世界経済、最大 940 兆円損失 アジア開銀試算

【マニラ = 遠藤淳】 アジア開発銀行 (ADB) は 15 日、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界経済に最大で 8 兆 8 千億ドル(約 940 兆円)の損失が生じる可能性があるとの試算を発表した。 世界の国内総生産 (GDP) 総額の 9.7% に相当する。 4 月時点では最大 4 兆ドルと想定していたが、その後の感染状況などを踏まえて見直した。 ADB は各国が政策対応を続ければ、最大 5 兆 4 千億ドルに抑えられるとして、財政や金融面での「持続的な取り組み」の重要性を強調している。

新型コロナの感染拡大防止のための渡航制限や都市封鎖などの措置を各国が 6 カ月続けた場合、観光や消費、投資、生産などが幅広く打撃を受け、世界経済には 8 兆 8 千億ドルの損失が生じる。 そのうちアジアが全体の 3 割近い 2 兆 5 千億ドルを占める。

3 カ月で収束する場合でも世界経済の規模は 5 兆 8 千億ドル押し下げられる。 日本への影響は 3,200 億 - 4,900 億ドルに上る。 一方で各国が財政措置や金融緩和による景気の下支え、人々の生活支援といった政策対応を継続すれば、経済的影響を 30 - 40% 軽減できるという。 収束まで 6 カ月かかる場合で損失額は 5 兆 4 千億ドル、3 カ月の場合で 4 兆 1 千億ドルに抑えることができる。

試算は感染拡大が起きた 96 の国・地域を対象に観光業などへの直接的な影響のほか、部品供給網(サプライチェーン)の寸断による生産、投資への波及的な影響などを分析し、算出した。世界の雇用は最大で2億4千万人減少する可能性があるとし、その7割をアジア太平洋地域が占めるという。沢田康幸チーフエコノミストは「経済的打撃を軽減するには、政策的な介入が果たす役割が重要だ」と話している。 (nikkei = 5-15-20)

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世界経済、500 兆円超失う IMF マイナス 3% 成長予測

新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が縮小の危機にある。 移動制限などに伴う経済損失は 500 兆円を超す可能性もある。 国際通貨基金 (IMF) は 14 日公表した世界経済見通しで、2020 年の世界経済の成長率予測をマイナス 3.0% へ下げた。 各国は 800 兆円超の財政出動で応戦するが、感染を早期に封じ込められるかは予断を許さない。 感染抑制に力を尽くしつつ、将来の経済回復へ確かな手を打てるか。 成否はここ数カ月にかかっている。

「大恐慌以来、最悪の不況を経験する可能性が高い。」 IMF は見通しで危機感を示した。 2.9% のプラス成長だった 19 年から大幅に悪化し、09 年(0.1% 減)以来のマイナス成長に落ち込む。 1 月の前回予測(プラス 3.3%)から大幅な下方修正となった。 IMF はこれまで 20 年の世界の名目 GDP (国内総生産)を米ドル換算で約 90 兆ドルと見込んでいた。 今回の下方修正は単純計算で 5 兆ドル(540 兆円)を超える。 米ゴールドマン・サックスやシティグループの有力エコノミストらも新型コロナの感染拡大に伴う世界の経済損失が 5 兆ドル規模に及ぶとみる。 2 兆ドル超との民間試算もあるリーマン危機を上回る。

損失は年前半に集中する見込みだ。 JP モルガンは瞬間風速(前期比年率)でみた世界の成長率が 1 - 3 月期はマイナス 14.7%、4 - 6 月期は同 12.6% と急激に落ち込むと予想する。 各国政府や中央銀行は矢継ぎ早に対策を打ち出した。 IMF のゲオルギエバ専務理事は「世界各国で 8 兆ドル(860 兆円)程度の財政出動を計画している」と表明した。 世界経済全体の 1 割近くに相当する規模で、500 兆円強の経済損失を十分補う規模にもみえる。 だからこそ金融市場も落ち着きを取り戻しているが、危機の封じ込めはそう簡単ではない。

課題の一つはスピードだ。 経済収縮に直面して資金難に陥る企業や、失業の危機にさらされた人を迅速に救済できるか。 米国では 3 月半ば以降の 3 週間で 1,600 万人の失業保険申請があり、雇用が急減している。 日本では企業の資金繰り支援や家庭や個人事業主への給付金が経済対策に盛り込まれたが、実際にお金が手元に届くのは夏ごろとの見方もある。

IMF や市場のエコノミストは現時点で年後半からの V 字回復を見込む。 だが財政支出の効力発揮に時間がかかれば、倒産や失業が急増し、回復のための基盤が損なわれてしまう。 回復に時間のかかる U 字型や長期低迷が続く L 字の回復となるリスクも否定できない。 コロナ禍が予想以上に長引く恐れもある。 米国では経済活動の再開に向けた検討が始まるが、再開を急ぎすぎれば感染が再び拡大しかねない。 経済の低迷も長期化し、財政支出も一段と膨らむ。

世界経済のさらなるリスク要因が新興国だ。 新興国も大規模な財政出動に動くが、対外債務に頼る国も多く、資金流出を招きやすい。 3月には新興国の株式や債券は 800 億ドル超とリーマン・ショック直後を超える資金流出に見舞われた。 国際決済銀行 (BIS) によると、新興国のドル建て債務は約 3.8 兆ドルと 10 年で 2 倍以上に膨らんだ。 自国通貨の下落で返済負担がもっと膨らみ、債務危機に至るシナリオも消えない。 危機を封じ込め、経済回復の基盤を整える戦いは始まったばかりだ。 (金融政策・市場エディター 大塚節雄、ワシントン = 河浪武史、nikkei = 4-15-20)


4 月の米新車販売が半減 日系大手 4 社、歴史的な減少率

トヨタ自動車とホンダ、スバル、マツダの日系自動車大手 4 社は 1 日、米国で 4 月に販売した新車の台数を発表した。 計 18 万 4 千台で、前年同月より 52% の減少となった。 新型コロナウイルス対策で、多くの販売店が実店舗での営業停止に追い込まれており、過去にほぼ例のない歴史的な減少率を記録した。 トヨタは 8 万 4 千台、ホンダは 5 万 7 千台で、ともに前年同月比 54% 減。 スバルとマツダもそれぞれ 47%、44% の大幅減だった。 新車販売は景気動向をいち早く示す指標として注目され、米経済の急激な落ち込みがうかがえる。 米国スバル幹部は「過去に例のない自動車産業の現状を示している」と述べた。

ゼネラル・モーターズ (GM) などの米大手や日産自動車は月ごとの販売台数の発表をやめている。 米調査会社は、市場全体でも 4 月は前年同期比 53% 減となり、この数十年間で最大の減少だったと推計する。 ただ、一部の州では外出規制を緩める動きも出ており「4 月が底(アナリスト)」との見方もある。 ホンダは「4 月の最終週には改善の兆しが出た」という。 (ワシントン = 江渕崇、asahi = 5-2-20)


ユーロ圏 GDP、年率 14.4% 減 過去最大の落ち込み

欧州連合 (EU) 統計局が 30 日発表したユーロ圏 19 カ国の 2020 年 1 - 3 月期の実質域内総生産(GDP、速報値)は、前期(19 年 10 - 12 月)比で 3.8% 減となった。 年率換算では 14・4% 減で、1995 年に現行の統計を始めて以来、最大の落ち込みだ。 4 - 6 月期はさらなる落ち込みが予想されている。 新型コロナウイルスの感染が 3 月に一気に拡大し、リーマン・ショック後の 09 年 1 - 3 月期(12.0% 減)を上回る急減速となった。 前期は年率 0.4% のプラス成長で、ここ 2 年は 2% 未満の低成長が続いていた。 マイナス成長になるのは 13 年 1 - 3 月期以来、7 年ぶり。

ロイター通信は、ユーロ圏の成長率は 4 - 6 月期にかけてさらに落ち込み、7 - 9 月期から急回復するとの市場予測を伝えている。 ただ、各国の経済活動の再開が遅れれば、景気はさらに悪化する可能性がある。 欧州各国は感染拡大を封じ込めるため、3 月から人の移動や経済活動を一時的に制限する措置を相次いで導入。 自動車など製造業の工場の多くが止まり、食品や生活必需品を除く小売業も厳しい状態にある。

感染拡大が早かったイタリアなどは、感染ピークは超えたとして、5 月に段階的な経済活動の再開を模索している。 ただ、先んじて 4 月に制限を緩和したドイツでは、感染者数が再び増える懸念が出ており、各国が動向を注視している。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 4-30-20)


米 GDP 前期比 4.8% 減 リーマン後 11 年ぶり下げ幅

米商務省が 29 日発表した2020 年 1 - 3 月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、年率換算で前期(19 年 10 - 12 月期)比 4.8% 減となった。 6 年ぶりのマイナス成長で、リーマン・ショック当時の 08 年 10 - 12 月期以来、約 11 年ぶりの下げ幅となった。 世界の消費を引っ張ってきた米経済の収縮は、貿易などを通じて世界不況を増幅することが確実だ。

米経済は 1 - 2 月は堅調だったが、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した 3 月単月の影響だけで、市場予想(4.0% 減)を超えるマイナス成長に転落した。 米議会予算局は、足元の 4 - 6 月期には失業率が 14%、実質 GDP が前期比で年率 39.6% 減と、いずれも戦後最悪の水準まで悪化すると見込んでいる。

1 - 3 月期、GDP の 7 割を占める個人消費は 7.6% 減と、1980 年以来約 40 年ぶりの大幅な落ち込みとなった。 米連邦準備制度理事会 (FRB) は 3 月、2 度の緊急利下げで「ゼロ金利」に至る金融緩和に踏み切ったが、企業の設備投資は 8.6% 減。 輸入も 15.3% 減、輸出も 8.7% 減とリーマン直後以来の水準まで落ち込み、貿易の収縮も裏付けられた。 日本の自動車メーカーなどの主要市場で、工業製品の重要な輸出先でもある米経済の減速は、日本経済にも大きく波及する。

米国では 3 月下旬から大半の州で自宅待機命令などが出され、幅広い企業活動が停滞した。 4 月 18 日までの 5 週間で新たな失業保険の申請が累計 2,600 万件超に上る雇用危機が起き、企業の資金繰りも悪化。 3 月の小売り売上高は前月比 8.7% 減と過去最大の落ち込みで、3 月の鉱工業生産指数も前月比 5.4% と、第 2 次世界大戦直後の 46 年以来の急落となった。 米政権は 16 日に経済活動の再開に向けた指針を示し、一部の州では再開の動きが出ている。 市場では感染拡大や経済活動の抑制措置が 20 年前半には峠を越すとの見方が強いが、年後半以降の回復に向けては不透明な要素が多く残る。 (ワシントン = 青山直篤、asahi = 4-29-20)


韓国・利川の倉庫で火災、38 人死亡「周囲に有毒ガス」

29 日午後 1 時半ごろ、韓国中部の京畿道利川市にある物流倉庫の建設現場で火災が起きた。 地元の消防当局によると、約 5 時間後に消し止められたが、午後 8 時半現在で 38 人の死亡が確認された。 消防当局によると、ほかに重傷者が 8 人、軽傷者が 2 人いるという。 大きな爆発が起きた後、断熱材として使われるウレタンに燃え移ったとみられる。 現場担当者は「周囲には大量の有毒ガスも放出された」と語った。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 4-29-20)


原油暴落が表す深刻な経済減速 歴史的スピードで在庫増

世界の原油市場で動揺が続いている。 米国産 WTI 原油の先物価格が、史上初のマイナスをつけた。 新型コロナウイルス対策で需要が急減し、在庫がだぶついていることが背景にある。 株式市場はこのところ回復傾向にあったが、「実需」を映す原油価格の動揺は、実体経済の減速の深刻さを物語る。

ゆらぐ経済復活の期待

米国や世界の経済の先行きをめぐっては、株式市場では悲観論が和らぎつつあった。 米ニューヨーク市場では主要銘柄で構成するダウ工業株平均が 4 月に入ってから急速に値を戻し、3 月 23 日につけた直近の安値(1 万 8,591 ドル)から前週末までに 3 割超も回復していた。 米連邦準備制度理事会 (FRB) による未曽有の金融緩和や、米政権による 2 兆ドル超の経済対策を好感したほか、ここに来てトランプ大統領が経済活動の「再開」に前のめりになっていることへの期待が膨らんでいる。

ただ、「実需」をより敏感に反映する原油市場の動揺は、経済の先行きが必ずしも楽観できないことを示す。 原油のマイナス価格転落を受け、株価は日米欧で軒並み下落基調となった。 日本でも急速な景気悪化で原油需要は大幅に落ち込んでいる。

世界的な移動制限で、全日本空輸、日本航空ともに 4 月は国際線の便数が当初計画比 9 割減、国内線でほぼ半減しており、「ジェット燃料の需要が急速に減少している。(出光興産の月岡隆会長)」 緊急事態宣言後は自動車のガソリン需要も想定より 2 割減だという。 工場の稼働率を落としている企業も多く、業界では 4 - 6 月の石油製品全体の需要は前年同期に比べ 2 割ほど減ると見込む。 ただ、急激な需要減で石油元売り各社の原油の備蓄タンクが満杯に近づいており、「安くなった原油を買いたくても、タンクのキャパがない(月岡会長)」状態だ。

SMBC 日興証券の太田千尋氏は、今後の取引の中心となる 6 月物でも「同じような急落もあり得る。」 原油価格がこのまま低迷を続ければ、関連企業の業績に大きく響くと指摘する。 一方、家計にとっては、ガソリン価格の値下がりなどにつながる可能性がある。 火力発電や都市ガスの原料になる液化天然ガスの多くは原油価格に連動するため、電気・ガス料金は 6 月以降、値下げが続く可能性がある。 ただ、コロナの感染拡大が続いて外出自粛が長引けば、恩恵は限定的となる。 (江渕崇 = ワシントン、桜井林太郎、吉田拓史)

原油の貯蔵、満杯近づく

WTI 先物は、指定の期日が来ると、石油パイプラインが集中し貯蔵施設も豊富な内陸部の米オクラホマ州クッシングで現物が受け渡される。 しかし、一帯では原油の貯蔵容量はあと数週間で満杯になるとみられており、それにつれ原油保管料も高騰している。 石油精製会社は買い手がつかない製品をつくろうとせず、原油を調達しようとしない。 一方で、原油生産者が生産量を減らすペースは鈍く、米国では 4 月に入り歴史的なスピードで原油在庫が積み上がっている。

5 月物の最終取引が翌 21 日に迫る中、市場参加者は一時的な損失を被ってでも先物を売ることにより、行き場を失った原油を抱えて損が大きく膨らむのを避けようとしたとみられる。 4 月に入ってコロナ危機が深まるにつれ、市場では原油がマイナス価格に陥る可能性がかねて指摘されていた。 実際に商品取引所などはそれに備えてシステムを改修していた。

国際エネルギー機関 (IEA) は、今年の世界の石油需要が前年比で日量 930 万バレル減ると予想する。 とくに 4 月は前年同月比 2,900 万バレル減と、世界の原油生産量の 3 割にあたる史上最大級の落ち込みになるとみている。 石油輸出国機構 (OPEC) と非加盟国のロシアなどを含めた主要産油国は 12 日、世界全体で日量 970 万バレルと過去最大レベルの協調減産で合意した。 だが、減産の効果が出るのは数カ月先とみられるほか、減産量が足元の急激な需要減に対応するには不十分との見方が強く、原油価格の下落に歯止めがかからない。

シェールオイル業界にも危機

歴史的な原油安は、米国を世界最大の産油国に押し上げたシェールオイル業界には猛烈な逆風となっている。 中堅シェール企業が 4 月初めに連邦破産法適用を申請して経営破綻。 米石油サービス大手ハリバートンは 20 日に発表した 1 - 3 月期決算で、設備の減損などで約 10 億 7 千万ドルの費用を計上した。 米エネルギー情報会社は、原油価格が 1 バレル = 20 ドルの水準が続けば、米国で石油や天然ガスを生産する 140 社が債務を支払いきれなくなると予想する。 シェール企業は多額の借り入れで事業を拡大してきた。 破綻が相次げば金融機関やファンドなどに打撃が波及し、金融危機につながる恐れも指摘されている。

トランプ米大統領は 20 日の記者会見で、マイナス価格は「一時的だ」とし、戦略備蓄を最大 7,500 万バレル積み増すことを検討していると明らかにした。 「今は原油の買い時だ」とも語り、価格はいずれ持ち直すとの見方を示した。 (asahi = 4-21-20)

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OPEC、過去最大幅の原油減産で最終合意 コロナ影響

石油輸出国機構 (OPEC) は 12 日、ロシアなど非加盟国を交えたビデオ会議方式の臨時会合を 9 日に続いて再び開き、5 月と 6 月に世界全体で日量 970 万バレルの原油を協調減産することで最終合意した。 過去最大の削減幅で、新型コロナウイルスの影響で低迷する原油価格を下支えする。 世界最大の産油国の米国はこの枠組みに入っていないが、需要減などですでに供給量が減っていると主張しており、世界の原油供給量はさらに大きな規模で減る可能性がある。

OPEC は今月 9 日の会合で、いったん日量 1 千万バレルの減産で合意したが、非加盟国として参加したメキシコが減産幅を巡って態度を保留。 12 日の再協議で、メキシコの減産幅は日量 40 万バレルから 10 万バレルに縮小し、総量も 30 万バレル分減って 970 万バレルとなった。

新型コロナの影響による原油の需要低迷を受け、今月 10 日に OPEC 盟主のサウジアラビアが議長国となり、主要 20 カ国・地域 (G20) のエネルギー相が緊急ビデオ会議を開催。 ロシアなどは、OPEC との協調減産に参加しない米国なども追加減産すべきだと訴えていた。 米トランプ大統領は 12 日、ツイッターで OPEC とロシアなどが最終合意したことに対し「米国でエネルギー産業の多くの雇用を救う」と評価。 ロシアのプーチン大統領、サウジのムハンマド皇太子と電話で会談したことを明かし、「全ての人にとってすばらしいディールだ」と投稿した。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 4-13-20)


米国の自殺率、戦後最悪レベル 「988」で改善なるか

米国で、自殺の増加が社会問題になっている。 ここ 20 年ほど、自殺率は全国的に上昇を続け、戦後最悪の水準に達した。 地方経済の疲弊や閉塞感に加え、銃社会も影を落とす。 事態の打開へ、米政府が打ち出した異例の一手とは - -。

19 歳男子、フェイスブックに書き置き

米イリノイ州、シカゴから約 130 キロ北西のロックフォード。 この街で暮らすシャビアー・ウィットフォードさんの長男、トミーさんは 2014 年 8 月、19 歳で自殺した。 その直前、フェイスブックにこう書き残していた。

「僕は無価値な人間だ。」

トミーさんは小さい頃からサッカーが得意で、学校でも人気者。 ただ時々、感情を抑えられなくなることに悩んだ。 高校では引きこもり、ドラッグに手を出した。 うつ病と診断されたが治療がうまく行かず、本人の強い希望で家族から独立して暮らすことになった。 トミーさんは「最近気分が悪い。 また医者に行きたい。」とシャビアーさんに電話をしてから約 2 週間後、自宅で首をつった。 自分の子を身ごもった交際相手と口論になったすぐ後だったという。

トミーさんの遺体の第一発見者となったシャビアーさんは、「何もしてやれなかった」と自らを責め続けた。 精神科にかかりながら自殺についての論文を読んだり、専門家の話を聴いたりした。 自殺防止の講演で自らの経験を語れるようにもなったが、今でも当時を思い出すと涙ぐむ。

「息子が自ら命を絶つなんて想像もしなかった。 自殺する可能性を疑っていれば命は救えた。」

米国では今も、自殺について、「誤った行為」などと否定的にみる考えも根強い。 シャビアーさんも講演などの活動で、社会の目を恐れながら、家族をなくした経験に苦しみ続ける人に何人も出会った。 「自殺をタブー視せず、広く話し合える社会になればトミーのような人を減らせる。 そのためにできることをしたい。」 米国では 2018 年、全死亡者の死因のうち自殺は 10 番目だった。 だが 15 - 34 歳に限ると 2 番目になる。

目立つ白人男性ブルーカラー

米疾病対策センター (CDC) などによると、米国の 18 年の自殺者は計約 4 万 8 千人だった。 男性が約 8 割を占める。 未遂も含めると 120 万人に達する。 10 万人あたりの自殺者は 00 年の 10.4 人から、18 年に 14.8 人となった。 1940 年代初めと同水準だ。欧州のフランス(2015 年、13.1 人)やドイツ(16 年、10.2 人)、イタリア(15 年、5.7 人)などを上回る。 韓国(16 年、24.6 人)や東欧諸国よりは低いが、日本(18 年、16.5 人)とは差が縮まりつつある。

米国で目立つのは白人男性の自殺率の高さで、10 万人あたり 26.6 人と平均を大きく上回る。 米心理学会は、地方の農業や製造業が苦境に陥るなか、ブルーカラーの白人男性の自殺が増えたとみる。 工場の国外移転などで所得が下がった「ラストベルト」と呼ばれる地域などで、経済的理由から自殺を選んだ人も多いという。

米国の自殺問題に詳しい早稲田大政治経済学術院の上田路子准教授(公共政策)は、ドラッグやアルコールによる死亡(自殺以外も含む)がここ 20 年ほど急増していることに注目している。 「『絶望による死』と呼ばれる死亡事例が増えるのは社会がうっ屈している表れ。 自殺問題につながっているのではないか。」 新型コロナウイルスの感染拡大で多数の失業者が出ている現状に、「自殺がさらに増える危険性がある」と警鐘を鳴らす。

銃社会との関連性も指摘される。 米国で自殺全体の 50.5% は銃による。 銃規制の緩い州では 70 - 80% にものぼる。 自殺に使われる銃が身近にあることが、自殺を誘発しているという見方を示す専門家もいる。

専用電話「988」 異例の導入へ

米政府は、12 年に国の「自殺防止戦略」を刷新した。 過去の自殺を詳しく分析することで、それぞれの人やグループの自殺「リスク」を見極め、心のケアや生活状況の改善などに取り組む。 生物学や心理学を採り入れ、自殺を引き起こす原因を科学的に明らかにする研究も進む。 それでも、効果はまだ十分とは言えない。 19 年 12 月、米連邦通信委員会 (FCC) の決定が話題を呼んだ。 自殺防止のホットラインに、「988」の専用番号を使うことを許可したのだ。 米国でこうした専用番号は消防や警察の緊急用「911」、行政サービスなどの「311」くらいしかない。

自殺防止ホットラインは現在、11 ケタの電話番号にかければ 24 時間 365 日、相談員と話せる。 18 年には計約 220 万回のコールがあった。「988」の導入時期はまだ未定だが、自殺問題を研究するコロンビア大のジル・ハーカビー・フリードマン准教授は「非常に意義のある措置。 自殺防止には時間が重要だ。 長い番号を思い出す必要がなく、すぐ相談できる。」と評価する。

一方で、州によっては財政状況の悪化から相談所の維持費に苦しむ所も少なくなく、電話相談員の確保も課題だ。 仮に相談件数が 2 倍になると全米で年 5 千万ドル(約 55 億 4 千万円)の追加費用がかかるとの試算もあり、態勢の準備が急務になっている。 フリードマン准教授は、「電話口で待たせてしまっては逆効果だ。 訓練を受けた相談員を十分に用意する必要がある。」と語る。 (ロックフォード = 染田屋竜太、asahi = 4-8-20)


アルゼンチン、ドル建て内国債でデフォルトへ - 新型コロナ危機

アルゼンチンは、自国の法律に基づき発行したドル建て債券でデフォルト(債務不履行)を計画している。 債務の支払いを年末まで先送りする。 同国は深刻なリセッション(景気後退)に陥っており、海外の債権者との再編協議は進んでいない。 同国政府は元本と利息の支払いを 12 月 31 日まで延期すると発表した。 持続可能な債務計画策定での進展を踏まえ、正当化されると経済省が判断した場合、支払いの早期再開もあり得ると明らかにした。

アルゼンチンは海外での支払い義務を維持し、再編協議に着手したものの、既にペソ建て国債の支払いを一方的に先延ばししている。 自国の法律に基づき発行した債券の扱いを、国際法に基づく債務と区別していることが鮮明になった。 「アルゼンチンの法律に基づきドル建てで発行された国債の差し迫った支払いは、公衆衛生の緊急事態による社会および経済情勢の悪化を増幅させる」と同国政府は説明した。 (Jorgelina do Rosario、Ignacio Olivera Doll、Bloomberg = 4-7-20)


米就業者数 70 万人減  失業率今後 10% 超の見通しも

新型コロナウイルスによる経済危機が深刻化している米国で、3 月の非農業部門の就業者数(季節調整済み)が前月比 70 万 1 千人減と、2010 年 9 月以来 9 年半ぶりに減少に転じた。 2 月まで良好な雇用環境を支えに世界を牽引してきた米国経済だが、たった 1 カ月で戦後最大規模の雇用減に見舞われた。 急速に経済が収縮し、世界的な不況が長引く懸念が強まってきた。

米労働省が 3 日発表した雇用統計では、失業率も前月の 3.5% から 4.4% に悪化した。 失業率が 1 カ月で 0.9% 幅上昇したのは、1975 年 1 月以来 45 年ぶり。 就業者数の減少幅もリーマン・ショック後の 2009 年 3 月以来 11 年ぶりの大きさ。 リーマン直後と第 2 次世界大戦直後などの時期を除けば類をみない落ち込みだ。 就業者数、失業率とも、市場予想(10 万人減、3.8%)よりも大幅に悪化した。

特に、もともと低賃金の飲食業界で 41 万 7 千人減と打撃が大きく、この業界で過去 2 年に増えた就業者数が帳消しになった。 米国では 3 月下旬の 2 週間で、新たな失業保険の申請が計約 1 千万件と過去最悪の伸びとなり、雇用環境は想定を上回るペースで悪化している。 今回の雇用統計は、米国でコロナの感染者数が急増した 3 月下旬の状況を織り込んでおらず、失業率は 4 月以降、リーマン・ショック後の最悪期の 10% よりも悪くなるとみられている。

米議会予算局は 2 日、失業率が 4 - 6 月期に 10% を超え、国内総生産 (GDP) は過去最悪の前期比 28% 減(年率換算)に上るとの予測を発表した。 失業率は、戦前の世界恐慌期に匹敵する 20% 台に迫る可能性もぬぐえない。 (ワシントン = 青山直篤、asahi = 4-3-20)


サムスン、TV 液晶撤退 赤字続き年内に中韓工場停止

【ソウル = 細川幸太郎】 韓国サムスン電子は 31 日、テレビ向けの大型液晶パネルの生産から撤退する方針を明らかにした。 今年末に韓国と中国の液晶パネル工場を停止し、色鮮やかな次世代パネルに軸足を移す。 液晶は中国勢の増産に伴い供給過剰の状態でサムスンも赤字が続いていた。 かつて日本のパネル産業を苦しめてきた韓国勢の退潮が鮮明になってきた。

韓国中部にある湯井(タンジョン)工場と、中国江蘇省の蘇州工場のテレビ向け液晶パネルの生産ラインを停止する。 両工場の旧式ラインは中国メーカーの最先端工場と比べて生産効率が低く採算が悪化していた。 両工場を合わせたパネル生産能力は 55 インチテレビで年間 3,000 万台規模とみられる。 サムスンは既に台湾や中国のメーカーから液晶パネルを調達し自社ブランドのテレビに搭載しており、今後も外部調達のパネル枚数を増やして液晶テレビ事業を継続する。

液晶生産から撤退し次世代パネルに注力する。 湯井工場では色鮮やかな有機 EL をサムスンが独自に改良した「量子ドット (QD) 有機 EL」と呼ぶ新型パネルを量産する。 2019 年 10 月に同パネルの開発・量産に 13 兆 1,000 億ウォン(約 1 兆 2,000 億円)を投資すると表明し液晶を縮小する方針を示していた。 蘇州工場の活用方法については検討中という。 サムスンは 5 年ほど前まで韓国 LG ディスプレー (LGD) と液晶パネル世界一を競い合ってきた。 16 年ごろからは中国の京東方科技集団 (BOE) などが中国政府の補助金を受けて巨大工場を次々と建設し始め、サムスンは液晶パネルからスマートフォン向けの有機 EL パネルに軸足を移した経緯がある。

調査会社の英インフォーマによると、19 年のテレビ向け液晶パネルの世界シェアは LGD が 24% で首位。 サムスンは 9.3% で、2 位に躍進した BOE などに次ぐ 5 位に後退した。 韓国キウム証券の推計では、サムスンの液晶事業の 19 年 12 月期の売上高は 6 兆ウォンで、1 兆 3,600 億ウォンの営業赤字だった。 中国勢の増産で液晶パネル価格は下がり続け、最大手 LGD ですら赤字に陥っている。

湯井工場は 2000 年代にサムスンがソニーと合弁でテレビ向け液晶パネルを量産し、液晶テレビで世界首位に上り詰めた象徴的な拠点だった。 LGD も年内に韓国内での液晶パネル生産を中止すると表明した。 両社とも次世代パネルに注力するものの、価格下落が進む液晶テレビが当面は主流であり続ける見通しで、パネル事業を黒字化できるかは不透明だ。 かつて日本の電機メーカーが切り開いた液晶パネル産業は、激しい投資競争で優勝劣敗が鮮明な分野だ。

1970 年代にシャープが世界で初めて電卓の表示装置として液晶パネルを採用。 その用途をパソコンやテレビへと広げながらシャープはじめパナソニックや東芝、日立製作所、ソニーら日本の電機産業が同分野の主役であり続けた。 一時は 10 社超が液晶パネルを手掛け、90 年代後半までは世界シェアの大半を握っていた。 だが液晶パネルの高精細化・大型化に伴い生産設備の費用も増加した。 パネル市況の振れ幅も大きく、機動的な経営判断で巨額の設備投資を決断した韓国や台湾メーカーが 2000 年代半ばには主導権を握り始めた。

そこにリーマン・ショック後の景気低迷が直撃。 日本の電機大手は液晶パネル事業でも巨額の赤字を計上し相次ぎ撤退した。 シャープは 16 年から台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下で経営再建を進めており、日立製作所、東芝、ソニーの事業統合で 12 年に発足したジャパンディスプレイ(JDI)も経営危機に陥った。 液晶パネルの設備投資額はさらに増大。 政府の支援を受けて相次いで参入した中国勢が液晶テレビ向けでは台湾や韓国勢と遜色のない品質の製品を提供できるようになってきた。 日本勢を駆逐した台湾や韓国メーカーも劣勢を強いられている。

日本から韓国や台湾、そして中国に業界の覇権が移った産業は鉄鋼、太陽光パネル、造船など数多い。 かつての王者サムスンの撤退は液晶パネルでも「中国一強時代」が到来し、この分野でも価格決定権や供給の大半を中国企業が握る行く末を示している。 (nikkei = 3-31-20)


NY 株が急反落、再び 2 万ドル割り込む 景気後退を懸念

20 日の米ニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退懸念が強まり、主要企業でつくるダウ工業株平均が急反落した。 終値は前日比 913.21 ドル (4.55%) 安い 1 万 9,173.98 ドル。 再び 2 万ドルの節目を割り込み、2016 年 12 月以来、ほぼ 3 年 3 カ月ぶりの安値となった。 ハイテク銘柄が多いナスダック市場の総合指数も急落。 同 271.06 ポイント (3.79%) 低い 6,879.52 で終えた。

米国では感染者が 1 万人を超えて増え続けており、感染拡大を抑え込もうという当局の動きが加速。 19 日から 20 日にかけて、金融や IT 産業が集中し、米経済を引っ張るカリフォルニア、ニューヨーク両州の知事が相次いで、厳しい外出制限を発表した。 失業給付申請も急増しており、経済の急減速への懸念が強まっている。 投資家はリスク資産を避ける姿勢を強めており、ニューヨーク商業取引所では原油価格が急落。 指標となる米国産 WTI 原油の先物価格は一時、約 18 年ぶりに 1 バレル = 20 ドルを下回った。 終値は前日比 2.79 ドル (11%) 安い 1 バレル = 22.43 ドルだった。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 3-21-20)

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NY 株終値、史上最大 2,997 ドル安 市場動揺収まらず

週明け 16 日の米ニューヨーク株式市場は、主要企業でつくるダウ工業株平均が前週末比約 3,000 ドル安で終え、史上最大の急落となった。 米連邦準備制度理事会 (FRB) が前日夕、事実上のゼロ金利と量的緩和政策の再開を決めたが、新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる金融市場の動揺は深まる一方だ。 円相場は 1 ドル = 105 円台前半まで急速に円高ドル安が進み、原油先物価格も 1 バレル = 30 ドルを割り込んだ。

ダウ平均の終値は前週末比 2,997.10ドル (12.9%) 安い 2 万 0,188.52 ドル。 下落幅は 12 日に記録した 2,352 ドルを超えて過去最大となった。 下落率でも 1987 年の歴史的株価暴落「ブラックマンデー」以来となる大きさ。 ダウ平均の下げ幅は取引最終盤に 3,000 ドルを超える場面があった。 ダウ平均は 2 月 12 日につけた史上最高値(2 万 9,551 ドル)からわずか 1 カ月あまりで 9 千ドル超、31.7% も下落。 ほぼ 3 年 1 カ月ぶりの安値に沈んでいる。

ダウ平均を構成する 30 銘柄すべてが値下がりした。 航空機ボーイングは 20% 超の急落。 ゴールドマン・サックスなどの金融株やエネルギー株、インテルやマイクロソフトなどの IT 銘柄も安い。 ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数も急落し、同 970.29 ポイント (12.3%) 安い 6,904.59 で終えた。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと、欧米各国は週明けにかけて相次ぎ入国規制を強めた。 米国内でも、小売店や興行施設が営業を自粛したり、ニューヨーク州など複数の州や市が飲食店の営業制限に踏み切ったりするなど、実体経済への影響が一気に広がっている。 FRB は前日の日曜夕に緊急の金融緩和に踏み切ったが、米景気後退におびえる金融市場の動揺を鎮めるには至らなかった。

16 日は取引開始直後から売り注文が殺到し、パニック的な株価急落を防ぐために取引を 15 分間全面的に停止する「サーキットブレーカー」が発動された。 ニューヨーク市場の主要株価指数「S & P500」が 7% 下落する基準に達した。 現行基準での発動は今月 9 日、12 日に続き 3 回目となった。 トランプ米大統領は 16 日午後の記者会見で、10 人以上の集会や不要な旅行を控えるよう要請。 米経済が景気後退に向かっている可能性を認めたほか、新型ウイルスをめぐる問題が夏ごろまで続きうるとの見通しを示したことも、投資家心理を悪化させた。

外国為替市場ではドルを売って円を買う動きが加速。 円相場は 1 ドル = 105 円 15 銭まで円高ドル安が進んだ。 午後 5 時(日本時間 17 日午前 6 時)時点では 1 ドル = 105 円 80 - 90 銭と、前週末同時刻比で 2 円 18 銭の円高ドル安。 一方、16 日のニューヨーク商業取引所では原油価格が急落した。 指標となる米国産 WTI 原油の先物価格は、前週末比 3.03 ドル安い 1 バレル = 28.70 ドルと、ほぼ 4 年 1 カ月ぶりの安値で終えた。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 3-17-20)

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NY ダウ再び急落、一時 1,100 ドル安 新型コロナ警戒

5 日のニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大への警戒感が再び強まったことから、主要企業でつくるダウ工業株平均が大幅に反落し、前日比 969.58 ドル(3.58%) 安い 2 万 6,121.28 ドルで取引を終えた。 下げ幅は一時 1,100 ドルを超えた。 新型ウイルスの感染者は米国内でもすでに 11 人に達し、州内で初の死者が確認されたカリフォルニア州は非常事態宣言を出した。 入国制限やイベント自粛などの動きが世界で広がり、経済に与える打撃が想定を大きく上回りそうだとの懸念が強まった。

旅行者の減少が業績を直撃するアメリカン航空やユナイテッド航空は 13% 超の急落。 ボーイングも 8% の大幅安となった。 金利低下を受け、金利収益が減る銀行株も大きく売られた。 ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数も急反落。 前日比 279.49 ポイント (3.10%) 低い 8,738.60 で引けた。 一方で、比較的リスクが低い「安全資産」とみなされる米国債は買われ、米長期金利の指標となる 10 年物米国債の利回りは一時、年 0.90% 前後と史上最低を更新した(国債価格は上昇)。 長期金利は連日のように史上最低を塗り替え続けている。

米金利低下で日米の金利差が縮小し、外国為替市場ではドルを売って円を買う動きが加速。 円相場は 1 ドル = 105 円 97 銭まで円高ドル安が進んだ。 105 円台はほぼ半年ぶり。 午後 5 時(日本時間 6 日午前 7 時)現在では 1 ドル = 106 円 11 - 21 銭で、前日同時刻比 1 円 40 銭の円高ドル安水準で取引されている。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 3-6-20)

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NY ダウ続落、4 カ月ぶり 2 万 7 千ドル割れ

26 日のニューヨーク株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が重しとなり、主要企業でつくるダウ工業株平均が 5 営業日連続で下落した。 終値は前日比 123.77 ドル (0.46%) 安い 2 万 6,957.59 ドルで、昨年 10 月下旬以来ほぼ 4 カ月ぶりに 2 万 7,000 ドルを割り込んだ。 ダウ平均は前日までの 2 日間で史上最大の 1,911 ドルも急落しており、26 日朝方は買い戻しの動きが先行。 一時は前日比 461 ドル高まで買われた。 しかし、新型ウイルスの世界的流行への警戒感は根強く、午後にかけて下落に転じた。

世界経済の減速懸念から、原油価格の指標となる「米国産 WTI 原油」の先物価格は前日比 1.17 ドル安の 1 バレル = 48.73 ドルに下落。 エクソンモービルなどエネルギー株が大きく売られた。 一方、ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数はわずかに反発。 同 15.16 ポイント (0.17%) 高い 8,980.77 で引けた。 (ニューヨーク = 江渕崇)

27 日の東京株式市場で日経平均株価は取引開始直後から値下がりし、前日終値からの下落幅は一時、400 円を超えた。 新型肺炎の感染拡大への警戒感が強いため。 日経平均は前日までの 2 日間ですでに 960 円超下がっているが、米株式市場など世界的な株価下落の連鎖が続いており、さらに売り注文が出る展開となっている。 (nikkei = 2-27-20)


日本からの渡航者に入国制限 56 の国と地域に

外務省のまとめによりますと、日本からの渡航者に入国制限を実施しているのは、16 日午前 6 時の時点で、中国、韓国、インド、デンマーク、チェコ、アルゼンチンなど 56 の国と地域で、先週 13 日から 20 以上増加しました。 また、入国できても、指定場所での一定期間の隔離を義務づけるといった行動制限を設けたり、自主的な健康観察を要請したりしている国と地域も、台湾、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど 84 に増えました。 (NHK = 3-16-20)