中国の経常収支、1 - 3 月は 297 億ドルの赤字 - 新型コロナの影響

→ 経常赤字はバランスの取れたレンジ内にとどまった - SAFE
→ 19 年 1 - 3 月期の経常収支は 300 億ドルの黒字だった

中国の経常収支は 1 - 3 月(第 1 四半期)に 297 億ドル(約 3 兆 1,600 億円)の赤字となった。 国家外為管理局 (SAFE) が速報値を 8 日発表した。 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を止めようと各国がロックダウン(都市封鎖)に踏み切り、貿易と国外旅行が影響を受けたことが背景。 2019 年 1 - 3 月期の経常収支は 300 億ドルの黒字、同年 10 - 12 月期は 405 億ドルの黒字だった。

SAFE はウェブサイトに掲載した声明で、経常赤字は今年 1 - 3 月期の新型コロナ感染拡大に影響されたが、バランスの取れたレンジ内にとどまったと指摘。 「中国の国際収支は今後もバランスを取り続ける強固なファンダメンタルズを備えている」とコメントした。 SAFE の速報値によれば、1 - 3 月期の資本・金融収支は 297 億ドルの黒字。 (Bloomberg = 5-8-20)

◇ ◇ ◇

中国の 4 月輸出 3.5% 増、4 カ月ぶり増加 予想上回る

【北京 = 原田逸策】 中国税関総署が 7 日発表した 2020 年 4 月の貿易統計(ドル建て)によると、輸出は前年同月比 3.5% 増の 2,002 億ドル(約 21 兆 3 千億円)だった。 19 年 12 月以来、4 カ月ぶりに前年同月の水準を上回った。 新型コロナウイルスの感染が欧米に広がった影響が懸念されたが、事前予想を上回る回復ぶりをみせた。 工場などの活動再開で、出荷が滞っていた海外からの注文をこなしたとの見方がある。

4 月の輸入は前年同月比 14.2% 減の 1,549 億ドルだった。 減少幅は 3 月(同 0.9% 減)から拡大した。 輸出から輸入を差し引いた貿易収支は 453 億ドルの黒字だった。 黒字額は前年同月の 3.3 倍に膨らんだ。 中国の輸出は 1 - 2 月に前年同期比 17% 減と大幅に減ったあと、3 月は同 7% 減まで減少幅が縮んでいた。市場では 4 月の輸出は 1 割前後減るとの見方が多かった。

1 - 4 月の累計の輸出額をみると、東南アジア諸国連合 (ASEAN) をはじめ「一帯一路」の沿線国向けが増えた。 一方、欧州連合 (EU)、米国、日本など先進国向けは振るわなかった。 商品別に 1 - 4 月の輸出額をみると、柱の携帯電話とパソコンが前年同月の水準を下回ったほか、衣類や家具、靴など労働集約型の商品も大幅に減った。 (nikkei = 5-7-20)

◇ ◇ ◇

中国の 1 - 2 月輸出、ドル建て 17.2% 減 - 新型コロナで予想以上に減少

→ 輸入は 4% 減で予想ほど落ち込まなかった - 貿易赤字は 71 億ドル
→ 新型コロナ感染拡大で連休延長、全国的な輸送・移動混乱が影響

中国の 1 - 2 月の輸出は予想以上に減少した。 新型コロナウイルスの感染拡大で春節(旧正月)の連休が延長されたほか、工場生産が落ち込み、輸送や移動が全国的に妨げられたことが背景で、輸入も減った。 税関総署の 7 日発表によると、1 - 2 月の輸出はドルベースで前年同期比 17.2% 減少、輸入は同 4% 減。 これにより、同期間の貿易赤字は 71 億ドル(約 7,480 億円)となった。 エコノミスト予想では輸出が 16.2%、輸入が 16.1% それぞれ減少すると見込まれていた。 1 - 2 月を合わせた発表は今回が初めて。 (Bloomberg = 3-7-20)


反中感情、天安門事件以来にも コロナ受け中国で報告書 = 関係筋

[北京] 中国が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)対応を巡り世界的な反中感情の高まりに直面し、米国との対立に発展するを恐れがあると、国内の有力シンクタンクが中国政府指導部に警鐘を鳴らしていたことが関係筋の情報から明らかになった。 関係筋によると、報告書は中国現代国際関係研究所 (CICIR) が作成し、中国国家安全省が先月初旬、習近平国家主席を含む政府指導部に提出した。

報告書は、世界的に高まる反中感情が 1989 年の天安門事件以来の水準に悪化する恐れがあると指摘。 米国が新型コロナ対応を巡り中国への反発をあおり、中国政府は米国との武力衝突という最悪のシナリオも想定する必要があるとした。 また、米政府が中国の台頭を経済および国家安全保障への脅威、さらに西側諸国の民主主義への課題と見なしており、国民の信頼を低下させることで中国共産党の弱体化を狙っているとも指摘した。

ロイターは報告書を直接確認していない。 中国外務省報道官事務所は、報告書を巡り「関連情報はない」と応じた。 CICIR はコメントを控えている。 報告書が中国政府指導部のスタンスをどの程度反映しているのか、さらに政策への影響があるかどうかは不明だ。 しかし、こうした報告書が提出されたことは、中国政府が反中感情の高まりを一定の脅威として真剣に受け止めている様子を浮き彫りにしている。 (Reuters = 5-5-20)

◇ ◇ ◇

米、世界の供給網から中国排除へ取り組み加速 = 当局者

[ワシントン] トランプ米政権が新型コロナウイルス感染拡大に対する中国の対応を巡り新たな対中関税措置を検討すると同時に、世界の産業供給網から中国を排除する取り組みを加速させていることが、当局者の話で明らかになった。 国務省のキース・クラッチ次官(経済成長・エネルギー・環境担当)はロイターに対し、「米国は数年前から供給網の中国に対する依存度の引き下げに取り組んできたが、現在こうした動きを加速させている」と指摘。 「どの分野が重要で、深刻なボトルネックがどこに存在しているのか洗い出す必要がある」とし、米国の国家安全保障に関わる問題で、政府は近く何らかの措置を打ち出す可能性があると述べた。

現職の当局者や元当局者によると、商務省および他の政府機関は、調達と製造の双方を中国から他の地域に移すよう企業に働き掛ける方法を模索。 税制優遇措置や国内回帰に向けた政府補助などが検討されているという。 当局者の一人は「政府全体で取り組みが進められている」とし、製造業のどの分野を「必須」と見なし、中国外でどのように製造していくか、各省庁で検証が進められていると述べた。

トランプ大統領の対中政策は、政権内の対中強硬派とビジネス推進派の舞台裏での攻防が特徴の一つとして挙げられるが、現在の状況下では、対中強硬派が勢力を増していると主張。 当局者は「中国との取引に関連して存在していた懸念が全てコロナ禍で具現化した形になっており、破滅的な事態に向かう地合いは整っている」と語った。 当局者によると、中国に対する措置としては関税以外に、同国の当局者や企業への制裁や、台湾との関係強化という選択肢もある。

別の当局者によると、米政府は「エコノミック・プロスペリティー・ネットワーク」と称される「信頼の置けるパートナー」との連携を構築中。 デジタル事業、エネルギーとインフラ、研究、貿易、教育、通商など広範な分野で共有できる基準を採用して運営されている企業と市民社会団体が参画するとしている。 これに関連してポンペオ国務長官は 4 月 29 日、米政府は日本のほか、オーストラリア、ニュージーランド、インド、韓国、ベトナムと共に、「世界経済の前進に向け」取り組んでいると表明。 「今回のような事態の再発を防ぐための供給網の再構築」などが協議されていることを明らかにした。

中南米諸国も役割を果たす可能性がある。 コロンビアのフランシスコ・サントス駐米大使は 4 月、米ホワイトハウスのほか、米国家安全保障会議 (NSC)、米財務省、米国商工会議所と、米企業が供給網を中国から米国に近い地域に移すよう働き掛けることについて協議していると明らかにした。 米中ビジネス協議会 (USCBC) のダグ・バリー報道官は「コロナ禍で明るみに出たリスクの度合いを踏まえると、供給網の多様化は理にかなう」と指摘。 ただ「中国で稼働する企業がこぞって国外に移管する動きはまだ見られていない」と述べた。

国連の統計によると、中国は 2010 年に米国を抜いて世界最大の製造業国として台頭した。 米商務省は 4 日、国家安全保障の観点から、電力用変圧器の主要部品に輸入関税を課す可能性ついて調査を開始したと発表した。 ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は、トランプ大統領が国内送電網で使用する部品について、中国とロシアからの輸入を制限することを認める大統領令にすでに署名したと明らかにした。 また、連邦政府機関に米国製医療用品の調達を義務付ける別の大統領令が近く発布されると述べた。 (Reuters = 5-5-20)


中国経済、4 月に入り回復の勢い失速 - 早期発表の指標示す

→ 1 - 3 月期は歴史的な収縮に見舞われていたが、3 月に回復の兆し
→ 国内需要が依然として非常に弱く、企業は引き続き慎重

新型コロナウイルスによる打撃で 1 - 3 月(第 1 四半期)に歴史的な収縮に見舞われた中国経済は 3 月に回復の兆しが見られたが、世界的なリセッション(景気後退)の兆候と引き続き弱い内需を受け、その勢いは 4 月に入って既に失速している。 早めに発表された 4 月の指標からは、国内需要が依然として非常に弱く、企業が引き続き慎重であることが示された。

ブルームバーグが追跡している 8 つの指標をまとめた指数は今月、ほぼ横ばいとなっている。 同指数が低下しなかったという事実は景気が底打ちした可能性を示すものだが、全体的にはまだ暗い。 スタンダードチャータード銀行による中小企業景況感指数は 3 月に急反発したが、4 月はわずかな上昇にとどまった。

中国の中小企業を調査する同行のエコノミスト、申嵐氏と丁爽氏はリポートで「実際の活動に改善はあるものの、世界的リセッションの見通しで強まる逆風により、景気回復に関する不確実性は増した」と指摘。 「売り上げは引き続き低迷しており、その大部分は外需の急速な低下による輸出受注の落ち込みによるものだ」と述べた。 4 月の新規受注指数は 3 月の 43.6 から 49.4 に上昇。 ただ、新規輸出受注は 50.8 から 41 に急低下した。 50 を下回ると縮小を示す。 (Bloomberg = 4-27-20)

◇ ◇ ◇

「外需の崩壊とコロナの第 2 波」 中国経済、復活はいつ

中国経済が四半期で初のマイナス成長に落ち込んだ。 新型コロナウイルスへの徹底した感染対策は続けつつ、各地で経済活動の再開が進む。 だが、感染を恐れて客足は減っており、工場では外国からの受注が厳しい状況にある。 強力な景気対策を打てる状況にもなく、元の姿に戻るまで時間がかかりそうだ。

北京市中心部にある北京ダック店。 約 30 卓あるテーブルのうち、昼は 10 卓しか埋まらない。 夜はさらに人が少ない。 「新型コロナウイルスがはやる前、いつも満員だった」と 20 歳代の従業員・陳雨さんは話す。 中国は 1 月下旬から湖北省武漢市を都市封鎖するなど、経済を犠牲にして厳しい感染防止措置をとった。 新規感染者は減り、企業や工場の再開は進んでいる。

だが、再流行を防ごうと感染防止対策は今も徹底されている。 この店でも客の体温を測り、間隔を空けて座らせる対応をとる。 映画館やスポーツジムなど、人が集まる場所は営業そのものを再開できていないところも多い。 当局から補償を受けられた企業はごく一部にとどまる。 感染が世界に広がるなかで外需も見通せず、輸出製品をつくる工場の苦境が予想されている。

政府は対策を連発している。 金融緩和に加え、自動車業界には新エネルギー車の購入補助金を 2 年間延長する措置を決定。 各地で商品券も発行した。 高速通信規格 5G の基地局設置など「新インフラ建設」と呼ばれる公共投資を進めるが、どれも決め手を欠く。 2008 年のリーマン・ショック後の世界経済を支えたのは、中国の 4 兆元にのぼる景気対策だったと言われる。 だが、今の中国に同じことはできそうにない。

「4 兆元」の副作用は深刻だった。 産業構造の転換を遅らせ、過剰生産問題と環境汚染の深刻化を招いた。 不動産投資の過熱や地方政府による大規模投資は国中の債務を激増させた。 習近平(シーチンピン)指導部は発足以来、過剰生産や金融リスクの削減を進め「4 兆元」の後遺症の治療を進めてきたが、完治しないうちに新たな危機に直面した。

市場が中国によせる急回復への期待も薄い。 野村証券の陸挺氏は「中国は外需の崩壊と新型コロナ感染の第 2 波の脅威に直面しており、4 - 6 月期の成長率もマイナス 0.5% にとどまる」とみる。 中国にとって今年は政治的に敏感な年だ。 国内総生産 (GDP) を 10 年比で 2 倍にする国家目標をかかげ、「小康社会(ややゆとりのある社会)」を全面的に実現する必要がある。

だが、1 - 3 月期がマイナス成長に落ち込むなか、いまや「2 倍目標」は絶望的だ。 17 日に記者会見した国家統計局の毛盛勇報道官は「疫病の影響は重いが、14 億人の基本的な民生は比較的よく保障されており、社会の大勢は安定している」と強調した。 中国の指導部は「今日より明日を豊かにしてくれる」という点で支えられてきたと言われる。 だが、統計開始以来のマイナス成長となり、国家目標が未達となりそうな状況は、指導部の評価にも影響しそうだ。 (北京 = 福田直之)

日系企業にも影響直撃

中国に進出する日系企業も、中国経済の急減速の影響が直撃している。 ホンダは、湖北省武漢市の都市閉鎖で 3 月 10 日まで武漢工場の生産停止を余儀なくされた。 日産自動車は中国から部品が入らず、九州の工場を一時停止した。 トヨタ自動車を含む 3 社の現地の新車販売は 1 - 3 月期、前年同期比で約 2 - 4 割減った。 「無印良品」を運営する良品計画は中国で半数以上の店舗を休業し、1 - 3 月期の売上高が前年比で半減した。 すでに全店で営業を再開したが、客足の戻りは鈍いという。 ユニクロを展開するファーストリテイリングは 2 月の中国の売り上げが 8 割落ち、大幅な赤字となっている。 (福田直之 = 北京、若井琢水、asahi = 4-18-20)

◇ ◇ ◇

中国 GDP、前年同期比 6.8% 減 初のマイナス成長 新型コロナ影響

中国国家統計局が 17 日発表した 2020 年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比 6.8% 減だった。 新型コロナウイルスの感染拡大で経済が長期停滞し、四半期ベースで比較可能な 1992 年以降で初めてマイナス成長に転落した。 これまでの最低は 19 年 10 - 12月 期の 6.0% 増だった。 中国では 1 月 24 日の春節(旧正月)前後から国内の感染拡大が深刻化。 北京、上海などの主要都市では 2 月 9 日まで、「震源地」となった武漢を含む湖北省では 3 月 10 日まで、当局の指示で企業や工場の操業が事実上ストップした。

1 - 3 月の個別指標では、工業生産は前年同期比 8.4% 減(19 年通年実績は前年比 5.7% 増)。企業の設備投資や政府の公共事業の動きを反映した固定資産投資も 16.1% 減(同 5.4% 増)と低迷した。 経済の急減速で民間投資が 18.8% 減(同 4.7% 増)に落ち込んだほか、インフラ投資も 19.7% 減(同 3.8% 増)となった。 個人消費の動向を示す社会消費品小売総額は 19,0% 減(同 8.0% 増)に失速した。 1 - 3 月の国内新車販売が 42.4% 減に落ち込むなど市民の「買い控え」傾向は現在も強く、経済の柱である個人消費の回復は鈍い。

中国政府は「国内の感染状況はピークを過ぎた」として 4 - 6 月期以降の経済の急回復を期待するが、欧米での感染拡大で外需が冷え込むなど環境は厳しい。 国際通貨基金 (IMF) が 14 日発表した世界経済見通しでは、主要国の 20 年の成長率が軒並みマイナスに沈む中、中国の 20 年の成長率は 1.2% のプラスが予測されているが、中国経済の停滞が長引けば、世界経済の下押し圧力がさらに強まりかねない。 (北京・赤間清広、mainichi = 4-17-20)

◇ ◇ ◇

中国、生産回復道半ば 大企業 9 割再開も車 4 割どまり

【広州 = 川上尚志、北京 = 原田逸策】 新型コロナウイルスの震源地の中国で、製造業の多くが生産拠点の再開を急いでいる。 中国政府も後押しし、大企業の「再開率」は 9 割以上に達したとしている。 ただ、食品などの工場稼働率は比較的高いとされるが、国内需要が低迷する自動車は 4 割程度にとどまる。 欧米などでの感染拡大による世界的な需要急減も生産回復に影を落とす。 新型コロナの影響を脱し、経済の反転を実現するには時間がかかることを示している。

中国工業情報化省は 30 日、売上高 2 千万元(約 3 億円)以上の製造業の 98.6% が操業を再開し、従業員の 89.9% が職場復帰したと発表した。 28 日時点の数値だ。 新型コロナの感染が最も深刻だった湖北省でも 95% 超の企業が再開し、約 70% の従業員が職場に戻ったという。 大手より復旧が遅れていた中小企業も 76% が操業を再開した。 「製造業の状況は 1 - 2 月よりも明らかに良くなっている。 3 月は発電量の減少幅も 2 月より縮小している。」 同省の辛国斌次官は説明した。

工場再開のハードルの一つだった人手の問題が解消しつつあることが大きい。 中国の証券会社、華泰証券によると、春節(旧正月)休暇で都市を離れた人が戻ってきた割合は 18 日時点で 80.8% に達した。 最も感染が深刻だった湖北省で企業活動が再開した直前である、10 日の 67.1% から大きく改善している。 ただ再開率とはあくまでも、停止していた工場が再び動き出したことを表す数値だ。 業種ごとの稼働状況はまちまちだ。

「稼働率は 3 割前後だ。」 三菱自動車の幹部は、湖南省長沙市にある自動車工場の現状をこう説明する。 2 月 24 日に再稼働させたが、販売が大きく落ち込んでいる。 余剰在庫の発生を抑えるため、稼働を数日止めるなどの手段を採らざるを得ないという。 中国全体の 2 月の新車販売台数は前年同月比 79% 減と過去最大の落ち込みで、生産台数も 80% 減った。 新型コロナの感染拡大を防ぐため多くの販売店が休業を求められ、営業再開後も客足は鈍い。 新車の在庫は過去最高の水準まで積み上がり、クルマを作っても正常に売れない状況だ。 辛次官も「一部のメーカーの稼働率はさらに下がるかもしれない」と語った。

湖北省に拠点を置く自動車大手も、工場の稼働は遅れている。 同省襄陽市などに工場を構える日産自動車は、一部工場で通常の半分の人員の生産体制になっているもようだ。 ホンダの同省武漢市の工場も少量生産にとどまり、同社向けに部品を供給する工場の中には「稼働率は 2 割程度」というところもある。 仏ルノーは当局の許可がようやく下り、30 日に武漢市の工場を再開した。

中国汽車工業協会によると、新車販売の 96% を占める自動車大手 23 社の再開率は 11 日時点で 90% に達した。 ただ、業界の設備稼働率は 4 割弱にとどまるという。 同協会は「生産・販売は 2 月末に底を打った」とし、7 - 9 月期には正常化すると分析するが、当面は厳しい状況が続く見込みだ。

電機関連の企業も工場の正常化を急ぐ。 電子機器の受託製造サービス (EMS) 世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は 22 日、中国での生産について「主要工場で季節需要を満たす人員の確保ができた」と明らかにした。 従業員の復帰が進み生産再開が順調だとアピールした格好だ。 ただ、例年 2 - 3 月の生産量は繁忙期である 7 月以降の 5 割程度とされ、フル稼働にはなお遠いとの見方が多い。

食品など生活必需品の分野では、一部で先行きに強気な見通しも出ている。 中国ビール最大手の華潤ビールは 20 日までに、中国の全 74 工場を復旧した。 新型コロナで多くの飲食店が営業休止となり、ビール需要が急減したため、同社の 20 年 1 - 2 月の売上高は前年同期比 26% 減った。 ただ中国では感染者が減り、営業を再開する飲食店が増えつつある。 侯孝海・最高経営責任者 (CEO) は「今の状態が続けば飲食店のビール需要は 5 月には正常に戻る」と語る。

ハムやソーセージなどをつくる豚肉加工世界最大手の中国企業、万州国際も 24 日、中国の生産拠点の 95% 以上が復旧したと明らかにした。 万隆 CEO は「食品は常に消費者が必要とする商品だ。 新型コロナの影響は少なく、事業は堅調だ」と話している。

中国政府は企業に再開を急ぐよう求めている。 「新型コロナの対策を徹底しつつ、企業の再開や再稼働を推進し、経済社会の回復を進めなければならない。」 李克強(リー・クォーチャン)首相は 20 日、河南省にある鴻海の工場の責任者などとのビデオ会議を開き、そう強調した。 李首相は連日のように、企業の支援に力を入れているとアピールしている。 ただ、日系自動車メーカーの関係者からは「地元政府からの強い要請を受け、準備が十分でないまま工場を再開せざるを得なかった」といった声もある。

自動車や食品は内需が中心だ。 欧米などでは新型コロナの感染拡大が続いており、海外需要の急減が中国企業の新たな懸念材料となりそうだ。 大手溶接機器メーカー、深セン市佳士科技(広東省)は 2 月下旬、20 年 1 - 3 月期の純利益が前年同期比で最大 15% 減りそうだと発表した。 国内の需要低迷に加え、「国外の新型コロナ問題がより深刻になれば輸出に悪影響が出る」とみている。 海外売上高が 4 割強を占めるため、業績はさらに悪化する可能性があるという。

売上高の海外比率が 6 割の家電向けポンプメーカーの漢宇集団(同)、3 割を占めるスマホ向けアンテナメーカーの恵州碩貝徳無線科技(同)もそれぞれ 20 年 1 - 3 月期の純利益が減益になる業績予想を発表済みだ。 いずれも海外向けの受注が振るわないようだ。 中国民生銀行は「先進国で新型コロナの感染が広がるにつれ国際的な経済環境は複雑さを増しており、中国の機械輸出は抑制される」と説明する。(nikkei = 3-31-20)

◇ ◇ ◇

中国経済は散々な第 1 四半期に、「GDP 10% 縮小も」 = 米調査会社

[北京] 米コンサルタント会社チャイナ・ベージュブック・インターナショナル (CBB) は 24 日、中国経済は新型コロナウイルス流行が企業活動を阻害する中、「目が飛び出るような」第 1・四半期になっているとする調査結果を公表した。 CBB は「第 1・四半期の GDP (国内総生産) 10 - 11% 縮小も不合理ではない。」と指摘した。 調査は中国企業数千社への調査が基になっている。 また、調査における各指標は「大半の企業が再開し、『業務に復帰』したとみられる 3 月半ばになっても悪化し続けた」という。

CBB は、中国国内の新たな感染症例は急激に減少しているものの、今や中国の回復はそのほかの要因次第だと指摘。 「数週間前、中国の V 字型回復は突飛な考えではなかった。 COVID-19 (新型コロナ)ウイルスが急速に広まる中、通常への復帰は日ごとに信じがたくなっているように見える。」とした。 たとえ中国ができても、中国の相手国ができないことがあるとした上で、「中国がどう回復できるかはもはや国内の底堅さだけにかかわるものではなく、中国当局のコントロールを越えた要素の問題でもある」と指摘した。 (Reuters = 3-24-20)

◇ ◇ ◇

中国の 1 - 2 月の指標、軒並み悪化 消費・投資は 2 割減

中国国家統計局が 16 日に発表した 1 - 2 月の主要経済指標は、軒並み前年同期比でマイナスに落ち込んだ。 新型コロナウイルスへの対策で、人の移動や企業の操業制限を伴う強力な措置をとり、2 月半ばまで経済がほぼマヒした。それ以降の立ち上がりも鈍く、1 - 3 月は四半期では初のマイナス成長も予想される。 国内総生産 (GDP) の変動を牽引する消費と投資を示す指標は、いずれも前年同期比 2 割以上と深刻な落ち込みを見せた。

人の移動や店舗の営業が規制された影響で、小売総額は 20.5% 減となった。 一貫して高成長を保ち、感染防止から利用が堅調とみられたネット通販も 3% まで伸びが鈍った。 大混乱のなかで投資も止まり、固定資産投資は 24.5% 減となった。 工場の操業が規制されたうえ、春節で郷里に帰った労働者が戻れなくなった結果、生産も低調になった。 鉱工業生産は前年同期比 13.5% 減。 経営基盤が比較的弱い外資と民営企業の下落幅は 20% を超えた。 発電量は 8.2% 減った。 2 月の失業率は 6.2% で 2019 年 12 月より 1 ポイントも上昇した。

湖北省武漢市で新型コロナが大流行し、都市が閉鎖されるなど強力な感染対策がとられた 1 月 23 日より前には、通常通りの経済活動が行われていた。 この時期を含む統計が軒並み大きなマイナスとなったことは、感染防止措置が経済に与えた衝撃の大きさを物語る。 中国では春節休暇の時期が年によって 1 - 2 月の中で変わる。 このため1、2 月の経済統計の分析では、2 カ月分を合算して過去の同じ時期と比べる。

GDP で重要な消費と投資、純輸出の代表指標はこの 1 - 2 月、どれもマイナスだ。 3 月に入っても強力な感染防止措置は続いており、復興の足取りは鈍い。 この影響で 4 月に発表される 1 - 3 月の経済成長率は、四半期で比較可能な 1992 年以降、初のマイナスを予想するエコノミストも出ている。 中国はいま、新たな感染者がほとんど出なくなっており、新型コロナの封じ込めに成功したと PR することを狙う。 ただ、国外での大流行で外需が減ることが世界の工場・中国を揺さぶる可能性は高く、年後半の経済もおぼつかない。

経済の低迷が習近平(シーチンピン)指導部に突きつける試練は厳しい。 政府関係者によると、20 年の成長率目標は 6.0% 前後で内定していたが、全国人民代表大会での公表を前に再検討が必至だ。 さらに 20 年の実質 GDP を 10 年比で 2 倍にする国家目標の達成には、通年で 5% 台半ばの成長を達成する必要がある。 実現できなければ政治的に大きなリスクになる可能性もある。 (北京 = 福田直之、asahi = 3-16-20)


中国の地方、510 兆円投資計画 新型コロナ対策

中国の 8 省・自治区・直轄市が準備する 2020 年以降の主要な公共投資計画が、月初時点で総額 33 兆元(約 510 兆円)に上っている。 中国政府は新型コロナウイルスによる経済への打撃を抑え、20 年の経済目標の達成もめざしている。 ただ投資の元手になる巨額の借金は経済を不安定にしかねない側面もある。 中国メディアの 21 世紀経済報道が、北京・上海・重慶各市や河北・江蘇各省など 13 カ所の計画を集計した。 20 年分を公表している場所を合わせても 3 兆元近い。 なかでも 20 年の重慶市の額は 19 年の 3 割超増えたという。

リーマン・ショック後に出た 4 兆元(当時)の景気対策のように、中央政府が大規模な措置をとるかどうかに市場は注目する。 先駆けて報じられた地方の投資計画は中国の株式市場で好感され、世界的な株安の中でも株価が上がっている。 中国共産党は 2 月 21 日の指導部の会議で景気対策のため「新たな投資を強め、建設中のプロジェクトの進度を速めよ」と指示。 中国では今年、国内総生産を 10 年比で倍増させるなど、政治的な威信のかかった目標が多い。 景気のてこ入れに公共投資で対応するとの観測が出ていた。

成長鈍化や減税で税収の伸びは小さく、財源は借金頼み。 中国財務省は 2 月 11 日、20 年の地方債の現時点での新規発行枠を 1 兆元から 1.8 兆元へ増やした。 2 月末までに前年同期比 6 割増の 1.2 兆元が起債されている。 リーマン・ショック後の 4 兆元の景気対策や不動産バブルで、中国の国内総生産に対する総債務比率は 19 年 7 - 9 月期には 310% (国際金融協会調べ)に拡大した。 一時の目標を達成するための地方債増発は将来の財政を圧迫しそうだ。 (北京 = 福田直之、asahi = 3-6-20)


中国当局 経営難の海航を支援 新型コロナで苦境

航空事業を主とする中国の複合企業、海航集団は 29 日、海南省政府から主要役員の派遣を受け、同社の巨額の債務問題に対応する省との共同作業チームを作ったと発表した。 新型肺炎の感染拡大で苦境に陥った巨大企業が、当局の経営支援を受ける初のケースとなる。 ドイツ銀行や米ホテル大手ヒルトンなどに大胆な投資を繰り広げた海航は積極的な投資が裏目に出て、債務問題を抱えている。 公告によると 2019 年中間期の時点で総債務の規模は約 7,100 億元(約 11 兆円)で純資産の 2.5 倍あった。

資産売却を進め、原点である航空事業への集中を進めていたが、19 年 12 月の時点ですでに給料支払いが遅れるまでになっていた。 1 月下旬から問題化した新型コロナの流行で旅客が減った影響で経営難に陥り、省政府に支援を求めていた。 中国民用航空局は 12 日の記者会見で、航空会社が苦境を乗り切るため、必要に応じて再編することを支持する考えを示している。 (北京 = 福田直之、asahi = 3-2-20)

◇ ◇ ◇

中国、「海航集団」を公的管理へ 肺炎で航空旅客が激減

米ブルームバーグ通信は 19 日、中国海南省政府が航空事業を主とする複合企業、海航集団を公的管理下に置く協議を進めていると報じた。 同社は過去の積極的な投資が裏目に出て巨額の債務を抱えており、新型コロナウイルスの感染拡大による航空便の運航停止が追い打ちをかける形で経営難に陥っている。 同通信は 20 日にも発表があると報じた。 航空事業の資産は主に中国国際、中国南方、中国東方の 3 大国有航空会社に売られる方向という。 報道通りならば、新型肺炎の感染拡大で影響を受けた企業を中国当局が救済する大胆な措置となる。

海航はドイツ銀行や米ホテル大手ヒルトンの大株主になるなど大胆な投資を繰り広げた結果、2019 年中間期の時点で 7,100 億元(約 11 兆円)と巨額の借金を抱えていた。 中国政府は海航が借金を返せなくなり、金融市場を混乱させることを懸念。 海航は資産の売却を進め、原点である航空事業への集中を進めていた。 だが、返済負担の重圧から 19 年 12 月の時点ですでに給料支払いが遅れるまでになっていた。

今年 1 月下旬に新型肺炎の問題が表面化。 需要の急減で中国内外の航空便が次々と運航取りやめになり、航空会社の経営には打撃となっていた。 中国メディアの新京報によると、グループの航空会社、海南航空ホールディングスの輸送旅客は 1 月、前年比 35% 減。 同香港航空は 400 人を削減すると報じられた。 中国民用航空局は 12 日の記者会見で、航空会社が苦境を乗り切るため、必要に応じて再編することを支持する考えを示していた。 (北京 = 福田直之、asahi = 2-20-20)


中国、3 カ月ぶり利下げ 新型肺炎受け金利負担軽減

【北京 = 原田逸策】 中国人民銀行(中央銀行)は 20 日、政策金利である最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)の 1 年物を 2 月は前月より 0.1% 低い 4.05% にすると発表した。 利下げは 2019 年 11 月以来、3 カ月ぶり。企業の借り入れコストを抑え、新型肺炎で打撃を受ける中小企業の資金繰りを支える。 LPR は優良企業に適用する貸出金利のこと。 19 年 8 月に初めて公表し、貸出基準金利に替わる新たな政策金利とした。 毎月 20 日に公表する。

前回 11 月の利下げは 0.05% と小幅だったが、今回はわずかに拡大した。 狙いは中小企業の資金繰りを支えること。 新型肺炎拡大に伴う事態の収束に時間がかかり、小売り・飲食、旅行、娯楽などの企業は売上高が激減している。 中小企業は手元資金も底をつきかねず、利下げで利息の返済負担を軽くする。 人民銀は LPR に基づいて企業融資の金利を決めるよう市中銀行を指導している。 LPR に個別企業の信用リスクを上乗せして貸出金利が決まるため、LPR を下げれば中小企業向けの融資金利も下がりやすくなる。

一方、住宅ローンの目安となる5年物の LPR も前月より 0.05% 低い 4.75% だった。 引き下げは 19 年 11 月以来、3 カ月ぶりとなる。 新型肺炎で給料が途絶え、住宅ローンの返済に苦労する世帯が増えていることに対応する狙いのようだ。 (nikkei = 2-20-20)


中国の人口、14 億人を突破 19 年の成長率は 6.1%

中国国家統計局が 17 日発表した 2019 年の国内総生産(GDP、速報値)は、物価上昇を除く実質成長率が 6.1% だった。 18 年を 0.5 ポイント下回った。 天安門事件後の 1990 年に記録した 3.9% 以来の低水準だ。 政府の「6.0 - 6.5」の年間目標は達成したが、下限近くだった。 あわせて発表した 19 年 10 - 12 月期の成長率は前年同期比 6.0% で、四半期で比べられる 92 年以降最低だった 7 - 9 月期から横ばいだった。

19 年は米中貿易摩擦に伴う先行きの不透明さや金融の引き締め方針が続き、企業に新たな投資を手控える動きが広がった。 建物など固定資産投資の通年の伸び率は、前年から 0.5 ポイント縮み 5.4% だった。 消費者も高額商品の購入に慎重になり、新車販売は 2 年連続の前年割れとなった。 小売総額の伸び率は前年より 1.0 ポイント小さい 8.0% だった。 世界全体に対するドルベースの貿易額は、輸出が微増だったが輸入は減った。

20 年は、習近平(シーチンピン)指導部が「小康社会(ややゆとりのある社会)」の全面的実現を掲げる政治的に重要な年だ。 当時の基準で見た実質 GDP を 10 年比で倍にする国家目標の達成期限でもあり、経済計画「第 13 次 5 カ年計画」の最終年にもあたる。 このため政府は景気のてこ入れを強めることになりそうだ。 中国人民銀行(中央銀行)は年始から預金準備率を下げる緩和策に出た。 外資への技術移転の強制を禁じる外商投資法も施行し、外国からの投資を呼び込もうとしている。 15 日には米国と通商交渉の「第 1 段階の合意」に署名した。 貿易摩擦の重圧が多少、和らぐ可能性がある。

国家統計局は同時に 19 年末の人口も発表した。 前年比 467 万人増の 14 億 5 万人となり、14 億人の大台を突破した。 (北京 = 福田直之、asahi = 1-17-20)

◇ ◇ ◇

中国失速の裏に米中摩擦 次々対策、内需回復に至らず

中国の 7 - 9 月期の実質成長率が 6.0% という歴史的な水準まで失速したのは、これまで成長を牽引してきた外需と内需の両輪に急ブレーキがかかったためだ。 引き金は米中貿易摩擦の激化だ。 対米輸出額は 1 - 9 月、前年同期比 10.7% 減。 米トランプ政権が追加関税「第 4 弾」を発動した 9 月は、前年同月比 22% 減に落ち込んだ。 工場の稼働率は下がり、ベトナムなどへの移転も相次ぐ。 企業は将来への投資を控え、従業員の賃金も減った。 その結果、先行きへの不透明感が社会全体に広がり、経済成長の 6 - 7 割に貢献してきた消費が冷え込んだ。 金額が大きく、関連産業の裾野も広い自動車は、新車販売が 15 カ月連続で前年割れになっている。

6.0% という水準は、四半期で比較できる 1992 年以降の最低を更新し、政府が立てた今年の年間目標の下限に等しい。 国際通貨基金 (IMF) は最新リポートで、通年の成長率は 6.1% にとどまるとの見通しを示す。 習近平(シーチンピン)指導部にとっての意味は重い。 前任の胡錦濤(フーチンタオ)指導部は、2020 年の国内総生産 (GDP) を 10 年比で倍増するという国家目標を掲げた。 10 年当時の基準で見た場合、現時点でまだ達成できていない。 政府関係者は達成には 19、20 年ともに 6.2% の成長率が必要と説明してきた。 今の水準では、大目標の達成に黄信号がともりかねない。

政府はこれまで、年間 2 兆元(約 30 兆円)規模の減税を進めたり、新車の購入制限を各地で緩和したりしてきたが、内需の回復にはつながっていない。 外需についても、米側と 11 日に通商協議の「第 1 段階の合意」に達して合意文書の作成に入ったが、中国側が強く訴えてきたすべての追加関税の撤回といった、抜本的な事態の好転は見通せないままだ。 政府にとって残された選択肢は多くない。 公共工事など財政出動のアクセルを踏み込む手は残されているが、リーマン・ショック後の景気対策で積み上がった巨額債務の抑制を掲げてきた習指導部にとっては、大きな路線転換となる。

今後、急速に少子高齢化が進み、社会保障支出の増大が避けられないなか、失速した経済をどうてこ入れするのか。その成否は、習指導部の求心力に直結する。 (北京 = 福田直之、asahi = 10-18-19)

◇ ◇ ◇

中国成長率予想、慎重派の民間と楽観的な政府系に温度差

[北京] 中国の経済成長率予想について「官民格差」が生じている。 市場関係者などは、成長率が第 3・四半期ないしは来年にかけて政府目標の下限である 6% を割り込む恐れがあると警告する。 一方で政府系のエコノミストはやや楽観的で、各種景気対策が効果を発揮して急激な成長鈍化は避けられるとみている。 第 2・四半期に 6.2% と約 30 年ぶりの低成長を記録した中国経済が、第 3・四半期になって一段と冷え込む公算が大きい、という点で専門家の見方はそろっている。 ただそうした減速の流れが、景気対策が打ち出されても続くかどうかが意見の分かれるところだ。

UBS は中国の成長率が今年 6.0% で、来年には 5.5% まで下振れると予想する。 中国エコノミストのタオ・ワン氏は、米国の関税引き上げの影響で、今年第 4・四半期と来年第 1・四半期に成長の勢いが一層弱まるだろうと述べた。 これに対して政府系エコノミストは、景気対策が経済を支えると期待する。 国家発展改革委員会傘下のシンクタンク、国家情報センターで経済予測部門を統括する Zhang Yuxian 氏は「成長率は第 3・四半期に 6.1% となった後、第 4・四半期には 6.2% まで幾分持ち直すと見込んでいる」と語った。

同氏は 18 日、外国記者団に「財政、金融、構造的な諸政策が第 4・四半期の経済に間違いなく反映される。 そうでなければこうした政策は何の役にも立たない。」と説明し、それによって今年の成長率は 6.2 - 6.3% と、政府目標並みを確保できると自信を見せた。 やはり政府系シンクタンクの中国国際経済交流センター (CCIEE) のチーフエコノミスト、Chen Wenling 氏は、今年と来年の成長率をそれぞれ 6.2% 前後、6% 前後と予想している。 中国では昨年以降、相次いで景気対策が打ち出されてきたにもかかわらず、経済はなお安定していない。 だからこそ大半の民間エコノミストは、内外の需要の弱さを踏まえて慎重な成長見通しを維持している。

米中貿易摩擦の長期化が中国の企業や消費者に打撃を与えている点からすれば、もっと刺激策が必要だとの指摘が出ている半面、政策担当者が債務増大や不動産バブルのリスクを心配している以上、追加的な政策発動の余地は限られる。 こうした中で市場は、昨年初め以降 7 回にわたって準備率を引き下げてきた人民銀行(中央銀行)が、20 日にローンプライムレート(LPR = 最優遇貸出金利)を下げるかどうかに注目している。 (Kevin Yao & Stella Qiu、Reuters = 9-21-19)