「しまむら」下請け過酷労働か ミャンマー人技能実習生

外国人労働者の受け入れを拡大する法案が近く成立する見通しの中、労働現場での過酷な実態が明らかになった。 涙を流すミャンマー人の女性。 その原因となったのが、「なんや、その態度! きのう何話した? おい!」、「自分が悪いんじゃないんか? なんや今の! 今の態度なんや、あ?」と怒りを爆発させる男。 公開されたこの音声の主は、安さが売りの衣料品大手「しまむら」に、商品を納入していたメーカーの下請け企業の社長だという。

その企業で働いていたミャンマー人技能実習生 5 人は、7 月、違法な長時間労働や人権侵害などを訴え、労働組合の担当者とともに会見を開いた。 そこで明らかにされたのが、過酷な労働環境。 4 月の労働時間を見ると、午前 7 時から午前 0 時近くまで働く日がほとんどで、この月の休みはたった 1 日だけだった。 産業別労組「JAM」・小山参与は、「変な社長のもとで、精神的にも追い込まれるような事態にある」と話した。

厳しい労働環境に加え、暴言などによる精神的ストレスも。 こうした訴えを受けた、しまむらは、近く、全ての取引企業およそ 400 社に対し、法令を守り、技能実習生への人権侵害がないよう求める通知を出すという。 一方、外国人労働者の受け入れを拡大する法案の審議が大詰めを迎えている国会では、5 日、有識者への参考人質疑が行われた。 与党推薦の千葉大学・多賀谷名誉教授は、「出入国在留管理庁を中心に、公的機関が責任を持って担保する。 技能実習制度で起こったような問題は回避されるだろう。」と述べた。

野党推薦の神戸大学・斉藤准教授は、「(政府は)ちゃんと検証し、その反省に立った抜本的な外国人労働者政策を練り直すべきだ」と述べた。 与党の幹部は 5 日朝、10 日の会期末までに法案成立を目指すことを確認したが、野党は反発している。 立憲民主・辻元国対委員長は、「技能実習生の実態の把握なくして、入管法の改正なし!」と述べた。 (東海テレビ = 12-5-18)


中国人 46 人が失踪、不法残留中に逃亡か 北海道で勤務

北海道南部の知内(しりうち)町の建設工事現場で働いていた中国人 46 人が失踪したことが、元請け会社への取材で分かった。 道警は同じ現場で働いていた中国人 10 人を 11 月下旬に不法残留や旅券不携帯の出入国管理法違反容疑で逮捕しており、46 人は不法残留中に逃亡した可能性がある、とみて調べている。 道警は 11 月 26 日、知内町のメガソーラー建設工事現場で働いていた中国人の男 10 人を現行犯逮捕。 工事関係者が住居を訪ねると、共同生活をしていた 46 人もいなくなっていたという。

元請け会社「東芝プラントシステム」によると、いずれも下請け業者(千葉県)が雇用しており、元請け会社に提出された「在留カード」の写しには、「永住者」や「定住者」と在留資格が記され、就労制限の有無の欄も「就労制限なし」と記載されていた、という。 元請け会社の担当者は朝日新聞の取材に対し、「身分や資格をチェックした際には、特段問題があるようには思えなかった」と話した。

だが、道警の調べでは、逮捕されたうち 2 人は 8 月に観光クルーズ船で長崎港に入港。 1 日限りの船舶観光上陸許可をもらって下船し、そのまま戻らなかった。 残る 8 人は 6 月から 10 月にかけて、最長 15 日間の短期滞在ビザで成田空港などから入国。 いずれも「観光目的で来日した」などと供述しているという。 道警は、在留カードが何者かによって偽造され、不法就労が組織的に行われていた疑いもあるとみて捜査している。 (阿部浩明、asahi = 12-4-18)

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中国人の男女 11 人逮捕 入管法違反容疑、北海道

北海道警は 2 日までに、北海道木古内町でパスポートを持っていなかったり、在留期間を過ぎたりしていたとして、入管難民法違反容疑で中国人 11 人を現行犯逮捕した。 逮捕は 11 月 26 日付。 道警によると、逮捕したのは 27 - 62 歳の男女で、うち男 2 人は同法違反の旅券不携帯、男 8 人と女 1 人の計 9 人は不法残留の疑い。

最長で約 5 カ月間、不法残留していたとみられる。 11 人は町内の住宅やアパートに住み、うち男 10 人は隣接する知内町内の工事現場で働いていた。 容疑者らは 11 月 26 日午前 3 時すぎ、JR 木古内駅付近にいたところを警察官に職務質問された。 道警は、雇用主が容疑者らの在留期間が過ぎていたことを認識していたかも調べる。 (sankei = 12-2-18)


外国人実習生 7 割、最低賃金下回る 国の調査を野党分析

衆参法務委員会の野党委員が 3 日、失踪した外国人技能実習生 2,870 人に対する昨年の法務省調査の元資料である聴取票を分析した結果、67.6% の 1,939 人が最低賃金割れだったと発表した。 法務省は複数回答の結果、失踪の理由として「最低賃金以下」を 0.8%、22 人としており、大きく異なる実習の実態を示す結果となった。 野党は 4 日の参院法務委で追及する構えだ。

聴取票は、実習先から失踪して摘発された実習生から理由などを個別に聞き取ったもの。 野党議員に閲覧が許可されたが、複写は禁じられており、手分けして書き写したという。 野党の分析によると、ほかにも「過労死ライン」とされる月 80 時間以上の時間外労働をしていた実習生が全体の 1 割、292 人いた。 失踪の理由は、指導が厳しい(181 人)、暴力(139 人)、強制帰国(81 人)など。 セクハラ(4 人)、妊娠(1 人)もあった。

調査をめぐっては、法務省は当初、約 87% が「より高い賃金を求めて」失踪したとしていたが、11 月になって「低賃金」を理由に失踪したのが約 67% だった、と項目も数字も訂正した。 山下貴司法相は「心からおわび申し上げる」と国会で謝罪した一方、技能実習制度と新設される在留資格は「別物だ」として、出入国管理法改正案への影響は否定している。 国民民主党の山井和則衆院議員は「(政府は)法務省の虚偽の報告をもとに法案をつくった。 審議の前提は崩れたと言わざるを得ない。」と批判した。 法務省は「聴取票の『最低賃金以下』にチェックが入った数をありのままに報告した」としている。 (浦野直樹、asahi = 12-3-18)


亀山工場で外国人千人雇い止め シャープの 3 次下請け

シャープの亀山工場(三重県亀山市)で働いていた日系外国人作業員のうち千人が、今年に入り雇い止めされたことが 30 日、シャープの 3 次下請け会社で雇用主の「トラストライン(亀山市)」への取材で分かった。 ごく短期の契約更新が繰り返されてきたが、シャープ側の生産縮小の影響で更新されなかったとみられる。 不安定な外国人労働者の実態が浮き彫りになった。 下請け会社に法令違反が相次いでいるとして支援する弁護士らが 22 日、三重労働局に告発状を提出した。 労働組合「ユニオンみえ」には雇い止めされた外国人からの相談が相次ぎ、約 40 人が加入した。 (kyodo = 11-30-18)


富良野の現場 支える実習生 居住外国人、5 年で 2.6 倍

【富良野】 市内に住む外国人が増えている。 法務省の在留外国人統計によると、2017 年 12 月末で前年同期比 7.6% 増の 212 人。 27 日時点で外国人 217 人のうち 105 人が中国とベトナムからの技能実習生で全体の半数近くを占める。 人手不足に悩む食品加工や農業などの生産現場を支えている。 在留外国人統計によると、市内に住む外国人は調査が始まった 2012 年の 82 人から増え続け、5 年後の 17 年には約 2.6 倍になった。 技能実習生の国別では中国 63 人、ベトナム 42 人。

技能実習制度は発展途上国の若者の技術力向上を図る目的だが、日本の高齢化や人口減による人手不足を背景に、労働力確保に欠かせないのが実情だ。 市内の食品加工会社「西川食品」は 10 月、初めて実習生を受け入れた。 ベトナム人女性 2 人が調理場で弁当の仕出しや清掃作業をしている。 西川啓輔社長は「仕事の覚えが早く助かる。 今後、新しく実習生を迎え入れる際には核となって仕事をしてほしい。」と期待する。 (北海道新聞 = 11-28-18)


建設業の外国人労働者、4 割の企業が未払い賃金など問題

東京五輪・パラリンピックに伴う人手不足対策として特例で認められている外国人労働者受け入れ制度をめぐり、建設業の受け入れ企業で昨年度に立ち入り調査を受けた 518 社のうち、約 4 割の 204 社で賃金に関する問題があったことが分かった。 政府が外国人労働者の受け入れ拡大をめざす中、待遇に問題がある実態が改めて浮き彫りになった。

国土交通省が立ち入り調査などを委託する一般財団法人「国際建設技能振興機構」が、国交省が改善指導した件数を報告書にまとめた。 複数の指摘を受けた企業も多く、内容では、約束した手当の未払いや割増賃金の算定ミスといった「時間外・休日・深夜割増賃金の支払い」が 140 件、住居費などを過大に控除するなどの「賃金支払いの状況」が 137 件と突出して多かった。

受け入れ時に整備する仕事内容や労働条件などを記す「適正監理計画」の文書が適切に作成・保管されていなかったり、労働時間の管理が不十分だったりするケースもあった。 一方、同機構が実施する、外国人労働者から母国語で受け付ける電話やメールの相談窓口には、賃金や労働環境をめぐる相談が昨年度、82 件寄せられた。 (北見英城、岡戸佑樹、asahi = 11-27-18)


技能実習生 6 人に約 1,000 万円の賃金不払い 縫製会社を送検

会社は支払わずに倒産 関労基署

岐阜・関労働基準監督署は中国人技能実習生 6 人に約 1,000 万円の賃金を支払わなかったとして、シノダソーイング(岐阜県関市)と同社の代表取締役を最低賃金法第 4 条(最低賃金の効力)違反などの疑いで岐阜地検に書類送検した。 違法な時間外・休日労働もさせている。

同社は婦人服の縫製業を営んでいる。 代表取締役は平成 29 年 9 月 - 30 年 6 月までの間、中国人技能実習生 6 人に総額約 1,000 万円の賃金を所定支払期日に支払わなかった。 今年 2 月に実習生から「昨年 7 月以降、賃金が一切支払われていない」と申告があり、同労基署が臨検に入ったところ、不払いが認められた。 同労基署は是正勧告を行い、同社は実習生が帰国するまでに分割で支払うとする「支払い計画書」を策定した。 しかし、同社は約 200 万円支払った時点で倒産手続きに入り、約 800 万円が不払いのまま 5 月 17 日に事業を停止した。

同社内では多額の使途不明金が認められた。 同労基署は不払いの理由はこの使途不明金にあるとみている。 調べに対し代表取締役は「個人的な支出に遣った」と認めたが、具体的に何に遣ったのかは黙秘しているという。 なお、中国人実習生 6 人は未払い賃金立て替え払い制度による救済が図られる予定。

10 カ月で休みは正月だけ

違法な時間外・休日労働もさせていた。 36 協定の届出はあったが、過半数代表者を適正に選出しておらず、有効でなかった。 代表取締役は有効な 36 協定がないまま、29 年 7 月 - 30 年 5 月までの間、中国人技能実習生 6 人に時間外労働と休日労働をさせた。 時間外労働はほぼ毎日 4 - 5 時間、休みは正月のみで、1 カ月当たりの時間外・休日労働数の平均は 178 時間に上る。 11 カ月に渡り過労死ラインの 2 倍以上の時間外・休日労働をさせていたことになる。

長時間労働に加え、賃金が支払われなかったことから、中国人実習生がストライキを起こしたこともあったという。 ストは 3 回行われ、監理団体が間に入り仲裁をした。 監理団体も賃金不払い、長時間労働の実態を知っていたものとみられる。 (労働新聞 = 11-26-18)


入管法改正案 技能実習制度は置き去りか

外国人技能実習生の過酷な実態が法務省の調査で改めて浮き彫りになっている。 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案は衆院法務委員会で実質審議入りした。 技能実習制度の問題点を棚上げしたまま議論は進められない。 法務省は失踪した実習生から昨年、失踪動機などを聞き取った 2,870 人分の「聴取票」の写しを 19 日に開示した。 就労場所など個人の特定につながる情報を黒塗りし、衆院法務委の理事らに閲覧と書き写しを許可している。

閲覧した野党議員によると、低賃金、長時間労働のケースが散見される。 月給 7 万円で建設作業に週 72 時間携わったフィリピン人男性がいた。 服の製造業に従事した中国人女性は月給が 6 万 - 10 万円で、そこから光熱費など 5 万円を差し引かれていた。 多額の借金を抱えて来日する状況も見過ごせない。 溶接業だったベトナム人男性は仲介業者への支払いのために親族や銀行から 230 万円を借り入れていた。

政府は当初、開示することに後ろ向きだった。 実習制度は日本で技術を学んで本国の発展に生かしてもらうことを本来の目的としながら、安い労働力を確保する手段に使われてきた側面がある。 政府に不都合な情報を隠したかったのではないか。 実習生の失踪は 2012 年の約 2 千人に対し、17 年は 7,089 人に増えた。 受け入れ先の監督強化などを盛る技能実習適正化法が昨年 11 月に施行されたものの、今年 1 - 6 月も 4,279 人に上る。

務省は調査結果について失踪動機の 87% が「より高い賃金を求めて」だったと説明していた。 調査の選択肢にはなかった表現である。 実際は、「低賃金」、「契約賃金以下」、「最低賃金以下」の 3 項目をまとめて集計した上、67% とすべき数字も違っていた。 政府は受け入れ拡大の新制度と実習制度は目的など性質が異なるとする。 この説明にうなずくことはできない。 新たに設ける在留資格「特定技能 1 号」は実習生が移行することも想定する。

法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げし、態勢を強化するという。 調査結果のずさんな扱いを見ると、適切に業務が行われるか心もとない。 ここにきて法務省は実習制度の運用状況を検証するプロジェクトチームを省内に設けた。 受け入れ拡大の議論を深められる状況ではない。 政府、与党は今国会での成立を見送るべきだ。 (信濃毎日新聞、社説 = 11-24-18)


技能実習に「宿泊業」追加 = 新在留資格の人材確保狙う

政府は外国人が日本で職業訓練を受けるための在留資格「技能実習 2 号」の対象に、宿泊業を追加する方針だ。 政府が今国会成立を目指す出入国管理法改正案は、技能実習 2 号を修了した外国人が新たな在留資格「特定技能 1 号」に無試験で移ることを認めている。 技能実習 2 号の対象拡大で特定技能 1 号の人材を確保する狙いがある。

技能実習は日本の技術を途上国に移転するため、外国人に日本で働いてもらう制度。 入国 1 年目の技能実習 1 号、2 - 3 年目の 2 号、4 - 5 年目の 3 号がある。 一方、衆院で審議中の入管法改正案は、技能実習 2 号の修了者は特定技能 1 号取得に必要な試験を免除すると定めている。 ただ、特定技能 1 号の対象 14 業種のうち、宿泊業と外食業は技能実習 2 号の対象になっていない。 このため、与党内から「技能実習 2 号の対象業種を拡大し、特定技能 1 号の人材供給源にすべきだ」との声が上がっていた。

観光庁の金井昭彦審議官は 21 日の衆院法務委員会で「技能実習 2 号の対象に宿泊業を追加すべく、検討を重ねている」と説明。 理由として「わが国の宿泊業はきめ細やかなサービスや清潔感が特徴。 観光が重要な産業である場合が多い途上国では技能習得のニーズが高い。」と語った。 政府は、5 年間で最大 34 万 5,000 人と見込む特定技能 1 号取得者のうち、45% は技能実習 2 号からの移行組とみている。 野党は、新在留資格は技能実習制度と「密接不可分」で、新資格の導入よりも失踪者が相次ぐ技能実習制度の問題の解決を優先すべきだと主張している。 (jiji = 11-24-18)


なりすまし防止、外国人受診に在留カード要求へ

政府は外国人が日本の医療機関で受診する際、在留カードなど顔写真付き身分証の提示を求める方針を固めた。 来年 4 月開始を目指す外国人労働者の受け入れ拡大で、健康保険証を悪用した「なりすまし受診」が懸念されるためだ。 外国人差別につながらないよう、日本人にも運転免許証などの提示を求める方向だ。 来年度にも運用を始める。 厚生労働省が在留外国人への周知徹底を図るとともに、身分証の提示要請を各医療機関に促す。

国民皆保険制度を採用する日本では、在留外国人も何らかの公的医療保険に原則として加入することが求められる。 保険証を提示すれば、日本人か外国人かを問わず、原則 3 割の自己負担で受診できる。 ただ、保険証には顔写真がついていない。 「別人かもしれないと思っても『本人だ』と主張されると、病院側は反論が難しい(厚労省幹部)」という。

自民党の「在留外国人に係る医療ワーキンググループ」が医療関係者や自治体から行ったヒアリングでは、なりすまし受診の実例が報告された。 神戸市では不法滞在のベトナム人女性が 2014 年、日本在住の妹の保険証を悪用してエイズウイルス (HIV) の治療を受けていた。 他人の保険証で医療費の自己負担軽減を受けることは、違法行為に当たる可能性がある。 (yomiuri = 11-18-18)

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社会保険料滞納の外国人、在留資格の取り消し検討

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)の改正案をめぐり、山下貴司法相は 9 日の衆院法務委員会で、「悪質な社会保険料の滞納者に対しては、在留を認めないことを検討している」と述べた。 法務省は制度を所管する厚生労働省と連携し、具体的な仕組みについて検討を進める。

山下法相は「人手不足の深刻化に対応するため、即戦力となる外国人材の受け入れが可能となる」と述べ、改正案を今国会で成立させる意義を強調。 新制度のもとで受け入れる外国人について、法務省から厚労省など関係機関に一定の情報を提供することで、「社会保険の加入を促進する取り組みを検討したい」との考えも示した。 (asahi = 11-9-18)

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健康保険、家族は「日本居住」限定へ 外国人材増に対応

外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、厚生労働省は企業の従業員が加入する公的医療保険(健康保険)について、保険を使える扶養家族を日本国内に住む人に限る方向で検討に入った。 海外に住む家族も保険を使える今の制度のままだと、外国人労働者の増加に伴い国の医療費負担が膨らむとの懸念に対応するためだ。 来年の通常国会への健康保険法改正案の提出をめざす。

企業などに勤める人は国籍に関係なく、健康保険組合や協会けんぽが運営する被用者保険に加入し、被保険者として保険料を支払う。 被保険者の配偶者、両親や祖父母、子ども、孫らは被保険者の仕送りで生計を立てているなどの条件を満たせば、海外在住で別居でも保険が適用される。 被保険者が外国人でも日本人でも、海外に住む扶養家族が来日して治療を受けた場合の自己負担は原則 3 割で済む。 海外で治療を受けた時は、一度全額を自分で支払い、保険適用分について払い戻しが受けられる「海外療養費制度」が使える。

厚労省は昨年度約 42 兆円の医療費のうち、外国人の扶養家族にいくらかかったかは把握していない。 だが、自民党内などには以前から制度見直しを求める声があり、新在留資格「特定技能」を来年 4 月から導入するための出入国管理法改正案をきっかけに、さらに声は強まった。 日本で働く外国人の増加に伴って、海外に住む扶養家族の医療費負担も増え、医療保険財政を圧迫しかねないとの懸念があるからだ。 こうした状況を踏まえ、同省は保険適用となる扶養家族を絞り込む必要があると判断。 国籍を問わず、「日本居住」を要件とする方向で検討している。 (西村圭史、asahi = 11-7-18)

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「医療保険を外国人が不正利用」裏付けないまま対策先行

政府が目指す新たな外国人材の受け入れ拡大の議論を機に、外国人の公的医療保険の使い方に国会などで注目が集まっている。 外国人による不正の広がりを示す調査結果を持たないまま、すでに国は不正防止対策に動いており、これに対して「人権侵害だ」と批判の声が上がる。 安倍晋三首相は 31 日、参院本会議で外国人の公的医療保険のあり方について、「すでに日本人労働者と等しく適用されており、今回の新たな外国人材の受け入れに伴い、制度見直しは考えていない」としながらも、「適正な利用に向けた対応について検討を進める」と述べた。 国民民主党の大塚耕平氏の質問に答えた。

自民党の厚生労働部会は 29 日の決議で、在留外国人と公的医療保険に関する党内の議論を踏まえ、外国人が他人の保険証を使う恐れなどを念頭に、「運用の強化や法改正を含めた制度的な対応の強化」や「関係機関での連携強化」を政府に求めた。 政府も外国人による医療保険の使い方を注視。 外国人受け入れの総合対策を議論する閣僚会議では 7 月、今後対応すべき項目に「医療保険の不適切使用の防止」を盛り込んだ。 10 月 2 日に第 4 次安倍改造内閣が発足した際にも、安倍首相は厚生労働相に、不正防止に取り組むよう指示した。 (西村圭史、asahi = 11-3-18)


実習生の失踪動機 低賃金 7 割 法務省の調査

失踪外国人実習生、月給「10 万円以下」半数超

実習先から失踪した外国人技能実習生 2,870 人のうち、7 割弱が失踪の動機に「低賃金」を挙げたことが法務省の調査でわかった。 実習先での月給については、半数以上が「10 万円以下」と回答した。 失踪した実習生に対する同省の調査結果が明らかになるのは初めて。 「国際貢献」を掲げながら「安価な労働力」に利用されていることが、失踪につながっている構図が浮かび上がった。

16 日の衆院法務委員会理事懇談会で同省が示した。 技能実習生を巡っては、昨年 7,809 人、今年は 1 - 6 月の上半期だけで 4,279 人が失踪した。 調査は、昨年 12 月までに失踪し、その後、出入国管理・難民認定法(入管難民法)違反(資格外活動など)で摘発されるなどした実習生が対象。 国籍別では中国の 1,537 人が最多で、ベトナムの 1,085 人が続いた。 (yomiuri = 11-17-18)

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失踪実習生調査結果に誤りと公表

外国人労働者受け入れを拡大する入管難民法などの改正案に絡み、法務省は 16 日、失踪した技能実習生に対する調査結果に誤りがあったと与野党に明らかにした。 これまで「より高い賃金を求めて」との失踪動機が約 87% としていたが、新たな結果では「低賃金」が約 67% を占めたとした。 法務省は集計ミスなどと説明したが、野党だけでなく与党からも疑問の声が上がっている。 改正案について、衆院法務委員会は葉梨康弘委員長(自民)の職権で、16 日午後に実質審議入りすることを決めていたが、立憲民主党が委員長解任決議案を提出したため散会、見送りとなった。 (kyodo = 11-16-18)

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外国人技能実習生が実態を訴え 時給 300 円で残業

技能実習生が過酷な労働の実態を訴えました。  技能実習生 : 「2 年前、会社働いた。 けがしました。 サインしないと帰って下さいと何回も言われました。 私はサインしないです。 働きたいです。」  外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案の審議入りを前に、野党が中国やベトナムからの技能実習生にヒアリングを行いました。 仕事中のけがについて会社から補償がなく、帰国を迫られたという証言や時給 300 円で長時間の残業をさせられたなどの訴えが相次ぎました。 (ANN = 11-8-18)


外国人労働者、5 年で最大 34 万人 上限設定、首相意向

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案の審議が 13 日、衆院本会議で始まった。 安倍晋三首相は受け入れ見込み数について近日中に業種別に明らかにする考えを示した上で「上限として運用する」と語った。 受け入れ数の上限規制は国会審議で焦点の一つとなっており、政府として上限を設定する方針だ。

首相はこの日の答弁では受け入れ見込み数を示さなかったが、「分野別に、5 年ごとに向こう 5 年間の見込み数を示す」と明らかにした上で、「受け入れ業種における大きな経済情勢や雇用情勢への変化が生じない限り、上限として維持される」と答弁した。 上限規制については、山下貴司法相が 1 日の衆院予算委員会で「数値として上限を設けることを考えていない」と答弁し、野党から批判が出ていた。

政府は外国人労働者の受け入れ先として 14 業種を検討。 受け入れ人数について、初年度の 2019 年度は約 3 万 3 千 - 約 4 万 7 千人、23 年度までの 5 年間で約 26 万 - 約 34 万人と試算していることが 13 日、関係者への取材でわかった。 厚生労働省の 2017 年の統計では、国内で働く外国人は過去最高の約 128 万人となっていた。 また、人手不足の規模は初年度で約 61 万 - 約 62 万人、19 年度からの 5 年間で約 130 万 - 約 135 万人に上ると見込んでいることもわかった。 政府はこれらの数値についてさらに精査したうえで、14 日に国会に示す方針だ。 (asahi = 11-13-18)

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「特定技能」の外国人受け入れ、初年度 4 万人 省庁試算

政府が外国人労働者の受け入れ拡大のため、来年 4 月の導入を目指している新在留資格「特定技能」をめぐり、各省庁が初年度に合計で約 4 万人の受け入れを試算していることが関係者の話で分かった。 新たな来日者のほか、技能実習生から移行する人も含まれる。 政府は今後、必要性を精査しながら受け入れ人数を調整するという。

政府は 2 日、特定技能の創設を盛り込んだ出入国管理法の改正案を閣議決定し、衆院に提出した。 来週にも審議入りし、臨時国会での成立を目指す。 ただ、受け入れの業種や人数は法案で明示されず、成立後に省令などで決める。 野党が「全体像が見えない」と批判をする一方、与党からも「移民政策につながる」などと慎重意見が出ている。 政府関係者によると、各省庁が概算要求時点で、所管する業界について初年度の受け入れ人数を試算した結果、合計で約 4 万人だった。 厚生労働省によると、昨年 10 月末で国内の外国人労働者は約 128 万人。 (asahi = 11-3-18)

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熟練技能者は永住可能に 外国人受け入れ法案骨子

外国人労働者の受け入れ拡大に向け、政府が秋の臨時国会に提出予定の入管難民法などの改正案骨子が 11 日、判明した。 受け入れが必要な業種で、知識や経験など一定の技能が必要な業務に就く「特定技能 1 号」と熟練技能が必要な業務に就く「特定技能 2 号」という在留資格を新設する。 1 号は在留期限が通算 5 年で家族帯同を認めないが、2 号は事実上永住を認め、配偶者と子供の帯同も可能とする方針だ。 資格は定期的に更新し、取り消しもあり得る。

受け入れ拡大は深刻な人手不足が背景にあり政府は来年 4 月の導入を目指す。 骨子によると、生産性向上や日本人労働者確保の取り組みをしても、なお人材が不足する分野で外国人を受け入れることとし、今後具体的に定める。 介護や農業、建設など十数業種が検討対象となっている。 受け入れるのは即戦力で生活に支障がない程度の日本語ができる外国人。 各業種を所管する省庁の試験などを経て、1 号や 2 号の資格を取得する。 技能実習を修了した後に 1 号の資格を得られる仕組みも設ける。 (sankei = 10-11-18)


技能実習生への残業代支払い命令 中国人雇用の農家に

外国人技能実習生として働いていた茨城県内の農家で残業代未払いなどの不当な行為があったとして、中国人の女性 (32) が農家と実習生の受け入れを仲介した監理団体に未払い分の支払いや損害賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は 9 日、未払い分と制裁金に当たるほぼ同額の付加金の計約 199 万円を支払うよう農家に命じた。

判決は、女性に支払われていた残業代は時給 400 円程度と認定。 代理人の指宿昭一弁護士は「重大な違法行為だ。 技能実習生だからその程度で働かせていいとはならない点を裁判所が認めた意義がある。」と強調した。 判決によると、女性は 2013 年 9 月に来日し、翌月から大葉の摘み取りなどに従事していた。 岡田伸太裁判長は午後 5 時以降の残業時間帯に大葉を 10 枚ずつゴムで束ねる作業に関し「農家の指揮監督下で行われ、雇用契約に基づくものだ」として、残業に当たると判断。 1 時間当たりの作業量などを考慮して未払い分の残業代を算定した。

女性を含む実習生らが雇用契約の範囲外で請け負った作業だったとの農家側の主張を退けた。 判決は、女性が訴えた農家内でのセクハラ行為や、監理団体の指導義務違反に基づく損害賠償請求はいずれも棄却。 女性から相談を受けて警察へ通報したことを理由に監理団体を解雇された元職員の男性 (45) が解雇無効と賃金の支払いを求めた部分も退けた。 原告側は敗訴部分を不服として控訴する方針。 (kyodo = 11-10-18)


廃校、再び学びやに 外国人実習生の研修施設開所 東郷

昨年 3 月に閉校した薩摩川内市東郷の旧山田小学校跡が、外国人技能実習生の研修施設「ベーシックトレーニングセンター山田」として生まれ変わった。 実習生を受け入れる監理団体が整備した。 市などによると、外国人研修施設として廃校を使う例は県内でも珍しい。 実習生の増加を背景に高まる研修施設のニーズが、廃校跡の活用を探る地域のニーズとマッチングした形だ。 実習生が寝泊まりする部屋や食堂、教室が設けられた研修施設は敷地面積約 7,500 平方メートル、延べ床面積約 1,900 平方メートル。 (南日本新聞 = 10-29-18)


中国籍の技能実習生を殺人容疑で逮捕 被害者と同居の女

群馬県伊勢崎市曲沢町のアパートで 27 日、中国籍の技能実習生の女性が頭から血を流しているのが見つかり、その後死亡が確認された事件で、県警は 28 日、同居する同僚で中国籍の劉秋穎容疑者 (30) を殺人の疑いで逮捕し、発表した。 「生活のことで注意され、怒りで我慢できなかった。 包丁で切りつけた。」と、容疑を認めているという。 伊勢崎署によると、劉容疑者は 27 日午前、李雪さん (25) の頭部を切りつけ、殺害した疑いがある。 李さんと劉容疑者は市内のペット関連用品製造工場で働いており、他の中国籍の技能実習生の女性と 3 人で同居していた。

事件当時、同居の他の女性は外出中だったという。 27 日午前 11 時半ごろ、近くに住む男性が、帰宅したこの女性の泣き声がするのを聞いて部屋を訪れたところ、李さんが倒れているのを見つけ、119 番通報した。 この直前の午前 11 時 20 分ごろ、劉容疑者に声をかけられた近くに住む女性から署に連絡があり、署が劉容疑者を任意同行して話を聞いたところ、事件への関与を認めたという。 (asahi = 10-28-18)

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アパートで中国人女性死亡 = 頭から血、殺人容疑で捜査 - 群馬県警

27 日午前 11 時半ごろ、群馬県伊勢崎市曲沢町のアパート一室で、近隣住民から「浴室で女性が倒れている」と 119 番があった。 この部屋に住む中国籍の技能実習生李雪さん (25) が頭から血を流して倒れており、搬送先の病院で死亡が確認された。 県警伊勢崎署は、殺人の疑いで捜査を開始。 李さんと同居する技能実習生の中国人女性 2 人が何らかの事情を知っているとみて、話を聴いている。 同署によると、李さんらの部屋から女性の泣き声がしたため、近所の人が訪問。 浴室で倒れている李さんを発見したという。 (jiji = 10-27-18)


愛知でも外国人の家事代行特区 事業者にニチイ学館

地域を限って規制を緩める国家戦略特区制度を使い、外国人による家事代行が愛知県内でも始まることになった。 県は、最初の事業者に選ばれたニチイ学館(東京都千代田区)に通知書を交付した。 家事代行を目的とした外国人の入国は、出入国管理法で原則として認められていないが、特区では一定の条件を満たせば在留資格を認める。

ニチイ学館は東京都や神奈川県で外国人の家事代行事業を展開しており、県内では来春開始を目指すという。 大村秀章知事から通知書を受け取った寺田剛常務は「今後も家事支援のニーズは拡大する。 積極的に外国の人材を使って質の高いサービスを提供したい。」と話した。 内閣府によると、外国人による家事代行は愛知のほか、東京、神奈川、大阪、兵庫など 4 都府県で認められている。 (北上田剛、asahi = 10-25-18)


外国人実習生対応の寮整備 大京はムスリム向け礼拝所

YKK はホテル並みサービス、新幹線延伸工事も影響

北陸の製造業で外国人技能実習生に住みやすい寮を整備する動きが広がっている。 コマツ向け建設機械部品を手掛ける大京(石川県小松市)は、新設する寮にイスラム教徒向けの礼拝スペースを設置する。 YKK はホテル並みのサービスを提供するほか、宗教に配慮した料理を提供する。 人手不足や海外拠点で働く外国籍社員の技術力向上などを狙って、実習生の受け入れが増えていることに対応する。

大京は 2019 年末をメドに 1.5 億円を投じ、外国人技能実習生 50 人と日本人の定期採用者 12 人を収容できる寮を新設する。 寮は本社に隣接する新工場の建設予定地内で、敷地面積は 2,000 平方メートルを想定。 将来的には 100 人を収容できるように拡張する。 実習生として受け入れる計画のインドネシア人にはイスラム教徒が多いため、新たな寮では礼拝スペースを設置する。 間仕切りなどで礼拝スペースを隔離することで落ち着いて祈れるようにする。 建物の共有スペースにカーペットなどを敷くことを検討する。

母国にいる家族らとインターネットで連絡を取る実習生が多いことからネット環境も整備する。 これまでは個人がネット契約していたが、大京が契約して機材も導入する。 同社では現在、インドネシアや中国、タイなどの実習生を 40 人を採用している。 建機の需要拡大を受けて今後、年間 20 人のペースで採用する計画だ。 一方、現在の寮は手狭になっているほか、本社から距離がある。 外国人実習生を増やすには「新たな寮の整備が採用時の強みとなる(同社)」と判断した。

YKK は「技術の総本山」と位置づける富山県黒部市で建設が進む自然エネルギーを活用した集合住宅街区「パッシブタウン」に、長期に滞在する外国籍社員向けの「サービスアパートメント」を整備した。 17 年 8 月に入居が始まったアパートメントは全 10 戸。 家具、家電付きで、掃除、洗濯やベッドメークなどホテル並みのサービスも提供する。

アパートメントに隣接したレストラン「パッシブキッチン」と、黒部事業所内の YKK・R & D センターの食堂は日本イスラーム文化センターのハラル認証も取得した。 外国から招いたシェフが調理を行い、イスラム教の戒律に従った豚肉やアルコールを含まないハラル料理やベジタリアン向けの食事を提供する。 YKK は海外拠点で働く開発者を対象に、技術力向上のための短期研修を実施してきたが、長期赴任で実際に開発プロジェクトに参画させながらの研修も始めた。 30 人前後の外国籍社員が 3 カ月から 3 年間のスパンで滞在するため、食、住の面で苦労せずに業務に集中できるような環境整備に乗り出したという。

企業各社は実習生を戦力として採用しており、北陸 3 県の 17 年の外国人技能実習生の数は 1 万 2,099 人と 3 年で約 6 割増加した。 17 年 11 月には外国人技能実習適正実施法が施行され、実習期間が最長 3 年から 5 年に延長された。 一方で製造業の関係者からは「実習生が無断で逃げ出してしまう」といった声も聞かれる。 住居環境だけでなく、継続して働ける労働環境の整備も重要となりそうだ。

2023 年に控える北陸新幹線の敦賀延伸が、寮の整備に影響を及ぼす事例もある。 延伸によって停車駅ができる加賀市に本社を構える大同工業は 9 月末、本社敷地内に新たな寮を整備し、6 人の実習生が住み始めた。 約 20 人が入居でき、遠方に住む日本人の社員も入れるようにするが、当面は実習生が中心だ。

現在、同社にはベトナム人が 41 人在籍しており、寮に入れないベトナム人は既存の賃借物件を利用する。 だが、同社の担当者は延伸工事に関連する作業員の数が増えており、「物件が満杯の状況だ(同社担当者)」と指摘。 自社で寮の整備が必要と判断した。 寮の 2 階には 40 平方メートルの共有の談話室を設置して入居者同士がコミュニケーションできる。 イスやテーブルなどを設けて、カップ麺や飲料の自動販売機を置くという。 今後、実習生が近隣住民と共生できる工夫も欠かせない。 (毛芝雄己、伊藤新時、nikkei = 10-24-18)


「日本で看護師に」再挑戦を支援 不合格者の母国へ講師

インドネシアからきた男性は 4 月から、北九州市の戸畑共立病院で看護師として働く。 外科系病棟の入院患者を受け持ち、他の職員と、患者の状態の申し送りもする。 専門用語でやりとりし、メモも日本語だ。 ルディ・ファルロジさん。 経済連携協定 (EPA) の仕組みを使って 2009 年に来日したが、日本の看護師国家試験で 3 年連続不合格。 いったん帰国したが、5 度目の挑戦で合格を果たした。

ジャカルタの病院の透析病棟で勤務していたファルロジさんが日本での看護を志したのは、医療水準の高い日本で技術を磨きたいと思ったからだという。 試験に失敗して帰国した後は看護の仕事に復帰したが、友人が福岡県と県医師会の事業「再チャレンジ支援」で合格したことを知り、「今度こそ」と応募した。

16 年度から始まったこの事業は、EPA を活用した看護師試験受験に失敗した外国人を対象に、県医師会が試験対策に精通した講師を国内外に派遣する仕組みだ。 インドネシアで行う集中講義の場合、週 5 日のペースで約 4 カ月間、試験対策を無料で行う。 准看護師の資格を持ち、県内で働きながら看護師をめざす人には、県医師会の看護学校 2 カ所を「教室」に研修を実施する。 (渕沢貴子、asahi = 10-16-18)


「実習生の人権侵害ないか」ワコール、委託先に異例調査

女性下着大手のワコールホールディングス(HD、本社・京都市)が、自社製品の製造工程にかかわるサプライチェーン(製品供給網)に、外国人技能実習生の人権を侵害している会社がないかどうかの調査を始めた。 賃金不払いなどの不正行為があれば改善を求める。 応じない場合は取引そのものを見直す。

グループ会社にとどまらず、製品の調達元までさかのぼって外国人を人権侵害から守ろうという取り組みは日本の企業では異例だ。 技能実習制度への批判が国内外で高まるなか、人権を軽視すれば企業ブランドに傷が付きかねないリスクが企業を動かしたかたちで、同様の動きが他企業に広がる可能性もある。

調査は、ワコール HD 傘下のワコールとルシアンが今夏から始めた。 主力の下着ブランド「ワコール」、「ウイング」の国内の生産委託先 60 工場のうち、外国人労働者が働く約 40 工場が対象で、計 538 人の技能実習生が働く。 40 のうち 32 工場はグループと資本関係がない取引先だ。 ワコール HD の社員らが全国の工場を訪ね、「この 3 年間に労働基準監督署などから是正勧告を受けていないか」、「実習生の労働時間はタイムカードなど客観的な記録があるか」、「賃金は最低賃金額以上を払っているか」など約 25 項目をチェックする。 (織田一、asahi = 10-15-18)