株、急落で一時 2 万 2,000 円割れ 世界の業績相場、終わりの始まりか

株式市場の投資家は、貿易戦争や米国の長期金利の上昇による景気後退を意識し始めたようだ。 10 月に入ってからの世界同時株安は、企業業績の拡大を背景とした業績相場の終わりの始まりを示唆している可能性が高い。 23 日の東京株式市場で日経平均株価は一時心理的な節目である 2 万 2,000 円を約 2 カ月ぶりに割り込んだ。 中国通貨・人民元安やイタリアの財政不安、中東の地政学リスクなどを懸念し、投資家は買い持ち高を減らしている。 23 日は香港や台湾などアジア各国・地域の株式相場も下落している。

売り材料は目白押しだが、最近の株安の根っこにあるのは成熟した景気が下り坂に向かうことへの警戒だ。 米国に続き日本でも決算発表が本格化する。 スフィンクス・インベストメント・リサーチの別府浩一郎代表取締役は「結果が良好でも株価は売られる可能性がある」と警鐘を鳴らす。 日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)を長年、独自に分析している別府氏によれば、電機や生産用機械など大企業主要業種の多くで、すでに業況サイクルのピークアウトが認められるという。

業績相場の起点を米連邦準備理事会 (FRB) が量的緩和第 3 弾 (QE3) を終了した 2014 年 10 月末とすると、18 年 9 月末までにおよそ 4 年が経過した。 この間に米ダウ工業株 30 種平均は 5 割、日経平均は 4 割強、ドイツ株式指数 (DAX) は 2 割、香港ハンセン指数も 1 割強、いずれもドルベースで上昇した。 QUICK・ファクトセットによれば 1 株利益 (EPS) は日本が 40%、米国が 21%、ドイツが 11%、香港が 3% それぞれ増加した。

しかし米景気の拡大は 10 年目に突入した。 異例の景気回復が続き、循環的にはいつ腰折れしても不思議はない。 それを象徴するように経済のバロメーターである先進国の資本財関連株は今年 1 月をピークに下落基調が続いている。 上海市場では今年 4 月以降、それまでの「人民元安 = 株高」の構図が「人民元安 = 株安」に変わった。 輸出による為替差益への期待より貿易戦争による輸出数量の減少や資本流出への不安が大きくなったためだ。

株式投資家は守りを固めようとしている。 米 S & P 500 種株価指数が年初来安値を付けた 2 月 8 日以降の業種別上昇率の上位には公益事業やヘルスケアといった景気悪化局面に強いとされるセクターが並ぶ。 同様に日本でも電気・ガス業や医薬品が選好されている。 米長期金利の上昇は景気減速が意識されれば低下に転じ、株安も止まるというのが過去 10 年のセオリーだ。 しかし今回の局面は少しやっかいだ。

FRB によれば、借りた(預けた)お金の実質的な価値の変化を示す米国の実質金利は 10 年物で今月 19 日に 1.09% と 11 年 3 月以来の水準に上昇した。 名目金利と実質金利の差である期待インフレ率は最近、下がり気味で足元の金利上昇は市場の景気認識とは別のところで発生している可能性が高い。 トランプ政権による財政赤字拡大への不安だ。

財政の肥大化による金利上昇は民間の経済活動の足を引っ張る。 人手不足による人件費増に加え、原油高も忍び寄る。 好景気が株高につながる業績相場の終演とともに、金利上昇が景気を冷やし株式相場を押し下げる逆金融相場の足音が近づいている。 (永井洋一、nikkei = 10-23-18)

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日経平均、915 円安で取引終了 今年 3 番目の下げ幅

11 日の東京株式市場は、前日の米国株式市場での株価急落を受け、日経平均株価が 2 営業日ぶりに大幅に値下がりした。 下げ幅は一時 1,000 円を超え、約 1 カ月ぶりに 2 万 3,000 円を割り込んだ。 終値は前日より 915 円 18 銭 (3.89%) 安い 2 万 2,590 円 86 銭で、今年 3 番目の下げ幅。 東京証券取引所第 1 部全体の値動きを示す TOPIX (東証株価指数)は 62.00 ポイント (3.52%) 低い 1,701.86。 出来高は 19 億 5 千万株。

米長期金利の上昇や米中貿易摩擦への警戒感が急速に広がった。 中国や台湾などアジア市場も一時 2 - 6% 程度下落した。 SMBC 日興証券の太田千尋氏は「特に中国経済の減速が懸念され、世界中でリスク回避の動きが進んだ。 今後、日米で本格化する企業決算が注目される。」と話した。 (大和田武士、asahi = 10-11-18)

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NY 急落、日本やアジアに波及 世界同時株安の様相

11 日の東京株式市場では、前日の米国株価の大幅安を受け、日経平均株価が急落している。 下げ幅は一時 1,000 円を超えて 2 万 2,500 円を割り込み、約 1 カ月ぶりの安値水準。 外国為替市場では円が急伸し、一時約 3 週間ぶりに 1 ドル = 111 円台をつけた。 中国・上海などアジア市場も軒並み株安となった。 米長期金利の上昇や米中貿易摩擦が景気を冷やすとの警戒感が急速に広がり、世界同時株安の様相だ。

前日の米株安を受け、11 日の東京市場で日経平均は 2 営業日ぶりに下落し、取引開始直後から全面安となった。 前日終値より 450 円超安で取引を始め、午後の取引で下げ幅は一時 1,000 円を超え、取引時間中としては約 1 カ月ぶりの安値となった。 3 月下旬の急落時以来の下げ幅だ。 日経平均は 10 月初めには 2 万 4,200 円台をつけ、バブル崩壊後の最高値圏となったが、先行き不安から 9 日までの 4 営業日で 800 円超値下がりし、米国株急落で一段安となった。

東京外国為替市場では、リスクを避けるため「安全資産」の円が買われ、円高ドル安となった。 午後 1 時時点は、前日午後 5 時時点より 88 銭円高ドル安の 1 ドル = 112円 19 - 20 銭。

前日 10 日の米ニューヨーク株式市場では、大企業でつくるダウ工業株平均が大幅続落し、構成銘柄がすべて下落。 終値は前日比 831.83 ドル (3.15%) 安い 2 万 5,598.74 ドル。 下落幅は 2 月の急落以来の大きさで、史上 3 番目だった。 ハイテク株の比率が高いナスダック市場の総合指数も急落し、前日比 315.97 ポイント (4.08%) 低い 7,422.05 で終えた。

日米市場の株価急落を招いたのは、米国での長期金利の上昇だ。 9 日公表の 9 月の米卸売物価指数は前月比 0.2% 増となり、インフレが進むとの見方から、長期金利の指標となる 10 年物米国債の利回りは一時、年 3.24% 前後まで上昇。 米国では景気拡大で株高が続いていたが、金利上昇が企業収益を圧迫し、景気にブレーキをかけるとの見方が一気に広がった。 「恐怖指数」とも呼ばれる米国株の変動率指数 (VIX) は、先行き不安が高い状態とされる「20」を半年ぶりに超えた。

市場では「株高が続く一方で、米中貿易摩擦などの不安感がたまっていた。 米株安をきっかけに転がるようにリスク回避の動きが広がっている(大手信託銀行)」との声が出ている。(大和田武士、ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 10-11-18)


スルガ銀、6 カ月の一部業務停止に 国内銀行で 5 年ぶり

金融庁は 5 日、シェアハウス融資で多数の不正があった地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)に対し、不動産投資向けの新規融資を 6 カ月間禁じる一部業務停止命令を出した。 スルガ銀ではすでに判明しているシェアハウス融資などでの資料改ざんといった不正に加え、創業家に関係する「ファミリー企業」への不透明な融資、さらに反社会的勢力への融資といった問題があると判断。 企業統治(ガバナンス)上の重大な欠陥があったとした。

業務の停止期間は今月 12 日から 2019 年 4 月 12 日までの 6 カ月間。 国内銀行に対する一部業務停止命令は 2013 年、暴力団組員への融資を放置していたみずほ銀行に出して以来の異例の措置だ。 一部業務停止の対象業務は投資用不動産向けの新規融資に限定し、預金の引き受けや払い戻しなどの窓口業務や既存顧客に対するサービスは継続を認める。

シェアハウスなど不動産投資向け融資では、多額の融資実績を上げるため、顧客の年収や資産状況について改ざんした書類を作成していた。 執行役員を含む多数の行員が不正に関与し、審査部門についても、「実質的に形骸化している」と認定した。 (山口博敬、asahi = 10-5-18)

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「地銀の収益 10 年で半減」 緩和修正、焼け石に水

日銀が 7 月末に金融緩和策を一部修正した狙いの一つは、銀行で広がる低金利の副作用の軽減にあった。 では実際、効果はどれぐらい出るのだろうか。 みずほ総合研究所がこのほど試算した予測によると、地銀の収益は 10 年で半減するとの結果が出た。 修正の恩恵は、半減までの「猶予期間」が 2 年延びるだけだという。現状では焼け石に水といわざるを得ない状況だ。

日銀は 7 月末、これまで 0.1% で抑え込んできた長期金利の振れの上限を 0.2% まで拡大する意向を表明した。 みずほ総研は長期金利が 0.0% で横ばいの場合と、0.2% まで上昇した場合の 2 つのケースを想定。 銀行の本業のもうけを示す実質業務純益が中期的にどう変化していくかを試算した。 その結果は銀行にとって朗報とはほど遠いものだ。 2015 年度の純益を 100 とすると、地銀の利益は長期金利が 0.0% なら 23 年度に半減する。 一方、長期金利が 0.2% の場合はこれが 25 年度とやや延びるが、今からわずか 7 年後に収益が半減してしまう危機的な状況に変わりはない。

長期金利が上昇すれば保有国債の利回りなどは多少改善する。 それでも収益の右肩下がりが続くのは、過去の高い金利の貸し出しが返済され、低い金利の貸し出しに置き換わっていくからだ。 競争環境の厳しさも変わらず、全体として収益の低下傾向が続く。 みずほ総研の野口雄裕氏は「今回の緩和修正が銀行の収益に与える影響は誤差の範囲にとどまる」と話す。

みずほ総研は都銀も試算した。 都銀も 30 年度には収益が半減するとの結果が出たが、地銀の方がより状況は厳しい。 理由の一つは、地銀の方がより採算の低い融資を増やしていることだ。 日銀によると、地銀の中小企業向け融資全体に占める低採算貸し出しの割合は 25% (16 年時点)と 10 年に比べ 8 ポイントも上がった。 低い金利でしか貸し出せなくても、当面の収入確保のために実行せざるをえないからだ。

低採算融資は焦げ付きのリスクも大きい。 余裕のない企業ほど景気後退期に返済が滞り、倒産のケースも増える。 「緩和的な金融環境は銀行が過大なリスクを取ることを助長している。」 BNP パリバ証券の河野龍太郎氏はこう指摘する。 日銀が緩和修正に動いた 7 月末、一時的に金利の動きが大きくなり、債券市場の取引も活発になった。 しかし、それもつかの間、足元では再び動きが停滞している。 「市場はすっかり元に戻ってしまった。」 ある銀行の債券運用の担当者はため息をつく。

市場が再び活気づく兆しは見られない。 地銀では有価証券運用への収益依存度が 37% (17 年度時点)と 5 年前に比べ 10 ポイント高まった。 海外融資を伸ばしている大手行に比べ、営業地盤が限られている地銀はこの依存度も大きい。 「収益が下がり続ける基調を回避するためには、やはり貸出金利の低下が止まる状況になることが必要(みずほ総研の野口氏)」だ。

足元では国内外の景気が好調だがエコノミストの間では、国内外の好景気が続くのは「あと 1 年くらい(富士通総研の早川英男氏)」との見方が多い。 日銀は経済に大きなショックが起きた場合、「自己資本比率で安定性の目安となる 8% を下回る地銀が 4 分の 1 に達する」と予測する。 ある日銀幹部は「単独での存続が危うくなる地銀も出てくる」とみる。

長崎県のふくおかフィナンシャルグループ (FG) と十八銀行が経営統合を決めた背景には、単独では低金利を乗り切る経営モデルを描き切れない状況がある。 じり貧から脱却して活路を見いだすため、今後も地銀の再編の流れは避けられそうにない。 (浜美佐、nikkei = 9-17-18)


日米首脳会談 首相「これならいける」 車関税回避、交渉の舞台裏

トランプ米大統領の対日貿易赤字削減要求に端を発した日米の通商問題は、26 日(日本時間 27 日未明)のニューヨークでの首脳会談でひとまず決着した。 農産物などの関税を含む 2 国間の「物品貿易協定 (TAG)」の交渉入りで譲歩したが、自動車の追加関税は当面、回避に成功し防衛ラインをひとまず堅守した。

安倍晋三首相「(米通商拡大法) 232 条を外してくれてありがとう。」
トランプ氏「シンゾーとの友情だ。」

首脳会談を終えた首相が近づくとトランプ氏は「友情」を口にした。 日米貿易協議 (FFR) で茂木敏充経済財政・再生相は全権を委任されていたが、米側は最終的な決定権がライトハイザー米通商代表部 (USTR) 代表になく、トランプ氏が握っていた。 首相周辺には「事務レベルでいくら詰めてもトランプ氏にひっくり返される」との懸念があった。 日本側は夕食会が勝負の場になるとみた。

当初、トランプタワー内のレストランを予定していた会場はトランプ氏の発案でタワー内の大統領自宅に変更。 首相が大統領選直後に当選の祝福に駆けつけた 2 人にとっての特別な場所だった。 「シンゾー、聞いてくれよ。」 トランプ氏は北朝鮮情勢の擦り合わせに時間の大半を割き、通商問題の話題は中国に集中した。 トランプ氏から日米貿易を問題視する発言はほとんどなく、首相が事前に用意した貿易関連の「発言メモ」はお蔵入りとなった。

「これなら、いける。」 首相は夕食会後、朝を迎えたばかりの東京に電話で手応えを伝えた。 「トランプ氏はひっくり返すことはしないだろう。」 官邸内に安堵の声が広がった。 茂木氏はライトハイザー氏との直接交渉を控え、欧州連合 (EU) が 7 月下旬に米国と結んだ合意の文言を入念に研究していた。 共同声明案を自らつくり、25 日にライトハイザー氏に提案した。 共同声明は、自動車関税の引き上げ回避を念頭に「精神に反する行動はとらない」と明記し、茂木氏の戦略が奏功した。

政府はトランプ氏の再選がかかる 2020 年の米大統領選までの政治日程を見越した戦略を立てていた。 トランプ政権の発足後、環太平洋経済連携協定 (TPP) などの妥結を急いだ。 協定が来年発効すれば、日本に輸入する農産品の関税は大幅に下がる。 多少譲歩してでも今回の交渉で成果を出さなければ、米国の農業団体の不満がトランプ氏に向かう構図をつくった。

とはいえ 2 国間交渉のテーブルについたことは今後の火種となる。 ライトハイザー氏は水面下の交渉で、自動車の関税交渉に強硬な姿勢を崩さなかった。 首相同行筋によると、ライトハイザー氏は自動車関連を新協議の対象外として、米国が一方的に追加関税を発動する余地を残そうとした。 日本側は反発して仕切り直しとなったが、米側はさらに追加関税を示唆する文言を提案。 日本側は危機感を強めた。 自動車業界からは「25% の関税なら経営危機になる」との声が寄せられていた。

最終的には「米国は自国の自動車産業の製造および雇用の増加を目指す」との文言で落ち着いた。 それでも政府関係者は「米国による関税の発動余地を残したとも読めてしまう」と懸念する。 いまは中国との貿易戦争や北米自由貿易協定 (NAFTA) に手を取られ、米国にとって通商問題での日本の優先順位は比較的低い。 80 年代は日本が自動車を中心に米国から激しい攻勢にさらされた。 今回は欧州やカナダ、中国との交渉に米側が忙殺されたことも利点となった。 80 年代とは異なり、日本は中国に国内総生産 (GDP) で抜かれ、今では世界第 3 位となった。 (nikkei = 9-28-18)


基準地価、27 年ぶり全国平均上昇 「札仙広福」高水準

国土交通省は 18 日、7 月 1 日時点の基準地価を発表し、住宅地、商業地、工業地などを合わせた全用途の全国平均が前年比 0.1% 上昇した。 0.3% の下落だった前年から一転、1991 年以来 27 年ぶりの上昇となった。 訪日客でにぎわう観光地や再開発が進む都市部で上昇が続き、地方の主要都市でも高い伸びを示した。

商業地は全国平均で 1.1% 上がり、前年に続き上昇した。 上昇した都道府県は 19 となり、前年の 17 を上回った。 上昇率トップ 10 のうち、半数の 5 カ所は京都市が占めた。 訪日外国人客の増加でホテルや店舗の開業が相次いでいるためだ。 地方でも「札仙広福」と呼ばれる札幌、仙台、広島、福岡の主要 4 市の商業地は 9.2% 上昇した。 日本銀行の大規模金融緩和による超低金利で、不動産の投資資金が地方の都市にも流れ込む動きが続いている。

全国の商業地の最高価格は東京・銀座 2 丁目の明治屋銀座ビルで、1 平方メートルあたり 4,190 万円。 7.7% 上昇し、2 年連続でバブル期(1990 年、91 年)の 3,800 万円を超えて最高額を更新した。 一方、主要 4 市をのぞく地方圏の商業地は 0.6% 下落した。 下げ幅は前年 (1.1%) より縮小したものの、交通の便が悪く、人口減に歯止めがかからない地域の地価は伸び悩む。

住宅地は全国平均で 0.3% 下がり、27 年連続で下落したが、下げ幅は前年(0.6% 下落)よりも縮小。 上昇した都府県も 11 と、前年の 8 都府県より増えた。 上昇率トップ 10 のうち、上位 3 地点は海外のスキー客に人気の高いニセコ地区を抱える北海道倶知安(くっちゃん)町が占めた。 (北見英城、田中美保、asahi = 9-18-18)

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路線価 3 年連続上昇 18 年 0.7%、都市部の取引活発

国税庁は 2 日、相続税や贈与税の算定基準となる 2018 年分の路線価(1 月 1 日現在)を発表した。 全国約 32 万 4 千地点の標準宅地は 17 年比で 0.7% のプラスとなり、3 年連続で上昇した。 33 年連続で日本一となった東京都中央区銀座 5 の「鳩居堂」前は 1 平方メートルあたり 4,432 万円で、17 年に続き過去最高を更新した。

都道府県別の路線価は東京、大阪、愛知など 18 都道府県で上昇。 17 年は 13 都道府県だった。 不動産売買が活発化し、都市部を中心に上昇傾向が広がっている。 首都圏では東京都(上昇率 4.0%)、千葉県 (0.7%)、神奈川県 (0.6%)、埼玉県 (0.7%) がいずれも 5 年連続で上昇。 愛知県 (1.5%) は 6 年連続、大阪府 (1.4%) も 5 年連続で前年を上回った。 最も上昇率が高かったのは沖縄県の 5.0% (17 年は 3.2%)で、訪日客の増加によるホテル需要の高まりやリゾート開発が影響しているとみられる。

東日本大震災の被災地では宮城県が 3.7% 上昇、福島県が 1.3% 上昇。16 年に熊本地震が起きた熊本県は 17 年に 0.5% 下落したが、18 年は 0.7% の上昇に転じた。 一方、秋田県は 2.3% マイナス、愛媛県は 1.6% マイナスとなるなど、地方では下落が止まらない地域が多い。 (島根県は -1.4%)

不動産専門のシンクタンク、都市未来総合研究所によると、17 年度の上場企業などによる不動産売買額(公表ベース)は約 5 兆円と 16 年度比で約 2 割増加し、過去 3 番目の高水準だった。 大型オフィスビルや賃貸住宅の売買が活発で、中国系の不動産ファンドなど外資系による購入も目立ったという。 同研究所の平山重雄常務執行役員は「都心部の不動産価格の上昇は実需に基づいたものでバブルではないといえる。 人口減少が続く地方都市との二極化はより鮮明になっていくだろう。」と話している。 (nikkei = 7-2-18)

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公示地価、地方商業地 26 年ぶりプラス 回復地点が拡大

国土交通省は 27 日、2018 年 1 月 1 日時点の公示地価を発表した。 地方圏の商業地が前年から 0.5% 上昇し、26 年ぶりにプラスに転じた。 都心を中心に進んできた地価の回復が、地方の再開発地域や観光地などに広がりつつある。 商業地は全国平均では 1.9% 上昇で、3 年連続のプラスとなった。 上昇は 21 都道府県と、前年の 18 都道府県を上回った。 全国の商業地の最高価格は、東京・銀座 4 丁目の山野楽器銀座本店の 5,550 万円。 12 年連続の 1 位で、上昇率は 9.9% だった。

近年の地価回復は、東京・大阪・名古屋の三大都市圏と、札幌・仙台・広島・福岡の「札仙広福」を軸に進んできた。 今回は新潟市や山形市など、訪日客の増加でホテル需要や商業施設が好調だったり、再開発が進んだりしている地方都市がマイナスを脱するなど、回復地点が広がった。 地方圏では工業地も 0.2% 上昇し、こちらも 26 年ぶりにプラスになった。 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が全線開通した茨城県内や新名神高速道路が一部開通した京都府内などで物流施設が増え、地価を押し上げた。

一方、住宅地も全国平均が 0.3% 上昇し、横ばいだった前年から 10 年ぶりに上昇に転じた。 上昇率トップ 10 のうち、上位三つを北海道・ニセコが、残る七つのうち六つを沖縄県内が占めた。 ニセコは海外からスキー客が訪れ、倶知安町ではリゾート施設の従業員宿舎や別荘向けの土地の需要が高まった。 沖縄はモノレールの延伸などで利便性が向上した地点などで上昇した。 (岡戸佑樹、石山英明、asahi = 3-27-18)


アベノミクス成果大げさ? 計算方法変更 GDP 急伸

5 年 8 カ月余りの「安倍政治」で、常に論争の的になってきたのが経済政策のアベノミクスだ。 本格論戦が始まった自民党総裁選でも、安倍晋三首相は国内総生産 (GDP) の伸びなどを取り上げ、政策の妥当性を訴えている。 もっとも経済指標が改善したのは、データのとり方を変えた影響が大きく、十分な説明をせず、成果を「誇張」しているとの指摘もある。

首相は 10 日、自民党総裁選候補者による共同記者会見で、第 2 次安倍政権発足時と現在を比較した名目 GDP について「12.2%、60 兆円伸びている。 600 兆円を実現したい。」と強調。 三選を果たした上で向こう 3 年の任期中、GDP を過去最高の 600 兆円に乗せることへの意欲を示した。

無投票で党総裁に再選された 2015 年 9 月、首相は 20 年ごろの 600 兆円到達を目標に掲げた。 物価変動を反映し、景気実感に近いとされる名目 GDP は当時、500 兆円程度。 目標の達成には 100 兆円の上積みが必要だったが、今月 10 日に公表された 18 年 4 - 6 月期に年率で 550 兆円を突破し「600 兆円」が視野に入った。

ただ急成長には「からくり」がある。 政府は 16 年 12 月、GDP の計算方法を変更したのだ。 「国際基準に合わせる」との理由で、それまで採用していなかった「研究開発投資」の項目を追加。 このほか建設投資の金額を推計するために使っていたデータを入れ替えるなどの見直しを行った。 この結果、15 年度の名目 GDP は 32 兆円近く増えて 532 兆 2,000 億円に跳ね上がり、一気に 600 兆円に近づいた。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「明らかに統計の数字が良くなる特殊な要因がある場合、政府はできる限り丁寧に説明する必要がある」と指摘する。 アベノミクスを分析した著書がある明石順平弁護士は「(建設投資の推計手法の変更など)国際基準とは関係ない部分の上げ幅が、安倍政権の時期だけ突出して大きく、都合よくデータを選んでいることが疑われる」との見方を示す。

安倍政権になって経済規模が拡大したのは確かだ。 一方で物価も上がっているため、物価変動の影響を取り除いた実質 GDP の伸びは 8%、40 兆円にとどまり、名目 GDP の伸びの 60 兆円より 20 兆円少ない。 通常は実質の数字が重視されるが、見かけ上、数値が大きい名目 GDP を引用し成果をアピールしているようにみえる。 (渥美龍太、東京新聞 = 9-12-18)


台風 21 号、関西経済に大打撃 関空被害、影響長期化を懸念

近畿地方を中心に大きな被害をもたらした台風 21 号。 関西の空の玄関口、関西国際空港も滑走路や空港施設が浸水し、タンカーが連絡橋に衝突する前代未聞の事態に見舞われた。 復旧のメドは立っておらず、航空便への影響が長期化すれば、好調で推移する関西への外国人客の減少につながる恐れがある。

関空を運営する関西エアポートによると、平成 29 年度の総旅客数は 2,880 万人と過去最高を更新。 中国や韓国、東南アジア圏を中心とした訪日客が牽引。 30 年度は開港以来初めて 3 千万人を突破すると期待されていた。 被害の全貌は明らかになっておらず、関西エアの関係者は「こんなことは初めて。 信じられない。」と呆然。 関空を拠点とし、訪日客の利用も多い格安航空会社 (LCC) のピーチ・アビエーションの担当者は「被害の正確な状況が分からないため、今後の運航への影響も見通せない」と話した。

「関空がダメになると関西の訪日客はほぼダメになる。 今回の状況が続けば大打撃」と懸念するのは訪日客向け旅行会社、フリープラスの小西宏明取締役。 さらに不安視するのは、冠水した滑走路の映像などが全世界に流れることで起こる可能性のある関空の風評被害だ。 小西氏は「大阪北部地震の影響からようやく元通りになるところだった。 イメージダウンがとても怖い。」と指摘した。

アジア太平洋研究所の稲田義久数量経済分析センター長は「現在の関西経済を牽引しているのは、対アジアを中心にした輸出とともに訪日外国人客の消費」とした上で「被害の長期化は地元経済への不安要因。 運営する関西エアにとっても大きな試練だが、最近は SNS (会員制交流サイト)などで訪日客への情報発信力もついてきており、そういった経験が事態の早期の終息につなげられれば」と話した。 (sankei = 9-4-18)

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関西経済、20 年度に 0.8% 成長予測 全国平均上回る

シンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)は 28 日、関西地域の経済成長率の見通しを発表した。 2020 年度の実質成長率は 0.8% と、全国平均を 0.2 ポイント上回った。 19 年 10 月に予定される消費増税で個人消費が落ち込むものの、電子部品の輸出好調が続く。 ただ、米中の貿易摩擦が過熱すれば、中国への輸出が多い関西の成長率を下げる可能性がある。

18 年度の成長率は 1.8% と、前回予想から 0.5 ポイント上方修正した。 賃金の伸びが全国平均を上回り、消費増加が見込める。 企業の設備投資が増えているほか、ホテル建設も相次いでいる。 製造業では人工知能 (AI) やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を導入して省力化を進める動きが広がる。 19 年度の成長率も 1.0% と 0.1 ポイント上方修正した。 (nikkei = 8-28-18)


4 - 6 月期 GDP、年率 1.9% 増 2 四半期ぶりプラス

内閣府が 10 日発表した 2018 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価の変動を除いた実質で前期より 0.5% (季節調整値)増加した。 この状態が 1 年続いたと換算した年率では 1.9% 増。 前 1 -3 月期に野菜価格の高騰などでマイナスに落ち込んだ個人消費が持ち直し、企業の設備投資も堅調だったことで 2 四半期ぶりにプラス成長に戻った。 (asahi = 8-10-18)

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実質 GDP、前期比 0.2% 減 9 四半期ぶりのマイナス

内閣府が 16 日発表した 2018 年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価変動の影響を除いた実質で前期比 0.2% 減(季節調整値)だった。 この状態が 1 年続いた場合の年率換算では 0.6% 減。 15 年 10 - 12 月期以来、9 四半期ぶりのマイナス成長になった。 しかし、冬場の寒波で個人消費が鈍るなど、季節要因が大きく、エコノミストの多くは「落ち込みは一時的」との見方を示している。

GDP の半分以上を占める個人消費はマイナス 0.0% とわずかに減速した。 寒波などの影響で野菜価格が高騰するなどした結果、消費者心理が冷え込んだためだ。 ガソリン価格なども上昇し、消費者の節約志向が高まったという。 住宅投資も 3 四半期連続でマイナスになった。 これまで牽引役だったアパートローンに対し、金融機関の融資態度が抑制的になったことから、貸家の着工が減少。 分譲住宅も伸び悩んでいる。 ただ、民間シンクタンクなどの多くは「直近の経済統計は回復してきており、1 - 3 月期のマイナスは一時的な調整」と見て、4 - 6 月期にはプラス成長に戻ると予測している。 (森田岳穂、asahi = 5-16-18)


債券寄り付き 長期金利が 0.145% に上昇 1 年半ぶり 先物続落

2 日朝方の債券市場で長期金利が上昇して始まった。 指標となる新発 10 年物国債利回りは 0.145% と 1 年半ぶりの高水準になった。 日銀の金利許容幅の上限を試す動きが続いている。 (nikkei = 8-2-18)

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市場が見抜いた 黒田日銀の金融政策修正は地銀の '救済'

今週 31 日に日銀の黒田東彦総裁が打ち出した金融緩和策の一部修正は、地銀に対する '罪滅ぼし' じゃないのか - -。 市場関係者から、そんな囁きが聞こえ始めた。 「8 月 1 日、地銀の株価が軒並み急騰したのです。 黒田総裁が長期金利の変動をある程度容認したことで、マイナス金利に苦しむ地銀の経営が好転するとの読みです。(市場関係者)」

十八銀行は前日比 30 円高 (+10.0%) の 331 円、京都銀行は 440 円高 (+8.1%) の 5,850 円、ふくおか FG は 49 円高 (+8.0%) の 660 円だった。 そのほか、北陸銀行と北海道銀行を傘下に置く、ほくほく FG の上昇率は 7.0%、筑波銀行は 6.0%、千葉銀行は 5.9% …。 日経平均が 0.9% アップに過ぎなかっただけに、地銀株は異常な上昇だ。

「黒田総裁は ETF (上場投資信託)の購入配分を見直すとも話しています。 これまでは日経平均採用銘柄(225 銘柄)に重点を置いて購入してきましたが、今後は TOPIX (東証 1 部全銘柄)連動型の購入割合を増やす方針といいます。 こうなると、日経平均に採用されていない東証 1 部銘柄が上昇しやすくなります。 なかでも金利上昇の恩恵を受ける地銀株は狙い目でしょう。(株式評論家の倉多慎之助氏)」

黒田総裁がマイナス金利の導入を決めたのは 2016 年 1 月 29 日。 その影響で地銀の経営は悪化の一途で、18 年 3 月期は地銀 80 社(持ち株会社含む)のうち、6 割強の 49 社が赤字もしくは減益を余儀なくされた。 19 年 3 月期は 52 社が減益を見込んでいる。

「現状では、マイナス金利は銀行経営を圧迫しただけです。 この先、どこかの地銀が経営破綻でもしたら、黒田日銀の責任を問う声が出てきます。 そうなる前に、金利上昇を容認し、ETF の購入配分を見直した。 今回の金融政策の修正は地銀救済の意味合いも含んでいると思います。(倉多慎之助氏)」 地銀株の上昇は当分続くかもしれない。 (日刊ゲンダイ = 8-2-18)

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日銀が政策修正、長期金利の変動容認 : 識者はこうみる

[東京] 日銀は 30 - 31 日の金融政策決定会合で、強力な金融緩和を継続するための枠組み強化を決定した。 長期金利の誘導目標を「ゼロ % 程度」とする方針は維持した一方、「金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする」と明記。 上場投資信託 (ETF) では、TOPIX 連動型の買い入れ額を増やすことも決めた。 日銀の決定と、黒田東彦総裁の会見についての市場関係者のコメントは以下の通り。

<メリルリンチ日本証券・チーフ金利ストラテジスト 大崎秀一氏>

総裁は会見の冒頭で、長期金利の変動幅について、プラスマイナス 0.1% の倍程度を想定していると述べ、0.2% 程度まで上昇を容認する姿勢を示した。 変動幅は市場の想定内だろう。 日銀は長期金利の変動幅をはっきりと明示することで、円債市場にくすぶっていた日銀調節への不透明感を払しょくさせたかったのだろう。

長期金利変動幅の拡大で、今後は 10 年 0.1% 超えをチャレンジする場面が出てくるだろう。 しかし、日銀が 30 日に通告した指し値オペで落札額が約 1.6 兆円に膨らんだことで、10 年債の品薄感が強まっている。 また、日銀が 10 年債の月間発行額を超える国債を買い入れる構図は変わらない。 買入額を減らさないと、金利は下がってくるだろう。 8 月 2 日の 10 年債入札は、市場参加者の金利観を探る上で重要なイベントだ。

日銀は政策金利のフォワードガイダンスを導入した。 少なくとも、19 年 10 月に予定される消費税引き上げの影響を見極めるまで、緩和枠組みのマイナーチェンジを繰り返しながらも、低金利が継続するのではないか。

<三菱 UGJ 銀行 チーフアナリスト 内田稔氏>

長期金利の誘導目標引き上げなどを想定していた向きは、ドル/円を売り仕掛けていたようだ。 日銀の政策自体は据え置きだったので、発表後はいったん持ち高調整のドル買い戻しが先行した。 ただ、長期金利の変動幅に余裕を持たせ、マイナス金利の適用範囲も縮小するとなれば、場合によっては短期ゾーンを中心に金利が上昇する可能性もある。 ETF 購入も「上下に変動」としているが、減額の可能性もあるだろう。 少なくとも円安期待を高める内容ではない。

ドラスティックに政策を変化させるわけではないだろうが、「日銀の緩和長期化で円安」という見方は後退していくことになるだろう。 明日以降、日銀が「指し値オペ」の水準をどこまで上げるのか、ETF 買い入れ額が減少するかなど、どの程度の副作用軽減策に取り組むかを見ていくことになる。 現時点でどこまで円高が進むかは読みにくいが、少なくとも円安材料にはなりにくい。

<みずほ証券 チーフ債券ストラテジスト 丹治倫敦氏>

日銀金融政策決定会合の結果を受けて、イールドカーブがブル・フラット化している。 8 月の長期国債買い入れの運営方針で 1 回当たりのオファー額のレンジが据え置かれたため、オファー減額で金利上昇を誘導していかないと受け取ったようだ。 ただ、「長期金利誘導目標の対応は柔軟な運営を行う」をどのように解釈するか大切だ。 これを基にすると、今後のオペ運営がどのようになっていくか決め打ちはできない。 指し値オペの水準が今までと変わる可能性があることや、オファー減額で金利を上の方向に誘導するかもしれない。

<大和住銀投信投資顧問 経済調査部部長 門司総一郎氏>

日銀会合の結果は大方の予想通りであり、サプライズはない。 引き締めの可能性を読んでいた投資家のポジションが巻き戻されて、株高・円安の初期反応となっているが、持続性はないだろう。 ETF (上場投信)買い入れの柔軟化は金融政策というよりファインチューニングであり、特に気にする必要はない。 ただ、出口に向けた議論が進んでいる印象もうかがえる。 9 月会合では出口を意識した方針を打ち出してくる可能性がある。 マイナス金利のような弊害の大きい政策の明確な変更が望まれる。 (Reuters = 7-31-18)


日本と EU、経済連携協定に署名 巨大自由貿易経済圏誕生へ

日本と欧州連合 (EU) は 17 日、首相官邸で経済連携協定 (EPA) と政治的な協力関係を強化する戦略的パートナーシップ協定 (SPA) の署名式を開き、安倍晋三首相と EU のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長が出席した。 EPA は日本と EU の双方で批准手続きが順調に進めば来年 3 月までに発効する見通しだ。 世界の国内総生産 (GDP) の約 3 割、世界の貿易総額の約 4 割をカバーする巨大自由貿易経済圏が誕生する。

トランプ米政権が鉄鋼・アルミニウムの輸入制限など保護主義的な通商政策を打ち出す中、日本と EU は EPA の早期発効で自由貿易の重要性をアピールする。 日欧 EPA は 4 年余りの交渉を経て、昨年 12 月に妥結した。 自動車や繊維など工業製品は互いに関税を段階的、または即時撤廃してゼロとする。 農林水産物も大半を撤廃対象とするが、日本に入るコメについては関税削減や撤廃の対象から除外した。

双方の進出企業が現地で得た個人データを域外へ柔軟に持ち出すことができる枠組みを今秋にも実現することで合意した。 17 日に採択した日欧の共同声明に「日 EU ハイレベル産業・貿易・経済対話」を設立し、年末までに初会合を開催することを盛り込んだ。 日欧 SPA は今年 2 月に合意した。 日欧の協力関係を経済分野にとどまらず、一層高い水準に引き上げるため、安全保障や気候変動など幅広い分野での連携を目指す。

一方、署名式に先立ち行われた首脳協議では、北朝鮮情勢についても意見交換した。 安倍首相は日本人拉致問題の解決のため日朝交渉を実現する意向を伝え、EU 側は協力を約束した。 北朝鮮が全ての大量破壊兵器の CVID (完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄)を実現するまで制裁を続ける必要性で一致した。 (sankei = 7-17-18)


中小企業、大廃業時代へ 年 5 万社減、地域崩壊の危機も

みなさん、ご存じですか? 日本にある企業の 99.7% が中小企業で、働き手の 7 割が勤めていることを。 「社会の主役は中小企業だ」と宣言する文書が閣議決定されていることを。 そんな主役たちが姿を消し続ける - - それも「平成」の断面図です。

国会決議への機運 しぼむ

6 月 5 日、東京・永田町に、中小企業の経営者 200 人近くが集まった。 全都道府県にある「中小企業家同友会」の面々だ。 理想の経営者になって会社を強くしようと勉強する。 自助努力だけではどうしようもない経営環境をよくする運動をしている。 政治的な色は、ない。 みんなの悲願は、民主党政権下の 8 年前に閣議決定された、ある宣言を国会の決議にすること。 国会議員たちの決意を聞こうと集まったのだった。

「中小企業憲章」と名づけられた宣言は、こんな一文で始まる。 「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。」 こうも記されている。 「政府が中核となり、国の総力を挙げて … どんな問題も中小企業の立場で考えていく。」 大企業偏重の社会を変えたい。 中小企業庁があるからいいでしょ、ではなく、政策を全省庁で横断的に考えてもらう仕組みにしたい。 そのためには、党派を超えて国会全体で意思表示することが必要だ。 集まった人たちは、そう思っていた。

けれど …。 与野党の国会議員らはあいさつに立つものの、国会決議への意欲は、ほぼ語られなかった。 「今は自民・公明政権さ、民主党時代のことは関係ないね。」 福岡から来た中村高明さん (77) にはそうとしか聞こえなかった。

〈命をかけて経営しとる人たちの思いを踏みにじるんか? あきらめんぞ!〉

中村さんは、福岡は直方市生まれ、慶応大卒。 西日本鉄道に入るも、ベアリング屋を営む父が亡くなったので故郷に戻り、産業機械の「紀之国屋」として年商 25 億円にまで成長させた。 福岡県中小企業家同友会に入ったのは 1987 年。 2 年後、平成になり、そして、バブル崩壊。 多くの中小企業が倒産するのを目の当たりにした。

あれは 1998 年、山一証券などの破綻による金融危機まっただ中のころのことだった。 経営者仲間にこう打ち明けられた。 「銀行が、融資している 5 千万円をいったん返したら 1 億円貸すと言うとる。 会社を大きくできるぞー。」 その経営者は、銀行に 5 千万円を返したが約束の融資はされず、会社は倒産した。 うれしそうに夢を語っていた彼は、中村さんの前から姿を消した。 中村さんは怒った。

〈銀行のだまし討ちやないか!〉

銀行が貸したカネを強引に回収する、いわゆる「貸しはがし」だ。 貸してくれない「貸し渋り」もあって、多くの中小企業が社会から消えていった。 中村さんが音頭をとり、全国の同友会メンバーらが署名活動をした。 中小企業や地域への優しさで銀行を格付けする、そんな法律をつくりませんか、と。 2003 年までの 3 年間で集まった 101 万人分の署名は、国会に提出された。 さらに、1,009 の地方議会が法律制定を求める意見書を国に出した。

法律はできなかったが、成果はあった。 たとえば、金融機関が中小企業に融資する際にその企業と直接関係ない第三者を保証人にすることは原則禁止、が実現した。 (編集委員・中島隆、asahi = 7-17-18)