額は 46 億 5,000 万ドルと目標の 13% にとどまり、17 年同時期の水準を約 40% 下回っていた。 (Bloomberg = 6-19-20)


インド軍「死者 20 人に」 中国との国境衝突で

【ニューヨーク = 吉田圭織】 中国とインド両軍が係争中の同国北部ラダック地方で起きた衝突で、インド軍は 16 日、死者が計 20 人に上ったと発表した。 当初は死者数を 3 人としていたが、その後、重傷を負った兵士 17 人が氷点下の寒さで死亡したという。 インド軍によると、両国軍は現場周辺を離れ、高官が緊張緩和に向けた対話を続けているという。 国連事務総長の広報担当者は 16 日、「両国に最大の自制を求める」と懸念を表明した。 両軍のにらみ合いは先月上旬に始まり、今月 6 日には平和的な解決を目指すことで一致していたが、死者が出たことで解決の先行きは不透明だ。 中印両国は過去にも係争地での衝突があったが、死者が出るのは過去 45 年で初めてとみられる。 (nikkei = 6-17-20)


助言を軽視、市民蹴散らす 危機三つで露見した米のつけ

米国が試練を迎えている。 新型コロナウイルスの死者は 10 万人を超え、白人警官が黒人男性を死なせた事件をきっかけとした抗議デモは、全土に広がる。 「命の格差」をめぐる市民の憤りは、11 月の大統領選にどう影響するのか。

抱えてきた問題を一気に顕在化

三つの危機が米国をさいなんでいる。 新型コロナウイルスは米国で 10 万人以上の命と、約 2 千万人の職を奪った。 黒人男性が白人警官にひざで首を押さえられて死亡した事件への抗議は、全米 50 州の都市に広がった。 パンデミック、大量失業、人種差別。 三つの危機は根深く結びついている。 新型コロナによる人口あたりの黒人の死者は白人の 2 倍以上。 貧困や劣悪な医療アクセスという困難に加え、介護施設職員、小売店や飲食店の店員、バス運転手など、感染リスクが高い職業に就く割合が高いことも影響している。 在宅で対応できない多くの仕事が外出禁止で失われた。 人種の違い、経済の格差に、「命の格差」がついて回る。

絡み合う危機は、リーダーシップを欠いたつけでもある。 新型コロナの危機でトランプ大統領は専門家の助言を軽視し、迷走を続けている。 平和的に集まっていた市民を催涙ガスで蹴散らし、前国防長官をして「米国民を一つにまとめるそぶりすらしない、初めての大統領だ」と言わしめた。 社会の溝を埋めるのではなく、分断の壁を築いて支持層を固める「トランプ流」は、最近始まったわけではない。 一方、米社会の分断と分極、根っこにある格差はトランプ氏が登場する以前からあった。 今回の危機は、米国が抱えてきた問題を一気に顕在化させたとも言える。

4 年に 1 度の米大統領選まであと 5 カ月。 米社会は危機によってさらに引き裂かれるのか。 それとも、立ち上がった市民のうねりが格差解消に向け、結束を引き寄せるのか。 勝敗だけでなく、米国の復元力と価値観が問われる選挙になる。 (アメリカ総局長・沢村亙、asahi = 6-8-20)

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米ワシントン黒人差別デモ最大に 英国でも

黒人差別に対する全米での抗議デモは、週末を迎えた 6 日、首都ワシントンで最大規模となったほか、イギリスなどでも広がっています。 ワシントンでは、黄色い文字で「黒人の命も大切」とペイントされたホワイトハウス前の通りを人々が埋め尽くすように集まっているほか、議会の前など、市内各地でデモ行進が続いています。 現地メディアは「ワシントン史上最大規模のデモ」だと伝えています。 さらに、シカゴやフィラデルフィアなど全米の他の大都市でも抗議デモが続いています。

こうした中、トランプ大統領が 5 日、失業率の改善を今回の事件で死亡した黒人男性にとっても「素晴らしい日だ」などと関連づけて発言したことについて、現地メディアから、「国民の痛みと混乱からかけ離れた感覚だ」などと批判が相次いでいます。 一方、イギリスでは 6 日、黒人男性が亡くなって以来、最大規模のデモが行われました。 ロンドンの議会周辺などが多くの参加者で埋め尽くされたほか、中部の街マンチェスターでも中心部におよそ 1 万 5,000 人が集まったということです。 また、オーストラリアのデモでは先住民への差別をやめるよう求める声も上がりました。 今回の事件をきっかけに、黒人以外の人種差別に対する抗議の声も高まっています。 (日テレ = 6-7-20)

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人種差別と格差、コロナで浮き彫り 米でやまぬ抗議デモ

白人警官が黒人男性の首を圧迫して死なせた事件をきっかけとした米国での抗議活動は、5 月 31 日も各地で続いた。 放火や略奪も起き、騒然とした雰囲気が広がる。 デモの背景には、繰り返される黒人への差別に加え、新型コロナウイルスによってあぶり出された格差の問題もある。

米抗議デモ、25 都市で夜間外出禁止令 各地で州兵投入

「息ができない、プリーズ、プリーズ。」 米中西部ミネソタ州ミネアポリスで警官に首を押さえられ、こう訴え続けたジョージ・フロイドさん (46) が亡くなってから 6 日後の 5 月 31 日、デモは全米各地で続いた。 参加者を突き動かすのは、米国の根深い人種差別だ。

首都ワシントンで行進した黒人のアトン・クローリーさん (24) は「(フロイドさんの事件は)組織的な虐殺だ。 差別は米国社会に深く根を張り、なくならない」と憤る。 デモに初めて参加したのは、自身の苦境もあったからだ。 カフェで時給 15 ドル(約 1,600 円)で働いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4 月に解雇された。 「黒人の多くは貧困から抜け出せない。 その格差がコロナで浮き彫りになった。」

やはり黒人のテリー・ブラノンさん (45) は個人の邸宅のプールを清掃する会社に勤める。 時給 15 ドルで半年契約という不安定な身分だ。 「富める者はより豊かに、貧しい者はさらに貧しくなる」と声を荒らげた。 ニューヨーク・タイムズによると、抗議活動は 140 都市以上に拡大した。 ミネソタ以外の州でも、人種に関連した事件が起きていることも影響していそうだ。

南部ジョージア州では 2 月、黒人男性 (25) がジョギング中に射殺された。 5 月になってその時の様子の動画が表面化し、ようやく容疑者の白人親子が逮捕されたが、今度は地元警察の捜査が適切だったかが問われている。 5 月末にはニューヨークで、ひもをつけずに犬を公園で散歩させていた白人女性が黒人男性から注意され、「脅されている」と警察に虚偽通報する騒ぎも話題となった。

デモの大半は平和的に続いているが、一部では激化し、40 都市以上が夜間外出禁止令を出した。 ワシントンのホワイトハウス近くでも 31 日夜、建物が放火され、警官隊が催涙弾で応じた。 フィラデルフィアなどでは商店の略奪が起き、ニューヨークではパトカーに火炎瓶を投げつけた女性らが逮捕された。 デモ隊の一部が意図的にあおっているとの見方も広がっている。 (ワシントン = 渡辺丘)

全米各地でこれだけのデモが一斉に広がるのは、公民権運動を指導したキング牧師が暗殺された 1968 年以来とされる。 黒人が多いミシガン州デトロイトに住むテレサ・ムーンさん (67) は「いつになったら、平等に扱ってもらえるんでしょうか」と嘆く。 同市の北境を東西に走る片側 4 車線の「8 マイルロード」は、かつて黒人と白人の居住地を分ける象徴だった。 その南側の公園には、高さ 1.5 メートルほどの壁が今も残る。 壁が建設された 1941 年は、差別が「区別」として、法律的に許容されていた。 壁の近くで育ったムーンさんが初めて白人を見たのは、中学生の時。 それまでは「テレビの中の人種」だった。 64 年の公民権法によって、差別は禁じられたが、解消はされなかった。

その現実は今年、新型コロナによってつきつけられた。 ミシガン州は人口の約 15% が黒人だが、新型コロナで亡くなった約 5,500 人のうち、4 割以上を占める。 死亡率が高い理由は、医療機関や正確な情報へのアクセス不足、重症化につながる基礎疾患を抱えやすいことに加え、「密」な環境に身を置かざるを得ない仕事に就いていることが多い、などが原因とされる。 いずれも貧困と不可分だ。 ムーンさんも 9 人の友人を失った。 うち 8 人は「8 マイル」付近に住む。 「人種隔離がなかったら。 差別がなかったら。 こんな悲劇はなかったかもしれない。」

フロイドさんの事件で、さらに不安が広がる。 ムーンさんは両手で目元をぬぐい、「38 歳の息子が心配。 いまだに壁があるから。 目には見えなくなったけれど、たくさんの壁が。」と語った。 (デトロイト = 藤原学思)

トランプ氏の過激ツイートに非難も

「民主党の市長や知事たちよ、強くなれ。 世界がお前たちを笑っているぞ。」 トランプ大統領は 31 日、こうツイートした。 米国は都市部で民主党が強く、デモが起きている都市のトップの多くも同党だ。 米社会が分断される危機にあたって、歴代大統領は融和と団結を呼びかけてきたが、トランプ氏は混乱をあおる側に回っている。 デモを率いているのは過激な反ファシスト集団「アンティファ」だと、根拠を示さないまま主張し、31 日には「テロ組織に指定する」と宣言した。 ただ、米国は国内の団体をテロ組織として認定する法律がなく、実際にできるかは不明だ。

狙いは、11 月の大統領選で再選のかぎを握るとされる、郊外の白人富裕層だ。 治安重視をアピールしようと、トランプ氏は「法と秩序!」と繰り返しツイートしている。 混乱が広がった 68 年、大統領選で勝利した共和党のニクソン氏が用いたキャッチフレーズだ。 過激なツイートには反発もある。 トランプ氏は 29 日、ミネアポリスのデモ隊について「略奪が始まれば、銃撃が始まる」と投稿。 67 年にマイアミの警察署長が話したとされる言葉で、当時も非難された。 人気歌手のテイラー・スウィフトさんは返信する形で「大統領になってからずっと、白人至上主義と人種差別をたきつけながら、暴力を使うと脅す前に、倫理的優位性を装う神経とは。 11 月に選挙で落としてやる」とツイートした。

実際、トランプ氏は大統領選で追い詰められている。 ワシントン・ポストなどが 31 日に公表した世論調査では、53% が民主党のバイデン前副大統領を支持し、トランプ氏は 43%。 2 カ月前の 2 ポイント差から、10 ポイント差まで拡大しており、同紙は「バイデン氏が明確にリードしている」と報じた。 (ワシントン = 園田耕司、asahi = 6-2-20)


豪産ビーフと大麦、最大の顧客が輸入だめ コロナ背景か

中国がオーストラリアの牛肉や大麦の輸入にブレーキをかけた。 「新型コロナウイルスなどを巡る豪州の厳しい対中姿勢を封じ込めようとしている。」 豪州では、そんな見方が広がる。 最大の貿易相手国からの「圧力」に悩みは深いが、中国依存から脱却すべきだとの声も高まっている。

中国の主張「疑わしい」

中国商務省は 19 日、豪州産大麦に反ダンピング(不当廉売)関税と反補助金関税を発動した。 税率は計 80.5% で期限は 5 年だ。 豪州のバーミンガム貿易相は同日、WTO (世界貿易機関)に訴える可能性を示唆。 中国が根拠として豪政府による灌漑施設整備の支援策を挙げたことに対し、「完全にばかげている」と語った。 「豪州の大麦の大半が、灌漑施設なしに生産されている(生産者団体グレイン・グローワーズのデビッド・マッケロン最高経営責任者)」からだ。

中国は 12 日に「検疫に違反する状況があった」として、豪州の食肉大手 4 社からの輸入を停止したばかり。 このときも、豪州は「1 年以上前も含む技術的なミス」で、輸入停止に値する内容ではないと反論した。 豪州の貿易の専門家からも、これらの中国の主張について「法的な根拠がほとんどない(パース米国アジアセンターのジェフリー・ウィルソン研究部長)」、「かなり疑わしい。 豪州を懲らしめる言い訳に使っている。(ニューサウスウェールズ大のティム・ハーコート研究員)」といった見方が出ている。

大麦のダンピング調査が始まったのは 2018 年 10 月。 豪政府が安全保障上の理由で、次世代通信網 5G の事業に中国の華為技術(ファーウェイ)が参入するのを禁止した 2 カ月後だ。 牛肉の措置は、豪政府が 4 月に中国の新型コロナ対応について国際的な調査を要求した直後だった。 成競業・駐豪中国大使が 4 月下旬、豪紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙との会見で調査要求を批判し、豪州のワインや牛肉のボイコットを示唆してもいた。

豪州の元外交官で、シドニー大客員教授のジョスリン・チェイ氏は「背景には米中関係もある」と指摘する。 中国は 14 日、米国産大麦を輸入すると明らかにしている。 米中の通商交渉の合意に基づくもので、中国が代わりの輸入先も確保しながら手を打った、との見方だ。

豪州の難しい立場

対中関係をめぐって豪州では近年、政治献金を通じた豪政界への親中政策の働きかけや、太平洋の島国へのインフラ支援攻勢を通じた影響力の強化についても、政界やメディアから懸念する声が出ていた。 中国は昨年 1 月、中国系の豪州人作家が中国に入国した際にスパイ容疑で拘束。 豪政府は「政治的な拘束だ」と抗議したが、今年 3 月に起訴された。 昨年 2 月には中国が豪州産の石炭の検査を強化し、通関手続きに時間をかけた。 豪州ではこれらも、中国の圧力と受け止められた。

豪州にとって中国は貿易額の4分の1を占める最大の「顧客」。農産物や鉱物の主要輸出先で、中国からの観光客、留学生が経済を支える。 大麦は、輸出の 7 割が中国向けだった。 全国農業者連盟のトニー・マハール最高経営責任者は「両国による早期の問題解決を望む」と難しい立場をのぞかせる。 これに対し、専門家からは「豪州は代わりの輸出先を拡大すべきだ。 選択肢はたくさんある。」、「中国は豪州産品を必要としている。 中国が通商政策を使って外交ゲームを続ければ、結局は自国の利益を害するだろう。」との指摘が上がる。

中国外務省の趙立堅副報道局長は 19 日の会見で、新型コロナ対応への調査要求と豪州への関税発動の関係を国営新華社通信の記者に問われ、「我々は新型コロナを政治的にもてあそぶことに断固反対する」と述べた。 中国は新型コロナが国境を越えたビジネスに影響しないように、感染対策で止まった工場の再稼働で外資を優先し、航空貨物の運航を確保してサプライチェーン(供給網)の流れを保つなど、様々な対応をとってきた。 ただ、貿易や関税を手段にしながら、自らの経済力をテコに都合の悪い国際世論を封じ込めているとの受け止めが各国で広がれば、今後「中国離れ」が進む可能性がある。 (シドニー = 小暮哲夫、北京 = 福田直之、asahi = 5-31-20)

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中国、豪州産のワインや乳製品を標的とする可能性 - 関係者

→ 国営メディアを使って不買運動を促したりする対象となり得る品目も
→ 追加措置は中国の反発に対する豪州の出方次第と関係者

中国とオーストラリアが新型コロナウイルスの発生源を巡り対立する中で、中国は豪州産のワインや魚介類、オートミール、果物、乳製品の輸出を標的とする可能性がある。事情に詳しい関係者が明らかにした。 中国当局は品質検査やダンピング(不当廉売)調査、関税を強化したり、通関を遅らせたり、国営メディアを使って消費者に不買運動を促したりする対象となり得る品目の一覧をまとめた。非公開で協議が進められているとして関係者が匿名を条件に語った。

豪州は新型コロナの発生源についての調査を20カ国・地域(G20)首脳への書簡で働き掛けたほか、野生動物の生鮮市場への国際調査を促し、中国の不興を買っている。 関係者によると、中国側は最終決定に至っておらず、追加措置は中国の反発に対する豪州の出方次第だという。中国は貿易に関する措置と豪州による新型コロナ関連の調査呼び掛けとの関係を公に認めるつもりはないと関係者は話した。 バーミンガム豪貿易・観光・投資相のオフィスはコメントを控えた。

中国外務省は豪産品一覧に関する質問に対し、特定の問題についてではないとしながらも、「豪州と中国側が会合を持ち、2国間関係を改善させ、互いの信頼を深め、さまざまな分野の実務協力のため好ましい条件と雰囲気をつくる措置をさらに講じることができるよう望んでいる」などとコメントした。 (Bloomberg = 5-20-20)

〈編者注〉 典型的な '弱いものいじめ' と言ってもいいでしょう。 果たして、かような論理で、中国が世界のリーダーになれると考えているのでしょうか? それに、同じような論理で中国国内が統治されているのであれば、中国に住む人々は余りにも不幸です。

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中国、豪州産大麦に 5 年間の反ダンピング関税 - 19 日発動

→ コロナ発生源を巡る独立調査を豪州が求めて以来、対中関係が緊張
→ 豪州産大麦は 73.6% の反ダンピング税と 6.9% の反補助金税の対象に

中国は 18 日、オーストラリア産大麦に対して 5 年間の反ダンピング(不当廉売)関税を課すと発表した。 中国商務省の声明によると、豪州産大麦は 19 日から 73.6% の反ダンピング税と 6.9% の反補助金税の対象となる。 中国は豪州産大麦の最大の買い手。

パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の発生源に関する独立した調査を豪州が呼び掛けたことで、ここ数週間にわたり豪州と中国との間に緊張が高まっていた。 豪州のバーミンガム貿易・観光・投資相は 17 日、中国が関税を発動する場合は世界貿易機関 (WTO) に申し立てを行う考えを示していた。 2017 年の中国向け大麦輸出は 14 億豪ドル(約 980億円)だった。 (Bloomberg = 5-19-20)

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中国が豪州に「報復」連発 … コロナ発生源の調査求められ、食肉輸入停止で対抗か

【ジャカルタ = 一言剛之】 新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、独立機関による中国での調査を求めるオーストラリアが、中国の対抗措置とみられる動きに揺れている。 豪州産の大麦に高関税が課される可能性が出ているのに加え、豪政府は 12 日、中国が豪州の食肉処理大手 4 社に対し、輸入停止措置を取ったと明らかにした。

輸出の 35%

サイモン・バーミンガム豪貿易相は 12 日の記者会見で、中国による輸入停止は食肉表示に関する技術的問題への対応だと説明し、「(中国側の)許可を得るために力を尽くす」と述べた。 豪州の牛肉輸出のうち中国向けが 4 分の 1 を占める。 豪公共放送 ABC によると、4 社は牛肉の対中輸出の 35% を手がけており、食肉業界団体幹部は「非常に深刻に受け止めている」と動揺を隠せない様子だ。

豪州では穀物生産者団体などが 10 日、豪州産の輸出大麦に中国が約 80% の高関税を課す可能性があると明らかにしたばかりだ。 バーミンガム氏は「不当な課税の可能性を憂慮する」との声明を発表したが、中国は 19 日までに関税を課すかどうか判断を示す見込みだ。

豪州はチューインガム?

中国のこうした動きに関し、ABC など豪州メディアは、豪政府が新型コロナの発生源や感染拡大に関し、中国・武漢の研究施設からの拡散の可能性を念頭に調査実施の必要性を訴えていることへの報復との見方を伝えている。 スコット・モリソン豪首相は 4 月 23 日、記者会見で発生源に関し「独立した調査が必要だ」と強調した。 世界保健機関 (WHO) 加盟国の査察受け入れを義務付けるべきだとも主張している。

これに対し、中国外務省のグォンシュワン副報道局長は、「国際的な防疫協力を妨害するものだ」と強く反発した。 中国紙・環球時報の胡錫進編集長は SNS に、「豪州は問題を起こす国だ。 靴の裏にこびりついたチューインガムのようなものだ。」と書き込み、不満ぶりを強調した。 (yomiuri = 5-13-20)


トランプ氏、WHO 脱退を表明 香港優遇措置も見直しへ

トランプ米大統領は 29 日、「世界保健機関 (WHO) との関係を終了させる」と述べ、脱退の意向を表明した。 また、中国が香港に対する国家安全法制の導入を決めたことを受け、「一国二制度」を前提とした優遇措置を見直す方針も明らかにした。 トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対して、新型コロナウイルスの感染拡大を巡る中国の対応を批判。 「中国が WHO を完全にコントロールしている」として、「我々は WHO との関係を終了させる」と表明。 WHO に対する拠出金については、ほかの公衆衛生の活動に使うと明らかにした。

また、中国が香港での反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制」の導入を決めたことについて、「香港にはもはや自治はない。 中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と批判。 「香港に対する特別扱な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と述べ、香港と個別に結んでいる犯罪人引き渡しや輸出管理に関する取り決めの見直しを明らかにした。 中国とは別扱いにしている関税や渡航面での優遇措置についても「撤廃に向けた行動を取る」と述べた。 国家安全法制導入にかかわった中国や香港政府の高官に対する制裁も検討する。

また、中国の「軍民融合」戦略を推進する組織と関係がある中国人の大学院生や研究者に対しては、ビザを発給しない方針も発表した。 (ワシントン = 大島隆、asahi = 5-30-20)


シンガポール、中国との往来再開へ まず 6 都市・省と

【シンガポール = 中野貴司】 シンガポール外務省は 29 日、中国との往来を再開するため 6 月初旬にも新たな枠組みを設けると発表した。 中国の新型コロナウイルスの新規感染者数は大幅に減少しており、ビジネス目的の訪問など必要不可欠な移動から許可していく。 上海、天津、重慶、広東省、江蘇省、浙江省の 6 都市・省から始め、徐々に対象地域を広げる。 シンガポールは 3 月 23 日に、全ての国からの外国人旅行者の入国を禁止した。 今回の枠組みは、海外からの入国を再び受け入れる初の具体的な取り組みとなる見通しだ。

シンガポールにとって、中国からの旅行客は全体の 2 割弱を占め、国別で最も多い。 シンガポールは 6 月 2 日から経済活動を段階的に再開する計画で、国境を越えた移動についても優先度の高いものから順次再開していきたい考えだ。 ただ、観光客の受け入れにはなお時間がかかる見通しで、観光業や飲食業などへの悪影響は長引くとみられる。 シンガポールと中国は 29 日までに、広域経済圏構想「一帯一路」の協力をさらに推進することでも合意したほか、サプライチェーン(供給網)を維持する重要性を確認した。 (nikkei = 5-30-20)


6 年ぶりデフォルトのアルゼンチン、あえて支払い実行しない選択

【リオデジャネイロ = 淵上隆悠】 アルゼンチン政府は 22 日、この日が最終期限だった国債の利払い約 5 億ドル(約 538 億円)を実行せず、2014 年以来の債務不履行(デフォルト)に陥った。 債務の返済条件を巡って欧米の債権者団と交渉を続けており、国際金融市場への影響は限定的とみられる。

アルゼンチン政府は 4 月以降、支払い能力がないとして、総額約 662 億ドルに上る外国通貨建て国債の返済条件の緩和を債権者団に求めてきた。 5 億ドルの支払期限までには折り合えなかったが、政府は交渉を 6 月 2 日まで続けるとしており、債権者団側も前向きだ。 今回は、あえて支払いを実行しない「テクニカル・デフォルト」とされる。 債権者団側は即座に訴訟は起こさないとみられ、アルゼンチン政府は交渉でデフォルト状態の早期解消を目指す。 (yomiuri = 5-23-20)


中国漁船がインドネシア人船員の遺体を海に投げ入れ

中国漁船で操業中に亡くなったインドネシア人船員の遺体が海に投げ入れられたとの報道を受け、インドネシア政府は 14 日、国連人権理事会に「水産業での人権侵害に注視するよう求めた」と発表した。 発端は、韓国のテレビ局・MBC (文化放送)による今月 5 日の報道だった。 MBC が入手した映像は太平洋上で 3 月 30 日に撮影されたといい、漁船の甲板で男たちがオレンジ色の布に包まれた棺を抱え、海に投げる様子が映っている。

この報道についてインドネシアのルトノ外相が 7 日に開いた会見によると、中国漁船で働いていたインドネシアの男性船員が死亡し、3 月に海に投げ入れられた。昨年 12 月にも同じ船で働いていたインドネシアの船員 2 人の遺体が、同様に海に沈められた。 3 人の死因は不明だが、中国人船長は「いずれも感染症にかかっていたため、他の船員の合意のもとで海葬にした」と説明しているという。

ルトノ外相は、駐インドネシア中国大使に「船員が海に葬られたのは、国際労働機関 (ILO) の基準に沿うのか確認を求め、懸念を示した」と述べた。 インドネシア出稼ぎ労働組合 (SPMI) は、中国大使の送還を求める声明を発表している。 中国外務省は 11 日の会見で、インドネシア人船員の状況について調査を進めているとコメントした。 (ジャカルタ = 野上英文、asahi = 5-16-20)