室内光で世界最高クラスの発電効率、東洋紡が有機薄膜太陽電池セルを開発

東洋紡が開発中の有機薄膜太陽電池用の発電材料を利用し、薄暗い室内で世界最高レベルの変換効率を実現する太陽電池セルの開発に成功。 まずは温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途で、2022 年度中の採用を目指す方針だ。

東洋紡は 2020 年 3 月 23 日、開発中の有機薄膜太陽電池用の発電材料を利用し、薄暗い室内で世界最高レベルの変換効率を実現するガラス基板の太陽電池セルなどの開発に成功したと発表した。 2019 年夏からフランス政府機関 CEA と進めている共同研究による成果で、今後、温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途向け材料として提案を進め、早期の実用化を図る方針だ。

有機薄膜太陽電池は、炭素や硫黄原子などを含む有機物の発電材料を溶媒に溶かし、電極を有するガラスやプラスチックの基板上に塗布する方法などで作製される太陽電池。 軽くて薄い特徴があり、形状の自由度も高いため、一般的な太陽電池では設置が難しかった壁面や布地などにも貼り付けることができる。 こうした特性から、IoT 機器や各種センサーのワイヤレス電源になるとして期待されている次世代太陽電池だ。

東洋紡ではファインケミカル事業で培った有機合成技術を応用し、低照度の室内用光源でも高い出力が得られる有機薄膜太陽電池用発電材料の開発に取り組んできた。開発中の材料はノンハロゲンの溶媒にも容易に溶かすことができ、塗布時のむらが抑えられるため、個体差が少なく安定した発電が可能という。 同社では実用化に向けて 2019 年 6 月から CEA と共同研究を開始し、溶媒の種類や塗布手法の最適化を進めてきた。

同社は今回、この材料を用いガラス基板を持つ小型の有機太陽電池セルの試作に成功。 薄暗い室内と同等である 220 ルクスのネオン光源下の検証で、卓上電卓に使用されるアモルファスシリコン太陽電池の 1.6 倍に相当し、世界最高クラスという約 25% の変換効率を確認できたという。 さらに、ガラスよりも発電材料の塗布が難しいという、PET フィルムを基板にしたモジュールの作製にも成功。 有効面積 18 平方センチメートルの試作品で、同照度下で約 130μW の出力を達成した。

今回の共同研究で得たノウハウをもとに、東洋紡では今後、電池メーカーを中心に開発した材料の提案を進める。 まずは温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途で、2022 年度中の採用を目指す方針だ。 (スマートジャパン = 3-26-20)


出力 500W 超の太陽光モジュール、中国トリナが大量生産スタートへ

中国の大手パネルメーカーであるトリナ・ソーラーは 2020 年 3 月 18 日、出力 500W (ワット)超えの太陽光モジュール新製品「Duomax V」および「Tallmax V」について、モジュールの大量生産向けパイロットラインを公表したと発表した。

新製品は両面受光型両面ガラスモジュール「Duomax V」とバックシートタイプの「Tallmax V」で、210mm セルを採用。 Duomax V は出力 500W 超の高い出力を持ち、変換効率 21%。 従来のハーフカットセル仕様モジュールの設計では、モジュールの出力特性が大電流となるため、ジャンクションボックスの不具合やモジュール破損、DC 端子の制限を超えてしまうなどの問題があったが、新製品はモジュール内のスペースを最大限に活用することで、高出力・高効率・高信頼性を実現したという。

大量生産向けラインの立ち上げに向けては、高速ダメージレスセルカッティング技術、210mm セルマルチバスバー太陽電池モジュールの均一溶接、太陽電池パネルの新自動配置方式、大量生産に対応できるラミネート溶接装置など、パートナー企業と「業界初(同社)」の新技術の開発を行ったという。 なお、日本法人であるトリナ・ソーラー・ジャパンによると、新製品の日本国内における現時点での出荷時期目安は Duomax V が 2021 年中、Tallmax V は 2020 年末頃に出荷予定としている。 (スマートジャパン = 3-25-20)


太陽光パネルの処理サービス、オリックス環境が全国展開へ

オリックス環境が太陽光発電所から排出される使用済み太陽光パネルの処理サービスを全国で展開すると発表。収集運搬・処理業者とネットワークを組み、適正処理体制を構築した。 オリックス環境は2020年3月、太陽光発電所から排出される使用済み太陽光パネルの処理サービスを全国で展開すると発表した。収集運搬・処理業者とネットワークを組み、適正処理体制を構築した。

同社は、オリックスが提供するリース物件の適正処理を通じて培った独自のノウハウとネットワークをもとに、全国のユーザーの不要物の回収やリユース、リサイクル、適正処理をサポートしている。今回、全国の産業廃棄物の収集運搬、中間処理、最終処理会社と協力し、太陽光パネルの破砕および埋め立てによる適正処理体制を構築した。本サービスは、自然災害による突発的な太陽光パネルの故障や破損が生じた際などでも活用できる。

太陽光発電は、2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入されて以降、急速に普及している。しかし、2030年代には太陽光パネルの大量廃棄時代を迎え、適正処理の需給がひっ迫する懸念がある。 現状では、使用済み太陽光パネルの効率的なリサイクル技術は確立されておらず、破砕および埋め立てによる処理が主流となっている。今後は、業界団体であるガラス再資源化協議会やその会員企業などと協業し、太陽光パネルのリサイクルにも取り組む。 (スマートジャパン = 3-24-20)


東電、洋上風力で世界最大手と新会社 銚子沖事業推進

東京電力ホールディングスは 18 日、千葉県銚子沖で事業化を目指す洋上風力発電計画の実現に向け、同発電分野で世界最大手のオーステッド(デンマーク)と共同出資会社を設立したと発表した。 両社がノウハウを持ち寄り、発電所の建設に向けた準備などを円滑に進めるねらい。 新会社は銚子洋上ウインドファーム(東京・千代田)。 東電が 51%、オーステッド子会社が 49% を出資した。

東電は銚子沖で最大出力約 37 万キロワットの洋上風力発電プラントを 2024 年度以降に稼働させる方向で検討している。 新会社は、海域の利用を巡って国が計画する公募に向けた準備を行う。 事業者に決まればプラントの建設や運営などを担う。 オーステッドは世界で 500 万キロワット以上の洋上風力設備を運営。 東電は 19 年 1 月に洋上風力でオーステッドと提携しており、新会社を通じて事業の推進を加速させる。 (nikkei = 3-18-20)


三菱重工系、水素使う火力発電を受注 大型では世界初

三菱重工業と日立製作所が共同出資する三菱日立パワーシステムズ(MHPS、横浜市)は、水素を混ぜる次世代型の火力発電設備を米国で初受注した。 水素を使う大型火力設備の受注は世界初という。 発電時に二酸化炭素 (CO2) を多く排出する火力発電への逆風が世界的に強まっているが、水素を混ぜると発電時の CO2 の発生を大幅に減らせるため、環境問題にも対応できる。

受注額は 300 億 - 400 億円程度とみられる。 天然ガスを燃やしタービンを回して電気をつくる設備だが、2025 年に稼働を始める段階で 30% をガスでなく水素にする。 45 年までに比率を高め、100% 水素で発電するようにする。 受注したのは、米ユタ州の IPP (独立系発電事業者)、インターマウンテン電力が同州ソルトレークシティー郊外で計画する 84 万キロワット級の発電所の主要設備。 水素混合型の設備は 10 万キロワット程度しか実用化の例がないという。

耐久性や排ガス処理で大型化が難しかったが、耐熱の仕組みの改良などで実現した。 高砂工場(兵庫県高砂市)と日立工場(茨城県日立市)から出荷する。 MHPS は火力発電に使う大型ガスタービンの世界シェア首位で、独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック (GE) と並ぶ大手。 三菱重工は 19 年 12 月に日立から MHPS の 35% 分の株式を取得して完全子会社化すると発表した。 三菱重工は今後火力発電の受注が厳しくなる中、水素を使った火力発電など、環境に配慮した電力設備へ移行していきたい考えだ。 (nikkei = 3-12-20)


日本企業の環境債、発行額最高の 7,300 億円 19 年 74% 増

資金使途を環境関連に絞った債券「グリーンボンド(環境債)」を発行する日本企業が増えてきた。 2019 年の国内発行額は前年比 74% 増の 7,300 億円と過去最高を更新。 環境に対する配慮の優劣で、投資先を選別する保険会社や年金基金などの動きが背景にある。 19 年の世界全体は 31% 増の 1,730 億ドル(約 18 兆円)で、日本でも発行増が続きそうだ。

金融情報会社のリフィニティブが集計した。 環境債の 19 年の発行額は世界では債券全体の 2% を超え、日本での比率を大幅に上回るとみられる。 環境に配慮した製品の開発や販売促進、施設整備などを使途とする。 発行企業にとっては環境債の方が ESG (環境・社会・企業統治)を重視する投資家の資金を有利に集めやすい。 発行額が最も多かったのは日本電産。 19 年 11 月に計 1,000 億円を調達し、電気自動車 (EV) 向け駆動用モーターの研究開発費などにあてる。 大半を保険会社や地方銀行が購入したようだ。

トヨタファイナンス(名古屋市)は 19 年に 600 億円の環境債を発行した。 ハイブリッド車 (HV) など環境負荷の低い車種の販売金融を強化する。 500 億円を発行した東京建物はエネルギー効率が高く、二酸化炭素の排出量が少ない複合ビルを開発する。 19 年の日本の発行件数は 52 件と 9 割増えた。 環境省が起債にかかる費用を一部補助するなど後押ししており、約 170 兆円の年金マネーを運用する年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) も環境債への投資を本格化する方針だ。

世界では 19 年の発行額が過去最高を更新。 首位は中国(229 億ドル)、米国(196 億ドル)、フランス(171 億ドル)と続く。 個別企業では仏電力のエンジーの 27 億ドル、米アップルの 21 億ドルなどの発行が目立つ。 アクサ・インベストメント・マネージャーズのヨハン・プレ・ポートフォリオ・マネジャーは「投資家の環境債への関心は高まっており、20 年も世界発行額は過去最高を更新しそうだ。」と話す。 (nikkei = 3-8-20)


レジ袋有料化、4 月に前倒し イオンやマツキヨなど続々

買い物客に小売店が配るプラスチック製レジ袋の有料化を、政府が義務づける 7 月より前に始める動きが広がっている。 イオングループやマツモトキヨシホールディングス (HD) は 4 月から有料化する。 流通大手のイオンは 28 日、グループ内のコンビニの直営店の大半や小型スーパー、ドラッグストアのウエルシアなどで 4 月 1 日から無料配布をやめると発表した。 約 500 店ある総合スーパーなど約 2,400 店はすでに有料にしており、これらも含めて計 7,300 店に拡大する。 コンビニのフランチャイズ店など残る約 4 千店でも 7 月までに順次、有料化する。

レジ袋はバイオマス原料を 3 - 5 割を含むもので、税抜き価格は 1 1枚 2 - 5 円。 総合スーパーの衣料品売り場などでは紙袋を導入し、1 枚 10 円。イオンの鈴木隆博環境・社会貢献部長は「さらなるプラスチック削減と、資源を使い捨てにしないライフスタイルを定着させたい」と話す。 ユニクロを展開するファーストリテイリングはプラスチック製から紙製に切り替え、4 月から紙製のショッピングバッグを有料化する。 ユニクロとジーユーの国内全店で、1 枚税抜き 10 円となる。

4 月からグループの約 1,700 店で有料化するのはドラッグストア大手のマツモトキヨシ HD。 「有料にすることでエコバッグを持ってくるようにしてもらう狙いがある(広報)」という。 来年秋にマツキヨと経営統合するココカラファインも 4 月から全店で有料化する方針だ。 スギ HD も 7 月からの前倒しを検討している。 ドラッグ大手の広報担当者は「社会的な必要性もあるが、業界や他社との足並みも意識しなくてはいけない」と話す。

プラスチックごみは世界的な問題となっており、政府は事業規模にかかわらず、すべての小売店で有料化を義務づける。 当初は 4 月からの義務づけをめざしていたが、コンビニなどがつくる業界団体などから「準備が間に合わない」といった意見が出て、7 月になった経緯がある。 コンビニ大手のファミリーマートは 2 月 19 日、7 月に有料化する方針を公表。 セブン-イレブンとローソンも 7 月から有料化する方向で準備をしている。 ドラッグ大手でもツルハ HD は、7 月から有料化する方向で検討している。 (長橋亮文、土居新平、asahi = 2-29-20)

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ファミマ、7 月からレジ袋有料に コンビニ大手で初

ファミリーマートは 7 月からレジ袋を有料化する。 コンビニ大手 3 社で有料化の方針を打ち出したのは初めてで、19 日発表した。 値段は今後決めるという。 小売店で 7 月からプラ製レジ袋の有料化が義務づけられるのに合わせ、ファミマはレジ袋をバイオマス素材を 3 割配合したものに切り替える。 25% 以上バイオマス素材を配合すれば例外として無料でもいいが、ファミマは「プラスチック削減につながる」として有料化に踏み切る。 コンビニ業界では「袋もサービスの一環」などとして、有料化に慎重な意見が多かった。 (asahi = 2-19-20)


大阪ガスが世界最高の発電効率誇る家庭用燃料電池 4 月発売で 168 万円

大阪ガスは 25 日、世界最高の発電効率を実現した家庭用燃料電池「エネファーム type S」の新製品を 4 月 1 日から販売すると発表した。 発電効率は 55% で、同社の従来製品を上回り家庭用燃料電池としては世界最高水準。 同時に小型化もしており、マンションなど集合住宅での販売拡大を目指す。 大ガスがアイシン精機や京セラなどと共同開発した。 平成 30 年(2018 年)製の同型機の発電効率は 53.5% だったが、燃料電池の心臓部分にあたるセルスタックの改良によって発電効率が向上した。 従来の給湯暖房システムに比べて年間の光熱費を約 45% 削減できるという。

さらに、各部品の小型化によって設置に必要な面積を約 20% 削減。 「設置できるファミリー向けマンションはこれまでの 2 倍以上になる(同社)」という。 また、IoT (モノのインターネット)機能を拡充し、台所や浴室のリモコンから子供が帰宅したことを外出先の保護者のスマートフォンに通知できるサービスなども搭載した。 価格は熱源機などとセットで 168 万円(税別)。 家庭用燃料電池は都市ガスから取り出した水素を使って発電するため停電時にも電力を供給でき、大ガスは災害時対応の面からもアピールしている。 (sankei = 2-25-20)


太陽光で二酸化炭素をクリーンな燃料に変える? 人工光合成向けの触媒を開発

太陽光を用いて二酸化炭素を天然ガスの主成分であるメタンに変換する、人工光合成のための新しい触媒が開発された。 この研究はミシガン大学、マギル大学、マックマスター大学が共同で行ったもので、2020 年 1 月 3 日、『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載された。

人工光合成は、多くの場合、二酸化炭素と水から、天然ガスやガソリンに似た炭化水素燃料を生産することを目指している。 しかし、非常に安定した二酸化炭素から炭素を取るには多くのエネルギーが必要で、効率的な触媒がなければ二酸化炭素をメタンに変えることは難しい。 今回、研究チームの理論的研究と計数的研究により、銅 (Cu) と鉄 (Fe) のナノ粒子が重要な触媒成分となることが特定された。 銅と鉄は、炭素と酸素原子によって分子に固定され、水素が水分子の破片から炭素原子へと移行しやすくする。

これを用いて今回作られたデバイスは、銅と鉄のナノ粒子が散りばめられた一種のソーラーパネルだ。 太陽エネルギーまたは外部からの電流を、二酸化炭素と水を使った化学反応のために使用する。 ベース層はシリコンウエハーで、その上部は半導体の窒化ガリウム (GaN) でできた、高さ 300nm、幅約 30nm のナノワイヤで覆われている。 この配置により、反応が起こりうる表面積が大きく確保されている。

今のところ、この人工光合成パネルは、工業用煙突など、高濃度の二酸化炭素供給源に接続する必要がある。 触媒成分である Cu と Fe は地球上に豊富にあり、パネルの大量生産にも適している。 さらに、合成天然ガスや、ギ酸を生成するように構成することも可能だという。 研究チームは、5 - 10 年以内に工業用煙突からの二酸化炭素を、クリーンな燃料にリサイクルする可能性を探っている。 (fabcross = 2-16-20)


窓ガラスで発電、京大研究チームが挑戦 厄介者を活用

太陽から届く光を余すところなく使いたい - -。 京大化学研究所の坂本雅典准教授らの研究チームは、太陽光の半分を占めるのに、産業にほとんど利用されていない赤外線を使って発電する材料の開発に挑んでいる。 目指すのは、日光を浴びたビルのガラスを使う「窓ガラス発電」だ。 太陽光は波長の長さによって紫外線、可視光、赤外線に大別される。 太陽光の半分は可視光で、植物の光合成や太陽光発電などに使われる。 一方、赤外線は太陽光の 46% を占めるにもかかわらず、エネルギーが低いため発電には向かないと考えられてきた。 それどころか、ヒートアイランド現象の一因として、厄介者扱いされている。

研究チームは 2016 年ごろに研究をスタートさせた。 注目するのはナノメートルサイズ(ナノは 10 億分の 1)の金属の小さな粒子だ。 種類や形状によって、吸収する光の波長が変わる。 赤外線を吸収させるようにしたナノ粒子を使って電子を取り出し、発電したり、燃料となる水素をつくったりするのを狙う。 安価で環境負荷が少ない素材を探し、硫化銅のナノ粒子にたどり着いた。 開発した材料は透明で、ガラスに塗ったり、ガラスで挟み込んだりして発電する窓ガラスの開発が可能だ。 無機材料を使っているため、耐久性も高いという。

すでに実験室レベルでは発電に成功し、実用化に向けて発電効率の向上を進めている。 水素をつくる研究はさらに進んでおり、18 年末には特定の波長の赤外線でエネルギー変換効率を 3.8% まで高めることに成功。 世界の先行研究では 1% 程度でしかなかったが、それを研究を始めて 3 年で上回った。 降り注ぐ赤外線の量は膨大だ。 発電効率やエネルギー変換効率が小さくても、トータルでは相当のエネルギーを得られる可能性がある。 ほとんど未利用だった赤外線を使って、エネルギーを生み出せるようになるメリットは大きい。

オフィスビルでは現在、窓から差し込む赤外線によって室温が上がらないように、赤外線を反射したり吸収したりする窓ガラスが使われている。 坂本さんは「そうした窓ガラスを置き換えていきたい」と意気込む。 23 年ごろまでに実用化へのメドをつけたいとしている。 (後藤一也、asahi = 2-16-20)


南極で史上初の気温 20 度超 研究者「信じがたく異常」

南極で気温 20.75 度を観測した。 このデータが世界気象機関 (WMO) の確認を経て公式記録となれば、南極観測史上初めての 20 度超えとなる。 英紙ガーディアンなどが 13 日、報じた。

南米に近い南極半島北端沖のシーモア島にある、アルゼンチンの研究拠点で 9 日に観測した。 ガーディアンは「信じがたく異常だ」というブラジルの研究者の見方を伝えている。 南極半島北端は地球で最も温暖化が顕著な地域の一つとして知られ、別の観測点では 6 日、過去最高とみられる 18.3 度を観測した。 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん (17) はガーディアンの報道を引用して「南極沖シーモア島で 20.7 度」とツイート。 6 千回以上リツイートされている。 (asahi = 2-14-20)


永久凍土の「急速融解」、温暖化への影響は従来説の倍も、研究
次の IPCC 第 6 次評価報告書の著者も参加、「今すぐ政策目標を」と研究者

米国アラスカ州中部のタナナ川沿いに広がるクロトウヒの森。 昔、このあたりの地面は固く、氷に覆われていた。 だが、温暖化による雨と融雪のため、今では柔らかくぬかるんでいる。 米国地質調査所 (USGS) のミリアム・ジョーンズ氏と米コロラド大学北極高山研究所のメリット・ツレツキー所長は、この森で木々が傾き、曲がり、そして倒壊するのを長年にわたり観察してきた。

気温の上昇により北方の永久凍土が融解し、温室効果ガスが発生して、地球温暖化を加速させる可能性があることは何十年も前から知られていた。 けれども、このほどツレツキー氏とジョーンズ氏らの専門家チームは、まっすぐ立っていない木が多いアラスカのいわゆる「酔っぱらった森」の研究から、新たな事実をつかんだ。 永久凍土には氷を特に多く含む部分があって、そうしたところが融解すると、従来考えられていたより温室効果ガスが多く放出されることがわかったのだ。

「急速融解」と呼ばれるこのプロセスが起こるのは、おそらく北極地方の永久凍土全体の 5% 程度だ。 しかし、ツレツキー氏が率いる研究チームが 2 月 3 日付けで学術誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に発表した論文によると、この小さな部分の融解により、永久凍土の地球温暖化への影響は、従来考えられていた規模の倍以上になる可能性があるという。

「小さな変化ですが、影響は大きいのです」とツレツキー氏は言う。 科学者たちはこれまで永久凍土の「急速融解」をあまり警戒してこなかった。 永久凍土から放出される温室効果ガスの量は、私たちが石炭、石油、天然ガスを燃やす際に発生するガスの量より少ない。 米国国立大気研究センターの上級科学者デビッド・ローレンス氏によれば、永久凍土の融解は人間活動による気候変動を 10% ほど悪化させるとこれまで推測されていた。

ところが、今回の研究結果によると、その見積もりが倍になる恐れがある。 これは重要だ。 なぜなら、「気候変動に関する政府間パネル (IPCC)」が、最悪の温暖化を阻止するために、人類が化石燃料の使用をやめるべき時期を推定したときに、永久凍土の融解が十分考慮されていなかったからだ。 別の言い方をすると、地球温暖化を 1.5 - 2℃ にとどめるためには、私たちは、これまで考えていたよりも短期間で再生可能エネルギーへの転換を進めなければならないことになる。

「炭素冷凍庫」の崩壊

ツレツキー氏らの研究成果は発表されたばかりだが、『ナショナル ジオグラフィック』 2019 年 9 月号の記事「凍土に眠る炭素が目覚める日」は、同氏や共同研究者の長年にわたる研究に基づいて執筆されている。

永久凍土が大気の約 2 倍の炭素を保持していることは、科学者の間ではずっと前から知られていた。 永久凍土の炭素の多くは、腐敗した大昔の植物や動物の死骸の形で存在している。 永久凍土が完全に(あるいはかなり)解けることなど誰も予想しておらず、解けたとしても何十年もかけて徐々にであり、主に二酸化炭素をゆっくりと放出していくのだろうと考えていた。 さらに、温暖化により北極地方の緑化が進み、放出される二酸化炭素の一部は、こうした樹木に吸収されるだろうとさえ考えられていた。

しかし、北極地方の 2,300 万平方キロメートルの永久凍土には、氷を多く含むところがある。 こうした氷が解けると、風景は一変する。 氷が解けたあとの地中の隙間を埋めるように地すべりが起き、できた窪みに水がたまって池や湖になるのだ。 その水は、永久凍土の融解をさらに加速する。 北極地方の多くの場所で、予想外に速いペースでこうした変化が進んでいる。 カナダ北部のある島では、1984 年から 2013 年までの間に地すべりの回数が 60 倍も増加した。

いったん永久凍土の中の氷が解け始めたら、数日、数週間、数カ月間という速さで風景は激変する。 このとき、厚い氷に覆われた地中に保持されていた大量の炭素がメタンの形で放出される。 問題はこの点だ。 メタンの温室効果は二酸化炭素の 25 倍以上もある。 北極地方の湿地帯の専門家であるジョーンズ氏とツレツキー氏は、毎年春になると永久凍土のサンプルを採取しに、スノーモービルでアラスカの内陸部を訪れる。

数年前の USGS の調査の際、ジョーンズ氏が自ら地面に開けた穴の中を覗き込んだとき、数メートル下の土が泡立っていたという。 土壌の温度が上昇したために、微生物が大昔の植物の死骸を食べてメタンを吐き出し、そのメタンが湿った土を通って出てきたものだ。 「まるで沸騰しているように見えました。」

2018 年の報告書でも急速融解は考慮されず

ツレツキー氏が今回発表した研究は、急速融解が温室効果ガスの放出に影響しうる可能性を調べあげ、さらに、その影響がどれほど大きいのかを評価しようとした最初の試みだ。 「私たちのほとんどが、影響はもっとずっと小さいだろうと思っていました」と、論文共著者のローレンス氏は言う。 「意外な結果でした。」 彼らは、永久凍土が温室効果ガスの排出削減目標の達成をますます困難にすることを明らかにした。

永久凍土の融解は、温室効果ガスによる温暖化を予想するコンピューターモデルのシミュレーションに、つい最近組み込まれるようになったばかりだ。 IPCC が 2014 年に発表した第 5 次評価報告書では、永久凍土からの温室効果ガスの放出はまったく考慮されていなかった。

IPCC が 2018 年に発表した特別報告書では、地球温暖化を 1.5℃ 以内にとどめるためには、2030 年までに世界の化石燃料による温室効果ガスの排出量を 45% 削減し、2050 年までにゼロにしなければならないとされていた。 この報告書では、単純なモデルを使って永久凍土の緩やかな融解を見積もっていて、急速融解についてはまったく考慮されていない。

科学者たちは、このままではいけないことを知っている。 ツレツキー氏は、クリーンエネルギーへの移行を促すために「今すぐ政策目標を設定する必要があります」と言う。 永久凍土の影響を政府が考慮しなかったら、「私たちの計画は現実的なものにはなりえません。」 しかし、どうすればこの問題を解決できるかはまだわからない。 北極地方は広大でモニタリングは十分とは言いがたく、森林火災の増加などにより融解がさらに加速する可能性もある。

米ローレンス・バークレー国立研究所のスタッフ科学者で、次に発表される IPCC 第 6 次評価報告書の著者であるチャールズ・コーべン氏は、炭素循環の章に取り組んでいる。 コーベン氏は、ツレツキー氏の論文の共著者でもある。 「こうした研究成果については承知しています。 考慮に入れることになるでしょう。」とコーベン氏は言う。

今回、氷を多く含む永久凍土が融解したときの影響の大きさが明らかになったことは、見方によっては幸運だったとツレツキー氏は言っている。 「北極地方の変化は脅威です」と氏は言う。 しかし、「北極地方は、人類がまだ自分たちの未来をコントロールできるうちに、この教訓を与えてくれました。 これからの数十年で世界各地で何が起こるかを教えてくれているのです。」 私たちはその声に耳を傾け、必要な対策を取らなければならない。 (National Geographic = 2-8-20)


秋田、能代両港湾区域の洋上風力、月内に着工へ

丸紅など秋田県内外 13 社で構成する特別目的会社「秋田洋上風力発電(東京)」は 3 日、秋田、能代両港湾区域で計画していた洋上風力発電プロジェクトの事業化を正式決定した。 2 カ所に計 33 基の風車を設置し、合計の最大出力は約 14 万キロワットを見込む。 月内に着工し、2022 年後半の稼働を目指す。 国内の洋上風力発電施設では初の本格的な商用運転となる。 総事業費は約 1 千億円に上り、国内外の金融機関から融資を受ける契約を同日結んだ。

丸紅などによると、秋田港湾区域は出力約 4,200 キロワットの着床式風車を 13 基設置し、最大出力は約 5.5 万キロワットとなる。 能代港湾区域は同様の風車 20 基を設置し、最大出力は約 8.4 万キロワットになる見通しだ。 合計で約 13 万世帯の年間消費量に相当する電力を供給できる。 発電した電力は 20 年間、固定価格買い取り制度を活用し、1 キロワット時当たり 36 円で東北電力に売る。 設備の建設、保守、運転で県内から少なくても数十人を雇用する計画だという。

融資は三菱 UFJ 銀行、みずほ銀行、三井住友銀行が共同主幹事行を務める。 日本生命保険と第一生命保険、明治安田生命保険は同事業に投資すると発表し、投資額はそれぞれ数十億円規模とみられる。 (秋田魁新聞 = 2-3-20)

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洋上風力 全国で原発 10 基分の計画 将来性ある再生エネルギー

洋上風力発電は、海に囲まれた日本にとって、太陽光に続く将来性のある再生可能エネルギーだ。 日本風力発電協会の試算では、風車の土台を海底に固定する「着床式」だけでも 9,100 万キロワットの潜在力があり、単純計算で最新型の原発 60 - 70 基分に相当する。 現在、原発 10 基分ほどに当たる約 1,400 万キロワット分の事業計画(一部、区域の重複あり)で、騒音や生態系への影響を調べる環境影響評価(アセスメント)の手続きが進む。

ただ、日本は海域利用のための法整備が遅れたこともあり、ヨーロッパや中国には大きく後れを取る。 世界風力会議 (GWEC) の 2018 年報告書によると、世界の洋上風力の導入量は 2,310 万キロワット。 このうち 8 割以上は英国、ドイツ、中国の三カ国が占める。 一方、日本は 19 年末現在 6.5 万キロワット(半洋上風力を除くと 2.1 万キロワット)で、同じ島国の英国の百分の一以下にとどまる。

洋上風力には、▽ 陸上より安定して強い風が吹く、▽ 土地の制約がなく大規模設備を建設できる、▽ 風車の土台を新たな漁場として活用できる可能性がある - などの利点がある。 その半面、海底の送電線敷設などが必要で建設・維持費がかさむため、大量導入によるコスト削減が不可欠だ。 洋上風力の建設方式は、「着床式」と、風車を海上に浮かべる「浮体式」の二通り。 メガサイト鹿島や東電の銚子沖の計画はいずれも着床式だが、遠浅の沿岸が少ない日本では適地に限りがあり、浮体式の普及にも期待がかかる。 (宮尾幹成、東京新聞 = 1-23-20)


グレタさん、トランプ氏に「あなたの怠惰が火に油注ぐ」 ダボス会議

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん (17) が 21 日、スイスのリゾート地ダボスで、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席した。 世界の政財界指導者らを前に、地球温暖化について具体的な対策を取るよう求めた。 トランプ米大統領がこの日、「植樹活動への協力」を表明したことについて、グレタさんは「植樹は良いことだが十分ではない」と批判した。 「あなたの怠惰が火に油を注いでいる」とも述べ、温暖化対策の緊急性を訴えた。 (yomiuri = 1-22-20)


内ケ谷ダムで小水力発電 25 年度開始目指す

岐阜県と中部電力は 21 日、郡上市で建設中の内ケ谷(うちがたに)ダムで、中部電力が小規模な水力発電事業を実施するための協定を締結した。 県営ダムでの発電事業としては阿多岐ダム(郡上市)、丹生川ダム(高山市)に次ぐ県内 3 カ所目で、規模は最大となる。 内ケ谷ダムが完成する 2025 年度の発電開始を予定している。 中部電力の勝野哲社長が県庁を訪れ、古田肇知事と協定書を交わした。 勝野社長は「再生可能エネルギーの中でも水力発電は安定している。 しっかりと開発していく。」 古田知事は「県営ダムが、県民の生活にさらに役立つと期待している」と語った。 立会人の日置敏明郡上市長も地元としての期待を述べた。

発電事業は、ダム下流の河川環境の保全などのため常に放流する水を活用。 内ケ谷ダムでの最大出力は 720 キロワットで、電力量は一般家庭約 1,500 世帯分となる。 中部電力は同ダムの総事業費約 580 億円の 0.5% や、発電機の設置関連費などを負担する。 内ケ谷ダムは長良川に合流する亀尾島(きびじま)川の治水ダムで、2016 年に着工。 県は公募型プロポーザル方式で事業者を募集していた。 ダムの本体工事は約 2 割が完了している。 (岐阜新聞 = 1-22-20)


ソフトバンクグループのメガソーラー発電所が完成 宮崎県国富町

ソフトバンクグループのメガソーラー発電所が宮崎県国富町に完成し、施設が公開されました。 メガソーラー発電所「ソフトバンク宮崎国富ソーラーパーク」は、ソフトバSB エナジーのメガソーラー発電所は、この国富ソーラーパネルで国内 40 カ所目、宮崎県内では 2 か所目となります。 (UMK = 1-21-20)


元凶は電力会社? 太陽光発電が増えても CO2 排出量は減らない日本の闇

2019 年末、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が終了した。 太陽光発電は普及したが、なぜか CO2 排出量は減少していない。 その元凶は電力会社にある。

環境より利益優先 電力会社の損失は一般家庭の電気代へ上乗せ …

2019 年末に「FIT (再生可能エネルギー固定価格買取制度)」が終了したことにより、家庭に取り付けられた太陽光発電で作った電気は、有利な固定価格で買い取ってもらえなくなった。 2009 年から買い取りが始まり、家庭に設置したものなら 10 年間、事業者が設置したものに対しては 20 年間、買い取られる。 だから今回終了するのは「家庭向け」装置で、家庭の有利な買い取りは終わり始める。

買取価格は年ごとに低下したが、売り始めた年の買取価格が 10 年間だけ維持される。 事業向けと装置が同じであっても同じだ。 つまり、まだ使えて発電していても、優遇価格で一部の会社に買い取ってもらうか、従来通りの電力会社に安い価格で買い取られるかの選択を迫られるのだ。

太陽光発電を「していない人」に負担を強いる電力会社

最低の電力会社の買取価格は「焚き減らし代」と言って、火力発電所の発電が節約された分での買取価格になる。 買取制度があった時にはキロワット当たり 48 円で買い取られていたものが、ほぼ 7 - 8 円に下がる。 ところが電力会社のこの買取価格は、「固定買取制度」のあるときも、電気そのものに対してはその価格でしか買い取っていなかった。 高値の分を誰が負担していたのかと言えば、太陽光発電装置を付けていない人たちだった。 「再生可能エネルギー促進賦課金等」で負担させられていた。 電力会社は負担しないどころか、「焚き減らし代」以外の設備強化や経費管理費用すら請求した。 だから「付けた方が得だ」と考える人以外のすべての電気代を高くして賄われたのだ。

利益優先の電力会社、二酸化炭素対策は後回しへ

おかげで電力会社は自分の発電設備を二酸化炭素を排出しないものへと変換すらしなかった。 それどころか電力会社は発電単価が安いからと、最も二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電を推進していたのだ。 その結果、日本の発電による二酸化炭素排出量は改善されず、最初の基準年であった 1990 年と排出量が同じなのだ。 太陽光発電が普及することで二酸化炭素排出量が減少すると考えていたのは、まったく裏切られていたのだ。

電力会社にとってみれば、売れる電気の単価は変わらない。 ならば単価が安い石炭火力の比率を高めたのだ。 それが二酸化炭素排出量が多いことぐらい知っていながら、それより高い石油火力を埋め、事故を起こして信頼を失った原子力発電分を埋め合わせた。 「再生可能エネルギー買取制度」を総括するとすれば、一時的に太陽光発電等の設備価格を押し下げる効果はあったが、その後には残らなかった。 今や「メガソーラー」と呼ばれる巨大なもの以外は儲からなくなった。 温暖化防止にはならず、人々の電力料金を高くした分だけ可処分所得を下げて貧しくしたと言うべきだろう。

温暖化対策を将来世代に押し付けていいのか?

昨年、若い世代のグレタ・トゥーンベリさんの温暖化対策に対する「異議」を申し立てるスピーチがあった。 「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。 被害を私たちに押し付けていて、恥ずかしくないんでしょうか。」と。 これは特に二酸化炭素排出量を減少させなかった日本のような国に当てはまる。 将来世代に被害を押し付けただけだからだ。 そして「おとぎ話」が「固定買取制度」だったのではないか。 少しばかりの「利益」を与えられて、温暖化防止ができると思い込んで太陽光発電の設置に邁進したのだから、まさに「お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり」だ。 その結果、地球の大気にある二酸化炭素の濃度は高まり続けている。

もう後戻りできる期限は過ぎた?

私は 10 年前の 2008 年に、『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか(扶桑社新書)』という本を出している。 それから 10 年経つ 2018 年以降には、何人かの人から「批判」とも「冷やかし」とも取れるメールをいただいていた。 しかし、その 2018 年までとなる「10 年」というのは、グレタさん自身が言っているのと同じ「後戻りできなくなる期限(ティッピングポイント)」の問題だった。

すなわち、10 年後すぐに死滅するのではない。 ただ温暖化に進んでしまうことを避けることができなくなる期限だ。 では、その期限は過ぎたのだろうか。 おそらく、その可能性が高まっただろう。 世界ではその逆方向の事態も少しは生まれている。 「パリ協定」の締結や、巨大企業の「RE100 (再生可能エネルギーで 100% 賄う)運動」なども進んだ。 それが進展した分だけ、ティッピングポイント到達までの期限は後ろに退いたかもしれない。 しかし、それは世界的な運動であって、日本のような「後ろ向きの国」にとってはそうではない。

未だに温暖化の最大原因である「石炭火力発電所」の建設を国内だけでなく「援助」を通じて海外にも進めてしまっている。 肝心な「買取価格」も、電力会社は「焚き減らし代(発電コストの減った価格)」しか払っていないのだから、いくら人々が再生可能電気を進めても、電力会社自らは進めない。 その結果、電力会社自身は再生可能エネルギーにしないどころか、石炭火力を進めている始末だ。

今の政府や政治体制を変えなければ、絶対に将来世代を守ることはできない。 そのことをグレタさんは明瞭に主張してくれた。 いくら今の政府が美辞麗句を並べても、事実、未来を生きようとする人たちに何の手助けもしていないどころか、防ごうとする努力の妨害しかしていないのだ。 我が家は電気を売った方が儲かると知っていながら、オフグリッドを選択した。 太陽光発電設備を設置しながら売電するのではなく、バッテリーを設置して自給を目指したのだ。 (田中優、Mag2 = 1-19-20)

〈プロフィール〉 田中優(たなか ゆう) : 「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団天然住宅」共同代表。 横浜市立大学、恵泉女学園大学の非常勤講師。 著書(共著含む)に『未来のあたりまえシリーズ 1 - 電気は自給があたりまえ オフグリッドで原発のいらない暮らしへ - (合同出版)』、『放射能下の日本で暮らすには? (筑摩書房)』、『子どもたちの未来を創るエネルギー (子どもの未来社)』、『地宝論 (同)』ほか多数。