海上保安庁の無人航空機が運用開始 尖閣諸島などの海洋監視体制の強化で
海上保安庁は緊迫した状態が続く尖閣諸島周辺などの海洋監視体制の強化のため、無人航空機 1 機を導入して 19 日から運用を始めました。 近年、尖閣諸島周辺では中国海警局の船舶が日本の領海に頻繁に侵入したり、日本海の漁場「大和堆」で外国の漁船が違法操業をしたりするなど緊迫した状態が続いています。 これらを受けて海上保安庁が導入した無人航空機「シーガーディアン」が 19 日、初めて自衛隊の八戸航空基地を飛び立ちました。
24 時間以上の飛行が可能なことから、海洋での広範囲にわたる監視体制の強化や海難救助、災害時などにも役立つとしています。 機体は全長 11.7 メートル、幅 24 メートルで、複数のカメラで撮影した映像をリアルタイムで伝送できるということです。 操縦と整備は外部に委託して来年度以降、複数での運用を予定しています。 (ANN = 10-20-22)
中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる
沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も
台湾へのペロシ訪問以後、中国は台湾やわが国周辺で軍事活動を活発化させているが、無人機(大型ドローン)も例外ではない。 しかし、この運用の実態はあまりに危険で、飛行高度の問題で最悪、日本の沖縄周辺の領域を飛ぶ民間旅客機との事故の危険性があり得ることを緊急で報じたい。
まず、7 月 28 日の拙稿「中国大型軍事ドローンが日本周辺で活発化、でも『領空侵犯されても撃墜できない』日本政府見解がヤバすぎる」において、中国軍がわが国周辺における大型無人機(ドローン)の運用を本格化させたことなどを指摘した。 この時以来、中国軍はわが国、特に沖縄周辺の空域で、偵察型無人機 BZK-005 や偵察/攻撃型無人機 TB-001 など大型ドローンの活動を常態化させようとしている。
ちなみに、大型無人機、大型ドローンという言葉に関してだが、無人機の中でも「ドローン」は通常小型のものを指し、大型の無人機は自衛隊や米軍などでは「UAV (Unmanned aerial vehicle)」と呼称しているが、本記事では一般読者に分かりやすいように「大型無人機」、「大型ドローン」などと使い分けて使用する。なお大きさについてだが、軍用の大型ドローンでだいたい全長 10m 以上、翼幅 20m 以上に達する。
中国大型軍事ドローンの「飛行高度」が危険すぎる
それにしても、中国の無人機の運用方法は、傍若無人で危険極まりない。 前述の拙稿のとおり、7 月 25 日以来、中国の大型ドローンは、単独で自国のレーダ・カヴァレッジ(覆域)外をはるかに超えて、沖縄・宮古島間というわが国の島嶼(とうしょ)間を通過し、太平洋側からわが国の領空へ接近するという活動を繰り返しているが、自国レーダで安全監視していない領域でのこの運用がいかに危険なことか、中国軍は本当に理解しているのだろうか。 分かってやっているなら、これは明らかな挑発行為であり、それはそれでわが国の対応の仕方もあろう。 しかし、もしこれが危険という認識が欠如しているものならば、わが国にとってこれほど恐ろしいことはない。
筆者が現役時代、中国空軍から幾度も接触(自衛隊でいうスクランブル)を受けたことのある米軍のパイロットは、中国軍の対応は、「アン・プロフェッショナル(さじ加減を知らないの意)でとても危険だ」と嘆いていたものである。 同様な発言は、米海軍艦艇の軍人からも聞いたことがある。 この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧している。
そして、何よりこの大型ドローンの危険性の本質は、その高度帯にある。 わが国も装備を始めた米国製の大型ドローン・グローバルホーク (RQ-4) は、ハイハイ (high high altitude) と呼ばれる超高高度帯域約 13,000m - 18,000m で飛行する。 これは、何よりも敵戦闘機からの要撃を回避するためではあるが(酸素濃度の理由で戦闘機のこの高度帯域での攻撃は困難となっている)、これによって民間機などとの高度帯による隔離が可能(民間機の上昇限度は約 13,000m)となり、飛行経路の自由度(安全性)が高くなるというメリットもある。
これに対して、中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m - 10,000m であり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。 にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動しているのである。
民間の飛行監視サイト「Flightradar24」を見ても分かるように、沖縄・宮古島間は少ない時で 2 - 3 機、多い時では 7 - 8 機の民航機が常時行き来している。 これを考えると、この大型ドローンの飛行は、北朝鮮や中国の弾道ミサイルがわが国 EEZ に落下するよりは、「はるかに危険な行為である」ということが分かるだろう。
ついに台湾は中国小型ドローンを撃墜した
ここで、近日の中国軍事ドローンに関する変化について振り返ってみよう。 我々が特に注目すべきは、9 月 1 日、ついに台湾陸軍が中国大陸に近い(台湾が実効支配する)金門群島の石宇島上空を飛行した 3 機の中国から飛来してきた小型ドローンを撃墜したことである。 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発して台湾周辺で行った大規模な軍事演習以来、わが国や台湾周辺で大型ドローンの活動を活発化させていたが、この金門群島周辺でも(市販のものと見られる)小型のドローンが再三領空内へ侵入して来ていたが、台湾はついにこれを撃墜したのである。
この経緯について、順を追って説明すると、まず中国がこの大規模な軍事演習において、わが国の排他的経済水域 (EEZ) を含む演習(航行警報)海域に弾道ミサイルを発射した 8 月 4 日、前述 2 機種の大型ドローンなど 3 機が、この演習海域を含む沖縄周辺の空域において、午前から夜間にかけて長時間活動した。 また、同 30 日には、TB-001 が単機で 7 月 25 日と同様のコースで沖縄・宮古島間を通過し、宮古島の南方空域から台湾東方の海域で昼間帯に活動し、往路と同じコースで帰投した。
台湾国防部によると、この演習以降、中国に近い(台湾が実効支配する)金門群島では、中国から飛来した小型ドローンが度々領空に侵入し、これらのドローンから撮影した台湾の軍事施設の動画が中国の SNS で拡散されていたとのことである。 中でも、前述の TB-001 がわが国周辺に飛来した 8 月 30 日には、金門島の離島である二胆島に中国から飛来した小型ドローンに対して、台湾軍が「度重なる(音声や信号弾などの)警告に応じなかったため、実弾射撃を実施した」と発表した。 台湾軍が中国のドローンに対して実弾を発射したのは、これが初めてであった。
そして 9 月 1 日、台湾陸軍は、金門群島の石宇島上空に侵入してきた 3 機のドローンに対して、信号弾を発射し、警告射撃を行ったのち、いずれにも従わず引き返さなかったドローンを撃墜した(同陸軍発表)。
このドローンは、一般でも入手可能な撮影用の小型ドローンと見られる。 しかし、ラジコン程度の大きさであっても、軍事施設付近ならば軍用ヘリなども飛行するだろうし、不安定な飛翔をする小型ドローンが周辺を飛行するのはとても危険なことだ。 中国本土から 6km しか離れていない領域であることなどから、民間人による悪質ないたずらの可能性も考えられるが、これが相手国の軍事施設の上空を飛行したとすれば、その実行者が誰であれ国際問題となる類の行為である。
国籍不明の無人機が領空侵犯したら「問答無用で撃墜すべき」というのは、前述の拙稿で主張したとおりである。 まさに、台湾軍の対応は正しいといえる。 無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。 さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだというのは、拙稿で述べたとおりだ。
ドローンは「飛ぶロボット」に過ぎないから即撃墜を
国際民間航空 (ICAO) 条約においては、長距離洋上及び航空機用救命無線機 (ELT) を装備しなければならない区域を飛行する場合には、航空機に対して国際緊急周波数 (VHF : 121.500MHz または UHF : 243.000MHz) の聴取を義務付けているが、通常各国の軍用機や艦艇もこれに準じてこの周波数をモニター(聴取)している。 したがって、領空に接近する国籍不明機(軍用機等)に対しても、航空自衛隊のレーダサイトからこの周波数帯を使用して通告や警告を実施している。 その他、突発的な危険回避などの際にも、この周波数で相手との通信を試みるのが通例である。
2018 年 12 月 20 日に発生した「韓国海軍レーダ照射事案」の際も、海上自衛隊の哨戒機から韓国海軍の艦艇へ向けてこの周波数帯で交信を試みたが、この際は(おそらく聞いていたであろう)韓国海軍艦艇からの応答はなかった。 応答はなかったものの、この艦艇がこれをモニターしていた(可能性は大)とすれば、海上自衛隊の哨戒機が「危険を感じた」ということは認識したであろう。
これに対し、ドローンの場合は、これをモニターする人間が搭乗していないのだから、このような手順はすべて無効である。 例えば、ドローンがこのままのコースで飛行すれば民間機と衝突する恐れがあると、航空自衛隊のレーダサイトや航空管制用レーダサイトで認識されたとしても、これを伝えるすべがないのである。
民間機と衝突する前にまずは抗議し、我が国の方針を伝えよ
中国の大型ドローンの単独による長距離進出は、いまだ緒に就いたばかりである。 中国軍に言わせれば、「日本の民航機の通過時間などはすべて承知している」と言うかも知れない。 しかし、民航機が何時間も遅れることなどよくあることだ。 コースも高度もその時の気象などによっては変化する。 パイロットによる安全監視もなく、自国レーダによる監視もなく、接近する領空や航空機などに関わる通報や警告にも耳を貸さず、ただひたすらに命じられたコースや空域で任務を遂行するこのドローンは、一歩間違えばとてつもない凶器となる。 民航機と衝突して大惨事が発生する前に、十分な対策を講じておく必要があろう。
まず政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。 このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となるのである。 決して、この行動に対応する航空自衛隊などの現場が、いざという時に躊躇することのないよう、政府は毅然とした姿勢を明確にしておいてもらいたいと切に願う。 (鈴木衛士、現代ビジネス = 9-5-22)
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