核禁条約を後押しする世界の 524 都市 NY 「特別な責任がある」 核兵器を全面的に禁じた核兵器禁止条約の発効から 22 日で 1 年たった。 条約の批准国・地域は 59 まで増えたが、核保有国やその「核の傘」に頼る日本などは背を向けたままだ。 国際 NGO は世界の都市に対し、自国政府に核兵器禁止条約参加を促してもらう運動を展開し、核保有国でも賛同が広がっている。 ニューヨークが賛同「核被害者と連帯、特別な責任」 米国最大の都市ニューヨークの市議会は昨年 12 月、米政府に核禁条約への支持と参加を求める決議を賛成多数で可決した。 決議はニューヨークが、第 2 次世界大戦時、原爆が開発された「マンハッタン計画」が始まった場所であると言及し、「核兵器の使用や実験などによる全ての被害者との連帯を表す特別な責任がある」とうたう。 「1945 年に広島、長崎に投下された原爆が 20 万人以上を殺害した後も、数十万人が核兵器の実験による放射能にさらされてきた。 被爆者や核実験の影響を受けた人々の苦しみは受け入れられない」と指摘し、「いかなる状況でも核兵器が二度と使われないことを保障する唯一の方法は核廃絶だ」と強調した。 そしてニューヨークを「非核地帯」と確認することや市の会計検査官に対し、市の公務員の年金基金を核兵器関連企業から分離することなども求めている。 決議を後押ししたのが、核禁条約制定の動きを先導し、2017 年にノーベル平和賞を受賞した国際 NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン (ICAN) が 18 年から展開してきた「シティーズ(都市)・アピール」だ。 核兵器が使われれば被害を受ける恐れが強い都市から、条約への参加を自国政府に求めてもらう。 ICAN によると、今月 20 日現在、19 カ国 524 都市がアピールに賛同した。 米ワシントンやロサンゼルスのほか、広島、長崎両市、パリなどが名を連ねる。 米国内の人口 3 万人以上の 1,400 を超える都市で構成する全米市長会議も昨年 8 月、米政府に対し、核禁条約を歓迎し、核廃絶に向けた即時行動を求める決議を全会一致で採択した。 ボストン、グラスゴー … 核保有国の都市も続々と 昨年 1 月の条約発効も追い風になった。 ICAN によると、発効後、昨年末までに新たに賛同した都市は 119 にのぼる。 米国でニューヨークのほか、ボストン、デンバー、ミネアポリスなどが加わり、英国ではスコットランド最大の都市グラスゴーが賛同した。 世界の 8 千以上の都市が加盟する国際 NGO・平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は、3 月にオーストリアで開かれる核禁条約第 1 回締約国会議に合わせ、自治体首長らが集う会合を現地で計画している。 日本からは広島、長崎両市長と被爆者の参加を検討している。 ICAN などと連携する案もあるという。 広島市平和文化センター平和首長会議運営課長の末広恭子さんは「締約国会議を絶好の機会ととらえ、自治体で連携し、各国の条約参加に向けた国際世論を高めていきたい」と話す。(三宅梨紗子、福冨旅史) 地方 627 議会「日本も条約参加を」 日本国内でも市民の請願などを受け、政府に核兵器禁止条約参加を求める地方議会が増えている。 原水爆禁止日本協議会(日本原水協)によると、2017 年 7 月に核兵器禁止条約が採択されて以降、1 月 12 日現在、都道府県と市区町村の計 1,788 自治体のうち 35% の 627 議会が政府に条約への署名や批准を求める意見書を議決している。 条約発効後に 90 ほど増えたという。 岩手県では県議会と県内の全市町村が議決した。 一方、山口県、佐賀県はゼロとなっている。 被爆地の広島県は 75%、長崎県は 50%。 日本原水協は今夏までに全国の 5割まで伸ばしたいとする。 担当の前川史郎さんは「地方議会の議決は世論を裏付け、可視化するものだ。 被爆国の日本政府は国民の声を受け止めて、条約への署名、批准をしてほしい」と語る。(岡田将平) ICAN メンバー「自治体には役割がある」 ニューヨークでは市内在住の ICAN のメンバーらが運動を始め、30 人以上の議員の賛同を得て 19 年に決議案を提出した。 ICAN の国連担当で、運動の中心だったセス・シェルデンさんが朝日新聞の書面インタビューに応じた。 ニューヨークは、第 2 次世界大戦中の米国の原爆開発に至った「マンハッタン計画」が始まったところだ。 シェルデンさんはそうした歴史的な文脈に言及したうえで、「世界で最も重要な都市の一つであるニューヨーク市の表明には価値と責任がある。 (国家の)核政策の転換につながる可能性がある。」と述べた。 都市で核兵器禁止条約賛同の輪を広げるねらいについて、シェルデンさんは「核兵器は戦場の兵士だけではなく、都市や市民を標的とする」と指摘し、「地方自治体は核軍縮を前進させる役割があり、核兵器反対の声を上げる責任がある」と強調した。 3 月に初の条約締約国会議 核兵器禁止条約 米ロ英仏中の 5 カ国に核兵器保有を認めている核不拡散条約 (NPT) と異なり、国際法として初めて、核兵器の開発、実験、生産、保有、使用などを全面的に禁じた。 国連加盟の 6 割にあたる 122 カ国・地域の賛成で 2017 年 7 月に採択された。 20 年 10 月に批准国・地域が要件の 50 に達し、21 年 1 月 22 日に発効した。 今年 3 月にオーストリア・ウィーンで最初の締約国会議が開かれる。 締約国以外ではドイツなどがオブザーバー参加する方針だが、日本政府は慎重な姿勢だ。 (asahi = 1-22-22) 閲覧制限撤回「ほっとした」 はだしのゲン 「はだしのゲン」が元のように自由に読める - -。 26 日、松江市教育委員会が閲覧制限を撤回した。 名古屋市内の図書館では制限はしていなかったが、学校現場に強制と受けとられる要請をした松江市教委の事務局の対応には不信の声が上がった。 名古屋市名東区の「戦争と平和の資料館ピースあいち」は 31 日まで、「絵本はだしのゲン原画とマンガ展」を開いている。 同館の事務局長を務める宮原大輔さん (60) は「ほかの地域に閲覧制限が広がらず、ほっとした」と話す。 館内には、主人公ゲンの言葉や名場面をもとに作ったパネル、マンガ本などを展示。 松江市教委による閲覧制限が明らかになった後、「実際の描写がどんなものか知りたい」と見学に訪れる人もいたという。 宮原さんは「描かれているのはむごい内容だが、その事実から子どもの目をふさぐことは、原爆の恐ろしさや戦争の悲惨さを伝える機会を奪う」と指摘する。 スタッフの一人は名古屋市内の図書館に問い合わせ、閲覧を制限していないことを確かめたという。 広島市で 4 歳の時に被爆した愛知県春日井市の水野秋恵(ときえ)さん (72) は「閲覧制限の撤回は当然」と憤る。 「実際の光景は漫画よりもっとひどかった。」 小中学校や高校で体験を伝える活動に取り組み、昨年からは愛知県内の被爆者でつくる愛友会の事務局長を務める。 「見るか見ないかを判断するのは子どもたち。 歴史認識について異論を唱える人が現れた途端に閲覧を制限するのではなく、そうした人とも話し合う姿勢が必要ではないか。」 (宋光祐、asahi = 8-27-13) 「戦争の残酷さ知らせねば」 ゲン描写へ中沢氏の思い 【聞き手・武田肇】 松江市教委事務局が「暴力的で過激な描写」と問題視し、閲覧制限を求める理由としたのは「はだしのゲン」 10 巻に登場する旧日本軍兵士の中国戦線での行為にかかわる描写だった。 昨年 12 月に死去した中沢啓治さんはこの場面をどんな思いで描いたのか。 中沢さんのそばにいて、「ゲン」の背景描きを手伝った妻のミサヨさん (70) が朝日新聞に語った。 兵士が中国人男性の首を面白半分に切り落とす。 妊婦のおなかを切り裂き、赤ん坊を引っ張り出す - -。 今から 30 年近く前、主人がこの場面を描いたとき、私もショックを受け「残酷すぎるのでは」と言いました。 主人の答えは「きれいな戦争というのはないんだ。 戦争の残酷な実態を知らせなければ、子どもに戦争というものが伝わらない。」 戦争の恐ろしさに小さな頃から触れ、大人になって戦争を防ぐ方法をじっくり考えてほしいというのは、死ぬまで変わらぬ思いでした。 自分が体験した被爆の場面でも、いろんな資料を集めて描いていましたが、体験のない戦場の場面を描くときは、特に多くの資料や文献を読み込んでいました。 描けば批判が来ると覚悟していました。 「ゲンはぼくの思いを託しているのだから、ヘンなことは描けないんだ」と言っていました。 (asahi = 8-27-13) 「はだしのゲン」閲覧制限、松江市教委が撤回 原爆や戦争の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」が松江市立小中学校の図書室で自由に読めなくなっている問題で、市教育委員会は 26 日、教育委員会会議を開き、手続きに不備があったとして、学校現場に求めていた閲覧制限を撤回し、学校の自主性に任せることを決めた。 この問題をめぐっては市教委が昨年 12 月、「作品中の暴力描写が過激」などとして、学校の許可がないと子どもたちが閲覧ができない閉架図書にするように市立小中学校の校長会で要請。 その後、学校により対応にばらつきがあったため、市教委は今年 1 月の校長会で閉架を徹底するよう再び要請していた。 閲覧制限は当時の市教委の事務局レベルの判断で決められ、教育委員会会議に報告されていなかった。 (asahi = 8-26-13) 「はだしのゲン」、アマゾンでベスト 10 入り 増刷も 【宮野拓也】 漫画「はだしのゲン」が、松江市教育委員会による閲覧制限問題を機に読み直されている。 ネット通販大手「アマゾン」では、10 巻セットがコミック部門で 10 位以内に入り、発行元が増刷を決めた。市内の図書館での貸し出しも好調だ。 単行本を初めて発売した汐文(ちょうぶん)社(東京)。 刊行するコミック版や愛蔵版全 10 巻セットの出荷数は、いつもの 7、8 月なら 2 千セットほどなのに、今年は 7 千セットになった。 今も 2 千セットの増刷をかける。 例年、終戦の日の 15 日を過ぎると売れ行きは落ちるが、今年は、昨年末に作者の中沢啓治さんが亡くなったことに加え、閲覧制限が注目され、今も全国から注文が相次いでいる。 (asahi = 8-24-13) はだしのゲン「自由に読ませて」 日本被団協も要請 漫画「はだしのゲン」が松江市内の小中学校の図書館で自由に読めなくなっている問題で、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は 23 日、閲覧制限を各校長に求めた松江市教育委員会に、従来通り自由に閲覧できるよう求める要請書を送った。 要請書で、日本被団協は「はだしのゲン」について「原爆の実相を伝える作品であり、国内外で原爆を知る必読の本として評価されている」と指摘。 これまで国連本部の図書館などに寄贈し、感謝を受けてきており「閲覧制限しなければならない理由はない」と松江市教委の対応を批判した。 (asahi = 8-24-13) はだしのゲン「私は 10 歳で読めて良かった」 米漫画家 レイナ・テルゲマイアーさん 【古田大輔】 「いくつかのシーンは読者を動揺させるかもしれない。 でも、私は 10 歳で『はだしのゲン』を読めて良かった。」 戦争や原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」について、米国の漫画家レイナ・テルゲマイアーさん (36) が「読まれるべきだ」と訴えている。 レイナさんはニューヨーク在住で「Smile (笑顔)」などのヒット作がある。 松江市教育委員会は「暴力描写が過激」として小中学校での「ゲン」の閲覧を制限しているが、レイナさんは「私の周囲の大人はその暴力性についても私と話し合い、学ぶ機会をくれた」と振り返る。 「ゲンを読んだときは、死や苦しみの描写に混乱しました。 同時に、これを読んだ人は皆、こんなことが二度と起きないよう努力するはずだと思いました。」 自伝的作品「Beginnings (始まり)」では、主人公の女の子が父からもらった英語版のゲンを読み、泣きながら訴えるシーンを描いた。 「何で爆弾を落とさなきゃいけなかったの?」 「世界中の人にこの本を読んでもらうようにしたいの。 大統領は特に読んで。」 「Beginnings」は日本語に訳され、18 日からレイナさんのウェブサイト(http://goraina.com/)で公開されている。 (asahi = 8-24-13) はだしのゲン、売れ行き 3 倍に 閲覧制限問題で注文増 松江市教育委員会が同市立小中学校の図書館での閲覧を制限した「はだしのゲン」の売れ行きが好調だ。 作者の中沢啓治さんが亡くなった翌年である上に、8 月半ばに閲覧制限問題で注目が集まったことも一因という。 「子どもにぜひ読ませたい」と版元に問い合わせも来ているという。 全 10 巻を刊行している汐文社(ちょうぶんしゃ、東京)は 7、8 月の 2 カ月弱で、例年同時期の約 3 倍にあたる各約 7 千冊を出荷。 中央公論新社(東京)の文庫版全 7 巻は例年の 2.5 倍程度出ている。 中央公論新社の電子書籍版は制限問題が起きてからランキング上位に入ったという。 同社の担当者は「中沢さんは子どもによく伝わるようにと表現に心を砕いていたとうかがっている」と話している。 (asahi = 8-23-13) 「はだしのゲン」閲覧制限 松江市教委協議、結論先送り 原爆や戦争の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」が松江市立小中学校の図書室で自由に読めなくなっている問題で、市教育委員会は 22 日午前、教育委員会会議を開き、閲覧制限を撤回し、作品を開架図書に戻すかどうかの協議をした。 市教委事務局の対応を巡って教育委員から質問が相次いだため、26 日に臨時会議を開くこととし、結論は先送りした。 会議は午前 10 時半から松江市役所で始まり、清水伸夫・教育長を含む教育委員 5 人が出席した。 最初に市教委が、学校側に閲覧制限を要請する昨年 12 月までの経過について説明。 閲覧制限の問題発覚後、校長を対象に、閲覧制限への意見や図書室での置き場所などを尋ねたアンケート結果を参考資料として配布した。 この問題をめぐっては昨年 8 月、小中学校から作品の撤去を求める市民の陳情が市議会にあったが、12 月初旬に不採択となった。 (asahi = 8-22-13) 「ゲン、買って読めばいい」閲覧制限陳情の男性 松江市議会に「はだしのゲン」の撤去を求める陳情をした自営業の男性 (35) は 21 日、朝日新聞の取材に応じた。 「市教委は、ぼくが(不採択となった陳情で)訴えた歴史認識の誤りではなく、描写を問題にしており、不満はある」、「こんな漫画を義務教育の学校図書館に置くべきでなく、読みたければ自分で買って読めばいい」と持論を述べた。 男性は、昨年 10 月まで松江市に住み、いまは高知市在住。 昨年 11 月には高知市議会と高知県議会にも「ゲン」撤去を求める陳情をしたという。 松江市教委を数回訪れ、「ゲン」撤去を要求して職員と押し問答する様子を撮影した映像を動画投稿サイトにも投稿。 自身の活動について「国益を損なう行為が許せない。 日本人としてふつうのことをしているだけ。」と述べた。 (asahi = 8-22-13) 「はだしのゲン、自由に読ませて」電子署名 2 日で 6 千人 戦争や原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」が、松江市の小中学校の図書室で自由に読めなくなったことについて、堺市北区の学童保育指導員、樋口徹さん (55) が、閲覧制限を指示した松江市教育委員会に「自由に読めるように戻してほしい」と求めるネット署名を呼びかけたところ、2 日間で 6 千人分が集まった。 樋口さんは 16 日夜、ネット署名サイト「Change.org」に、自身が学童保育で接している小学生が「ゲン」を読んで原爆の恐ろしさや平和を学んでいると記し、署名を呼びかけた。 署名はツイッターやフェイスブックを通じ海外在住者まで広がり、サイトを運営するハリス鈴木絵美さんは「これほど短期間に 5 千を超える署名が集まるのは極めて異例。」 樋口さんは署名が 1 万を超えたら松江市教委に提出する。 市教委によると、18 日夕までに全国からメール約 250 通が届き、その大半が市教委の対応を批判する内容だったという。 (asahi = 8-19-13) 「はだしのゲン」閲覧を制限 松江市教委「描写過激」 【藤家秀一、武田肇】 広島での被爆体験を描いた、漫画家の故中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン(全 10 巻)」が、昨年 12 月から松江市内の市立小中学校の図書館で子どもたちが自由に見ることができない閉架の状態になっていることが分かった。 市教育委員会が作品中の暴力描写が過激だとして、各校に閲覧の制限を求めた。 市教委によると、描写が残虐と判断したのは、旧日本軍がアジアの人々の首を切り落としたり、銃剣術の的にしたりする場面。 子どもたちが自由に見られる状態で図書館に置くのは不適切として、昨年 12 月の校長会で全巻を書庫などに納める閉架図書にするよう指示したという。 現在は作品の貸し出しはしておらず、教員が校内で教材として使うことはできる。 市の調査では市立小学校 35 校、中学校 17 校のうち、約 8 割の図書館がはだしのゲンを置いている。 (asahi = 8-16-13) |