中国の演習で 49 便航路変更 豪州、NZ の反発は「心持ちの問題?」

中国海軍が豪州近海の公海上で実施した実弾演習が波紋を広げている。 民間の旅客機がルート変更を迫られたが、「国際法に沿う対応だった」とする中国に、豪州やニュージーランド(NZ)が反発している。

「90 隻展開」 中国軍は演習を行ったのか 「新たな形の圧力」見方も

ロイター通信などによると、豪州と NZ の間にあるタスマン海で 2 月 21 日、飛行中の旅客機が無線で実弾演習の警告を把握し、豪航空当局に連絡。 注意情報が出され、豪カンタス航空やNZ航空、エミレーツ航空など計 49 便が飛行ルートの一時的な変更を急きょ迫られた。

NZ 側の説明によると、事前通告があったのは数時間前。 「12 - 24 時間以上前の通告が慣例だ」として、中国側を批判。 豪外相や NZ 副首相はそれぞれ 21 日と 26 日に王毅(ワンイー)・共産党政治局員兼外相と会談した際、情報提供のあり方などで懸念を伝えたという。 NZ の国防相は、地元のラジオ放送で中国のフリゲート艦などによるこの海域での同様の演習は前例のないものだとの警戒感も示した。

食い違う主張、国防省報道官は記者に逆質問

これに対し、中国国防省は 23 日の声明で、「事前の安全情報を繰り返し発した」、「航空機の安全な飛行には影響しえない」と主張し、逆に豪側などが騒ぎ立てているとして「強い不満」を表明した。 27 日にあった中国国防省の定例会見では、この問題に外国メディアの質問が集中した。

米メディアの記者が「国際法違反でないことは豪州も NZ 政府も認めており、問題は事前通告の時間や方法だ」と迫ると、呉謙報道官は「両国とも国際法違反でないと認めていること自体、すでに問題の本質を物語っている」と言い切った。 今後は事前通告するか、との問いには、「豪や NZ が中国の周辺で演習するときには事前通告してくれるのか」と逆質問で応じた。 豪、NZ の艦船は昨年 9 月、日本の自衛隊と同じタイミングで台湾海峡を通過し、その後南シナ海での共同訓練に参加している。

豪、NZ で高まる警戒感

この問題をめぐり、中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」は「中国の遠洋への進出に、西側諸国は慣れるべきだ」と題する中国の学者の寄稿を掲載。 「近年、中国海軍が遠洋に出ることは常態化しつつあり、国際社会も徐々に慣れ、受け入れつつある」として、中国の海洋進出を警戒する西側の「心持ちの問題だ」ともとれる主張を展開した。

中豪は関税問題など深刻な対立を抱えたが、22 年春からのアルバニージー現政権下で関係が好転。 ただ、今月初めには南シナ海上空で中国軍機による豪軍機への至近距離でのフレア放出があったばかりだ。 一方、自由連合の一員として NZ に国防をゆだねるクック諸島は、14 日にブラウン首相が訪中してインフラ開発など幅広い分野で連携を進める合意文書に署名。 NZ は、南太平洋で存在感を増す中国に警戒感を高めている。 (北京・畑宗太郎、asahi = 3-3-25)



中国がオーストラリア産大麦への高関税を撤廃へ 関係改善を摸索か

中国政府は、オーストラリア産の大麦に対して 80% を超える高い関税を課す措置を、5 日から撤廃すると発表しました。 外交関係の改善を図り、経済の回復につなげる狙いとみられます。 オーストラリアが 3 年前、新型コロナウイルスの発生源について独立した調査が必要だと表明したことをきっかけに、中国とオーストラリアの 関係は急速に悪化。 中国は 2020 年 5 月からオーストラリア産の大麦に対し、80.5% という高い関税を課してきました。

これについて、中国商務省は 4 日、「中国の大麦市場の状況が変わったため措置を続ける必要がなくなった」として、高い関税を課す措置を 5 日から撤廃すると発表しました。 オーストラリアとの関係を改善するとともに、回復が遅れている経済の再生にもつなげる狙いとみられます。 また、ロイター通信によりますと、オーストラリアのウォン外相は「オーストラリアの生産者と中国の消費者にとって正しい結果だ」と述べ、措置の撤廃を歓迎する意向を示しました。 (TBS = 8-4-23)



中国、オーストラリアを「壊す」試み = 米高官

[シドニー] 米国のキャンベル・インド太平洋調整官は 1 日、シドニーで講演し、中国はオーストラリアに「激しい経済戦争」を仕掛けており、同国を「壊す」試みを行ってきたとの見解を示した。 キャンベル氏によると、バイデン大統領は中国の習近平国家主席との会談で、中国による貿易報復措置など対豪強硬政策を取り上げ、習氏の側近が有効な助言を行っていないために裏目に出ている典型例だと指摘した。 豪有力シンクタンクのローウィー研究所での講演で明らかにした。

「中国はオーストラリアを壊し、服従させることを望んでいた」と述べた。 また、米英豪 3 カ国の新たな安全保障枠組み「AUKUS (オーカス)」や日米豪印 4 カ国による連携の取り組み「クアッド」など、インド太平洋地域での新たな枠組みに米国はコミットしていると強調。 これらの枠組み下で技術や教育、気候、感染症対策での協力にも力を入れ、米国がアジアに新たな価値観を持ち込むことを示すと語った。

「米国はインド太平洋から離れることはないし、国として衰退もしていない」と強調。 習主席の周りの「イデオロギーの助言役は、米国が急速に衰退している」と考えているようだと述べた。 中国政府が核抑止力や極超音速および対衛星攻撃システムについて情報発信していないことは、米国にとって懸念材料だと説明。 この状況が続けば「不測の危機あるいは誤解を生じさせるリスクがある」と警戒感を示した。 米国はこの問題で対話を求めており、中国政府に対し平和的な競争を望んでいると伝えたと明らかにした。 (Reuters = 12-1-21)


中国に真っ向勝負を挑むオーストラリア、国の存亡をかけた方針転換の行方は?

<資源大国オーストラリアにとって、最大の貿易相手国である中国への強硬姿勢には当然ながら不安もある>

最近、オーストラリア政府関係者の中国に対する強気発言が目立っている。 アダム・フィンドレー少将(現在は退任)は昨年、中国との外交面での対立が戦争に発展する「可能性は高い」と、特殊部隊の兵士たちに警告した。 ピーター・ダットン国防相は今年 4 月、「台湾をめぐる(中国との)対立」は地域紛争につながる恐れがあるとの見解を示し、周囲を驚かせた。 スコット・モリソン首相が昨年、国防費を大幅に増額する防衛戦略を発表したのも、中国との対立を意識したものとみられている。

これは従来の姿勢からの大きな転換だ。 オーストラリアは長年、安全保障の傘を与えてくれるアメリカに足並みをそろえつつ、最大の貿易相手国である中国との関係を良好に維持するべく努力してきた。 それが今、明らかに中国政府のご機嫌を損ねる言動を取っている。 それに対して中国は、オーストラリア産の原材料などに懲罰的な関税をかけて反撃に出ている。 中国経済に大きく依存する世界の国々にとってオーストラリアは、中国の拡張的な領有権主張や、巨大な経済力を武器にしたゴリ押し政治を厳しく批判するとどういうことになるかを示す、テストケースになりつつある。

対中観が大きく変わるきっかけはテレビ番組

オーストラリアは「炭鉱のカナリアのようなものだ」と、ハイノ・クリンク元米国防副次官補(東アジア担当)は語る。 「中国は全力で、オーストラリア経済を窒息させようとしている。」 なにしろ中国は、毎年、オーストラリアの原材料輸出の 3 分の 1 以上を買い上げる超お得意様だ。 それなのに公然と「反抗」してきたオーストラリアに対して、中国は、他のアジア諸国(日本などアメリカの同盟国を含む)に対するのとは全く違うレベルの反撃をしてきた。 中国の外交官による「戦狼外交」も盛んだ。 昨年 11 月には、オーストラリア軍兵士がアフガニスタンの子供の喉元にナイフを突き付けているように見えるフェイク画像を、中国外務省の報道官がツイートして、世界を仰天させた。

そもそもオーストラリアの対中観が大きく変わり始めたのは、2017 年のテレビ番組がきっかけだった。 中国系の人物が複数の政治家に賄賂や巨額の政治献金を渡すことで、オーストラリア政治を中国に有利に操ろうとしていることを暴く調査報道だった。

「中国の本性が見えた」という認識

悪化する両国関係にとどめを刺したのは、新型コロナウイルスだ。 オーストラリア政府が、ウイルスの発生源について国際的な調査を呼び掛けると、中国はオーストラリア産の石炭や大麦、小麦、ワイン、羊などに次々と関税や制限をかけた。 オーストラリアも、中国の世界戦略「一帯一路」絡みのプロジェクトを厳しい審査にかけることを決め、事実上の待ったをかけた。 オーストラリアにとって、これはある意味で国の存続に関わる問題だ。 中国海軍はこの 20 年で、沿岸警備中心の部隊から、アジア太平洋の覇権をもくろむ勢力へと生まれ変わった。 さらに中国は、大量の漁船を武装させて戦略的海域に派遣することにより、ベトナムの海底油田からフィリピンの漁場まで、幅広い海域を支配しようとしている。

オーストラリアはこれからどうなっていくのか。 モリソン政権は年内に、アントニー・ブリンケン米国務長官とロイド・オースティン米国防長官との外務・防衛担当閣僚会議(2 プラス 2)を開き、アメリカとの同盟関係を改めて強化したい考えだ。 「アメリカと同じく、オーストラリアでも『中国の本性が見えた』という認識が高まっていると思う」と、アメリカン・エンタープライズ研究所のエリック・セイヤーズ客員研究員は言う。 「もはや中国楽観論は少数派だ。」 (NewsWeek = 7-16-21)


グレートバリアリーフ「危機遺産」も ユネスコ提案に豪政府反発 - 背後に中国の影

【シドニー】 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、オーストラリア東部沿岸に広がる世界最大のサンゴ礁で世界遺産に登録されているグレートバリアリーフについて、遺産の価値が損なわれかねないとして「危機遺産」に格下げする勧告案を公表した。 豪政府は「不意打ちだ」と反発。 同国と関係が悪化した中国の介入を指摘する見方もあり、大きな騒動に発展している。

全長約 2,300 キロに及ぶグレートバリアリーフは 1981 年に世界遺産に登録されたが、気候変動の影響でサンゴの体内から藻類が抜ける白化現象が近年になって頻発。 白化状態が続けばサンゴは死滅する。 ユネスコの世界遺産委員会は 21 日付の文書で、7 月後半に中国がホスト役を務めるオンライン会合の議題として、グレートバリアリーフを危機遺産のリストに加えることを提案した。 危機遺産となれば将来の登録取り消しにつながる。

これに対してリー豪環境相は 22 日、同国がリーフの保護に 30 億豪ドル(約 2,500 億円)を投じたと説明。 国連の担当者からも事前に、遺産の地位に変更はないとの確証を得ていたとし「この決定は欠陥だ。 背後に政治があるのは明らかだ。」と語った。 グレートバリアリーフは豪州の主要な観光資源で、政府は危機遺産となればイメージの悪化を招くと警戒している。

一部の豪メディアは、中国がユネスコの事務次長ポストなど要職を押さえており、今回の勧告案に影響を与えたと報じている。 もっとも、豪政府はこれまで温室効果ガスの排出削減には消極的だった。 豪環境団体の気候カウンシルは、格下げとなれば「リーフの減少を傍観していた連邦政府の恥となる」と、動きが鈍かった政府の対応に不満を示した。 (jiji = 6-23-21)


中国、オーストラリアとの戦略経済対話を無期限停止 - 新たな報復

→ 冷戦思考とイデオロギー的偏見から豪州が交流や協力妨げ - 発改委
→ 今回の決定に失望、われわれは対話にオープン - テハン豪貿易相

中国の経済政策全般の立案を担う国家発展改革委員会(発改委)は 6 日、オーストラリアとの戦略経済対話の枠組みで行われる全ての活動を無期限停止すると発表した。 豪政府に対する中国側の不満が高まっていることを示す象徴的な動きだ。 両国は 2014 年以降、戦略経済対話の協議を 3 回にわたり実施していたが、17 年 9 月を最後に行われていなかった。 今回の発表を受けて豪ドルは米ドルに対して一時 0.6% 下落した。

テハン豪貿易・観光・投資相は 6 日、「中国発改委による今回の決定に失望している」との声明を発表。 戦略経済対話は「豪州と中国にとって経済面のパートナーシップを巡る問題に対処する重要な場だ」とした上で、「われわれは対話の実施や閣僚レベルでの関与に引き続きオープンだ」と述べた。 豪政府は先月、中国の広域経済圏構想「一帯一路」を巡り、外交政策に合致しないことなどを理由にビクトリア州政府が中国側と結んだ協定を破棄すると発表。 豪州が華為技術(ファーウェイ)のアクセスを制限し、新型コロナウイルスの起源を巡る調査を目指す取り組みを受け、中国は豪州産品の輸入抑制で報復。 両国の関係は悪化している。

中国発改委は豪政府の一部当局者が「冷戦思考」とイデオロギー的偏見から中豪間の正常な交流や協力を妨げる行動を取ったと主張した。 (Bloomberg = 5-6-21)


中国が元国営テレビ勤務の豪国民を正式逮捕、一段の関係悪化も

→ 中国国営 CGTN のキャスターだった成蕾氏は昨年 8 月に拘束された
→ 中国側は「国家機密を国外に違法提供した疑い」と通知

中国がオーストラリア国籍を持つ元中国国際テレビ局 (CGTN) キャスター、成蕾氏を正式に逮捕した。 昨年 8 月半ばに成氏が中国本土で拘束されたことで、豪中間の政治的緊張が高まっていた。 ペイン豪外相は 8 日の声明で、中国国営の CGTN で働いていた成氏が今月 5 日に正式に逮捕されたと発表した。 声明によれば、中国当局は成氏が「国家機密を国外に違法提供した疑いで逮捕された」と通知した。 中国は成氏の身柄拘束後、訴追もしくは弁護士との接見なしで最長 6 カ月間拘束できる条項を適用していた。

声明によると、豪州の在中国大使館は 2 国間の領事協定に基づき成氏の下に職員を 6 回派遣。 直近は先月 27 日だったという。 声明は、成氏の拘束環境について豪政府がこれまで定期的に「深刻な懸念」を表明してきたとした上で「国際規範に従い司法および手続き面での公正さや人道的扱いの基本的な基準が満たされることを期待している」とコメントした。

中国外務省の汪文斌報道官は北京で 8 日開いた記者会見で、「中国の司法当局は法に従いこの問題に対応した」と述べ、成氏の権利は保障されていると説明。 「豪州側が中国の司法当局を尊重し、この問題に対する中国の法的対応への干渉をやめるよう望んでいる」と話した。 汪報道官はまた、ブルームバーグ・ニュース北京支局の一員で昨年 12 月に拘束されたヘイズ・ファン氏に対する調べが続いているとあらためて語った。 中国当局のこれまでの説明によれば、北京市国家安全局が国家安全を危うくする犯罪活動に関与した疑いでファン氏を拘束したという。 (Bloomberg = 2-8-21)

◇ ◇ ◇

中国当局、国営チャンネルの豪州人キャスターを拘束

オーストラリア政府は 8 月 31 日夜、中国出身の豪州人のジャーナリスト、チェン・レイ氏が中国国内で拘束されたと発表した。 チェン氏は中国国営のニュースチャンネル、中国国際テレビ (CGTN) のキャスターを務めていた。 拘束の理由は明らかになっていない。 ペイン豪外相の声明によると、豪政府は 8 月 14 日、中国当局からチェン氏を拘束したと連絡を受けた。 CGTN のウェブサイトからは、同氏のプロフィルが削除されている。

豪メディアによると、チェン氏は中国からの移民。 豪州国籍を取得後、中国に戻り、最近では、CGTN のビジネスニュース番組のキャスターを務めていた。 豪州と中国の関係は近年、豪政府による 5G 事業への華為技術(ファーウェイ)の参入禁止などを受けて悪化している。 中国出身の豪州人を巡っては、中国当局は昨年 1 月、作家のヤン・ヘンジュン氏を拘束し、今年 3 月にスパイ罪で起訴した。 豪政府は「政治的な理由で拘束された」としてヤン氏の釈放を求めている。 (シドニー = 小暮哲夫、asahi = 9-1-20)


豪州、中国を WTO 提訴 高関税に「主権売り渡さない」

オーストラリア政府は 16 日、中国が豪州産大麦に高関税をかけたことは不当だとして、世界貿易機関 (WTO) の紛争解決手続きに訴えた。 両国の関係は今年に入って急速に悪化し、中国が豪産品の輸入にブレーキをかける動きが続いている。 中国は 5 月、豪産大麦に対して計 80.5% の反ダンピング(不当廉売)関税と反補助金関税を課した。 豪政府の灌漑整備の支援策などが価格を押し下げているとしているが、豪州側は根拠がないと反論してきた。

中国は 11 月から 12 月にかけて、豪産ワインにも最大で計 218% の高関税をかけた。 さらに検疫の強化などを理由に、豪州産の牛肉や石炭、綿花、木材、ロブスターなどの輸入にも停滞の動きが出ている。 バーミンガム貿易相は 16 日、他の品目についても WTO への提訴を検討しているとした。 豪州では、中国の一連の措置は豪州への「圧力」と受け止められている。 豪州は 4 月、中国の新型コロナウイルス対応についての国際的な調査を要求。 その後も、香港での民主派の取り締まりを批判し、安全保障分野で同盟国の米国に加えて日本やインドと協力する姿勢を強めていることに中国が反発しているためだ。

モリソン首相は 15 日、対中関係の悪化を問われ、「政治的な事柄と貿易上の関係を一緒くたにすることを懸念する。 豪州の主権は決して売り渡さない。」と述べ、妥協する姿勢を見せていない。 (シドニー = 小暮哲夫、asahi = 12-17-20)


中国報道官が偽画像? 投稿 豪首相は反発「恥じるべき」

中国外務省の報道官が 30 日、オーストラリア軍兵士が子どもに刃物を突きつけている画像をツイッターに投稿し、物議を醸している。 中豪関係が悪化するなか、最近明らかになった豪軍兵士によるアフガニスタンでの住民殺害を批判する目的だったとみられる。 モリソン豪首相は「偽造された画像だ」と断定し、「中国政府は恥じるべきだ」と強く抗議した。 問題の画像は、中国外務省の趙立堅副報道局長が 30 日午前に投稿。 大きな豪州とアフガンの国旗の上で、豪軍兵士が笑いながら、子どもののど元に刃物を突きつけている画像で、「豪軍兵士の民間人殺害はショックだ。 我々は強く非難する。」との文章を付けた。

これに対して、モリソン氏は記者会見を開き、「全く言語道断で正当化できない。 謝罪と投稿の削除を求める。 中豪関係が緊張しているのは疑いがないが、これはそのために取る対応ではない。 取るべきは、政治指導者同士の直接対話だ。」と批判した。 豪軍兵士の問題を巡っては同軍が 11 月、2009 年から 13 年にアフガンに派遣された部隊の 19 人が計 39 人の住民らを違法に殺害していた、とする内部調査を発表。 政府は特別捜査官事務所を設けて起訴するかどうかを判断するとしていた。 モリソン氏は「我が国はこの問題に率直で透明性のある手続きで対処している」と述べた。

中豪関係は、豪州が中国の新型コロナウイルスの対応を巡って国際調査を求めたことなどから悪化。 反発した中国が大麦や牛肉といった豪州産品の輸出にブレーキをかけるなどしている。 11 月 28 日からは豪産ワインがダンピング(不当廉売)されているとして、107 - 212% の高関税をかけ始めたが、豪州側は「(ダンピングの主張は)誤りだ。 中国は意図的にやってきている。(バーミンガム貿易相)」と反論していた。

これに対し、中国外務省の華春瑩報道局長は 30 日の定例会見で「豪軍兵士がアフガニスタンで重大な罪を犯したことは豪州メディアが報じたものであり、豪軍の調査報告で確認されたものだ。 豪州政府がすべきことは犯人を裁きにかけ、アフガニスタンの人々に正式な謝罪をすることだ」と反論。 画像の削除要求については「豪州政府とツイッター社の問題だ」と応じない姿勢を示した。 (シドニー = 小暮哲夫、北京 = 冨名腰隆、asahi = 11-30-20)


中国、7 種類の豪産品輸入を 6 日から停止か - 口伝えでブラックリスト

→ 石炭と大麦、銅鉱石・銅精鉱、砂糖、木材、ワイン、ロブスター
→ ブラックリストには鉄鉱石や天然ガスは含まれず - 関係者

オーストラリアの輸出各社が警戒を強めている。 豪州最大の輸出市場である中国の政府が商社に対し、少なくとも 7 種類の商品を対象に豪州からの購入を 6 日までに停止するよう命じているためだ。 中国政府が輸入停止を指示したのは、豪州産の石炭や大麦、銅鉱石・銅精鉱(コンセントレート)、砂糖、木材、ワイン、ロブスターなどだと事情に詳しい関係者が先に明らかにしていた。 非公開情報だとして匿名を条件に語った関係者の 1 人によれば、輸入停止は 6 日に始まる。

中国外務省の報道官は「関連する豪州産品の輸入減少は企業独自の行動によるものだ」と主張している。 豪コモンウェルス銀行エコノミクスは 6 日の電子メールで、標的となっている産品は 2019 - 20 年で豪全体の輸出(サービス除く)の約 7% を占め、271 億 5,000 万豪ドル(約 2 兆円)相当だと説明した。 中国が商品取引会社に口頭で伝えたブラックリストには、豪州からの輸入を止めれば自国経済に打撃が及ぶ鉄鉱石や天然ガスといった資源は含まれていないという。

バーミンガム豪貿易・観光・投資相は報じられている輸入制限は差別的行動はないとする中国側の主張と矛盾すると指摘。 「中国政府が言動を一致させ、これらの問題が解決されることを望んでいるが、業界が抱いている懸念の範囲や度合いがひどく深刻である事実を否定することはできない」とラジオ局 5AA の番組で述べた。 (Ainslie Chandler、Bloomberg = 11-6-20)


中国と豪州、過去最悪の関係 経済から安保までなぜ一変

中国とオーストラリアの外交関係に緊張が走っている。 長らく貿易強化を柱に良好な関係が続いたが、対中攻勢を強める米国と足並みをそろえる豪州に中国が反発。 対立は経済分野から人権や報道の自由、安全保障にも広がり、両国関係は「過去最悪」との見方も出ている。 「6 月、豪情報機関は『外国干渉防止法』に違反した疑いで、豪州に駐在する 4 人の中国人記者を捜査した。 パソコンや携帯電話、子供の電子玩具まで押収されたが、合理的な説明はない。 野蛮で不当な行為は直ちにやめるべきだ。」 中国外務省報道官は 9 日の定例会見で、豪州当局が中国人記者の取材活動を妨害していたと批判した。

2 カ月余り前の話を持ち出したのは、前日、中国当局に事情聴取を求められ豪大使館や総領事館に逃れた豪メディアの中国特派員 2 人が、急きょ帰国する事件があったためだ。 中国側の行為が一方的ではないことをアピールする形となった。 両国の対立は互いの記者への対応にとどまらない。 新型コロナウイルスの感染源などについて、豪州は米国と歩調を合わせるように、中国の影響力が強い世界保健機関 (WHO) から独立した調査を要求。 中国が 6 月に香港国家安全維持法を施行すると、直ちに香港との犯罪人引き渡し条約を停止した。

一方の中国は 5 月、豪州からの牛肉と大麦の輸入に制限をかけ、8 月には豪州産ワインにダンピング(不当廉売)の疑いがあるとして調査を始めた。 豪州の最大の貿易相手国という立場で揺さぶりをかけている。 それぞれの国民に対しても、中国が 6 月に「差別を受ける」と豪州への渡航中止を勧めた一方、豪州も 7 月、「拘束されかねない」と中国に入国しないよう勧告した。 豪州では最近の両国関係について、天安門事件を非難し 2 万 7 千人の中国人学生を受け入れた「1989 年以来で最悪の危機(オーストラリアン紙)」との見方も出ている。

中国、5G 巡る米国追従に反発

米国との対立が強まる中国は近年、その対応に集中するため周辺国との関係改善に動いてきた。 尖閣諸島を巡ってぶつかる日本や、国境地帯で衝突が続くインドなどとも決定的な対立を避けようとするなか、豪州には攻勢を強めている。 その理由について、中国外交当局者は二つの要因を挙げる。

一つは、豪州が米国の対中戦略に最も協力的であることだ。 トランプ政権が諜報機関の情報を提供しあう「ファイブ・アイズ(米、英、豪、カナダ、ニュージーランド)」の他の国々に中国の華為技術(ファーウェイ)機器を使わないよう求めると、豪州は 2018 年 8 月に次世代通信規格 5G の整備で、他国に先駆けて華為排除に動いた。 外交当局者は「米国にどこまで付き合うかは、英国やカナダに迷いも見られる。 だが豪州にはそれがない。」と話す。

もう一つは豪州が、日米のインド太平洋戦略に呼応するように、安全保障面での連携を強めている点だ。 中国は 18 年に豪州主導の多国間軍事演習「カカドゥ」に初参加するなど防衛交流を進めてきたが、そうした動きは止まりつつある。 逆に豪州は 7 月、南シナ海と西太平洋で日米との合同演習に参加し、中国への対抗姿勢を強めた。

豪州、安保情報の流出に強い懸念

豪州は最大のビジネス相手として中国との関係を重視し、13 年からギラード、アボット両政権ではほぼ毎年、首脳の相互訪問を続けてきた。 中国に対して明確な強い姿勢に転じたのは、ターンブル前政権下の 18 年だ。 華為の 5G への参入禁止に先立ち、同年 6 月には、外国政府の意を受けて政策決定のプロセスに影響を与える行為を厳罰化した。 当時、サイバー攻撃や基幹インフラへの中国企業の参入、政治献金を通じた政治家への働きかけなどを通じ、安全保障に関わる情報などが中国に渡っているという懸念が急速に広がっていた。

近隣の太平洋の島国に中国がインフラ支援攻勢をかけ、影響力を広げていることへの危機感も強い。 18 年には、中国の援助で建設されたバヌアツの港を中国が海軍の拠点として使う可能性が報じられ、物議を醸した。 豪政府はパプアニューギニアやフィジーで軍の基地施設の整備を支援するなど対抗している。 経済界は中国による輸入制限などにあえぐが、モリソン首相は「豪州は国益を考えて行動する。 誰からも威嚇されない。」と、安易な妥協はしないとの姿勢だ。

豪国防省の国防情報機構出身の安全保障専門家、ポール・モンク氏は「中国の『いじめっ子ぶり』に国民はいらだっており、(政府の対中姿勢には)世論の支持がある。 両国関係がすぐに改善するとは思えないが、ヒステリックにならずに対話のチャンネルを保つことが大切だ。」と語る。 (北京 = 冨名腰隆、シドニー = 小暮哲夫、asahi = 9-18-20)

中豪関係をめぐる動き
1972年国交樹立
1989年天安門事件後、豪州が 2万 7千人の中国人学生らを受け入れ
2018年6月豪州で中国を念頭に、外国政府による「政界工作」などの規制法成立
8月豪州が安全保障上の懸念を理由に、5G 通信網整備で中国の華為技術の参入禁止
11月中国が豪産大麦のダンピング調査を開始
2019年1月中国が中国系豪州人作家をスパイ容疑で拘束
2月中国による豪産石炭の輸入手続きの検査強化
2020年3月中国が豪州人作家を起訴 豪州は「政治目的」と抗議
4月豪州が中国の新型コロナウイルス対応を巡り、国際的な調査を要求
5月中国が豪産の牛肉と大麦の輸入にブレーキをかける措置
香港での反体制的な動きを取り締まる国家安全法制に豪州が懸念を表明
6月中国が自国民に豪州へ旅行をしないよう促す
7月豪州が「拘束の危険」と自国民に中国へ旅行しないよう勧告、香港からの移民受け入れ策を発表
8月中国が中国出身の豪州人ジャーナリストを拘束 豪産ワインのダンピング調査を開始
9月豪メディアの中国特派員 2人が拘束の恐れから緊急帰国
豪治安当局による豪在住の中国人記者宅への捜索が明らかに