ドイツで潰えたグリーン電力の夢

<脱化石燃料・脱原発の野心的な目標をぶち上げたドイツだが、送電網の再整備が立ち遅れロシアの天然ガス頼みに>

今年 8 月の猛暑の日、ドイツ北部のバルト海沖に浮かぶリューゲン島に数百人のツアー客が集まった。 お目当てはビーチではない。アルコナ洋上風力発電所が開催した「魅惑の洋上風力発電」展だ。 港には巨大な白いグラスファイバーのブレードが並んでいた。 この長さ約 75 メートルのブレードは、約 30 キロ沖合にそびえる風力発電用タワー 60 基の上に設置されると、ガイドが説明した。 2019 年初めまでに発電量は 385 メガワットに達し、40 万世帯分の電力を供給できるようになるという。

「わが社がここでやろうとしていることを一般の人たちに知らせて、『おお、すごい!』と言ってもらいたい」と、アルコナの幹部シルケ・ステーンは話す。 もっとも、ツアー客が港の別の場所に目をやれば、同じくらい壮大な人工物に気付いたはずだ。 こちらは見学予定に入っていないが、港の一画にはコンクリートのコーティングを施した巨大な鉄鋼のパイプが積み重ねて並べてあった。

これらのパイプは、ロシアとドイツを結ぶ全長約 1,220 キロの天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム 2」の一部として海底に敷設される。 予定どおり来年に工事が完了すれば、既に稼働中のノルド・ストリームと合わせて現在の 2 倍のガスがロシアから輸送される。 皮肉にも積み出し港を共有するこの 2 つのプロジェクトは、再生可能エネルギーに懸ける夢と、ロシアのガス頼みという苦い現実の板挟みになったドイツの苦悩を物語っている。

「南北問題」がネックに

ドイツは 10 年、今世紀半ばまでに電力の 80% を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げた。 さらに翌年には日本の福島第一原子力発電所の事故を受け、22 年までに「脱原発」を達成すると発表した。 ドイツはいち早く固定価格買い取り制度を導入(17 年に入札制度に移行)するなど、個人や企業による太陽光と風力発電事業をテコ入れしてきた。 おかげで 1990 年には電力比率の 3.6% にすぎなかった再生可能エネルギー(風力、太陽、水力、バイオガス)が、発電量の 3 割超を占めるようになった。

しかし高邁なビジョンは、厳しい現実に突き当たった。 世界屈指の工業国ドイツが脱化石燃料・脱原発に舵を切るのは容易ではなく、当初の予想以上にコストがかかり、政治的にも困難を極めた。 結局、政府はエネルギー政策を見直して化石燃料への依存度を高め、気候変動対策で世界をリードする役目もある程度返上せざるを得なくなった。

問題は送電網にある。 太陽光・風力発電を主役にすると、従来よりも複雑でコストも高い送電網が必要になる。 ドイツが目標を達成するには、「送電網の全面的な再整備が必要だ」と、再生可能エネルギー推進政策に詳しいアナリストのアルネ・ユングヨハンは言う。 風力発電ブームがもたらしたのは、供給と需要のミスマッチという予期しない問題だった。 ドイツでは風力発電所は常に強い風が吹く北部に集中しているが、大規模な工場の多くは南部にある(南部に集中する原発は次々と運転を停止している)。

北部の風力発電所から南部の工業地帯に電力を送るのは容易ではない。 風が強い日には、風力発電所は大量の発電が可能になるが、電力はためておくことができない。 供給過剰になれば送電線に過大な負荷がかかるため、電力系統の運用者は需給バランスを維持しようと風力発電所に送電線への接続を切断するよう要請する。 こうなるとツアー客が眺めた巨大なブレードも無用の長物と化す。

一方で、電力の安定供給のためには莫大なコストをかけてバックアップ電源を稼動させなければならない。 ドイツでは昨年、こうした「再給電」コストが 14 億ユーロにも達した。 解決策は、北部の風力発電施設から南部の工場にスムーズに電力を送れるよう送電網を拡張すること。 そのための工事は既に始まっている。 巨額の予算をかけて(事業費は電気料金に上乗せされて、消費者が負担する)、総延長約 8,000 キロ近い送電線が新たに敷設される予定だが、今のところ工事が完了したのは 2 割足らずだ。

風力発電で大量の失業者

「壊滅的に工期が遅れている」と、ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は 8 月に経済紙ハンデルスブラットに語った。 遅れた理由の 1 つは住民運動だ。 4 本の高圧電線が通る地域の住民は電磁波の影響を懸念し、地下にケーブルを埋設するよう要求。 そのために工期は延び、コストは膨らんだ。 今の見通しでは工事が全て完了するのは 25 年。 原発が全て運転を停止してから 3 年後だ。

こうした状況下で、ドイツは再生可能エネルギーへの転換のペースを見直さざるを得なくなった。 与党キリスト教民主同盟 (CDU) の広報担当ヨアヒム・ファイファーは本誌の取材にメールで応じ、「再生可能エネルギーの発電量を増やすことに注力し過ぎていた」と認めた。 「発電量を増やすと同時に送電網を拡張する必要があるのに、後者が後回しになった。」 再生可能エネルギー推進派は政策の後退に強く反発している。 ドイツ風力発電連合のウォルフラム・アクセレム CEO によると、風力発電業界では大量の失業者が出ている。 「19、20 年にこの業界は苦境に陥るだろう。」

一方、ノルド・ストリーム 2 の建設工事は着々と進んでいる。 このプロジェクトの事業費 110 億ドルは、ロシアの国営エネルギー企業ガスプロムと 5 社の欧州企業が出資しており、ドイツの納税者には直接的な負担はない。 パイプラインはドイツ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマークの領海を通過するが、通過を拒否するデンマークを除く 4 カ国は既に敷設を許可している。

今でも EU が消費する天然ガスの約 3 割はロシア産だが、予定どおり来年末にノルド・ストリーム 2 が稼働を始めれば、欧州のガス市場におけるロシアのシェアはさらに拡大する。 欧州最大のガス田があるオランダは地震頻発のため 30 年までにガス田を全て閉鎖する予定で、EU のロシア依存は一層進む。 ドナルド・トランプ米大統領は 7 月、「ドイツは完全にロシアに支配されている」と発言。 米政府はノルド・ストリーム 2 に投資する欧州企業に制裁を科す可能性があると脅しをかけた。

褐炭の採掘はフル操業

ドイツ政府もロシアへの過度の依存を警戒しているが、エネルギーの安定供給を求める産業界の要望は無視できない。 現実問題としてロシア産ガスに頼らざるを得ないと、ドイツ国際安全保障問題研究所のエネルギー専門家クリステン・ベストファルは言う。 「大きな需給ギャップを埋めるには、(ロシアの)ガスが必要だ。」

再生可能エネルギー用の送電網整備が立ち遅れるなか、二酸化炭素 (CO2) の排出量が最も多い化石燃料である褐炭の需要も伸びている。 褐炭による火力発電はドイツの電力供給の 25% 近くを占める。 化石燃料業界が逆風にさらされるなか、褐炭の採掘会社は稼げるうちに稼ごうと事業の拡大に余念がない。 石炭火力発電が大きく伸び、ドイツの CO2 排出量は 15、16 年と連続で増えた(17 年には微減)。 ドイツは今なおヨーロッパ最大の CO2 排出大国だが、アンゲラ・メルケル首相は汚名返上に努めるどころか、20 年までに 1990 年比の 40% という削減目標を撤回するありさまだ。

わずか数年前、パリ協定の採択に向けた議論が行われていたときには、ドイツは EU の気候変動対策のリーダーを自任していた。だが最近、ミゲル・アリアスカニャテ欧州委員会気候行動・エネルギー担当委員が 30 年までの削減目標を 90 年比 40% から 45% に引き上げようと提案すると、メルケルは渋い顔をした。 「既に決めた目標があるのだから、その達成が先だ。 次から次に新しい目標を打ち出すのはいかがなものか。」 (ダニエラ・チェスロー、NewsWeek = 10-19-18)


使い捨てプラごみ、25% 削減 環境省素案 30 年目標、植物素材を拡大

環境省が策定中のプラスチックごみ削減戦略の素案で、2030 年までの数値目標として、ペットボトルやレジ袋、食品容器など使い捨てプラスチック排出量の 25% 削減を盛り込むことが分かった。 植物などを原料とし環境に優しいバイオ素材の国内利用は 13 年度の 7 万トンから約 200 万トンに拡大する。素案は 19 日の中央環境審議会小委員会に提示する。

国内でのプラごみ削減目標は初めて。 削減のための具体策や数値目標を含む「プラスチック資源循環戦略」は年内に大枠を取りまとめる方針だ。 環境省は目標達成に向け、小売店などにレジ袋の有料化を義務付けるほか、使い捨て容器の見直しを促す。 洗顔料や歯磨き粉に含まれる微粒子状のマイクロプラスチック削減の徹底も求める。 不法投棄の監視を強化し、将来的には海洋へのプラスチック排出ゼロを目指す。

来年 6 月に大阪で開く 20 カ国・地域 (G20) 首脳会合をにらみ大胆な目標設定で環境問題への積極姿勢をアピールする狙いだ。 環境省によると、ストローやマドラーなどを含む使い捨てプラスチック全体の排出量に関するデータはないが、大きな割合を占める包装容器とペットボトルは 16 年に計 407 万トンだった。 素案は排出量を比較する基準年を明示しておらず、年内の大枠決定に向けて引き続き議論する。

プラスチック製包装容器は素材に分解して再利用するリサイクルと、そのままの形で再利用するリユースを合わせた数値を 30 年までに家庭・事業ごみの全体で 60% とする。 16 年度の家庭ごみで、この数値は 53% %だった。 電化製品や自動車の部品なども含めたプラスチックごみ全体の再利用目標も設定。 発電や廃熱活用も含めた有効利用は 16 年の 84% を 35 年までに 100% に引き上げる。

素案には、今年 6 月の先進 7 カ国 (G7) 首脳会議で日米が署名を拒否した「海洋プラスチック憲章」の数値目標を反映。 リサイクル率などの目標は憲章の達成年限より前倒しで設定した。 (sankei = 10-15-18)


気温 1.5 度上昇、2030 年にも IPCC 報告書

国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は 8 日、地球温暖化が現状のまま進めば、早ければ 2030 年にも世界の平均気温が産業革命前より 1.5 度上昇し、自然災害などのリスクも高まるなどと予測した特別報告書を公表した。 1.5 度に抑えたとしても、氷床の融解などによる海水面の上昇は 2100 年までに最大 77 センチに達するといい、沿岸部や島国の人々の暮らしに大きく影響しそうだ。

地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は、産業革命以降の気温上昇を 2 度未満、できれば 1.5 度未満に抑えることを目標にしている。 1.5 度に抑えた時の温暖化の影響などについての特別報告書を、温暖化問題の科学的評価で最も権威のある IPCC がつくることになり、6 日まで韓国で開かれていた IPCC 総会で採択された。 報告書によると、世界の平均気温は産業革命前よりすでに 1 度上昇している。 10 年で 0.2 度ほどのペースで上昇しているとい、現状のままでは 30 年から 52 年の間に、1.5 度に達すると予測している。

報告書は 1.5 度上昇した場合と 2 度上昇した場合の影響を比較している。 例えば、海水面の上昇では、1.5 度の場合は 2100 年までに、1986 年 - 2005 年の水準に比べて 26 センチ - 77 センチ上昇。 2 度上昇だとさらに海水面は 10 センチ高くなるといい、影響を受ける人はさらに最大 1 千万人多くなる。

生態系については、1.5 度上昇の場合、昆虫の 6%、脊椎動物の 4%、植物の 8% の種が生息域の半分以上を失うが、2 度上昇だと脊椎動物や植物で 2 倍に、昆虫では 3 倍に影響が広がるという。 また、永久凍土が溶解する面積は、1.5 度上昇に比べ、2 度上昇では日本列島の 6 倍以上になる 250 万平方キロ増えるという。 温暖化の影響は 1.5 度上昇でも大きいが、2 度だとさらに深刻になる。

報告書によると、気温上昇を 1.5 度に抑えて安定させるためには、世界全体の年間の二酸化炭素 (CO2) 排出量を 10 年比で約 45% 削減する必要がある。 50 年ごろには、CO2 排出を実質ゼロにする必要があるといい、その場合の世界の電源構成は再生可能エネルギーの割合が 70 - 85%、石炭火力発電はゼロに近づけなければならないと指摘している。 12 月にはポーランドで国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP24) が開かれる。 IPCC の特別報告書を受け、目標引き上げなどさらなる温暖化対策が議論される。

温室ガス削減、大幅強化が焦点

12 月にはポーランドで、国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP24) が開かれる。 IPCC の「1.5 度特別報告書」を受け、各国が現状の温室効果ガス削減目標のレベルを高める方向で合意し、対策を大幅に強化する方向に動き出せるかが焦点となる。

地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づき、各国は温室効果ガスの削減目標を掲げている。 しかし、目標を達成したとしても、2030 年時点の世界全体の温室効果ガスの排出量は気温上昇を 2 度に抑えられるレベルよりも 110 億 - 135 億トン(二酸化炭素換算)多い。 1.5 度未満に抑えるレベルからすると 160 億 - 190 億トン多いという。

条約締約国は 20 年までにいまの削減目標を見直すことになっている。 1.5 度特別報告書が「1.5 度上昇に抑えるには、30 年までに二酸化炭素の排出量を 10 年比 45% 削減」とした科学的知見を受け止め、COP24 で「現状より高いレベルの削減目標に見直す」と合意し、各国が目標引き上げの議論を早急に始める必要がある。 (神田明美、川村剛志、asahi = 10-8-18)


プラスチック製のレジ袋、有料化を義務付けへ

環境省は、スーパーやコンビニなどで使われているプラスチック製レジ袋の有料化を義務付ける方針を固めた。 膨大な量の使い捨てプラスチックごみが深刻な海洋汚染を引き起こしていることが国際問題となっている。 来年の主要 20 か国・地域 (G20) 首脳会議で議長国を務める日本として大幅な削減対策を進める。

原田環境相は 4 日の記者会見で「レジ袋は有料化も義務付けるべきではないか」と述べ、実施に向けた協議を急ぐ考えを示した。 具体的な方法や時期、規制の範囲などは今後検討する。 同省の担当者は「小売業や製造業、地方自治体などと協議を重ね、すべての関係者が納得できる制度を目指したい」と話す。 海外ではフランスや中国などで有料や使用禁止となっている。 国内では一部のスーパーなどですでに有料化されているが、義務ではないため対応は一律ではない。 同省は義務化により消費者の意識を高め、レジ袋削減につなげたい考えだ。 (yomiuri = 10-5-18)


富士電機が船舶の排ガス浄化装置、規制強化で本格展開

富士電機は船舶の排ガス浄化装置を本格展開する。 千葉工場(千葉県市原市)で量産し、1 日から広く受注活動を始める。 船舶排ガスの国際規制基準は 2020 年に大幅に強化される。 規制に対応するため排ガス浄化装置の需要が高まるとみて、新事業に参入する。 制御盤やガス分析計などの機器と組み合わせて販売し、自社の強みを生かす。

受注を始めるのは「スクラバー」と呼ばれる大型装置で、排ガスに含まれる硫黄酸化物 (SOx) を除去する。 富士電機は 2 年前から実際の船舶にスクラバーを搭載して性能試験を開始。 一部の顧客から受注してきた。 国際海事機関 (IMO) が 20 年、船舶燃料の硫黄分濃度の上限値を現行の 3.5% から 0.5% に引き下げる。 船舶の所有者は価格が高い硫黄分の少ない燃料や液化天然ガス (LNG) などを使用するか、スクラバーを設置した上で現行の燃料を使用する、などの対策が求められる。

富士電機は SOx を除去するため、スクラバー内部に渦を起こす技術を取り入れた。 排ガスが渦を巻きながらスクラバー内部を上昇し、ミスト状になった海水などを吹き付けて SOx を除去する。ガスが回転することで、海水とガスが接触する時間や面積を増やした。98%以上の SOx を除去できるという。 効率的に除去でき、同じエンジン出力で比較した場合、他社製品に比べて体積を約 50% 小型化した。 ファンなど追加の装置が不要で、15 年以上メンテナンスの必要がないという。

SOx を除去するために使った海水は船外に排水する。 ただ排水が禁止されている海域もあるため、アルカリ剤を混ぜた水を吹き付け、船内で循環させる方式を選べるタイプも用意した。 富士電機はインバーターやセンサーなどの機器をセットで販売する手法を強化している。 「自社製品の比率が高まり、分析計などのアフターサービスで収益を確保できる(FA 営業技術部の三田逸郎主席)」ため、今回のスクラバーも、ガス分析計や制御盤などとセットで販売するのを基本とする方針だ。

システム全体の価格は大きさや性能などにより異なり、エンジン出力 12 メガ(メガは 100 万)ワットまでに対応したサイズで海水を船外に排水する「オープンループタイプ」が 2 億円程度。 受注を始める中で最も大きいのは 16 メガワットまで対応する機種だが、来春には 24 メガワットまで対応できる機種の受注を始める方針だ。

千葉工場は高さ 5 メートルを超える変圧器などを生産し、製造工程などで使うクレーン設備が整っていて海からの出荷がしやすい。 厚い金属板を溶接する変圧器の外枠の製造で培った高い溶接技術も持つ。 富士電機のスクラバーは高さ 7 メートルを超え、高い溶接技術が求められることから千葉工場で生産することにした。

調査会社グローバルマーケットインサイツによると、船舶用排ガス浄化システムの市場規模は 24 年までに 80 億ドルに拡大する見込みだ。 富士電機は既に 18 年 3 月期に 10 隻分のスクラバーを受注しており、19 年 3 月期は計 20 隻分の受注を見込む。 今後は 24 年 3 月期に 100 隻分の出荷を目指す。 現在の生産能力は月産 4 台。 今後は「一部部品の溶接工程にロボット導入を検討している(高橋義博・千葉工場長)」といい、20 年 3 月期に月産 6 台、21 年 3 月期に月産 8 台に拡充する方針だ。 (近藤彰俊、nikkei = 10-1-18)


高齢者世帯、若者・中年より CO2 排出多め 環境省調査

高齢者の世帯は若者や中年の世帯に比べて、二酸化炭素 (CO2) の排出量が多い …。 環境省が 28 日に初めて公表した一般家庭を対象とした CO2 排出量調査の結果から、こんな実態が浮かんだ。 調査は、昨年 4 月から今年 3 月にかけて、全国 1 万 3 千世帯を対象に、家族構成や月ごとの電気やガスの使用量、省エネに対する心がけなど約 500 項目のアンケートを実施。 約 9,500 世帯から回答を得た。

調査結果によると、世帯あたりの年間の CO2 排出量は 3.3 トン。 家族が多く、自宅が広い家庭ほど排出量は多かった。 地域別では、冬場に暖房を多く利用する北海道や東北、北陸の世帯で排出量が多い傾向にあった。 一人暮らしの高齢者の世帯からの排出量は 2.19 トンで、若年・中年の一人暮らしより約 3 割多かった。 夫婦でも高齢者世帯では 1 割多かった。 環境省低炭素社会推進室は「高齢者は戸建てに住んでいる人が多く、自宅で過ごす時間も長いことなどが影響しているのではないか」と分析している。

また、省エネ意識が高い家庭ほど CO2 排出量が少ない傾向も確認された。 炊飯器の保温機能を極力使わない家庭はそうでない家庭よりも 23%、家族が続けて入浴することを心がける家庭は心がけない家庭より 7%、CO2 排出量が少なかったという。 (川村剛志、asahi = 9-28-18)


CO2 削減技術で福島復興支援 環境省が計画

環境省は、東京電力福島第 1 原発事故に伴う福島県の避難区域で、地球温暖化の原因となる二酸化炭素 (CO2) の排出削減技術を復興に生かす計画を進めている。 本年度に CO2 削減効果や採算性などを検証する事前調査を始め、2019 年度予算の概算要求に 4 億円を盛り込んだ。 19 年度に実証試験を進め、20 年度以降の事業化を目指す。

対象地域は大熊、富岡両町などの帰還困難区域の一部で再び住めるように整備する特定復興再生拠点区域(復興拠点)やその周辺。 環境省幹部は「除染などはマイナスをゼロにする事業だが、一歩進めて復興と低炭素のまちづくりを支援する」と狙いを説明した。 (kyodo = 9-20-18)


東京 44 度、札幌 41 度 … 環境省の 2100 年天気予報

最高気温は東京、名古屋で 44 度、札幌でも 41 度 …。 地球温暖化対策が進まなかった場合の未来を描いた動画「2100 年未来の天気予報」を環境省がウェブサイトで公開している。 動画はテレビの天気予報番組をイメージし、気象予報士が全国の気温などを紹介する。 最高気温は高知県四万十市で 44.9 度に達し、各地で軒並み 40 度を超える。 気温 30 度以上の真夏日は那覇で 184 日、札幌でも 40 日に上り、予報士は猛暑による熱中症への警戒を呼びかける。

温暖化が進めば、気温上昇により大気中の水蒸気量が増えるため、大雨が発生しやすくなる。 動画は局地的な豪雨や川の氾濫、崖崩れの多発も映像を交えて伝える。 この天気予報は、全世界で温暖化対策が全く進まなければ、日本の年平均気温が 4.5 度上昇するとの気象庁予測に基づく。 国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の報告書を前提に試算した。 (kyodo = 9-16-18)


「残念で涙出る」桜の名所、200 本の伐採進む 郡山

春には約 200 本の桜が咲き誇る福島県郡山市の逢瀬川沿いの堤防で、桜並木の伐採が進んでいる。 全国的に豪雨災害が相次ぐ中で、河川の拡張と堤防のかさ上げに向けた改修工事を行うためだ。 地元の住民らは「桜の名所」の風景を失うことに胸を痛めながらも、「暮らしを守るためにやむをえない」と苦しい思いで伐採作業を見守っている。

7 月下旬の午後、堤防で根元から引き抜かれた桜の木が、重機で次々とトラックに積まれていた。 川沿いの散歩を日課とする近くの女性 (81) は、「あんなに奇麗に咲いていたのに。 残念で涙が出る。」と肩を落とした。 県などによると、堤防にはソメイヨシノやヤマザクラなど 203 本の桜が植わっていた。 ただ多くが老衰し、樹齢 100 年以上のソメイヨシノもあるという。

県が河川改修工事に着手したのは 1986 年。 台風で川沿いが冠水したため、上流の約 1.27 キロについて、川幅を現在の約 40 メートルから約 50 メートルに拡張し、堤防の道路も 1 メートル以上高くする計画だ。 計画を知った住民らは 97 年、桜並木の保存を訴え、「逢瀬川の桜並木を愛する会」を発足。 署名活動を行い、県とともに桜を残しながら河川改修を行う方法を数年かけて検討した。 しかし、老木が多くて移植や復元は難しく、会は約 10 年前に解散した。

一方、工事は用地買収に時間を要した。 そんな中、2011 年 9 月の集中豪雨で川沿いが浸水。 全国的にも台風や豪雨による被害が相次いだことから、危機感を抱いた周辺の6町内会は 16 年 6 月、市などに堤防の早期建設を要望した。 県は同年 8 月から、地元住民らと 4 回にわたって懇談会を開き、桜の伐採について理解を求めた。 県によると、席上で伐採に反対する意見は出なかったという。

県はまず昨年 2 月、桜の木 20 本を伐採した。今年度は 7 月中旬から 51 本を切り、20 年代半ばまでには約 200 本全てを伐採することにしている。 町内会役員の男性 (70) は「桜に愛着はあるが、災害が増えているいま、安心安全な生活を優先させたい」と話している。 (大月美佳、yomiuri = 8-21-18)


関電など、英国沖の洋上風力発電に出資 世界最大級

J パワーと関西電力は 13 日、英国沖で開発が進む、世界最大級の洋上風力発電事業に出資すると発表した。 出資額は非公表だが、両社で 1 千億円程度とみられる。 ドイツの電力大手「イノジー SE」が持つ、開発のための子会社の株式を J パワーが 25%、関電が 16% 取得する。 総事業費は約 3 千億円。 英国の北海洋上に風車 90 基を建設し、2021 年の稼働をめざす。 合計出力は 86 万キロワットという。 つくった電気は、英国の固定価格買い取り制度により、電力会社が 15 年間買い取るしくみだ。

両社を含む日本の電力大手が海外の洋上風力発電に出資するのは初めて。 関電は秋田県沖、J パワーは北九州市沖でそれぞれ洋上風力発電を計画している。 両社は、洋上風力発電で世界 3 位のシェアを持つイノジー SE の事業に参画することで、ノウハウを吸収したい考えだ。 (西尾邦明、asahi = 8-13-18)


地球は「温室」化の瀬戸際 人が住めなくなると警鐘

【タンパ】 化石燃料による大気汚染がこのまま続けば、地球は危険な「温室」状態が永続することになりかねない - -。 欧州などの研究者らが 6 日、そう警告する論文を米科学アカデミー紀要に発表した。 環境保護と経済成長を両立させるグリーン経済への転換を地球規模で早急に実現する必要があると訴えている。

デンマークのコペンハーゲン大学やドイツのポツダム気候影響研究所、オーストラリア国立大学などの研究者がまとめた論文によると、このまま極地の氷が解け、森林が伐採され、温室効果ガスの排出量が増え続けていくと、地球は転換点となるしきい値を超える。 そうなれば気温は産業革命前よりも 4 - 5 度上昇し、海面は現在よりも 10 - 60 メートル上昇する。

21 世紀末までに各河川は氾濫し、沿岸地域は暴風雨にさらされ、サンゴ礁は消滅。 地球の平均気温は過去 120 万年間のどの間氷期よりも高温になるという。 「温室化した地球」が現実のものになれば、地球は人が住める場所ではなくなってしまう。」 論文の共同執筆者であるスウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センター所長、ヨハン・ロックストローム氏は危機感をあらわにする。

論文は、地球の気温が産業革命前比で 2 度上昇すると、この転換点を迎える可能性があると指摘する。 すでに 1 度上昇しており、10 年間に 0.17 度の割合で上がり続けている。 「平均気温が 2 度上昇すると重要な転換要素が活性化され、気温がさらに上昇する。 これによって他の転換要素がドミノのように次々と活性化されていき、地球全体がさらに高温になる。」 研究チームはそう予測する。

論文の共著者でポツダム気候影響研究所の所長を務めるハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー氏は、こうした連鎖が起きるようになれば「地球というシステムの全体が新たなモードに入ることになりそうだ」とみる。 論文の予測は、地球の転換点に関する先行研究を基にしている。 ほかにも、二酸化炭素 (CO2) 濃度が現在と同じ 400ppm だった 500 万年前の鮮新世などの状況も参照した。

論文は、地球の世話役として人間は今すぐにでも生活スタイルを変える必要があると強調。 化石燃料を、最終的に廃棄物をゼロにする「ゼロエミッション」のエネルギー源で置き換えていくことや、植林のような (CO2) 吸収に関する戦略をさらに考え出すことを提言している。 シェルンフーバー氏は「地球の気候が産業革命前から 2 度上昇のぎりぎり手前で安全にとどまっていられる保証はない」と警鐘を鳴らしている。 (AFP = 時事通信 = 8-8-18)

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カリフォルニア山火事、州史上最大規模に拡大

ヨセミテの閉鎖、無期限延長

【ニューヨーク = 高橋里奈】 米西部カリフォルニア州各地で大規模な山火事が続いている。 北部のメンドシノ郡周辺で 7 月 27 日に発生した山火事は約 11 万 8,000 ヘクタールを焼失させ、州史上最大規模に拡大した。 観光地のヨセミテ国立公園周辺の火事も収束せず、見どころのヨセミテバレーなど一部は閉鎖の無期限延長が決まった。

7 月からの山火事で州内の死者は 9 人にのぼった。 メンドシノ周辺で起きた 2 つの山火事では民家など約 150 棟が被害にあった。このほか北部のシャスタ郡周辺で 7 月 23 日に発生した山火事では約 1,600 棟が焼失などで倒壊した。 干ばつと熱波で火災が広がりやすい状況が続いており、州内では 1 万 4,000 人以上の消防士が消火活動に従事している。 トランプ米大統領はカリフォルニア州の一連の山火事についてツイッターに 5 日、「(同州の)悪い環境関連法のせいで悪化している」と州政府を非難する投稿をし、反発を招いている。 (nikkei = 8-8-18)

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カリフォルニアに降った「熱い雨」、世界最高記録を更新

<カリフォルニア州南部のインペリアル郡で、普通雨など降らない 48 度の気温のなかで降雨を記録。 これはいったい何を意味するのか?>

カリフォルニア州のインペリアル郡で 7 月 24 日、世界の観測史上最も「熱い雨」が観測された。 この時の気温は 48.3 度。 気象の専門家ジェフ・マスターズによると、これは降雨時としては観測史上最高気温、つまり「hottest rain」だという。 地球温暖化と一連の異常気象がもたらした珍現象の一つである。 あまりに暑いなかで雨が降ったため、ある住民は胸が苦しくなったと証言する。 「呼吸をするのも苦しいほどだった。」

マスターズは、「ウェザー・アンダーグラウンド」というブログの共同創設者。 天気予報専門のケーブルテレビチャンネル、ウェザーチャンネルが運営するウェブサイト「ウェザー・コム」の、いわばマニア向け裏バージョンとでも言うべき存在だ。 かつてアメリカ海洋大気局 (NOAA) のハリケーンハンターとも行動を共にしたマスターズは、ネットの気象情報専門家として人気だ。 とにかくこの夏のカリフォルニアは異常に暑い。 マスターズの解説を振り返ってみよう。

「2018 年 7 月 24 日は、カリフォルニア州で史上最高レベルの酷暑を記録した。 砂漠地帯の州南西部としても異例な、強烈な熱波がこの地域を襲い、気温は最高記録に迫った。」と、マスターズは解説している。 「カリフォルニア州中部の砂漠地帯、デスバレーの気温は 52.7 度に達した。 これは、世界の観測記録のなかの最高気温にほんの 1.11 度だけ足りない暑さだ。 リバーサイド郡パームスプリングスも過去最高に近い 50 度を記録した。 また、インペリアル郡の町インペリアルでは 49.4 度と、1995 年 7 月 28 日の 51.1 度に次ぐ高温を記録した。」

降るそばから蒸発する雨

この強烈な熱波により、降雨時の世界最高気温記録が更新されることになったのだと、マスターズは言う。 インペリアル郡ではこの日の午後に入って雲が発生し、太平洋夏時間午後 3 時 53 分から降水が記録されたという。 この雨雲がなければ、当地の気温はさらに上昇していた可能性がある。 「雨が降り始めた時点で、気温は 48.3 度という驚くべき高温に達していた。 これは、降雨時の気温としては、世界の観測史上最高記録を更新する数字だ。」と、マスターズは言う。

「気温が高く、湿度は 11 - 15% しかなかったため、降った雨の大半は蒸発してしまい、雨量計にも降水の痕跡が残るだけだった。 それでも雨が降ったのは確かで、降雨時の気温としては史上最高を記録したことは間違いない。」 マスターズによると、37.7 度以上の気温で雨が降ることはまれだという。 それ以上の高温には「高気圧がつきもので、下降気流によって雲の発生や降雨が妨げられる」ケースが多いからだ。 これまでの降雨時の最高気温は、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡にある町ニードルズで 2012 年 8 月 13 日に記録されたもので、この時は 47.7 度で雨が降った。

降雨時の最高気温記録が更新されたことに注目している気象専門家はほかにもいる。 「気候変動コミュニケーター」を名乗る CBS ニュースの解説者で、コロンビア大学で気象学教授に就任予定のジェフ・ベラルデッリは、この報道について、自らのツイッターで以下のようにコメントしている。 「今回の記録更新から、地球は温暖化しているだけでなく、湿度も増していることがわかる。 これは気候変動が人の健康に影響を及ぼす事例と言えるだろう。」

インペリアル郡は、カリフォルニア州南部でも南東部に位置し、人口は 1 万 7,000 人。 この地域は砂漠地帯で過酷な環境で知られている。 (デービッド・マギー、NewsWeek = 8-6-18)

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猛暑の欧州、46 度超も 水温上昇で原子炉休止

【ロンドン】 記録的な熱波に見舞われたスペインとポルトガルで 4 日、気温が 46 度を超えた。 1977 年にギリシャで記録された欧州での史上最高気温の 48.0 度に迫る勢い。 欧州各地では原子炉の運転休止も起き、影響が広がっている。

アフリカから押し寄せた熱波が一因で、英気象庁や欧州メディアによると、スペイン南西部で 46.6 度、ポルトガル中部で 46.4 度を記録した。 同国の首都リスボン郊外では冷房の利用が集中して大規模な停電が発生。 フランスでは冷却水として使う川の水温が上昇し、複数の原子力発電所で原子炉の運転が一時的に止められた。 (kyodo = 8-5-18)

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北極圏で 33 度、中東で 51 度 … 異常気象、世界でも

記録的な猛暑が続く日本だけでなく、世界各地で猛暑や少雨といった異常気象が観測され、乾燥による火災や熱中症などの犠牲者も相次いでいる。 世界気象機関 (WMO) は 24 日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で記者会見し、「我々はこうした異常気象の被害を受けやすくなっている」と警戒を呼びかけた。

WMO の報告によると、中東オマーンでは 6 月末、夜間の最低気温が 42.6 度に達した。 カナダ東部のケベック州では強い湿気を伴う熱波で高齢者を中心に数十人が死亡。 同国東部のニューファンドランド島では 6 月 26 日に雪が降り、2 センチ積もるなど各地で異例の事態になっている。

普段は涼しい北欧でも高温が続く。 フィンランド気象研究所によると、今月 18 日、北極圏に属する同国北端地域で気温が 33.4 度に達した。 スウェーデンも 7 月の最高気温は通常 22 度程度だが、今夏は 30 度超えが珍しくない。 日照りと乾燥が続き、北極圏を含む全土で計 50 カ所以上の森林火災が発生した。

ロシアの北極圏にあるムルマンスクでも先週、最高気温が 30 度を超える日が続き、地元メディアによると 18 日に最高気温が 32.2 度に達し、1972 年に記録した観測史上最高の 32.9 度に迫る暑さとなった。 極東の沿海地方にあるホローリ地区でも 21 日には最高気温が 37 度まで上昇した。 ギリシャでは 23 日、アテネ近郊で山林火災が起き、アテネ通信などによると少なくとも 50 人が死亡。 熱波の影響も指摘されている。

韓国も記録的な猛暑に襲われている。 先週、熱中症などの患者が前年の同じ時期の約 2 倍にあたる 556 人に達し、死者も 7 人を数えた。 ドイツは 5 月、月ごとの比較で 1881 年以降で最も高温となった。 その後も高い気温と少雨が続き、穀物の値段が高騰。 家畜のエサを賄えなくなった農家が、家畜を殺処分するなど対応に追われている。

中東も例年にない暑さとなっている。 アラブ首長国連邦 (EAE) では今月 11 日、最高気温が 50 度を超える地点が相次ぎ、砂漠地帯では 03 年以降で最高の 51.8 度に迫る 51.5 度を記録した。 イラク南部では、頻発する停電や水不足に対する抗議デモが続き、地元メディアによると、治安部隊との衝突などでこれまでに 11 人が死亡。 イラン学生通信によると、イラン南部のフゼスタン州では 11 日、12 の都市で最高気温が 50 度以上に達した。

香港では低所得者が暮らす住宅の熱中症対策が社会問題化した。 香港メディアによると、生活支援団体が 6 - 7 月にかけ、窓がないなど条件の悪い住宅で暮らす住民を対象に実施した調査では、室内気温が 42 度に達した部屋もあった。 WMO は、猛暑や豪雨といった異常気象が増えているのは「気候変動の結果だ」としている。 日本についても、記録的な豪雨災害で土砂崩れや河川の氾濫が相次ぎ、その後は「激しい熱波に見舞われ、高齢者らにとって極めて危険な状況だ」と指摘した。

国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は 2014 年の第 5 次評価報告書で、約 130 年間で世界の平均気温が 0.85 度上がったとし、二酸化炭素 (CO2) などの排出増が原因である可能性が極めて高いと指摘。 対策をとらなければ、今世紀末までに世界の平均気温は産業革命前と比べ 4.8 度上昇すると予測している。(パリ、ロンドン、モスクワ、ソウル、asahi = 7-25-18)

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「最低気温」が 42.6 度、観測史上最高を更新 オマーン

中東オマーンの町クリヤットでこのほど、一日の最低気温が 42.6 度を記録し、観測史上最高を更新した。 クリヤットは人口 5 万人ほどの町で、26 日に 42.6 度の最低気温を記録した。 気象専門家によれば、最低気温は 24 時間単位で観測されたものだというが、51 時間近くにわたりこうした暑さが続いた。 以前の世界記録を保持していたのもオマーンで、クリヤットの北方 600 キロあまりに位置するハサブ空港での記録だった。

CNN の気象専門家、ブランドン・ミラー氏はオマーンの気温がこれほど高い理由について、複数の要因が絡んでいると指摘する。 クリヤットとハサブはいずれもオマーン湾に沿った位置にある。 オマーン湾の海水温は世界有数の高さで、水温が 30 度に達することも多いという。 ミラー氏は「アラビア半島の炎暑に加え、オマーン湾からも温かく湿った空気が流れ込む」と説明。 これらの要因が重なると、極端に高い体感温度になると指摘する。 湿度の影響で夜もそれほど空気が冷えないことから、夜間の最低気温も極めて高くなるという。

ミラー氏によれば、多くの人は訪問先を決める際に最高気温しか調べないが、最低気温の方が大きな問題になる場合もある。 夜になっても建物や人体が冷えないためで、日中の最高気温よりも夜間の最低気温の方が危険になりうるとして警鐘を鳴らしている。 (CNN = 6-29-18)