「高圧経済」に近い? 設備不足、バブル終盤並み

日本経済は過熱気味な経済状況を示す「高圧経済」に向かいつつある。 日銀が 15 日公表した 12 月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、設備や雇用の不足感がともにバブル最終盤の 1990 年代初頭の水準まで強まった。 企業はいや応なく設備投資や賃上げを迫られる中、日銀は供給と需要の不均衡を容認して強力な金融緩和を続ける構え。 だが、そこには「痛み」も伴う。

高圧経済(ハイプレッシャーエコノミー)は 2016 年にイエレン米連邦準備理事会 (FRB) 議長が言及し、話題になった。 需要が供給能力を上回る状況を維持する政策により、労働参加や企業の設備投資などを強く促す経済を目指すという理論だ。 いまの日本経済はそのシナリオをなぞりつつある。 生産や営業用の設備が「過剰」と答えた割合から「不足」を引いた判断指数は全規模・全産業でマイナス 5 となり、前回の 9 月調査から2ポイント低下した。 「不足」超は 91 年末以来の水準。 人手不足も同じレベルだ。

だが、日本経済にはそこまでの過熱感はない。 主因は中小企業にある。 短観で 17 年度の設備投資計画をみても前年比の伸びは大企業がけん引しており、中小企業は全産業ベースでみると 2000 - 16 年度の平均を下回るペースだ。 人手が足りないはずなのに中小企業による 17 - 18 年度の新卒採用計画も、前回調査から伸び幅が縮んだ。 日銀によると、調査では「思ったように採用が進まない」という声があったという。

高圧経済を目指す過程では、設備投資や賃上げに踏み込めずに置き去りにされる企業の淘汰という「痛み」が生じる。 雇用市場改革が進まず比較的転職が難しい日本では、その痛みが一段と大きい。 いまの日本の中小企業は、まだその試練を乗り越える手前の段階とみることもできる。 政府・日銀が一段と需要を刺激する政策を続けるなら、こうした側面への目配せが重要になりそうだ。 (高見浩輔、nikkei = 12-15-17)


国有財産売却で厳格化案 全随意契約の価格公表

学校法人「森友学園」への国有地売却額の算定がずさんだったとする会計検査院の報告を受け、財務省は 24 日、国有財産の処分手続きの見直し案を発表した。 全ての随意契約で売却価格を公表するなど透明性、客観性を高めることが柱。 文書管理の徹底も明記する。 財政制度等審議会の分科会で検討し、早ければ来年にも運用を始める方向だ。 森友学園との随意契約では売却額が当初非開示とされるなど例外的な対応が重なった。 このため財務省は価格の公表を契約要件とし売却額を例外なく公開する方針。

また買い手に対応能力がない場合など、あらかじめ希望額を提示させ比較検討する「見積もり合わせ」なしで手続きを進めるケースの適用条件なども明確化する。 地下に埋設物があるなど特殊な状況では、費用の見積もりは専門家に依頼し有識者のチェックを受ける。 文書管理では、佐川氏が「資料は破棄した」とした対応が問題になった。 今後は事後に経緯を検証できるよう保存期間の長い決裁文書に買い手との重要な打ち合わせ内容などを盛り込む。

会計検査院の報告に関し麻生太郎財務相は閣議後の記者会見で「重く受け止めねばならない。 手続きを明確化し、例外を限定的にして基準を定める。」と述べた。 菅義偉官房長官も「真摯に受け止める」と話した。 (東京新聞 = 11-25-17)


【山一証券自主廃業 20 年】 証券業界は様変わり

独立系大手は野村と大和のみ 手数料自由化でネット証券が台頭

山一証券の自主廃業という激震からの 20 年で日本の証券業界は様変わりした。 当時は野村、大和、日興、山一の各証券会社が「四大証券」と呼ばれていたが、今日ではメガバンク系列ではない独立系の証券大手は野村ホールディングスと大和証券グループ本社のみとなった。 一方、顧客が証券会社に株式の売買を委託する際に支払う手数料の自由化などを背景に、安価な手数料を売りとするインターネット証券が台頭した。

山一破綻の後も、証券大手の再編は続いた。 日興証券は日興コーディアル証券となった後、平成 21 年に三井住友フィナンシャルグループの一員になった。 23 年には商号が現在の SMBC 日興証券に変更された。 山一破綻の翌年の 10 年には、「日本版金融ビッグバン」の一環で証券業は免許制から登録制となり、参入のハードルが下がった。 また、従来は固定されていた株式売買の委託手数料も 11 年に完全自由化され、証券会社が自ら手数料体系を決められるようになった。

こうした規制緩和を追い風に勢いを得たのがネット証券だ。 ネット証券で最大手の SBI 証券の口座数は今年 9 月に 400 万口座を超え、同社の推定では野村証券に次ぐ業界 2 位だ。 一方、長年の課題である「貯蓄から投資へ」はなかなか進んでいない。 日本証券業協会の鈴木茂晴会長は今月 15 日の記者会見で「新しい投資家をつくっていかなければならない。 若年層に証券投資での成功体験を持ってほしい。」と話した。 ('sankei =11-23-17)


日銀緩和、メガバンク首脳から批判・修正要求相次ぐ

全国銀行協会の平野信行会長(三菱 UFJ フィナンシャル・グループ〈FG〉社長)は 16 日の定例会見で、「マイナス金利の恒常化は望ましくない」とし、「社会インフラとしての金融機関や金融システムに大きな支障となる可能性がある」と述べた。 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は 13 日のスイスでの講演で、過度な金利低下で銀行の金利収益が減れば、貸し出しに消極的になり、緩和効果に悪影響を与えるという考え方を紹介。 その上で、そうした「金融仲介機能の低下」は起きていないと述べた。

これに対し平野氏は「(金融仲介機能が妨げられる)状況が今その姿を現しつつある。 近い将来、起きてもおかしくない状況になりつつある。」と反論した。 メガバンクは低金利の影響が直撃し、相次いで人員や業務量の削減、店舗の統廃合を打ち出している。 今後従業員の 2 割超の約 1.9 万人を削減するみずほフィナンシャルグループ (FG) の佐藤康博社長は 13 日の会見で、「(2% の物価上昇目標の扱いは)柔軟な発想で対応することが必要だ」と述べた。 緩和の悪影響が目立つメガバンクの首脳からは、緩和への批判や修正を求める発言が続いている。 (福山亜希、asahi = 11-16-17)


企業の現預金、最多の 211 兆円 人件費はほぼ横ばい

企業が抱える現金と預金が、2016 年度末に 211 兆円と過去最高にふくれあがっている。 アベノミクス前(11 年度末)と比べ 3 割(48 兆円)増えた。 人件費はほぼ横ばいで、企業の空前の利益が働き手に回らない構図が鮮明となった。 財務省の法人企業統計調査(金融・保険除く)のデータを分析した。 調査対象は国内企業で、海外子会社は含まれない。

16 年度の純利益は、5 年前の 2.6 倍の 50 兆円で、バブル最盛期の 1989 年度(18 兆円)を大きく超える。 円安で輸出企業を中心に業績が伸び、4 年連続で過去最高を記録した。 巨額のもうけは賃金や設備投資増に回らず、現預金などに向かっている。 90 年代の金融危機や 08 年のリーマン・ショックを経て、企業経営者は消極的になり、国内で正社員を増やしたり、設備投資をしたりするのを手控えるようになった。

現預金は、08 年のリーマン・ショックから増え始めた。 08 年度末からの 5 年間の増加額は年平均 6 兆円だが、アベノミクスによる円安を受け好業績に沸いた 13 年度末からの 3 年間は年平均 12 兆円と 2 倍に加速している。 株主への配当も、16 年度は 5 年前と比べ 7 割増の 20 兆円にのぼった。 一方、人件費は 5 年前から 1% 増の 202 兆円にとどまり、ピークだった 98 年度(204 兆円)を下回っている。 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングの土志田るり子研究員は「企業の好業績が従業員に還元されない。 これが日本の経済成長が低迷する原因になっている。」と指摘する。 (大日向寛文、asahi = 11-12-17)


9 月全世帯の実質消費支出は前年比 -0.3%、2 カ月ぶり減少 = 総務省

[東京] 総務省が 31 日発表した 9 月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く 2 人以上の世帯)の消費支出は 26 万 8,802 円となり、前年に比べて実質で 0.3% 減少した。 減少は 2 カ月ぶり。 総務省は消費の基調判断を「持ち直してきている」に据え置いた。 ロイターが民間調査機関に行った聞き取り調査では前年比 0.7% 増が予想されていたが、結果はこれを下回った。

実質前年比で減少したのは、教養娯楽や交通・通信、光熱・水道、家具・家事用品など。 3 連休に台風が上陸した影響で、宿泊料やゴルフプレー料金が減少したほか、全般的に気温が低めだったこともあり、エアコンなども振るわなかった。 通信料については月末が土曜日だったため、支払いが翌月に回ったことが影響した。 9 月の勤労者世帯の実収入は 1 世帯当たり 43 万 7,497 円となり、前年比で実質 2.1% 増と 4 カ月連続で増加した。 名目は同 3.0% 増だった。 (Reuters = 10-31-17)

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8 月消費者態度指数は 0.5 ポイント低下、2 カ月ぶり悪化 = 内閣府

[東京] 内閣府が 1 日に発表した 8 月消費動向調査によると、消費者態度指数(2 人以上の世帯・季節調整値)は、前月から 0.5 ポイント低下し 43.3 となった。 2 カ月ぶりの悪化。 「暮らし向き」、「収入の増え方」、「耐久消費財の買い時判断」、「雇用環境」の 4 項目全てが低下となった。 内閣府は、消費者態度指数からみた消費者マインドについて「ほぼ横ばいとなっている」として前月の判断を下方修正した。 1 年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が前月から 0.3 ポイント増加した。 (Reuters = 9-1-17)

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5 月の消費支出 0.1% 減 衣料など不振、物価は 0.4% 上昇

総務省が 30 日発表した 5 月の家計調査によると、2 人以上世帯の 1 世帯当たり消費支出は 28 万 3,056 円で、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比 0.1% 減少した。 昨年 2 月の支出がうるう年の影響でかさ上げされたのを除けば、1 年 9 カ月連続で前年を下回った。 婦人服など衣料が不振だったほか、前年より日曜日が 1 日少なく外食などの支出が減った。

総務省は「日曜日が少なかった影響を除けば、0.1 - 0.3% 増えた」と分析する。 消費の基調判断を前月までの「弱い状況が続いている」から、「弱い状況ながら回復の動きがみられる」に引き上げた。 夏物の衣服の購入が減り、被服及び履物が 13.1% 減少した。 食料も 2.2% 減った。 不漁の影響でイカなどの魚介類の値段が上昇し消費者が購入を控えたことが響いたようだ。 一方、洗濯機やエアコンなど家具・家事用品は 3.5% 増えた。 自動車関連など交通・通信も 6.8% 伸びた。

総務省が同日発表した 5 月の全国消費者物価指数(CPI、2015 年 = 100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が 100.3 となり、前年同月比 0.4% 上昇した。 ガソリンや電気などエネルギーがけん引。 エネルギーも除くと、前年同月から横ばいでエネルギー以外の物価は低迷している。 品目別に見るとガソリンが12.3%、電気代は 2.5% それぞれ上昇した。 総務省は「電気代は原油高の影響が遅れてくるため今後、上昇幅が拡大する」とみている。 (nikkei = 6-30-17)


日経平均、連続上昇は 16 営業日で途切れる

25 日の東京株式市場で、日経平均株価は値下がりし、連騰記録は前日までの 16 営業日連続で途切れた。 終値は前日に比べて 97 円 55 銭 (0.45%) 安い 2 万 1,707 円 62 銭。 東京証券取引所第 1 部全体の値動きを示す東証株価指数 (TOPIX) は同 5.49 ポイント (0.31%) 低い 1,751.43。 出来高は 19 億 6 千万株。 米国の株高の流れを受け、取引開始直後は日経平均は 100 円超値上がりしたが、連日の高騰で過熱感もあったことから、午後に入って利益を確定させる売りに押された。 市場では「企業業績は好調で、大きなリスクもない。 今後も株高が続く。(大手証券)」との声が出ている。 (asahi = 10-25-17)

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日経平均、14 日連続上昇 歴代 1 位に並ぶ、57 年ぶり

20 日の東京株式市場で、日経平均株価が 14 営業日連続で値上がりした。 連続記録としては 1960 年 12 月 21 日 - 翌年 1 月 11 日と、約 57 年ぶりに並ぶ歴代 1 位の記録になった。 日経平均の終値は前日より 9 円 12 銭 (0.04%) 高い 2 万 1,457 円 64 銭で、年初来高値も更新した。 東京証券取引所第 1 部全体の値動きを示す TOPIX (東証株価指数)は同 0.60 ポイント (0.03%) 高い 1,730.64。 出来高は 15 億 2 千万株。

北朝鮮情勢への警戒感が緩んだ、10 月から日経平均は、米国などの好調な世界経済や衆院選での与党優勢報道などが材料となり上昇を続け、2 日からの上げ幅は 1 千円を超えた。 この日は高値警戒で利益を確定する売りが先行したが、その後、上昇に転じた。 市場からは「やや過熱感もあるが経済情勢はよく、相場は強い(大手証券)」との声が出ている。 (asahi = 10-20-17)


街の景気実感、3 カ月ぶり改善 涼しく秋物衣料が好調

内閣府は 10 日、9 月の景気ウォッチャー調査を発表した。 商店主やタクシー運転手らに景気の実感を聞いてまとめた指数(季節調整値)は前月よりも 1.6 ポイント高い 651.3 となり、3 カ月ぶりの改善となった。 全国的に涼しい気候となったため、百貨店などで秋物の衣料品の販売が好調で、小売り関連の指数が上昇した。 先行きに関する指数は前月比 0.1 ポイント低下の 51.0。 北朝鮮情勢や総選挙で客足が鈍ることを心配するコメントが目立ったという。 (asahi = 10-10-17)

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景況感、10 年ぶりの高水準 堅調な海外経済で改善続く

日本銀行が 2 日発表した 9 月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、代表的な指標の大企業・製造業の業況判断指数 (DI) がプラス 22 となり、4 四半期連続で改善した。 前回 6 月調査より 5 ポイントの改善で、2007 年 9 月以来、10 年ぶりの高水準となった。 堅調な海外経済を背景に改善が続いている。

大企業・製造業の業種別では、スマートフォンや自動車関連が好調で、業務用機械が前回より 15 ポイント、生産用機械が 13 ポイント、電気機械が 11 ポイント、自動車が 2 ポイントそれぞれ改善した。 大企業・非製造業の DI は横ばいのプラス 23 だった。 東京五輪を控えた再開発需要が堅調な建設や不動産は高水準を維持したが、夏場の天候が悪かったことで旅行など宿泊・飲食サービスが 7 ポイント、小売りが 2 ポイント悪化した。

3 カ月後の先行きは、大企業・製造業が 3 ポイント悪化のプラス 19、大企業・非製造業が 4 ポイント悪化のプラス 19。 人手不足のほか、北朝鮮情勢や米トランプ政権など海外の不透明感に対する懸念が高まっている。 短観は、日銀が 3 カ月ごとに全国の約 1 万 1 千社に景況感を聞く調査。 DI は景気が「良い」と答えた企業の割合から、「悪い」と答えた割合を引いた指数。 (asahi = 10-2-17)


大廃業時代の足音 中小「後継未定」 127 万社

中小企業の廃業が増えている。 後継者難から会社をたたむケースが多く、廃業する会社のおよそ 5 割が経常黒字という異様な状況だ。 2025 年に 6 割以上の経営者が 70 歳を超えるが、経済産業省の分析では現状で中小 127 万社で後継者不在の状態にある。 優良技術の伝承へ事業承継を急がないと、日本の産業基盤は劣化する。 「大廃業時代」を防ぐ手立てはあるか。

「あと 2 年くらいで会社をたたもうと思ってるんだ。」 極細の「痛くない注射針」で世界的にも有名な金属加工業、岡野工業(東京・墨田)の岡野雅行会長 (84) の表情は何かを悟ったように穏やかだ。 金型づくりやプレス加工は自動車などの技術改良に貢献し、会社は黒字だ。 廃業理由は「俺の後がいねえから。 娘 2 人も別の道に行ったし。」 注射針の製造装置はともに特許を取得した医療機器メーカーのテルモに移管。 1924 年創業の老舗企業は途絶える見通しだ。 「オンリーワン技術を持つ企業がなくなればものづくりの基盤に打撃。」 同社と取引のあった自動車部品会社幹部は語る。

東京商工リサーチの調べでは、2016 年の中小企業の休業・廃業は 2 万 9,583 件。 約 2 万 1 千件だった 07 年から大幅に増えた。 企業倒産は景気回復で年々減少しており、人口減による休廃業の流れが強まっている。 経済産業省によると、中小経営者で最も多い年齢層は 15 年時点で 65 - 69歳。 平均引退年齢は 70 歳だ。 25 年時点でこのリタイア適齢期を迎える中小経営者が約 245 万人と、全中小の 6 割以上に上る。 アンケートではその約半数にあたる 127 万人が後継者未定だった。 60 歳以上の個人事業主の 7 割は「自分の代で事業をやめる」と答えた。

同省幹部は「大廃業時代が迫り向こう 10 年が正念場だ」とみる。 一橋大学経済研究所の植杉威一郎教授は「赤字続きで資金繰りに行き詰まる倒産は産業の新陳代謝に資することもあるが、生産性が高い黒字企業の廃業は経済全体の効率を押し下げる」という。 経産省の内部試算では黒字廃業を放置すれば 25 年までの累計で約 650 万人の雇用と約 22 兆円に上る国内総生産 (GDP) が失われる恐れがある。 世代交代した企業は利益率や売上高が増える傾向が強く、政府も大廃業回避へ 5 年程度で集中的に対策を講じる構えだ。

早めの引き継ぎを促すには、税制や金融、予算の総動員が必要だ。 今は親族内で会社を引き継ぐ場合、相続税や贈与税の支払いを猶予する制度がある。 ただ雇用の 8 割以上を維持しないと全額納付を迫られ「使い勝手が悪い」と不評だ。 政府はこうした要件を抜本的に見直す。 中小企業が M & A (合併・買収)をする際の税負担も軽くする。 政府と銀行などが連携し、承継した経営者の前向きな投資を後押しする低利融資なども充実させる余地が大きい。

外部人材登用で事業承継に備える動きもある。 日本酒「千福」を作る老舗酒造、三宅本店(広島県呉市)。 三宅清嗣社長 (58) は再就職希望者を地方に紹介する日本人材機構(東京・中央)の職員、田部井智行氏を招いた。 「中期経営計画を引っ張れる人材をよそから受け入れたほうが早い。」 三宅氏は社内の慎重論を押し切った。 跡継ぎの息子はまだ 20 代。 「いい教育係にもなる。」 日本酒離れが進む若者への売り込みに知恵を絞る。

外部人材の登用を増やすため、政府は「兼業・副業」の規制緩和を進める。 全国の商工会議所などにある「事業引き継ぎ支援センター」では専門家が経営者の相談に応じ 800 件ほどのマッチングを実現した。 5 年後には年 2 千件へと増やす計画だが、100 万件を超す後継者難からみれば焼け石に水だ。 より大規模に事業承継を進めるには、中小企業に関心を持つ多くの投資家らがアプローチできる小規模 M & A 市場を整えるべきだとの声も多い。 フランスでは事業売却を希望する企業のデータをインターネット上の「全国取引所」で公開し効率的に引き合わせる。

M & A 市場の整備が進めば、アジアの投資家も日本の中小企業に関心を持ちやすくなる。 未曽有の廃業危機と産業の衰退を避けるには、海外の力を借りるのも選択肢だ。 (辻隆史、nikkei = 10-6-17)


幼児教育無償化 最大 1.2 兆円、政府試算

安倍晋三首相が掲げている幼児教育・保育の無償化に、最大約 1 兆 1,700 億円かかるとの政府試算が 29 日、判明した。 首相は今回の衆院選で消費税率 10% への引き上げによる増収分の使い道を変更し、教育無償化などに 2 兆円規模を充てる方針を訴えているが消費税増税の是非や増収分の使途が争点となる。 (工藤昭久、mainichi = 9-30-17)


商業地 2 年連続上昇 17 年基準地価、訪日客効果続く

国土交通省が 19 日発表した 2017 年 7 月 1 日時点の基準地価は、全国の商業地が前年比 0.5% 上がり、2 年連続で上昇した。 16年 7 月は前年比 0.005% のプラスだった。 訪日客の増加に伴い京都などで店舗やホテル用の土地が上がった。 都市部での再開発もけん引となり、東京・銀座はバブル期の価格を 26 年ぶりに更新した。 緩和マネーも地価の底上げを下支えしているが、資産デフレの解消はなお遠い。

全国の住宅地は前年比 0.6% のマイナス、全用途は 0.3% のマイナスだった。 26 年連続で下落が続くが、下落幅は 8 年連続で縮小した。 国交省は「実需で上がる好ましい姿を示している」と分析、緩やかな景気回復が地価を押し上げた。 商業地の上昇要因は主に 2 つある。 1 つは訪日客増加を見込んだ動きの加速。 7 月の訪日客は 268 万人と過去最高になり、4 - 6 月期の旅行消費額も四半期ベースで 1 兆円を超えた。 京都の祇園地区では、お香の専門店「豊田愛山堂」の地価上昇率が 27.3%。 三井不動産はその近くに新ブランドの高価格帯ホテルを今月から全国に先がけて開業している。

もう 1 つが再開発だ。 全国で最も地価が高かったのは東京・銀座 2 丁目の「明治屋銀座ビル」。 地価は 1 平方メートルあたり 3,890 万円となり、1991 年の 3,800 万円を上回った。 銀座周辺はオフィスの需要も底堅く、東京五輪を見すえた再開発で、新しい商業施設の建設が相次ぐ。 米不動産ファンドのグリーンオーク・リアル・エステートは 6 月に複合商業施設「ギンザシックス」の 8 階のオフィスフロアを 200 億円強で取得した。 商業地の上昇率は東京圏 3.3%、大阪圏 4.5%、名古屋圏 2.6% と、いずれも前年より拡大した。

マイナス金利政策を含めた日銀の大規模金融緩和も地価上昇につながった。 外国人投資家の動きを含めてマネーは地方にも流れ込み、上昇した商業地は 17 都道府県に増加。地方圏の下落率も 0.6% と前年より 0.5 ポイント改善した。 住宅地の動向はなお鈍い。 全国 1 万 4,656 の調査地点のうち、6 割弱が前年より下落した。 三大都市圏の上昇率は 0.4% と横ばいで、地方ではマイナス 1% だった。 38 道府県で前年から下がり、静岡県、滋賀県、兵庫県、奈良県の 4 県ではマイナス幅が大きくなった。 人口減に直面する地方では、空き家や空き地の増加が社会問題になっている。 (nikkei = 9-19-17)

基準地価 : 都道府県が不動産鑑定士の評価をもとに取りまとめた毎年 7 月 1 日時点の全国の土地価格。 国土交通省が 9 月に公表し、民間企業などの土地取引の指標となる。 現存する建物の形態や権利に関係なく、最も土地を有効に活用した場合を想定して、1 平方メートル当たりの価格を算出する。

公的機関が公表する主な地価の指標は、基準地価のほか、国交省が 3 月に公表する公示地価(1 月 1 日時点)、国税庁が公表する路線価(1 月 1 日時点)がある。 公示地価は基本的に都市計画区域内を調査対象とするのに対して、基準地価は都市計画の区域外も含まれる。 調査時点の違いから、基準地価は年央の地価動向を把握できる指標だ。 路線価は主要な道路に面した土地が対象で、相続税や贈与税の算定に用いる。

基準地価の区分は「住宅地」、「商業地」に加え、工場や物流施設などが立地する「工業地」、住宅地として使われる予定の「宅地見込み地」などがある。 今年の調査地点は 2 万 1,644 地点。 東京電力福島第 1 原子力発電所の事故に伴う避難指示区域内の 22 地点と熊本地震の影響による 1 地点は調査を休止した。

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(東京) 23 区の住宅地上昇率、荒川区が最高 5.3% 基準地価

東京都は 19 日、都内 1,268 地点の基準地価(7 月 1 日時点)を公表した。 都内全域の平均は昨年より 3.0% 上昇し、5 年連続でプラスとなった。 23 区は全 694 地点で値上がりし、全体で平均 4.6% 上昇。多摩地区は全 516 地点中 331 地点で値上がりし、0.9% の上昇だった。 23 区の住宅地をみると、千代田、中央、港の都心 3 区の上昇幅が縮小した一方、周辺部の区で上昇幅が拡大する傾向がみられた。

各区の上昇率は、荒川が 23 区内で最も高く 5.3% (前年 3.2%)。 次いで、文京 5.1% (同 3.0%)、千代田 5.0% (同 10.0%)、目黒 5.0% (同 6.1%)と続いた。 中央は 4.8% (同 5.5%)、港は 3.9% (同 4.3%)だった。 地点別の上昇率でも、昨年は千代田が 23 区内のトップ 3 を占めたが、今年は上位 2 位までが荒川区内で、4、5 位が北区と足立区内。「価格水準が低いのに交通利便性が高く、住環境の良い周辺部の需要が高まってきている」と都財務局の担当者は分析する。

23 区の商業地は、平均で 5.9% 上昇。 各区の上昇率は、渋谷が 8.6% で最も高く、中央、杉並が各 8.0%、台東が 7.4% などと続いた。 都によると、外国人観光客が多く訪れる繁華街の上昇率が高い傾向がみられるという。 多摩地区(計 30 市町村)の住宅地では、地点別の上昇率の上位 10 地点中の 9 地点を武蔵野市と三鷹市が占め、昨年と同様の傾向だった。 市町村別でみると、23 市で上昇し、多摩市は横ばい。多摩西部でマイナスが目立つ。

商業地は 25 市町で上昇。上昇率は武蔵野市の 5.8% が最も高く、立川市が 5.0%、三鷹市が 4.8% などの順だった。 多摩地区の工業地は全地点で地価が上昇し、上昇幅も全域で 3.6% と前年の 0.8% から大きく伸びた。 都によると、高速道のインターチェンジに近い地域で、ネットを介した通信販売の物流施設などとして需要が伸びているという。 (伊藤あずさ、asahi = 9-19-17)


機械受注 7 月は前月比 +8.0%、4 ヵ月ぶり増 鉄道車両等が押し上げ

[東京] 内閣府が 11 日に発表した 7 月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比 8.0% 増の 8,533 億円となった。 4 カ月ぶりに増加した。 ロイターの事前予測調査の前月比 4.4% 増を上回った。 押し上げた主な要因は運輸・郵便業からの鉄道車両の受注。 2 四半期連続の減少に歯止めがかかり、受注水準は昨年程度にようやく回復した。 内閣府は、機械受注の判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。

7 月は製造業が前月比 2.9% 増で 2 カ月ぶりの増加。 非製造業は同 4.8% 増で 2 カ月連続の増加。主な増加要因は、製造業では造船業からのエンジン類や非鉄金属からの原子炉設備などとみられる。 非製造業では運輸・郵便業からの鉄道車両や道路車両、情報サービス業からのコンピューター、建設業からの運搬機械など。 もっとも、受注額水準は 8,533 億円で、前年水準を 2 カ月連続で割り込んでいる。 2016 年はならせば 8,500 億円程度でほぼ横ばい水準だったが、今年に入りそれを大きく下回っていた受注額が、7 月に昨年並みに戻ったにすぎない。 外需は 3 カ月ぶりに増加し、前月比 9.1% 増。

機械受注は今年に入り 2 四半期連続で減少してきたが、民間企業の計画を基に内閣府が発表した 7 - 9 月の見通しは前期比 7.0% の増加と、3 四半期ぶりの増加と試算されている。 7 月がしっかりした伸びとなったことから、8、9 月が横ばいで推移したとしても、7 - 9 月は同 5.3% 増となる見通し。 農林中金総合研究所の主席研究員、南武志氏は「GDP 統計ベースでの民間設備投資は大きく下方修正されたが、3 四半期連続の増加は確保できている。 設備投資を取り巻く環境そのものも、いくつもの不透明要素があるとはいえ、基本的には良好さが続いている」とみている。

他方で、SMBC 日興証券のチーフマーケットエコノミスト、丸山義正氏は「設備投資は増加基調にこそあるものの、増勢の持続的な加速や景気拡大をけん引する役割を展望できるほどの強さは見られない。 こうした設備投資に対する慎重な見方は、6 月の日銀短観でも裏付けられている。」としている。 機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。設備投資の先行指標として注目されている。 (Reuters = 9-11-17)

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鉱工業生産 6 月は前月比 +1.6%、先行きも増産見通し

[東京] 経済産業省が 31 日発表した 6 月鉱工業生産指数速報は前月比 1.6% 上昇で、2 カ月ぶりの上昇となった。 ロイターの事前予測調査では前月比 1.7% 上昇と予想されていたが、発表数値は予想をやや下回った。 生産を押し上げた業種は輸送機械工業、化学工業(除く、医薬品)、電気機械工業等など。 出荷は前月比 2.3% 上昇、在庫は 2.2% 低下と 7 カ月ぶりに低下した。

4 - 6 月期の生産は前期比 1.9% 上昇と、5 四半期連続の増産となった。 生産予測指数は 7 月が前月比 0.8% 上昇とやや小幅にとどまる見通しだが、8 月は同 3.6% 上昇と、生産は増勢が続くと見込まれている。 経済産業省は生産の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と据え置いた。 調査機関では、今後の生産や在庫調整を占う材料として、好調が続く電子部品・デバイスのアジアでの需要の行方や、米国自動車市場の動向などを指摘する声がある。 (Reuters = 7-31-17)

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4 月の機械受注 3.1% 減 3 カ月ぶりのマイナス

内閣府が 12 日発表した 4 月の機械受注統計(季節調整値)によると、変動の大きい船舶・電力をのぞく民需の受注額は、前月比 3.1% 減の 8,359 億円だった。 減少は 3 カ月ぶり。 基調判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。 機械受注は企業の設備投資の先行指標。 内訳をみると、非製造業が 5.0% 減。 金融保険業のシステム関連の受注が減り、建設業も前月に大きく伸びた反動で減った。 製造業は 2.5% 増。 半導体製造装置など電気機械が好調だった。 (asahi = 6-12-17)

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3 月の機械受注、2 カ月連続で増加 内閣府発表

内閣府が 17 日発表した 3 月の機械受注統計によると、変動の大きい船舶・電力をのぞく民需の受注額(季節調整値)は、前月比 1.4% 増の 8,623 億円となり、2 カ月連続で増加した。 機械受注は企業の設備投資の先行指標。 業種別では建設業が好調で大きく伸びた一方で、半導体製造装置などの電気機械が振るわなかった。 基調判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。 1 - 3 月期では前期比 1.4% 減。 4 - 6 月期の見通しは、非製造業の受注の動きが弱いとみて前期比 5.9% 減と見込んでいる。 (asahi = 5-17-17)


実質 GDP 改定値、年率 2.5% 増に下方修正 設備投資下振れ

[東京] 内閣府が 8 日発表した 2017 年 4 - 6 月期実質国内総生産 (GDP) 2 次速報値は、1 次速報値から下方修正となった。 前期比は 0.6% 増(1次速報値 1.0% 増)、年率換算では 2.5% 増(同 4.0% 増)。 ロイターの事前予測調査では、中央値が前期比 0.7% 増、年率 2.9% 増だった。 下方改定に寄与したのは民間設備投資。 財務省の法人企業統計を反映させ、1 次速報値の前期比 2.4% 増から同 0.5% 増に大幅に下振れた。 個人消費も前期比 0.9% 増から同 0.8% 増に小幅下方修正した。

一方、公的資本形成は前年比 5.1% 増から同 6.0% 増に引き上げた。 名目 GDP は前期比 0.7% 増、年率 3.0% 増。 1 次速報では前期比 1.1% 増、年率 4.6% 増だった。 大幅下方改定になったものの、内閣府によると年率 2.5% 増の成長率は 2015 年 1 - 3 月期以来の高さ。 このため「内需主導の経済成長は変わっておらず、景気は緩やかな回復基調が続いている(幹部)」という。 (Reuters = 9-8-17)

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GDP 年率 4% 増 4 - 6 月期 6 四半期連続プラス成長

2017 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価の変動の影響を除いた実質成長率が前期(1 - 3 月期)比で 1.0% 増え、6 四半期連続のプラス成長になった。 内閣府が 14 日発表した。 この状態が 1 年続いたとして換算した年率では 4.0% 増。 15 年 1 - 3 月期(前期比 1.2%、年率 4.8%)以来の高い成長だ。 個人消費や設備投資などの内需が堅調に伸びた。

6 四半期連続のプラス成長は、リーマン・ショック前の 05 年 1 - 3 月期から 06 年 4 - 6 月期と並ぶ長さ。 これまで成長を牽引してきた輸出はマイナスに転じたものの、昨秋に成立した政府の補正予算の効果が出てきたことも成長を押し上げた。 公共投資は 5.1% 増と、高い伸びを示した。 学校耐震化などの防災事業などが各地で行われた結果とみられる。

国内の個人消費は 0.9% 増で持ち直しの動きが続いている。 雇用や所得環境の改善と、自動車や家電などの買い替え時期とが重なったことで、耐久消費財の販売が好調だった。 夏前から暑い日が続き、猛暑が見込まれたこともエアコンや冷蔵庫の需要を喚起したようだ。 企業の設備投資も 2.4% 増。人手不足を補うための省力化投資や設備の更新が堅調に続いている。

一方、これまで成長を担ってきた輸出は前期比 0.5% 減と、4 四半期ぶりに減少した。 アジア向けの電子部品や半導体製造装置の需要に一服感が出ている。 補正予算による引き上げ効果も一時的なものであり、成長率の今後の見通しには不透明感が残る。 公表に際しての記者会見で、茂木敏充経済再生相は「内需主導の経済成長になっている」と評価する一方で「消費が完全に回復したかというと力強さに欠けている面も残っている。 さらに政策的にも補強していきたい。」と話した。 (松浦祐子、asahi = 8-14-17)

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GDP 年率 2.2% 増 1 - 3 月期、5 四半期連続プラス

内閣府が 18 日発表した 2017 年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価の変動の影響を除いた実質成長率が前期(16 年 10 - 12 月期)より 0.5% 増加した。 この状態が 1 年続いたとして換算した年率では 2.2% 増。 プラス成長は 5 四半期連続で、リーマン・ショック前だった 05 年 1 - 3 月期から 06 年 4 - 6 月期までの 6 四半期連続以来の長い成長になる。

低迷が続いてきた個人消費が前期比で 0.4% 増の伸びを示し、プラス成長に寄与した。 ただ、これは前期に、天候不順などで値上がりした生鮮食品で買い控えが起きて、消費が低迷したことの反動とみられる。 内閣府幹部は「消費に力強さが戻っているわけではない」との見方を変えていない。 住宅投資は 0.7% 増。 20 年の東京五輪・パラリンピック開催に向けて、1 月に選手村施設の工事が始まった影響がありそうだ。

輸出は好調な状況が続く。 中国などアジア諸国を中心とした世界経済の景気回復の流れを受けて、2.1% 増と 3 四半期連続で増加した。 IT 関連の需要が強い。 米国の景気拡大への期待感からくる「トランプ相場」で株高、円安傾向となっていたことも、日本の良好な輸出環境を下支えしている。 ただ、外需の強さは国内の設備投資につながっていない。 設備投資は 0.2% 増で、前期の 1.9% 増から縮小した。 自国第一主義を掲げる米トランプ政権の経済政策の不透明感などから、企業が日本国内での設備投資に踏み切れなくなっている可能性がある。 (松浦祐子、asahi = 5-18-17)


長期金利、9 カ月半ぶりにマイナス 北朝鮮問題の影響で

1 日の東京債券市場で、長期金利が約 9 カ月半ぶりにマイナスとなった。 指標となる満期 10 年国債の利回りは、前日より 0.015% 幅低い(国債価格は値上がり)マイナス 0.005% で取引を終えた。 10 年債利回りがマイナス圏となるのは、2016 年 11 月中旬以来。 北朝鮮の核・ミサイル問題で、投資家のリスク回避の姿勢が強まり、安全な資産の国債を買う動きが強まった。

長期金利は、北朝鮮が日本上空を通過するミサイルを発射した 8 月 29 日に、約 4 カ月ぶりの低さとなるゼロ % に低下。 その後の米国の経済指標が振るわなかったことも、国債の需要を高めた。 日本銀行は長期金利を「ゼロ % 程度」に誘導するため、国債を大量に買っている。 最近の金利低下傾向を受け、日銀は 9 月の国債買い入れを一部減らし、市場に出回る国債を増やそうとしている。 過度な金利低下を防ぐためだ。

しかし、これまでの日銀の「買い占め」で市場に出回る国債は減っている。 北朝鮮情勢の影響もあり、金利低下の動きは続きそうだ。 市場では「トランプ米政権の混乱や北朝鮮情勢への警戒感は収まる見通しが立たず、リスク回避の動きはしばらく続く(みずほ証券の末広徹氏)」との見方が出ている。 (河合達郎、asahi = 9-2-17)


6 月の名目賃金 13 カ月ぶり減 夏のボーナス減が影響か

厚生労働省が4日発表した 6 月の毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金にあたる労働者 1 人当たり平均の現金給与総額(パートを含む)は、前年同月比 0.4% 減の 42 万 9,686 円で、13 カ月ぶりに減少した。夏のボーナスの支給額が、前年より減った影響とみられる。

現金給与総額のうち、基本給や残業代など、「きまって支給する給与」は同 0.4% 増の 26 万 1,583 円だった。 一方、夏のボーナスなど、「特別に支払われた給与」は同 1.5% 減の 16 万 8,103 円で給与総額全体を押し下げた。 厚労省は、「昨年 6 月のボーナスの伸びが大きかった反動も出ている」としている。 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「夏のボーナスの支給額は、円高などで落ち込んだ昨年前半の業績をもとに決めた企業が多く、昨年の支給額を下回る企業が多い」という。

物価変動の影響をのぞいた賃金の動きを示す実質賃金指数は同 0.8% 減で、3 カ月ぶりに下落した。 名目賃金が下がったことに加え、電気代などエネルギー価格の高騰で消費者物価指数が上昇した影響がでた。 (asahi = 8-4-17)

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賃上げ不足、物価を 0.2 ポイント下押し = 日銀展望リポート

[東京] 日銀は 21 日、四半期ごとに向こう 3 年の経済・物価を示す「展望リポート(経済・物価情勢の展望)」を公表し、その中で、人手不足にもかかわらず賃金や物価の上昇ペースが弱い理由について分析した。 賃上げが抑制気味であることが、物価を 0.2 ポイント下押しするとの試算も示している。 有効求人倍率がバブル期ピークを上回り失業率が 3% 程度まで低下するなど労働需給はひっ迫しているが、消費者物価指数(除く生鮮、コア CPI)は直近で前年比 0.4% の上昇にとどまっている。 2% の物価目標を目指す日銀には要因の分析が課題となっている。

日銀では 1983 年から 2013 年までの期間と比較して、2013 年から 2017 年までの期間では、有効求人倍率が改善するペースに対して、賃金の上昇が大幅に緩やかになっていることを図示した。 パート労働者の時給は労働需給を反映しやすいが、正社員の所定内給与は労働需給との相関が小さく、代わりにベースアップ率の影響が大きいとした。 また、バブル期に相当する 1990 年前後と、2010 年代後半は、実質賃金の伸びが労働生産性の伸びを下回っている状況にあると指摘。 この賃上げ不足が、足元では物価を 0.2 ポイント下押ししているとの試算も示した。 (Reuters = 7-21-17)

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5 月の実質賃金、0.1% 増 5 カ月ぶりプラスに

厚生労働省が 7 日発表した 5 月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数は前年同月比 0.1% 増となり、5 カ月ぶりにプラスに転じた。 労働者 1 人あたり平均の現金給与総額(パートを含む)は同 0.7% 増の 27 万 241 円で 2 カ月連続の増加となった。 実質賃金指数の算出に用いる消費者物価指数(生鮮食品含む)は原油価格上昇の影響で同 0.5% 上昇したが、名目賃金の伸びが上回り実質賃金を押し上げた。 (asahi = 7-7-17)