中国輸出、米関税引き上げで 6 月は減少 輸入も予想以上の減少

[北京] 中国税関総署が発表した 6 月の貿易統計によると、米国からの圧力が強まるなか、輸出、輸入ともに減少した。 6 月の輸出はドル建てで前年比 1.3% 減少、市場予想(2% 減)ほどの落ち込みではなかったものの、予想外の増加だった 5 月からマイナスに転じた。 輸入はドル建てで前年比 7.3% 減少で、減少幅は予想(4.5% 減)を大きく上回った。 5 月(8.5% 減)に続く減少で、昨年からさまざまな景気支援策が打たれているにもかかわらず、内需が低迷していることを示した。 6 月の貿易収支は 509 億 8,000 万ドルの黒字。 市場予想は 446 億 5,000 万ドルの黒字、5 月は 416 億 6,000 万ドルの黒字だった。

合意に向けて進展しているかにみえた米中の通商協議は 5 月に事実上決裂し、米政府は 2,000 億ドル分の中国製品に対する制裁関税率を 10% から 25% に引き上げた。 6 月の貿易統計は、2,000 億ドル分の米関税引き上げの影響が完全に反映された月だ。 キャピタル・エコノミクスはノートで「6 月の輸出減少は、より広範囲にわたる外需の減速とともに直近の米関税引き上げの影響がでた」と指摘し、「世界経済成長の底入れは来年以降とみている。 前月末に米中首脳が貿易戦争の休戦で合意したことで、さらなる米関税の脅威はなくなったものの、通商協議はやがて再び決裂するというのがわれわれの基調シナリオだ。」と述べた。

米中首脳は 6 月末の会談で、通商協議の再開で合意。 米国は制裁関税の対象を拡大することはとりあえず棚上げにしたが、すでに発動した制裁関税はそのまま継続している。 通商協議の日程はまだ設定されておらず、先の交渉決裂の原因となった懸案で両国の溝は埋まっていない。 米中の貿易摩擦はさらに長期化、深刻化する恐れもある。 6 月の対米貿易黒字は 299 億 2,000 万ドルで 5 月(269 億ドル)から拡大した。 上半期の対米貿易黒字は 1,404 億 8,000 万ドルで、前年同期(1,337 億 6,000 万ドル)から約 5% 増加した。 (Reuters = 7-12-19)

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中国 5 月輸出が予想外の持ち直し、輸入は減少 - 対米摩擦激化の中

中国の 5 月の輸出はドルベースで予想外に増加に転じる一方、輸入が減少した。 米国との貿易対立が激しくなり、米中両国に緊張緩和の兆しも見えない。 税関総署が 10 日発表した 5 月のドル建て貿易統計は以下の通り。

輸出は前年同月比 1.1% 増 - エコノミスト予想は 3.9% 減
輸入は 8.5% 減 - 予想は 3.5% 減
貿易黒字は 416 億 5,000 万ドル(約 4 兆 5,200 億円)

「輸出については、米国の追加関税率が適用される期限が延期されたことや、中国の残りの対米輸出が前倒しされたことが今回の伸びに寄与した可能性が高いが、年初来の輸出の伸びはあまり良くない」と、ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行 (BBVA) のアジア担当チーフエコノミスト、夏楽氏(香港在勤)が指摘した。 輸入は「国内経済の減速や貿易摩擦の悪化見通し」で落ち込んだと分析。 1 - 5 月の中国の対米輸出(人民元ベース)は前年同期比 3.2% 減で、輸入は 26% 減。 貿易黒字は 7,506 億元(約 11 兆 7,500 億円)となった。 (Miao Han、Bloomberg = 6-10-19)


「対米摩擦失業」に備え 中国、省庁横断の新組織を発足

中国政府は省庁横断的に若者などの就職対策に取り組む「就業工作領導小組」を設立し、胡春華副首相がトップの組長に就いた。 政府は米中貿易摩擦などによる景気の冷え込みが失業者を増大させ、社会不安につながることを懸念しており、対策を強化する構えだ。 小組は「グループ」を意味し、重要課題に機動的に対応する目的で置かれる。 今回は労働政策を担う人力資源社会保障省のほか教育省、退役軍人省など約 20 部門の担当者が参加。 雇用政策全体を調整し、長期計画の策定や政策実施状況の監督などを行うという。

米中貿易摩擦の影響も受けて景気の減速が続くなか、習近平(シーチンピン)指導部は就職対策を重視している。 昨年 7 月の共産党政治局会議では経済成長を持続させ、社会不安を招かないための「六つの安定」政策が示された。 中でも就職の安定は金融や貿易より重い課題として筆頭に位置づけられた。

この時期に新たな組織を立ち上げる背景には、中国の大学や高校が卒業シーズンを迎えることもある。 今月 13 3日に北京で開かれた高卒生の就職対策会議は、「状況は複雑かつ深刻だ」との認識を示したうえで、農村から都市への出稼ぎ労働者となる「農民工」の急激な大移動を防ぐ必要があると強調。 李克強(リーコーチアン)首相は「就職圧力は依然高く、特に高卒生は最高値だ」と危機感をあらわにした。

15 日に発表された 4 月の失業率は 5.0% で、高水準が続く。 政府は今年 3 月の政府活動報告で、今年の都市部の新規就職予定者が 1,100 万人を超えるとし、調査ベースの失業率は「5,5% 前後になる」と予測している。 (北京 = 冨名腰隆、asahi = 5-28-19)


中国が対米貿易戦争で「元安」を武器にする可能性

ドナルド・トランプ米大統領が中国製品に対する関税をさらに引き上げたことで、中国政府は再び、「通貨」という兵器を配備する準備を整えた可能性がある。 1 米ドルは 5 月 22 日に一時 6.9342 元となり、元安はさらに進行。 年初来の下落率は、約 8.77% となった。 米国は 10 日、中国からの輸入品 2,000 億ドル(約 22 兆円)相当に対する関税率を 10% から 25% に引き上げた。 だが、元安が進めば、中国の輸出業者が受ける影響の大半は帳消しになる。

人民元相場が心理的な節目である 1 ドル = 7.0 元に近づく中で注視されるのは、中国当局がそれを容認しているのかどうかという点だ。 元安は同国の輸出業者を助けることになる。 だが一方では、資産価値を安定させたい企業が中国から資金を引き揚げ始め、資本流出が進むことになる可能性がある。 ロイター通信は中国人民銀行(中央銀行)の関係者 3 人からの情報として先ごろ、中銀が 1 ドル = 7 元以上の元安を認めことはないだろうと報じた。 関係者の 1 人は、「7 元を超える元安は、人民元に対する信頼感を損なわせることになり、資金の流出につながるだろう」と述べている。

「元安は進む」との見方も

一方、最近中国を訪れたというドイツ銀行のアナリストは、資金流出の懸念は薄まっているとの見解を示す。 政府関係者は今後、元安がさらに進むことに賛同するようになるとの見方だ。 「通貨安の "外部性"、つまりホットマネーの流出と企業が受けるストレスへの懸念は、今回はより限定的なものになると考えられる。」 「規制当局は、長年にわたり実施してきた規制措置が、ホットマネーの流出を管理可能なものにすると確信しているもようだ。 企業は以前に比べ、(通貨の)弱さへの備えを強化しており、工業部門の企業の利益は増加している。 (人民元の)一層の弱さが企業のバランスシートに影響する懸念は薄まっている。」

このアナリストによれば、(これまで米国の関税の引き上げに伴って予想どおりに元安が進んできたことからみて) 2,000 億ドル相当の中国製品への関税率が 25% に引き上げられたことで、為替レートはおよそ 1 ドル = 7.10 元になると推測される。 トランプがさらに 3,250 億ドル相当の中国製品に追加関税を課せば、1 ドル = 7.40 元になると予想されるという。

また、オランダのラボバンク銀行は同様に、貿易戦争がさらに激化するなら、中国の中銀は外貨準備を減らすか、金利を上げる、またはその両方を実施することができると指摘する。 だが、それは中国の国内経済に深刻な影響をもたらす可能性がある。 ラボバンクは、中国が米国に対してより攻撃的になっていることから考えれば、「7 元を超える(元安になる)可能性は高い」とみている。

中国の習近平国家主席は 21 日、国共内戦で国民党軍に包囲された紅軍(共産党軍)が 1934 - 36 年にかけて行った大移動の起点となった江西省の長征出発地記念園を訪問。 次のように述べた。 「われわれは今、新たな "長征" に出発しようとしている。 もう一度最初からやり直す必要がある。」 この発言もまた、中国が貿易戦争の長期化に備えていることの表れだ。 (Charles Wallace、Forbes = 5-24-19)

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中国、人民元防衛で米国債売却余儀なくも - 対米報復としてではなく

オフショア人民元は今月に入り 2.4% 下落、昨年 12 月以来の安値に
米中協議の妥結なければ元相場はさらに 7% 下落か - タヌッツォ氏

中国の米国債保有残高は約 1 兆 1,000 億ドル(約 120 兆円)に上るが、中国が米関税措置への報復としてその一部を売却することはまずあり得ないと、しばしば指摘されてきた。 そうした行為は核攻撃のような最終手段であり、米経済よりも中国経済に大きな被害をもたらすと考えられている。

しかし、世界の金融市場に緊張が広がり、人民元の下落に歯止めがかからなくなれば、中国は米国への報復としてではなく、通貨防衛のため 15 兆 9,000 億ドル規模の米国債市場で自国保有分の一部売却に動く可能性はある。 米中貿易摩擦の激化に伴い、オフショア人民元は今月に入り 2.4% 下落し、昨年 12 月以来の安値を付けた。 オフショア人民元は香港時間 15 日午前 10 時 17 分(日本時間同 11 時 17 分)時点、1 ドル = 6.9053 元とほぼ変わらずだった。

1 件のツイートをきっかけに、米中通商対立の中で米国債が武器として使われるのではないかとの不安が台頭した。 ある中国人ジャーナリストが 13 日に投稿したもので、同国の学者が米国債「売却の可能性を議論している」という内容だった。 このツイートは、物別れに終わった先週末の米中交渉の後に投稿された。 中国政府は 13 日、米政府による直近の追加関税引き上げへの報復として、米国製品の一部に対する関税引き上げを発表した。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの債券グローバル副責任者、ジーン・タヌッツォ氏は「中国の米国債売却は 1 つのリスクだが、米関税に対抗する報復というよりも、自国通貨管理としての要素が強いだろう」と指摘。 報復ではないが、「資本勘定からの流出が当局の望むものより大きくなり、人民元を防衛する必要が生じれば、米国債を売らなければならなくなるだろう」と語った。

マッコーリー・セキュリティーズは、資金の国外流出や一段と急激な下落につながりかねないことから、人民元安が制御不能となるような事態を中国当局が容認する公算は小さいと分析する。 中国当局は 2016 年、海外への資本逃避によって元相場が 7% 近く下げた状況にあって、当時の保有残高の 15% に相当する 1,880 億ドル規模の米国債売却に踏み切った。

タヌッツォ氏は、米中協議が妥結に至らなければ、元相場はさらに 7% 下落すると予想。 下げ幅は合計で、通商問題を巡る懸念が先に市場に動揺をもたらした 18 年 4 - 6 月(第 2 四半期)と 7 - 9 月(第 3 四半期)と同程度になると見込んでいる。 中国の米国債保有は昨年に約 5% 減少。 これは16年に次ぐ2番目の規模だ。

元米財務省当局者で、現在はロンドンを拠点とするシンクタンク、公的通貨・金融機関フォーラム (MFIF) の米国議長を務めるマーク・ソーベル氏は「米中間の緊張が高まるたびに、中国が報復のため保有米国債を売却するかどうか疑念が生じる」が、中国がそのような行動を示唆したことはないと話した。 (Liz Capo McCormick & Saleha Mohsin、Bloomberg = 5-15-19)


中国クリーンテック、救世主なるか

テクノロジーの転換点はことわざにあるロンドンのバスのようなものだ。 「1 台乗るのに長く待たされれば、きっと 3 台同時に現れる。」 中国の再生可能エネルギー産業もこれと同じで、3 つの現在進行中の変化が地球を救うかもしれない。 最大の二酸化炭素排出国である中国は欧米の自然保護活動家から悪役として描かれがちだ。 しかし、実は再生可能エネルギーの関連技術「クリーンテック」で世界をリードする存在でもある。

中国政府による数十年にわたる巨額の補助金によって、中国のクリーンテック業界はいまや商業化が可能な段階を迎えた。 太陽光・風力発電や電気自動車 (EV) はいずれも二酸化炭素を排出する従来型の技術から置き換わろうとしている。 太陽光は先導役だ。 シティグループの調査によると、中国 11 省では補助金なしの太陽光発電でも石炭火力よりも発電コストが低くなった。 「初めて石炭火力で炭素を排出するよりも安い価格で発電できるようになった。 20 年間待ちわびていた。」 香港拠点の投資会社イースト・キャピタルのポートフォリオマネジャー、フランソワ・ペリン氏は言う。

ある大型プロジェクトがその可能性を示している。 2018 年 12 月、チベット高原の都市ゴルムドにある 500 メガワットの太陽光発電所では、石炭火力発電所からの電力の基準価格である 1 キロワット時あたり 0.325 元(約 5.2 円)を下回る 0.316 元で供給した。 18 年 5 月には政府が太陽光発電への補助金を停止し、ポリシリコンやウエハー、太陽電池が値崩れした。 その恩恵があったとはいえ、太陽光発電産業は政府が 23 年とした目標より 4 年早く石炭火力からの電力料金を下回ることができた。

ペリン氏は中国エネルギーミックスにおける石炭の割合は現在の約 60% から 30% まで下がるとみる。 公害への国民の不満は強く、政府の背中を押しているためだ。 EV では政府の支援で世界有数の市場になった。 19 年第 1 四半期にはガソリン車の売上高が減少した一方、EV は前年比で倍増した。 しかし転換点はまだ来ていない。 中国では電池のコストは 1 キロワット時あたり約 140 ドル(約 1 万 5,000 円)で推移するが、年約 20 ドルずつ下がっている。 ペリン氏によると、21 年ごろにはガソリン車を下回る見込みだ。 中国 EV 界のリーダーである比亜迪 (BYD) などは、生産能力を 5 倍に拡大している。

英政治家ボリス・ジョンソン氏はロンドンの自然保護団体に対し、自国への批判をやめ、中国に抗議するよう促したが、そうした抗議は不要だ。 政府や学校を閉鎖に追い込み、航空機の運航を止め、交通制限をし、人々を屋内にとどまらせるような大気汚染に見舞われる国の人々は、環境汚染の恐ろしさを十分に知っている。 (ジェームズ・キング = TechScroll、nikkei = 5-9-19)

ジェームズ・キング (James kynge) : 中国を中心にアジア情勢を 25 年以上にわたり取材。 FT のグローバル・チャイナ・エディターを兼務する。 2016 年に英財団が選ぶ金融分野のジャーナリスト・オブ・ザ・イヤーに。 06 年出版の「China Shakes the World」は 19 カ国語に翻訳された。 香港駐在。


中国、積極的な財政政策を強化へ = 新華社

[北京] 中国共産党政治局は 19 日、積極的な財政政策を強化するとともに、引き締め過ぎもせず緩め過ぎもしない穏健な金融政策を維持すると表明した。 国営の新華社が伝えた。 新華社によると、政治局は、中国経済は依然として下押し圧力に直面しているほか、外部環境は逼迫していると指摘。 民間経済と中小企業の発展を効果的に支援すると強調した。 (Reuters = 4-19-19)


中国の輸出、3 月に持ち直し - 輸入は予想外に減少

中国の 3 月の輸出はドルベースで増加した。貿易協議を巡る楽観的な見方が広がる中、春節(旧正月)休暇後に持ち直した。 だが、輸入が予想に反して減少しており、国内景気の脆弱さを示唆した。 税関総署が12日発表した3月のドル建て貿易統計は以下の通り。

輸出は前年同月比 14.2% 増
輸入は 7.6% 減少
貿易黒字は 326 億 5,000 万ドル(約 3 兆 6,500 億円)

ブルームバーグ・エコノミクスの舒暢、万千両氏は「中国の輸出は 3 月に持ち直したが、回復度合いは価格上昇や春節によって大きくなった。 従って変動の大きな輸出の増加は楽観の根拠と受け止めるべきではない。 2019 年の厳しい外部環境を考えると、この回復は続かないだろう。」と指摘した。 今年は春節が 2 月上旬だったことも、3 月実績を前年同月比で押し上げた要因とみられる。 中国税関総署の李魁文報道官は北京での記者会見で、1 月から 3 月にかけて貿易統計が大きく変動しているのは春節休暇が主な要因だと説明し、「比較的低い」伸びは世界的な需要を巡る不確実性によるものだと述べた。 (Bloomberg = 4-12-19)

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中国 : 2 月の輸出入は共に減少 - 貿易摩擦や春節で

輸出はドルベースで 20.7% 減 - 市場予想は 5.0% 減
対米貿易戦争や欧州景気減速に伴い貿易は厳しい局面に - 謝棟銘氏

中国の 2 月の輸出入はドルベースで共に減少した。 春節(旧正月)休暇に伴う休業や貿易摩擦による不確実性が続いていることが響いた。 税関総署が 8 日発表した 2 月のドル建て貿易統計は以下の通り。

・ 輸出は前年同月比 20.7% 減 - 市場予想は 5.0% 減だった
・ 輸入は 5.2% 減 - 予想は 0.6% 減
・ 貿易黒字は 41 億 2,000 万ドル(約 4,590 億円)

オーバーシー・チャイニーズ銀行の謝棟銘エコノミスト(シンガポール在勤)は「1 月と 2 月のデータを合わせて見る方が偏りがなくて良いだろう」と指摘し、落ち込みは「貿易戦争の影響や世界経済の減速を反映している」と説明。 「対米では貿易戦争があり、欧州連合 (EU) も域内景気が減速しており、中国は貿易面で厳しい時期に入るだろう」と述べた。 中国の 1 - 2 月の対米貿易黒字は 2,900 億元(約 4 兆 8,070 億円)と前年同期から 3.9% 拡大した。 (Bloomberg = 3-8-19)


中国 3 月 PPI は前年比 +0.4%、9 カ月ぶり加速 デフレ懸念和らぐ

[北京] 中国国家統計局が 11 日発表した 3 月の生産者物価 (PPI) は前年同月比 0.4% 上昇し、前月の 0.1% 上昇から伸びが加速した。 PPI の上昇率が加速したのは 9 カ月ぶり。 政府の景気刺激策の効果が出始めた可能性があり、デフレに対する懸念が緩和された。 ロイターのアナリスト調査でも、コモディティー(商品)価格の上昇を背景に 0.4% 上昇すると予想されていた。 3 月の消費者物価指数 (CPI) は前年同月比 2.3% 上昇。 前月の 1.5% 上昇から伸びが加速した。 ただ市場予想の 2.4% 上昇は下回った。

CPI 上昇率は 2018 年 10 月以来の高水準。 アフリカ豚コレラの感染拡大を背景に豚肉価格が値上がりした。 アナリストは、物価の上昇傾向が続くかどうかを判断するには、今後数カ月分のデータを確認する必要があると指摘。 政府の一段の刺激策も求められると述べている。 PPI の上昇の大半は、鉱山分野によるもの。「抽出」は前年比 4.2% 上昇と、2 月の 1.8% 上昇から加速。 「原材料」も下落率が鈍化した。 ただ、需要の拡大ではなく、商品相場の変動の影響が大きかった可能性もある。 耐久消費財の価格は 2 カ月連続で低下している。

キャピタル・エコノミクスの中国担当シニアエコノミスト、ジュリアン・エバンズプリチャード氏は「原油価格は今後数カ月で下落すると予想され、PPI の重しとなる見通しだ。 同時に景気の弱さも全体的な物価上昇圧力を抑制するだろう」と指摘した。 3 月の PPI は前月比ベースでは 0.1% 上昇と、5 カ月ぶりに上昇に転じた。 2 月は 0.1% 低下だった。 中国経済は内需の減速や米中貿易摩擦を背景に過去 30 年近くで最も緩慢な伸びにとどまっている。

こうした中、当局は道路や鉄道、港湾への投資拡大を計画しており、建設資材の需要や価格を押し上げると見込まれている。 また、3 月には約 2 兆元規模の減税を発表した。 今月から実施された増値税(付加価値税)引き下げを受け、すでに電力や天然ガスの値下げが行われたほか、ガソリンやディーゼルの小売価格も引き下げられる見通しだ。 アップルや BMW など多くの企業も値下げに踏み切っている。 3 月の CPI は前月比では 1.2% 上昇した。 豚肉価格は前年比 5.1% 上昇。前月までは 25 カ月連続で低下していた。

一部のアナリストは、今年の中国の豚肉生産が 30% 前後減少し、豚肉価格が急騰するとの見方を示しているが、中国人民銀行(中央銀行)は、食品とエネルギーを除くコアインフレ率が安定している限り、一時的な食品価格の上昇には過剰反応しないとみられている。 食品を除く CPI は前年比 1.8% 上昇。 2 月の上昇率をやや上回った。 (Reuters = 4-11-19)

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中国の生産者物価、1 月はさらに大幅鈍化 - 需要減速響く

1 月の PPI は前年同月比 0.1% 上昇 - 前月の 0.9% から大幅鈍化
PPI デフレの再来を目にするかもしれない - 胡偉俊氏

中国の生産者物価指数 (PPI) 上昇率は 1 月に大幅鈍化した。 7 カ月連続で伸びが鈍った。 需要減速と前年の比較水準の高さが響いた。 国家統計局が 15 日発表した 1 月の PPI は前年同月比 0.1% 上昇。 ブルームバーグのエコノミスト予想は 0.3% 上昇、昨年 12 月は 0.9% 上昇だった。 消費者物価指数 (CPI) は前年同月比 1.7% 上昇した。 エコノミスト予想は 1.9% 上昇、12 月も 1.9% 上昇だった。

PPI 上昇率の鈍化を受け、2012 - 16 年に見られたデフレ状況に再び陥るとの観測が浮上。 工業生産と消費の伸び悩みが続く中、中国経済のさらなる減速で輸入品需要が損なわれる見込み。 マッコーリー・セキュリティーズの中国経済責任者、胡偉俊氏は最近のリポートで、中国経済がさらに 3、4 四半期にわたって減速する可能性があると記述。 「2019 年に PPI デフレの再来と利益のマイナス成長を目にするかもしれない」と指摘した。 (Bloomberg = 2-15-19)

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中国の春節消費が減速、19 年の厳しいスタート浮き彫りに

小売り・飲食店の売上高 8.5% 増 - 少なくとも 11 年以降最も低い伸び
観光業収入も伸び鈍化 - 国内の映画興行収入は 1% 増にとどまる

中国商務省は 10 日、今年の春節(旧正月)期間中の小売り・飲食業売上高が計 1 兆 100 億元(約 16 兆 4,000 億円)になったと発表した。 前年に比べて 8.5% 増にとどまり、少なくとも 2011 年以降で最も小さい伸びとなった。 消費に対する下押し圧力が春節休暇中も続いた。 中国中央テレビ局 (CCTV) が商務省のデータを引用して報じたところによると、観光業の収入は 8.2% 増の 5,139 億元と、昨年の 12.6% 増から伸びが鈍化した。 また、国内の映画興行収入は前年に比べて 1% 増だったと澎湃新聞がアリババ・ピクチャーズの発券サービスプラットフォームの統計を基に伝えた。

春節期間中のショッピングはオンラインで済ます傾向が強まっており、JD ドットコム(京東)の売上高は 43% 増加。 アリババ・グループ・ホールディングの「T モール」での支出は規模が小さめの都市で 55% 増と、住宅価格の高騰で住民の財布のひもが固くなっている主要都市に比べて伸びが大きかった。 今年の春節休暇は 2 月 4 - 10 日、昨年は 2 月 15 - 21 日だった。 (Bloomberg = 2-11-19)


中国経済、3 月も持ち直しの兆し - 株価や中小企業景況感がけん引

政策効果で安定化、自律回復からは距離残る - 曲天石氏
スタンダードチャータードの中小企業指数は 10 カ月ぶり高水準

中国経済は 3 月も回復の兆しを示した。 ただ、景気に対する下方圧力は根強く残っている。 ブルームバーグ・エコノミクスは市場センチメントや業況に関する先行指標をまとめ、独自に指標を作成している。 株価や中小企業の景況感がけん引役となり、貿易関連データやセールスマネジャー調査も改善を示した。 一方、銅価格や生産者物価は低迷を示唆している。

中国当局は景気減速に対処するため、中小企業への与信拡大を誘導。 今月には記録的な規模の減税を発表した。 米中が通商合意に近づいているとの報道も楽観的な見方を後押しする材料になっているが、世界貿易を巡る厳しい見通しは引き続き警戒を要する根拠になっている。 ブルームバーグの中国担当エコノミスト、曲天石氏は中国経済について、「政策を原動力とした安定化は根付きつつあるものの、自律的回復からは距離」が残っていると指摘。 「政府主導の投資が景気安定化でより重要な役割を担うだろう」とコメントした。

スタンダードチャータードが中小企業 500 社余りを対象にまとめている指数は 3 月に 10 カ月ぶりの高水準を記録しており、政策効果が表れている。 項目別の指数によると、内外需が共に持ち直し、販売や生産を後押しした。 与信環境を測るサブ指数も上昇し、2017 年以来の高い水準を付けた。 スタンダードチャータードの中国担当エコノミスト、陳冠霖氏(香港在勤)は「比較的力強い財政刺激策や緩和バイアスを維持する金融政策が中国経済にバッファーを提供する」と指摘。 4 - 6 月(第 2 四半期)の景気底入れ、年後半の持ち直しを見込んだ。 (Bloomberg = 3-28-19

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中国経済、さらに減速 1 - 2 月の工業生産は伸び悩み

工業生産は前年同期比 5.3% 増、予想 5.6% 増
1 - 2 月の小売売上高は 8.2% 増加と市場予想と一致
中国経済が 1 - 2 月に一段と減速した。 失業率も大幅に上昇し、当局の追加刺激策への期待が高まった。

国家統計局が 14 日発表した 1 - 2 月の工業生産は前年同期比 5.3% 増。 予想の 5.6% 増を下回り、年初としては 2009 年以来の小幅な伸びとなった。 小売売上高は同 8.2% 増加と市場予想と一致したが、少なくとも 12 年以来の低い伸び。 1 - 2 月の都市部固定資産投資は前年同期比 6.1% 増。 2018 年通年の 5.9% 増から伸びが拡大した。

2 月末の失業率は 5.3% と、昨年 12 月の 4.9% から上昇し、2 年ぶりの高水準となった
不動産投資は 11.6% 増と、14 年 11 月以来の大きな伸び

ナットウェスト・マーケッツのアジア担当ストラテジスト、リウ・ペイチエン氏(シンガポール在勤)は、「今回のデータは景気の底入れにさらに時間がかかることを意味している。 投資の回復にもかかわらず、工業生産と消費は依然として圧迫されている。」と指摘。 また、政策当局は常に雇用を最優先しているため、失業率の悪化は追加緩和策が講じられる可能性を示唆していると述べた。 (Bloomberg = 3-14-19)

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中国経済、持ち直しに向けた最初の兆しか - 2 月の先行指標示唆

株高や商品価格の上昇でマインド改善 - 貿易休戦や金融緩和が寄与
景気に大きくプラスと判断するには時期尚早 - 曲天石氏

何カ月にもわたり減速していた中国経済は、持ち直しに向けた最初の兆候を見せた。 株高や商品価格の上昇でマインドが改善している。 ブルームバーグ・エコノミクスは市場センチメントや業況に関する先行指標をまとめ、独自に指標を作成している。 それによると、株価指数や商品価格の上昇がけん引し、規模が小さめの企業の心理も改善した。 一方で、物価や貿易、セールスマネジャーのセンチメントの動向を示す指標は中国経済が底打ちしたと判断するには時期尚早であることを示唆している。

ブルームバーグ・エコノミクスの曲天石エコノミストによれば、中国人民銀行(中央銀行)による金融緩和や対米貿易戦争の「休戦」が相場を押し上げている。 トランプ米大統領が中国製品に対する関税の追加引き上げ期限を先送りすると発表し、今週に入り中国本土株は大きく値上がりし、オフショア人民元も上昇している。  株高が「消費者信頼感を後押しする可能性はあるが、経済活動に大きくプラスに働くと言うにはまだ早い。」と曲氏は指摘する。

民間企業の資金調達改善やインフラ建設推進など刺激策による効果が表れ始めており、1 月の人民元建て新規融資は過去最高を記録、輸出も伸びた。 金融政策が今後も景気を支援するほか、減税や歳出増、特別債発行など今年の財政措置はさらに強化されると曲氏は予想した。 スタンダードチャータードで中小企業の景況感指数をまとめている申嵐エコノミスト(北京在勤)は、中小企業の資金調達改善に的を絞った支援策が奏功しつつあると指摘。 2 月の同指数は 55.1 と前月の 54.9 から小幅ながら上昇した。 (Bloomberg = 2-27-19)


中国の「大湾区計画」始動 香港・マカオと一体発展狙う

中国本土の広東省と香港、マカオの一体的な発展をめざす大経済圏構想「大湾区計画」が動き始めた。 中国本土とは政治経済の体制が異なる香港とマカオが本土の地域発展プランに組み込まれるのは初めてだ。 ただ、対中感情が複雑な香港では中国の影響力が強まり、高度な自治を保障した「一国二制度」が後退するとの懸念もでている。

同計画は習近平(シーチンピン)国家主席が主導する国家戦略で、2 月に概要が公表された。 省都・広州、ハイテク企業が集積する深セン、国際金融センターの香港、カジノで有名なマカオを中心都市と設定し、経済連携を深める。 計画全域の域内総生産 (GDP) は約 1.64 兆ドル(約 184 兆円)で、カナダの経済規模に相当する。 進出する日系企業の間でも商機拡大の期待が高まる。

現在開かれている中国の全国人民代表大会(全人代)でも、広東省の代表や、中国本土からのカジノ客で経済が潤い、親中感情が強いマカオの代表から歓迎する声があがった。 香港では、政財界から「長期的な繁栄と安定をもたらす(林鄭月娥・行政長官)」と期待の声が上がる。 世界と中国を中継する貿易拠点の香港は、米国が中国に科した制裁関税の影響で景気が急減速しているからだ。 昨年第 1 四半期(1 - 3 月)に 4.6% だった経済成長率は第 4 四半期(10 - 12 月)に 1.3% まで落ち、昨年 1 年間の香港の GDP は深センに初めて抜かれた。

成功のカギを握るインフラ整備は、先行して進められている。 昨年 9 月には、香港から深セン経由で広州を結ぶ「広深港高速鉄道」が全線開通。 同 10 月には、広東省珠海と香港、マカオをつなぐ世界最長の海上大橋「港珠澳大橋」も完成した。 一方で香港の民主派は、警戒感を強める。 大湾区計画には、香港の若者に対する愛国教育の強化が盛り込まれ、経済融合を進めて香港を中国側に取り込もうとする政治的な思惑が含まれているとみている。 香港の人材が仕事を求めて中国本土に流出することも懸念している。 (北京 = 益満雄一郎、asahi = 3-10-19)


中国、19 年の成長目標を 6 - 6.5% に設定 一層の減速予想

香港 : 中国の李克強(リーコーチアン)首相は 5 日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の冒頭で演説し、2019 年の経済成長率の目標を 6 - 6.5% に設定すると明らかにした。 昨年の成長率は 6.6% と約 30 年ぶりの低水準にとどまったが、それをさらに下回る目標設定となった。 李氏は演説で「我が国の発展を取り巻く環境は今年、複雑さと厳しさを増している」と指摘。 予期せぬものも含めリスクと試練が増えるとし、「激闘に備える必要がある」と述べた。

中国では政府による高リスク融資の取り締まりを受け、多くの企業が成長に必要な資金を調達できない状況に置かれた。 また、米国との貿易戦争の影響もじわりと広がっている。 ただ、トランプ米大統領は先週、交渉妥結が「非常に近い」と述べ、中国の習近平(シーチンピン)国家主席との会談で決着をつける考えを表明。 通商対立は収束に向かっているとみられる。 これは明らかに前向きな兆候だが、成長加速につながるとは見られていない。

国際通貨基金 (IMF) によると、今年の世界経済は成長の減速が予想されている。 世界最大の輸出国である中国は需要の落ち込みで打撃を受ける見通しだ。 中国政府はこの数カ月、相次いで景気刺激策を発表。 中小企業への減税や輸入関税の引き下げ、インフラ投資の拡大、金融緩和策などを打ち出したが、その多くは効果の浸透に数カ月かかる可能性がある。 (CNN = 3-5-19)

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中国、18 年 6.6% 成長 28 年ぶり低水準

債務削減・貿易戦争が打撃

【北京 = 原田逸策】 中国国家統計局が 21 日発表した 2018 年の国内総生産 (GDP) は物価の変動を除く実質で前年比 6.6% 増えた。 成長率は 17 年から 0.2 ポイント縮小した。 2 年ぶりの減速で天安門事件の余波で経済が低迷した 90 年以来 28 年ぶりの低水準。 足元の 18 年 10 - 12 月期の成長率は 6.4% に落ちこんだ。 地方政府や企業の債務削減のほか、米国との貿易戦争の打撃が響いた。 18 年の GDP は名目で前年比 9.7% 増の 90 兆 309 億元(約 1.440 兆円)と米国に次ぐ世界 2 位。 現在の為替レートで換算すると 3 位の日本の GDP (約 550 兆円)の 2.6 倍になった。

18 年の成長率は中国政府の目標「6.5% 前後」を上回った。 17 年は 7 年ぶりに前年水準を上回ったが、18 年は再び減速傾向に戻った。 18 年 10 - 12 月の成長率は 7 - 9 月より 0.1 ポイント縮小し、3 期連続の減速。 リーマン・ショック直後の 09 年 1 - 3 月 (6.4%) 以来の低水準だ。 日本経済新聞社と日経 QUICK ニュースが共同で実施した市場調査の平均 (6.4%) と同じだった。 伸び率を前期比でみると 1.5% となり 7 - 9 月 (1.6%) から減速した。 先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は 6% 程度になる。

21 日は GDP と別に他の経済統計も発表した。 工場やマンションの建設など固定資産投資は 18 年通年で前年比 5.9% 増えた。 伸び率は 17 年(7.2% 増)より縮小した。 鉄道や道路などインフラ投資の伸びが 3.8% と 17 年(19% 増)から大幅に鈍化したためだ。

百貨店やスーパー、インターネット通販の売上高を合計した社会消費品小売総額は 18 年通年で前年比 9.0% 増えた。 伸び率は 17 年 (10.2%) から減速した。 伸び率が 2 桁を割り込むのは 03 年以来 15 年ぶり。 自動車やスマートフォン(スマホ)の販売が不振だった。 18 年 12 月の伸び率は 8.2% にとどまった。 工業生産は 18 年通年で前年比 6.2% 増えた。 伸び率は 17 年(6.6% 増)から縮小した。 自動車やスマホ、パソコンの生産が振るわなかった。 18 年 12 月の伸び率は 5.7% だった。

米国と中国は 7 - 9 月に最大 25% の追加関税を互いに掛け合った。 中国製品は計 2,500 億ドル(約 27 兆円)分が追加関税の対象で、これらの製品は対米輸出が落ちこんだ。 貿易戦争の打撃が顕在化してきたことで消費、生産ともに秋以降の落ち込みがきつい。

債務削減で中小零細など民間企業の資金繰りも厳しい。 19 年は成長減速が続きそう。 貿易戦争の影響がさらに広がり、輸出が一段と落ちこむ公算が大きいからだ。 市場では「年前半の下押し圧力が強い」との見方が多い。 すでに中国政府も金融緩和、大規模減税、インフラ投資の上積みなどの景気下支え策を打ち出しており、年後半には持ち直しの動きがありそうだ。 (nikkei = 1-21-19)


中国玩具工場、貿易戦争が直撃 米関税引き上げ、輸出にブレーキ 工場移転も

米中貿易戦争が「世界の玩具工場」の中国を直撃している。 中国は世界の玩具の約 8 割を生産し、米国が最大の輸出先だ。 トランプ米政権は昨秋、玩具に制裁関税を課したが、今後さらに引き上げる可能性があり、東南アジアへの生産移転を検討する中国企業が増えている。 ただ投資負担も大きい海外への移転は容易ではない。 中国企業は苦悩を深めている。

「社員の給料の支払いは遅れる。 会社は倒産し、工場も閉鎖が決まった。」 2018 年 8 月、「世界の工場」といわれる中国南部の広東省深セン - -。 同市内に拠点を構えた玩具製造大手「深セン南嶺玩具制品」の工場前には、こんな深セン市政府からの通達が突然貼られ、従業員は混乱した。 約 30 年の歴史を持つ同社はプラスチック製の玩具などを製造・輸出し、最盛期には社員 4 千人を超える大手企業として知られた。 車のおもちゃ製造が得意で、米小売り大手のウォルマートなどの店舗では同社専用の商品売り場を設けていたほど。 仏カルフールや英テスコなど欧州の小売り大手とも取引があった。

もともと人件費の上昇などで経営が厳しくなっていたが、米中の貿易戦争が致命的な打撃になり、倒産に追い込まれた。 大小様々な玩具工場が集積する周辺で聞き込みを続けると、他工場でもやはり「東南アジアなどに工場を移転しようとする話はよく耳にする。 不安だ。」などの声が従業員から上がった。 トランプ政権はこれまで、中国に昨夏から 3 回にわたり制裁を科し、合計 2,500 億ドル相当の輸入品に高関税をかけている。 中国からの輸入額が毎年 1 兆数千億円にも上り、消費関連の製品では輸入額が4位に食い込む玩具も例外ではない。

中国玩具に課す関税は長年ゼロだったが、米政権は昨年 9 月、子ども用の自転車など一部に 10% の制裁関税を課した。 さらに今、中国企業を震えさせているのがさらなる制裁関税の引き上げ。 米中の貿易協議が交渉期限の 3 月 1 日までにまとまらなければ、子ども用自転車を含む 2,000 億ドルの輸入品の関税が 10% から 25% に引き上がる見通しだからだ。

既に、影響はじりじりと出始めている。 中国税関総署によると、中国の 18 年の玩具の輸出額は 17 年比 4.5% 増の 250 億ドル(約 2 兆 7 千億円)だった。 伸び率が 10% を割り込むのは 13 年以来 5 年ぶりだ。 中国に多くの製造拠点を持つ香港の玩具企業も同様だ。 香港貿易発展局がまとめた 18 年 10 - 12 月期の玩具企業の輸出指数は 09 年 1 - 3 月期以来の低い水準だった。

ここ数年、中国の人件費の高騰や環境規制の強化を受けて製造拠点を東南アジアなどに移す動きが出てはいたが、米中による貿易戦争は、こうした生産シフトに拍車をかけている。 1 月に香港で開かれた玩具の国際見本市 - -。 中国中部の江蘇省を拠点とする玩具メーカー「蘇州立華玩具」は、ベトナムとインドに持つ工場をしきりにアピールしていた。 今後、米国が関税を上げれば、コスト増を嫌うバイヤーが中国以外の企業に関心を向けると見たためだ。 同社ゼネラルマネジャーのジェリー・ゴー氏は「将来何が起きるか分からないので、早めに対策を立てる必要がある」と話す。

一方、ベトナムで中国企業の誘致などを支援する地元経済団体「越南中国商会」には中国からの工場移転を検討する中国企業から問い合わせが相次いでいる。 18 年に広東省から見学に来た企業グループは 27。 17 年の 11 グループに比べ急増した。 その要因を、中国商会の責任者の湯恵茹氏は「米中貿易戦争が間違いなくベトナムシフトを早めた」と指摘した。 同氏によると、例えばホーチミン市に隣接する南部ロンアン省では工場の賃料がこの数カ月間で 2 割も上がったという。

バイヤーが生産移転を促す面もある。 オーストラリアの貿易会社 NGJ トレーディングは中国の玩具メーカーと工場移転をめぐり交渉中だ。 NGJ にとって米国は最大市場。 そのため販売担当のネーザン・ジョリー氏は「常に最悪の事態に備えておくべきだ」と指摘し、調達先の中国企業と対応を急いでいる。 ただ、海外への工場移転となれば「構想から移転、新工場の本格稼働まで最低でも 1 年はかかる。 投資額は億円単位。(業界関係者)」 世界に誇る中国の玩具業界は、生き残りに向けて曲がり角にさしかかっている。 (香港 = 孫娜、木原雄士、広州 = 川上尚志、nikkei = 2-19-19)