「さよならミニスカート」が描く現実 りぼん異例の表明

このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない - -。 そんな宣伝文句がついた漫画「さよならミニスカート」が注目を集めている。 小学生など少女向けの月刊漫画誌「りぼん(集英社)」で、性犯罪や社会で女性に求められがちな「役割」など社会的な題材を描く異色の作品。 女の子たちが置かれた窮屈な現状を浮かび上がらせ、読者自身にも問いかける内容だ。

主人公の高校生・仁那(にな)は元アイドルだ。 握手会で男に切りつけられた後、「女使って、男釣って儲けてんだから、恨み買われて当然」と言われたことなどを機に女性である自分を受け入れられなくなり、髪を短く切ってスラックス姿で学校に通っている。 物語は、仁那の過去に気が付いた同級生の男子との交流やアイドル時代のメンバーとの友情、仁那を襲った男の謎などの要素がからみながら進行する。

中でも目を引くのは、少女漫画でありながら、女性が女性であるがゆえにさらされている現実を踏み込んで描いていることだ。 反響を呼んだセリフの一つが、「スカートはあんたらみたいな男のためにはいてんじゃねえよ。」 同級生の男子が「男に媚び売るためにはいてんだろ?」、「(変質者に)触られて当たり前」と言うのを聞き、仁那が怒って返した言葉だ。 (湊彬子、asahi = 3-16-19)


「犯行予兆電話」昨年 3 万 4 千件 アポ電、対策は留守電

東京都江東区のマンションで加藤邦子さん (80) が死亡した事件で、警視庁は 11 日、司法解剖の結果、窒息死の疑いがあるとして強盗殺人事件と断定し、深川署に捜査本部を設置した。 事件前には資産状況を尋ねる内容の「アポ電」と呼ばれる不審な電話があった。 1、2 月の別の緊縛強盗事件と手口が酷似しており、同庁は同一犯の疑いがあるとみている。 こうした電話は昨年、都内で 3 万 4 千件以上が確認されている。

警視庁犯罪抑止対策本部によると、「アポ電(アポイントメント電話)」は、息子などの親族や金融機関職員らを装って、事前に資産状況や自宅に現金がどのくらいあるか、家族構成などをさぐる不審な電話全般を意味する呼称だ。 警視庁は統計上「犯行予兆電話」と呼んでいる。 「お金いくらある?」 加藤さん宅にも、こんな電話がかかってきていた。 加藤さんは 2 月中旬、知人男性にこの電話の件を話していた。

警視庁の統計によると、「犯行予兆電話」がかかってきたという同庁への通報は、昨年 1 年間で計 3 万 4,658 件。 前年から 8,747 件増えた。 今年 1 月も 2,519 件で、前年同期比 159 件増。 歯止めがかからない状況が続いている。 同庁は、多くは 70 代以上が被害者の 76% を占める特殊詐欺の疑いがある電話だとみているが、1、2 月に 70 -90 代の夫婦が被害にあった東京都渋谷区の二つの緊縛強盗事件でも事件前、被害者宅に息子を装う「仕事上のトラブルがあった」といった特殊詐欺と同様の電話があり、自宅にある現金の額を尋ねられていた。

被害に遭わないためにどうすればいいのか。 警視庁幹部は「電話自体に出ないことが一番の対策だ。」 常に留守番電話に設定し内容を聞いてからかけ直すことなどを勧める。 特殊詐欺などに詳しい国士舘大学の辰野文理教授(犯罪学)は「一度犯罪を見破ったことがある人でも、別の手口ではだまされることもある。 犯行グループは次々とやり方を変えるので、個人の注意に頼るのは限界がある。」 そのうえで、証拠が残るために犯人側が嫌がる自動通話録音機や留守番電話の利用などを勧める。 「環境や機器に重点を置いた対策が、より効果的だ」と指摘する。 (asahi = 3-1-19)


豚コレラ、ジビエ業界に打撃 亥年で人気のしし鍋も自粛

愛知県と岐阜県で相次いで発生した豚コレラが、ジビエ業界に深刻な打撃を与えている。 田畑を荒らす野生イノシシを捕らえ、食材として活用する取り組みが広がりつつあったが、販売自粛などを迫られている。 愛知県豊田市の山間地にある「猪鹿工房・山恵(やまけい)」は 2 月初め、約 30 キロ離れていながら同じ豊田市の養豚場で豚コレラが確認されたことで、イノシシの引き取りを中止した。 店長の鈴木良秋さん (67) は「豚コレラは人に影響はないと言われるが、万が一、豚に感染を広げる原因となっては取り返しがつかない」と話す。

駆除したイノシシとシカの肉を有効利用しようと地元有志が立ち上げた店で、今年は創業 4 年目。 ロースやバラ肉のほか、ウィンナーなどの加工肉も扱い、売り上げは徐々に伸びていた。 取扱量の 9 割はイノシシで、昨年 4 月から今年 2 月初めまでに約 450 頭を引き取ったが、今後の入荷の見通しが立たない。 「この状態が続くと営業ができなくなる。 死活問題だ。」

豊田市北小田町でジビエ料理店「山里カフェ Mui (ムイ)」を営む清水潤子さん (47) によると、今年は亥(い)年とあって、イノシシ肉が一番人気。 自身で捕獲した元気なイノシシの肉だけを使い、解体の際にも異常がないか慎重に確認しているという。 「早く落ち着いてほしいけれど、そのためには感染源が解明され、正確な情報を発信してもらわないと」と話す。

豊田市と接する同県設楽町の観光協会は、昨年 12 月から「設楽猪(しし)鍋セット」の販売を自粛している。 毎年 300 セットを準備し、予約受け付け開始から 1 - 2 日で完売になっていた人気商品だが、「お客さんの不安を考えるとやむを得ない。 楽しみにしている人も多く本当に残念です。」と担当者は肩を落とす。

農林水産省は 3 月にも、国内で初めて野生イノシシにえさ型ワクチンを使うことを決めた。 「山恵」の鈴木さんは「専門家の間で効果について意見が分かれ、終息まで何年もかかるという話も聞くが、そんなに時間がかかるのは困る。 何よりも早く養豚場での感染が解決して終息宣言が出てくれれば。」と望む。 (asahi = 2-24-19)


小中学校へのスマホ持ち込みも 文科省、禁止方針の見直しへ

柴山昌彦文部科学相は 19 日の閣議後記者会見で、携帯電話やスマートフォンの小中学校への持ち込みを原則禁止した文科省通知を見直す方向で検討を始めると発表した。 高い所持率や災害時の連絡手段として有用なことを踏まえたもので、文科省は持ち込む際のルールの必要性も含めて議論を進める方針だ。 学校へのスマホなどの持ち込みを巡っては、大阪府教育庁が 18 日、公立小中学校で 2019 年度から児童や生徒の持ち込みを認めることを決め、運用のガイドライン素案を市町村教育委員会に提示している。 柴山氏は「大阪の動向を注視しつつ、見直しの検討を進めたい」と述べた。 (kyodo = 2-19-19)


食品ロス、賞味期限ギリまで許せば 3 割減 対策アプリも

売れ残った恵方巻きが大量に捨てられるなど社会問題化する「食品ロス」。 国内で発生する量は 1 年間で 646 万トン。 国民全員が毎日ご飯 1 杯ずつ捨てている計算だ。 こうした食品の廃棄をなくすため、様々な取り組みが始まっている。 「ピーマン 3 つ、調理パン 2 個」。 神戸市東灘区の主婦川西文子さん (33) は台所でスマートフォンに、残った食材や食べ残し食品を入力した。 「食品ロスダイアリー」と名付けられたアプリ。 家庭から出る食品ロスの削減を目的に、市の呼びかけで 1 月から実験的に始まった。 アプリは環境 NPO などが開発した。 モニターの市民が日記形式で入力する。

神戸市内の家庭から出る一般ごみは年間約 31 万トン(2013 年度)。 市は 25 年度までに 1 割減らす目標を立てる。 台所から出るごみの 2 割が食品ロスとみられ、これを減らしたい考えだ。 川西さんは「何をどれだけ捨てたか一目で分かるので便利。 冷蔵庫の食材を確認して買い物するようになりました。」と話した。

食品ロスの原因になっているのが食品鮮度に対する消費者のこだわりだ。 食品ロスの年間排出量をピーク時(00 年度)の 9.6 万トンから、20 年度にほぼ半減させる目標を掲げる京都市で昨年 10 月、「食品ロス削減全国大会」があった。 全国 111 の自治体関係者が集まり、最新の取り組みが報告された。 大会は 47 都道府県と 380 を超す市区町村が参加し、設立から 3 年になる「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」が主催した。

京都市は昨年と一昨年、スーパーの協力を得てヨーグルトやかまぼこ、豆腐などの加工食品の販売期限を賞味(消費)期限ぎりぎりまで延ばして販売する社会実験をした。 日本には、食品の製造日から賞味(消費)期限までの残り日数が 3 分の 1 になると商品を廃棄するという独自の商慣習がある。 「3 分の 1 ルール」と呼ばれるもので、これが食品ロスの一因になっているとの指摘がある。 (藤本久格、asahi = 2-11-19)


実質賃金、大半マイナス 実感乏しいアベノミクスの弱点

「毎月勤労統計」の不正調査で、2018 年の「実質賃金」の大半がマイナスになる可能性があることがわかり、野党が安倍政権への追及を強めている。 「名目」と「実質」の違いが、景気回復の実感に乏しいアベノミクスの弱点を改めて浮かび上がらせている。

「アベノミクスが重視する賃金の動向に疑義が生じている。」 国民民主党の榛葉賀津也氏は 31 日午前の参院代表質問で、安倍政権の「看板政策」を批判した。 これに対し、安倍晋三首相は「5 年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが連続している」と反論した。 だが、同日午後あった野党合同ヒアリングでも「アベノミクスにより賃金上昇だと言っていたが、実質賃金はマイナスだった」、「実質賃金隠しだ」などと、野党側による追及の気勢は上がる一方だ。

厚生労働省に端を発した統計不正では、他省庁を含めて他の統計でも次々とルール違反などが明らかになった。 そこに新たに野党の試算で、18 年 1 - 11 月の「実質賃金」の前年同月比の増減率を実態に近い数値でみると、大半でマイナスだった可能性が明らかになった。 野党が勢いづくのは「実質賃金」が、アベノミクスの「弱点」を突くデータだからだ。 (森田岳穂、内山修、松浦祐子、asahi = 2-1-19)


水まき足で踏めば完了 道路の応急修理「魔法の袋」開発

アスファルト舗装に開いた穴を、悪天候時でもわずか 1 分で応急修理できる携帯キットを中日本高速道路のグループ会社が開発した。 早業の秘密は、水に溶ける「魔法の袋」。 雪や雨で傷みやすい舗装を抱える全国の道路会社や自治体へも売り込んでいくという。

商品名は「TOKE (とけ)・パック」。常温のアスファルト合材 500 グラムを水溶性の袋で包んだ。 道路の穴にじかに置き、水をまいて足で踏むだけで補修が完了する。 雨や雪で、路面がぬれていればより短時間で仕上がる。 直径 30 センチほどの穴なら、合材を機械で固めていた従来方式で 5 分かかった作業が 1 分で済む。 中日本ハイウェイ・メンテナンス北陸(金沢市)などが開発した。 応急補修がしにくかった荒天時の作業を効率よくし、通行止めの時間短縮をねらった。 20 袋セットを 5,200 円(税別)で外販もする。 (asahi = 1-29-19)


有料老人ホーム運営の未来設計、民事再生法の適用申請

首都圏で有料老人ホームなど 37 施設を運営する「未来設計(東京)」が 22 日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。 介護施設では過去最大規模となる経営破綻の背景には、創業者への高額な役員報酬支払いによる資金繰りの悪化があった。 過去 8 年間で創業者に支払われた報酬の総額は計 22 億円にのぼる。

負債総額は約 54 億円。 同社が運営する老人ホーム「未来倶楽部」など 37 施設の入居者約 2 千人の生活に影響が出ないよう、昨年 7 月に同社の持ち株会社を買収した創生事業団(福岡市)が支援する再生計画案を準備している。 一方、ホーム入居時に支払われた入居一時金のうち、死亡などで返還義務が生じている約 2 億円(59 人分)については全額返すことはできない見通し。 一時金が全額返ってこない人はさらに増える可能性がある。

創生事業団が未来の幹部から聞き取るなどして調べたところ、創業者の伊藤英子氏 (70) に対し、調べることができた少なくとも 2010 年以降、毎年 3 億円前後の報酬が支払われていた。 16 年 8 月期以降は、預かり金である「入居一時金」を一括して売上高に計上して運転資金に回し、そこから伊藤氏への報酬が支払われていた。

こうした会計処理は伊藤氏の指示によるものだったと、未来の幹部は証言しているという。 同社は「不正な会計操作による高額な報酬支払いで経営が悪化した」として、伊藤氏らを相手に約 21 億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。 伊藤氏は昨年 12 月に朝日新聞の取材に応じ、一連の会計処理について「税理士に確認して大丈夫だと言われた」と話した。 伊藤氏の代理人弁護士は 21 日、「未来設計を破綻状態にさせたことは創生事業団の判断と責任」などとする伊藤氏のコメントを公表している。 (本田靖明、asahi = 1-22-18)


病気でも学び続けたい 入院中の高校生、遠隔教育に光

病気などで入院、治療中の高校生に対する教育支援に、文部科学省が乗り出す。 自治体によって対応に大きな差があるなか、ICT (情報通信技術)を使った病棟での遠隔授業などが広がることで、意欲があるのに退学や留年する生徒が減れば - -。 関係者は、そう期待する。

広島大学病院(広島市)でがんを治療中の市立高 1 年の女子生徒は、昨秋から病棟で遠隔授業を受けている。 直線で 10 キロ以上離れた教室から送られる授業の様子を、タブレット端末で見る。 教室側からは女子生徒の様子は見えない設定だ。 高校は、生徒にリポートなども課した上で出席とみなしている。 「先生の声や板書がよくわかる。 班で話し合う時は、発言者にカメラを向けてくれるから助かります。」と女子生徒は話す。

昨年 4 月に入学した 1 週間後に入院。 同病院の院内学級は、高校生に対応していない。 学校側に「学び続けたい」と希望を伝えたところ、担任や学年主任が 1 - 2 週間おきに病棟に来て指導してくれたが、勉強は遅れがちだった。 同病院で昨秋から始まった遠隔授業を受けられるようになり、「教室の雰囲気がわかるのがすごくうれしい。」 小児科の小林正夫教授は「これまでやむなく留年や退学する生徒がおり、つらい思いをさせて心苦しかった。 教育関係者と連携して支援を充実させたい。」と話す。 (上野創、asahi = 1-14-19)


インフラ劣化、衛星で監視 … 7 センチ沈下も検出

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、河川の堤防や空港、港湾のインフラ(社会基盤)劣化を、国や自治体、企業が地球観測衛星「だいち 2 号」を使って効率的に監視できるシステムを開発した。 一度に広範囲を監視でき、点検作業を大幅に軽減できるという。 2019 年度から有償で提供し、防災対策に活用してもらう。

だいち 2 号のレーダーは、地上へ電波を発射し、反射してきた電波を測定する。 地上の凹凸で反射の仕方が変わることから、地形の変化を観測できる。 JAXA はこの機能を応用して、堤防や空港、港湾の沈下や陥没を検出し、自治体なども利用できるシステムを完成させた。 JAXA が 14 年度から、企業と共同で技術を実証する実験を始めた。 その結果、1 級河川「由良川(京都府・兵庫県)」の堤防で発生した 30 センチ以上の沈下や、神戸空港(神戸市)での年間 7 センチの沈下を正確に捉えられ、実用レベルに達したと判断した。 (yomiuri = 1-13-19)


出国税、7 日から 1 人千円 27 年ぶり新税

飛行機や船で日本を出国する人から 1 人あたり 1,000 円を徴収する国際観光旅客税(出国税)が 7 日から始まる。 日本人のほか、訪日外国人客も対象になる。 航空会社などがチケット料金に上乗せする。 27 年ぶりの新税として、観光振興などの施策に充てる。 出国税は飛行機で入国後、24 時間以内に出国する乗り継ぎ客や、悪天候でやむを得ず立ち寄った国際船の客、2 歳未満からは徴収しない。 外国の大使や国賓なども対象外だ。 7 日より前に発券された航空券を使って同日以降に出国する人も基本的に非課税となる。

19 年度に約 500 億円の税収を見込む。 空港の出入国手続きの時間を短縮する顔認証ゲートの整備や、観光地での多言語解説の充実や、キャッシュレス決済への対応推進などに充てる。 訪日客は 18 年に 3 千万人を初めて突破し、今後も増加が見込まれる。 税収は訪日客を一段と増やすための環境整備に活用されるが、施設の整備が一巡した後の税収の使い道が今後の課題になる。 (nikkei = 1-6-19)


お餅の窒息事故、防ぐポイントは 消費者庁が注意喚起

お正月に食べる機会が多くなるお餅。 これからの時期は例年、のどにつまらせての窒息事故が多くなるとして、消費者庁が 26 日に注意を呼びかけた。 同庁が東京消防庁管内の事故を分析したところ、2016 年は餅による窒息で年間 88 人を救急搬送。 1 月が約 3 割にあたる 27 人で最も多く、12 月も 8 人いた。 高齢者は、かむ力やのみ込む力が弱くなるため、より危険が高まるという。

消費者庁は、餅を食べる際は、▽ 小さく切っておく、▽ 食べる前にお茶や汁ものを飲んで、のどを潤しておく、▽ よくかんで、唾液とよく混ぜ合わせてからのみ込む - - ことなどを呼びかけている。 (野村杏実、asahi = 12-31-18)


幼児・高等教育 "無償化" 決定 関係閣僚会議

幼児教育と高等教育の無償化についての詳細が決まりました。 「少子高齢化に真正面から取り組み、我が国の社会保障を、若者もお年寄りも安心できる全世代型に転換する。(安倍首相)」 政府は 28 日、幼児教育と高等教育の無償化について関係閣僚会議を開き、3 歳から 5 歳の子どもについては来年 10 月 1 日から、幼稚園や保育所、認定こども園などの施設の利用料を原則「無償」とすることを正式に決定しました。 認可外の保育施設についても、保育の必要性が認められれば、月額 3 万 7,000 円まで補助されます。

また、大学や専門学校などの高等教育については、再来年の 4 月から低所得者に対し、授業料を免除したり減額したりすると共に、返済する必要がない給付型奨学金を支給します。 住民税が非課税の世帯の年間支給額は、国公立大学の場合、自宅から通う学生はおよそ 35 万円、自宅以外から通う学生はおよそ 80 万円とし、私立大学の場合、自宅から通う学生はおよそ 46 万円、自宅以外から通う学生はおよそ 91 万円となります。 政府は、幼児教育・高等教育の無償化に年間 1 兆 5,364 億円かかると試算しています。 (TBS = 12-28-18)


郵貯限度額 2,600 万円に倍増、来年 4 月実施目指す = 民営化委が報告書

[東京] 郵政民営化委員会は 26 日、ゆうちょ銀行の預入限度額を現在の 1,300 万円から 2,600 万円に倍増させる方針を盛り込んだ報告書を取りまとめた。 報告書を受け、総務省と金融庁は政令改正の手続きに入る。 限度額の引き上げは 2016 年4 月以来。 報告書では、限度額の対象を「通常貯金」と「定期性貯金」に分け、それぞれ 1,300 万円ずつとすることとした。 来年 4 月からの実施を目指す。

現在のゆうちょ銀の預入限度額は、常時引き出しができる「通常貯金」、預け入れ日から 6 カ月間は引き出しができない「定額貯金」、預け入れ期間を指定する「定期貯金」の合計で 1,300 万円までとなっている。 民営化委は今年、3 年に 1 度の郵政事業の見直し作業を進めてきた。 限度額の扱いが焦点となったが、通常貯金の限度額撤廃を要望する日本郵政と、ゆうちょ銀への資金シフトや地域金融機関との関係悪化などを懸念する金融庁や民間金融機関との間で意見の隔たりが埋まらず、調整が長期化していた。

報告書は、日本郵政が保有するゆうちょ銀株について、3 分の 2 未満となるまで売却することなどを限度額引き上げの条件としている。 (Reuters = 12-26-18)


出生、過去最少の 92.1 万人に 人口自然減は過去最多

2018 年に国内で生まれた日本人の子どもは 92 万 1 千人で、前年より 2 万 5 千人減る見通しとなった。 統計を始めた 1899 年以降で最少。 死亡数は戦後最多の 136 万 9 千人で、出生数から死亡数を引いた「自然減」は過去最多の 44 万 8 千人になる。 厚生労働省が 21 日、人口動態統計の年間推計を発表した。 出生数が 100 万人を下回ったのは 3 年連続。 第 2 次ベビーブームの 1970 年代前半の 200 万人台から減少傾向にあり、平成の 30 年間で 32 万 6 千人減る見通しとなった。 厚労省の担当者は「出産の中心世代である 25 - 39 歳の女性人口の減少が主な要因」と分析する。

高齢化に伴って、死亡数は 9 年連続で増加。 初めて自然減となったのは 05 年で、06 年は自然増に転じたが、07 年からは自然減が続いている。 18 年に結婚した夫婦は戦後最少の 59 万組で、前年よりも 1 万 7 千組少ない。 離婚した夫婦は、前年より 5 千組少ない 20 万 7 千組となる見通しだ。 人口動態統計の年間推計は、その年の 1 - 10 月の市町村への届け出をもとにしている。 翌年 6 月ごろに概数が発表される。 (浜田知宏、asahi = 12-21-18)


セブン「顔パス」小型店、オフィスや病院、工場など狙う

コンビニ大手のセブン-イレブンが、「顔パス」で買い物できる小型の店を 17 日、東京都港区のオフィスビル内に実験的に開いた。 人工知能 (AI) を顔認証に加えて、商品の発注にも活用し、店員 1 人で切り盛りできるようにする。 オフィスや病院、工場の中など小さな商圏の開拓に役立てたい考えだ。 今回の店は 26 平方メートル。 おにぎりやサンドイッチ、ソフトドリンク、菓子など約 400 品目を扱う。 NEC の顔認証システムを使っており、NEC のグループ会社が入るビルに社員向けに開いた。 利用者は、社員証を自動ドアにかざして店に入る。 商品のバーコードをセルフレジで読み取ったうえで、社員証か顔認証システムで支払う。 (末崎毅、asahi = 12-17-18)


今年の漢字は「災」 京都・清水寺で発表

2018 年の世相を表す「今年の漢字」は「災」。 日本漢字能力検定協会(京都市東山区)が 12 日、清水寺(同)で発表した。 「今年の漢字」は阪神大震災が起きた 1995 年の「震」に始まり、今年で 24 回目。昨年は「北」だった。 新潟県中越地震などがあった 04 年も「災」が選ばれている。 (asahi = 12-12-18)


「今年の一皿」はあの青魚 健康志向で人気、缶詰も多彩

今年の世相を最も反映する食の一品を選ぶ「2018 年 今年の一皿」に「鯖(さば)」が決まった。 飲食店の情報サイトを運営する「ぐるなび」などが 6 日、発表した。 素材やデザインにこだわった多彩な缶詰が登場した上、1 年を通じて災害が相次ぎ、非常食の備蓄にも関心が集まったことなどが理由だ。 その年に話題になったことに加え、世相を映し、後世に受け継ぐ価値があるかどうかなどを基準に 14 年から発表されている。 EPA (エイコサペンタエン酸)、DHA (ドコサヘキサエン酸)などの必須脂肪酸を多く含むサバは、健康志向で人気が高まり、缶詰のほか、約 20 種類の「ブランド鯖」も登場しているという。

このほか、準大賞に、麻婆豆腐や担々麺など、中国・四川料理で多用される調味料・花椒(ホアジャオ)を使った「しびれ料理」を選んだ。 昨年の大賞は「鶏むね肉料理」、16 年は「パクチー料理」、15 年は「おにぎらず」、14 年は「ジビエ料理」だった。 「ぐるなび」の検索数などのデータ、会員アンケート、メディア関係者の投票をもとに決めた。 (asahi = 12-7-18)


「ボーっと …」流行語のチコちゃん、司会者に突っ込み

今年の世相を反映した言葉を選ぶ「2018 ユーキャン新語・流行語大賞(「現代用語の基礎知識」選)」の表彰式が 3 日、東京都内で開かれ、ベスト 10 入りした言葉の受賞者たちが喜びの声を語った。 平昌五輪カーリング女子日本代表チームが試合中に話していた「そだねー」で年間大賞を受賞したチーム代表理事の本橋麻里さんは「ポジティブな言葉だけを発するというルールで活動し、その言葉を評価されたのでうれしい。 地元の北海道では流行語というより普通の言葉です。」 「北海道の皆さん、取ったよー。 そだねー。」とあいさつして会場を沸かせた。

男性同士の純愛を描いたドラマのタイトル「おっさんずラブ」で受賞したテレビ朝日の貴島彩理プロデューサーは「視聴率的にはふるわなかった番組。 そんな中でもこのような場に呼んでいただけるということに、テレビ業界なのか、日本なのかの、温かい変化みたいなものを個人的に感じている」とコメントした。 裁量労働制に関する国会審議における加藤勝信・前厚労相の論点をずらしたのらりくらりとした答弁などをさした「ご飯論法」で受賞した上西充子・法政大教授は「この言葉はもともと私のツイートに(端を)発しています。 広めてくださったツイッターの住民の皆さんにも感謝します。」と述べた。

埼玉県熊谷市で 41.1 度の観測史上最高を記録する猛暑となった今夏。 「災害級の暑さ」で受賞した気象庁の榊原茂記広報室長は「地球温暖化の影響により今年のような猛暑になる年もあるかと思います。 気象庁としては国民の皆さまに一層暑さへの関心を持っていただきますよう、周知広報に努めていきたいと考えています。」とお役所らしいあいさつをした。

NHK のクイズ番組で司会を務める 5 歳児のキャラクター・チコちゃんの決めぜりふ「ボーっと生きてんじゃねーよ!」もトップ 10 入り。 史上最年少の受賞者と紹介されて式に登場したチコちゃんはさっそく「ねえねえ、『あす』と『あした』は何が違うの?」と質問。 聞かれた司会者が答えに窮しているとすかさず「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と突っ込みを入れていた。

ゲームを実際のスポーツ競技のようにみたてる「eスポーツ」では、日本 eスポーツ連合の岡村秀樹会長と、公開競技となったアジア大会で金メダルを獲得した相原翼さんが登壇。 岡村会長は「『eスポーツ』の言葉の認知度が大きく高まった 1 年だった。 流行語ではなく、普通の一般呼称として定着できるようになりたい。」 相原さんは「来年からは、『eスポーツ』の言葉だけでなく魅力を広められるようにしたい」と抱負を語った。

選考委員会の委員を務める「現代用語の基礎知識」の清水均編集部長は、「平成を振り返ると、平成元年の流行語は『セクシャル・ハラスメント』だった。 今年は『#MeToo』。 何も変わらないじゃないかというのが分かる。」 一方で「平成元年には『オバタリアン』も流行語で、今年は『おっさんずラブ』。 言葉は時代を映す鏡。 平成の 30 年がどんな時代だったのか、振り返ってみてはいかがでしょうか」などと語った。 (加藤勇介、asahi = 12-3-18)


セブン向け「野菜工場」を公開、来年稼働へ

セブン-イレブンのサラダ向けの野菜を来年からつくる神奈川県内の「野菜工場」が 28 日、報道関係者に公開された。 外部と遮断された工場内では LED の光でレタスを栽培し工程も自動化。 畑より収穫までが短期間で済む。 天候に左右されずに食材を安定生産できる仕組み。 他のコンビニでも工場でつくった野菜を使う動きが出ている。 工場はセブン-イレブン・ジャパンなどが出資する食品製造会社、プライムデリカが運営する「相模原ベジタブルプラント(相模原市)」で、来年 1 月に稼働する。

栽培時には LED の光をあててビタミン C の含有量を増やす。 産業機械大手の安川電機(北九州市)の協力で工程も自動化。 フル稼働時の人員は一般的な野菜工場の約 4 分の 1 になる。 露地栽培では種まきから収穫まで 60 - 70 日かかるが、工場では 40 日弱。 ホウレン草やパクチー、イチゴの生産にも挑戦していく。 投資額は約 60 億円で延べ床面積は 7,872 平方メートル。 当面はリーフレタスを 1 日 300 - 400 キログラム生産する。 20 年春ごろにフル稼働し、想定ではリーフレタス換算で 1 日約 3 トンの生産能力を持つ。 この工場の野菜をつかった商品は神奈川県や東京都の一部の約 2 千店に並ぶ。

セブン-イレブン・ジャパンによると、近年は天候不順で野菜の品質悪化や価格上昇などの悪影響が出ている。 工場なら天候や気温に左右されず安定して収穫でき、無農薬栽培も可能だ。 セブンの古屋一樹社長は「国内の農業従事者が減り、異常気象で安定供給もはかれず危機感を持っていた。 今回の工場は第一歩で期待している。」などと語った。 (末崎毅、asahi = 11-30-18)


パン給食が消える? 業者は悲鳴「せめて週 2 回出して」

かつては学校給食の中心だったパン。 最近では全国平均で週 1 回程度しか提供されず、業者が次々姿を消しているという。 なぜ、こんなに減ったのか。 10 月中旬、岩手県北部にある葛巻町立江刈小。 給食の時間になると、子どもたちは持参したお弁当箱を開け始めた。 中身はほとんどがご飯だ。 同町ではこの 1 年、給食で主食が提供できていない。 昨年 9 月末、給食パンを納入していた同県一戸町の「一野辺製パン」が破産したためだ。

破産管財人の弁護士によると、給食パンの回数が減ったことが一因という。 同社は米飯も提供していたため、給食で主食が出せなくなった。 その後、他県の業者が工場を購入して操業を始めたが、中山間地の葛巻町へはコスト面からパンを配送できないという。 町は、今年度中は児童に主食を持参させる方針だ。

全日本パン協同組合連合会(全パン連)によると、昭和 20 - 40 年代に 6 千社あった給食パン業者は現在、1,300 社を切っている。 一番の理由は、パン給食の回数が減ったことだ。 かつては週 5 回だったが、文部科学省の 2016 年の調査によると、米飯は週平均 3.4 回で、残りはパンか麺。 全パン連によると、パンは平均 1.3 回という。 川島弘士副会長 (74) は「毎年 100 社消えている。 せめて週 2 回のパン給食が維持されないと業者はなくなる。」と言う。

今年 4 月に廃業した茨城県日立市の「キムラヤ」も 2 年前、給食パンの製造をやめた。 日立市などがある県北部のパン食の回数は、週平均 1.5 回。 経営していた平子允秀さん (77) は「パン給食が減ったのが閉店理由の一つ。 週 1 回程度で設備投資ができない。」 (渡辺朔、山下知子、asahi = 11-30-18)


電動車椅子で飲酒ダメ? 「誤操作恐れ」 警察庁呼び掛け

電動車椅子を利用中の飲酒を巡る警察の対応について、障害者団体が抗議を寄せている。 警察庁が「操作を誤らせる恐れがある」などとして禁止を呼び掛けているためだ。 団体は「不当な差別だ」として改善を要望。 道交法上、車椅子は歩行者扱いだが、普及に伴って事故も増えており、識者の間でも見解が割れている。

「飲酒等して電動車いすを利用することは絶対にやめましょう。」 警察庁が 2002 年に作成し、ホームページで公開している「電動車いすの安全利用に関するマニュアル」の一文だ。 飲酒による影響で、危険の感じ方が鈍くなったり、操作に支障を来したりするなどとして、飲酒の禁止を強く呼び掛けている。 道交法は、電動車椅子も含めて車椅子や歩行補助車等を歩行者と定義している。 高齢者が使う三輪や四輪の電動シニアカーも電動車椅子に含まれている。 警察のマニュアルは、こうした車両と障害者用の電動車椅子を区別していない。

これに対し、障害者の権利を訴える NPO 法人 DPI (障害者インターナショナル)日本会議(本部・東京)が 8 月、警察庁にマニュアルの飲酒に関する部分を削除するよう要望書を提出。 電動車椅子の利用者のみに飲酒を禁止することは「道交法に矛盾しており、障害者差別解消法で禁じている不当な差別的取り扱いに当たる」としている。 実際、電動車椅子を利用する障害者に対し酒類の提供を拒否する事例も起きている。 滋賀県の大学非常勤講師頼尊(よりたか)恒信さん (39) は 6 月、ビール工場を見学した際に「電動車椅子の人は試飲できません」と伝えられた。 抗議すると「試飲の時だけ手動に切り替えるなら」との条件でようやく認められた。

日頃も、飲食店などで「飲酒運転になるのでは」と店主から心配されるという頼尊さん。 説明して納得してもらえれば提供してもらえるが、拒否されることもある。 「店の考え次第で、飲酒の権利が奪われるのはおかしい」と話す。 警察庁によると、電動車椅子の交通事故は 2012 - 17 年で年間 155 - 215 件発生、うち利用者が飲酒した状態だったのは 1 - 5 件だった。 警察庁の担当者は本紙の取材に対し「高齢化で電動車椅子の利用者が年々増える中、飲酒状態で電動車椅子を利用した人の死亡事故も発生している」として、マニュアルは変えない考えを示している。

差別に当たる

<障害者の権利に詳しい川島聡・岡山理科大准教授(障害法)の話> 法律で禁止されていない飲酒を店側が断るのは過剰ではないか。 車椅子の人は自宅でしか飲酒できないことになり、差別に当たる。

事故多く危険

<車椅子事故を調査した縄井清志・つくば国際大教授(福祉工学)の話> 福祉用具が体の一部なのは理解できるが、高齢化で電動車椅子の利用者は増え、事故も多い。危険なので飲酒は控えたほうがよい。

試飲断られ店を提訴 「多様性受け入れて」

電動車椅子の利用者に飲酒禁止を呼び掛ける警察の対応が議論を呼ぶ中、電動ではない車椅子でも、店側の判断で飲酒は危険だとして、酒類の提供を断られ、訴訟に至ったケースもある。

障害があり、車椅子を利用しているカナダ出身の料理研究家カトロウン・デニーさん (57) = 東京都 = は 8 月、西武池袋本店内のワイン販売店で、有料でワインを試飲したが、二杯目を受け取った際に別の店員から試飲をやめるように言われた。 カトロウンさんは「人権侵害だ」として西武池袋本店に抗議書を提出。 同店は、2016 年にワインの試飲会場で車椅子の車輪が他の客の足をひく事故があり、以降は車椅子利用者には試飲を遠慮してもらっていると回答した。

カトロウンさんはこれまで、飲食店で飲酒を断られた経験はなく「五輪に向け多くの人が日本を訪れるというのに、多様性を受け入れられないようではいけない」と主張。 そごう・西武とワイン販売店を相手取り、170 万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴し、21 日に第一回口頭弁論が開かれた。 そごう・西武によると、西武池袋本店は 8 月から車椅子利用者に対しても、危険性を説明した上で客側が希望すれば提供している。

警察庁によると、電動でない車椅子の交通事故は 2012 - 17 年に年間 60 - 101 件発生。 うち、利用者が飲酒していたケースは 1 - 3 件だった。 警察庁は本紙の取材に対し「手動の車椅子でも、利用時の飲酒は危険」との認識を示している。 (浅野有紀、東京新聞 = 11-24-18)


子どもにシラミ、今も絶えず 過剰反応は禁物、対策は?

人の頭に寄生するアタマジラミ。 不衛生だった時代の話と思いきや、子どもを中心に今も発見例が絶えない。 周囲で感染者が出たらどうすべきか。 「クラスの子の頭からシラミが見つかりました。」 今月中旬、保育園に子どもを迎えに行った横浜市戸塚区の女性 (29) は保育士に告げられ驚いた。 「今どきシラミなんて。」 感染を恐れ、しばらく子どもを休ませた。 アタマジラミは体長 2 - 4 ミリ。 人の頭に寄生し、血を吸われるとかゆくなる。 後頭部を中心に卵を産み付け繁殖する。 感染が分かったら、専用のシャンプーやすきぐしで駆除する。 (吉野慶祐、asahi = 11-23-18)


来年から出しません「終活年賀状」広がる 40 歳の人も

来年から年賀状を辞退させていただきます。 そんな一文を、年始のあいさつに添える「終活年賀状」が広がりつつある。 人間関係を整理したいから、高齢になったから。 さまざまな理由で、長年親しんできた年賀状のやりとりについて考える人たちがいる。 年賀状の受付けは 12 月 15 日から始まる。

《皆様と交わして参りました年賀状ですが、誠に勝手ながら今年をもちまして書きおさめとさせていただきます。》 新年のあいさつに続いて、年賀状の「終了宣言」が印刷されていた。 神奈川県の男性 (69) が 2017 年の正月に受け取った年賀状だ。

差出人は 70 代後半の夫婦。 男性は思った。 「お互い高齢になり、こういう終活もありだな。」 男性も翌年、文面をまねて終活年賀状を書いた。 毎年出してきた約 50 枚のうち、今後のつきあいがなさそうな 5 人ほどに、年賀状をやめたい気持ちと感謝の言葉も手書きで添えた。 「印刷や宛名の名簿の管理が面倒だし、あまり思い入れがなく、つきあいも薄くなった人との関係を整理したい気持ちもあったから。」 東京都の弁護士の男性 (72) にも、7 年前ごろから終活年賀状が届くようになった。 今年の正月は 10 枚ほどあった。

《高齢になったので》 《米寿を迎えたので》 そんな理由も書かれていた。 「縁切り状のようなものだけど、何も言わずにやめるのではなく、きちんとあいさつしてくれて気配りなんだと思った。」 届いた人たちへの年賀状は、翌年から出していない。 都内の会社員の舩木真由美さん (40) は、年賀状の「終活」を試してみた。 もともと年賀状づくりが面倒で、大そうじなどで忙しい年末に慌てて作っていた。 昨年、終活年賀状という言葉を知った。

「人生 80 年としたら、私も折り返し地点。 こなす感覚で続けてきた年賀状のやりとりをやめて、関係を整理してみよう。」 1 枚も書かなかった昨年末は、いつもよりゆったり過ごせた。 だが、年が明けて友人たちから年賀状が届くと、申し訳ない気持ちが募り、結局、順番に年賀状を返した。 メールや LINE で「実は終活で年賀状を終わりにしようと思うんだ」と伝えると、驚いた友人たちからは「楽しみにしていたのに」との返信もあった。

舩木さんは毎年、家族 4 人で新年の抱負を「あいうえお作文」で考え、年賀状に書いていた。 その言葉を友人たちが心待ちにしていたことを知ったのだ。 「大変だけど、喜んでもらえるなら作ろうかな。」 結局、考え直して今年の年末はまた年賀状を出そうと考えている。 ただ、考え方は人それぞれ。 終活年賀状という選択肢も広がるといいなと思う。

文案の提供サービスも

昨年、葬儀サービス会社「鎌倉新書(東京)」がマーケティング会社に登録する 65 歳以上のモニター約 200 人を対象に実施した調査によると、「終活年賀状を受け取ったことがある」という人は 57% だった。 受け取った時や、受け取ることを想像した時の気持ちを問うと、7 割近くが「さびしい」と答えた。 実際に「出したことがある」は 6%。 一方、半数近くが「終活年賀状を送ろうと思っている」と答えた。 理由は「付き合いを身近な範囲にとどめたい」、「年賀状作成の負担が大きい」、「体力に自信がなくなった」などさまざまだ。

年賀状のイラストなどのダウンロードサイトを運営する「TB (名古屋市)」は、昨年から終活年賀状用の文案の提供を始めた。 《寄る年波には勝てず》 《手元がおぼつかなくなり》といった「理由」や、《今後は年賀状を控えさせていただきます》 《今年をもちましてごあいさつ状を最後に》という辞退の文案を例示している。 主な顧客層は 70 - 80 代。 その世代を親に持つ 40 代前後の層も狙う。 体力的にも書くのが難しくなった親に代わり、子ども世代が終活年賀状を書いて出すことを想定している。 「高齢化で、終活年賀状の需要はますます増えていくのではないか」と担当者は話す。 (佐藤恵子、asahi = 11-15-18)