ノジマ社長、社内ネットで実名挙げ「使い物にならない」

家電量販店ノジマ(横浜市、東証 1 部)の野島広司社長 (68) が、子会社の社員の実名を挙げて「使い物にならない」などと責めた文書が子会社のイントラネットに昨年 8 月に掲載されたことがわかった。 この社員は昨年末に退社した。 ノジマは「社員教育の一環」とするが、専門家は、国が企業に防止策を義務づける方針のパワーハラスメント(パワハラ)にあたると指摘している。

子会社は、携帯電話販売代理業「アイ・ティー・エックス(東京)」。 ノジマが 2015 年に買収して完全子会社化し、野島氏が社長を兼ねている。 複数の関係者によると、この文書は昨年 8 月 28 日、野島氏のこの日の朝礼の発言として、全従業員約 2 千人(18 年 3 月時点)が閲覧できる社内連絡用のイントラネットに掲載された。

西日本地区の店舗を視察した時の話として、店長の社員を名指しした上で「こんなひどい店長がいるのかと思うぐらいのひどい店長でした。 非常に騙すのが上手く、やるやる詐欺と、どうやって上司に認められるか、ということだけを考えているようで、この子は使い物にならない人だなというのが私の見立てでした」と記されている。

さらに、「(店長の)元部下だったという一人の女性が『(店長は)ロクな人ではなかった』と話していたので、あなた(女性)の方が凄いねと褒めてあげたいぐらいでした」と他の社員からの伝聞の形でも店長を責め、「人のまねをしたり、うそをついたりする方々を、皆さん見抜けるようになってください」、「是非とも格好つけでなく、お客様に真面目に向かって行動し、心を正して進めてください」と呼びかけている。

ノジマ総務部は取材に対し、問題の文書を載せた目的を「代表の野島が感じた事を率直に話し、それを文字に起こしたもの。 社員教育の一環として啓蒙するために、従業員に対して良い事例も悪い事例もオープンにするため。」とした。 パワハラとの指摘に対しては、「精神的・身体的苦痛を与える意図ではなかったが、今回は該当者が気分を害す表現であったかもしれず、今後は従業員に対するメッセージや、その表現についてこれまで以上に配慮する」としている。 (堀内京子、村上晃一、asahi = 3-14-19)


シニア社員にベア 7 万円 JR 西、再雇用後の待遇改善

JR 西日本は 13 日、2019 年春闘交渉で、60 歳の定年後に再雇用したシニア社員について、月額 7 万円のベースアップを回答した。 20 年 4 月から働き方改革関連法で求められる「同一労働同一賃金」を先取りしようと、ベテラン社員の待遇を大幅に改善する。

シニア社員は全体の約 4% にあたる約 1 千人おり、8 月から実施する。 早朝、深夜の勤務に対する手当など各種手当も年間計数十万円上乗せする。 同社ではシニア社員の年収が現役時代の約 5 割の水準に落ちるが、今回の改善で約 6 割になるという。 同社は「技能や技術を持つベテラン社員の働きがい向上につなげたい(人事部)」と話す。 一方、一般社員については、前年より 200 円少ない月額 1 千円のベアを回答。 ベアの実施は 6 年連続で一時金は 5.48 カ月とした。 (西尾邦明、asahi = 3-14-19)


中国・九州で本の発売日 1 日遅れに 運転手の労務改善で

日本出版取次協会は、中国地方と九州地方で 4 月 1 日以降、雑誌や書籍の店頭発売日が遅くなると発表した。 本の輸送会社から、人手不足によりトラック運転手の長時間労働が常態化しており、法令違反の状態にある現状を改善したいと要請を受けたためだという。 輸送に時間のかかる地方では今も首都圏とは発売日が異なっており、書籍と雑誌ともに基本的に中国地方は 1 日遅れ、九州地方は 2 日遅れ。4 月以降はそれぞれの地域で書籍の発売日がさらに 1 日遅くなる。 中国地方ではほとんどの雑誌も同じくさらに 1 日遅れとなるほか、九州地方ではニュースを扱う総合週刊誌などが 1 日遅れる見込みだ。

北海道や沖縄は、トラックではなく鉄道や船による輸送が中心のため、変更はないという。 出版流通関係者は「トラック業界で法令順守の動きが強まるなか、現状の発売日の維持が難しい地域はほかにも出てくるかもしれない」と話す。 電子書籍の普及も進んでおり、発売日の遅れの広がりは地方の書店に影響を与えそうだ。 (加藤勇介、asahi = 3-11-19)


収入は男性の 4 分の 3 男女の賃金格差にノン、仏でデモ 国際女性デー

国際女性デーの 8 日、パリで男女の賃金格差に象徴される性差別に抗議するデモがあり、中心部のレピュブリック広場に集まった人々は「不平等なシステムをひっくり返そう」などの垂れ幕を掲げて差別解消を訴えた。 フランス国立統計経済研究所 (NSEE) によると、フランス人女性の収入は男性の約 4 分の 3 にとどまる。 これをアピールしようと、労組を中心に「就業時間も 4 分の 3 でいいはずだ」として、定時より早い午後 3 時半からデモに加わるよう呼びかけた。

図書館員のセシル・ゴボさん (37) は「賃金が決して高くない私のような職場や学校教員の多くは女性が担っている。 私には 2 人の娘がいる。 2 人にはもっと公正な世の中を生きてほしい。」と語った。 この日に発表された独立行政機関の調査では、フランスの国民議会(下院)では女性議員が 4 割を占める一方、テレビやラジオの政治番組に招かれるのは男性が中心で、女性は 27% に過ぎないとも指摘された。 (パリ = 疋田多揚、asahi = 3-9-19)


ゆうパック、玄関前に「置き配」サービス 再配達解消へ

日本郵便は 18 日から、宅配便「ゆうパック」で届け先が希望すれば荷物を玄関前に置くサービスを始めると、8 日発表した。 再配達にかかる人手を減らす狙いがある。 同社は昨年、自宅の宅配ボックス、郵便受け箱、メーターボックス、物置、車庫の 5 カ所のどこかをインターネットで指定すれば、そこに荷物を置いていく「置き配」サービスを始めると発表。 今回、配達場所に「玄関前」を加えた。

家にいない時間が長い人や、育児中などでチャイムを鳴らしてほしくない人の利用を見込む。 玄関前に置く場合、日本郵便は鍵つきの宅配バッグなどの利用を想定する。 それでも、荷物が盗まれたりなくなったりするリスクはあるが、日本郵便として補償する考えは基本的にないという。 (asahi = 3-8-19)


レナウン、新入社員の奨学金返済を支援 最大 36 万円

アパレル大手レナウンは 28 日、新入社員らの奨学金返済の支援を 10 月から始めると発表した。 月 1 万円を最長 3 年間給付し、最大で 36 万円になる。 売り手市場の新卒採用で、優秀な人材を確保する狙いもある。 入社 1 年目と 2 年目の社員に 3 年間給付するほか、給付期間が段階的に短くなるものの入社 5 年目までを対象としている。 総合職の新入社員の初任給の場合、20 万 1 千円(勤務地手当を除く)に月 1 万円が加算されることになる。 (高橋末菜、asahi = 2-28-19)


井村屋 G 社長に初の女性 アルバイト出身の中島伸子氏

「あずきバー」などを手がける食品メーカーの井村屋グループ(津市)は 22 日、4 月 1 日付で中島伸子副会長 (66) が新社長に就く人事を発表した。 女性のトップ就任は 1896 年の創業以来初めて。 多様性を重視する経営姿勢を打ち出し、持続的な成長を図るねらいという。 中島氏は新潟県出身。 福井営業所でのアルバイト勤務を経て、25 歳で正社員登用試験を受けて入社した。 3 人の子どもを育てつつキャリアを重ね、53 歳で女性初の執行役員と関東支店長に就任。 その後も女性初の取締役や副社長、副会長を歴任してきた。

お祝い時の赤飯のように小豆を使った食文化を残そうと、毎月 1 日を「あずきの日」にするキャンペーンを提案するなど、豊富なアイデアの持ち主としても知られる。 同社は多様性を重視した経営改革を進めており、これまでの実績を踏まえて中島氏の社長就任が決まった。 大西安樹社長 (60) )は代表権のない取締役に退く一方、新事業開拓のために 3 月に立ち上げる新会社「井村屋スタートアップ プランニング」の社長に就く。 今後の成長に向け、健康や和をテーマにした事業を企画するという。 (斉藤明美、asahi = 2-23-19)


フィンランドのベーシックインカム暫定結果 「雇用促進はしないが幸福感は向上」

フィンランドの Kela (国民年金局)が試験導入したベーシックインカム(以下 BI)の暫定的な結果が発表された。 目的としていた雇用促進には効果が見られなかったが、給付対象者の幸福感が向上することが判明している。 本試験は、2017 年 1 月から 2018 年 12 月まで、失業手当受給者から無作為に選ばれた 2,000 人を対象に行われたもの。 月額 560 ユーロ(約 6 万 8,000 円)を給付することで、雇用促進を狙い実施された。 今回の発表は 1 年目のデータを元にしたもの。

BI 受給グループ(失業手当など他の社会保障の受給資格は失われない)と対照グループ(同時期に失業手当を受けたが BI は受け取っていない)を比較し、BI 給付が幸福度に影響していることがわかった。 健康状態について、「良好」また「非常に良好」と回答した受給グループは 55% であったのに対して、対照グループでは 46% という結果に。 また、受給グループはストレスが非常に強いと感じている比率が 17% であったのに対し、対照グループは 25% であった。

1 年目のデータでは、雇用促進に関する影響は確認できなかったが、受給者は就職先を見つける自信を手に入れていた。 Kela の主任研究員は「(BI 受給者は)ストレスや集中しづらい、健康問題といった症状が少ないことがわかりました。 また、将来や自身の能力が社会に与える影響についても自信を持っています。」と述べている。

本試験結果は 2019 年から 2020 年にかけて段階的に公開される予定。 2019 年春には、ヘルシンキ大学などの学術機関やシンクタンクを交えての評価が始まる。 試験結果を踏まえて、フィンランドに BI を本格導入するか検討される。 (関口雄太、ねとらぼ = 2-18-19)


幼保を無償化へ閣議決定 衆院選での安倍政権の目玉公約

政府は 12 日午前、10 月から始める幼児教育・保育の無償化に向けて子ども・子育て支援法改正案を閣議決定した。 無償化の対象となるのは、すべての 3 - 5 歳児と住民税非課税世帯の 0 - 2 歳児。 政府の試算では、新たにかかる費用は年 7,764 億円。 このうち国は4割、地方は6割を負担することになる。 無償化は、安倍政権が一昨年の衆院選の目玉公約として打ち出した。 当初は認可保育所と幼稚園、認定こども園を無償化する方針だったが、認可保育所に入れず認可外を利用する人らが反発。 一転して認可外も無償化に含めた。

ただ認可外の範囲を巡り、自治体が安全性を求めて強く反発したため、法案では自治体が条例を設けて認可外の対象を限定することを認めている。 無償化について、野党からは「高所得者優遇だ」、「待機児童問題を優先すべきだ」などと批判する声があがっている。 この日は、低所得世帯を対象にした高等教育の負担軽減策についての法案も閣議決定された。 (asahi = 2-12-19)


勤務医の労働時間短縮計画、作成を要求へ 病院に厚労省

勤務医に残業時間の罰則つき上限が 5 年後に適用されることを控え、厚生労働省は、勤務医の労働時間を短縮する計画の作成を医療機関に求める検討を始めた。 残業が長くなる要因を医療機関ごとに客観的に評価、指導する体制づくりも進める。

医師の働き方改革を議論する検討会で 6 日、提案した。 計画を求める医療機関などの詳細は今後詰め、新年度以降の開始を目指す。 昨年成立の働き方改革関連法で、大企業は今年 4 月、中小企業は来年 4 月から罰則つきで残業が最大年 960 時間に規制される。 ただ、勤務医は例外扱いで上限は別途決めることになり、2024 年 4 月から適用される。

厚労省は先月、一般勤務医の上限は年 960 時間と提案。 この上限では地域医療を守れない場合があるなどとして、「年 1,900 - 2 千時間」という特例を設ける案も示した。 特例は 35 年度末までの期限つき。医療機関を特定し、次の勤務までの休息を9時間以上確保させたり、連続勤務を 28 時間までに制限したりする措置を条件としている。 ただ、一般労働者の2倍とする案への反発は強く、今後5年間に労働時間の短縮を進め、特例の対象を絞り込む構えだ。

厚労省案では、特例の対象になり得るかを医療機関が検討し、短縮に向けた計画をつくる。 また、ひとつの医療機関だけの対応には限界があるため、地域の実情を踏まえて長時間労働の要因や取り組み状況を評価、指導する仕組みも設ける。  評価結果は医療機関や都道府県に知らせる。 (姫野直行、阿部彰芳、asahi = 2-6-19)


スシロー、店舗を一斉休業 働き方改革で今月 5、6 日

回転ずし最大手の「あきんどスシロー」は 2 日までに、今月 5 日と 6 日の 2 日間、ほぼ全店に当たる約 500 店舗を一斉休業すると発表した。 「働きやすい環境づくりの一環」と説明している。 一斉休業は、店舗が全国に広がった近年では初めての取り組みという。 休業するのは、ショッピングモールなどに入っていて休めない 11 店を除く全国の店舗。 従業員からの要望もあり、休日の確保が現場の士気向上につながると判断した。 担当者は「お客さまや関係者への影響を最小限に抑えつつ、働きやすい環境づくりにつなげたいという思いで一斉休業の形をとることにした」と話している。 (sankei = 2-2-19)


スバル、残業代未払い 7.7 億円 過労自殺から判明

自動車大手スバルが 2015 年から 17 年にかけて、社員 3,421 人に計 7 億 7 千万円の残業代を払っていなかったことが、24 日わかった。 16 年に男性社員が過労自殺し、その後の社内調査で昨年 1 月までに判明した。 スバルはこれまで 1 年間にわたり問題を公表しておらず、企業姿勢が問われる事態だ。 24 日に男性の遺族の代理人が会見し、男性に残業代の未払いがあったと説明。 さらにスバルは朝日新聞の取材に対し、未払いが多数の社員に広がっていたと明らかにした。

代理人によると、16 年 12 月、車両工場の群馬製作所(群馬県太田市)の総務部に勤務する男性社員(当時 46)が、長時間労働や上司の激しい叱責が原因で過労自殺した。 スバルによると、同製作所の社員数人に残業代未払いがあったとして、太田労働基準監督署から 17 年 7 月に同製作所が太田労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けたという。

こうした中で、同製作所では社員の残業時間を把握できていないことが判明した。 そのためスバルは 17 年末、社内全部門の非正規を含めた社員 1 万 7,359 人について、15 年 7 月から 2 年間の未払い残業代の有無を調査。 その結果、残業時間の記録は社員の自己申告だけで、パソコンの使用や入退社の履歴などとは照合されず、過少申告が常態化していたことがわかった。

過少申告の理由について、社員の約 6 割が「(部署で決めた残業時間の)上限を超えないようにした」と回答。 「上司から残業の指示を受けていなかった」との回答も約 2 割あったという。 上司による過少申告の指示は確認できなかったとしている。 スバルは「(調査結果を)隠すような意図はなく、公表すべきだとは認識していなかった(広報)」としている。 (滝沢卓、asahi = 1-24-19)


老舗ホテル、今年も異例の 10 連休中 減収でもハッピー

昨年、異例の 10 連休を導入した大分県別府市の老舗ホテル「杉乃井ホテル(647 室)」が、今年も 10 連休に入っている。 顧客の満足、従業員のモチベーション、収益への影響 …。 様々な懸念を乗り越え踏み出した佐々木耕一・総支配人 (71) の「従業員のハッピーが、お客様のハッピーに」との思いは、2 年目も揺らいでいない。 「全館満室」が当たり前の人気ホテルは、別府湾を見下ろす高台に立つ。 15 日から 24 日まで閉館しており、あたりにいつものにぎわいはみられない。

「お客様の満足度にひたすらこだわってきたが、社員の満足度にも力を注がないといけない。 連休拡大は避けては通れなかった。」 佐々木総支配人は、10 連休導入の理由をそう話す。 以前も年末年始の繁忙期後の 1 月中旬に、5 日連続で休館をしていた。 ただ、普段は従業員が連休を取ることは難しい。 「このままでいいのか。 働いている本人はよくても、家族はどうだろうか。」と、長い間悩んできた。 背中を押したのは、政府が取り組み始めた「働き方改革」だ。 有能な人材を集めるためにも改革は不可欠。 「どうせなら 10 連休にしよう」と思い切った。 社内でも大きな反対はなく、実現に至った。

対象者はフロントや調理など、現場で働く約 500 人。導入は社員らから歓迎された。 初めて家族旅行をしたり、介護が必要な親を遠く離れるひ孫に会わせたり。 短い休みでは難しかったことを実現させる社員も多かった。 連休中には希望者向けに 5 日間の海外視察も用意。 約 200 人の交通費や宿泊費などの経費は会社が 65% を負担する。 調理担当の松木美咲さん (19) は昨年ハワイの視察に参加。 「海外の店員の接客も勉強になった。 この連休を毎年続けてほしい。」と話す。

ホテル利用客の反応は様々だ。 広島市の 60 代の男性経営者は「サービス業でしょ。 そろって休む必要はあるのかな。 交代でという選択肢もあるのでは。」とやや辛口。 一方、日田市の会社員森郁恵さん (25) は「それでリフレッシュできるなら」と肯定的だ。 宮崎県都城市から夫婦で訪れた森知代巳さん (50) は、「働く人のことを考えたら絶対にいい。 お休みなら利用者は別のホテルを探せばいい。」

ただ、満室続きなのに休館すれば、収益への影響は避けられない。 週末も休むことになるため、結婚式や披露宴、イベントなど宿泊以外でも大きな額の損失が出る。 昨年の連休中の減収は、予想をはるかに上回る数億円にのぼった。 それでも、「社員がリフレッシュできるなら、どちらを取るかは明白だ」と佐々木総支配人は断言する。 社員たちが外で経験するおもてなしやサービスで「ハッピー」になることが、仕事への新たな意欲にもつながると考えるからだ。

「休んだことで明るくなり、いいホスピタリティーで接客できれば、お客様もハッピーになる。 それが会社の評価や知名度向上にもつながる。 10 連休には減収に勝るメリットがある。」 (前田朱莉亜、asahi = 1-19-19)


過少給付延べ 2,015 万人に 統計不正、厚労次官処分へ

厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる問題で、同統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険で本来より少なく給付されていた人が、延べ約 2,015 万人になることが分かった。 当初公表の人数から約 42 万人増える。 厚労省は 11 日の発表で計約 1,973 万人としていたが、精査した結果、失業手当や育児休業給付などを含む雇用保険の対象者が約 42 万人上積みされたという。 過少給付は雇用調整助成金などの助成金 30 万件でもあった。 追加給付に関する費用は、事務費やシステム改修費などの約 200 億円を含めて約 800 億円に上る。

政府は、問題が発覚する前の昨年 12 月 21 日に閣議決定した 2019 年度予算案を見直し、この問題の対応に必要な予算を反映させた予算案を 18 日に閣議決定し直す予定。 こうした対応は極めて異例だ。 一方、根本匠厚労相は同省の鈴木俊彦事務次官らを処分する方向で検討に入った。 同省関係者によると、省内に設置された特別監察委員会の検証結果を踏まえて、具体的な処分内容を決めるという。 (asahi = 1-18-19)

◇ ◇ ◇

雇用・労災保険、過少給付 537 億円 対象は 1,973 万人

賃金や労働時間を示す毎月勤労統計で不適切な調査があった問題で、厚生労働省は 11 日、同統計を基に算定する雇用保険と労災保険の過少給付額が約 537 億円にのぼると発表した。 対象者数はのべ 1,973 万人。 厚労省は過少だった全ての対象者に対して不足分を追加で給付する。 根本匠厚労相は同日、記者会見で「ご迷惑をおかけしたことをおわびする」と謝罪した。 不適切調査は 1996 年から始まった。 500 人以上の事業所は全数調査としていたが、東京都は抽出調査をしており、1 千近い事業所が抜け落ちていた。 総務省が 18 年 12 月に指摘し、発覚した。

厚労省は 04 年から 17 年にかけ実態に近づける統計上の加工をしていない。 中小企業より賃金が高い大企業の数が少なくなっていたため、公表していた賃金額が実際より低くなっていた。 基本給など「毎月決まって支給する給与」では、これまでの公表値との誤差が平均 0.6% だった。 過少給付の対象者には、04 年までさかのぼって不足していた分を追加給付する。 厚労省はシステム改修や住所の特定などを経て、「できる限り速やかに給付を開始する」としている。 対象者がもらい過ぎていた場合は返還を求めない。

厚労省の試算によると、追加給付の対象は雇用保険の場合で約 1,900 万人にのぼり、1 人あたりの平均額は約 1,400 円、総額は 280 億円となる見込み。 労災保険の年金給付の対象は約 27 万人で、1 人あたり約 9 万円、総額は約 240 億円の見込みだ。 このほか、労災保険の休業補償や船員保険も追加給付の対象になる。 企業向けの雇用調整助成金などでも約 30 億円の追加給付が必要になる。 厚労省は今後、不適切調査が始まった原因や当時の担当職員の認識などについて調査を進める。 (nikkei = 1-11-19)


働く高齢者・女性増えないと労働人口 2 割減 厚労省推計

経済が成長せず、働く高齢者や女性が増えなければ、2040 年の労働力人口は 17 年実績の 6,720 万人から 1,260 万人 (18.8%) 減って 5,460 万人になるとの推計を、厚生労働省が 15 日公表した。 40 年は高齢者人口のピークを目前に控えた時期で、推計を出すのは初めて。

労働力人口は、15 歳以上で働いているか仕事を探している人の数。 同省の有識者による雇用政策研究会(座長 = 樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長)が、国立社会保障・人口問題研究所が 5 年に 1 度見直す将来推計人口の最新データをもとに推計した数値をまとめた。 今回は 40 年に総人口が今の約1億2600万人から約 1 億 1 千万人に減少する一方で、65 歳以上は約 3,500 万人から増え続けて 42 年にピークの約 3,935 万人に達するとした 17 年 4 月公表のデータを使った。

推計では、経済成長率がゼロで、女性や高齢者が労働に参加する割合が今のままのシナリオの場合、25 年は約 379 万人減の 6,341 万人、40 年には 5,460 万人になるとした。 15 歳以上人口に占める労働力人口の割合「労働力率」は、17 年の 60.5% からそれぞれ 58.5%、55.2% に低下し、社会の支え手が減る。 (松浦祐子、asahi = 1-15-19)


日通、非正規社員の賃金引き上げへ 正社員と同水準に

物流大手の日本通運(東京)は 4 月 1 日から、非正社員の賃金を引き上げ、同じ条件で働く正社員の水準に合わせる方針を固めた。 正社員と非正社員の待遇差の解消をめざし、2020 年 4 月から働き方改革関連法で求められる「同一労働同一賃金」を先取りする形で、ほかの企業の判断に影響する可能性がある。

日通の社員は約 4 万人。 全国転勤がある正社員(総合職)が約 1 万 1 千人、転勤がない正社員(エリア職)が約 1 万 6 千人で、残る約 1 万 3 千人が有期雇用の非正社員だ。 このうちフルタイムで働く数千人をエリア職と同じ賃金体系に切り替え、賃金を上げる。

エリア職は総合職より賃金は低いが、都道府県の支店ごとに採用され、転勤がないという点で非正社員と同じだ。 人手不足が深刻な運転手だけでなく、営業職や事務職も対象になる。 賃金体系の変更は労使でおおむね合意している。 労働条件の大きな変更になるため、3 月までに労使間で新たな労働協約を結ぶ予定だ。 (土屋亮、asahi = 1-8-19)


福岡市、障害者職員の支援役採用

「ジョブコーチ」 2 月にも非常勤で 雇用増へ環境改善

福岡市は 2 月にも主に知的・精神障害者の職員を専門的に支援する「ジョブコーチ(職場適応援助者)」を非常勤職員として初めて採用する。 仕事上の悩み相談に応じたり、配慮すべき点を上司や同僚に伝えたりする役割を担う。 自治体がジョブコーチを採用するのは全国で珍しく、厚生労働省によると国の機関にも前例はないという。 専門家は「職場と障害者をつなぐ橋渡し役として活躍が期待できる」と評価する。

昨年夏以降、全国の官公庁などで障害者雇用の水増し問題が発覚。 福岡市では水増しはなかったが、さらなる雇用の拡大が課題となる中、ジョブコーチの助言で働きやすい職場環境を整え、雇用増につなげる。

採用するジョブコーチは、障害者への職業相談といった就労支援業務の経験を持つ 1 1人を予定。 採用後は障害のある職員が働く部署を巡回し、作業の進め方について本人に助言したり、新たな仕事をさせる提案を上司にしたり、同僚に対して接し方のポイントを伝えたりする。 職場環境の改善に専門的に当たってもらうことにより、市は「障害職員の人数だけでなく、長く働けるという質の面も向上させたい」という。

市はすでに、原則週 30 時間勤務し、文書整理やデータ入力に当たる障害者を非常勤で雇う「チャレンジ雇用」を導入している。 現在、主に知的、精神障害の 76 人が市役所や区役所などの 60 カ所以上の部署で働いている。 ジョブコーチが支援するのは主にこの職員を対象とする。 4 月からはチャレンジ雇用の年限を最大 3 年から 5 年に延ばし、再受験も可能としたため、より定着しやすい職場に向けた周囲の支援も重要になる。

埼玉県立大の朝日雅也教授(障害者福祉)は「同僚や上司に、障害者の力を発揮させるためのノウハウを伝え、官公庁でのジョブコーチによる支援モデルとなってほしい」と期待を述べた。 福岡市は 2018 年 6 月現在、市教育委員会の教員も合わせた約 1 万 6 千人の職員のうち、障害者雇用促進法に基づく方法で 2.55% の障害者を雇っていると算定される。 達成が義務付けられる法定雇用率 (2.5%) をわずかに上回っている。 (西日本新聞 = 1-6-19)

ジョブコーチ 障害者が一般の職場に適応し定着できるように、本人やその家族、事業主に対してきめ細かな支援をする専門職。 障害者に仕事の仕方を分かりやすく教え、職場内のコミュニケーションや生活リズムの構築を手助けする。 事業主には適切な配慮のための助言、仕事内容や指導法の改善の提案を行う。 全国にある地域障害者職業センターから企業などに派遣するほか、高齢・障害・求職者雇用支援機構などが行う養成研修を修了し、社会福祉法人や企業に所属し、働く人もいる。


外国人労働者受け入れ態勢「未整備」 86% 世論調査

急速な少子高齢化に直面する日本。 朝日新聞社は「人口減社会」をテーマに、全国世論調査(郵送)を行った。 人手不足に対応するため、外国人労働者を受け入れる態勢については 86% が「整っていない」と答えた。 出入国管理法が改正され、来春から外国人労働者の受け入れが拡大される。 受け入れ拡大については賛成 44%、反対 46% に割れた。 18 - 29 歳の 60%、40 代の 51% が賛成するなど、40 代以下は賛成の方が多かった。

一方、今の日本に、外国人労働者が生活するための受け入れ態勢が「整っている」と思う人は、わずか 7%。 外国人住民が増えることの地域への影響を聞くと、「よくない」が 48% で、「よい」の 32% を上回った。 外国人労働者と、その家族の永住を今より広く認めていくことには「賛成」 40%、「反対」 47%。 全体では反対の方が多かったが、受け入れ拡大に「賛成」の人の 7 割以上が永住にも賛意を示した。

女性の働く環境についても聞いた。 今の日本が女性にとって「働きやすい社会」と思う人は 35% にとどまり、56% が「働きにくい」と答えた。 当事者の女性に限ると、「働きやすい」 31%、「働きにくい」 59% と差が開いた。 働く女性が「もっと増えた方がよい」は 69% に達する一方で、働く女性が増えると「少子化が進む」と思う人も 48% と半数近くいた。 今の日本が「子どもを生み育てにくい社会だ」と思う人は 72% もいて、「女性が働きにくい社会」と答えた層の 86% が「生み育てにくい」と感じていた。

厚生労働省によると、男性の育児休業の取得率は 17 年度 5% をやっと超えた。 調査で、男性の育休について聞くと、「取るのが当たり前の社会になる方がよい」は 69% に達した。 高齢化が進む中での人口減少について意識を尋ねると、58% が「大いに問題だ」。 「ある程度」と合わせて 92% が「問題だ」と答えた。 何が一番問題かを 4 択で聞くと、最多は「年金や医療など社会保障制度が維持できなくなる」の 53%。 続いて「労働力が減って日本の経済力が落ちる」の 31% だった。

調査は、全国の有権者から 3 千人を層化無作為 2 段抽出法で選び、11 - 12 月、郵送法で実施した。 25 日までに届いた返送総数は 2,087。 うち有効回答は 2,038 で回収率 68%。 (四登敬、asahi = 12-29-18)


18 年版「ブラック企業大賞」発表 大賞は三菱電機 長時間労働が常態化、過労自殺が 2 件発生

ブラック企業大賞企画委員会は 12 月 23 日、"今年 1 番のブラック企業" を決める「ブラック企業大賞 2018」の受賞企業を発表した。 労働環境の悪さなどが問題となった企業を毎年選出し、皮肉を込めて賞を送るというコンセプトの企画で、大賞は三菱電機が受賞した。 「特別賞」は日立製作所と日立プラントサービス、一般投票で決まる「市民投票賞」は財務省、新設された「有給ちゃんと取らせま賞」は、自動販売機運営会社のジャパンビバレッジ東京が受賞した。

過労自殺が 2 度発生

「大賞」を受賞した三菱電機は 2018 年秋、14 - 17 年にかけて、男性社員 5 人が長時間労働に起因する精神障害や脳疾患を発症し、相次いで労災認定されていたことが発覚した。 このうち 3 人には裁量労働制が適用されており、その中の 2 人は過労自殺を遂げていた。 自殺した男性の 1 人は技術職についており、システムの不具合を修正するため月 100 時間を超える残業を数カ月繰り返していた。

ブラック企業大賞企画委員会の担当者は「このペースでの労災認定は異常だ」、「三菱電機が人権侵害的な労働を課していたことは社会的に決して許されない。 確かに日本を代表する大企業だが、労働環境の悪さにおいても同じことがいえる。」などと講評した。

「特別賞」は日立製作所・日立プラントサービス

「特別賞」を受賞した 2 社では 18 年、13 年に日立製作所に新卒入社し、のちに日立プラントサービスに出向した 20 代社員が精神疾患を患っていたことが発覚。 同社員は富山県の工事現場で設計・施工管理監督を行っていた際、月に 100 - 160 時間もの時間外労働を余儀なくされた。 また、上司から「いらない」、「目障りだから帰れ」、「仕事辞めてしまえ」などの暴言も吐かれていた。

また、山口県の笠戸事業所で、数百人のフィリピン人技能実習生を不正に働かせていたことも発覚。 本来は配電盤や制御盤などの電気機器組み立てを任せるはずが、実際は窓・排水パイプ・カーペット・トイレなどを鉄道車両に取り付ける作業をさせていた。 在留資格の更新ができないことを理由に、すでに 99 人の技能実習生が解雇されていることも発覚した。

「市民投票賞」は財務省

「市民投票賞」を受賞した財務省では 18 年 4 月、福田淳一事務次官(当時)がテレビ朝日の女性記者に対し、取材中に「抱きしめていい?」などのセクハラ発言を行っていたと報じられた。 その後、同省の顧問弁護士もセクハラがあったと断定した。 ただ、福田氏は事務次官を辞任したものの、セクハラを否定。 麻生太郎財務大臣も「セクハラという罪はない」、「男を番記者にすればいい」などと発言し、事態を軽視していることをうかがわせた。

「有給ちゃんと取らせま賞」はジャパンビバレッジ東京

「有給ちゃんと取らせま賞」を受賞したジャパンビバレッジ東京では今夏、ある支店の支店長がクイズを出し、正解者のみに有給休暇の取得を認める "有給チャンス" と呼ばれるパワハラを行っていたことがネット上で話題になった。 「事業場外みなし労働時間制度」を違法適用しており、社員に月間 100 時間を超える時間外労働を課していたことも発覚した。

ブラック企業大賞の発表会見には、同社の従業員が匿名で登壇。 「問題のメールを送った支店長は、部下を蹴るなどの暴行を日常的に行っていた。 支店長とは別の管理職も、ミスをした社員に腕立て伏せをさせるなどの罰を与えていた」、「結婚・出産といったライフイベントの際も有給休暇を取ることができない」などと告白した。

ブラック企業大賞のイベントをやらなくていい時代にしたい

18 年のノミネート企業は受賞した 4 社のほか、スルガ銀行、モンテローザ、ジャパンビジネスラボ、ゴンチャロフ製菓、野村不動産を含む 9 社だった。 ブラック企業大賞企画委員会の担当者は「本当はこのようなイベントをやらなくてもいい社会になってほしいが、やらざるを得ない状況だ。 今後もこの取り組みを続け、ブラック企業をなくしていきたい。」と話した。

過去には電通などが受賞

ブラック企業大賞は 2012 年にスタート。 長時間労働、セクハラ・パワハラ、いじめ、低賃金 - - などの観点から、弁護士やジャーナリストなどで構成される企画委が各賞を選考している。 歴代の大賞は、東京電力(12 年)、ワタミフードサービス(現ワタミ、13 年)、ヤマダ電機(14 年)、セブン-イレブン・ジャパン(15 年)、電通(16 年)、アリさんマークの引越社(引越社グループ、17 年)。 (濱口翔太郎、ITmedia = 12-23-18)

〈筆者注〉 上記のようなキャンペーン運動を否定するつもりは全くありませんが、現在の日本経済の繁栄は、身を粉にして働かれた先人たちの土台の上に築かれていることだけは忘れないようにしたいものです。 筆者は、机にはうず高く積み上がった書類、通話中の電話を二本抱えた父の姿をしっかりと覚えています。(しかし、どうしてかような事務所の中に入っていたのかの記憶はありません。 おそらく父が働く姿を子に見せたかったのでしょうか?) ただ、皆が生きるために必死だったこともあり、互いの協力精神も旺盛だったのではないでしょうか。 従って、いじめ - ハラスメントは遥かに少なかったのではないかと思われます。


集配トラックの駐車規制緩和 京都府警、長時間労働是正

集配中のトラックなどが路上駐車できるよう、京都府警が 17 日から京都市中心部の 1.5 キロ区間で駐車規制を緩和した。 背景にあるのはトラック運転手の働き方改革。 警察庁が都道府県警に規制緩和を求め、警視庁などでも動きが広がる。 道路交通法では、駐車禁止区間の場合、5 分以内なら荷物の積み下ろしに限り、駐車することを認めている。 しかし、5 分を超えたり、車が無人になったりすると駐車違反だ。

公益社団法人「全日本トラック協会(東京)」によると、こうした違反を防ぐため、運転免許をもつ人が同乗することがあるが、同乗のアルバイトを確保できないことも多く、運転手がハンドルを握らない日も出勤して対応している。 運送業界の長時間労働を是正するため、政府は昨年 8 月、自動車運送事業の働き方改革をテーマにした関係省庁会議で「直ちに取り組む施策」を決定。 その一つとして警察庁が今年 2 月、集配中の車を対象に駐車規制の緩和を求める通達を出した。 駐車禁止の対象区間は、都道府県の公安委員会が決めるためだ。

京都府警が緩和したのは、京都市中京区の御池(おいけ)通の 1.5 キロ区間。 駐車禁止の標識に「集配中の駐車は除く」と補助標識をつけ、午前 6 時 - 午後 8 時に限り、集配中のトラックなどの貨物車の路肩駐車を認める。 御池通は最大 8 車線あり、事故や渋滞につながりにくいと判断した。 全日本トラック協会によると、通達後に緩和区間を設けたのは全国で初めてだ。 府警は御池通での効果を見ながら、他の路線・区間の緩和も検討する。

警視庁は 4 月以降、東京都内の港区、品川区、渋谷区で計 8 台分の集配車専用の駐車スペースを試験的に設けた。 中小企業が多い地域や、民家やマンションが立ち並ぶ地域で、配達時間の短縮につながったとして好評という。 来夏以降、23 区を中心に都内約 100 カ所に広げていくという。 (白見はる菜、asahi = 12-17-18)


厚生年金、パート加入拡大 企業規模を緩和へ

厚生労働省は、厚生年金に加入するパートなど短時間労働者を増やす方針を固めた。 加入義務があるのは従業員 501 人以上の企業だが、これを引き下げる。 厚生年金は、多くのパートらが加入している国民年金より給付が手厚い。 パートらの老後の貧困リスクを低くするのが狙い。 18 日に有識者会議の初会合を開いて議論を開始。 2020 年の通常国会に年金改革関連法案を提出する。

現在、パート労働者らについて厚生年金への加入義務があるのは従業員 501 人以上の企業で週 20 時間以上働き、月収 8 万 8,000 円以上などの要件を満たした場合。500 人以下の企業でも労使合意を条件に任意に加入できる。 それ以外の労働者は自営業者ら向けの国民年金に加入する。 週 30 時間以上働く人は企業規模にかかわらず原則加入する。

国民年金の保険料は定額(月約 1 万 6,000 円)で、40 年間納付すれば給付は月約 6 万 5,000 円。 一方、厚生年金は収入に応じて納めた保険料に見合う給付がある。 月収 8 万 8,000 円の場合、保険料は国民年金と同水準の約 1 万 6,000 円で、半分は企業が負担する。 給付は加入 1 年につき国民年金より月約 500 円多くなる。 加入 40 年なら約 1 万 8,000 円多い。

ただ、加入拡大には保険料負担の増える企業側が慎重だ。 従業員 500 人以下の任意加入の企業のうち 2,316 社を対象に労働政策研究・研修機構が調べたところ、パートらを厚生年金に加入させていたのは 5.6%。 加入申請見通しの企業も 4.7% にとどまり、任意では加入が進まない様子がうかがえた。 加入要件のうち、賃金基準を下げると国民年金より少ない負担で給付が多くなり、不公平感が生じる。 労働時間を短くすることには保険料を負担する企業側の理解が得にくい。 議論は企業規模を中心に進む見通しだ。

働き方が多様化する中、勤め先によって年金が異なるのは好ましくなく、厚労省は企業規模要件の撤廃も視野に入れる。 だが、中小企業を中心に反発が予想され、法案をまとめる来年末まで調整が続く見通しだ。 (阿部亮介、横田愛、mainichi = 12-16-18)


21 日間連続勤務で過労自死 会社側に 4 千万円賠償命令

ソフトウェア開発会社「ディーソル NSP (長崎市)」の男性従業員が適応障害になり、自ら命を絶ったのは、長時間労働などが原因だとして、両親が同社と親会社に損害賠償を求めた訴訟の判決が 11 日、福岡地裁であった。 足立正佳裁判長は 2 社に計約 4 千万円の支払いを命じた。

判決によると、男性は 2007 年に入社。 12 年 2 月から東京に長期出張し、システムエンジニアとして勤務した。 13 年 4 月 11 日、横浜市内の建物から飛び降り、28 歳で死去。 長崎労働基準監督署は 15 年、長時間労働で適応障害を発症し、自殺に至った、として労災と認定した。 判決は、13 年 3 月の時間外労働時間が 180 時間に達し、亡くなる前日までの 21 日間は休日なしで勤務したと指摘。 しばしば職場近くのネットカフェに泊まって帰宅しなかったことなどから、「恒常的に極めて長時間の時間外労働を余儀なくされた」と判断した。

担当業務の納期も迫る中、過重な心理的負荷を受けて適応障害を発症したと認定し、会社の責任について、「時間外労働を制限したり、定期的に休日を取得させたりして業務の負担を軽減する注意義務に違反した」と指摘した。 同社は「現段階で判決文を読んでいないのでコメントできない」としている。 (一條優太、asahi = 12-11-18)