レバノン、初のデフォルトへ 首相「国債返済を延期」

【イスタンブール = 木寺もも子】 中東の小国レバノンのディアブ首相は 7 日、まもなく償還期限を迎える 12 億ドル(約 1,260 億円)の外貨建て国債について、支払いを延期すると表明した。 経済の低迷や放漫な歳出で長らく財政危機に陥っていた。 政府は債務再編による財政再建を目指すが、すでに破綻寸前の経済や政治混乱がさらに悪化する恐れがある。 返済期限は 9 日に迫っており、初めての債務不履行(デフォルト)となる。 ディアブ氏は 7 日夜のテレビ演説で「これ以上の経済の消耗を防ぎ、国益を守るためには返済を延期するしかない」と述べた。 債務再編に向けてすべての債権者との交渉に臨むという。

ディアブ氏は、レバノンの政府債務が 900 億ドルと国内総生産 (GDP) の 170% に達し、2020 年中に計 46 億ドルの債務と利息が返済期限を迎えると明らかにした。 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の逃亡先であるレバノンは 1990 年まで続いた内戦後、復興のため多額の資金を外国から借り入れた。 18 の宗派が共存するため議席や政治ポストなどを分け合う仕組みを取り入れると、各派閥が抱える公的部門が肥大化し、財政赤字も拡大した。 借金を補ってきた経済成長も、2011 年から始まった隣国のシリア内戦や近年の原油安による湾岸経済の低迷などで失速し、歳入の半分を利払いに費やす状態に陥った。 18 年の経済成長率は 0.2% だった。

デフォルトは時間の問題だとみられ、ドルに対して固定している通貨は 19 年 9 月以降、闇市場の実勢レートで半分ほどになった。 資金不足から銀行は預金者に対して引き出しを制限し、多くの企業などが休業に追い込まれる状況が続く。 政府は無理に返済すれば破綻寸前の国民経済がもたないと判断した。 もっともデフォルトになれば外国からの資金調達はさらに難しくなる。 大手銀バンク・アウディのマルワン・バラカット・チーフエコノミストは「歳出の段階的削減や徴税機能の強化、政府財産の売却などの抜本的な改革を含む債務再編案が必要だ」と指摘する。 約 3 カ月の政治空白を経て 1 月に発足したばかりのディアブ政権が指導力を発揮できるかは不透明だ。

レバノンではイラン革命防衛隊との関係が深いイスラム教シーア派政党ヒズボラが政権に参画していることで、欧米などから支援も受けにくい。 ヒズボラは国際通貨基金 (IMF) への支援要請に反対の立場だ。 一方、経済規模の小さいレバノンのデフォルトによる国際金融市場への影響は限定的だとの見方が多い。 国債の大半は国内銀行が保有する。 レバノン銀への外国銀行の与信残高も 40 億ドル程度と小規模にとどまる。 ただ、新型コロナウイルス感染拡大で新興国から投機マネーを引き揚げる動きが出ている。 レバノンのデフォルトが投資家心理に働き、慢性的な経常赤字や財政赤字を抱える他の新興国にも影響を与える恐れがある。 (nikkei = 3-8-20)


韓国籍、年 3 万人超が放棄 でも愛国心は強まっている?

国籍を離脱する人の数が、新たに取得する人を大きく上回っている韓国。 識者に背景を聞きました。

韓国・漢城大学教授 呉静恩氏

- - 2018 年に韓国籍を取った人は約 1 万 4 千人、韓国籍でなくなった人は約 3 万 3 千人です。 「国を捨てる人」が多いのでしょうか?

「単純に捨てたとは言えないところが難しい。 二つの理由がある。 一つは複数国籍を持つ移民 2 世や 3 世の存在だ。 韓国の人口約 5,100 万に対し、国外に出た移民が約 750 万人もいる。 外国生まれの 2 世や 3 世は外国籍となるが、その国が複数国籍を認めていれば韓国籍も持つ。」

「彼らの多くが、経済が発展した韓国で働きたいと考えている。 ただ、韓国籍を持つと自覚しないままやって来て、兵役義務がある、と知らされる男性の例が相次いだ。 そこで兵役を避けるため韓国籍から離れている。」

- - 外国から韓国への動きなんですね。 逆に外国に移って韓国籍でなくなる人も多いのですか。

「かつては『自分たちは単一民族』であり、移民でも国を愛するなら韓国籍であるべきだと考えた。 ところが今は、移住先と韓国の架け橋になって経済に役立つことこそが愛国で、外国籍となっても国を捨てたのではないと考えるようになっている。」

「貧しかったころに移住して韓国籍でなくなったが、最期は豊かになった祖国で迎えたいという人も増えている。 韓国政府は 11 年、65 歳以上の移民が韓国に戻って韓国籍を取っても、移住先の国籍を放棄しなくていいように国籍法を改め、帰国しやすい環境を整えた。」

- - こうして人の動きをみると経済がキーワードですね。 韓国は 1987 年の民主化、翌年のソウル五輪を経て経済成長を続けます。

「独裁のくびきから解かれて労使紛争が頻発し、賃金が上がった。 93 年から日本の技能実習制度と似た産業研修生制度を、2004 年からは雇用許可制度を導入。 外国人労働者が身近になった。 また 90 年代には農漁村の独身男性と外国人女性の結婚をあっせんする業者が現れ、国際結婚も増え始めた。」

- - ちょうど冷戦終結とグローバル化の進展という時期にも重なります。 人の移動が活発になり、制度を変える必要が生じたのですね。

「国際環境の変化を後追いする形とはいえ、国籍でも労働でも韓国は政策を大胆に変える。 そこが日本との違いで、韓国社会が日本より少し開放的な背景ではないか。」 (聞き手・神谷毅、asahi = 2-26-20)

オ・ジョンウン 1974 年ソウル生まれ。 国際移住機関 (IOM) 移民政策研究院の研究委員を務めたこともある移民問題の専門家。 社会統合などを議論する政府組織の諮問委員なども務める。

〈編者注〉 上記説明には、750 万人もいるとされる海外同胞の、ゆくゆく "本国に帰還したいとの本気度" はいかほどかのデータの裏付けがありません。 現実には、かの地で生活基盤が確立し、子や孫たちが馴染んだ、かの地を受け入れたら、実際に帰還する人々の数は限られるのではないでしょうか? むしろ、この傾向 = 自ら住みたい場所に住む = は、日本を含む全世界的な傾向となるような気がします。 これは地方自治体ベースの問題だけではなく、国自体も、その魅力を全世界に向けて発信する時代になるのではないかと思えてなりません。


崖下の半地下に潜む貧困 映画「パラサイト」が描く韓国

昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が 9 日(日本時間 10 日)、米アカデミー賞の作品賞や国際映画賞(旧・外国語映画賞)などを獲得した。 日本でも全国で公開中だ。 物語で描かれた現地の住宅を訪ねると、韓国が抱える格差と社会の歩みが垣間見えた。

ソウルの半地下住宅で暮らす貧しい一家が裕福な家庭に寄生(パラサイト)することで起こる出来事を描いたポン・ジュノ監督の作品。 韓国が抱える経済格差や職業差別、受験戦争などが指摘されている。 昨年のカンヌ国際映画祭で韓国映画として初めて最高賞パルムドールを獲得。 韓国では昨年の公開以降 1 千万人を動員した。 日本でも全国で上映中。

浴室なし 雨降れば浸水

ソウル南部の冠岳区三聖洞。 高層マンションが立つ小高い丘の崖下に、3 階建ての集合住宅が並んでいた。1 階部分は空間のおよそ半分が地面より低い半地下の部屋になっており、雨が降ると屋内が水浸しになるところもある。 年金暮らしのソン・ソングンさん (82) は玄関から階段を七つ下りた部屋に、約 30 年前から住む。 約 30 平方メートルの 2LDJ に浴室はない。 道路側にある窓は下枠部分がちょうど地面と同じ高さで、室内は日中も薄暗い。 「空気もよくないし、好きで住むわけがない。 金がないんだ。」

かつては日雇い工として月 200 万ウォン(1 ウォン = 0.09 円、約 18 万円)を稼ぐこともあったが、今は月約 15 万ウォンの年金が頼りだ。 妻が病気で入院しており、月約 300 万ウォンの治療費を、別居する子供 5 人と協力して工面する。 生活は苦しく、たまに行くサウナと「風にあたるのが楽しみ」という。 近くの不動産業者によると、一帯に住む約 1 千世帯のうち、200 世帯ほどが半地下住宅や、朽ちかけた戸建て住宅で暮らす。 住人には高齢者や職のない独居の人が多いという。

韓国の賃貸住宅では、入居者が毎月の家賃を払う代わりに家主にまとまった「保証金」を預け、退去時に全額を返してもらう制度がある。 家主は入居者の保証金を運用して利益を上げる。 ソンさんが払った当時の保証金は 3 千万ウォン。 単純に比較はできないが、近くの高層マンションが約 2 億ウォンなのを見ても、破格の安さだったのは間違いない。 韓国統計庁によると、2015 年に半地下を含む全国の地下住宅の世帯数は、全体の約 2% に当たる 36 万世帯。 その割合はソウルだと約 6% にのぼり、22 万世帯が暮らしている。

「パラサイト」に登場したソウル中部、麻浦区の雑貨店近くに住むキム・ヨンナムさん (6) の部屋も半地下住宅。 約 15 年前に家族 4 人で転居してきた。 約 25 平方メートルの部屋の保証金は当時で 1 億 3 千万ウォン。 美容師と看護師の仕事をかけ持ちしてためた金だった。 夫 (58) は体調を崩して仕事ができず、キムさんは転職した福祉関係の仕事で家計を支える。 「うちはましな方だけれど、半地下住宅は貧しさの象徴ではある」と話す。

もとは防空壕、カフェに転用も

韓国に半地下の部屋ができたのは、北朝鮮との緊張関係が影響している。 1968 年に北朝鮮による韓国大統領府への襲撃未遂事件が発生。 韓国は 70 年代、南北の全面戦争を想定し、国をあげて様々なインフラ整備を進めた。 防空壕が造られ、住宅にも地下室が設置されていった。 80 年代にかけての経済成長を経て、都市部で住宅不足が深刻化したこともあり、韓国メディアによると、政府は地下部分の貸し出しを認めるようになった。 地上階の部屋より廉価なため、長く低所得者層に利用されてきた。

一方で、近年は学生や若者の入居のほか、店舗としての活用も登場している。 35 年前から韓国に住んでいる西京大学の泉千春副教授(韓国文化)によると、半地下住宅は韓国社会で「質素さ」の象徴としても受け止められているという。 泉さんも「住もうと考えたことがあった」と言う。 若者が集まる梨泰院(イテウォン)などの観光地では、建物の半地下部分を生かしたカフェや雑貨店が人気だ。 手頃な賃貸料と、路面店にはない特徴的な造りが理由という。 泉さんは「半地下住宅は韓国にとって現在もリアルかつローカルな題材だ。 それが映し出す社会の格差は、世界的に共通するテーマでもある。」と話す。 (ソウル = 清水大輔、asahi = 2-10-20)


米国でインフルエンザ猛威 死者 1 万 2,000 人

【ロサンゼルス = 上塚真由】 中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスが猛威を振るう中、米国ではインフルエンザが流行している。 米疫病対策センター (CDC) は 7 日、最新の推計値を発表。 2019 - 20 年のシーズンで患者数は 2,200 万人に上ったとし、さらに拡大する恐れが指摘されている。

CDC の推計値では、1 日までの 1 週間で患者数は 300 万人増加し、昨年10月以降の累計で 2,200 万人となった。 インフルエンザのために 21 万人が入院し、死者数は 1 万 2 千人に達したとしている。 今年は子供の症状が深刻化するケースが多く、すでに小児の死者数は 78 人となった。 米国ではインフルエンザが原因で毎年少なくとも 1 万 2 千人以上が死亡。 とりわけ感染が深刻だった 17 - 18 年のシーズンには患者数は 4,500 万人に上り、6 万 1 千人が死亡した。 インフルエンザ感染は例年 10 月ごろに始まり、5 月ごろまで続く。米国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID) は、19 - 20 年は過去 10 年で最悪規模になる可能性があると予測している。 (sankei = 2-8-20)


日本人シェフ、フランスで初の三つ星獲得 ミシュラン

星の数でレストランを格付けする「ミシュランガイド」の 2020 年フランス版が 27 日、パリで発表され、小林圭さん (42) がパリでオーナーシェフを務める「KEI (ケイ)」が最高位の三つ星を獲得した。 本場フランスで日本人シェフが三つ星と評価されたのは初めて。 小林さんは長野県出身で、ミシュランによると、父親は懐石料理の料理人という。 長野県や東京都のフランス料理店で働いた後、99 年に渡仏し各地の有名レストランで修業。 03 年からは仏料理の巨匠、アラン・デュカス氏がパリに構えた店で副料理長を務めた。

自身の店「KEI」は 11 年にオープン。 12 年に一つ星を獲得し、17 年以降は二つ星に格付けされていた。 今年はミシュランに「風味を調和させる名手で、繊細なタッチに日本の影響が表れており、彼の仕事は完璧の域に達している」と評価された。 小林さんは 27 日、パリで開かれた 20 年版ガイドの発表会でフランス語であいさつ。 やや緊張した様子で「とても驚いた。 私は外国人。 たくさんの日本人(シェフ)を受け入れてくれて、ありがとうございます。」と語った。 (パリ = 疋田多揚、asahi = 1-28-20)

◇ ◇ ◇

仏ポール・ボキューズ、三つ星失う ミシュランガイド

仏料理界の重鎮だった故ポール・ボキューズ氏がシェフを務めた仏中部リヨン近郊の高級レストランが今月末に刊行されるミシュランガイドで、三つ星を失うことになった。 1965 年以来、三つ星を維持してきた老舗だけにフランスでは「評価は不当か?」などと議論が起きている。 AFP 通信によると、ミシュランガイドが 16 日、最高ランクの三つ星から星を一つ落とすことを店に告げた。 「質は素晴らしいままだが、もはや三つ星のレベルではない」と評価されたという。 同店は 17 日、「衝撃を受けたが、我々が決して失いたくないものが一つある。 ポール氏の魂だ」との声明を出した。

仏メディアは「悲痛な出来事だ。 若い世代のガイドの調査員は、ボキューズ氏の世代を消し去りたいのだろう。」などと仏料理界の驚きを伝えた。 一方、AFP 通信は「ポール氏が(18 年に)亡くなる前から、一部の批評家の間では三つ星に値せず、採点ができない(名誉的な)カテゴリーに位置づけられていた」と指摘している。 ミシュランガイドの評価は毎年反響を呼び、昨年には三つ星を失ったシェフが、理由を明らかにするよう裁判を起こしたほか、16 年には、ガイドが出版される前日に命を絶った三つ星シェフもいた。 (パリ = 疋田多揚、asahi = 1-18-20)


「迫害行為防止を」国際司法裁、ミャンマーに緊急的命令

ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャに「ジェノサイド(集団殺害)」行為をしたとして、ミャンマー政府が提訴された問題で、国際司法裁判所 (ICJ) は 23 日、同政府がロヒンギャのジェノサイドにつながる迫害行為を防ぐ措置を取るよう、緊急的な命令を下した。 この問題について国際司法の場で初めて示された判断で、同政府の対応が注目される。 ICJ が命じたのは「仮保全措置」。 権利損害が「切迫し、重大な危機」にあるとされる場合にとられる命令で、日本の裁判で言えば「仮処分」にあたる。 オランダ・ハーグの ICJ 本部で言い渡された。

ICJ は、過去の国連人権理事会の報告書などももとに、ロヒンギャが極めて弱い立場にあるとした上で、ミャンマー政府がロヒンギャ迫害のあらゆる防止策を取るよう命令。 その内容について、まず 4 カ月以内に報告し、その後も判決が出るまでの間、6 カ月ごとに報告するよう命じた。 今回の措置は、イスラム諸国の「イスラム協力機構 (OIC)」を代表する形で、アフリカのガンビアが昨年 11 月、ミャンマー政府によるロヒンギャ迫害が条約で禁じられる「ジェノサイド」だとして提訴した裁判に基づくものだ。

12 月に ICJ で開かれた口頭弁論でガンビア側は、掃討作戦中に大量殺人やレイプ、放火などで「ロヒンギャ全体または一部を破壊しようとした」と主張。 そうした迫害が続いているとして ICJ にひとまず緊急的な措置も要求した。 一方、ミャンマー側は、アウンサンスーチー国家顧問が自ら法廷に立ち、ロヒンギャが難民になったことは「国内の武力衝突の結果」として、ジェノサイド行為を全面否定。 ICJ の介入は状況を悪化させるとして、提訴の却下を求めている。

今回、ICJ はジェノサイドそのものの判断はしなかったが、ガンビアの主張をおおむね認めた形だ。 ジェノサイドにあたるか否かの判決が出るには数年かかるとみられる。 金沢大学の稲角光恵教授(国際刑事法)は「ジェノサイドの認定はハードルが高い。 仮保全措置命令をミャンマーが守るかが注目される。 ICJ は自ら定期的な報告を命令に加えた。 ミャンマーには国際社会の厳しい視線が継続的に向けられることになる。」と話した。 (ヤンゴン = 染田屋竜太、ハーグ = 津阪直樹)

「私たちに国籍を」

「(ミャンマーを訴えた)ガンビアに配慮しすぎだ。 ジェノサイドなどあるはずないのに、それをにおわせるような命令だ。」 ミャンマー政府関係者は ICJ の決定に強い不満を漏らしながらも、「国際社会からの厳しい批判に抗するためにも、可能な範囲で妥協することも選択肢の一つだ」と苦悩をにじませた。

ロヒンギャの思いはどうなのか。 迫害を逃れたロヒンギャの多くが住む隣国バングラデシュ南東部コックスバザールのキャンプ。 父と弟をミャンマー国軍とみられる兵士に殺されたというアフマド・フサインさん (29) は「二度と殺害が起こらないよう、ICJ がミャンマー政府に命じたのなら、帰るための一歩になるかもしれない」と語った。 キャンプ内の竹とビニールでつくった家に住み、今後に希望が持てない。 「ミャンマー政府が事実を認め、私たちに国籍を与えない限り、同じことが繰り返される」とも話した。

ミャンマーの対応を批判してきた国際人権団体などは今回の ICJ の判断を歓迎する。 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「今回の決定は、ミャンマーに対してこれ以上、彼らの残虐行為に我慢できないというメッセージを送った。 ミャンマーは決定に従って継続する暴力をやめ、証拠破壊を止めるなど、すぐに行動を始めるべきだ。」とする声明を発表した。 国際人権 NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ (HRW) も「ICJ の命令は、さらなる残虐行為がなされることを止めるための画期的な一歩だ」とし、「関係する政府や国連機関はいまこそ、この命令が実行にうつされるよう確実に行動すべきだ」と表明した。

軍の厳罰が焦点

今回の ICJ の措置は、どんな影響を及ぼすのか。 ミャンマーは、ロヒンギャへのジェノサイド行為はないと全面否定している。 ロヒンギャ問題は「内政問題だ」として、外部からの介入も拒んできた。 とはいえ、ICJ が仮保全措置として命じた「ジェノサイドにつながるあらゆる行為の防止措置」を取ることをミャンマーが拒めば、今後の ICJ での裁判に不利になる可能性がある。 国際世論の集中砲火を浴びるのも必至だ。 ミャンマーがもっとも恐れているとみられる、欧米からの経済制裁の復活の可能性も出かねない。

ミャンマーが取り得る選択肢は多くはないとみられるが、国内の裁判でロヒンギャ殺害などへの関与者を裁くことで打開を目指す可能性はある。 焦点となるのは、国軍幹部への厳しい処罰ができるかどうかだ。 国軍は 2017 年、自らの調査でロヒンギャへの迫害は「なかった」と結論づけた。 その後、ロヒンギャ殺害への兵士の関与が判明したが、軍事法廷で懲役 10 年の刑を受けた兵士らを 1 年未満で釈放。 国際社会からの信用を失った。

また、仏教徒が約 9 割を占めるミャンマーでは、ロヒンギャは「バングラデシュからの移民」とみられており、その権利擁護に反発する国民は多い。 11 月には総選挙も予定されており、アウンサンスーチー国家顧問が率いる与党・国民民主連盟 (NLD) 政権がどこまでロヒンギャ問題に踏み込めるかは見通せない。 (asahi = 1-23-20)

難民問題、なお不透明

難民問題の解決につながるかどうかも不明だ。 ミャンマーと、ロヒンギャ難民を受け入れているバングラデシュの両政府は、17 年 11 月に難民帰還で合意し、「帰還を始める」と発表した。 だが、政府の用意したルートで帰還した難民はいまだいない。 「帰還しても国籍がもらえる保証がなく、安全も確かではない」などの理由からだ。 国連機関の幹部は「ICJ の決定に従うのは当然として、それだけで難民帰還が進むわけではない。 ミャンマー側が難民受け入れの態勢を十分にとることが必要だ。」と語った。

ロヒンギャ : 仏教徒が 9 割近いミャンマーで西部に暮らす少数派イスラム教徒。 「バングラデシュ移民」とみなされ、多くが国籍を持てないなど差別されてきた。 2017 年 8 月以降だけで、治安部隊に村が焼かれるなどして約 70 万人が難民になった。

ロヒンギャ問題の経緯
2017 年8 月ロヒンギャ武装勢力による襲撃事件。 政府が掃討作戦を開始。
11 月国軍が「ロヒンギャへの迫害はなかった」と調査をまとめる。
18 年4 月ロヒンギャ殺害の罪で国軍兵士ら 7 人を懲役刑に。 1 年未満で釈放。
7 月ミャンマー政府による独立調査委員会設立を発表。 大島賢三・元国連大使らがメンバーに。
8 月国連人権理事会調査団がジェノサイドの疑いに言及した報告書を公表。 ミャンマー政府は否定。
19 年11 月ガンビアがミャンマーを国際司法裁判所 (ICJ) に提訴
12 月ICJ での口頭弁論。 アウンサンスーチー国家顧問が出廷。
20 年1 月ミャンマー政府の独立調査委が最終報告書を提出。


マニラ近郊のタール火山噴火 住民に避難指示、空の便にも影響

フィリピンの首都マニラ近郊で 12 日午後に火山が噴火し、当局が近隣住民らに避難を指示した。 噴火したのはルソン島にあるタール火山で、マニラの南方約 60 キロに位置している。 3 つの町に避難指示が出され、マニラ国際空港の発着便は全て運航が停止された。 フィリピン火山地震研究所によると、タール火山の活動は急速に活発化した。 噴煙は火口から 10 - 14 キロの高さに達し、マニラ北東のケソン市にも火山灰が降った。 同研究所は数時間から数日のうちにもさらに爆発的噴火が起きる恐れがあるとして、警戒レベルを引き上げた。 国営フィリピン通信は、小規模な地震も発生していると伝えた。 (CNN = 1-13-20)


台湾総統選、蔡英文氏が再選 一国二制度拒否訴えに支持

台湾総統選は 11 日投開票され、中国との統一を拒否する与党民進党の現職、蔡英文(ツァイインウェン)総統 (63) が、対中融和路線の野党国民党の韓国瑜(ハンクオユイ)氏 (62) らを大差で破り再選した。 抗議デモが続く香港情勢を追い風に、蔡氏は「一国二制度を拒否する」と訴え支持を集めた。 同日夜、韓氏は「蔡氏に電話をし祝福を伝えた」と述べ、敗北を宣言した。 日本時間午後 9 時半過ぎの集計で蔡氏の得票は 800 万票を超え、総統選の最多得票を記録。 韓氏と小政党・親民党の宋楚瑜(ソンチューユイ)主席 (77) の 2 人の候補を大きく引き離している。

蔡政権が発足した 2016 年以降、中国は台湾を国際会議から排除したり、台湾と外交関係を結んでいた国々を取り込んで断交に追い込んだりした。 こうした圧力に対し、台湾側は米国との関係強化を背景に抵抗してきた。 今回の選挙は中国の対台湾政策が裏目に出た形といえる。 5 月に始まる蔡政権 2 期目の 4 年間も、中国側の姿勢が変わらなければ中台間の緊張が続くことになりそうだ。

選挙戦は、台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」原則を主張して台湾統一を迫る中国との距離感が争点となった。 蔡氏の支持率は昨年前半まで低迷していたが、昨年 6 月に香港の抗議デモが本格化して以降、中国に対する台湾世論の警戒感の高まりで急回復。 香港ですでに実施され、中国側が台湾への適用を目指す「一国二制度」について、蔡氏は「台湾が受け入れることはあり得ない」、「台湾の主権を守ろう」と主張し、若者を中心に支持を広げた。 一方の韓氏は、蔡政権下で中台関係が冷え込み、中国人観光客が減ったことなどを批判。 「中台関係を改善して経済を活性化させよう」と訴えた。 だが、そうした親中姿勢が支持拡大を阻む要因ともなった。

同時に実施された立法院(国会に相当、定数 113)の選挙では、民進党は第 1 党の地位を維持し、過半数を占める勢いとなっている。 (台北 = 西本秀、asahi = 1-11-20)


ミサイル 12 発が着弾 イラン攻撃、軽度の損害 - エスパー米国防長官

【ワシントン】 エスパー米国防長官は 8 日、国防総省で記者団に、イランが少なくとも 3 カ所から短距離弾道ミサイル 16 発を発射し、うち 12 発がイラクにある 2 カ所の駐留米軍基地に着弾したと語った。 ロイター通信が報じた。 エスパー氏は、バグダッド西方のアサド空軍基地に少なくとも 11 発、イラク北部のクルド人自治区の基地には少なくとも 1 発が着弾したと説明。 テントや駐機場などがミサイルの直撃を受けたほか、ヘリコプター 1 機が損傷したが、「大規模な損害はなかった」と語った。 時事通信が入手した衛星写真では、ヘリコプターの駐機場にある建物などが破壊されていた。 (jiji = 1-9-20)


カンボジアで建設中の 7 階建てビル倒壊、作業員ら 36 人死亡 … 開発ラッシュ

【バンコク = 田原徳容】 カンボジア南部ケップ州で建設中のビルが倒壊し、作業員らが下敷きになる事故があり、州当局者は 5 日、死者が 36 人に上ったと明らかにした。 さらに増える恐れがある。 ビルは 7 階建てで、森の中の宿泊施設として建設中だったが、3 日に突然崩れた。 カンボジア人の男女計数十人がビル内に取り残され、これまでに 20 人以上が救出された。当局は、ビル所有者のカンボジア人夫婦を拘束し、事情を聞いている。 カンボジア南部では、中国人観光客を当て込んだリゾート開発でビルの建設ラッシュが続いている。 昨年 6 月にも南部シアヌークビル州で建設中のビルが倒壊し、20 人以上が死亡した。 (yomiuri = 1-5-20)


豪、火災地域の観光客に 48 時間以内の避難勧告 今週末には熱波も

森林火災が猛威を振るっているオーストラリアの沿岸地域で 2 日、当局が多数の観光客に対し、48 時間以内に避難するよう勧告した。 今週末に熱波が予想されており、火災はさらに広がるとみられている。 ニューサウスウェールズ州の地方消防局は 2 日朝、同州ベイトマンズベイの観光スポットから南東部の美しい海岸沿い、隣接するビクトリア州までの約 200 キロの地域を「観光客退去ゾーン」に指定したと発表。 ビクトリア州当局も、犠牲者がさらに増えることを防ぐため、火災の危険がある地域で避難勧告を行っている。

大みそかには、オーストラリア南東部一帯に火災が広がり、沿岸部の町が火災に囲まれて観光客らが立ち往生したほか、少なくとも 8 人が死亡。 山火事発生以来 1 か月がたつ中で、1 日の死者数としては最多の犠牲者が出た。 山火事が多い季節でも最悪クラスの被害が出ている今回の火災で、これまでに死亡した人は少なくとも 18 人になった。 今月 4 日には新たに熱波の予報が出ており、全国で突風が吹き荒れ、気温は 40 度を超えると予想されていることから、当局は火災が広がっている地域で観光客に対して、4 日までに避難するよう勧告している。 今週末は、火災にとって大みそかと同程度の危険な気象条件がそろうと当局者は指摘している。 (Holly Robertson、AFP = 1-2-20)


インドで「はえぬき」 東北の米、アジアで勝負

私たちの食卓に並ぶ東北の米が今、世界に続々と進出している。 人口減やブランド米の「乱立」など、国内市場の競争が激化する中、人口増が著しい新興国市場での需要を見込んだり、海外進出をきっかけに知名度向上を目指したりという狙いがある。 コメ卸売業「アスク(山形市)」は 2014 年から、インド東部の西ベンガル地方で山形県産品種「はえぬき」の試験栽培を始めた。 市場に出せる品質に達したとして、来年から本格生産と現地での販売に乗り出す。 すでに現地の日本食レストランなどと契約を結び、来年は 150 - 200 トンを卸すことが決まっている。 今後は生産量を増やし、販路を広げる考えだ。

アスクのインド進出は、取引先の飲食業者が現地で和食店を開いたのがきっかけだ。 農業大国のインドは米の輸入に厳しい規制があり、日本米の入手が難しいと聞いた。 現地で日本米を作れば、需要が見込めると進出を決めた。 持ち込んだ日本米 5 種類ほどの中から、現地の気候に合い、収穫量が最も安定していた「はえぬき」を選んだ。 ただ、現地では農家の考え方の違いに苦労も。 日本では効率よく、安定した品質の米を作るため、1平方メートルあたりの苗の数を決めているが、現地の農家にはなかなか理解されなかったという。

それでも、インド人の農業指導者を山形県に招いて研修するなど、粘り強く「日本流」の農業を伝え続けた。 その結果、面積あたりの種もみの収穫量は当初の 3 倍に。 味も「海外生産のほかの日本米と比べれば、どこよりもおいしい(アスク現地法人の河合龍太社長)」という水準まで向上し、現地の農家も日本流を採り入れるようになった。 インドの人口は約 13 億 5 千万人。 27 年ごろには中国を抜いて世界一になる見込みだ。 アスクの河合克行社長は「日本国内の人口が減っていく中、インドという大きな市場は魅力的だ。 まだスタートしたばかりだが、環境面に配慮し、生産を拡大していきたい。」と意気込む。

新たなブランド米が次々に登場し、「戦国時代」とも評される米の国内市場。 競争の激しい国内ではなく、海外に進出してブランド価値を高めようという動きもある。 青森県の下北半島を中心に作られている「ほっかりん」だ。 冷涼な気候でも栽培できるよう開発され、モチモチで食味の良さが特徴だ。 しかし、本格的な栽培が始まったのは 12 年度からで、国内での知名度もまだまだだ。

そんな中、ほっかりんは昨年度、ベトナムに 6 トン輸出された。 さらに今年度はシンガポールにも 6 トンを輸出。 いずれも現地の日本食レストランなどで使われるという。 なぜ海外なのか。輸出に関わった青森県むつ市の担当者は「国内市場は競争が厳しく、なかなか勝ち目がないのが実情。 海外に輸出し、ほっかりんの知名度を上げることでブランド価値も高めたい。」と狙いを話す。 (宮谷由枝、asahi = 12-29-19)


クリスマスなのに … ベネチアまた浸水、サンマルコ広場も

「水の都」として知られる世界遺産のイタリア・ベネチアが、観光客の多いクリスマスシーズンに高潮で浸水する被害を受けている。 ベネチア市によると、23 日午前 9 時半(日本時間同日午後 5 時半)に 143 センチの高潮を記録。 24 日午前(日本時間同日午後)の満潮時にも最大 140 センチに達すると予測している。

ベネチアの高潮は 11 月 12 日に観測史上 2 位となる 187 センチに達し、サンマルコ広場などの観光地がある市中心部の歴史地区の大半が水没した。 今回の高潮被害は、11 月中旬に次ぐ規模となっている。 同国メディアによると、市中心部では土産物店やレストランが浸水し、観光客はスーツケースを抱えて歩いた。 市は、25 日にも最大 115 センチと予測しており、住民の生活や観光業に大きな影響が出そうだ。 (ローマ = 河原田慎一、asahi = 12-24-19)

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「水の都」ベネチア、高潮で浸水 サンマルコ寺院も被害

「水の都」として知られ、世界遺産に登録されているイタリア・ベネチアの歴史地区が 12 日、高潮の被害を受けて浸水した。 中心部にある観光名所のサンマルコ広場は一面、数十センチの高さまで浸水。 観光客は水上の渡し板を伝って移動する事態になっている。 ベネチア市によると、12 日午後 10 時 50 分(日本時間 13 日午前 6 時 50 分)に、187 センチの高潮を記録。 1966 年に記録した 194 センチに次ぐ高さとなった。 市の高潮対策センターによると、110 センチを超えると住宅に浸水被害が出るといい、12 日朝には市内に高潮警報のサイレンが響き渡った。

イタリアは低気圧の影響でここ数日、全国的に雨が降り続いていた。 ベネチアでは秋から冬にかけて、シロッコと呼ばれる南風の影響で満潮時に高潮が起こりやすい。 これに大雨が重なって被害が拡大した。 最も標高の低いところにあるサンマルコ寺院は、12 日の高潮で深刻な被害を受けた。 伊紙レプブリカ(電子版)によると、寺院入り口近くの柱廊では高さ 70 センチまで浸水し、大理石の柱や建物のれんがが被害を受けた。 「1,200 年の歴史で 6 度目」という深刻な被害で、同寺院を担当する国の財物管理官は「水が引いた後も残る塩害が心配だ」と懸念する。

高潮は、世界的な気候変動による海面上昇の影響で、発生の頻度が増している。 ベネチアでは昨年 10 月にも 156 センチを記録した。 110 センチを超える高潮は、80 年代には年平均 2.6 回だったが、2008 - 17 年の 10 年間では年平均 8.2 回に増えた。 ベネチアはもともと潟に木の杭を打ち込んでつくられた街で、地盤沈下も浸水被害を深刻化させる原因となっている。 40 年前に約 10 万人だった旧市街の人口は、約 5 万人に半減した。

ベネチアの高潮対策として、国は「モーゼ」と呼ばれる巨大水門の建設を進めている。 高潮の予報を受けて、海中に沈めた巨大な扉を起き上がらせ、港の入り口を塞いで潟の水位上昇を防ぐ計画だ。 総工費約 55 億ユーロ(約 6,500 億円)の国家プロジェクトで、水門自体は昨年に完成した。 だが供用開始は 21 年からで、今回の高潮は防げなかった。 世界に名だたる観光都市は、水没の危機にさらされている。 (ローマ = 河原田慎一、asahi = 11-13-19)


フィンランド新首相に 34 歳女性 現職で世界最年少か

北欧フィンランドの新首相に、サンナ・マリン交通・通信相 (34) が就任する見通しになった。 ロイター通信などによると、同国史上最年少の首相となり、現職の世界の指導者としても最年少とみられる。 新首相は、12 日に始まる欧州連合 (EU) 首脳会議に間に合うように国会で承認される予定。 マリン氏は女性のパートナーを持つ母親の下で育ち、27 歳で工業都市タンペレの市議会議長に就任した。 ここで注目を集め、2015 年から社会民主党の国会議員を務めてきた。

フィンランドでは同党が国会第 1 党で、ほかの 4 党と連立政権を組んでいる。 大規模なストへの対応をめぐって同党党首のリンネ首相が辞意を表明。 今月 8 日に党内の投票でマリン氏が後任に選ばれ、首相に就任する見通しとなった。 5 党は今後も、連立の枠組みを維持することで合意している。 来年夏に党首になる予定のマリン氏を含め 5 党の党首は全員女性で、うち 4 人が 35 歳以下。このうち、中央党のカトリ・クルムニ党首 (32) は財務相に就任する見通しだ。 世界の若手指導者にはニュージーランドのアーダーン首相 (39)、ウクライナのホンチャルク首相 (35) らがいる。 (ロンドン = 下司佳代子、asahi = 12-10-19)


NY 株、一時 400 ドル下落 トランプ大統領の発言受け

3 日のニューヨーク株式市場は、米中通商協議の合意が先送りされかねないとの懸念から、主要企業でつくるダウ工業株平均が大幅続落し、前日からの下げ幅は一時、400 ドルを超えた。 この流れを受けて、4 日午前の東京株式市場でも日経平均株価が取引開始直後から下落し、一時 330 円を超す下げ幅となった。

トランプ米大統領は 3 日、米中合意について「選挙後まで待つという考え方も、ある意味では好ましい」などと記者団に語り、来年 11 月の米大統領選後に先送りする可能性を示唆。 「期限は設けていない」とも述べた。 米中摩擦が長期化しかねないとの懸念が強まり、アップルやキャタピラー、インテルなど中国ビジネスに関わりの深い銘柄が大きく売られた。 終値は前日比 280.23 ドル (1.01%) 安い 2 万 7,502.81 ドル。

ダウ平均は 11 月 27 日に最高値を更新していたが、米中協議の先行きが見通しづらくなっていることや、米製造業の景況感の悪化を受け、投資家が慎重姿勢に転じている。 4 日の東京外国為替市場でも、米中協議の先行きへの警戒感から、安全資産とされる円を買う動きが出た。 円相場は対ドルで一時、前日夕より 60 銭ほど円高ドル安の 1 ドル = 108 円 40 銭台をつける場面もあった。 日経平均株価の 4 日午前の終値は、前日終値より 292 円 1 銭安い 2 万 3,087 円 80 銭。

大和証券の小林俊介氏は「最近の株高は米中摩擦がなければ経済は回復するという期待を織り込んでいた。 米国が中国に大きく譲歩できないことを明確にすれば、さらに株価は落ち込む可能性がある」としている。 (江渕崇 = ニューヨーク、箱谷真司、asahi = 12-4-19)

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NY ダウが連日の最高値更新 米経済に強気、円安傾向も

5 日のニューヨーク株式市場は、米景気の底堅さを示す経済指標や米中通商協議の進展への期待感を手がかりに、主要企業でつくるダウ工業株平均が続伸し、2 日連続で史上最高値を更新した。 終値は前日比 30.52 ドル (0.11%) 高い 2 万 7,492.63 ドルだった。 ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数もわずかに上昇。 同 1.48 ポイント (0.02%) 高い 8,434.68 で引け、やはり史上最高値を更新した。

米サプライ管理協会 (ISM) が 5 日発表した 10 月の米非製造業の景況感を表す指数は 54.7 と前月より 2.1 ポイント改善。 市場予想も上回り、米景気後退への懸念が和らいだ。 米中通商協議をめぐる「第 1 段階の合意」に向け、米国側が発動済みの制裁関税の一部解除を検討しているとの報道もあり、摩擦緩和への期待も高まった。 米経済の先行きに強気の見方が出たことから、米長期金利が上昇。 外国為替市場ではドルを買って円を売る動きが強まり、円相場は 1 ドル = 109 円台前半まで円安ドル高が進んだ。 午後 5 時(日本時間 6 日午前 7 時)時点では、1 ドル = 109 円 12 - 22 銭と前日同時刻より 59 銭の円安ドル高。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 11-6-19)