南水北調プロジェクト、8 年間の北京への送水 84 億立方メートル 【北京】 中国南方地域の水を北方地域に送る「南水北調」プロジェクトの中央ルート第 1 期プロジェクトは 27 日、北京への送水開始から 8 年を迎えた。 北京市水務局によると、8 年間で 84 億 800 万立方メートルの「南水」が首都を潤し、直接的な受益人口は 1,500 万人を超えた。 同プロジェクトは 2014 年末に全線が通水し、大量の「南水」が丹江口ダム(湖北省十堰市)から北京に送られた。 「南水」はこの 8 年間で、北京都市部の水需要を保障する主要水源となり、同市の水不足を効果的に緩和した。 プロジェクトが 8 年間で北部地域に送った水は 586 億立方メートル。 直接的な受益人口は 1 億 5 千万人を超え、沿線にある 42 の大・中都市の経済発展構造改善を後押しした。 (田晨旭、中国・新華社 = 12-28-22) 世界最大径間の「水上インターチェンジ」 安徽省合肥市 ![]() 【合肥】 中国安徽省合肥市肥西県でこのほど、はい河総幹線用水路の水路橋を初めて船舶が航行した。 同橋は長江の水を淮河に引き入れる「引江済淮」プロジェクトの一環で、2 本の水路が約 30 メートルの高低差で交差し、水上立体交差の景観を形作っている。 鉄道建設大手、中国中鉄傘下の中鉄四局集団が建設に参画した。 橋は全長 350 メートルで、うち鋼製部分は 246 メートル、鉄鋼使用量は 2 万 1 千トンに上る。 110 メートルのメインスパンは、船舶が通行可能な鉄骨構造の開水路橋としては世界一となる。 設計流量は毎秒 150 立方メートル、設計水深は 4 メートルで、100 トン級の船舶が通行できる。 (中国・新華社 10-11-22) -------------------------------- 南北を結ぶ大連湾海底トンネル貫通 遼寧省大連市 |【大連】 中国北部初の海底横断型沈埋(ちんまい)トンネルとして建設が進む大連湾海底トンネル(遼寧省大連市)が9月29日、貫通した。同トンネルの全長は5.1キロで、18本の沈埋函を敷設した。敷設工事では砕石基盤の浮遊式整正工法、海底ケーブルのコネクタソケットの国産化改造、砕石敷設作業船の自動整正システム、沈埋函敷設の情報化スマート管理クラウドプラットフォームなど多くの技術成果を採用。20カ月で18本の敷設を完了させた。 トンネルは開通後、大連市の南北を短時間で結ぶルートになる。市中心部の渋滞緩和や都市空間の拡張、大連湾両岸の一体化建設促進に重要な意義を持つ。 (大連 = 潘c竜、中国・新華社 = 10-2-22) 「中国の水問題」が危機的状況、世界的な食糧不足や移民増加の可能性も 水量低下と水質汚染が 深刻化する中国北部 中国を代表する大河である長江の沿岸地域の住民と農作物・家畜が大干ばつによる影響を受けている。 長江沿岸は中国では水の豊かな地域であるが、例年にない熱波もあいまって中下流地域の大部分で水不足が発生しており、本来は雨の多い 9 月に入っても安徽省、湖北省、湖南省、江西省などで干ばつが進む見通しだという。 『環境白書(環境省)』によれば、世界の年間水使用量は 1950 年から 2000 年の 50 年間で 2.9 倍に増えている。 人口増加は 25 億人から 60 億人と 2.4 倍なので、水使用量の増加のほうが大きい。 先進国では節水の工夫がなされるようになったが、今後新興国がさらに経済発展していけば、水使用量の増加ペースは増えることはあっても、大きく減ることはないだろう。 ところが、生態系から水源として使える淡水の量は着実に減っている。 そのため、私たちは水確保の問題とともに、生態系の維持という別問題にも対処しなければならなくなっている。 この点で、最も深刻なのが中国だ。 中国では淡水の減少幅が大きい上に水質汚濁が年々深刻化しており、生活用水として利用できる水の量が着実に減っている。 向こう 10 年で中国の主立った地域で飲用水として使える水がなくなると主張する専門家もおり、中国の水問題は国家運営を揺さぶりかねないほど大きな問題になりつつある。 現時点で、国民 1 人当たりが利用できる淡水の量は、中国は世界平均の 4 分の 1 にすぎないと考えられている。 ただし、中国では南北格差が大きい。 北部の 1 人当たりの量は世界平均の 10 分の 1 程度だと見られており、北部では水不足が常態化している。(日本も世界平均の半分以下で、一般的に考えられているほど、水に恵まれているわけではない。 日本においても水不足への備えは重要課題だ。) このことは、中国共産党においても克服すべき課題として毛沢東時代から意識されており、南部から北部に水を送る「南水北調プロジェクト」が長年進められてきた。 生活用水や農工業用水の確保のために、中国ではわずか 50 年のあいだに 8 万 5,000 という想像を絶する数のダムが建設された。 そのおかげで長年中国を悩ませてきた慢性的な水不足が解消されて、農業灌漑はもちろんのこと、工業用水が確保できるようになり、「世界の工場」として世界第 2 位の経済力を手に入れることになった。 だが、この急激な工業化が中国の水不足に拍車をかけることとなった。 工場に必要な水だけではなく、資源開発にも大量の水が必要であり、発電においても石炭火力であろうと原子力であろうと大量の水が必要になる。(ただし、多くの原発が海岸付近に作られて、海水を冷却水として利用している。) また、環境基準が甘いままに工業化を進めたために水質汚濁も急激に進み、飲用水にできる淡水もどんどん減っていった。 ダム建設のために強制移住させられた住民は公式発表で 3,000 万人にも上っている。(実際はその倍はいるのではないかと主張する専門家もいる。) 人民の生活向上のためとはいえ、伝統文化を抹殺された地域はかなりの数に上ると考えられる。 さらに、ダム建設は新たな問題を生み出した。 たとえば、中国北部を代表する大河である黄河はダム建設以降、水量が激減して、「中国北部の食糧庫」ともいうべき華北平原では農産物の育成期に水が手に入らない事態に見舞われた。 農家は地下水のくみ上げでこれに対応した。 地下水には、雨が流れ込む浅い帯水帯と、流れ込まない深い帯水帯の大きく二つがある。 当初は浅い帯水帯からくみ上げていたが、それが足りなくなると深い帯水帯からもくみ上げるようになって地盤沈下が起こり、華北平原の「砂漠化」が進んでいる。 水量低下とともに工業化による水質汚濁が進んだことで、住人の飲用水の地下水からのくみ上げが年々難しくなっている。 それにもかかわらず、北京など大都市の人口は増加し続けているのである。 活断層地帯にある三峡ダムのリスク 常に渇水に悩んでいる北部と比べると、南部は水に恵まれている。 黄河とともに中国を代表する大河である長江(揚子江)の流域は降雨量が比較的多く、人々は渇水より洪水に悩まされてきた。 その長年の悩みを解消すべく建設されたのが三峡ダムである。 長江の河北省流域にある三峡ダムは、世界一の規模を誇ると同時に、世界一の水力発電所を備えている。 三峡ダムの建設は中国建国からの夢でもあったが、あまりの難事業であることと地盤の弱さなどのリスクの高さから何度も計画が頓挫した。 結局、1993 年に着工し、完成したのは、2009 年のことだった。 だが、水質汚濁や地盤の崩落、ダム湖への土砂の堆積などいくつもの課題を解決しないまま、1989 年の天安門事件のあと、国家の威信をかけて建設が強行された。 やがて反対派が懸念したとおり、土砂崩れや上流域の水質汚濁、下流域の海水の逆流による水質低下など、問題が多発した。 特に水質低下は大都市の集まる下流域を直撃して、水が豊富な南部で皮肉なことに飲料水不足を起こす結果となった。 しかも、2020 年の中国大洪水では、三峡ダムが洪水の抑制にさほど役に立たなかった。 三峡ダムの最大の懸念は、この地域が活断層地帯にあるということだ。 もし大地震が直撃して三峡ダムが崩壊すると、その被害は人口が密集する下流域を直撃する。 もし事が起これば、数億人に大きな被害を与えることは必至だ。 北部と南部だけでなく、「西部」にあたるチベット地域についても問題がある。 チベット高原は標高 7,000 メートル級の山脈に囲まれた 4,000 メートル前後の高原であるが、山脈からの雪解け水が黄河や長江をはじめ、南アジアや東南アジアへ流れる大河の水源にもなっている。 また、地下資源にも恵まれており、中国政府は西部開発を国内開発の大きな柱に据えていた。 2000 年頃に始まる西部開発では、西部から沿岸部に電力を送る「西電東送」や、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)の天然ガスを上海までパイプラインで送る「西気東輸」、青海省とチベットを鉄道で結ぶ「青蔵鉄道」などの建設が進んだ。 また先述の「北水南調」も西部に関わるプロジェクトである。 開発が進むごとに、高層マンション建設などの宅地化や工業化が進み、チベット高原に住んでいたいくつもの少数民族が離散した。 また、水がきれいだったチベット高原でも工場排水や生活排水によって水質汚濁が深刻化する一方で、温暖化によって水量低下が起きている。 このままだと黄河や長江にも影響が出る可能性が高い。 「気候変動に関する政府間パネル (IPCC)」の 2007 年の報告書では、ヒマラヤの氷河は早ければ 2035 年までに消滅する可能性があると指摘されている。 この指摘には異論もあるが、いずれにせよ氷河が縮小しているのは間違いなく、これまで中国やインドを潤してきた大河の水量や水質に大きな影響を与える可能性がある。 2030 年までにチベット高原を基点とした深刻な水危機が起こる可能性は高まっていると見るしかない。 中国の水危機が引き起こす 世界的食糧不足と移民激増 環境悪化と水使用量の激増によってひそかに水危機が進行していることを、中国政府は長年隠蔽してきた(あるいは見えないふりをしてきた)。 それどころか、中国政府は食糧自給率を上げるために農地を拡大し、かたや世界中から工場を誘致して水使用を激増させ、水質汚濁を進めて、使える水を積極的に減らしてきた。 その結果、華北平原を含む長江以北の水不足が深刻さを増している。 この地域には 10 億人が暮らしており、水不足がこれ以上深刻化すると、人民の生活に支障を来すのみならず、電力不足で産業の生産性が低下し、水を巡る抗議運動や争いが頻発する可能性がある。 また、中国の農産物などの生産量が激減すれば、中国国内にとどまらず、世界的な食糧不足に発展しかねない。 たとえば、世界一の小麦生産量を誇る中国で水危機が起こって小麦生産が激減すれば、世界で小麦の争奪戦が起こり、途上国で飢饉が起こる可能性がある。 また、中国の電力の 65% 以上を工業施設が使用していることを考えると、電力不足によって世界のサプライチェーンが混乱することはもちろん、工場の操業を進めるために中国各地で計画停電が実施される可能性もある。 そうなれば、住人の生活に支障を来し、コロナ禍の行動制限以上の悪影響を半永久的に与えかねない。 そのような条件下で、中国共産党がこれまでどおり人民を支配することが可能なのだろうか。 人民がこれまで水危機を隠蔽してきた当局に対して反発心と不信感を強めるのは間違いなく、それが「中国共産党への抗議活動」に発展する可能性は決して小さくはないだろう。 さらに懸念されるのが、水不足が解消不可能と悟った人民が「水難民」として国外脱出をはかることだ。 10 億人が水危機で生活困難になり、大量の移民が出るとすれば、日米には中国から莫大な数の移民希望者が押し寄せる可能性がある。 とくに中国資本に買われている北海道は、中国人が住みたいと思っている地域だといわれており、最初に狙われることになるだろう。 そもそも、中国資本による北海道の土地買収、とくに水源を含む土地の買収は、中国の水危機と無関係なものなのだろうか。 中国の水危機は「対岸の火事」ではなく、日本を含む世界の危機でもある。 これから備えておくに越したことはない。 日本政府は中国からの移民や難民をどれくらい受け入れるつもりなのか。 あるいはきっぱりと拒否するつもりなのか。 まずはその点を明確にして、対策を考えるべきである。 (白川司、Diamond = 9-5-22) 中国・長江流域で記録的水不足 農産物の被害甚大、停電も [南昌(中国・江西省)] 中国はこの夏、長江流域が記録的な猛暑と水不足に見舞われ、農産物が甚大な被害を受けた。 収穫期が迫る中、熱波は収まり始めているが、政府は農家に可能な限り作物の植え直しや切り替えを促すなど、対応に追われている。 長江流域は 4 億 5,000 万人余りの生活を支え、農業生産が全国の 3 分の 1 を占めるが、今夏は 70 日以上にわたり異常な高温と雨不足に襲われた。 向こう 10 日間で降雨が予想されるものの、中部江西省の●(= 番におおざと)陽湖近隣の農家は、もう熱波の打撃から立ち直るのは難しいのではないかと気をもんでいる。 長江とつながる●陽湖はほとんど干上がっている。 農業省は 23 日、農家に対してコメを収穫・貯蔵するとともに、今後数週間は穀物の生育を強化する対策をとるよう呼びかける緊急の通達を出した。 既に干ばつで大きな被害を受けている地域では、サツマイモなどの晩秋の作物に切り替えるよう勧めているが、容易ではない。 江西省の省都、南昌郊外の村で農業を営むフー・バオリンさん (70) は「土地がないから他の作物への切り替えはできない」と話す。 菜種やゴマなどの生育状況は平年に比べて極端に悪く、ザボンのサイズは通常のわずか 3 分 1 だ。 近くの井戸は枯れてしまった。 池は 10 日ほど前に完全に干上がり、その周囲をガチョウの群れが所在なげにうろつくばかり。 村人は近隣で発生する山火事とも闘った。
農業省は 23 日、猛暑が秋の穀物生産に「深刻な脅威」をもたらすと警鐘を鳴らし、地方自治体にさらなる水の確保に「全力を尽くす」よう促した。 国営テレビ CCTV によると、最も被害が大きかった四川省は 25 日にドローンが配備され、人工降雨作戦が展開されたほか、長江沿いの他の地域では消防士を動員して乾き切った作物への散水が行われた。 アナリストは最も生産への被害が大きいのはコメとみている。 シドニーの農業ブローカー会社 IKON のオレ・ホウエ氏は「熱波の影響が最も大きいのはコメだと思う。 トウモロコシにも影響は出るだろうが、コメほどではない。」と言う。 中国はコメの消費と輸入が世界最大。 米農務省によると、中国はそもそも 2022/23 年のコメ輸入が過去最高の 600 万トンと推計されていた。 <工場稼働、天候次第> 南西部の重慶市と四川省は、2 週間以上にわたり 40 度を超える高温が続き、農作物に被害が出たほか、森林火災、電力の供給制限が発生するなど混乱が広がっている。 重慶の工場は当初、節電のため 8 月 17 日から 24 日までの予定で生産を制限するよう命じられた。 しかし制限期間は延長され、天候が変わって当局が再稼働を承認するまで続くことになった。 ![]() 気象当局は 23 日に猛暑の警戒レベルを「赤」から「オレンジ」に引き下げたが、重慶市や近隣の四川省など長江流域は、場所によっては 40 度超えが週末まで続くと予想されている。 雨不足は東海岸に位置する浙江省や江蘇省など長江の下流域にも影響が及んでいる。 国土資源省は25日、両省に挟まれた太湖に 7 月中旬から長江の水を 5 億立方メートル引き込んだにもかかわらず、水位が過去 20 年間で最低になったと発表した。 資源省は11 日、干ばつは既に耕地約 2 万 2,000 平方キロメートル、家畜 35 万頭に影響を与えたと発表したが、最終的な被害はこれをはるかに上回る公算が大きい。 (Xiaoyu Yin、Thomas Peter、Reuters = 8-28-22) ------------------------------- 中国最大の淡水湖、●陽湖の干潟に「大地の樹」が 【南昌】 中国江西省にある国内最大の淡水湖、●陽(はよう)湖は、連日の高温と雨が少ない影響で水位が下がり続け、例年より早く渇水期を迎えた。同湖進賢区間の水域にある干潟が水流の分岐に洗われて、生き生きとした「大地の樹」の自然景観が出現した。 (万象、中国・新華社 = 8-25-22) |