10 - 12 月 GDP 年率 0.5% 増、28 年ぶり 8 期連続プラス

昨年 10 - 12 月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は 8 期連続のプラス成長となった。 8 期連続は、12 期連続となった 1989 年 1 - 3 月期以来 28 年ぶり。 設備投資の増加基調が継続し、個人消費も持ち直した。 市場予想は下回った。 内閣府が 14 日発表した。

キーポイント

・ 実質国内総生産は前期比 0.1% 増、年率換算 0.5% 増(予想はそれぞれ 0.2% 増、1.0% 増)
・ 個人消費は前期比 0.5% 増(予想は 0.4% 増) - プラスは 2 期ぶり
・ 設備投資は 0.7% 増(予想は 1.1% 増) - プラスは 5 期連続

背景

茂木敏充経済財政政策担当相は発表後に会見し、5 年間のアベノミクスによりデフレではない状況や適当な為替水準が実現したことを挙げ、「政府の施策と民間の活力が 8 期連続のプラス成長につながった」と述べた。 個人消費や設備投資が好調なことから「民需の増加に支えられた成長となっている」と分析した。 日本銀行が公表した 1 月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2017 年度の実質 GDP 成長率の見通し(政策委員の中央値)を 1.9% 増に据え置いた。 先行きも海外経済が緩やかな成長を続ける下で、緩和的な金融環境と政府の大型経済対策による下支えを背景に景気の拡大が続くとみている。

エコノミストの見方

大和証券の永井靖敏チーフエコノミストは電話取材で、日本経済を弱めに見積もっており「予想通りの内容だった」と分析。 所得が増加しないと日本経済の「自律的な回復は難しい」との見方を示した。 一方、個人消費は「予想よりも強かった」と話した。

SMBC 日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストはリポートで「日本経済に対する認識を大きく変えるような内容ではない」と指摘した。 世界経済の拡大を受けて輸出が堅調に推移し、18 年 1 - 3 月から 18 年度にかけても「拡大基調を維持するだろう。」とみている。

詳細

・ 公共投資は 0.5% 減
・ 在庫の GDP 全体への寄与度はマイナス 0.1 ポイント
・ 外需の寄与度は横ばい
・ GDP デフレーターは前年同期比横ばいで前期 (0.2%) から鈍化
・ 7 - 9 月期は前期比 0.6% 増、前期比年率 2.2% 増と、2 次速報値(それぞれ 0.6% 増、2.5% 増)から小幅下方修正
・ 17 年の名目 GDP は 546 兆円、2 年連続で過去最高更新 (日高正裕、Bloomberg = 2-14-18)


17 年の実質賃金、2 年ぶりマイナス 物価上昇が影響

厚生労働省が 7 日発表した 2017 年の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数が前年を 0.2% 下回り、2 年ぶりに低下した。 名目賃金は上昇したが、物価の上昇に追いついておらず、実質的な購買力を示す実質賃金は減少した。 名目賃金にあたる労働者 1 人当たり平均の月額の現金給与総額(パートを含む)は前年比 0.4% 増の 31 万 6,907 円で、4 年連続で増えた。 このうち基本給などの「きまって支給する給与」は同 0.4% 増の 26 万 793 円、賞与などの「特別に支払われた給与」は同 0.4% 増の 5 万 6,114 円だった。

一方、実質賃金の算出に用いる消費者物価指数は、電気料金やガソリン価格が上がった影響で前年より 0.6% 上昇。 このため、実質賃金指数は前年より 0.2% 低下した。

現金給与総額を雇用形態別にみると、フルタイム労働者は前年比 0.4% 増の 41 万 4,001 円、パート労働者は 0.7% 増の 9 万 8,353 円だった。 パートの時給は上昇が続いており、17 年は前年比 2.4% 増の 1,110 円で、調査を始めた 1993 年以降の最高値を 7 年連続で更新。 一方、09 年から増加が続くパート労働者比率は、17 年は前年比 0.06 ポイント増の 30.77% と微増にとどまった。 17 年 12 月の実質賃金指数は、前年同月比 0.5% 減。 労働者 1 人当たり平均の現金給与総額(パートを含む)は同 0.7% 増の 55 万 1,222 円だった。 (asahi = 2-7-18)

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実質賃金、11 カ月ぶりに増加 = 11 月の毎月勤労統計

[東京] 厚生労働省が 9 日発表した 11 月の毎月勤労統計調査(速報)では、名目賃金に当たる現金給与総額が前年比 0.9% 増の 27 万 8,173 円と、4 カ月連続で増加した。 実質賃金も 0.1% 増と 11 カ月ぶりの増加となり、厚労省は「賃金は基調として緩やかに増加している。」としている。 給与総額のうち、所定内給与は前年比 0.4% 増の 24 万 1,303 円と 8 カ月連続で増加した。 所定外給与も 2 カ月ぶりに増加し、同 2.6% 増の 2 万 0,467 円だった。 (Reuters = 1-9-18)

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賃上げ 3% の社会的期待を意識して前向きな検討を = 経団連会長

[東京] 日本経団連の榊原定征会長(東レ相談役)は 5 日、経済 3 団体新年祝賀パーティー後の記者会見で、デフレ脱却に向けて「賃金引き上げのモメンタムを一層強化したい」とした上で、「3% の賃金引き上げという社会的期待を意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討を望みたい」と述べ、会員企業に積極的な対応を求めた。 これに先立ち、パーティーであいさつした安倍晋三首相は「経済の好循環を回すため、3% の賃上げをお願いしたい」と要請した。

榊原会長は「収益が拡大している企業、高水準で推移している企業、中期的に収益体質が改善した企業には積極的な処遇改善に向けた検討を呼び掛けていく」と語った。 正式には 16 日に公表する経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)で基本スタンスを提示する。 日本商工会議所の三村明夫会頭(新日鉄住金相談役名誉会長)も「上げられるところは上げるべきだ」と足並みをそろえた上で、「内部留保が現金で積み上がっているというのは経営者として一番恥ずかしいと思わないといけない」と語った。

経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)は、「給料を上げたいと経営者はみんな思っている。 ボーナスを相当増やしてトータルで 3% だとか 4% だとかいう会社も結構出てくるのではないか」との見通しを示した。

一方、賃上げの前提となる景況感について、榊原会長は「日本経済は景気の拡大基調が継続し、政府の 18 年度成長見通し 1.8% は達成可能だ」との見解を示したが、三村会頭は「(日本の)潜在成長率は 1.1% で、これを大幅に上回る成長が 2 年も 3 年もというのは無理。 (18 年度は) 1.4 - 1.5% がひとつのバランスだ」と政府見通しよりも慎重な見方を示した。 三村会頭は「大企業に比較して、中小企業の良くなり方は緩慢だ」とした上で、「中小企業の生産性を徹底的に引き上げるしか解はない」と述べ、政府や大企業の支援を含めて対応が必要との認識を示した。 (Reuters = 1-5-18)


日本株 1 年超ぶり下落率、米国ショック直撃 - 金利高警戒し全業種安い

5 日の東京株式相場は大幅続落し、主要株価指数の下落率は 1 年 3 カ月ぶりの大きさとなった。 米国の急激な金利上昇による景気や株式市場への悪影響が懸念され、電機や機械、銀行、情報・通信株など時価総額上位セクターのほか、石油や非鉄金属株など東証 1 部 33 業種は全て安い。 TOPIX の終値は前週末比 40.46 ポイント (2.2%) 安の 1,823.74、日経平均株価は 592 円 45 銭 (2.5%) 安の 2 万 2,682 円 08 銭。 TOPIX は昨年大納会の 17 年 12 月 29 日以来、日経平均は同 12 月 15 日以来の安値。

三菱 UFJ 国際投信・戦略運用部の向吉善秀シニアエコノミストは、「先進国では賃金の上昇率が 3% になってくると、過去は CPI が 2% 程度まで上がってきている。 市場はこれまで、米国の物価は落ち着いているという判断だったが、予想外の賃金上昇で利上げペースは悠長なことを言ってられなくなった」と言う。 米国株はもともとバリュエーションが高く、「金利上昇が意識されるようなら、もう少し調整があってもおかしくない」と懸念を示した。

米労働省が 2 日に発表した 1 月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比 20 万人増え、エコノミスト予想の 18 万人を上回った。 前月は 16 万人増(速報値 14 万 8,000 人増)に上方修正された。 平均時給は前年比 2.9% 増と、市場予想(2.6% 増)を上回り、2009 年 6 月以降で最大。 ダラス連銀のカプラン総裁は、18 年は米経済にとって非常に力強い年となり、国内総生産 (GDP) 成長率は 2.5 - 2.75% との見通しだと語った。 利上げについては、「基本シナリオは 3 回の緩和解除だと考えている。 回数はそれを上回る可能性もあり、今後の状況を見守る必要がある。」とした。

2 日の米 10 年債利回りは一時 14 年 1 月以降で初めて 2.85% を超え、ダウ工業株 30 種平均は 665.75 ドル (2.5%) 安の 2,5520.96 ドルと下げ幅で 08 年 12 月以来、下落率で 16 年 6 月以来の大幅安となった。 日本時間で週明け 5 日になっても米金利は上昇、S & P 500 種 E ミニ先物は軟調に推移し、米国株の先安警戒感がきょうの日本株にも悪影響を及ぼした。

東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、「リーマン・ショック後の米国株高は 1 株利益と PER の上昇が背景だった。 しかし、現在の米国のイールドカーブや株式益回りの水準から考えると、長期金利が 2.8% を超えれば超えるほど、PER は下がらざるを得なくなる。」と分析。 米国は景気が良いところに「減税効果がこれから出てくる上、インフラで財政をさらに吹かそうとしている。 景気が良くなればなるほど、インフレ懸念から株が下がりかねない。」とも話した。

きょうの TOPIX と日経平均の下落率は、米大統領選を受けた 16 年 11 月 9 日 (4.6%、5.4%) 以来の大きさを記録。 水戸証券投資顧問部の酒井一チーフファンドマネジャーは、「米国株は高値もみ合いか、下落トレンドに転じるか五分五分となってきた。 少なくとも上昇トレンド回帰は望めない。」と指摘。 金利が明確に低下しない限り、米国株は乱高下する可能性があり、日本株も上昇相場の先導役だった東京エレクトロンが上げ終了の状況となっていることから、日経平均は 2 万 2,000 円が下値めどとして意識されやすいとの認識を示した。

もっとも、決算内容が評価されたソニーやホンダは逆行高。 日本銀行の上場投資信託 (ETF) 買いへの期待感もあり、一時下げ幅が 600 円を超えた日経平均は午後後半にやや下げ渋る場面もあった。 三菱国際の向吉氏は、「米金利が 3% を超えて上がり、マイナス成長の懸念が出てくるにはまだ少し早い。 現状では米景気に対する市場の見方は崩れておらず、日本経済は加速気味で推移しそう。」と予想。 日経平均は PER14 倍台半ばの 2 万 2,000 円近辺まで下がってくると、「割安に放置されているとの見方も出てくる」と言う。

東証 1 部 33 業種は全て下げ、下落率上位は石油・石炭製品、非鉄金属、鉱業、ガラス・土石製品、パルプ・紙、機械、不動産、サービスなど。 売買代金上位では、1 月の国内ユニクロの既存店売上高が前年同月比マイナスだったファーストリテイリング、決算にポジティブサプライズがなかったと受け止められたローム、18 年 3 月期の営業利益計画を下方修正したフジクラが安い。 決算が好感されたソニーやホンダ、宇部興産は高い。 (長谷川敏郎、Bloomberg = 2-5-18)


消費支出、12 月は -0.1% 3 カ月ぶり減少 = 総務省

[東京] 総務省が 30 日発表した昨年 12 月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く 2 人以上の世帯)の消費支出は 32 万 2,157 円で、前年同月に比べて実質で 0.1% 減少した。 減少は 3 カ月ぶり。 名目は同 1.2% 増だったが、生鮮食品の価格高騰を受けて実質ベースで減少した。 総務省は消費の基調判断を「持ち直してきている」に据え置いた。 ロイターが民間調査機関に行った聞き取り調査では前年比 1.7% 増が予想されていたが、結果はこれを下回った。 季節調整済み前月比は 2.5% 減と 2 カ月ぶりに減少した。

12 月は平年よりも気温が低めで、降雪量も多かった。項目別にみると住居が前年比で実質 23.3% 減と大きく減少した。 設備修繕・維持といったリフォーム関連が不調で、前年の反動に加え、天候要因が響いた可能性がある。 また、自動車購入など交通・通信や、授業料などの教育も減少した。 一方、パック旅行など教養娯楽や電気代をはじめとする光熱・水道、保険医療などが増加。 光熱・水道は気温の低下、保険医療はインフルエンザの流行が支出を押し上げたとみられる。 12 月の勤労者世帯の実収入は 1 世帯当たり 94 万 0,875 円となり、前年比で実質 0.4% 増と 7 カ月連続で増加した。 名目は同 1.7% 増だった。 (Reuters = 1-30-18)

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12 月消費者態度指数4カ月ぶり低下、「物価上昇」 80% に上昇 = 内閣府

[東京] 内閣府が 9 日に発表した 12 月消費動向調査によると、消費者態度指数(2 人以上の世帯・季節調整値)は、前月から 0.2 ポイント低下し 44.7 となった。 4 カ月ぶりに前月を下回った。 「暮らし向き」、「耐久消費財の買い時判断」、「雇用環境」の 3 項目が前月から低下、「収入の増え方」は横ばい。

内閣府は、消費者態度指数からみた消費者マインドについて「持ち直している」として判断を据え置いた。 1 年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が前月から 1.4% ポイント増加し、80.0% を占めた。 5 カ月連続の増加。 「低下する」も前月からわずかに増加、「変わらない」が減少した。 (Reuters = 1-9-18)

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11 月の消費支出、前年同月比 1.7% 増 家計調査

総務省が 26 日発表した 11 月の家計調査(速報)によると、2 人以上の世帯が使ったお金は 27 万 7,361 円だった。 物価変動の影響を除いた実質で、前年同月より 1.7% の増加。 また、同省が同日発表した 11 月の消費者物価指数(2015 年 = 100)は、生鮮食品を除く指数が前年同月より 0.9% 上昇して 100.7 だった。 (asahi = 12-26-17)


基礎的財政収支、20 年度の赤字幅拡大 財政の悪化進む

内閣府は 23 日、国の財政見通しを示す最新の試算を公表した。 財政再建の指標として政府が 2020 年度の黒字化を目指していた国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス = PB)は、高成長を見込んでも 20 年度の赤字幅が 10.8 兆円に拡大。 安倍晋三首相が昨年秋に決めた消費税収の使途拡大によって、財政の悪化が一段と進む。

PB は、黒字になると、社会保障や公共事業などの政策経費を借金以外の税収などで賄えることを示す指標で、内閣府が年 2 回、改定値を公表している。 今回の試算では、19 年 10 月の消費増税で得られる税収増のうち、借金返済に回すはずだった 1.7 兆円分を教育無償化などに使うとの安倍首相の方針を反映。 生産性の伸びを見直すなどしたため、経済成長率も従来より引き下げられた。

この結果、高い成長を見込んだ場合でも、20 年度の PB の赤字幅は、昨年 7 月の試算時の 8.2 兆円から 2 兆円超も拡大。 高齢化で伸びる社会保障費などの歳出の抑制策を何も講じない場合、PB が黒字になる時期は従来の試算の 25 年度から 27 年度へと 2 年遅れる見通しとなった。 安倍首相は昨年 9 月に衆院解散を表明した時、消費税収の使途変更と合わせて、PB を 20 年度に黒字化する目標の断念を表明した。 政府は今回の試算をもとに新たな PB の黒字化目標や達成に向けた歳出削減策などの計画を 6 月までにまとめ、「骨太の方針」に盛り込む方針だ。

焦点は黒字化の時期を 27 年度からどれだけ前倒しできるかだ。 財政再建に本腰を入れ、黒字化の時期の大幅な前倒しを目指す場合、歳出の抑制を一段と進める必要がある。 だが、政府・与党内には経済成長を優先し、さらなる歳出拡大を求める声も根強く、調整は難航しそうだ。 (松浦祐子、asahi = 1-24-18)


景気「緩やかに回復」、総括判断 7 カ月ぶり上方修正 = 1 月月例経済報告

[東京] 政府は 1 月の月例経済報告で、「景気は緩やかに回復している」と総括判断を 7 カ月ぶりに上方修正した。 個人消費の持ち直しや雇用情勢の改善が寄与した。 この表現は消費税率 8% への引き上げ前の 2014 年 3 月以来。 海外経済では、世界景気が「緩やかに回復している」との見方を維持し、すべての項目を据え置いた。

内閣府が 19 日の関係閣僚会議に提出した。 総括判断は前月まで「緩やかな回復基調が続いている」としていたが、消費者マインドの持ち直しに加え、完全失業率の低下や有効求人倍率の上昇などを踏まえ、上方修正した。 個人消費は「緩やかに持ち直している」から「持ち直している」に、雇用情勢は「改善している」から「着実に改善している」に、それぞれ見直した。 輸出や輸入、生産などその他の項目は判断を維持した。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続く中で、「緩やかな回復が続くことが期待される」とする一方、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある」との認識を示した。 また、海外経済を巡っては、米国の景気は「着実に回復が続いている」と 10 カ月連続で判断を据え置いた。 中国やユーロ圏など、すべての国や地域の景気判断を変更しなかった。 (梅川崇、Reuters = 1-19-18)

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街角景気 12 月は好調な家計動向に一服感、年末商戦まだら模様に

[東京] 内閣府が 12 日に発表した 2017 年 12 月の景気ウオッチャー調査で、景気の現状判断 DI は前月比マイナス 0.2 ポイントの 53.9 と、5 カ月ぶりの低下となった。 昨年後半から上昇傾向を続けてきた家計動向に頭打ち感がみられ、クリスマス・年末商戦は好・不調が入り混じった状態となっている。 それでも横ばいを示す 50 の水準は 5 カ月連続で上回り、街角景気としては高水準が続いている。

家計関連のウォッチャーからは「ホテルの宿泊では高額プラン、レストランでは個室の需要が好調(近畿・高級レストラン)」、「来客数がプラスにシフト。 上質な商品を求める傾向が高くなっている。(四国・百貨店)」など、客単価上昇を示す声も散見される。 厳冬も後押ししている面があり「気温が低い日が続いたことから暖房器具などが良く売れている(北海道・家電量販店)」、「冷え込みによる防寒需要の高まりでコート等に動き(南関東・百貨店)」といった動きも寄与。

ただ 12 月は特にサービス・外食関連の動きの悪化が足を引っ張った。 「来客数が 1 割ほど減少している上に、客単価も 10% 程度落ちている(北関東・レストラン)」との声のほか、「クリスマス等各種イベントを実施したが、首都圏ファミリー層の集客が弱く 3 カ月前よりやや悪くなっている(甲信越・遊園地)」、「寒い日が続いているので入園者が減少(中国・テーマパーク)」など外出を控える動きもみられる。

企業部門は 17 年中は各月とも 50 を超える好況が続いた。 輸出関連の好調が内需にも波及している。 雇用部門は求人が増えて景況感は一段と上昇しているが、今月はやや低下。 「求職者の登録が減少し、マッチングに苦慮(沖縄・人材派遣会社)」している。 2 - 3 カ月先を見る先行き判断 DI は 52.7 で、前月比 0.7 ポイント低下。 2 カ月連続の低下となった。 内閣府は、景気ウオッチャー調査の判断の表現を「緩やかに回復している」で据え置いた。 (Reuters = 1-12-18)


11 月第 3 次産業活動指数は 105.9、前月比 1.1% 上昇 = 経産省

[東京] 経済産業省が 16 日発表した 11 月の第 3 次産業活動指数(季節調整済み、総合)は 105.9 (2010 年平均 = 100.0)で、前月比 1.1% 上昇した。

11 業種中、上昇方向に影響したのは 9 業種。 「卸売業」は鉱物・金属材料卸売業、各種商品卸売業、食料・飲料卸売業が寄与して 2.8% 上昇した。 「生活娯楽関連サービス」は食堂、レストラン、専門店や、パブレストラン、居酒屋が増加して 2.4% の上昇。 「情報通信業」はソフトウエア業が寄与して 1.8% 上昇した。 「運輸業、郵便業」は 1.9%、「小売業」は 1.7%、「医療、福祉」は 0.6%、「電気・ガス・熱供給・水道業」は 1.2%、「金融業、保険業」は 0.2%、「物品賃貸業(自動車賃貸業を含む)」は 0.4%、それぞれ上昇した。

一方、2 業種が低下方向に影響した。 「事業者向け関連サービス」は土木・建築サービス業が減少して 1.3% 低下。 「不動産業」は 0.2% 低下した。 (Reuters = 1-16-18)


日銀の出口早期化に潜む新興国からの資金逆流リスク

[ロンドン] 今週は日銀が長期国債買い入れを減額したことをきっかけに、大規模緩和の出口が予想より早まるのではないかとの懸念が浮上し、世界の金融市場に動揺が広がった。 特に新興国は、円高によって日本の投資資金が引き揚げかねないとみられ、通貨が軒並み値下がりした。 その後市場は落ち着きを取り戻したものの、日銀が既に日本国債の半分を購入してしまっている点を踏まえると、本格的な買い入れ縮小の時期は近づいているのかもしれない。 もしそれが実現すれば、円が高騰して日本勢の資金還流が進む恐れがある。

それが新興国にどの程度影響するのか予想は難しいが、今週の値動きは何らかの手掛かりになるだろう。 新興国通貨の対ドル下落率は 0.3 - 0.8% を記録。 対円ではトルコリラがおよそ 3% 下がり、ブラジルレアルとメキシコペソ、南アフリカランドの下落率は 1.5 - 2.5% だった。 UBS のストラテジスト、マニク・ナライン氏は「市場は日銀の動きを金融緩和がピークに達しつつあることの表れと解釈し、新興国通貨のクロス円相場が反応した。 われわれの分析からは、新興国株市場においてまだ米国の投資家の存在がずっと大きいが、日本勢の保有は増えていることが分かる」と述べた。

日本の個人投資家の新興国投資はつとに知られている。 だがそれだけでなく、2010 年に年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が新興国市場への資金配分を増やすと表明して以来、機関投資家の関心もゆっくりだが高まってきた。 国際金融協会 (IIF) のデータでは、2013 年以降の日本から新興国への資金流入額は約 660 億ドルで、投資先は債券と株式がほぼ半々だ。 このうち 100 億ドル程度が昨年 1 - 10 月に流れ込んだ。 昨年の新興国に流入した資金の総額は 2,350 億ドル。

日興アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、ラファエル・マレシャル氏は、同社に入った 2 年前から日本の資金運用担当者の新興国債券に対する投資意欲が上向いたと指摘し、その一因として新興国債が最近堅調に推移していることを挙げた。 昨年の新興国債のドル建てリターンは 14%。 ただ円がドルに対して 3.5% 上昇した影響で円建てリターンは目減りしている。

マレシャル氏によると、円が下落する公算は乏しい一方で、日本の金融政策は今後引き締め方向になりそうだ。 それでも新興国債のリターンは 7 - 10% と期待されるので、2 - 3% の円高程度では日本の投資家の買い意欲に水は差されないだろうという。 2014 年に落ち込んだ日本の個人投資家による新興国資産買いは、その後増大している。

ブラウン・ブラザース・ハリマンの推計に基づくと、日本の個人投資家向けに昨年 1 - 3 月に販売された新興国通貨建ての「売り出し債」は 39 億ドルに達した。 最も人気があったのはトルコリラ建て債で販売割合は全体の 28%。 次いでインドルピー建て、ブラジルレアル建て、メキシコペソ建て、ロシアルーブル建てが売られた。

今後新興国通貨のクロス円取引に悪影響を及ぼす可能性がある要素の 1 つは、貿易問題だ。 今週は中国政府が米国による保護貿易に対する報復措置として米国債購入の縮小や停止を検討中だと一部で報道され、円が急伸する場面があった。 ミレニアム・グローバル・インベストメントのグローバル経済戦略責任者クレア・ディソー氏は「米国の保護主義が再び強まるリスクは新興国全体、特にアジアにとってマイナスだ。 メキシコは既に北米自由貿易協定 (NAFTA) 再交渉からリスクにさらされている。」と述べた。 (Sujata Rao、Reuters = 1-14-18)


商工中金「4 年後の完全民営化を」 有識者会議が提言

国の制度融資で不正を繰り返した政府系の商工組合中央金庫(商工中金)のあり方を見直す有識者会議が 11 日、提言を取りまとめた。 不正の温床となった制度融資の「危機対応業務」を大幅に縮小し、経営陣はトップを含めて社外の人材を登用。 地域金融機関と連携して中小企業支援に特化し、4 年後の完全民営化を目指すよう求めた。

経済産業省の有識者会議(座長 = 川村雄介・大和総研副理事長)が昨年 11 月からの議論を踏まえ、11 日午前の会合で提言をまとめた。 ほぼ全店で不正があった「危機対応業務」は、リーマン・ショックなどの後もデフレ対策などを名目に続けられ、商工中金は不正に国の利子補給を受け、低利融資を行った。 有識者会議では「民業圧迫」への批判が強く、今後の危機対応業務は大規模災害など「真の危機時」に限定し、大幅に縮小するよう求めた。

経営陣が不正を黙認したことも問題視し、独立した第三者委員会を設けて経営をチェックすることや、取締役の過半数を社外から起用することも求めた。 一連の改革は、完全民営化の方向で今後 4 年間取り組む。 ただ、中小企業に政府系として存続を求める声があることにも配慮し、4 年後に改革の動向を検証したうえで、完全民営化するかどうかを判断する。 商工中金は政府が 46.5% を出資する。 かつての公的金融改革で完全民営化の方針が決まったが、リーマン・ショックなどで公的金融の必要性が高まったとして、2015 年に先送りされた。 (伊藤舞虹、asahi = 1-11-18)

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商工中金、ほぼ全店で不正 関与職員も数百人に

政府系金融の商工組合中央金庫(商工中金、社長 = 安達健祐・元経済産業事務次官)が国の制度融資で不正を繰り返した問題で、ほぼすべての店舗が不正に関わっていたことがわかった。 商工中金は全容を調査中で、月末にも結果を発表する。 関与した職員は数百人にのぼり、安達社長の辞任は避けられない情勢だ。 問題があったのは、景気悪化などで企業の経営が悪化した時に低利で国が貸す「危機対応業務」。 窓口となった商工中金は、実績を伸ばすため基準外の企業の経理資料を改ざん。 不正に国の利子補給金を受け取り、低利で貸していた。

昨秋の不正発覚後、商工中金の第三者委員会が融資の一部を調べ、さらに商工中金が全体を調査している。 これまでの調査で、不正がなかったのは数店にとどまった模様だ。 本支店など 100 店のうち 99 店で融資を行っており、ほぼ全店で不正があった。 関与した職員も数百人にのぼる。 第三者委の一部融資の調査では、35 店で 99 人が関与し、760 件、414 億円分の不正がわかった。 全体の調査で、不正に関与した店舗と職員は拡大し、件数や融資額も増える見通しだ。 9 月末の予定だった結果公表は、不正の関与者が調査チームにいたことが発覚し、1 カ月遅れの 10 月末以降となる見通しだ。

第三者委は営業現場への「ノルマ」が背景にあるとしたが、安達社長は「営業店が誤解した」などとして経営責任を明確に認めていなかった。 経営陣は報酬を一部返納したが、不正がほぼ全支店に広がり、安達社長の辞任を含む経営陣の交代は不可避の情勢となっている。 (福山亜希、榊原謙、asahi = 10-14-17)

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商工中金の不正融資 414 億円 本部も隠蔽関与

政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金)が、国の制度融資で不正な貸し付けを行った問題で、35 支店で 99 人が関与し、計約 414 億円を貸し付けたことが 25 日明らかになった。 職員はノルマに追われ、実績を上げるため取引先の書類を改ざんして融資していた。 一部は以前に本部が把握しながら、隠蔽されたこともわかった。 不正は昨年 10 月に発覚し、第三者委員会(委員長 = 国広正弁護士)が調査結果を 25 日公表した。

経営悪化企業へ国が行う「危機対応業務」の低利融資などを巡り、窓口となる商工中金が不正を行っていた。 経営がそれほど悪化しておらず、制度が使えない取引先にも低利で貸して実績を上げるため、職員が書類を改ざんしていた。 制度を使えるように、取引先の業績が悪いように見せかけたり、従業員が多いように偽ったりしていた。

全国 92 支店のうち、35 支店で 99 人が関与した。 不正な融資は 760 件、約 414 億円分で、実際に制度の適用外だったのは 348 件、約 198 億円分だった。 本来国から受けられない利子補給額は約 1 億3 千万円だった。 第三者委の調査は、同制度で融資した全 22.1 万件のうち、不正の疑いがある案件を中心に 2.8 万件を調べた。 残る融資も今後調査し、さらに不正が見つかる可能性がある。 (藤田知也、真海喬生、asahi = 4-25-17)


鉱工業生産 11 月一段と高水準、経産省は判断を 22 年ぶり最高ランクに

[東京] 経済産業省が 28 日発表した 11 月鉱工業生産指数速報は前月比 0.6% 上昇、指数水準は 103.6 と、今年に入り 4 ポイント近く上昇、急速な回復をみせている。 経済産業省は基調判断を 1995 年 12 月以来の「持ち直している」に上方修正、22 年ぶりに最も強めの判断に引き上げた。 半導体関連の品目がけん引役となっている。 12 月の生産計画も強め予想で、7 四半期連続増産が視野に入ってきた。

生産指数の 103 超えは今年に入り 4 回目、10 月、11 月と 2 カ月連続となった。 11 月はリーマンショック前の水準に近づく高水準だ。 上昇に寄与したのは半導体製造装置、建設機械、メモリや CCD といった半導体集積回路など。スマートフォン部品やタブレット向け液晶関連の製品が、台湾・米国への輸出で増産された。 他方、検査不正問題で一部メーカーの生産が停滞気味の輸送用機械は、同 0.3% と小幅ながら 2 カ月連続の上昇、自動車部品や普通乗用車が伸びた一方で、小型乗用車は伸び悩んだ。

今年に入り生産は一進一退を繰り返しつつも堅調に増産傾向を維持しており、10、11 月に続き 12 月の予測指数も前月比 3.4% 上昇と非常に高い伸びが計画されている。 下振れがあったとしても、10 - 12 月期は 7 四半期連続の増産となる公算だ。 予測値を前提にすると、農林中金総合研究所では前期比 2.0% と高めの伸びになると試算している。 出荷も、9 月、10 月と弱含んで需要動向に不安があったが、11 月は同 2.4% 上昇、しっかりとした動きとなった。

もっとも、来年 1 月の生産計画は前月比 4.5% 低下と弱め予想となっている。 輸送用機械が 12 月に 5.4% 増の増産計画を立てる一方で、1 月はそれ以上の 16% 程度の大幅減産を予定しているこが影響しているとみられる。 (Reuters = 12-28-17)

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鉱工業生産指数は 103.0 2 カ月ぶり上昇

経済産業省が 30 日発表した 10 月の鉱工業生産指数(2010 年 = 100、季節調整済み)は 103.0 で、前月を 0.5% 上回った。 上昇は 2 カ月ぶり。 基調判断は引き続き「持ち直しの動き」とした。 (asahi = 11-30-17)


全国 CPI、11 月は +0.9%、ガソリン・コメ上昇でプラス幅拡大

[東京] 総務省が 26 日公表した 11 月の全国消費者物価指数 (CPI) は、指標となる生鮮食品を除くコア CPI が前年比 0.9% 上昇し、10 月の 0.8% からプラス幅が拡大した。 ガソリンやコメなどが指数を押し上げたほか、ビールや診療代の実質値上げも押し上げにつながった。 先行指標とされる東京都区部の 12 月コア CPI も前年比 0.8% 上昇し、11 月の 0.6% からプラス幅が拡大したが、指数をこれまで押し上げてきたエネルギーは押し下げに転じた。

11 月全国 CPI は、物価の基調的な動きを示す生鮮食品・エネルギーを除く指数も前年比 0.3% の上昇となり、10 月の同 0.2% からプラス幅が拡大した。 外国パック旅行や一部全国紙の値上げなども指数を押し上げた。 電気代やガス代も前年比で上昇したが、プラス幅は前月より縮小し、指数を押し下げた。 KDDI による夏の値下げで携帯電話料金も指数を押し下げている。

マグロやサンマ、サケなど生鮮魚介の価格が不漁で高騰しており、生鮮食品の影響を含んだ総合指数は前年比 0.6% 上昇。 10 月の 0.2% から大幅にプラス幅が拡大した。 12 月の東京都区部は、生鮮食品・エネルギーを除く指数が前年比 0.4% 上昇し、11 月の 0.2% からプラス幅が拡大した。 洗濯機やエアコン、シャツ・セーター、冷凍食品のハンバーグ・ピラフ、佐川急便の値上げが指数を押し上げた。

電気代やガス代の前年比プラス幅は 11 月より縮小しており、エネルギー全体では指数を押し下げた。 総務省はこれまで毎月 26 日を含む週の金曜日に全国および都区部の CPI を公表してきたが、来年 1 月分から全国の指数を 1 週間前倒しして公表する。 同時に公表された 2017 年通年の東京都区部コア CPI は前年比 0.2% 上昇し、2 年ぶりにプラスに転じた。 (Reuters = 12-26-17)

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物価上昇率、見通しを引き下げ 日銀政策決定会合

日本銀行は 31 日の金融政策決定会合で新たな経済・物価見通しをまとめ、2017 年度の物価上昇率の見通しを 7 月時点の 1.1% から 0.8% に、18 年度は 1.5% から 1.4% にそれぞれ引き下げた。 19 年度の見通しは据え置き、目標の「物価上昇率 2%」の達成時期も「19 年度ごろ」で変えなかった。 金融政策は「現状維持」とした。

新たな見通しは 3 カ月に一度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に盛り込んだ。 輸出や生産が伸び、雇用も堅調だが、賃上げの勢いは鈍い。 9 月の物価上昇率は 0.7% にとどまり、17 - 18 年度は従来見通しに届かないと判断した。 ただ 19 年度は人手不足などから賃上げが広がり、物価も上がるとみている。 景気判断は「緩やかに拡大している」で据え置いた。 金融政策は現状維持とし、長期金利の誘導目標は「ゼロ % 程度」、金融機関から預かるお金の一部につけるマイナス金利は年 0.1% で据え置く。上場投資信託 (ETF) の購入額は年約 6 兆円を維持する。

長期金利操作やマイナス金利政策などは、政策委員 9 人(総裁、副総裁 2 人、審議委員 6 人)のうち賛成 8、反対 1 の賛成多数で決めた。片岡剛士審議委員は「15 年物国債金利が 0.2% 未満で推移するよう長期国債の買い入れを行うのが適当」などとして前回に続き反対した。 新たな提案はしなかった。 ETF などの購入の方針は全員が賛成した。 黒田東彦(はるひこ)総裁が 31 日午後に記者会見し、決定内容について説明する。(藤田知也、asahi = 10-31-17)

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消費者物価指数、9 カ月連続の上昇 総務省

総務省が 27 日発表した 9 月の消費者物価指数(2015 年 = 100)は、生鮮食品を除く指数が前年同月より 0.7% 高い 100.3 だった。 原油高による電気代やガス代の値上がりが影響した。 上昇は 9 カ月連続だが、「上昇幅のほとんどをエネルギー関係が占める状況が続いている」(総務省)という。 生鮮食品に加えてエネルギーを除いた指数は、前年同月より 0.2% 高い 100.8 で、3 カ月続けて上昇した。 全国の傾向を先取りするとされる東京都区部の 10 月の指数(生鮮食品を除く速報値)は、前年同月より 0.6% 高い 100.3。 4 カ月連続で上昇した。 (asahi = 10-27-17)


膨らむ予算、借金頼みは変わらず 3 分の 1 は国債で賄う

政府が 22 日閣議決定した 2018 年度当初予算案は、高齢化で社会保障費が膨らみ、6 年連続で過去最大となった。 27 年ぶりという高い税収を見込むが、全体の 3 分の 1 以上を新たな借金である新規国債で賄っており、「借金頼み」の状況は変わっていない。 一般会計の総額は、17 年度当初予算より 0.3% 多い 97 兆 7,128 億円。 薬価を大きく引き下げたことで、社会保障費の伸びは 4,997 億円と、財政再建目標の「目安」の 5 千億円以内に抑えたものの、32 兆 9,732 億円と過去最大となった。

緊迫する北朝鮮情勢を受け、陸上からミサイルを迎撃する「イージス・アショア」の調査費などを盛り込み、防衛費も 4 年連続で過去最大を更新した。 一方で、税収は 2.4% 増の 59 兆 790 億円と、1991 年度以来の高水準になると見積もり、これをもとに国債の発行額を 6,776 億円減らす。 麻生太郎財務相はこの日の記者会見で「経済再生と財政健全化を両立する予算ができた」と強調した。

ただ、税収の前提となる政府の 18 年度の経済成長見通しは実質 1.8% と、民間予測の平均 1.2% よりも高い。 政府の見通しは実際の成長率を下回ることが少なくなく、16 年度も円高などで税収が当初見込みを下回り、赤字国債を追加で発行している。 想定通りに経済が成長しなければ、今回も国債の追加発行に追い込まれかねない。

想定通りの税収を確保できても、歳入全体の 34.5% を国債で賄う状況で、18 年度末の国債発行残高は 17 年度末より 19 兆円多い 883 兆円に上る。 いまは金融緩和による超低金利が続いているが、将来金利が上がれば、国債の利払いが急増し、さらに財政が悪化するリスクも高まっている。 (中村靖三郎、asahi = 12-22-17)


日本経済は良好、物価や金利を上げる必要ない = 田中・元三菱 UFJ 副社長

[東京] 元三菱 UGJ フィナンシャル・グループ副社長の田中正明・PwC インターナショナル・シニアグローバルアドバイザーは 19 日ロイター・ブレーキングビューズのパネルディスカッションで「日本経済は非常に良好な状態にある」として、無理に物価や金利を上げる必要性はないとの見解を示した。 同時に現行のイールドカーブは「平坦化しすぎている」とも述べた。

田中氏は「日本経済は非常によい状況にあるのに、なぜ物価を 2% に上げる必要があるのか。 巨額の政府債務があるのになぜ金利を上げる必要があるのか。」と述べ、日銀が無理に物価や金利を押し上げる必要性はないとの見解を示した。 また「イールドカーブはあまりに平坦化しすぎている」とし、日銀に対して「イールドカーブの形状に注意して欲しい」と注文をつけた。

出身の金融業界は低金利による収益環境悪化でリストラを断行するなど厳しい経営環境にある。 田中氏はしかし、「2016 年のマイナス金利導入以前から金利は低下傾向が続いていた」と指摘し、「フィンテック、人口問題、国債市場の機能不全など厳しい経営環境に対応するのが経営者の仕事」と強調した。

日本企業による海外企業との買収・合併について「(成功している)武田薬品は例外」として、リスクも多いと指摘。 「最大のリスクは企業文化の違い。 多くの日本企業の社長は内部昇格で、自分の企業の文化しか知らないため、海外企業を買収しても文化の違いをマネージすることができない」と指摘した。 (竹本能文、Reuters = 12-19-17)