消費者物価、5 月も下落 原油安影響、マスク上げ幅縮小

総務省が 19 日発表した 5 月の消費者物価指数(2015 年 = 100)は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月より 0.2% 低い 101.6 だった。 下落は 2 カ月連続。 ガソリンが前年同月より 16.4% 下落、宿泊料も 4.0% 下がるなど、新型コロナウイルスによる原油安や旅行客の激減が全体の水準を下押しした。 総合指数の下げ幅は前月と同じ。 世界経済の減速懸念を背景にエネルギー価格は下落基調が続いており、灯油(前年同月比 16.5% 減)や都市ガス代(3.3% 減)、電気代(2.0% 減)がそれぞれ下げた。

一方、指数を構成する 523 品目のうち下落は 109 にとどまり、401 品目は上昇した。 値上げで食品や火災・地震保険料などが上がり、移動自粛に伴う大型連休中の割引がなかった高速道路料金も 9.4% 上がった。 品薄感が薄れたマスクは 2.4% の上昇で、上げ幅は前月(5.4% 上昇)よりは縮小した。 総務省は「コロナによる原油安を背景に一部の品目が大きく下げた。 6 月以降も影響が出るのでは」としている。 (山本知弘、asahi = 6-19-20)

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4 月の消費支出、大きく落ち込む ゲームソフトは 2 倍に

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため営業や外出を自粛する動きが広がった 4 月の消費支出が、大きく落ち込んだ。 総務省が 5 日発表した 4 月の家計調査で、2 人以上の世帯の消費支出は 26 万 7,922 円だった。 前年同月より実質で 11.1% 少なく、その落ち幅は比べられる 2001 年 1 月以降で最も大きかった。 外食や交通、サービスなどで目立った。 減少は 7 カ月連続だが、落ち込み幅が 2 ケタになったのは、消費増税前の駆け込み需要の反動が出た 15 年 3 月(10.6% 減)以来、ほぼ 5 年ぶりだ。

支出が減ったのは、10 ある品目分類のうち 8 品目。 「教養娯楽」、「被服及び履物」、「食料」などだ。 店での飲酒代は 90.3% 減、食事代は 63.3% 減。 在宅での勤務が広がったことを背景に、鉄道運賃は 89.9% 減、背広服は 79.9% 減、口紅は 41.1% 減だった。 「巣ごもり」を一因に支出が増えた品目もある。 ゲームソフトは 2 倍。 電気代は 6.3% 増、上下水道料は 11.5% 増だった。 マスクなどの保健用消耗品は価格の上昇もあって 2.2 倍に膨らんだ。 総務省は「緊急事態宣言による自粛の影響が多くの品目に出た。 5 月もコロナが響くのは間違いない」としている。 (山本知弘、asahi = 6-5-20)

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3 月の消費支出、外出自粛で大幅減 ゲーム機・書籍は増

総務省が 8 日発表した 3 月の家計調査で、2 人以上の世帯の消費支出は前年同月より実質で 6.0% 減の 29 万 2,214 円だった。 前年に消費増税直前の駆け込み需要があった 2015 年 3 月以来の大幅な落ち込みだ。 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出やイベントの自粛などで幅広い費目で支出が減少した。 減少は 6 カ月連続。 10 ある品目分類のうち、「教養娯楽」、「被服及び履物」、「食料」など 7 品目で支出が減った。 内訳では、飲食店での飲酒代が 53.5% 減、パック旅行費が 83.2% 減、文化施設入場料は 71.4% 減など。 式典の見合わせなども響き、婦人用洋服は 35.2% 減だった。

一方、ゲーム機は 165.8% 増、書籍は 12.3% 増と支出が増えた。 自宅で過ごす時間が増えたことによる「巣ごもり需要」の影響とみられるという。 パスタが 44.4% 増となるなど、保存が利く食料への支出も増えた。 総務省は「学校の休校などによる生活への影響が顕著に出た。 4 月も方向性は変わらないのでは」としている。 (asahi = 5-8-20)


中小企業の景況感、過去最悪に 4 - 6 月期、コロナ直撃

内閣府と財務省が 11 日発表した 4 - 6 月期の法人企業景気予測調査で、中堅・中小企業の景況感を示す指数が、2004 年の調査開始以降の最悪を更新した。 中堅はマイナス 54.1 (前期はマイナス 13.1)、中小は同 61.1 (同 25.3)。 なかでも新型コロナウイルスが経営を直撃した宿泊・飲食や自動車関連はマイナス 90 前後と、ほぼ全企業が景気悪化を訴えた。

景況感指数は、景況感が「上昇」と答えた企業の割合から、「下降」とした企業の割合を引いたもの。大企業の指数もマイナス 47.6(同 10.1)で、リーマン・ショック直後の 09 年 1 - 3 月期(マイナス 51.3)に次いで過去 2 番目の低水準だった。 大企業の指数がマイナス圏に沈むのは、3 四半期連続になる。 今回の調査は 5 月 15 日付。 一部で緊急事態宣言が解除されたものの、店舗休業や工場の減産など、経済活動が急減速していた時期と重なる。 このため、企業の大きさや製造か非製造かを問わず、すべての業種で景況感がマイナスになった。 7 - 9 月期の見通しは、大企業がマイナス 6.6 となるなど回復を見込むが、中堅・中小含めていずれもマイナス圏だった。 (asahi = 6-11-20)

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沈む企業業績、純利益 2 割超減 世界的に需要が「蒸発」

新型コロナウイルスの感染拡大で、企業業績が大きく沈んでいる。 上場企業の 2020 年 3 月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が前期比 20% 超減る見通し。 売上高も同 2% 減り、リーマン・ショック直後の 09 年 3 月期以来、11 年ぶりの減収減益に陥る。 今年 1 - 3 月に限ると、純利益は 78% 減も急落した。

東京証券取引所1部の 1,340 社(金融を除く)のうち、12 日までに決算発表した 526 社(全体の 39%)を SMBC 日興証券が集計した。 未発表分の 61% は直近の業績予想をもとに加算した。 20 年 3 月期の売上高は前期比 2% 減の 510 兆円、本業のもうけを示す営業利益は 20% 減の 31 兆円、純利益は 22% 減の 23 兆円だった。 減収は 3 年ぶり、純利益の減益は 2 年連続だ。

新型コロナの影響が表れた 20 年 1 - 3 月期でみると、決算発表済みの 526 社の売上高は前年同期比 4% 減の 55 兆円、純利益は 78% 減の 6,580 億円に急落。 純利益は製造業が同 84% 減、非製造業が 71% 減だった。

感染の終息時期を見通せず、決算発表を終えた企業の 6 割は 21 年 3 月期の業績予想公表を見送った。 公表しない企業は例年 1 割ほどで、今年は異例の多さ。 政府が緊急事態宣言を出した 4 月以降、営業自粛などが幅広い業種に広がり、SMBC 日興証券の伊藤桂一アナリストは「4 月以降の業績はさらに厳しい」と指摘。 21 年 4 - 6 月期決算はさらに悪化の恐れがあるとの見方を示す。 (吉田拓史)

世界的な営業・外出自粛が影響

「想定を上回る規模の影響額だ。」 ソニーの十時裕樹専務は 13 日、決算会見で新型コロナの影響をこう述べた。 前年まで 2 年連続で純利益が過去最高を更新していたが、20 年 3 月期は前年に株式売却益を計上した反動も重なり、前年比 36.5% 減の 5,821 億円と大幅減益となった。

特に響いたのが、テレビやカメラ、スマートフォンなどの家電分野だ。 マレーシアや中国など海外工場が感染防止のための外出制限などによって生産停止。 世界的な営業自粛や「巣ごもり」の影響で、需要の多くが瞬く間に消え失せた。 ここ数年の好業績を牽引した映画や音楽などの分野でも、人の移動が制限されたために、コンテンツの制作が滞った。

航空や鉄道業界は、文字どおり需要の「蒸発」の影響を受けた。 ANA ホールディングス (HD) と日本航空の 3 月の旅客数は国内線で前年同月比 6 割減、国際線で 7 割減。 ともに 1 - 3 月期は大幅赤字で、通期でも減収減益に。 スターフライヤーは、通期で 6 年ぶりに純損益が赤字に転落した。 日航の菊山英樹専務は「かつて経験したことのないイベントリスクだ」と話す。 鉄道では、JR 各社で上場する東日本、東海、西日本、九州の 4 社すべてで通期の純利益が前年より減った。

世界的に新車が売れなくなった自動車産業への影響も大きい。 トヨタ自動車は販売台数減の影響をコスト削減でカバーして通期の純利益で約 10% の増益となったものの、ホンダは通期の純利益が約 25% 減。 米中 2 大市場で販売減となった 1 - 3 月期は四半期として 4 年ぶりに営業赤字に転落した。 部品メーカーでも、車載向け電子部品が主力のアルプスアルパインが 7 年ぶりに通期の純損益が 40 億円の赤字になった。

小売業界では、三越伊勢丹 HD の通期の純損益が 111 億円の赤字に転落した。 2 月から外国人客への売り上げが落ち込み、「3 月の段階で外国人客はほぼゼロ。 感染拡大が終息してもしばらく戻ってこない。(杉江俊彦社長)」 「メイド・イン・ジャパン」が訪日外国人に人気の時計大手セイコー HD も通期の純利益が約 6 割減となった。 「もっと早く(感染拡大が)終息すると思ったが、思ったより長引きそうだ。」 中村吉伸社長は、そうこぼす。 商社では、大手 7 社中 5 社が通期の純損益が減益か赤字転落。資源価格の下落などで減損損失を計上した丸紅が、過去最大の 1,974 億円の純損失となった。

新型コロナは、今の 21 年 3 月期の業績にも大きな影響を与えるのは確実だ。 だが、現時点でそのダメージは不透明で、業績予想を示さない企業も多い。 SMBC 日興証券によると、決算発表済みの企業の 6 割が業績予想を公表しなかった。 20 年 3 月期にそろって巨額の純損失を計上した日本製鉄など鉄鋼大手 3 社は、いずれも見通しを白紙にした。 自動車需要の低迷で高炉の操業停止が相次ぎ、今期の粗鋼生産量は大きく落ち込む見通し。 「上期は大きな赤字が避けられない(日本製鉄の橋本英二社長)」、「発足以来の最大の危機(JFEHD の寺畑雅史副社長)」など危機感は強い。

予想を出した企業も厳しい内容だ。 トヨタ自動車は営業利益が約 8 割減の 5 千億円に減る見通しだと公表した。 豊田章男社長は「危機的状況だからこそ、一つの基準を示すことが必要だ」と話した。 三菱重工業は、米航空機大手ボーイング向けや自動車大手向けの部品、工作機械の引き合いが伸び悩むため、営業利益と純利益が「ゼロ」になると見込む。 泉沢清次社長は「今まで経験したことのない環境の変化で、人の行動様式さえ変わる可能性がある」と指摘する。

影響は長引くとみる経営トップも少なくない。 三菱商事の垣内威彦社長は「想定以上の長期戦を覚悟する必要もあり得る」と話す。 三越伊勢丹 HD の杉江社長は「終息後の(個人消費の)『V 字回復』はない。 長期間消費は低迷する。」と言い切る。 現在の全店休業が 1 カ月続くと、営業利益は 150 億円ずつ目減りするという。 20 年 3 月期は「巣ごもり需要」が追い風となった食品卸大手の三菱食品の森山透社長も「買いだめ需要は一巡し、今後消費は低迷する」とみる。 (高橋諒子、南日慶子、佐藤亜季)

政策投資銀の融資枠に大企業殺到

新型コロナの影響が長引けば、大企業でも経営が傾きかねない。 備えとして手元のお金を手厚くする動きが活発化している。 金融機関への融資要請に加え、20 年 3 月期の配当を減らす企業も目立つ。 SMBC 日興証券によると、12 日までに決算発表した 584 社のうち、102 社が減配の方針を決めた。 決算発表ラッシュの 5 月に多い株主還元のための自社株買いも「例年の半分ぐらいになるのではないか(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏)」とされる。

政府も支援策を打ち出している。 4 月 30 日に成立した新型コロナ対応の今年度第 1 次補正予算で、3 メガなど民間金融機関に限らず大企業の資金繰りを支えるために、政府系の日本政策投資銀行に 5 兆円の危機対応融資枠を確保した。 資金は財政投融資などでまかなう。 危機対応のために当初予算で設定された融資枠(2 千億円)に上乗せする。 政投銀への融資要請はハイペースだ。 渡辺一社長は 4 月 22 日の衆院財務金融委員会で、1 カ月ほどで総額が「2 兆円を超える規模。 リーマン・ショックを上回る勢いだ。」と述べた。

すでに、ANAHD や日本航空、日産自動車やマツダなどが要請。 今後も相次ぐと予想され、リーマン・ショック(3.3 兆円)、東日本大震災(2.8 兆円)の際の危機対応の融資総額を早くも超えそうだ。 これとは別に、政投銀は政府拠出(3 千億円)を含む大企業への 4 千億円の出資枠も確保。 巨額赤字に迫られて財務状況が悪化した企業に公的資金を投じる体制も整えた。

政府は危機感を強めており、西村康稔経済再生相は 5 月 10 日、「ただちに必要だと思わないが、(新型コロナの影響が)長引く状況を踏まえ、しっかりと用意したい」とし、融資枠と出資枠をさらに拡大する方針を打ち出した。 一方、4 月以降、仕事がなくなった従業員を雇ったまま休ませる「一時帰休」が、大企業でも業種を問わずに相次ぐ。 政府は、4 - 6 月に企業が休ませた従業員に支払う手当の一部を負担する「雇用調整助成金」の助成率を、大企業の場合でも最大で 75% (通常は 50%)に引き上げている。 (鈴木友里子、永田大、asahi = 5-13-20)


日本の GDP 4 - 6 月期はマイナス 20% で戦後最悪へ
テレワークなどデジタル化苦戦で脱コロナは数年も

18 日に発表された 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) 段階では年率 1 桁の減少にとどまったが、新型コロナウイルスの影響が本格的に出てくる 4 - 6 月期は 20% 前後の落ち込みが予想され、日本経済は戦後最悪の状態となりそうだ。

実質国内総生産 (GDP) は 1 - 3 月期の段階では年率 1 桁の減少にとどまった。 ただ、新型コロナウイルスの影響が本格的に出てくる 4 - 6 月期は 20% 前後の落ち込みが予想され、日本経済は戦後最悪の状態となりそうだ。 緊急事態宣言の解除後も、経済規模がコロナ前の水準に戻るには 1 年以上かかるとの見方もある。 感染防止と経済再生のキーは「デジタル化」だが、政府や企業にとって苦手分野である現状が浮き彫りとなっている。

4 - 6 月期、大恐慌との比較に

「1 - 3 月より 4 - 6 月は厳しい状況になる。 戦後最悪の危機といえる。」 内閣府幹部は、リーマン・ショックより経済悪化は深くなり、長期化すれば金融システムに波及する恐れもあることから昭和大恐慌と比較する方が適切だとの認識を示している。 当時は世界大恐慌の波に飲まれ、日本でも経済と金融システム崩壊が起きた。 エコノミストの経済見通しを集計した 5 月の「ESP フォーキャスト」調査では、4 - 6 月期の GDP はマイナス 21.3% もの減少が予想されている。 安倍晋三首相がいう「戦後最悪」の経済状況とは、比較可能な GDP 統計で、戦後これほどの落ち込みがなかったという意味だろう。

政府は、緊急経済対策などが 2021 年にかけて GDP を 4.4% 押げ上げる効果があると試算しているが、実際は人々の行動次第でもあり、不透明な点が多い。 ESP 調査では 7 - 9 期の GDP は 8% 台に上昇する見通しだが、3 四半期連続の大幅なマイナスの後にしてはかなり小幅な伸びにとどまりそうだ。 内閣府としては、元の水準に戻るには相当時間がかかり厳しい経済状況が続くとの見立てだ。 20 年度を通してみても、大方の調査機関が 5% を超えるマイナス成長となるとの見通しを示す。 リーマン・ショックのあった 08 年度のマイナス 3.4% と比較しても、相当深い落ち込みになりそうだ。

一部の地域では 5 月 14 日に緊急事態宣言が解除されたが、「需要はすぐには戻らない」と前出の内閣府幹部はみている。 第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストの試算では、コロナ感染リスクの影響に伴う経済損失額は 5 月 31 日までで合計額を 45 兆円。 緊急事態宣言が 39 県で解除されても、7.4 兆円を改善させるに過ぎないという。 熊野氏は、感染リスクが再燃する可能性が残っていることを考えると、政府も一気に需要刺激策をとったり大型公共事業を積み増して総需要政策をすることはしばらく手控えざるを得ないともみている。

政府は経済回復に軸足、ネックはデジタル化

とはいえ、政府としては、感染拡大回避だけでなく経済活動の再開に軸足を移し始めている。

14 日に開催された経済財政諮問会議では、感染拡大回避と経済活動の両立を目指した議論が行われた。 影響の大きい観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテイメントなどの活性化を目指した「GoTo キャンペーン」の実施前倒しなど、早くも自粛からの転換支援への提言がなされた。 同時に、第 2、第 3 波にも備えつつ、経済活動と両立する「検査・追跡・救命と感染遮断」を徹底して進められる体制」について国が基本方針を示すべきとされ、そうした体制が整備できなければ、経済活動再開もままならないとの認識も示された。

ただ、従来と同様の経済活動や日常が取り戻せるのはまだ先になるとの指摘も目立つ。 そして、感染回避と経済回復の両立に向けて「デジタル化」がキーとなるとの認識は、以前より強まったようだ。 BNP パリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏は、このままでは 22 年 1 - 3 月になっても GDP の水準は消費増税前の 19 年 7 - 9 月を 2.1% 下回ると試算し、そうした中で広がりを見せ始めた「デジタル化」への期待をあげる。 ただ「それらは日本の経営者が最も苦手とする分野だ」と指摘する。

実際、緊急経済対策の現場対応においても、地方税の納税猶予、小学校休業等対応支援金、雇用調整助成金、政策金融公庫の特別貸付などは押印や書類提出が必要となっている。 企業でもテレワークを導入しているところは全国的に少なく、厚生労働省の 4 月 12 - 13 日実施の調査によるとオフィス勤務のテレワーク実施率は全国平均で 26.8% にとどまった。 東京でも 51% と、政府が呼び掛けたオフィス出勤者の最低 7 割削減には程遠い状況だ。

デジタル投資を期待される企業にとっては「設備投資は、感染の影響終息後の産業地図の変化を注視してから実行することになる(4 月ロイター企業調査)」などの声もあり、新規投資に踏み切るのはポストコロナの時代にどのような構造変化が起きているか見極めたいと思惑もありそうだ。 (中川泉、Reuters = 5-18-20)

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1 - 3 月期実質 GDP、年 3.4% 減 消費落ち込み影響

内閣府が 18 日公表した今年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価の変動を除いた実質(季節調整値)で前期(昨年 10 - 12 月)より 0.9% 減り、2 四半期連続のマイナス成長となった。 この状況が 1 年続いたと仮定した年率換算では 3.4% 減。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で営業や外出を控える動きが出て、個人消費などが大きく落ち込んだことが影響した。 (asahi = 5-18-20)


家賃「3 分の 2」、国が半年給付 最大月 50 万円 - 自民支援案

自民党は 7 日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で家賃の支払いが困難になった事業者に対する支援策を取りまとめた。 一定程度の減収を条件に、事業者が支払う家賃の 3 分の 2 相当を半年間、国が給付する。 公明党と協議の上で、8 日に与党案として政府に提言する。

給付額の上限は、中小・小規模事業者が月 50 万円、個人事業主が同 25 万円。 前年と比べて、1 カ月間の収入が半減するか、3 カ月間の平均収入が 3 割減少することが条件。 事業者はまず、金融機関の無利子・無担保融資を活用し、家賃の支払いに充てた分の一部を、国が事後に給付する。 自民党の岸田文雄政調会長は 7 日、家賃支援に関するプロジェクトチームの会合で、「融資と助成の『ハイブリッド型』のスキーム(仕組み)を通じ、家賃負担に対する(事業者の)不安を軽減する」と強調した。 (jiji = 5-7-20)

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事業規模 108 兆円の緊急経済対策、安倍首相が実施表明

安倍晋三首相は 6 日夕、首相官邸で記者団に対し、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、過去最大となる事業規模 108 兆円の緊急経済対策を実施すると表明した。 減収世帯への 30 万円の現金給付や、売り上げが半減した中小・小規模事業者への最大 200 万円の給付金などを盛り込む。 7 日にも正式決定する。 安倍首相は「過去にない強大な規模となる GDP (国内総生産)の 2 割にあたる事業規模 108 兆円の経済対策を実施することとした」と強調。 事業規模は、リーマン・ショック時の 2009 年に政府が実施した対策(56.8 兆円)の倍近くになる。

具体的には、家庭や中小・小規模事業者に対して総額で 6 兆円を超える現金を給付するほか、無利子融資を民間金融機関でも受けられるようにし、26 兆円規模で事業者の納税や社会保険料の支払い猶予をすることも明らかにした。 これに先立ち、与党はこの日、政府の対策案を了承。 対策は、感染拡大が収束するまでの段階と、収束後の経済回復をめざす段階に分けて実施。 ▽治療薬として期待される「アビガン」の備蓄確保、▽児童手当の増額、▽観光や飲食の利用者への割引クーポン - - なども盛り込まれる。 (asahi = 4-6-20)


消費行動、コロナで一変 クレカ決済のビッグデータ分析

週末の行楽地から人影が消え、平日のオフィス街や繁華街は静まり返る。 そんな異常な光景が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って全国で広がる。 私たちの消費行動はどう変わったのか。 クレジットカードの利用実績を使ったビッグデータから、お金の使い方の最新動向が浮かび上がる。 JCB は会員から 100 万人分のカード決済実績を匿名で抽出し、統計「JCB 消費 NOW」として半月ごとに集計している。 3 月末までの最新データがまとまった。 訪日外国人の利用は含まず、国内消費者の姿を分析できるのが特徴だ。

消費額を半月ごとに追うと、3 月以降に一変した。 国内で感染が広がって大型行事自粛が始まった 2 月後半は、前年同期比 0.3% 減。 3 月前半には 7.7% 減と急落し、消費増税後の昨年 10 月前半(6.5% 減)を上回る落ち込みだった。 全国 10 地域別にみると、東北、北陸、四国以外は 10% 超も下げていた。 3 月 15 日時点の感染者は朝日新聞の集計で、南関東と近畿 200 人超、東海と北海道 100 人超に対し、東北、四国は 20 人以下、北陸も 20 人超だった。

3 月後半に入ると、9.3% 減と消費はさらに急ブレーキがかかる。 北海道、南関東、九州など 6 地域が 15% 超下げるなど四国以外は 2 桁減。 野村証券の水門善之シニアエコノミストは「3 月に入って経済活動が一気に停滞した。 東京都で外出自粛要請が出た 3 月下旬にその傾向は加速し、感染者の多い関東などから全国へと波及した。緊急事態宣言下でこの傾向は今後より強まる。」と話す。

業種別にみるとどうか。 まず打撃を受けたのが映画館や航空旅客サービスなどで、2 月単月(参考系列)で前年比 20% 近く落ちた。 3 月になると、東京ディズニーリゾート(千葉県)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)が 1 カ月通して臨時休園するなど、様々な施設で休業が拡大。 3 月は遊園地が月間で前年比 96% 減となり、百貨店、居酒屋やホテルなど幅広い業種で 20% 超落ちた。

3 月も前年を上回ったのは、21 業種のうちスーパー、コンビニ、酒屋、喫茶店・カフェ、医薬品、ディスカウントショップなど 7 業種。 スーパーは食品を買う人らでにぎわい、2 月 14% 増、3 月 17% 増に。 スーパー以外は軒並み 2 月から 3 月にかけて伸び率が鈍化した。 一方で、EC (ネット通販)は 2 月 9% 増、3 月 15% 増と伸びた。 JCB とともにデータを集計するナウキャスト社の辻中仁士(まさし)・最高経営責任者 (CEO) は「巣ごもり消費で堅調なところは一部あるが、レジャー系を中心に消費の落ち込みがより鮮明に表れてきた」と話す。

光熱費など生活に欠かせない出費も変化した。 ガソリン販売を示す燃料小売業が 3 月に急落した一方で、光熱費を示す電気・ガス・熱供給・水道業は 3 月後半に3・5%増と前半のマイナスからプラスへ転じた。辻中氏は「ガソリンは価格下落も影響したが、これほど大幅な落ち込みは外出自粛の影響と考えられる。 逆に自宅にこもることで電気・ガスなど光熱費の使用量は増え始めている。」という。 野村証券の水門氏は今後の動向について、「EC の伸びなど、外出自粛下での新しい消費行動が顕著に現れてくるだろう」とみる。

自粛効果、高年層でも低く

消費の統計は政府や業界団体も公表している。 カード利用のデータを使ったこの民間統計は、結果公表がより速く、業種の範囲が広く、年齢別や男女別なども細かくわかるのが特徴だ。 直近の消費動向を男女別にみると、ガソリン販売や医薬品販売はほぼ同じ傾向だった一方で、外食や娯楽(映画、スポーツ施設、遊園地)は大きな差が出た。 在宅勤務が広がった 3 月の外食は、女性が前年比 27% 減に対し、男性は 39% 減。 娯楽への消費額も女性より男性の下落が目立った。

年齢別データから外出自粛の効果も浮かび上がる。 東京大学の渡辺努教授らは 3 月までのデータ(南関東の男性の利用実績)をもとに、業種ごとにどの年代層の消費が変化したかを調べて自粛の効果を推計した。 その結果、外食や娯楽を中心に、30 代後半 - 50 代前半ではっきりと効果が出ているとわかった。 一方で、30 代前半より若い層や 50 代後半より上の層は、ほかの年齢層より消費減が小さかった。 特に、娯楽の分野は高齢層の自粛効果の低さがくっきりと表れた。

新型コロナの感染拡大を機に、大量のデータを速く集計して実態をつかみ、適切な政策対応や行動変容につなげるかが問われている。 携帯電話の位置情報をもとに人出の変化を分析したり、業種別動向から適切な支援策や打ち出す時期を探ったり。 いかに感染拡大を抑えて、悪影響を最小限にするか。 プライバシーに配慮しつつ、データの有効活用が注目されている。 (鈴木友里子、asahi = 4-18-20)

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外食・宿泊、個人消費 9 割減か 感染拡大、迫る経済危機

新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態が宣言され、経済への打撃がさらに甚大になるとの見方が、民間エコノミストから次々と出ている。 政府は「過去最大」の経済対策をまとめたばかりだが、混乱の収束は見通せず、困窮する企業や人への支援強化を求める声も強い。

外食・宿泊、支出 9 割減か

経済活動への影響がもっとも大きいのは個人消費の分野だ。 緊急事態宣言の対象地域では「外食・宿泊」への支出が平時と比べて 9 割減、「交通」、「娯楽・レジャー・文化」への支出は半減する - -。 大和総研の神田慶司シニアエコノミストはこんな見方を示す。 試算によると、今回の宣言で消費の抑制額が 1 カ月で 1.4 兆円、都内だけで 0.4 兆円膨らむ。 「不要不急の外出自粛で抑えられてきたものが、在宅勤務シフトでさらに抑制される(神田氏)」という。 試算は 6 月ごろの収束が前提で、影響はさらに膨らむ恐れもある。

落ち込みは、宣言が出た大都市圏にとどまらない。 BNP パリバ証券は、5 月 6 日までの宣言期間中に国内全体の消費が平時より 17・9% 減ると試算。 対象外の地域でも宿泊や外食、家具・衣料品などの支出が 4 分の 3 程度になるという。 河野龍太郎チーフエコノミストは「政府が自粛要請を始める前の水準に個人消費が戻るのは来年 4 - 6 月ごろになる」とみる。

4 - 6 月期、GDP 5 兆円減の試算も

個人消費は日本の国内総生産 (GDP) の半分以上を占める。 外出自粛や宣言の影響について、三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、今年 4 - 6 月期の GDP を約 5 兆円分押し下げるとみる。 宣言後に日本経済研究センターが民間エコノミストの予想をまとめたところ、4 - 6 月期の実質成長率は平均で年率換算 11.8% 減。 消費増税があった昨年 10 月以降、3 四半期連続の大幅なマイナス成長が避けられない情勢だ。 2020 年度の成長率はマイナス 3・09% になる見込みだという。

危機感を募らせる政府は宣言に合わせ、事業規模 108 兆円、GDP の 2 割に相当する巨額の経済対策を打ち出した。 ただ、給付金の一部は貯蓄に回るとみられ、BNP パリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストの試算では、GDP の押し上げ効果は 0.9% 分で、宣言でさらに落ち込む分の 6 割程度にとどまるという。

経済対策、賛否分かれる

経済対策の中身をめぐっては、専門家の評価は割れている。 当面の対応では、収入が落ち込んだ世帯や事業者向けの給付金が目玉だ。 ただ、実際にお金が配られるのは関連予算成立後の 5 月以降となる。 日本総研の松村秀樹チーフエコノミストは「1 カ月も悠長に待っている時間はない。 倒産が増えたら本当の不況になる。 もっと急ぐべきだ。 民間金融機関が融資しやすいよう、政府による信用保証も検討するべきだ」と注文をつける。

政府はコロナ問題が収まった後、クーポン券などで消費を刺激し、経済を「V 字回復」させるシナリオを描く。 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「危機だから公共事業を増やそうという発想でなく、好感が持てる。」 ただ、消費の冷え込みが長引けば雇用や企業活動のいっそうの悪化を招きかねず、エコノミストの中では、追加の経済対策が必要になるとの見方が強い。 熊野氏も「収束に時間がかかるなら、手元資金の乏しい事業者の破綻や失業が現実味を帯びる。 給付金だけでなく、国による損失補償の検討も避けられないのでは。」と指摘する。 (山本知弘、西山明宏、asahi = 4-11-20)


売り上げ 99% 減も 「お先真っ暗だ」中小支援を早急に

新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が広がり、売り上げの急減で中小企業が資金繰りに苦しんでいる。 政府の経済対策は危機を救えるのか。 全国中小企業団体中央会の森洋会長に聞いた。

- - 足元の中小企業の状況は。

「東日本大震災やリーマン・ショックと比べものにならないような大変な被害を受けると思っている。 国難どころか、過去最悪の状況だ。 見えないウイルスと戦争をしているので、ワクチン開発のメドが立たない限り収束できない。 とにかく耐え忍ぶしかない。」

「特にホテルなどの観光業はどうにもならない状況だ。 私は神奈川県でガソリンスタンドを経営しているが、3 月の売上高は前年同月比で 12 - 13% 減り、4 月は 20% ほど減りそうだ。 ボディーブローのように効いてくる。 観光バスの給油がなくなり、売り上げが 99% 減ったスタンドもあると聞いた。 潤っている企業は一握りで、基本的にどの企業もダメージを受けている。 お先真っ暗と言っても過言ではない。」

- - 政府は中小・小規模事業者への給付金支給などの経済対策を打ち出しました。

「評価すべきだが、売り上げ減少の要件は緩和すべきだ。 日本政策金融公庫による実質無利子・無担保融資や、(信用保証協会が債務保証する)信用保証制度もあるが、活用には売り上げの減少が条件だ。 制度を使いたくても、使えない企業も多い。」

「それはなぜか。 4 - 5 月に売り上げが落ちるのは目に見えて分かっている。 しかし 3 月末時点ではまだ急激に売り上げが減った業種は少ないからだ。 さらに、小規模事業者は仕入れから販売まであらゆることに追われて忙しいなかで、減収証明の書類を準備する手間もかかる。 制度を使うハードルをもう少し下げ、運用に柔軟性を持たせてほしい。 融資のタイミングが遅れると倒産しかねない。 不正な申請を懸念するのは分からなくもないが、ある程度目をつぶってもどんどん融資し、小規模事業者を存続させてほしい。」

- - 中小企業は通常、どのくらい手元資金を持っているのですか。

「手元資金が潤沢な会社はほとんどない。 3 月の仕入れ代を 4 月に払う場合、その支払いの一部を 4 月の売り上げでまかなっている飲食店などはたくさんある。 4 月に売り上げがドッと落ちると、3 月の仕入れ代金を払えない。」

「先行きも見通せず、店を畳んだ方がよいという判断になり、最後は倒産を選ぶことになる。 売り上げがほぼない状態が続けば、1 カ月分も持たない小規模な店も多いだろう。 資金繰り支援が夏ごろまで受けられないと、多くの中小企業は存続が危ぶまれ、失業者がたくさん出かねない。」

- - 日本政策金融公庫や自治体の窓口には相談が殺到しているようです。

「2 月中旬ごろ、ある企業が公庫に相談に行ったら 60 人待ちだったらしい。 今はさらに殺到しているだろう。 半日でも早く融資してもらいたいのが中小企業の本音なので、融資を受けるまでのスピードを上げる工夫をお願いしたい。」

- - 経済対策では民間金融機関の無利子・無担保融資も盛り込まれましたが、補正予算の成立までは利用できません。

「多くの企業で 5 月末までに法人税などを支払わないといけない。 それに間に合わせるため、4 月下旬に補正予算を成立させる予定なのだろうが、それまで待てる余裕がない小規模事業者も多い。」

「与野党は早く審議を進めてほしい。 政府が決めないとどうしようもない状況で、与野党が一致団結して動くことが求められている。」

「2018 年や 19 年の台風・豪雨で被害を受けた中小企業は、すでに災害対応で資金を借りたり保証を受けたりしている。 今回また借りると、今まで以上に利益が上がらないと返済できない。 複数の融資を一本化し、過去の融資の返済を遅らせてもらいたい。 そうしないと、小規模事業者はもたないだろう。」

「中小企業経営者は高齢の人が多く、電子申請も難しい。 専門家に頼めばお金がかかる。 デジタル化の方向に向かっているのは理解するが、なかなかついていけない経営者も多いという課題もある。」 (聞き手 = 箱谷真司、asahi = 4-14-20)


日銀短観、業況判断指数が大幅悪化 7 年ぶりのマイナス

日本銀行が 1 日に発表した 3 月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、代表的な指数である大企業・製造業の業況判断指数 (DI) が、前回の昨年 12 月調査から 8 ポイント悪化しマイナス 8 となった。 悪化は 5 四半期連続で、2013 年 3 月調査以来、7 年ぶりにマイナスになった。 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による需要の減少や、中国での生産停止が長引きサプライチェーン(部品供給網)が寸断されたことで、輸出企業を中心に悪化幅が大きかった。

大企業・非製造業は 12 ポイント悪化のプラス 8 で、13 年 3 月調査以来の低い水準。 訪日外国人客の急減に加え、各種イベントの休止や外出自粛による需要の低迷が大きく響いた。 短観は全国約 1 万社が対象。 DI は景気が「良い」と答えた企業の割合 (%) から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数。 回答期間は 2 月 25 日 - 3 月 31 日で感染拡大による影響が大きく反映された。 (笠井哲也、asahi = 4-1-20)

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政府の景気判断 下方修正 6 年 9 か月ぶり「回復」表現なくなる

政府は今月の月例経済報告を公表し、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて景気の現状についての判断を「足もとで大幅に下押しされており、厳しい状況にある」と下方修正しました。 景気判断から「回復」という表現が 6 年 9 か月ぶりになくなり、政府として公式に経済への厳しい見方を示しました。 政府が 26 日の関係閣僚会議でまとめた今月の月例経済報告では新型コロナウイルスの感染拡大による深刻な影響が相次いで示されました。

「個人消費」は「感染症の影響により、このところ弱い動きとなっている」として、判断を 3 年 1 か月ぶりに下方修正しました。 今月上旬の新幹線の利用者数が前の年から半減したほか、コンビニエンスストアの販売額も先月後半以降、マイナスに転じるなど、外出自粛の影響が急速に広がったためです。 「輸入」は、中国からの部品などの供給が滞っているため、「感染症の影響により、このところ減少している」と判断し、2 か月連続で下方修正しました。 さらに景気を支えてきた「雇用情勢」についても、企業からの求人数が減り始めているとして「改善してきたが、感染症の影響がみられる」とする判断に 4 か月ぶりに下方修正しました。

これらを踏まえて景気の現状についての判断は、「新型コロナウイルス感染症の影響により、足もとで大幅に下押しされており、厳しい状況にある」としました。 「緩やかに回復している」としていた前の月の判断を下方修正し、6 年 9 か月ぶりに「回復」の表現がなくなりました。 政府として公式に経済への厳しい見方を示した形で、回復の期間が戦後最長になったと言われてきた景気が転換点を迎えました。

経済指標 急速に悪化

今月の月例経済報告に関する関係閣僚会議では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、急速に悪化している経済指標が相次いで報告されました。 まず、GDP = 国内総生産の半分以上を占める「個人消費」については、外出の自粛の影響で各地の新幹線の今月前半の利用者が前の年と比べて半減したデータが示されました。 東海道新幹線は、今月 1 日から 9 日で 56% の減少、山陽新幹線は今月 1 日から 14 日で 54% の減少などとなっています。

また、デパートでは、3 社の今月前半の売り上げが前の年と比べてマイナス 43% からマイナス 32% となるなど、1 月以降、月を追うごとに減少幅が拡大している現状が示されました。 そして、堅調に推移してきたコンビニエンスストアの販売額も、先月後半から前の年と比べてマイナスとなり、今月 9 日から 15 日の期間は、4.2% 減少したとしています。

一方、景気の状態をどう感じているかを示す「景況感」が急速に悪化していることも示されました。 働く人たちに景気の実感を尋ねる先月の「景気ウォッチャー調査」では現状を示す指数が急速に悪化し、東日本大震災直後の 2011 年 4 月以来の低い水準となっています。 そして、景気回復を支えてきた「雇用情勢」についても、先行きを懸念せざるをえないデータが出始めています。 企業からの求人数を 1 日ごとにみたデータでは、先月は 12.4%、今月は 16.1%、いずれも前の年より減少しています。

内閣府が企業に行った聞き取り調査では、「決定していた派遣契約がキャンセルされた」、「スタッフの求人が急きょストップになった」、「4月の昇給は延期する」などといった声が出ていて、今後、雇用への影響がさらに拡大することが懸念されます。

「回復」の表現 使い続けた経緯と削除の理由

政府は、月例経済報告で景気の現状について「回復」という表現を使い続けてきました。 2013 年 7 月に景気の判断を「景気は着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる」とし、前の月の「景気は着実に持ち直している」という判断から上方修正しました。 この時から先月・2 月まで、政府は、6 年 8 か月にわたって「回復」という表現を含んだ景気判断を続けてきました。 企業の業績が上向いたことで有効求人倍率が上昇するなど雇用や所得の環境がよくなり、底堅い個人消費が続いてきたためです。

しかし、おととしの春以降、アメリカと中国の貿易摩擦の影響で製造業の生産が弱まったほか、去年 10 月の消費税率の引き上げで消費の低迷が続き、景気への逆風が吹き始めます。 このため景気全体の判断も「緩やかに回復している」の前に「輸出を中心に弱さが長引いている」といった弱さを示す表現も付け加えるようになりました。 ただ、基調としては景気回復が続いているとして、「回復」という表現を判断の中心に据えてきました。

しかし、ことし 1 月以降、新型コロナウイルスの感染が拡大し、中国人などの外国人旅行者が激減したうえ、国内でも外出の自粛などで消費が急速に減っています。 こうした中で、ことしの春闘ではベースアップを見送る大手企業も出るなど賃上げの勢いにブレーキがかかっています。 景気回復をけん引してきた雇用や所得の環境も先行きが懸念される事態となり、政府は今月、景気判断から「回復」の表現を削除することになりました。

専門家「政府の強い危機感の表れ」

政府の景気判断から「回復」という表現が 6 年 9 か月ぶりになくなったことについて、みずほ総合研究所の宮嶋貴之主任エコノミストは「新型コロナウイルスの感染拡大による景気への下振れのショックが非常に大きいことを認めた形で、政府の強い危機感を表している。 『回復』という表現がなくなったことには、大きな意味がある」と述べました。 また、今後の日本経済の見通しについては「感染拡大が続くと、景気を下押しさせるインパクトの『深さ』に加えて、経済活動が停滞する意味で『長さ』も問題になってくる。 今の事態が長期化した場合には、リーマンショック以来の景気後退期に入る可能性が十分ありうる。」と述べました。

そのうえで、政府が検討を進めている経済対策について、宮嶋氏は「感染拡大が収束する前と後では、打つべき対策が違ってくるので、打ち出すタイミングが非常に重要だ。 まずは、大きな影響を受けている企業に対する資金繰り支援などを行うべきで、収束したあとは、冷え込んだ消費者のマインド・心理を刺激するような対策が重要になってくる。」と述べました。 (NHK = 3-26-20)