アマゾン、サプライヤー工場の劣悪な労働環境を告発される 「Echo」など製造

中国にある Amazon の製造施設に関して、その劣悪な労働環境を明らかにする 94 ページの報告書が公開された。 ほんの 2 カ月前には、英国にある Amazon のフルフィルメントセンターにおいて、労働者の休憩が過酷なルールで規制されていることが告発されたばかりだ。

ニューヨークを拠点とする労働監視団体 China Labor Watch が米国時間 6 月 10 日付で公開した報告書によると、中国の衡陽にある工場で「Echo」スピーカーや「Kindle」などの Amazon 製品を組み立てる労働者は、低賃金で月 100 時間を超える時間外労働を強いられているという。 繁忙期には 14 日間連続で勤務する事例もあったとのことだ。 この工場は、Foxconn の名で知られる鴻海科技集団が所有する施設で、Amazon 製品のほかに Apple の「iPhone」も製造している。

報告書には、2018 年 4 月までの 9 カ月間の調査結果が詳細に記されている。 例えば、労働者は生活するために中国の労働法で認められている以上の時間外労働を行っているという(中国の時間外労働の上限は月 36 時間まで)。 さらに、休暇を取ったり「無断欠勤」をしたりするとペナルティとして賃金が減額されるほか、労働者は言葉の暴力にもさらされている。

Amazon の広報担当者は、米 Cnet にメールで次のような声明を寄せた。 「Amazonは報告されたサプライヤー行動規範への違反を極めて深刻に受け止めている。 Foxconn の衡陽工場については、2018 年 3 月に当社による最新の監査を完了し、2 点の問題を確認した。 当社は直ちに Foxconn 衡陽工場に対して、これらの問題の改善計画を記した是正措置プランを要求しており、また当社としても、定期評価を通じて Amazon のサプライヤー行動規範の実行と順守を監視する。」 (Zoey Chong、Cnet = 6-12-18)


米、航空 3 社に中国の要求無視求める 台湾表記で踏み絵

【台北 = 伊原健作】 台湾と米国が一段と接近している。 中国が海外航空会社に対し、ホームページ上で台湾を中国の一部と表記するよう要求している問題をめぐり、米政府が企業に「無視」するよう求めたことが判明。 米軍は台湾海峡への軍艦の派遣も検討するなど、中国の影響力拡大をけん制する動きが相次ぐ。 台湾は歓迎するが、中国は「核心的利益」と位置づける台湾への介入として反発しそうだ。

英紙フィナンシャル・タイムズ (FT) は 6 日、米政府がユナイテッド、アメリカン、デルタの米航空 3 社に対し、中国の要求を無視するよう求めたと報じた。 中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則を認めない台湾・蔡英文政権に対し、中国は外交圧力を強める。 4 月には世界の航空会社 44 社に対し、予約サイトなどでの「台湾」という表記を「中国台湾」など中国の一部に改めるよう求める書簡を送付。 台湾メディアによると中国事業で不利益が生じる可能性を示唆する記載があり、独ルフトハンザやエア・カナダなど 18 社が要求に応じたという。

米ホワイトハウスは 5 月、政府による将来の監視社会を描いた英作家ジョージ・オーウェル氏を引き合いに出し、中国の要求を「オーウェル氏の作品を想起させるようなばかげたものだ」と批判。 台湾の外交部(外務省)は「北京当局からの圧力で日増しに困難が増しており、米政府の支援に感謝する」とした。 またロイター通信は今月 4 日、トランプ米政権が台湾海峡への軍艦の派遣を検討していると報じた。 今年に入ってからは一時、空母の派遣も検討したという。

昨年から中国軍機が台湾を周回する演習が常態になっている。 マティス米国防長官は 2 日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議での演説で「一方的な現状変更の試みに反対する」と指摘。 「(台湾への)必要な武器の供与を断固として続ける」と、中国を強くけん制した。 台湾は中国が進める海洋進出の要衝に位置し、「対中国で台米の利害は一致する(台湾の外交筋)」という。

さらに米朝首脳会談と同じ 6 月 12 日には、緊密な米台関係を象徴する式典が台北で開かれる。 米の対台湾窓口機関、米国在台協会 (AIT) 台北事務所の新庁舎落成式で、蔡総統が出席する。 米国では 3 月に米台の高官の往来を促進する「台湾旅行法」が成立。 これに基づき米高官が訪台すれば、中国への配慮により制限されてきた米台関係の転機になる。 ただ中国の猛反発を招くのは確実で、北朝鮮問題の裏で米中がせめぎ合う構図が鮮明になる。 (nikkei = 6-6-18)


原油先物は大幅安、サウジ・ロシア・米の増産見通しで

[シンガポール] アジア時間 28 日午前の取引で、原油先物は大幅安。 原油需要が堅調な中での供給懸念に対応するため、サウジアラビア、ロシア、米国の 3 大産油国の増産見通しが背景にある。 0100GMT (日本時間午前 10 時)過ぎの時点で、米 WTI 原油先物は 2% 超急落し、1 バレル = 66.30 ドル。

石油輸出国機構 (OPEC) を事実上代表するサウジアラビアと OPEC 非加盟の産油国であるロシアは 25 日、両国のエネルギー相が協調減産の緩和を協議中だと表明。 協調減産に合意した産油国の原油生産を日量 100 万バレル程度引き上げることを協議しているもよう。 一方、米国の原油生産にも減速の兆しは見られない。 米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが公表した 25 日終了週の国内石油掘削リグ稼働数は前週比 15 基増の 859 基で、2015 年 3 月以来の高水準だった。 (Reuters = 5-28-18)


「アジア最高のバー 50 選」発表! 日本から 8 つがランクイン

シンガポールの「Manhattan Bar」が、2 年連続で「アジア最高のバー」に選ばれた。 ウィリアム リード ビジネス メディアが選ぶ「世界最高のバー 50」のアジア版は今年が 3 回目の開催だが、今回初めて授賞式が行われ、受賞者が発表された。 台北の「Indulge Experimental Bistro」が 2 位。 上海の「Speak Low」が 3 位となり 3 年連続で中国最高のバーに選ばれた。 シンガポールの「Atlas」が昨年から 8 つ順位を上げて 4 位に浮上。 そして最も印象的だったのが、小説家でカクテル愛好家だったアーネスト・ヘミングウェイに敬意を表した香港の「The Old Man」が、初登場で 5 位にランクインしたことだ。 「The Old Man」は「Highest New Entry Award」を受賞している。

今年は 8 つのバーが初のランクインとなった。 「The Old Man (5 位)」のほか、「Smalls (バンコク・29 位)」、「Gen Yamamoto (東京・34 位)」、「Junglebird (クアラルンプール・38 位)」、「Mixology Salon (東京・40 位)」、「Coley (クアラルンプール・46 位)」、「The Ritz Carlton Bar & Lounge (マカオ・48 位)」、「Ku Bar (バンコク・49 位)」だ。 「The Curator Coffee and Cocktails (25 位)」がフィリピンでは唯一選出されている。 また最も多くランクインした国はシンガポールと中国で、それぞれ 12 ずつ選ばれている。

特別賞として、バンコクの「Rabbit Hole」が、今後より上位に入るポテンシャルをもった人気上昇中のバーとして「One To Watch Award」を受賞。 シンガポール「Native」のバーテンダーである Vijay Mudaliar が「Bartenders’ Bartender」を受賞した。 (Cheryl Tiu、Forbes = 5-27-18)


貿易戦争「本丸・自動車」に 米、高関税で各国に圧力

【ワシントン = 河浪武史】 トランプ米政権は 23 日、安全保障を理由に自動車の輸入関税を引き上げる検討に入った。 自動車は米国最大の輸入品目で、トランプ大統領の強硬な保護貿易策はいよいよ「本丸」に向かう。 実際の関税発動にはハードルが高いが、2 国間協議に引き込んで日本など相手国の譲歩を引き出す強力な武器となる。 米国の「貿易戦争」は過激さを増し、世界経済の大きな足かせとなる。

トランプ政権が検討するのは鉄鋼・アルミニウムにも発動した「通商拡大法 232 条」の適用だ。 商務省が調査し、270 日以内にトランプ氏へ関税適用の是非を報告する。 現在 2.5% の乗用車関税に 25% 上乗せする案が浮上する。 自動車は全体の 15% 強を占める米最大の輸入品目で、25% の関税を課した鉄鋼(輸入の 1% 強)とは桁が違う。 自動車生産に携わる従業員数も 100 万人弱で、11 月の中間選挙を控えて「ポピュリズム(大衆迎合)」的な保護主義は極限に向かいつつある。

実際に追加関税を発動すれば世界貿易への影響は甚大だ。 日本は米国に年 170 万台強の四輪車を出荷し、自動車・関連部品の輸出額は 560 億ドルと全体の 4 割。 米国はドイツからも 300 億ドル強を輸入しており「貿易戦争」は同盟関係にある日欧に一気に拡大する。 米国が高関税を振りかざして各国に今後要求するのは、1980 年代に実現した自動車の輸出自主規制だ。 貿易制限は世界貿易機関 (WTO) ルール違反だが、鉄鋼交渉でも相手国に輸出数量規制を強く求め、韓国は直近の 7 割という水準に抑制する妥協策をのんだ。 ただ、自動車は日本や欧州の基幹産業で、国益をかけた激しい報復合戦に突入しかねない。

もっとも、関税発動のハードルは高い。 WTO ルールには安保を理由とする輸入制限だけは容認する条項があるが「自動車に安保上の脅威があると到底思えない。(日本側通商担当者)」 トランプ政権は鉄鋼・アルミにも安保を理由に追加関税を課したが、それ以前はリビアの石油輸入を制限したくらいで、もともと極めて異例な措置だ。 米経済の副作用も甚大だ。 自動車販売は米国のモノの消費の 11% を占め、値上がりは景気減速に直結する。 自動車ディーラーの雇用者数も約 200 万人と生産の 2 倍規模で、関税引き上げは逆に雇用減を招きかねない。 鉄鋼・アルミの輸入制限は、商務省の調査開始から 1 年近くかかった。

それでも自動車関税の引き上げ案は、トランプ氏が好む 2 国間での「ディール(取引)」の強烈な武器となる。 日米は 4 月の首脳会談で新たな通商協議に入ると決めたばかり。 米国は日本に自由貿易協定 (FTA) 交渉を求めており、自動車関税をちらつかせて一段と圧力を強めそうだ。 難航する北米自由貿易協定 (NAFTA) 再交渉でもカナダ、メキシコへの「脅し」となる。

米国は中国にも「貿易戦争」を仕掛け、戦線を止めどなく拡大している。 にもかかわらず成果は乏しく、同盟国の日本ですら米国に対抗措置を発動する検討に入っている。 トランプ政権と各国の亀裂は広がっており、自由貿易体制は先導役を完全に失いつつある。 (nikkei = 5-24-18)


「ペルシャじゅうたん大打撃」米制裁再開にイラン困惑

米国のトランプ政権が今月上旬にイラン核合意から離脱し制裁を再開すると表明したことで、イランのロハニ大統領の対外融和路線が窮地に立たされている。 イラン経済を支える原油と伝統工芸品のペルシャじゅうたんは制裁によって大きな打撃を受けかねず、懸念の声が広がっている。 原油取引はイラン経済の屋台骨で、国家予算の約 3 割が原油頼りだ。 地元メディアによると、イランの 2017 年の原油輸出は欧州向けが約 4 割で、中国が 24%、インドが 18% で続く。

イランのザンガネ石油相は制裁は「輸出に影響しない」とするが、米政府はイランとの原油取引が「二次的制裁」の対象になると表明。 各国がイランから原油を輸入する際、イラン中央銀行との決済が必要となるが、決済に携わった外国銀行は制裁で米国の金融システムから締め出される。 影響が原油取引の約 8 割を占める欧州やアジアとの取引にも及べば、イラン経済は揺らぐ。 ロハニ大統領は外資の呼び込みなどで原油依存度の低い経済も目指してきたが、成長という果実を失えば、不満が高まって対外融和路線のロハニ政権は窮地に立たされる。

特産品として名高いペルシャじゅうたんをはじめとするカーペットも米国の制裁再開で打撃を受ける。 16 年 1 月に核合意で制裁が解除されて輸出が可能になり、最大顧客となった米国を失うことになるためだ。 輸出業のバフマン・カフケシャニさん (45) は「せっかく米国に大手を振って輸出できるようになったのに」と、ため息をつく。 国立カーペットセンターによると、16 年 3 月からの 1 年間で、米国への輸出はほぼゼロだった前年から約 9,700 万ドル(約 107 億円)に急増。 全体の 4 分の 1 以上を占める最大の輸出先になった。 10 年の制裁で輸出ができなくなるまで、米国はドイツやアラブ首長国連邦 (UAE) と並ぶ大口顧客だった。

イランでは人口の約 2 割にあたる約 1,600 万人が関連産業で働くとされるが、ここ 20 年ほど、中国などの追い上げを受けて世界的なシェアが低下した。 カフケシャニさんは「制裁が強化され、米国だけでなく欧州などへも輸出できなくなれば、産業は死んだも同じだ」と嘆く。 (テヘラン = 杉崎慎弥、asahi = 5-22-18)


「中国人には飲み物を出すな」、高級ブランド業界の中国人差別の内情を暴露 - 仏華字紙

5 月 17 日、仏華字紙・欧州時報はこのほど、フランスのブランド品業界は中国人に対する暗黙のルールを設けていると報じた。 ブランド品業界で働いている中国系の従業員たちは、働くまで有名ブランドにはきらびやかなイメージを抱いており、自慢の職場になると思っていたが、「働いてみたら想像とはまったく違っていた」と話す。 仏高級ブランド「バレンシアガ」は中国人客に差別的な対応を取ったことで不買運動を起こされるなど大きな騒動に発展したが、そうした出来事についても「意外だとはまったく思わない」とし、「ブランド品業界は差別に満ちている」と指摘した。

地元の人と外国人とりわけ中国人をはっきり差別する事例は枚挙にいとまがないという。 中国系従業員の 1 人は、客に出すためのドリンクを入れている冷蔵庫には「地元客専用。 中国人には飲み物は出すな。」と書いた紙が貼られていたと明かした。 外国人の方がよく買っていくのだから、こうした対応はおかしいのではないかと上司に訴えたこともあったが、「地元のお客さんを優先するのは当たり前」、「よく買うかどうかの問題ではない」とにべもなくはねつけられてしまったという。 (RecordChina = 5-18-18)


好調な米経済が揺らぐ? リーマン時よりも悪化している指標とは

予見不能なトランプ政治や世界各地での地政学的リスクにも関わらず、米国経済はいまだ健在に見える。 米国の株価は今年に入り伸び悩んでいるものの、まだ昨年末の水準近辺だ。 今月 4 日に発表された雇用統計では失業率が 3.9% となり、17 年 4 か月ぶりに 3% 台に低下した。 しかしそんな好調さの裏で、悪化を続ける数字もある。

中小の銀行でクレジットカードの貸し倒れが急増

3 月 4 日付のウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) 紙によると、中小の銀行でのクレジットカードの貸し倒れ率が、リーマンショック以降では最高水準にまで上昇してきているという。 資産残高で 100 位以内に入らない下位の銀行では、貸し倒れ率が 2017 年第 3 四半期には 7.9% となった。 同第 4 四半期には多少は低下したものの、それでも 7.17% と非常に高水準だ。 大手銀行も含めた全体のクレジットカードの貸し倒れ率もここ 2 年は緩やかに上昇しているが、その比率は昨年第 4 四半期で 3.48% と過去 30 年の平均以下にとどまっており、その差は鮮明だ。

ここから見て取れるのは、大手の銀行が取引相手としない低所得者層で貸し倒れが広がっているということだ。 甘い審査や緩い融資条件の住宅ローンなどで金融危機を招いたことの教訓から、大手銀行はその後クレジットカードなどでも審査を厳格化した。 大手銀行でカードを作れない低所得者層は高金利であっても中小の銀行に頼ることになり、大手と中小の銀行の間での顧客層の違いが以前以上に際立っている可能性が高い。

サブプライム自動車ローンの延滞率がリーマンショック時をも上回る

リーマンショック時に有名となった「サブプライムローン」という言葉だが、経済的な信用度が高くない人向けのローンのことをいう。 当時は住宅購入に充てたサブプライムローンが危機の起因とされたが、今は自動車購入用のサブプライムローンで延滞率が大きく上昇してきている。 格付け会社フィッチが集計している、60 日以上延滞しているサブプライム自動車ローンの比率は今年 2 月に 5.75% となった。 3 月は多少低下して 5.16% となったが、金融危機時の最高は 2009 年 1 月の 5.04% であり、今の水準は 96 - 97 年以来の高さだ。

こうしたサブプライム自動車ローンを積極的に貸し出していた金融会社の多くは規模の小さい専門業者だが、延滞率の上昇を受けて経営にはやはり大きな支障が出てきているようだ。 4 月 9 日付のビジネスインサイダーの記事によると、既に 3 つの金融会社が倒産などによって事業を停止した。 業界全体で見ても、延滞率の上昇が目立ち始めた 2016 年後半からは新規のサブプライム自動車ローンの貸し出しを絞る会社が増えており、これが 2017 年の米国での自動車販売が 8 年ぶりに前年比減となった大きな理由の一つと見られている。

移動住宅である「モービル・ホーム」向けローンの延滞率も上昇傾向

スイス金融大手 UBS の調査によると、モービル・ホーム・ローンの延滞率が昨年 2% 上昇したと言う。 30 日以上支払いが遅れているローンの比率は現在約 5% と、2005 年以来の高水準となっている。 通常の住宅ローンの延滞率が景気回復の波に乗って引き続き低下傾向にあるのとは対照的だ。 モービル・ホームはアパートや一戸建てよりも住居費が安いため、低所得者や移民などが多く住んでいるとされる。 ここでも低所得者層の家計が、米国経済の表層的な活況と違って強いストレス下にあることが伺える。

米国経済に与える影響

サブプライム層という言葉に絶対的な定義はない。 ただ一般的に、米国特有の「FICO」という信用スコアが一定のレベル(660 や 620 など、利用目的によって基準が異なる)を下回った層がサブプライムとされる。 ただ、約 5 人に 1 人の米国人がそうした低スコア層なのだ。 昨年まで 8 年続いた株高も資産を持たない層には直接的な恩恵は少なく、トランプ政権が昨年成立させた大型減税もメリットは富裕層に偏っているとされる。

より一層の賃金上昇が低所得者層にまで行き渡らなければ、米連邦準備制度理事会 (FRB) が利上げするごとに、サブプライムローンや、延滞率が 11% と非常に高い学生ローンで貸し倒れがさらに増えていくことが懸念される。 金融危機時のサブプライム住宅ローンに比べて残高が小さいため、それほど大きな経済問題にはつながらないとする意見も聞かれるが、少なくとも大きな社会問題だ。

また、サブプライム層に貸し出しを行っている銀行以外の専門の金融会社は、その原資を銀行から借り入れている。 銀行は金融危機以降、直接的にサブプライムローンのリスクを取ることを避けつつ、金融会社に担保付で融資を行って収益を上げる方針に転換してきた。 4 月 10 日付の WSJ 記事によれば、2017 年末時点での銀行のノンバンク向け融資はほぼ 3,450 億ドルとなり、2010 年から 6 倍に増えた。 銀行の融資分類の中では、今では最大の融資先だ。

しかし間接的とは言え、銀行が貸し出した資金は貸出先でサブプライムローンに形を変え、そうしたローンがデフォルトして貸出先の経営が悪化すれば、その結果は銀行に戻ってくる。 今後はそうした影響がどの程度出てくるのかにも注意が必要だろう。 ある局面においては金融危機時より厳しい状況に低所得者層を置き去りにしている今回の米国の好景気。 そして、所得に関係なく一律に影響が及ぶ FRB の利上げは今後も続く見通しだ。 米国経済の見た目は今のところ盤石だが、水面下では綻びが広がっているようにも感じられる。 (ZUU = 5-12-18)


米に対抗、独自開発急ぐ中国「IT のコア技術、突破を」

中国政府やその意を受けた IT 企業が、米企業の技術や米国民のデータを不法に得ようとしている - -。 米政府は中国による知的財産の侵害を、そうした主張で長年批判してきた。 トランプ政権の発足後に圧力がさらに強まる中、中国側は反発するとともに、独自技術の開発力を強めようとする動きも出始めている。

米政権は昨年末の国家安全保障戦略で、中国などを念頭に「米国の知的財産やデータを盗んで悪用し、我々の政治に介入し、航空宇宙産業を狙い、重要なインフラを危険にさらしている」と指摘。 今年 3 月以降、中国の知財侵害を理由に計 1,500 億ドル(約 16.5 兆円)もの輸入品に関税をかける案を示し、貿易摩擦が本格化した。 世界知的所有権機関によると、2017 年の国際特許出願数で、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊 (ZTE) は 1、2 位を占めた。 (ワシントン = 青山直篤、北京 = 福田直之、asahi = 5-4-18)

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トランプ政権、中国 IT 狙い撃ち 摩擦に拍車、困惑も

トランプ米政権の保護主義政策で激化する貿易摩擦を巡り、北京での米中通商協議が 2 日間の日程で 3 日始まった。 米国は中国の台頭が技術や軍事上の優位を揺るがすと懸念し、最近は中国の大手 IT 2 社、華為技術(ファーウェイ)や中興通訊 (ZTE) を狙い撃ちにした排除や制裁も繰り出し、圧力を強める。 その強硬姿勢には米国内でも困惑の声が出ている。

米中協議には、米国側はムニューシン財務長官やロス商務長官、ライトハイザー通商代表、ナバロ大統領補佐官ら経済閣僚が総出で参加。 中国の劉鶴(リウホー)副首相らと会談する。 トランプ政権の通商政策での最大の標的が中国製品だ。 3 月以降、鉄鋼・アルミ製品への関税や、知的財産侵害を理由とした制裁関税案を立て続けに表明。 知財では「米企業や国民のデータを盗んでいる」として、安全保障上の脅威を強調する。 次世代通信規格「5G」など軍事に直結する技術覇権争いが背景だ。 (ワシントン = 青山直篤、北京 = 福田直之、asahi = 5-4-18)

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スマホ世界供給に影 中国通信機器 ZTE に米制裁

【北京 = 中村裕】 米中貿易摩擦が世界のスマートフォン(スマホ)や通信設備のサプライチェーンに影を落とし始めた。 米商務省が 16 日に米企業に対して中国通信機器大手の中興通訊 (ZTE) との取引を今後 7 年という長期間禁じることを決めた影響で、同社の生産は「多くが停止状態だ。(関係者)」 停止が長引けば ZTE の経営だけでなく日米企業の供給や調達にも影響を及ぼす。

「クアルコムやインテル、ブロードコムなど(米国の)取引先との電話や技術交流が禁止になった。」 ZTE 関係者は諦め半分にこう話す。 中国メディアも「ZTE の在庫はあと 1 カ月で尽きるが、すでに生産ラインは現在ほぼ中止状態だ」と伝えている。 取引禁止令が出たのは、ZTE が 2010 - 16 年の長期にわたって米国の輸出規制に違反し、ダミー会社を使うなどして米国からイランや北朝鮮に巧みに通信機器を輸出していたためだ。 ZTE は認め、17 年 3 月に罰金(約 1,300 億円)を支払うことで双方が合意した。

しかしその後も ZTE は虚偽報告を続けたため、米当局は 16 日、今回の新制裁に踏み切った。 ZTE は中国を代表する大手国有上場企業。 米国政府の新制裁は「スマホ・通信設備という中国政府の後ろ盾を得た重要産業の大手企業を狙い撃ちしたものだ(関係者)」との見方が多い。 スマホ業界で ZTE の存在感は増している。 17 年の世界出荷台数は約 4,300 万台で世界シェアは 9 位。 7 割は海外向けで、特に米国が 2,100 万台と約半分を占める。 米国シェアは約 12% とみられ第 4 位だ。

中国企業の ZTE がなぜ、米企業との取引停止で苦境に陥ったのか。 スマホの中核技術を米企業に頼っているからだ。 一つはスマホの頭脳となる半導体で、米大手のインテルやクアルコムから大部分を調達する。 ZTE 製スマホの部品数の約 3 割は米企業製だ。 もう一つはスマホ用基本ソフト (OS) で、米アップルの「iOS」と米グーグルの「アンドロイド」の実質 2 つしかない。 ZTE はアンドロイド製 OS を使う。

次世代の高速通信の中核技術「5G」についても、ZTE はインテルやクアルコムと 2 月末に開発の協力を進めると発表したばかり。 成長事業も中止となる公算だ。 米中摩擦は中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)にも影響を与えそうだ。 米連邦通信委員会 (FCC) は 17 日、米国内の通信会社に対し、安全保障上の観点から外国企業からの通信機器の調達を禁じる方針を決めた。 念頭にはファーウェイと ZTE がある。

2 社の通信機器が中国政府のスパイ活動に使われる恐れがあるという。 ともに中国共産党と非常に近い関係にあると指摘されている。 米議会は既に 12 年に米国企業に対し、同 2 社の通信機器を使わないよう求めていた。 今回の新規制で 2 社からの調達は禁止となる。 新制裁は米企業にも影響が及ぶ。 クアルコムやインテルの通信機器用チップの多くが ZTE とファーウェイの 2 社向けとされる。 米中摩擦が長引けば、米国勢も供給先の見直しを迫られる。 (nikkei = 4-24-18)


米、ロシア企業に追加制裁へ シリア化学兵器の責任問い

米国のヘイリー国連大使は 15 日、米 CBS テレビのインタビューで、米財務省がロシア企業などへの追加制裁を科す方針だと明らかにした。 シリアのアサド政権の後ろ盾となっているロシアが、シリアでの化学兵器使用を止めなかったことへの措置とみられる。 ムニューシン財務長官が 16 日にも公表するという。 ヘイリー氏は、制裁は「アサド政権と化学兵器使用に関係する機材を取り扱う企業などに直接及ぶ」と述べた。 アサド政権の化学兵器開発に関与したとしてロシア企業などを対象に、米国内の資産を凍結し、米国人との商取引も禁じる模様だ。

また、トランプ米大統領が、シリアからの米軍撤収の期待を語っていたことについて、ヘイリー氏は「どこかの時点で米軍を(米国に)戻したいという趣旨」と早期撤退を否定。 米軍撤収には、化学兵器が二度と使われない状況を確認すること、過激派組織「イスラム国 (IS)」が完全に除去されることなど、達成するべき条件があると説明した。 (ニューヨーク = 金成隆一、asahi = 4-16-18)

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米がシリア攻撃、軍関連施設にミサイル 英仏と共同作戦

トランプ米大統領は 13 日午後 9 時(日本時間 14 日午前 10 時)のテレビ演説で、内戦が続くシリアでアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、同政権軍の化学兵器関連施設への攻撃命令を下したと発表した。 米軍は英仏と共同で攻撃した。 トランプ政権による化学兵器使用に絡むシリアへの攻撃は昨年 4 月に続き 2 回目。 アサド政権の後ろ盾になっているロシアが反発し、米ロの緊張が高まるのは必至だ。

トランプ氏はホワイトハウスで声明を発表し、「シリアの独裁者アサド(大統領)の化学兵器能力に関係する標的を精密に攻撃する命令を下した」と述べた。 地中海東部に展開する米駆逐艦などからミサイルを発射したとみられる。 国防総省によると標的は 3 カ所。 @ 首都ダマスカス近郊の化学・生物兵器に関する研究や開発、製造、試験を担う施設、A 主にサリンが保管されているとみられる中部ホムス西郊の化学兵器貯蔵施設、B ホムスにある化学兵器の装備貯蔵施設と、重要な戦略指揮所が含まれた施設 - - という。

国防総省によると、攻撃当初、シリア軍から反撃があったが、米側に死者などは出ていないという。 トランプ政権が今回の軍事行動に踏み切ったのは、今月 7 日、シリアの首都ダマスカス近郊東グータ地区の町ドゥーマで、化学兵器を使用したとみられる攻撃があったためだ。 トランプ氏は「人間の仕業ではなく、モンスターの犯罪だ」と批判。 今回の攻撃の狙いについて「化学兵器の使用抑止を強く確立するためだ」と説明した。 国防総省で記者会見したダンフォード米軍統合参謀本部議長は「シリアが持つ化学・生物兵器に関する研究や開発、利用する能力を低下させる。 長年にわたる研究開発データや装備品などを失うだろう。」と語った。

トランプ氏は、アサド政権の後ろ盾になっているロシアとイランを名指しして「罪なき人々の大量殺害に関係したいのか」と迫り、「ならず者国家や残忍な独裁者を支援することで成功する国はない」と断じた。 またロシアについて、2013 年に決めたシリアの化学兵器廃棄に失敗したと指摘。 「今日の行動はロシアが約束を守らなかったことに直結する結果だ」と批判した。 その上で「ロシアは暗い道を進み続けるのか、平和と安定の力になる文明国家の仲間入りをするのか決めなければならない」とした。

米政権は昨年 4 月にもアサド政権軍がシリア北西部で化学兵器を使用したとして、シリア中部の政権軍基地に巡航ミサイルを発射し、戦闘機約 20 機を破壊した。 (ワシントン = 杉山正、土佐茂生、asahi = 4-14-18)


サムスン電子、営業利益は四半期で過去最高 半導体好調

韓国の電機最大手のサムスン電子は 6 日、今年 1 - 3 月期決算(速報値)を発表した。 本業のもうけを示す営業利益は前年同期より 57.6% 増の 15 兆 6 千億ウォン(約 1 兆 5,700 億円)となり、四半期での過去最高を更新した。 売上高は前年同期比 18.7% 増の 60 兆ウォン(約 6 兆 400 億円)。 ディスプレー部門はふるわなかったが、携帯電話やサーバー向け半導体メモリーの需要増で、世界シェア首位の半導体事業が引き続き好調だった。 サムスン電子は 2017 年の連結決算で営業利益は過去最高の 53 兆 6,500 億ウォン(約 5 兆 4 千億円)となり、初めて 5 兆円台の大台に乗った。 (asahi = 4-6-18)

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サムスン営業利益、初の 5 兆円超え 17 年連結決算

韓国の財閥系電機最大手のサムスン電子は 31 日、2017 年の連結決算を発表した。 本業のもうけを示す営業利益は過去最高の 53 兆 6,500 億ウォン(約 5 兆 4,400 億円)で、初めて 5 兆円台の大台に乗った。 売上高も前年比 18.7% 増の 239 兆 5,800 億ウォンで過去最高だった。 スマートフォンやサーバー向けの需要急増で価格が高止まりしている半導体事業の営業利益は約 35 兆 2 千億ウォンで、全体の 65% を占めた。 同社は、半導体を原動力とした好業績は今後も続くとみている。

一方で、同社の実質トップで創業家の李在鎔(イジェヨン)副会長は、朴槿恵(パククネ)前大統領への贈賄事件で昨年 8 月に一審で懲役5年の実刑判決を受け、勾留が続く。 2 月に二審判決が予定される中、社内では、オーナー経営者の不在で新たな成長分野への大規模投資や企業合併・買収 (M & A) の決断が滞ることに焦燥感も広がっている。 (ソウル = 武田肇、asahi = 1-31-18)

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創業家不在でも空前の利益 「王朝」サムスン、危機感も

韓国の財閥系電機最大手のサムスン電子が、半年以上もオーナー経営者不在のまま、空前の利益をたたき出した。 半導体やスマートフォン事業が好調なためで、今期の営業利益は 5 兆円の大台に乗ることがほぼ確実だ。 ただ、「船団長がいない状態(同社幹部)」の長期化で、成長分野への大規模投資や企業合併・買収 (M & A) の決断もままならず、社内には危機感が募っている。

サムスン電子は 13 日、2017 年 7 - 9 月期の決算(速報値)で、本業のもうけを示す営業利益が 14 兆 5 千億ウォン(約 1 兆 4,500 億円)に達し、四半期決算としては過去最高益を更新したと発表した。 通期の業績でも、営業利益が過去最高の 50 兆ウォン(約 5 兆円)を超えるとみられる。 営業利益の 5 兆円超えは、米アップルなど世界でも数社とされる。

ところが同じ日、決算のほかにも電撃的な発表があった。 半導体事業の責任者でもある権五鉉(クォンオヒョン)副会長兼最高経営責任者 (CEO) が、任期満了となる来年 3 月で経営の第一線から退くと公表したのだ。 権氏の声明文には危機感がつづられていた。 「今は幸いにも最高の実績をあげているが、これは過去の決断と投資の結実に過ぎない。 新たな成長の原動力を探すことを考えられないでいる。」

背景にあるのは、経営に強く関与してきた創業家の不在期間が 8 カ月を超えたことだ。 オーナー経営者で創業家 3 代目の李在鎔(イジェヨン)副会長は 2 月、朴槿恵(パククネ)前大統領への贈賄事件で逮捕された。 8 月には一審で懲役 5 年の実刑判決を受け、勾留が続く。 父でカリスマと呼ばれた 2 代目の李健熙(イゴンヒ)会長は、病に倒れて久しい。 (ソウル = 武田肇、asahi = 10-27-17)


「6 分 20 秒間で …」若者ら演説 銃規制行進に 80 万人

米フロリダ州の高校での銃乱射事件を受けて、高校生が呼びかけた「私たちの命のための行進」が 24 日、首都ワシントンで開かれた。 NBC テレビによると約 80 万人が参加。 全米で約 800 カ所、欧州やアジアなどでも集会が開かれ、銃規制と学校の安全を訴えた。

ワシントンでは、連邦議会前の大通り約 1 キロがプラカードを掲げた群衆で埋まり、周辺の道路にあふれ出した。 特設ステージでは、事件のあったマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生徒や、銃で家族を亡くした若者たちが次々と演説した。 同校生徒のエマ・ゴンザレスさん (17) は「6 分 20 秒間で 17 人の友人が奪われた」と話し、犠牲者の名前を読み上げた後、突然口をつぐんだ。 約 4 分半、ゴンザレスさんが涙を流しながらまっすぐ前を見つめる間、会場からは「Never Again (二度と起こさない)」の合唱が起きた。 アラームの音が鳴り、ゴンザレスさんが再び語り出したのは、登壇してからちょうど 6 分 20 秒後。 「誰かに任せる前に、命のために闘おう」と訴えた。

会場では 11 月の連邦議会の中間選挙や 2020 年の大統領選挙を見据えて、ボランティアが若者に有権者登録を促した。 同校のキャメロン・キャスキーさん (17) はステージで「政治家は我々の声を代弁するか、さもなければ退場して。選挙が近づいていることを知って欲しい」と話した。 ヘイディ・アルバレスさん (16) は 12 年に乱射事件があったコネティカット州の街からバスで 6 時間かけて来た。

「(12 年の事件は)みんなのトラウマになっている。 でも、悲劇は何度も起きている。 やることは分かっている。 銃の規制を厳しくすること。 長い時間がかかるが、今行動しなければならない。」と話した。 この日、トランプ大統領はフロリダ州の別荘に滞在。 ホワイトハウスは「勇気のある若い米国人が(表現の自由を定めた)憲法修正第 1 条を行使することをたたえる。 子どもの安全を守ることが大統領の最優先事項だ。」との声明を出した。 (ワシントン = 香取啓介)

「次は私?」サンフランシスコでもデモ

ワシントンから遠く離れた西海岸でも各地で「私たちの命のための行進」が行われた。 サンフランシスコでは小さな子どもから大人までデモに加わり、市内中心部の大通りを行進した。 「今日 1 日で何人が殺された、NRA?」 参加者たちは、銃規制を拒み、政治家に献金を続けるロビー団体「全米ライフル協会 (NRA)」に怒りの声を張り上げながら歩いた。 手には段ボール紙などに「次は私?」、「もう遺書を書かないといけないの?」などと手書きしたプラカード。

デモに参加した中学 1 年のミアさん (12) は「学校に銃を持った人が入ってきて、先生から体育館の壁に隠れるように言われたことがある。 学校に行くのを怖がらないといけないなんておかしい。」 手には「2024 年の有権者」と書いたプラカードを掲げた。 別の中学に通う 1 年のデージー・ペリスコットさん (12) も普段から学校で乱射事件に備えた訓練をしているという。 「ワシントンの政治家は、もう一度学校を安全な場所にするべきだ。 銃規制は一つのやり方だと思う。」と話した。 (サンフランシスコ = 宮地ゆう、asahi = 3-25-18)

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全米の高校生「もうたくさんだ!」 乱射事件 1 カ月で抗議

米フロリダ州の高校での銃乱射事件から 1 カ月となる 14 日、全米各地で高校生らが「もうたくさんだ!」を合言葉に抗議活動を行った。 事件の犠牲者 17 人にあわせ、午前 10 時からの 17 分間、教室を離れ街頭やグラウンドで無言でプラカードを掲げたり、地面に横たわったりして、銃規制の強化と学校の安全確保を求めた。 主催者団体によると、抗議活動は全米 3 千カ所で行われた。

ワシントンでは、ホワイトハウス前に約 2 千人が集まり、17 分間の無言の抗議の後、「変化が必要だ」などと声を上げながら連邦議会議事堂まで行進した。 近郊のメリーランド州から来た高校生ルーシー・ワードックさん (16) は「授業を受けるより、政治を変える方が大切だ。」 別の高校の教師サミール・ポールさん(29)は「教師に武装させる案が出ているが全く馬鹿げている」と話した。

今回、授業を抜け出して抗議活動に参加しないよう呼びかける自治体もあったが、多くは黙認。 欠席扱いにしたところもあった。 24 日には、ワシントンで高校生らの大規模集会が予定されている。 一方、この日議会下院で学校の安全を守るために、年間 5 千万ドル(約 53 億円)を訓練や警察との連携にあてる法案が可決した。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 3-15-18)

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政治家に「恥を知れ」 現場近くで銃規制強化求めるデモ

米フロリダ州南部の高校での銃乱射事件を受け、現場近くの拠点都市フォート・ローダーデールで 17 日、銃規制強化を求めるデモ集会が開かれた。 事件が起きた高校の生徒も参加し、トランプ大統領ら規制に消極的な政治家らに「恥を知れ」と訴えた。 元生徒のニコラス・クルーズ容疑者 (19) が半自動ライフル銃を乱射した事件では、生徒ら 17 人が犠牲になった。 CNN テレビによると、集会で登壇した同校生徒のエマ・ゴンザレスさんは「友達と週末の予定を立てる方が銃を買うよりも難しいなんて到底理解できない」と、同州の銃規制の緩さを批判した。

米国では乱射事件のたびに規制強化を求める声が強まるが、トランプ大統領や共和党議員らに献金し、強い政治力を持つ「全米ライフル協会 (NRA)」の抵抗で進んでいないのが現状だ。 ゴンザレスさんが「NRA から献金を受け取っている政治家は恥を知れ」と気勢を上げると、参加者も同調した。

今回の事件では、直後から関係者が銃規制の強化を訴える姿が目立つ。 14 歳の娘が犠牲になった母親は CNN の取材に「なぜ学校に行って子どもが殺されなければならないのか。 トランプ大統領、何とかして。 行動が必要。」と声を張り上げた。 同校の複数の生徒らも交流サイトなどに「みんな目を覚まして。 何とかしなければいけない。」 「これは銃の問題」、「自由も大事だけど、安全は別問題だ」などと相次いで投稿している。

一方、トランプ大統領は 17 日、「(野党の)民主党はオバマ政権で上下両院の多数を押さえていた時になぜ銃規制の強化をしなかったのか。 本当はしたくないからだ。 (規制強化の訴えは)口だけだ。」とツイートした。

クルーズ容疑者が危険な行動に走る兆候があったにもかかわらず、当局が見逃していたことも分かってきた。 フロリダ南部の地元紙サン・センティネルによると、同容疑者は 1 年半ほど前に交流サイトへの投稿内容を巡り州の「子ども家庭支援局」の調査を受けたが、「危険性は低い」と判断されたという。 また、連邦捜査局 (FBI) は今年 1 月、容疑者が学校を襲う可能性があると通報を受けたにもかかわらず、捜査しなかったことを認めている。 (ニューヨーク = 鵜飼啓、asahi = 2-18-18)